説明

撮像装置及びその制御方法、プログラム、及び記録媒体

【課題】両眼立体視用の画像間の視差が小さくなることを抑えて、適切な立体感を観測者に知覚させる両眼立体視用の画像を出力する。
【解決手段】絞りを通過した光束を受光して、モノラル画像である1つの画像、あるいはステレオ画像である左眼用及び右眼用の画像を撮像して出力する撮像素子とを備える。そして、絞りを通過した光束を左眼用及び右眼用の画像を撮像して出力する場合に、同一の露出量で1つの画像を撮影する場合よりも開放側となるように絞りを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法、プログラム、及び記録媒体に関し、特に1つの撮像光学系を用いて両眼立体視用の画像を撮影する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、両眼立体視用の画像を撮影可能な、所謂3Dカメラと呼ばれる撮像装置が、家庭用としても販売されてきている。両眼立体視用の画像を撮影する方法としては、様々な方法が考案されており、上述した家庭用の3Dカメラでは主に、所定の基線長を設けて配置された2つの撮像光学系を備え、それぞれの撮像光学系を用いて左眼用及び右眼用の画像を撮影する方式がとられている。
【0003】
一方、1つの撮像光学系(単眼)のみを用いて、両眼立体視用の画像を撮影する方式もある。例えば特許文献1には、撮像光学系を通過した光束を、分光ミラーを用いて左眼用及び右眼用の光束に分光し、それぞれの光束を別々の撮像素子に結像することにより、両眼立体視用画像を取得する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような両眼立体視用の画像を撮影可能な3Dカメラは、両眼立体視用の画像(ステレオ画像)だけでなく、通常の画像(モノラル画像)も撮影可能であることが多い。
【0006】
通常、モノラル画像を撮影する場合、本撮影前に撮影環境の測光を行って撮影環境の撮影に適した露出量を決定し、当該露出量に基づいてシャッタ速度及び絞り値を決定して本撮影を行う。例えば、晴天下等の輝度が高い撮影環境で撮影を行う場合は十分な光量が確保できるため、シャッタ速度を早くする(露出時間を短くする)、あるいは絞り値を大きくすることにより、撮像素子に結像される光学像の光量を抑えるように制御する。このような露出制御を行うことにより、被写体を白飛びさせることなく適正露出の画像を撮影することができる。
【0007】
ステレオ画像を撮影する場合も、モノラル画像を撮影する場合と同様に露出制御を行うことが考えられるが、単眼の3Dカメラでステレオ画像を撮影する場合は、当該露出制御により以下のような問題が考えられる。
【0008】
特許文献1に記載の撮像装置のように、1つの撮像光学系を用いて両眼立体視用の画像を撮影する場合、左眼用及び右眼用の撮像素子の各々は、分光ミラーにより分光された、撮像光学系の入射瞳の異なる領域を通過した光束を受光する。例えば図7(a)のように、入射瞳の中央を通る垂線で分断した領域の各々を通過する光束が各撮像素子に到達するように分光ミラーを構成する場合、各受光素子に結像する光学像は、図7(b)に示すような矩形領域701及び702を通過した像となる。このとき、左眼用及び右眼用の画像は、当該矩形領域の重心が各画像の光軸となるため、当該重心間距離(入射瞳の半径r)を基線長として配置された2つの撮像光学系を有する撮像装置で取得された左眼用及び右眼用の画像と等価である。
【0009】
なお、撮像光学系の入射瞳は絞りの開口に依存して変化するため、露出制御により絞りが小さくなると、得られる左眼用及び右眼用の画像の重心間距離も小さくなる。重心間距離、即ち基線長が小さくなる場合、当該左眼用及び右眼用の画像を両眼立体視可能な表示装置に表示した場合に観測者に与える立体感は弱くなる。
【0010】
例えば、図8(a)に示すように基線長がrである場合に被写体A及びB(被写体Aと撮像装置との距離>被写体Bと撮像装置との距離)を撮影して得られる左眼用及び右眼用の画像は図8(b)に示すようになる。このとき被写体AもBも、2つの撮像光学系の注視点が存在する面に存在しない場合、図8(b)に示したように画像間のずれ量に応じた視差が生じる。また、図8(c)に示すように基線長がrよりも小さいr’である場合に同じ被写体A及びBを撮影して得られる左眼用及び右眼用の画像は図8(d)に示すようになる。このとき、基線長が図8(a)の場合よりも短いため各被写体について生じる視差は小さくなる。
【0011】
人間は左眼及び右眼の網膜上に形成される像のずれである視差の大きさによって、立体の飛び出し具合や奥まっている具合を知覚するため、当該視差が小さいほど両眼立体視用の画像の立体感は弱まることになる。即ち、このようにモノラル画像と同様に露出制御を行なってしまうと、得られるステレオ画像が観測者に与える立体感が絞りに依存して弱まってしまう可能性があった。
【0012】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、両眼立体視用の画像間の視差が小さくなることを抑えて、適切な立体感を観測者に知覚させる両眼立体視用の画像を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成するために、本発明の撮像装置は、以下の構成を備える。
絞りを通過した光束を受光して1つの画像を撮像して出力する、あるいは絞りを通過した光束を受光して左眼用及び右眼用の画像を撮像して出力する撮像素子と、撮像素子が撮像を行う際の露出量に応じて、少なくとも絞りを制御する制御手段と、を有し、制御手段は、左眼用及び右眼用の画像を撮像する場合に、同一の露出量の条件において1つの画像を撮像する場合よりも開放側となるように絞りを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような構成により本発明によれば、両眼立体視用の画像間の視差が小さくなることを抑えて、適切な立体感を観測者に知覚させる両眼立体視用の画像を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタルカメラの機能構成を示したブロック図
【図2】本発明の実施形態1に係る撮影処理の一例を示したフローチャート
【図3】本発明の実施形態1に係る、モノラル画像及びステレオ画像の撮影時に用いられる、露出量、絞り値、及びシャッタ速度の関係を示したプログラム線図の例
【図4】本発明の実施形態2及び3、及び変形例に係る、ステレオ画像の撮影時に用いられる露出量、絞り値、及びシャッタ速度の関係を示したプログラム線図の例
【図5】本発明の実施形態2に係る撮影処理の一例を示したフローチャート
【図6】本発明の実施形態3に係る撮影処理の一例を示したフローチャート
【図7】1つの撮像光学系を用いて両眼立体視用の画像を撮影する場合に、左眼用及び右眼用の画像の生成に用いられる光束を説明するための図
【図8】1つの撮像光学系を用いて両眼立体視用の画像を撮影する場合に、絞りによって変化する視差を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する一実施形態は、撮像装置の一例としての、分光ミラーと2つの撮像素子を備え、1つの撮像光学系の入射瞳の異なる領域を通過した光束を分光して両眼立体視用の画像を撮影可能なデジタルカメラに、本発明を適用した例を説明する。しかし、本発明は、1つの撮像光学系を有し、当該撮像光学系の入射瞳の異なる領域を通過した光束を受光して両眼立体視用の画像を撮影可能ことが可能な任意の機器に適用可能である。
【0017】
また、本明細書において、デジタルカメラ100が備える各ブロックは参照符号を付して以下に説明するが、例えば撮像素子等、当該参照部号にLあるいはRがさらに続く場合は左眼用あるいは右眼用に設けられたブロックを個別に指し示すものとして説明する。また、左眼用及び右眼用の両方を有するブロックについてL及びRを省略して記す際は、特に断りのない限り、左眼用及び右眼用の両方を指し示すものとする。
【0018】
(デジタルカメラ100の機能構成)
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ100の機能構成を示すブロック図である。
【0019】
制御部101は、例えばCPUであり、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作を制御する。具体的には制御部101は、例えばROM102に記憶されている後述する撮影処理のプログラムを読み出して、RAM103に展開して実行することにより、各ブロックの動作を制御する。
【0020】
ROM102は、例えば書き換え可能な不揮発性メモリであり、撮影処理のプログラムに加え、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作において必要なパラメータ、あるいはユーザにより設定されたデジタルカメラ100の設定値等が記憶される。なお、本実施形態では、両眼立体視用の画像を撮影するか否かの判断に用いられる、デジタルカメラ100に設定されている撮影モードの情報が、当該ROM102に記憶されているものとする。またROM102には、撮影時に決定された露出量Evに対して設定される、絞り値Avとシャッタ速度Tvとの組み合わせを示したプログラム線図が予め記憶されているものとする。
【0021】
RAM103は、例えば揮発性メモリであり、撮影処理のプログラムの展開領域としてだけでなく、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作において出力された中間データ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0022】
撮像光学系120は、少なくとも撮像レンズ104及び絞り107を含んでいて、本実施形態では、撮像光学系120にメカシャッタ106も含む構成を説明する。なお、撮像光学系120は、デジタルカメラ100に内蔵されていなくてもよく、デジタルカメラ100に着脱可能なものであってもよい。撮像レンズ104は、例えば対物レンズ、合焦レンズ等で構成されるレンズ群であり、撮像素子110に光学像を結像するようにレンズ駆動部105により駆動される。またメカシャッタ106は、撮像レンズ104を通過した光束の光路を物理的に遮断する光学部材であり、シャッタ・絞り駆動部108により、設定されたシャッタ速度で規定される露出時間だけ光束を通過させるように駆動される。絞り107は、例えばアイリス絞り等の機械的な光学部材であり、シャッタ・絞り駆動部108によって開口が変化させられることにより、当該光学部材を通過する光束の量を物理的に制限する。
【0023】
分光ミラー109は、撮像光学系120の入射瞳を通過した光束を図7に示すように水平方向に2分して、各光束を撮像素子110L及びRに結像するように構成されたミラー群である。
【0024】
撮像素子110は、例えばCCDやCMOSセンサ等の光学素子であり、撮像光学系120及び分光ミラー109によって撮像素子面に結像された光学像を光電変換して、後述するCDS・A/D変換部112にアナログ画像信号を出力する。撮像素子110は、制御部101の制御を受けてTG111が発生する駆動パルスに応じて、光電変換及び得られたアナログ画像信号の出力を行う。
【0025】
なお、本実施形態では、通常のモノラル画像の撮影を行う場合は、撮像素子110LまたはRのいずれかにより撮像されたアナログ画像信号を用いるものとして説明するが、他の方法であってもよい。また、ステレオ画像の撮影は、分光ミラー109を使用せずに、1つの画素内に左眼用及び右眼用の2つの受光素子を有し、画素ごとに設けられたマイクロレンズにより入射瞳の異なる領域を通過した光束を各受光素子が受光する構成の撮像素子を用いても実現できる。
【0026】
CDS・A/D変換部112は、入力されたアナログ画像信号に対して、例えば相関二重サンプリング、ゲイン調整、A/D変換等の処理を実行する信号処理回路であり、得られた画像データを画像処理部113に出力する。
【0027】
画像処理部113は、入力された画像データに対して、例えばノイズ低減処理、シェーディング処理、ホワイトバランス調整処理等の各種の補正処理、及び予め定められた記録形式への符号化処理等を行う。
【0028】
操作入力部114は、例えば電源ボタンやレリーズボタン等の、デジタルカメラ100が備えるユーザインタフェースであり、ユーザによりなされた操作を解析し、当該操作に対応する制御信号を制御部101に伝送する。
【0029】
表示部115は、例えば小型LCD等のデジタルカメラ100が備える表示装置であり、本撮影により得られた画像データや、後述する記録媒体200より読み出された画像データが表示される。また表示部115は、撮像素子110より連続的に出力されたアナログ画像信号を随時表示することにより、電子ビューファインダとして機能する。なお、本実施形態においてデジタルカメラ100は、両眼立体視用の画像を撮影可能であるため、表示部115はユーザが裸眼立体視可能なように構成された表示装置であってもよい。
【0030】
記録媒体200は、例えばデジタルカメラ100が備える内蔵メモリや、メモリカードやHDD等のデジタルカメラ100に着脱可能に接続される記録装置である。記録媒体200には、後述する撮影処理により得られた両眼立体視用の画像データが、画像処理部113により所定の記録形式の画像ファイルに変換されて記録される。
【0031】
(撮影処理)
このような構成をもつ本実施形態のデジタルカメラ100の撮影処理について、図2のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。当該フローチャートに対応する処理は、制御部101が、例えばROM102に記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、RAM103に展開して実行することにより実現することができる。なお、当該撮影処理は、例えばユーザにより不図示のレリーズボタンが半押し状態にされ、撮影準備動作を開始するSW1信号を制御部101が操作入力部114より受信した際に開始されるものとして説明する。
【0032】
S201で、制御部101は、例えば撮像素子110Rにより撮像されてRAM103に格納された画像データを用いてTTL方式の測光を行い、現在の撮影環境に適した露出量(Ev値)を決定する。そして制御部101はS202で、ユーザによりレリーズボタンが全押し状態にされることにより操作入力部114より出力される、本撮影指示に対応するSW2信号を受信したか否かを判断する。制御部101は、SW2信号を受信したと判断した場合は処理をS203に移し、受信していないと判断した場合は処理をS201に戻す。なお、特に撮影処理のフローチャートに示さないが、ユーザがレリーズボタンの操作を解除することにより、制御部101が操作入力部114よりSW1信号を受信しなくなった場合は、制御部101は当該撮影処理を終了するものとする。
【0033】
S203で、制御部101は、現在設定されているデジタルカメラ100の撮影モードが、両眼立体視用の画像を撮影するモードであるか否かを判断する。具体的には制御部101は、ROM102に記憶されている撮影モードの情報を読み出し、両眼立体視用の画像を撮影する撮影モードが設定されているか否かを判断する。制御部101は、現在設定されているデジタルカメラ100の撮影モードが、両眼立体視用の画像を撮影するモードであると判断した場合は処理をS206に移し、それ以外のモードであると判断した場合は処理をS204に移す。
【0034】
S204で、制御部101は、通常のモノラル画像の撮影に関連付けられた、露出量と絞り値、及びシャッタ速度の関係を示すプログラム線図をROM102より読み出し、S201で決定した露出量に対応する絞り値とシャッタ速度の組み合わせを取得する。
【0035】
通常の撮影に関連付けられたプログラム線図は、例えば図3(a)のようになる。通常の撮影では、露出量が低い範囲(Ev3〜5)、即ち撮影環境の輝度が低い場合は、被写体の光量を確保するために、絞り値は開放側のAv3、シャッタ速度は低速側のTv0〜Tv2が設定されている。また露出量が高い範囲(Ev12〜16)、即ち撮影環境の輝度が高い場合は、被写体が白飛びしないように、絞り値は小絞り側のAv7(小絞り)、シャッタ速度は高速側のTv5〜Tv9が設定されている。即ち、図示されるように、通常の撮影の場合、撮影環境の輝度が高くなるにつれて、段階的に絞り値が小絞り側になるように設定されている。
【0036】
S205で、制御部101は、S204でプログラム線図より取得された絞り値とシャッタ速度の組み合わせを用いて、本撮影動作を実行し、得られた画像データを画像処理部113において所定の記録形式に変換して記録媒体200に記録して処理を完了する。
【0037】
一方、現在設定されているデジタルカメラ100の撮影モードが両眼立体視用の画像を撮影するモードであった場合は、制御部101は以下のように処理する。S206で、制御部101は、両眼立体視用の撮影に関連付けられた、露出量と絞り値、及びシャッタ速度の関係を示すプログラム線図をROM102より読み出し、S201で決定した露出量に対応する絞り値とシャッタ速度の組み合わせを取得する。
【0038】
上述したように、両眼立体視用の画像の撮影時には、絞り値が小さくなるほど得られる左眼用及び右眼用の画像間における同一の被写体についての像のずれが小さくなり、観測者に知覚される立体感が小さくなってしまう。このため、本実施形態では両眼立体視用の撮影に関連付けられたプログラム線図は、例えば図3(b)のように設定する。両眼立体視用の画像の撮影時は、同一の露出量の条件で通常の撮影を行う場合に比べてシャッタ速度を高速に設定し、絞り値がより開放側となるように設定する。このようにすることで、可能な限り広い範囲の露出量に対して、同一の露出量の条件においてモノラル画像を撮影する際に比べて開放側となるように絞りを制御することができるため、立体感を損なわない両眼立体視用の画像を取得することができる。
【0039】
S207で、制御部101は、S206でプログラム線図より取得された絞り値とシャッタ速度の組み合わせを用いて、本撮影動作を実行し、得られた左眼用及び右眼用の画像データを画像処理部113において所定の記録形式に変換して記録媒体200に記録して処理を完了する。
【0040】
以上説明したように、本発明の撮像装置は、両眼立体視用の画像間の視差が小さくなることを抑えて、適切な立体感を観測者に知覚させる両眼立体視用の画像を取得することができる。具体的には撮像装置は、1つの撮像光学系と、当該1つの撮像光学系を通過した光束を受光して、モノラル画像である1つの画像、あるいはステレオ画像である左眼用及び右眼用の画像を撮像して出力する撮像素子とを備える。そして、1つの撮像光学系を通過した光束を左眼用及び右眼用の画像を撮像して出力する場合に、同一の露出量で1つの画像を撮影する場合よりも開放側となるように絞りを制御する。
【0041】
(変形例)
上述した実施形態1では、シャッタ速度を高速に設定可能な範囲で、同一の露出量の条件でモノラル画像の撮影を行う場合に比べて、絞りが開放側となるように設定する方法について説明した。本変形例ではさらに、絞りの開口を変化させたり、シャッタ速度を速くしたりすることなく、撮像素子110で受光する光束を減光するNDフィルタを用いて光量を制御する場合について説明する。
【0042】
本変形例のデジタルカメラ100は、撮像素子110が受光する光束を減らすための、適用の有無を制御可能な不図示の内蔵NDフィルタを撮像光学系120に有するものとする。当該内蔵NDフィルタは、露出量が例えばEv13〜15の範囲で当該フィルタを適用するように設定され、光量を制御するものとする。
【0043】
図4(a)は、本変形例において、両眼立体視用の画像の撮影時の絞り値及びシャッタ速度の決定に用いられるプログラム線図である。図からもわかるように、Ev12〜16の範囲を除いて、本プログラム線図は実施形態1の両眼立体視用の画像の撮影時に用いられるプログラム線図と同じ組み合わせを示している。
【0044】
現在設定されているデジタルカメラ100の撮影モードが両眼立体視用の画像を撮影するモードである場合、制御部101は、現在の撮影環境に適した露出量を決定した後、例えば以下のように処理すればよい。制御部101は、決定した露出量が予めNDフィルタを適用して撮影を行う露出量の範囲(Ev12〜16)に含まれる場合、本撮影時の絞り値及びシャッタ速度の組み合わせを、プログラム線図のうちEv12についての組み合わせに設定する。そして制御部101は、内蔵NDフィルタを適用するように撮像光学系120の所定の駆動系を駆動させ、撮影を行う。
【0045】
このようにすることで、上述の実施形態と同様に、両眼立体視用の画像を撮影する場合に、同一の露出量の条件においてモノラル画像を撮影する際に比べて開放側となるように絞りを制御することができる。即ち、シャッタ速度を高速に設定可能な範囲よりも広い露出量の範囲において、立体感を損なわない両眼立体視用の画像を取得することができる。
【0046】
(実施形態2)
上述した実施形態1及び変形例では、両眼立体視用の画像を撮影する場合に、撮影環境に応じて決定した露出量に基づいて、同一の露出量の条件においてモノラル画像を撮影する際に比べて開放側となるように絞りを制御して撮影を行うものとして説明した。しかしながら、両眼立体視用の画像間における、同一の被写体についての像のずれは、上述したように被写体の距離に応じて変化する。即ち、必ずしもより開放側の絞りを用いて撮影を行って得られる両眼立体視用の画像が、観測者に適切な立体感を知覚させるとは限らない。つまり、被写体のデジタルカメラ100の距離が近いほど、立体視可能に表示した場合に当該被写体がより飛び出しているように知覚することができるが、両眼立体視用の画像間における像のずれが大きいため、視聴に際して観測者に疲労感を与えてしまう可能性がある。本実施形態では、撮影環境に含まれる被写体とデジタルカメラ100との距離の情報に基づいて、両眼立体視用の画像を撮影する際のプログラム線図を異ならせて、適切な立体感を観測者に知覚させる両眼立体視用の画像を取得する例について説明する。
【0047】
(撮影処理)
上述の実施形態1と同様の構成をもつ本実施形態のデジタルカメラ100の撮影処理について、図5のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。当該フローチャートに対応する処理は、制御部101が、例えばROM102に記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、RAM103に展開して実行することにより実現することができる。なお、当該撮影処理は、例えばユーザにより不図示のレリーズボタンが半押し状態にされ、撮影準備動作を開始するSW1信号を制御部101が操作入力部114より受信した際に開始されるものとして説明する。また、本実施形態の撮影処理の各ステップで行われる処理のうち、実施形態1の撮影処理と同様の処理を行うステップについては、同一の参照符号を付すことにより説明を省略し、本実施形態に特徴的な処理を行うステップの説明に留める。
【0048】
S501で、制御部101は、位相差検出方式のAF動作を行って、被写体に合焦するように撮像光学系120を制御するとともに、AF動作により得られた被写体とデジタルカメラ100との距離Dに関する情報を取得する。なお、本実施形態では被写体とデジタルカメラ100との距離を、AF動作の結果として取得するものとして説明するが、他の方法により被写体とデジタルカメラ100との距離を計測してもよいことは容易に理解されよう。
【0049】
S203で現在設定されているデジタルカメラ100の撮影モードが両眼立体視用の画像を撮影するモードであった場合は、制御部101はS502で、被写体とデジタルカメラ100との距離Dが予め定められた閾値DTよりも大きいか否かを判断する。具体的には制御部101は、例えばROM102に記憶されている閾値DTの情報を読み出し、S501で得られた情報に基づく被写体とデジタルカメラ100との距離Dと比較を行う。制御部101は、被写体とデジタルカメラ100との距離Dが、閾値DTより大きいと判断した場合は処理をS503に移し、閾値DT以下であると判断した場合は処理をS504に移す。
【0050】
S503で、制御部101は、両眼立体視用の撮影に関連付けられたプログラム線図のうち、遠距離被写体用のプログラム線図をROM102より読み出し、S201で決定した露出量に対応する絞り値とシャッタ速度の組み合わせを取得する。なお、本実施形態では遠距離被写体用のプログラム線図は、実施形態1の両眼立体視用の撮影に関連付けられたプログラム線図と同一であるものとする。
【0051】
一方、被写体とデジタルカメラ100との距離Dが閾値DT以下である場合、制御部101は以下のようにする。S504で、制御部101は、両眼立体視用の撮影に関連付けられたプログラム線図のうち、近距離被写体用のプログラム線図をROM102より読み出し、S201で決定した露出量に対応する絞り値とシャッタ速度の組み合わせを取得する。なお、近距離被写体用のプログラム線図は、例えば図4(b)のようになり、遠距離被写体用のプログラム線図(図3(b))に比べて、小絞り側の絞りが設定されることになる。また、近距離被写体用のプログラム線図は、例えばEv10〜15等の露出量が比較的高い範囲において、通常のモノラル画像の撮影時に比べて開放側の絞りが設定されることがわかる。
【0052】
なお、本実施形態では、閾値を設定し、被写体とデジタルカメラ100との距離に応じて2種類のプログラム線図から適したプログラム線図を選択して、絞り値とシャッタ速度の組み合わせを決定するものとして説明したが、本発明の実施はこれに限らない。即ち、本発明は、被写体とデジタルカメラ100の距離が大きいほど絞りが開放側に、反対に当該距離が小さいほど絞りが小絞り側となるように制御すればよく、例えば3以上のプログラム線図を設けてもよい。また、被写体とデジタルカメラ100の距離及び露出量を変数とする関数を予め設定し、当該関数により絞り値を決定するように構成してもよい。
【0053】
(実施形態3)
上述した実施形態1及び2、及び変形例では、静止画撮影時の絞りの制御について説明したが、本実施形態では左眼用及び右眼用の画像を連続的に撮像して両眼立体視用の動画撮影を行う場合の絞りの開口制御について説明する。
【0054】
通常、静止画撮影時は撮像光学系120内のメカシャッタ106を使用して、遮光により光量制御して撮影を行うが、動画撮影時はメカシャッタ106を使用せず、撮像素子110を電気的にオンオフ制御する所謂電子シャッタが用いられる。即ち、電子シャッタを用いる場合、メカシャッタ106を用いるよりもシャッタ速度を高速にすることが可能であり、静止画撮影時よりもさらに広い露出量の範囲で開放側の絞りで撮影を行えるようにすることができる。
【0055】
(撮影処理)
上述の実施形態1と同様の構成をもつ本実施形態のデジタルカメラ100の撮影処理について、図6のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。当該フローチャートに対応する処理は、制御部101が、例えばROM102に記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、RAM103に展開して実行することにより実現することができる。なお、当該撮影処理は、例えばユーザにより不図示のレリーズボタンが半押し状態にされ、撮影準備動作を開始するSW1信号を制御部101が操作入力部114より受信した際に開始されるものとして説明する。また、本実施形態の撮影処理の各ステップで行われる処理のうち、実施形態1の撮影処理と同様の処理を行うステップについては、同一の参照符号を付すことにより説明を省略し、本実施形態に特徴的な処理を行うステップの説明に留める。
【0056】
S601で、制御部101は、現在設定されているデジタルカメラ100の撮影モードが、両眼立体視用の動画像を撮影するモードであるか否かを判断する。具体的には、制御部101は、ROM102に記憶されている撮影モードの情報を読み出し、両眼立体視用の動画像を撮影する撮影モードが設定されているか否かを判断する。制御部101は、現在設定されているデジタルカメラ100の撮影モードが、両眼立体視用の動画像を撮影するモードであると判断した場合は処理をS602に移し、それ以外のモードであると判断した場合は処理をS203に移す。
【0057】
S602で、制御部101は、両眼立体視用の動画撮影に関連付けられた、露出量と絞り値、及びシャッタ速度の関係を示すプログラム線図をROM102より読み出し、S201で決定した露出量に対応する絞り値とシャッタ速度の組み合わせを取得する。両眼立体視用の動画撮影に関連付けられたプログラム線図は、例えば図4(c)のようになり、静止画撮影時に比べて、高速なシャッタ速度(Tv10〜13)を設定することができる。このため、左眼用及び右眼用の静止画像を撮影する場合よりも、さらに高い露出量の範囲(Ev12〜16)においても、開放側の絞りを設定することができる。
【0058】
なお、本実施形態では説明を省略しているが、両眼立体視用の動画像を撮影するモードだけでなく通常のモノラル動画像を撮影するモードを有する構成であってもよい。そのような構成においては、静止画撮影時と同様に、両眼立体視用の動画像を撮影する場合に、同一の露出量で1つの動画像を撮影する場合よりも開放側となるように絞りを制御すればよい。
【0059】
S603で、制御部101は、S602で取得した絞り値とシャッタ速度の組み合わせで動画撮影の1フレームに係る撮像を撮像素子110に実行させ、得られた左眼用及び右眼用の画像データを画像処理部113に所定形式に変換させ、記録媒体200に記録する。また制御部101はS604で、動画撮影指示であるSW2信号を操作入力部114より受信しているかを判断し、受信していると判断した場合は処理をS603に戻し、次のフレームに係る撮像、及び当該フレームの左眼用及び右眼用の画像の記録を行う。またSW2信号を受信していないと判断した場合は、制御部101は記録媒体200に記録した動画像のフレーム群について所定の処理を行なって1つの動画ファイルに変換した後、処理を完了する。
【0060】
なお、実施形態1乃至3及び変形例を用いて、本発明の例示的な実施について説明したが、それぞれの実施形態及び変形例で説明した絞り制御は、組み合わせて行なってもよいことは容易に理解されよう。例えば、内蔵NDフィルタを有する撮像光学系120を用いて、両眼立体視用の動画像の撮影を行う場合は、開放側の絞りを設定可能な露出量の範囲は、図4(c)に示した範囲よりもさらに拡張することができる。また、動画撮影時に被写体とデジタルカメラ100との距離が変化する場合は、図4(b)と(c)に示したプログラム線図を組み合わせたプログラム線図を用いて絞りの制御を行なってもよい。
【0061】
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞りを通過した光束を受光して、1つの画像あるいは左眼用及び右眼用の画像を撮像して出力する撮像素子と、
前記撮像素子が撮像を行う際の露出量に応じて、少なくとも前記絞りを制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記左眼用及び右眼用の画像を撮像する場合に、同一の露出量で前記1つの画像を撮像する場合よりも開放側となるように前記絞りを制御する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記露出量に応じてシャッタ速度を速くすることにより、同一の露出量で前記1つの画像を撮像する場合よりも開放側となるように前記絞りを制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子が受光する光量を減らす減光手段を有し、
前記制御手段は、所定の範囲の露出量で前記左眼用及び右眼用の画像を撮像する場合に、前記シャッタ速度を速くせずに前記減光手段を適用させることにより、同一の露出量で前記1つの画像を撮像する場合よりも開放側となるように前記絞りを制御することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
撮像する被写体と前記撮像装置との距離を計測する計測手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記左眼用及び右眼用の画像を撮像する場合に、前記被写体と前記撮像装置との距離が大きいほど開放側となるように前記絞りを制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記左眼用及び右眼用の画像を連続的に撮像して動画像の撮像を行う場合は、左眼用及び右眼用の静止画像の撮像を行う場合よりも開放側の絞り値に制御する露出量の範囲を広くすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、露出量と絞り値及びシャッタ速度との関係が予め定められたプログラム線図を用いて、前記絞りを制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
絞りを通過した光束を受光して、1つの画像あるいは左眼用及び右眼用の画像を撮像して出力する撮像素子と、を有する撮像装置の制御方法であって、
制御手段が、前記撮像素子が撮像を行う際の露出量に応じて、少なくとも前記絞りを制御する制御工程を有し、
前記制御工程において前記制御手段は、前記左眼用及び右眼用の画像を撮像する場合に、同一の露出量で前記1つの画像を撮像する場合よりも開放側となるように前記絞りを制御する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置の制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置の制御手段として機能させるためのプログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46395(P2013−46395A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185251(P2011−185251)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】