説明

撮像装置及び塵埃除去方法

【課題】簡易な構成で効率的に振動部材に付着した塵埃を除去することが可能な、新規かつ改良された撮像装置及び塵埃除去方法を提供する。
【解決手段】照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材と、前記振動部材を振動させる加振部と、前記加振部の振動動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させ、該共振周波数から所定の周波数高いまたは低い周波数まで連続して前記加振部を動作させることを特徴とする、撮像装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び塵埃除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラやビデオカメラなどの撮像装置が広く普及し一般的に使用されている。このような撮像装置は、撮像素子である例えばCCD(Charge Coupled Device)の高画素化に伴い、より高画質な画像を提供することができるようになってきている。このような撮像装置は、一般に、一眼レフ方式のファインダー装置を撮像装置本体に着脱可能に設けることができるように構成されており、ユーザが撮影に応じて所望の光学系(レンズ)を選択することができる。
【0003】
このようなレンズ交換の可能なデジタルカメラにおいては、当該レンズを撮像装置本体から取り外したときに、空気中に浮遊する塵埃等が撮像装置本体の内部に侵入する可能性がある。また、撮像装置本体内部には、例えばシャッタや絞り機構などのように、機械的に動作する機構が設けられおり、これらの機構が動作することにより塵埃などが発生することもある。このような塵埃等が撮像素子のフィルタ表面に付着すると、撮影した映像にその塵埃が写りこんでしまう問題が生じる。
【0004】
このような問題を解消するために、かかるレンズ交換式のデジタルカメラでは、撮像素子と光学系との間に振動部材を配置することで撮像素子およびフィルタなどの防塵を図ると共に、防塵部材に付着したゴミなどを振動により除去するシステムが開発されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−135910号公報
【特許文献2】特開2011−091776号公報
【特許文献3】特開2010−098410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレンズ交換式のデジタルカメラにおける塵埃除去方法においては、圧電素子に印加する電圧の周波数を振動部材の共振周波数で駆動することで除去駆動を行っている。例えば、上記特許文献1に開示された発明においては、振動部材の共振周波数を時間的に順番に振動させている。時間的に次数の異なる共振周波数で駆動することで、定在波駆動時に生ずる除去能力の低い(振動の小さい)節を相殺するように除去している。
【0007】
しかし、従来のレンズ交換式のデジタルカメラにおける塵埃除去方法では、高次の共振周波数を使用する為、高次での振動振幅を大きくすることが難しく、十分な除去が行えないという問題があった。高次での振動振幅を大きくするためには圧電素子に印加する電圧を高くする必要があるが、低次での共振周波数で同じ電圧を圧電素子に印加すると振動部材が破壊されてしまい、共振周波数ごとに圧電素子に印加する電圧を変化させる制御が必要となってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、簡易な構成で効率的に振動部材に付着した塵埃を除去することが可能な、新規かつ改良された撮像装置及び塵埃除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材と、前記振動部材を振動させる加振部と、前記加振部の振動動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させ、該共振周波数から所定の周波数高い周波数または低い周波数まで連続して前記加振部を動作させることを特徴とする、撮像装置が提供される。
【0010】
前記制御部は、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させ、該共振周波数から所定の周波数高い周波数または低い周波数まで連続して前記加振部を動作させると、続いて前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させ、該共振周波数から所定の周波数低い周波数または高い周波数まで連続して前記加振部を動作させる
【0011】
前記所定の周波数は、前記振動部材が、付着している塵埃を除去できる振動を確保できる周波数である。
【0012】
前記所定の周波数は、前記共振状態における前記振動部材の振動の半値幅の振動を確保できる周波数である。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材と、前記振動部材を振動させる加振部と、前記加振部の振動動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させた後、該共振周波数から離れた周波数で前記加振部を動作させることを特徴とする、撮像装置が提供される。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材を振動させる加振部に対し、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として動作させ、該共振周波数から所定の周波数高い周波数または低い周波数まで連続して前記加振部を動作させる制御ステップを備えることを特徴とする、塵埃除去方法が提供される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材を振動させる加振部に対し、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として動作させた後、該共振周波数から離れた周波数で前記加振部を動作させる制御ステップを備えることを特徴とする、塵埃除去方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、簡易な構成で効果的に撮像素子の前面に付着した塵埃を除去することが可能な、新規かつ改良された撮像装置及び塵埃除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかる撮像装置10の機能構成を示す説明図である。
【図2】塵埃除去部134の構造を示す説明図である。
【図3】塵埃除去部134の機能構成を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる撮像装置10の動作を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる撮像装置10の塵埃除去方法をグラフで示す説明図である。
【図6】圧電素子171に電圧を印加した際の振動部材172の振動分布を示す説明図である。
【図7】圧電素子171に電圧を印加した際の振動部材172の振動分布を示す説明図である。
【図8】従来の塵埃除去方法による問題点を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる撮像装置10による塵埃除去方法を用いて、振動部材172に付着した塵埃を除去する様子を示す説明図である。
【図10】従来の塵埃除去方法と、本発明の一実施形態にかかる撮像装置10による塵埃除去方法とを比較して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
<1.本発明の一実施形態>
[撮像装置の構成例]
まず、本発明の一実施形態にかかる撮像装置の機能構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる撮像装置10の機能構成を示す説明図である。以下、図1を用いて本発明の一実施形態に係る撮像装置10の機能構成について説明する。
【0020】
図1に示したように、本発明の一実施形態に係る撮像装置10は、本体部100と、レンズ部200と、を含んで構成される。
【0021】
本体部100は、シャッタ102と、CMOSイメージセンサ104と、画像入力コントローラ106と、不揮発性メモリ108と、DSP・CPU110と、圧縮処理回路112と、LCDドライバ114と、表示部116と、VRAM118と、メモリ120と、メディアコントローラ122と、記録メディア124と、操作部126と、ドライバ128と、モータ130と、バッテリ132と、塵埃除去部134と、を含んで構成される。
【0022】
また、レンズ部200は、ズームレンズ202と、絞り204と、フォーカスレンズ206と、A/D変換器208と、レンズCPU210と、ROM212と、RAM214と、ドライバ216、218と、モータ220,222と、を含んで構成される。
【0023】
まず、本体部100の各部について説明する。シャッタ102は、レンズ部200から入射される入射光の入射時間を調節するためのものである。シャッタ102は、本実施形態においては電子シャッタを用いることによって入射光を制御して、電気信号を取り出す時間を調節しているが、メカシャッタを用いることによって入射光を制御して、電気信号を取り出す時間を調節してもよい。
【0024】
CMOSイメージセンサ104は、レンズ部200からから入射された光を電気信号に変換するための素子である。CMOSイメージセンサ104は、CDS回路142と、A/D変換器144と、を含んで構成される。CDS回路142は、CMOSイメージセンサ104から出力された電気信号の雑音を除去する、サンプリング回路の一種であるCDS回路と、雑音を除去した後に電気信号を増幅するアンプとが一体となった回路である。本実施形態ではCDS回路とアンプとが一体となった回路を用いて撮像装置10を構成しているが、CDS回路とアンプとを別々の回路で構成してもよい。A/D変換器144は、CMOSイメージセンサ104で生成された電気信号をデジタル信号に変換して、画像の生データを生成するものである。
【0025】
画像入力コントローラ106は、A/D変換器144で生成された画像の生データの入力を制御するものである。不揮発性メモリ108は、撮像装置10を制御するための実行プログラムや、撮像装置10の制御に必要な管理情報を記録するものである。本実施形態では、後に詳述するが、レンズ部200を識別するためのレンズ識別情報と、そのレンズ部200を本体部100に装着した場合に撮像装置10が選択可能なシーンモードの情報を関連付けて記録する。
【0026】
DSP・CPU110は、CMOSイメージセンサ104やCDS回路142などに対して信号系の命令を行ったり、操作部126の操作に対する操作系の命令を行ったりする。本実施形態においては、図1にDSP・CPU110を一体として図示しているが、信号系の命令と操作系の命令とを別々の制御部で(例えば、CPUとDSPに分けて)実行するようにしてもよい。
【0027】
圧縮処理回路112は、光量のゲイン補正やホワイトバランスの調整が行われた画像を、適切な形式の画像データに圧縮する。画像の圧縮形式は可逆形式であっても非可逆形式であってもよい。適切な形式の例として、JPEG(Joint Photographic Experts Group)形式やJPEG2000形式に変換してもよい。
【0028】
表示部116は、撮影操作する前のライブビュー表示や、撮像装置10の各種設定画面や、撮影した画像を表示する。画像データや撮像装置10の各種情報の表示部116への表示は、LCDドライバ114を介して行われる。
【0029】
VRAM118は、表示部116に表示する内容を保持するものであり、表示部116の解像度や最大発色数はVRAM118の容量に依存する。
【0030】
メモリ120は、撮影した画像を一時的に記憶するものである。メモリ120は、複数の画像を記憶できるだけの記憶容量を有している。メモリ120への画像の読み書きは画像入力コントローラ106によって制御される。メモリ120としては、例えば、図5に示したようにSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を用いてもよい。
【0031】
記録メディア124は、撮像装置10で撮影した画像を記録するものである。記録メディア124への入出力は、メディアコントローラ122によって制御される。記録メディア124には、フラッシュメモリにデータを記録するカード型の記憶装置であるメモリカードを用いることができる。
【0032】
操作部126は、撮像装置10の操作を行ったり、撮影時の各種の設定を行ったりするための部材が配置されている。操作部126に配置される部材には、電源ボタン、撮影モードの選択する十字キーおよび選択ボタン、被写体の撮影動作を開始するシャッタボタン等を含んでいてもよい。
【0033】
ドライバ128は、シャッタ102を動作させるためのモータ130の駆動を制御するものである。バッテリ132は、所定の電力を蓄え、本体部100やレンズ部200に電力を供給するものである。
【0034】
次に、レンズ部200の各部について説明する。ズームレンズ202は、光軸方向に前後して移動させることで焦点距離が連続的に変化するレンズであり、被写体の大きさを変化して撮影する。絞り204は、画像を撮影する際に、モータ220によって、本体部100のCMOSイメージセンサ104に入ってくる光量を調節する。フォーカスレンズ206は、モータ222によって光軸方向に前後して移動させることで被写体のピントを調節するものである。
【0035】
本実施形態においては、ズームレンズ202およびフォーカスレンズ206は1枚のみ示しているが、ズームレンズ202の枚数は2枚以上であってもよく、フォーカスレンズ206の枚数も2枚以上であってもよい。
【0036】
A/D変換器208は、ズームレンズ202およびフォーカスレンズ206の位置情報をデジタル情報に変換するものである。A/D変換器208は、デジタル情報に変換したズームレンズ202およびフォーカスレンズ206の位置情報をレンズCPU210に送る。
【0037】
レンズCPU210は、レンズ部200の内部動作の制御、および本体部100との間の情報の通信を制御するものである。例えば、レンズCPU210は、A/D変換器208でデジタル情報に変換されたズームレンズ202およびフォーカスレンズ206の位置情報を受け取って解析することで、ズームレンズ202およびフォーカスレンズ206の位置を把握し、本体部100へ位置情報を送信する。また、レンズCPU210は、本体部100からズームレンズ202、絞り204、フォーカスレンズ206の位置や値を指定するための命令を受け取ると、ズームレンズ202、絞り204、フォーカスレンズ206の位置や値を指定する。
【0038】
レンズCPU210はSIO211を備え、このSIO211が、本体部100のDSP・CPU110に備えられているSIO(図示せず)との間で通信を実行することで、本体部100とレンズ部200との間で通信が行われる。
【0039】
ROM212は、レンズCPU210が読み出して順次実行することでレンズ部200の動作を制御するためのコンピュータプログラムや、レンズ部200の各種設定(例えば、レンズの型番やシリアル番号等)が格納されるものである。またRAM214は、レンズ部200の動作のために書き換え可能な情報が格納されるものである。
【0040】
ドライバ216、218は、絞り204およびフォーカスレンズ206を動作させるモータ220、222の駆動を制御する。ドライバ216、218を介して絞り204およびフォーカスレンズ206を動作させることで、被写体の大きさや光の量、ピントを調節することができる。
【0041】
以上、図1を用いて本発明の一実施形態に係る撮像装置10の機能構成について説明した。次に、本発明の一実施形態に係る撮像装置10の本体部100に設けられる塵埃除去部134の構造について説明する。
【0042】
[塵埃除去部の構成例]
図2は、本発明の一実施形態に係る撮像装置10の本体部100に設けられる塵埃除去部134の構成を示す説明図である。以下、図2を用いて、本発明の一実施形態に係る撮像装置10の本体部100に設けられる塵埃除去部134の構成について説明する。
【0043】
図2に示したように、塵埃除去部134は、圧電素子171と、振動部材172と、FPC173と、保持部174と、を含んで構成される。
【0044】
圧電素子171は、入力される制御信号に応じて伸縮する加振部材であって、例えばPZT素子などを用いることができる。圧電素子171は、略四角形状の枠状部材である保持部174の相対向する一対の辺にそれぞれ設けられている。なお、圧電素子171が設けられる位置はかかる例に限定されず、例えば、圧電素子171は振動部材172の周縁部に設けられるようにしてもよい。また、圧電素子171の形状は、図2に示したような形状に限られないことは言うまでもなく、例えば円形状や多角形状であってもよい。
【0045】
圧電素子171は、さらにFPC173が接続されており、FPC173から入力された制御信号に応じて伸縮する。これにより、圧電素子171と保持部174とを介して接続された振動部材172が振動される。
【0046】
振動部材172は、例えばガラスなどの光を透過する透明部材からなる除塵フィルタである。本実施形態にかかる振動部材172は、略四角形の板状部材であって、その周囲を保持部174によって保持されている。なお、本実施形態では、振動部材172は保持部174により保持されているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、保持部174を設けずに振動部材172のみとし、振動部材172に圧電素子171を直接接着させてもよい。
【0047】
FPC173は、圧電素子171に入力される制御信号を伝達するための回路が形成されたプリント基板である。FPC173から圧電素子171には、所定の周波数の周期的な制御信号が入力される。このように、本実施形態にかかる塵埃除去部134は、振動部材172を振動させる単一の圧電素子171に所定の周波数の周期的な制御信号が入力される。
【0048】
以上、図2を用いて、本発明の一実施形態に係る撮像装置10の本体部100に設けられる塵埃除去部134の構造について説明した。次に、本発明の一実施形態に係る撮像装置10の本体部100に設けられる塵埃除去部134の機能構成について説明する。
【0049】
[塵埃除去部の機能構成例]
図3は、塵埃除去部134の機能構成を示す説明図である。以下、図3を用いて本発明の一実施形態に係る撮像装置10の本体部100に設けられる塵埃除去部134の機能構成について説明する。
【0050】
図3に示したように、塵埃除去部134は制御回路150を含んで構成され、制御回路150は、論理回路151と、FET152と、トランス153と、を含んで構成される。また、図3に示したように、DSP・CPU110は、クロック発生部111を備える。
【0051】
クロック発生部111はPWM信号を発生させて、制御回路150の論理回路151へ出力する。論理回路151は、クロック発生部111が発生させたPWM信号を受けると、そのPWM信号をFET152へ出力する。FET152は、トランス153の1次側に接続されている。FET152が論理回路151からPWM信号を受けると、トランス153は、FET152のスイッチング動作により所定の周期性を持った2次側の信号を発生させる。
【0052】
トランス153には、バッテリ132からの電力が電源回路160を介して供給される。トランス153は、バッテリ132からの電力の供給を受けて、圧電素子171へ周期性を持った電圧を印加することができる。
【0053】
本実施形態にかかる撮像装置10は、クロック発生部111が発生させるPWM信号の周期を変化させることができる。クロック発生部111が発生させるPWM信号の周期を変化させることで、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を変化させることができる。
【0054】
以上、図3を用いて本発明の一実施形態に係る撮像装置10の本体部100に設けられる塵埃除去部134の機能構成について説明した。次に、本発明の一実施形態に係る撮像装置10の動作について説明する。
【0055】
[撮像装置の動作例]
図4は、本発明の一実施形態に係る撮像装置10の動作を示す流れ図である。図4に示した流れ図は、塵埃除去部134の振動部材172に付着した塵埃を除去する際の、撮像装置10の動作を示したものである。以下、図4を用いて本発明の一実施形態に係る撮像装置10の動作について説明する。
【0056】
塵埃除去部134の振動部材172に付着した塵埃を除去する際には、まず、振動部材172の振動が共振状態となる周波数(共振周波数)の電圧をトランス153から圧電素子171へ印加するように制御する(ステップS101)。振動部材172の振動が共振状態となる周波数(共振周波数)は、圧電素子171や振動部材172の形状や材質によって決定され、例えば、設計時に決定される共振周波数の電圧が圧電素子171に印加される。振動部材172の振動が共振状態となる周波数(共振周波数)の電圧をトランス153から圧電素子171へ印加することで、振動部材172の振動のエネルギーが極大となる。
【0057】
振動部材172の振動が共振状態となる周波数(共振周波数)の電圧をトランス153から圧電素子171へ印加すると、続いて、クロック発生部111が発生させるPWM信号の周期を変化させることで、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を下げていく(ステップS102)。圧電素子171へ印加する電圧の周波数が下がることで、振動部材172の振動のエネルギーが低下していく。
【0058】
トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を下げていくと、共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数まで下げたかどうかが判断される(ステップS103)。共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数まで下げてなければ、ステップS102に戻って、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を下げ続けていく。
【0059】
この共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数は、例えば、振動部材172が、振動部材172に付着している塵埃を除去できる振動を確保できる周波数であってもよい。また、この共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数は、共振状態における振動部材172の振動の半値幅の振動を確保できる周波数であってもよい。
【0060】
一方、共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数まで下げていれば、再び、塵埃除去部134の振動部材172に付着した塵埃を除去する際には、まず、振動部材172の振動が共振状態となる周波数(共振周波数)の電圧をトランス153から圧電素子171へ印加するように制御する(ステップS104)。
【0061】
振動部材172の振動が共振状態となる周波数(共振周波数)の電圧をトランス153から圧電素子171へ印加すると、続いて、クロック発生部111が発生させるPWM信号の周期を変化させることで、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を上げていく(ステップS105)。
【0062】
トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を下げていくと、共振周波数から所定の周波数だけ高い周波数まで上げたかどうかが判断される(ステップS103)。共振周波数から所定の周波数だけ高い周波数まで上げてなければ、ステップS102に戻って、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を上げ続けていく。一方、共振周波数から所定の周波数だけ高い周波数まで上げていれば、そこで処理を終了する。
【0063】
このように、本実施形態にかかる撮像装置10は、振動部材172の振動が共振状態となる周波数(共振周波数)の電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数まで下げる。そして再び振動部材172の振動が共振状態となる周波数(共振周波数)の電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ高い周波数まで上げる。
【0064】
図5は、本実施形態にかかる撮像装置10の塵埃除去方法をグラフで示す説明図である。本実施形態にかかる撮像装置10の塵埃除去方法では、まず共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数Fr1まで下げる。
【0065】
周波数をFr1まで下げると、今度は共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ高い周波数Fr2まで上げる。
【0066】
このように周波数を制御することで、本実施形態にかかる撮像装置10は、振動部材172に付着した塵埃の除去に充分な振動エネルギーを、圧電素子171から振動部材172へ与えることができ、従来の塵埃除去方法に比べて効率的に振動部材172に付着した塵埃を除去することができる。
【0067】
図6及び図7は、圧電素子171に電圧を印加した際の振動部材172の振動分布を示す説明図である。図6は、圧電素子171に共振周波数Frの電圧を印加した際の振動部材172の振動分布を示したものであり、図7は、圧電素子171に共振周波数Frから離れた周波数Fr1の電圧を印加した際の振動部材172の振動分布を示したものである。
【0068】
図6及び図7に示したように、圧電素子171に共振周波数Frの電圧を印加した際には、振動部材172は大きく振動するが、圧電素子171に共振周波数Frから離れた周波数Fr1の電圧を印加した際には、振動部材172の振動は、共振周波数の電圧を印加した場合と比べて小さくなる。
【0069】
従来の塵埃除去方法では、圧電素子に対する、共振周波数より低い(または高い)周波数の電圧の印加から開始して、共振周波数を経て、共振周波数より高い(または低い)周波数の電圧の印加することで、振動部材を振動させて、振動部材に付着していた塵埃の除去を試みていた。
【0070】
しかし、この従来の塵埃除去方法では、振動部材の振動の振幅が徐々に大きくなった後に徐々に小さくなっていくので、振動部材に付着している塵埃が振動の節の方向に移動ささせられる。そして塵埃除去に十分な振動エネルギーが得られない領域に移動させられた塵埃は、振動部材が振動を止めた後でも振動部材から除去されずに滞留してしまい、本来ならば除去能力のある領域に付着している塵埃も除去できなくなってしまう可能性がある。図8は、従来の塵埃除去方法による問題点を示す説明図である。
【0071】
一方、本実施形態にかかる撮像装置10による塵埃除去方法では、塵埃除去開始時には共振周波数の電圧を圧電素子171に印加して振動部材172を振動させるので、本来除去可能なエリアに付着している塵埃は確実に除去ができる。図9は、本実施形態にかかる撮像装置10による塵埃除去方法を用いて、振動部材172に付着した塵埃を除去する様子を示す説明図である。
【0072】
また、撮像装置10の使用に伴う圧電素子171や振動部材172の劣化等の要因による共振周波数の変動を鑑み、まずは(設計時の)共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数Fr1まで下げる。そして周波数をFr1まで下げると、今度は共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ高い周波数Fr2まで上げる。このように周波数を変化させることにより、共振周波数が変化した場合であっても、振動部材172に付着した塵埃を効率的に除去することができる。
【0073】
図10は、従来の塵埃除去方法と、本発明の一実施形態にかかる撮像装置10による塵埃除去方法とを比較して示す説明図である。図10は、従来の塵埃除去方法を100とした場合の塵埃除去能力をグラフで示したものである。
【0074】
条件(1)〜(4)は、それぞれ、トランス153の比率を1:10、1:12、1:14、1:16にした場合の塵埃除去能力の従来比を示している。図10に示したように、本発明の一実施形態にかかる撮像装置10による塵埃除去方法は、従来の塵埃除去方法と比較して優れた塵埃除去能力を有することが分かる。
【0075】
<2.まとめ>
以上説明したように本発明の一実施形態にかかる撮像装置によれば、共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数Fr1まで下げる。そして周波数をFr1まで下げると、今度は共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ高い周波数Fr2まで上げる。
【0076】
このように、圧電素子171に印加する電圧の周波数を変化させることにより、簡易な構成であっても振動部材172に付着した塵埃を効率的に除去することができる。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
上記実施形態では、共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数Fr1まで連続的に下げ、続いて共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ高い周波数Fr2まで連続的に上げることで、振動部材172を振動させて、振動部材172に付着した塵埃を除去していたが、本発明はかかる例に限定されない。
【0079】
例えば、共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数Fr1まで連続的に下げる(または所定の周波数だけ高い周波数Fr2まで上げる)だけで振動部材172に付着した塵埃を充分に除去できる場合は、電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数Fr1まで下げる(または所定の周波数だけ高い周波数Fr2まで上げる)だけでもよい。
【0080】
また例えば、上記実施形態では、塵埃除去部134に設けられる圧電素子171は単一の圧電素子としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、塵埃除去部134には複数の圧電素子を設けてもよい。
【0081】
また例えば、上記実施形態では、共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加し、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ低い周波数Fr1まで連続的に下げているが、本発明は係る例には限定されない。例えば、共振周波数Frの電圧をトランス153から圧電素子171へ印加した後に、トランス153から圧電素子171へ印加する電圧の周波数を共振周波数から所定の周波数だけ離れた周波数としてもよい。このように駆動することで、振動部材172の破壊を防止したり、塵埃除去時の消費電力を少なくしたりすることができる。
【符号の説明】
【0082】
10 撮像装置
100 本体部
102 シャッタ
104 CMOSイメージセンサ
106 画像入力コントローラ
108 不揮発性メモリ
110 DSP・CPU
111 クロック発生部
112 圧縮処理回路
114 LCDドライバ
116 表示部
118 VRAM
120 メモリ
122 メディアコントローラ
124 記録メディア
126 操作部
128 ドライバ
130 モータ
132 バッテリ
134 塵埃除去部
142 CDS回路
144 A/D変換器
160 電源回路
171 圧電素子
172 振動部材
173 FPC
174 保持部
200 レンズ部
202 ズームレンズ
204 絞り
206 フォーカスレンズ
208 A/D変換器
210 レンズCPU
211 SIO
212 ROM
214 RAM
216、218 ドライバ
220、222 モータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材と、
前記振動部材を振動させる加振部と、
前記加振部の振動動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させ、該共振周波数から所定の周波数高い周波数または低い周波数まで連続して前記加振部を動作させることを特徴とする、撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させ、該共振周波数から所定の周波数高い周波数または低い周波数まで連続して前記加振部を動作させると、続いて前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させ、該共振周波数から所定の周波数低い周波数または高い周波数まで連続して前記加振部を動作させることを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記所定の周波数は、前記振動部材が、付着している塵埃を除去できる振動を確保できる周波数であることを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記所定の周波数は、前記共振状態における前記振動部材の振動の半値幅の振動を確保できる周波数であることを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材と、
前記振動部材を振動させる加振部と、
前記加振部の振動動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として前記加振部を動作させた後、該共振周波数から離れた周波数で前記加振部を動作させることを特徴とする、撮像装置。
【請求項6】
照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材を振動させる加振部に対し、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として動作させ、該共振周波数から所定の周波数高い周波数または低い周波数まで連続して前記加振部を動作させる制御ステップを備えることを特徴とする、塵埃除去方法。
【請求項7】
照射される光を電気信号に変換する撮像素子の前面に配置される振動部材を振動させる加振部に対し、前記振動部材が共振状態となる共振周波数を起点として動作させた後、該共振周波数から離れた周波数で前記加振部を動作させる制御ステップを備えることを特徴とする、塵埃除去方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61472(P2013−61472A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199553(P2011−199553)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】