説明

撮影用照明装置および撮像装置

【課題】移動している被写体を撮影する場合に発光体を長く発光させると、照明された被写体が画面の中を流れるように撮影されてしまい、違和感を与える。
【解決手段】電子カメラ1は、被写体に向けて照明光を発するLED16と、LEDドライバ13と、撮像素子12と撮像素子を駆動するCCDドライバ13と、CPU14を備える。CPU14は、カメラに設定されている露光時間内で、LED16の発光輝度を変化させるようにLEDドライバ15を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影時に被写体を照明する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影時に被写体を照明する照明装置において、発光体としてLEDを備えるものが知られている(特許文献1参照)。特許文献1には、キセノンランプおよびLEDを備えた照明装置が開示されており、キセノンランプから発せられるフラッシュ光の色温度を補正するために、赤色光を発するLEDや青色光を発するLEDを点灯させる技術が記載されている。LEDの発光量は、被写体距離や色温度補正量に応じて点灯(発光)時間を長くすることが図示(図4〜図6)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−206942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動している被写体を撮影する場合に発光体を長く発光させると、照明された被写体が画面の中を流れるように撮影されてしまい、撮影画像を観察する者に違和感を与えてしまう。とくに、動画撮影のように1フレーム当たりのシャッター秒時を1/30秒程度とし、複数フレームを連続して撮影する場合などには問題となりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、撮影用照明装置は、被写体に向けて照明光を発する発光部と、カメラに設定されている露光時間内で、発光部の発光輝度を変化させるように制御する制御部とを備える。
本発明の第2の態様によると、第1の態様の撮影用照明装置において、発光部は電流制御型であり、発光部へ駆動電流を供給する電流供給部をさらに備え、制御部は、カメラに設定されている露光時間内で発光部の発光輝度を変化させる電流を発光部へ供給するように電流供給部を制御するのが好ましい。
本発明の第3の態様によると、第2の態様の撮影用照明装置において、制御部は、発光部へ供給される電流値が変化するように電流供給部を制御するのが好ましい。
本発明の第4の態様によると、第2または3の態様の撮影用照明装置において、発光部は複数の発光体を有し、制御部は、電流が供給される発光体の数が変化するように電流供給部を制御するのが好ましい。
本発明の第5の態様によると、第1〜4のいずれか1の態様の撮影用照明装置において、制御部は、露光時間内で、発光部の発光輝度が発光開始時より発光終了時の方が高くなるように制御するのが好ましい。
本発明の第6の態様によると、第5の態様の撮影用照明装置において、制御部は、露光時間内における第1の発光時間を第1の発光輝度とし、第1の発光時間に連続する第2の発光時間を第1の発光輝度より高い第2の発光輝度とするように制御するのが好ましい。
本発明の第7の態様によると、第6の態様の撮影用照明装置において、制御部は、第1の発光時間より第2の発光時間の方が短くなるように制御するのが好ましい。
本発明の第8の態様によると、第6または7の態様の撮影用照明装置において、第2の発光時間は、露光時間終了直前の所定時間内に含まれるのが好ましい。
本発明の第9の態様によると、第1〜8のいずれか1の態様の撮影用照明装置において、制御部は、露光時間が所定シャッター秒時より長い場合に発光部の発光輝度を変化させるように制御するのが好ましい。
本発明の第10の態様によると、第1〜8のいずれか1の態様の撮影用照明装置において、制御部は、カメラが動画撮影モードに設定されている場合に、フレームごとに発光部の発光輝度を変化させるように制御するのが好ましい。
本発明の第11の態様によると、第10の態様の撮影用照明装置において、制御部は、カメラが動画撮影モードに設定されている場合に、少なくとも各フレームの露光時間外は発光部の発光を停止するように制御するのが好ましい。
本発明の第12の態様によると、第1の態様の撮影用照明装置において、制御部は、露光時間内で発光部の発光輝度が発光開始時から発光終了時まで徐々に高くなるように制御する第1の制御方法と、露光時間内における第1の発光時間を第1の発光輝度とし、第1の発光時間に連続する第2の発光時間を第1の発光輝度より高い第2の発光輝度とするように制御する第2の制御方法とを切替え可能に制御するのが好ましい。
本発明の第13の態様によると、カメラは、第1〜12のいずれか1の態様の撮影用照明装置を備える。
本発明の第14の態様によると、カメラは、被写体を撮像する撮像部と、撮像部の露光時間を制御する露光制御部と、撮影用照明部とを備え、撮影用照明部は、被写体に向けて照明光を発する発光部と、露光時間内で、発光部の発光輝度を変化させるように制御する制御部とを備える。
なお、上記発光部は発光手段、制御部は制御手段、電流供給部は電流供給手段、撮像部は撮像手段、露光制御部は露光制御手段、撮影用照明部は撮影用照明手段と置き換えてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明による撮影用照明装置やカメラでは、カメラに設定されている露光時間内で発光輝度を変化させるようにしたので、移動している被写体を照明する照明光を長く発光させても、撮影画像を観察する者が違和感を感じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態による電子カメラの要部構成を説明する図である。
【図2】LEDへ供給される駆動電流(発光輝度)と時間との関係、および撮像素子の電荷蓄積タイミングと時間との関係を説明する図である。
【図3】時系列に連続するフレームの撮影画像を例示する図である。
【図4】時系列に連続するフレームの撮影画像を例示する図である。
【図5】時系列に連続するフレームの撮影画像を例示する図である。
【図6】変形例においてLEDへ供給される駆動電流(発光輝度)と時間との関係、および撮像素子の電荷蓄積タイミングと時間との関係を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による電子カメラの要部構成を説明する図である。図1において、電子カメラ1は、撮像レンズ11と、撮像素子12と、CCDドライバ13と、CPU14と、LEDドライバ15と、LED16と、電源回路17と、照明光レンズ18と、レリーズスイッチ19とを含む。
【0009】
撮像レンズ11は、撮像素子12の撮像面上に被写体像を結像させる。撮像素子12は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどによって構成され、撮像面に入射されている光量に応じた電荷を画素単位で蓄積する。すなわち、撮像素子12は被写体を撮像する。撮像素子12に蓄積された電荷は、CCDドライバ(駆動回路)13から供給されるタイミング信号に応じて不図示の画像処理回路へ送出(転送)され、画像処理回路によって所定の信号処理が施される。
【0010】
CCDドライバ13は、CPU14からの指令により上記撮像素子12を駆動するタイミング信号を生成し、生成した駆動信号を撮像素子12へ供給する。CPU14は、CCDドライバ13を含む電子カメラ1内の各ブロックへ制御信号を送出し、電子カメラ1のカメラ動作を制御する。CPU14は、レリーズスイッチ19から操作信号が入力されると、電子カメラ1に撮影動作を開始させるように構成されている。なお、電子カメラ1は、レリーズ操作信号が入力されると1回の撮影を行う静止画撮影モードと、レリーズ操作信号が入力されると所定のフレームレートで複数フレームの撮影を繰り返す動画撮影モードとを有する。
【0011】
LEDドライバ(駆動回路)15は、LED16を発光させるための駆動電流を生成し、CPU14からの指令に応じて駆動電流をLED16へ供給する。LED16は、いわゆる白色光を発するLEDによって構成されている。周知のように、LEDはその定格範囲において駆動電流および発光強度(光パワー)間に比例関係を有する電流制御型デバイスである。CPU14によってLEDドライバ15からLED16へ供給される駆動電流の値が指示されることにより、LED16から発せられる光量が制御される。
【0012】
LED16から発せられた光は、照明光レンズ18を介して被写体方向へ射出され、主要被写体を照明する。電源回路17は、電子カメラ1内の各ブロックへ必要な電力を供給する。
【0013】
CPU14は、LED16の発光が許可されている場合、LEDドライバ15に対して撮影時にLED16を発光させるように指示する。LED16の発光は以下の場合に許可される。
1.電子カメラ1が不図示の測光回路で検出される主要被写体の輝度に応じてLED16の発光要否を決定する「オートモード」に設定されている状態で、CPU14が発光要を決定した場合
2.電子カメラが上記主要被写体の輝度にかかわらずLED16を発光させる「強制発光モード」に設定されている場合
【0014】
本発明は、LED16を発光させるためにLED16へ供給する駆動電流に特徴を有する。
【0015】
図2は、電子カメラ1が動画撮影モードに設定されている状態において、LED16へLEDドライバ15から供給される駆動電流(発光輝度)と時間との関係、および撮像素子12の電荷蓄積タイミングと時間との関係を説明する図である。図2において、駆動電流波形の横軸は時間を表し、駆動電流波形の縦軸は駆動電流を表す。また、電荷蓄積タイミング波形の横軸は時間を表し、電荷蓄積タイミング波形の縦軸は電荷蓄積/電荷転送状態を表す。
【0016】
CPU14は、レリーズスイッチ19からレリーズ操作信号が入力されると、たとえば、毎秒30フレームのフレームレートで撮像を開始させる。この場合のシャッター秒時(撮像素子12の電荷蓄積時間、露光時間)は、CPU14が不図示の測光回路で検出される被写体輝度、撮像素子12に設定されている撮像感度(ISO感度)を用いて周知の露出演算を行うことにより、絞り値とともに決定する。シャッター秒時は、上記フレームレート内に収まる範囲を上限にして、たとえば、1/60秒より長く設定される。CPU14は、露出演算によって得られるシャッター秒時が1/60秒より短い場合には、撮像素子12の撮像感度(ISO感度)を低下させることによって1/60秒より長いシャッター秒時を確保する。
【0017】
タイミングt0において、CPU14は撮像素子12による電荷蓄積開始をCCDドライバ13へ指示するとともに、LED16へ電流値aの駆動電流を供給するようにLEDドライバ15へ指示する。
【0018】
電荷蓄積を終了するタイミングt2より所定時間前のタイミングt1において、CPU14は、LED16へ供給する駆動電流を電流値aから電流値bへ増加させるようにLEDドライバ15へ指示する。これにより、LED16による発光輝度がシャッター秒時(この場合はタイミングt0〜タイミングt2までの電荷蓄積時間)内でステップ状に増加する。すなわち、露光時間終了直前の所定時間内にタイミングt1からタイミングt2の発光時間が含まれる。
【0019】
タイミングt2において、CPU14は撮像素子12による電荷蓄積を終了させるとともに、撮像素子12に蓄積された電荷の転送を行うようにCCDドライバ13へ指示する。CPU14はさらに、LED16への電流供給を停止するようにLEDドライバ15へ指示する。これにより、非電荷蓄積時にLED16による発光が停止される。
【0020】
上記の制御は、タイミングt0からタイミングt1までの時間(第1の発光時間)のLED16の発光輝度(第1の発光輝度)より、タイミングt0からタイミングt1までの時間(第1の発光時間)に連続するタイミングt1からタイミングt2までの時間(第2の発光時間)のLED16の発光輝度(第2の発光輝度)の方が高いことを示す。言い換えれば、発光開始時のLED16の発光輝度より発光終了時のLED16の発光輝度の方が高い。
【0021】
電荷転送終了後に次フレームの撮像を開始するタイミングt3において、CPU14は撮像素子12による電荷蓄積開始をCCDドライバ13へ指示するとともに、LED16へ電流値aの駆動電流を供給するようにLEDドライバ15へ指示する。以降同様に、撮像素子12による電荷蓄積中にLED16の発光輝度を高めるように供給電流をステップ状に変化させ、撮像素子12による電荷蓄積終了時にはLED16の発光を停止させる動作を繰り返す。
【0022】
CPU14は、レリーズスイッチ19からレリーズ操作信号が再び入力されると、その時点において撮像素子12で行われているフレームの電荷蓄積および蓄積電荷の転送が終了すると、一連の動画撮影を終了する。
【0023】
上述した1フレーム当たりのLED16の発光量は、上記露出演算時にCPU14によって決定される。CPU14は、電流値aが供給された状態でLED16が発する光の時間積算値、および電流値bが供給された状態でLED16が発する光の時間積算値の和が決定した1フレーム当たりの光量となるように、LED16へ供給すべき電流値aおよび電流値bを決定する。
【0024】
LED16の発光強度(輝度)と駆動電流の関係は、あらかじめ実測結果がテーブル化されCPU14内の不揮発性メモリに格納されている。CPU14は発光強度(輝度)を引数として上記テーブルを参照して必要な駆動電流を決定し、この電流値をLED16へ供給するようにLEDドライバ15へ指示する。
【0025】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)動画撮影モードに設定され、LED16の発光が許可されている電子カメラ1は、CPU14によって以下のように制御される。すなわち、撮影時にシャッター秒時を1/60秒より長く設定し、撮像素子12による電荷蓄積開始タイミングt0からタイミングt1まで電流値aを供給してLED16を発光させ、タイミングt1から撮像素子12による電荷蓄積終了タイミングt2まで電流値b(ただしb>a)を供給してLED16を発光させる。
【0026】
これにより、主要被写体を照明する光量が電荷蓄積時間(露光時間)の途中でステップ状に増加する。この結果、移動する被写体を撮影する場合にタイミングt1からタイミングt2までに撮像される被写体像の輪郭が、タイミングt0からタイミングt1までに撮像される被写体像の輪郭よりはっきりするので、撮影画像の観察者にとって被写体が移動していることがわかりやすくなり、いわゆる後幕シンクロ撮影のように、違和感を抑えた画像が得られる。
【0027】
図3〜図5は、時系列に連続するフレームの撮影画像を例示する図である。図3〜図5において、左から右方向へ移動する同一の被写体が、三脚などに固定された電子カメラ1で撮影されている。図3における像31は、当該フレームにおいてタイミングt0からタイミングt1まで(照明光が低輝度状態)に撮像される被写体像に対応し、像32は、タイミングt1からタイミングt2まで(照明光が高輝度状態)に撮像される被写体像に対応する。図4における像41は、当該フレームにおいてタイミングt0からタイミングt1まで(照明光が低輝度状態)に撮像される被写体像に対応し、像42は、タイミングt1からタイミングt2まで(照明光が高輝度状態)に撮像される被写体像に対応する。図5における像51は、当該フレームにおいてタイミングt0からタイミングt1まで(照明光が低輝度状態)に撮像される被写体像に対応し、像52は、タイミングt1からタイミングt2まで(照明光が高輝度状態)に撮像される被写体像に対応する。
【0028】
もし、撮像素子12の電荷蓄積時においてLED16の発光輝度を一定にして図3〜図5の場合と同様の撮影を行うと、撮影画像の観察者には各フレームにおける被写体像の輪郭が一定に観察されるので、当該フレームにおいて被写体の移動方向がわからなくなってしまう。これに対して本実施の形態では、撮像素子12による電荷蓄積時において照明光の輝度を高めるように変化させることで、時間的に後から撮像される被写体像の輪郭がよりはっきりし、被写体の移動方向がわかるように撮影することができる。
【0029】
(2)タイミングt0からタイミングt1まで(照明光が低輝度状態)の時間に比べて、タイミングt1からタイミングt2まで(照明光が高輝度状態)の時間を短くしたので、被写体像の輪郭をはっきりさせる部分を短くし、被写体像の中でより強調させることができる。これにより、上記(1)の作用効果を十分に発揮させることができる。
【0030】
(3)シャッター秒時を1/60秒より長く設定するように撮像素子12の撮像感度を変更したので、被写体輝度が高めの場合にも上記(1)の撮影を行うことができる。
【0031】
(変形例)
設定されているシャッター秒時に対応する露光時間の範囲において、LED16による発光輝度を徐々に増加させるようにしてもよい。図6は、この場合にLED16へLEDドライバ15から供給される駆動電流(発光輝度)と時間との関係、および撮像素子12の電荷蓄積タイミングと時間との関係を説明する図である。図6において、駆動電流波形の横軸は時間を表し、駆動電流波形の縦軸は駆動電流を表す。また、電荷蓄積タイミング波形の横軸は時間を表し、電荷蓄積タイミング波形の縦軸は電荷蓄積/電荷転送状態を表す。
【0032】
CPU14は、レリーズスイッチ19からレリーズ操作信号が入力された以降のタイミングt0において、撮像素子12による電荷蓄積開始をCCDドライバ13へ指示するとともに、LED16へ駆動電流の供給を開始するようにLEDドライバ15へ指示する。
【0033】
LEDドライバ15は、電荷蓄積を終了するタイミングt2においてLED16へ供給する駆動電流値が最大値cになるように、LED16へ供給する駆動電流を徐々に増加させる。
【0034】
タイミングt2において、CPU14は撮像素子12による電荷蓄積を終了させるとともに、撮像素子12に蓄積された電荷の転送を行うようにCCDドライバ13へ指示する。CPU14はさらに、LED16への電流供給を停止するようにLEDドライバ15へ指示する。これにより、非電荷蓄積時にLED16による発光が停止される。
【0035】
電荷転送終了後に次フレームの撮像を開始するタイミングt3において、CPU14は撮像素子12による電荷蓄積開始をCCDドライバ13へ指示するとともに、LED16へ駆動電流の供給を開始するようにLEDドライバ15へ指示する。以降同様に、撮像素子12による電荷蓄積中にLED16の発光輝度を徐々に高めるように供給電流を徐々に変化させ、撮像素子12による電荷蓄積終了時にはLED16の発光を停止させる動作を繰り返す。
【0036】
このように、撮像素子12による電荷蓄積時において照明光の輝度を徐々に高めるように変化させることで、各フレームにおける被写体像の輪郭が電荷蓄積時間(露光時間)の経過とともに徐々にはっきりするので、撮影画像の観察者に被写体の移動方向がわかるように撮影することができる。なお、この場合にも1フレーム当たりのLED16の発光量は上記露出演算時にCPU14によって決定される。CPU14は、LED16が発する光の時間積算値が決定した1フレーム当たりの光量となるように、LED16へ供給すべき駆動電流の最大値cを決定する。
【0037】
駆動電流の増加率は図6のように一定でなくてもよく、時間とともに増加率を変化させる構成にしてもよい。たとえば、発光開始タイミングt0からの経過時間をtで表す場合に、tnやαtで示される(ただし、n、αは定数)増加率でもよい。
【0038】
また、設定されているシャッター秒時に対応する露光時間の範囲において、LED16にパルス発光を繰り返し行わせて必要な発光光量を得るようにしてもよい。この場合には、撮像素子12による電荷蓄積時において発光パルス列を構成する発光パルス幅(時間)を徐々に広げるPWM(パルス幅変調)制御を行うようにLEDドライバ15を構成し、このLEDドライバ15がLED16へパルス状の駆動電流を供給する。PWM制御によって電荷蓄積時間(露光時間)の経過とともに照明光の発光密度が徐々に高められるので、各フレームにおける被写体像の輪郭は電荷蓄積時間(露光時間)の経過とともに徐々にはっきりする。この結果、撮影画像の観察者に被写体の移動方向がわかるように撮影することができる。
【0039】
LED16の発光開始タイミングは、撮像素子12による電荷蓄積開始タイミングt0と必ずしも揃えなくてもよい。また、LED16の発光終了タイミングは、撮像素子12による電荷蓄積終了タイミングt2と必ずしも揃えなくてもよい。
【0040】
以上の説明では、CPU14が露出演算時に1フレーム当たりのLED16の発光量を決定し、決定した発光量に基づいてLED16へ供給すべき駆動電流値を決定するようにした。この代わりに、LED16による発光が開始された以降に調光素子(不図示)で検出される反射光の時間積分値をモニタし、時間積分値が所定の値に到達した場合にLED16への電流供給を停止させる構成にしてもよい。
【0041】
また、上述した説明では、LED16へ供給する駆動電流を変化させて照明光の輝度を徐々に高めるようにした。LED16が複数個のLEDによって構成されている場合には、個々のLEDに供給する電流値を増加させる代わりに、LED1つ当たりの発光輝度を変えないで同時に発光させるLEDの数を増加させることによって照明光の輝度を高める構成としてもよい。なお、個々のLEDに供給する電流値の増加と、同時に発光させるLEDの数の増加とを組合わせてもよい。
【0042】
電子カメラ1が動画撮影モードに設定されている場合を例に説明したが、シャッター秒時が、たとえば、1/30秒より長く設定されている場合の静止画撮影モードにも本発明を適用できる。また、動画撮影専用のビデオカメラにも適用できる。
【0043】
静止画撮影モードに着目する場合には、電子カメラに限らずフィルムカメラによる撮影時にも本発明を適用できる。
【0044】
上記では、シャッター秒時を1/60秒より長く設定し、その露光時間内でLED16の輝度を変化させる例を説明した。シャッター秒時が1/60秒より短い場合には、LED16の輝度を一定としてもよい。すなわち、シャッター秒時が1/60秒以上の場合はLED16の輝度を変化させ、シャッター秒時が1/60秒未満の場合はLED16の輝度を一定とするようにしてもよい。なお、シャッター秒時が1/60秒未満とは、シャッタースピードがシャッター秒時1/60より速いことである。
【0045】
上記実施の形態では、LED16による発光輝度を2段階でステップ状に増加させる方法と、上記変形例では、LED16による発光輝度を徐々に増加させる方法を説明した。CPU14は、この2つの方法を切替え可能に制御するようにしてもよい。例えば、2つの方法を切替える切替えスイッチを設けたり、カメラのメニュー画面上で2つの方法のうち一つを選択できるようにしてもよい。
【0046】
撮影用照明装置(LED16およびLEDドライバ15)が電子カメラ1に内蔵される場合を例にあげて説明したが、撮影用照明装置をカメラ外付けタイプの装置として構成し、カメラと組み合わせて使用する場合にも本発明を適用できる。
【0047】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0048】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2005年第038920号(2005年2月16日出願)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に向けて照明光を発する発光部と、
カメラに設定されている露光時間内で、前記発光部の発光輝度を変化させるように制御する制御部とを備える撮影用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影用照明装置において、
前記発光部は電流制御型であり、
前記発光部へ駆動電流を供給する電流供給部をさらに備え、
前記制御部は、カメラに設定されている露光時間内で前記発光部の発光輝度を変化させる電流を前記発光部へ供給するように前記電流供給部を制御する撮影用照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮影用照明装置において、
前記制御部は、前記発光部へ供給される電流値が変化するように前記電流供給部を制御する撮影用照明装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の撮影用照明装置において、
前記発光部は複数の発光体を有し、
前記制御部は、前記電流が供給される前記発光体の数が変化するように前記電流供給部を制御する撮影用照明装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、
前記制御部は、前記露光時間内で、前記発光部の発光輝度が発光開始時より発光終了時の方が高くなるように制御する撮影用照明装置。
【請求項6】
請求項5に記載の撮影用照明装置において、
前記制御部は、前記露光時間内における第1の発光時間を第1の発光輝度とし、前記第1の発光時間に連続する第2の発光時間を前記第1の発光輝度より高い第2の発光輝度とするように制御する撮影用照明装置。
【請求項7】
請求項6に記載の撮影用照明装置において、
前記制御部は、前記第1の発光時間より前記第2の発光時間の方が短くなるように制御する撮影用照明装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の撮影用照明装置において、
前記第2の発光時間は、前記露光時間終了直前の所定時間内に含まれる撮影用照明装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、
前記制御部は、前記露光時間が所定シャッター秒時より長い場合に前記発光部の発光輝度を変化させるように制御する撮影用照明装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、
前記制御部は、カメラが動画撮影モードに設定されている場合に、フレームごとに前記発光部の発光輝度を変化させるように制御する撮影用照明装置。
【請求項11】
請求項10に記載の撮影用照明装置において、
前記制御部は、カメラが動画撮影モードに設定されている場合に、少なくとも各フレームの露光時間外は前記発光部の発光を停止するように制御する撮影用照明装置。
【請求項12】
請求項1に記載の撮影用照明装置において、
前記制御部は、前記露光時間内で前記発光部の発光輝度が発光開始時から発光終了時まで徐々に高くなるように制御する第1の制御方法と、前記露光時間内における第1の発光時間を第1の発光輝度とし、前記第1の発光時間に連続する第2の発光時間を前記第1の発光輝度より高い第2の発光輝度とするように制御する第2の制御方法とを切替え可能に制御する撮影用照明装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の撮影用照明装置を備えるカメラ。
【請求項14】
被写体を撮像する撮像部と、
前記撮像部の露光時間を制御する露光制御部と、
撮影用照明部とを備え、
前記撮影用照明部は、被写体に向けて照明光を発する発光部と、前記露光時間内で、前記発光部の発光輝度を変化させるように制御する制御部とを備えるカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−212145(P2012−212145A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111003(P2012−111003)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【分割の表示】特願2007−503671(P2007−503671)の分割
【原出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】