説明

操作入力装置

【課題】専用のスイッチを設けることなく、スライド部の開閉状態を検出できる、操作入力装置の提供。
【解決手段】スライド部120が閉方向にスライドした閉状態でケース60に格納され、スライド部120が開方向にスライドすることによりケース60の開口部61から突出する位置まで変位し、スライド部120が開方向にスライドした開状態で作用する操作入力に応じて開口部61に対して内方に変位する、方向キー10と、方向キー10の位置を非接触で検出し、方向キー19の変位量に応じた信号を出力する71a等のコイルとを備える、操作入力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作入力の作用により変位する操作部材を備え、その変位量に応じた信号を出力する操作入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、キーボードのキートップ面に対して平行な方向に蓋体部をスライド移動させることにより、キートップ面を露出または遮蔽する情報処理装置において、蓋体部のスライド移動に応じてキーボードのキートップを上下に昇降させる手段を備えるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この情報処理装置には、蓋体部のスライド移動によってキートップが押し下げられたときにオンするメンブレンスイッチが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−58299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述の情報処理装置のように単にキートップのオン/オフ信号を得るのではなく、操作入力の作用により変位する操作部材を備え、その変位量(言い換えれば、操作入力量)に応じた信号を出力する操作入力装置の開発が進んでいる。
【0005】
しかしながら、このような操作入力装置に、スライド部が開方向にスライドすることにより筐体の開口部から操作部材が突出するスライド機構を採用する場合、従来の技術では、メンブレンスイッチのような専用のスイッチを設けなければ、スライド部の開閉状態を検出することができない。
【0006】
そこで、本発明は、専用のスイッチを設けることなく、スライド部の開閉状態を検出できる、操作入力装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る操作入力装置は、
スライド部が閉方向にスライドした閉状態で筐体に格納され、前記スライド部が開方向にスライドすることにより前記筐体の開口部から突出する位置まで変位し、前記スライド部が開方向にスライドした開状態で作用する操作入力に応じて前記開口部に対して内方に変位する、操作部材と、
前記操作部材の位置を非接触で検出し、前記操作部材の変位量に応じた信号を出力する検出手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、専用のスイッチを設けることなく、スライド部の開閉状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である操作入力装置1の分解斜視図である。
【図2】スライド部120が閉方向にスライドした閉状態における操作入力装置1の断面図である。
【図3】スライド部120が開方向にスライドした開状態における操作入力装置1の断面図である。
【図4】方向キー10をコイル71a側に傾ける操作入力が付与された傾倒状態での操作入力装置1の断面図である。
【図5】方向キー10の実ストローク量に対して変化するインダクタンスとキャパシタンスのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。本発明の一実施形態である操作入力装置は、操作者の手指等による力を受けて、その受けた力に応じて変化する出力信号を出力する操作インターフェイスである。その出力信号に基づいて操作者による操作入力が検出される。操作入力の検出によって、その検出された操作入力に対応する操作内容をコンピュータに把握させることができる。
【0011】
例えば、ゲーム機、テレビ等の操作用リモートコントローラ、携帯電話や音楽プレーヤーなどの携帯端末、パーソナルコンピュータ、電化製品などの電子機器において、そのような電子機器に備えられるディスプレイの画面上の表示物(例えば、カーソルやポインタなどの指示表示や、キャラクターなど)を、操作者が意図した操作内容に従って、移動させることができる。また、操作者が所定の操作入力を与えることにより、その操作入力に対応する電子機器の所望の機能を発揮させることができる。
【0012】
一方、通常、コイル(巻線)等のインダクタのインダクタンスLは、係数をK、透磁率をμ、コイルの巻数をn、断面積をS、磁路長をdとした場合、
L=KμnS/d
という関係式が成り立つ。この関係式から明らかなように、コイルの巻数や断面積といった形状に依存するパラメータを固定した場合、周囲の透磁率と磁路長の少なくともいずれかを変化させるかによって、インダクタンスが変化する。
【0013】
このインダクタンスの変化を利用する操作入力装置の実施例について以下説明する。この操作入力装置は、X,Y,Z軸によって定まる直交座標系において、Z座標が正の方向から入力される操作者の力を受け付けるものである。操作入力装置は、操作入力の作用によりコイルとの位置関係が変化することによって、そのコイルのインダクタンスを変化させる変位部材を備えている。操作入力装置は、そのインダクタンスの大きさに応じて変化する所定の信号に基づいて、操作者の操作入力により変位する変位部材の動きを検知することにより、その操作入力を検出することができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態である操作入力装置1の分解斜視図である。図2は、スライド部120が閉方向にスライドした閉状態における操作入力装置1の断面図である。図3は、スライド部120が開方向にスライドした開状態における操作入力装置1の断面図である。図4は、スライド部120が開方向にスライドした開状態で作用する操作入力によって方向キー10が変位してコイル71a側に傾いた状態における操作入力装置1の断面図である。スライド部120は、例えば、操作入力装置1が搭載される上述のゲーム機等の電子機器の蓋部材であって、当該電子機器が備えるスライド機構によって方向キー10の操作面13に対して平行なXY平面内をスライドするものである。操作入力装置1は、操作入力の作用により変位する方向キー10を備え、その変位量に応じた信号を出力するものである。
【0015】
次に、操作入力装置1の構成について説明する。
【0016】
操作入力装置1は、例えば、複数のコイル(本構成の場合、4個のコイル71a,72a,73a,74a)が配置される配置面を有する基板50を有する。基板50は、XY平面に平行な配置面を有する基部である。基板50は、例えば樹脂製の基板(具体的には、FR−4基板)でもよいし、絶縁性を確保すれば、ヨークとして機能させるために鋼板や珪素鋼板などを基材にした鉄板基板でもよい。
【0017】
4個のコイル71a,72a,73a,74aは、三次元の直交座標系の基準点である原点Oとの距離が等しい点を結んでできる仮想的な円の円周方向に並べられている。コイル71a等は、操作者の力のベクトルを算出しやすくするという点で、その円周方向に等間隔に配置されることが好ましい。各コイルが互いに同特性の場合、隣接する2つのコイルの重心間の距離が等しければよい。各コイルは、X(+),X(−),Y(+),Y(−)の4方向の各X,Y軸上に90°毎に配置されている。X(−)方向は、XY平面上でX(+)方向に対して180°反対向きの方向であり、Y(−)方向は、XY平面上でY(+)方向に対して180°反対向きの方向である。
【0018】
なお、コイル71a〜74aは、X軸とY軸に挟まれるXY平面内の斜め45°の4方向に、円周方向に90°毎に配置されていてもよい。例えば、コイル73aは第1象限に配置され、コイル74aは第2象限に配置され、コイル71aは第3象限に配置され、コイル72aは第4象限に配置される。
【0019】
方向キー10は、図2に示されるように、スライド部120が閉方向にスライドした閉状態でケース60に格納され、図3に示されるように、スライド部120が閉方向に対して反対向きの開方向にスライドすることによりケース60の上面に設けられた開口部61から突出する位置まで変位する操作部材である。そして、図4に示されるように、方向キー10は、スライド部120が開方向にスライドした開状態で作用する操作入力によって変位する操作部材であって、その操作入力の入力量に応じて、ケース60の開口部61からケース60の内方への変位量が連続的に変化するものである。
【0020】
操作入力装置1は、方向キー10の位置を非接触で検出し、方向キー10の変位量に応じた信号を出力する検出手段を備える。操作入力装置1は、この検出手段として、方向キー10の変位量及び変位方向によりインダクタンスがそれぞれ変化するコイル71a〜74aと、検出部160(図1参照)とを備える。
【0021】
コイル71a〜74aは、方向キー10の下面14に固定されたヨーク71b〜74bによって方向キー10の位置を非接触で検出し、方向キー10の変位量に応じた信号波形を出力する検出部材である。コイル71a〜74aは、例えば、円筒状に線材(導線)が巻かれたものである。コイル71a〜74aの形状は円筒状が望ましいが、筒状であればよく、例えば角筒状でもよい。また、コイル71a〜74aは、組み付け性や耐衝撃性を向上させる点で、ボビンに巻かれたものでもよい。
【0022】
ヨーク71b等は、方向キー10のフランジ12の下面に、基板50上のコイル71a等と同じ数だけ設けられ、方向キー10の変位に連動して変位する。方向キー10は、コイル71a等に対して操作者の力が入力されてくる側に設けられており、コイル71a等の上端面に対向する下面14と、操作者の力が直接又は間接的に作用しうる操作面13とを有する板状部材である。ヨークは、比透磁率が1よりも高い材質であればよい。例えば、比透磁率は1.001以上あると好適であり、具体的には、鋼板(比透磁率5000)などが好適である。ヨークは、方向キー10と別部品にするのではなく、フェライトなどで一体にすることもできる。ヨークとコイルは、一対一で、互いに対向する位置に配置される。方向キー10は、操作者の力が操作面13に作用することにより、コイル71a等の上端面の上方におけるヨーク71b等の位置を変化させて、コイル71a等のインダクタンスを変化させる。
【0023】
ヨーク71b等は、操作入力の作用によりコイル71a等の内部(すなわち、中空部内)をコイル71a等の中心軸の軸線方向に変位することによって、コイル71a等のインダクタンスを変化させるコアとして機能するように、コア状に形成されたものでもよい。この場合、ヨーク71b等は、コイル71a等が円筒状であれば、円柱状の磁性体であることが好ましく、コイル71a等が角筒状であれば、角柱状の磁性体であることが好ましい。ヨーク71b等がコア形状の場合、方向キー10は、操作者の力が操作面13に作用することにより、コイル71a等の中空部内におけるヨーク71b等の位置を変化させて、コイル71a等のインダクタンスを変化させる。
【0024】
各コイルのインダクタンスをそれぞれ検出することによって、直交座標系の原点Oに対する操作入力の入力方向(XY平面における操作入力の入力位置)とその操作入力の大きさ(Z方向への押し込み量)を演算することができる。
【0025】
リターンバネ40は、方向キー10を下方に変位可能に支持する支持部材である。リターンバネ40は、方向キー10の下面14に配置されたヨーク71b等と基板50に配置されたコイル71aとの間隔が弾性的に変化するように、下面14と基板50との対向方向に方向キー10を弾性的に支持する弾性支持部材である。
【0026】
リターンバネ40は、基板50と方向キー10の下面14との間に設置されるとよい。リターンバネ40は、方向キー10に操作者の力が作用しても、方向キー10のヨーク71b〜74bと基板50のコイル71a〜74aとが接触しないように、方向キー10を弾性的に支持する。リターンバネ40は、Z軸に直交するXY平面に対して傾き可能に方向キー10を支持し、Z軸方向に移動可能に支持する。また、リターンバネ40は、方向キー10の下面14が基板50上のコイル71a等から離れる方向に付勢された状態で、方向キー10を支持する付勢支持部材である。
【0027】
リターンバネ40は、操作者の力が作用していない状態で方向キー10の操作面13がXY平面に平行になるように、方向キー10を弾性的に支持する。方向キー10の操作面13は、平らな面でもよいし、XY平面に対して凹状に形成された面でもよいし、XY平面に対して凸状に形成された面でもよい。操作面13を所望の形状に変更することによって、操作者の操作性を向上させることができる。また、方向キー10の操作面13は、円状でもよいし、楕円状でもよいし、多角形状でもよい。
【0028】
リターンバネ40は、ケース60の内部側から開口部61に向けて付勢するように設けられたコイルバネである。リターンバネ40を円錐コイルバネにすることで、バネの耐久性を向上させ、方向キー10を開口部61に対して傾斜させやすくできる。リターンバネ40は、方向キー10が操作されて降下したときに、方向キー10に力が付与されていない初期位置状態の高さ(すなわち、図3に示す位置)に戻す上向きの力を、方向キー10に常時付与している。リターンバネ40は、円錐状のコイルバネであるが、円筒状のコイルバネでも、無端状の弾性体(例えば、ゴム)でもよい。
【0029】
操作入力装置1は、図3に示されるように、方向キー10がケース60の内側に付勢して接触された状態で、ケース60に取り付けられる。すなわち、方向キー10は、ケース60の開口部61に下方に突出するように設けられたリブに当接して、リターンバネ40の反力によって支持されている。
【0030】
ケース60は、操作入力装置1が取り付けられる携帯電話などの電子機器の筐体である。操作入力装置1自体が、ケース60を備えていてもよい。ケース60の上面の開口部61の形状は、円状であるが、方向キー10の形状に合うように形成されていればよく、四角形や八角形などの多角形状であってもよい。
【0031】
ケース60によって、方向キー10がリターンバネ40の上方への付勢力に対して上方に移動可能な最大高さが決められる。方向キー10の最大ストローク量は、方向キー10の位置が非接触で検出可能な範囲内に設定される。つまり、この最大ストローク量に相当する分の空間は、ケース60内でまかなうことができる。また、スライド部120によって方向キー10が塞がれた閉状態では、方向キー10はケース60の開口部61から突出していないため、スライド部120側に肉盗み部を設ける必要もない。
【0032】
スライド部120は、ケース60の上面に沿ってスライドする。操作入力装置1自体が、スライド部120を備えていてもよい。スライド部120のスライド方向の端部には、スライド部120の下面が方向キー10の操作面13に沿ってスライドすることにより方向キー10を下方へ移動させることを容易にする、誘い形状121が設けられている。誘い形状121は、例えば、テーパー形状であり、曲面形状でもよい。方向キー10側にも、スライド部120のスライド方向の端部と接触する部分に、誘い形状が設けられていることが好ましい。
【0033】
検出部160は、コイル71a等のインダクタンスの変化を電気的に検出することで、ヨーク71b等の連続的に変化するアナログ変位量(言い換えれば、方向キー10の変位量(操作入力量))に応じた検出信号を出力する。検出部160は、操作入力装置1の基板50又は不図示の基板(例えば、操作入力装置1が搭載される上述のゲーム機等の電子機器の基板)に実装される検出回路によって構成されるとよい。
【0034】
以下、検出部160が、コイル71aのインダクタンスの変化として、所定のインダクタンス評価値の変化を検出する場合について説明する。なお、コイル72b,73b,74bのインダクタンスの変化についても同様に考えればよいため、その説明は省略する。
【0035】
例えば、検出部160は、コイル71aのインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を検出し、その物理量の検出値をヨーク71bの変位量に等価な値として出力する。また、検出部160は、コイル71aのインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を検出することによりコイル71aのインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値をヨーク71bの変位量に等価な値として出力するものでもよい。また、検出部160は、その物理量の検出値又はそのインダクタンスの算出値からヨーク71bの変位量を演算し、その変位量の演算値を出力するものでもよい。
【0036】
具体的には、検出部160は、パルス信号をコイル71aに供給することによって、コイル71aのインダクタンスの大きさに対応して変化する信号波形をコイル71aに発生させ、その信号波形に基づいてコイル71aのインダクタンスの変化を電気的に検出するとよい。
【0037】
例えば、コイル71aの上端面の上方における(又は、コイル71aの中空部内における)ヨーク71bの下方への変位量が増加するにつれて、コイル71a周辺の透磁率が増加し、コイル71aのインダクタンスが増加する。コイル71aのインダクタンスが増加するにつれて、パルス信号の供給によりコイル71aの両端に発生するパルス電圧波形の振幅も大きくなる。そこで、その振幅をコイル71aのインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量とすることで、検出部160は、その振幅を検出することによって、その振幅の検出値をヨーク71bの変位量に等価な値として出力することができる。また、検出部160は、その振幅の検出値からコイル71aのインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値をヨーク71bの変位量に等価な値として出力することもできる。
【0038】
また、コイル71aのインダクタンスが増加するにつれて、パルス信号の供給によりコイル71aに流れるパルス電流波形の傾きが緩やかになる。そこで、その傾きをコイル71aのインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量とすることで、検出部160は、その傾きを検出することによって、その傾きの検出値をヨーク71bの変位量に等価な値として出力することができる。また、検出部160は、その傾きの検出値からコイル71aのインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値をヨーク71bの変位量に等価な値として出力することもできる。
【0039】
このように、操作入力装置1は、スライド部120が閉方向にスライドした閉状態でケース60に格納され(図2参照)、スライド部120が開方向にスライドすることによりケース60の開口部61から突出する位置まで変位し(図3参照)、スライド部120が開方向にスライドした開状態で作用する操作入力に応じて開口部61に対してケース60の内方に変位する(図4参照)、操作部材として、方向キー10を備えている。また、方向キー10の位置を非接触で検出し、方向キー10の変位量に応じた信号を出力する検出手段として、コイル71a〜74及び検出部160を備えている。操作入力装置1は、このような構成を具備することにより、専用のスイッチを設けることなく、スライド部120の開閉状態を検出できる。
【0040】
例えば、スライド部120が閉方向にスライドした閉状態を示した図2の状態では、方向キー10は、スライド部120によって、リターンバネ40の上方への付勢力に抗してZ方向に均一の下向きの力で押された状態で維持されている。方向キー10の操作面13が全面にわたってスライド部120の下面に接することにより方向キー10全体が下向きに平行移動することによって、方向キー10に設置された全ヨークが基板50上の全コイルに近接する(全ヨークがコア形状の場合、全コイルの中空部内に進入する)。全コイルへの近接(全コイルの中空部内への進入)によって、全コイルを取り巻く周辺の透磁率が上昇し、全コイルの自己インダクタンスが略等しく最大値まで増加する。
【0041】
したがって、コイル71a〜74a又は検出部160は、ケース60への格納位置まで方向キー10が変位したときのインダクタンス評価値が全てのコイルについて所定時間以上継続的に検出されている状態を、スライド部120の閉状態として検出できる。一方、ケース60への格納位置まで方向キー10が変位したときのインダクタンス評価値がいずれかのコイルについて所定時間以上検出されなければ、スライド部120が開方向にスライドした開状態で作用した操作入力によって、方向キー10がケース60への格納位置まで変位したとみなして検出できる。つまり、ケース60への格納位置まで方向キー10が変位したときのインダクタンス評価値が全てのコイルについて所定時間以上検出されているか否かによって、スライド部120の開閉状態を検出できる。
【0042】
また、スライド部120が開方向にスライドした開状態を示した図3の状態では、方向キー10は、スライド部120によるZ方向の力を受けなくなるため、リターンバネ40の上方への付勢力によって、ケース60の開口部61から突出する位置まで変位する。方向キー10全体が上向きに平行移動することによって、方向キー10に設置された全ヨークが基板50上の全コイルから離れる。これにより、全コイルを取り巻く周辺の透磁率が減少するので、全コイルの自己インダクタンスが最小値まで減少する。
【0043】
したがって、コイル71a〜74a又は検出部160は、ケース60への格納位置まで方向キー10が変位したときのインダクタンス評価値と異なるインダクタンス評価値(例えば、ケース60への格納位置まで方向キー10が変位したときよりも小さいインダクタンス評価値)がいずれかのコイルについて検出されている状態を、スライド部120の開状態として検出できる。また、ケース60の開口部61に対して突出した位置まで方向キー10が変位したときのインダクタンス評価値がいずれかのコイルについて検出されている状態を、スライド部120の開状態として検出してもよい。
【0044】
また、図4は、方向キー10をコイル71a側に傾ける操作入力が付与された傾倒状態での操作入力装置1の断面図である。リターンバネ40の上方への付勢力に抗して、Z方向に下向きの力で押された方向キー10がフランジ12及び/又はリターンバネ40を介して基板50を支点に傾動することにより、ヨーク71bがコイル71aに近接する(ヨーク71bがコア形状の場合、コイル71aの中空部内に進入する)。コイル71aへの近接(コイル71aの中空部内への進入)によって、コイル71aを取り巻く周辺の透磁率が上昇し、コイル71aの自己インダクタンスが増加する。他の方向に傾けた場合も同様に考えることができる。したがって、コイル71a〜74a又は検出部160によって各コイルそれぞれについて検出されたインダクタンス評価値の大きさに基づいて、方向キー10の傾倒方向とストローク量が検出できる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。
【0046】
例えば、上述の操作入力装置1は、方向キー10に設置されたヨークに対向するように基板50に設置されたコイルのインダクタンスを検出することによって、方向キー10が操作入力によって下方に変位したときのストローク量を検知可能にするものである。しかしながら、例えば、基板50上のコイルをヨークに置き換え、方向キー10に設置されたヨークをコイルに置き換えてもよい。
【0047】
また、上述の操作入力装置1は、操作部材の変位によりインダクタンスが変化する検出部材として、コイルを使用するものであったが、操作部材の変位によりキャパシタンス(静電容量)が変化する検出部材として、一対の電極を使用するものでもよい。すなわち、上述の操作入力装置1において、基板50上のコイルを固定電極に置き換え、方向キー10に設置されたヨークを可動電極に置き換えればよい。この場合、基板50に設置された固定電極と方向キー10に設置された可動電極との間の静電容量を検出することによって、方向キー10が操作入力によって下方に変位したときのストローク量を検知できる。
【0048】
例えば、一対の電極の静電容量の変化として、所定の静電容量評価値の変化が検出される。各一対の電極又は検出部160は、ケース60への格納位置まで方向キー10が変位したときの静電容量評価値が全ての一対の電極について所定時間以上検出されているか否かによって、スライド部120の開閉状態を検出できる。
【0049】
ただし、図5に示されるように、上述の操作入力装置1のように方向キー10の変位をインダクタンスで検出する構成は、静電容量で検出する構成に比べて、方向キー10のストローク量を大きくしても検出リニアリティが確保できる点で有利である。これは、方向キー10のストローク量を設計上大きくしやすいということである。操作者によって方向キー10のストローク量が大きいということは、ストローク量を調整しながら操作するアナログ入力を行う際の操作感の向上をもたらす。
【0050】
また、方向キー10を弾性的に支持する支持部材は、リターンバネ40のような弾性部材に限らず、ゴム部材でもよいし、スポンジ部材でもよいし、空気や油が充填されたシリンダーでもよい。
【0051】
また、本発明の操作入力装置は、手指に限らず、手のひらで操作するものあってもよい。また、足指や足の裏で操作するものであってもよい。また、操作者が触れる面は、平面でも、凹面でも、凸面でもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 操作入力装置
10 方向キー
12 フランジ
13 操作面
14 下部(下面)
40 リターンバネ
50 基部
60 ケース
61 開口部
71a,72a,73a,74a コイル
71b,72b,73b,74b ヨーク
120 スライド部
121 傾斜部
160 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド部が閉方向にスライドした閉状態で筐体に格納され、前記スライド部が開方向にスライドすることにより前記筐体の開口部から突出する位置まで変位し、前記スライド部が開方向にスライドした開状態で作用する操作入力に応じて前記開口部に対して内方に変位する、操作部材と、
前記操作部材の位置を非接触で検出し、前記操作部材の変位量に応じた信号を出力する検出手段とを備え、前記検出手段は前記スライド部の開閉状態を検出する、操作入力装置。
【請求項2】
前記筐体の内部側から前記開口部に向けて付勢して前記操作部材を弾性的に支持する支持手段を備える、請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記支持手段は、同一の弾性部材によって、前記スライド部のスライドにより変位する前記操作部材を支持するとともに、前記操作入力により変位する前記操作部材を支持する、請求項2に記載の操作入力装置。
【請求項4】
前記操作部材は、前記操作入力の作用により、前記開口部に対して傾いて変位可能な、請求項1から3のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記操作部材が前記筐体への格納位置まで変位したときの評価値が所定時間以上検出されているか否かによって、前記スライド部の開閉状態を検出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記操作部材の位置を非接触で検出する部材全てについて、前記評価値が所定時間以上検出されているか否かによって、前記スライド部の開閉状態を検出する、請求項5に記載の操作入力装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記操作部材の変位によりインダクタンスが変化する検出部材を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記操作部材の変位によりキャパシタンスが変化する検出部材を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の操作入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−173881(P2012−173881A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33822(P2011−33822)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】