説明

操作者判別装置

【課題】 車両に乗車する操作者が運転席側に着座している操作者からの操作であるのか、助手席側に着座している操作者からの操作であるかを精度良く判定する事を課題とする。
【解決手段】 車載機の操作を行う入力手段と、前記入力手段からの操作に応じて表示を行う表示手段と、前記入力手段の周囲に配置され乗員の腕部を検出する複数のセンサからなる周囲センサと、前記複数のセンサの内、乗員の腕部を検出したセンサと乗員が入力手段に接触した位置に応じて操作者を判別する操作者判別手段と、を備えた事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は操作者判別装置に関し、より詳細には、操作画面上の映像に対する適切な操作を制御するための操作者判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中において、安全を期するために運転者はナビゲーション装置やDVD装置等の車載機器の操作を行う事が制限されている。ここで、運転者は車両の運転に専念すべきであるため、運転者が車両の運転操作を行なっている場合には、車載用ナビゲーション装置の各機能を実行するためのスイッチに制限をかけることが望ましい。
【0003】
しかしながら、従来の車載用ナビゲーション装置においては、車両の走行中は一律にスイッチ操作を制限するので、運転者はもちろんのこと、車両の運転に直接関与しない助手席の乗員も操作ができるスイッチが制限される。
このような問題を解決するために、特許文献1に記載された車載用ナビゲーション装置においては、表示画面を備える前面パネルの運転席側部分に、超音波の発信部と受信部とからなるセンサを設けている。このセンサは、車両の走行中に、発信部から超音波を放射する。車載ナビゲーション装置は、この超音波の放射領域を運転者の手が横切ったことを反射波の受信によって検出すると、表示画面のタッチスイッチや表示画面の周りに配置したパネルスイッチによる所定の操作を制限する。逆に、運転者の手や腕が超音波の放射領域を横切ることなくスイッチ操作が行なわれた場合、助手席の乗員によるスイッチ操作であると推測し、その場合には、タッチスイッチやパネルスイッチのスイッチ操作を可能としている。
【0004】
一方、技術文献2に記載された車載用ナビゲーション装置においては、運転者からは見え、助手席からは見えない運転席用映像表示と、助手席からは見え運転席からは見えない助手席用映像表示とが同一画面上で同時に行なわれる技術が提案されている。この様な技術を採用する事により、車両の走行中であってもナビゲーション装置による地図映像を運転者に見えるように表示し、DVD映像を助手席乗員に見えるように表示することが出来る。この技術を用いた制御装置においては、発光部と受光部が対向して配置され、表示部へ指などの物体が接近すると、発光部より発光された光が遮られ、受光部に光が到達しなくなりオフ状態となる。そこで、左右どちら側の受光部が先にオフ状態となるかを検出し、運転席が右側の場合、右側の受光部が先にオフ状態となった時は、運転者が操作を行ったと判断し、左側の受光部が先にオフ状態となった時は、助手席乗員が操作を行ったと判断する。この様にして、運転席映像及び助手席映像のいずれにも対応しえる操作スイッチが操作された場合であっても、運転席映像及び助手席映像に対して適切に制御を行なう事を可能としている。
【特許文献1】特開平9−292261号公報
【特許文献2】特開2006−215543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2の制御装置では、運転者と助手席乗員の操作を判断して操作者に応じた制御を行なっている。しかし、特許文献1において、運転者によっては運転者が操作するボタンの位置やタッチパネルのタッチ場所によって、運転者が操作しているにもかかわらず表示画面の右側に設けられた超音波の放射領域を通らずに(例えば表示画面の下側から)操作を行なうこともある。この場合、車両が走行中であったとしても運転者が操作を行う事が可能となってしまい適切な制御が行われないという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2においては、表示部前面の上部と下部にそれぞれ発光部と受光部とを対向する様に複数設置し操作者を認識している。右側が運転席の車でありかつ操作者が運転席側の場合、最初に画面左側の釦を操作した時は指等が右から左へ移動しする為運転手の操作である事を判別できる。しかし、現在指等が存在する左側の釦から右側の釦操作を行なう必要がある場合、運転席側の操作であるにもかかわらず指部が左から右へ移動する為、助手席側の乗員の操作であると判断してしまうという問題がある。本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、より精度の高い操作者判別装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の目的を達成するもので、車載機の操作を行う入力手段と、前記入力手段からの操作に応じて表示を行う表示手段と、前記入力手段の周囲に配置され乗員の腕部を検出する複数のセンサと、前記複数のセンサの内、乗員の腕部を検出したセンサと乗員が入力手段に接触した位置に応じて操作者を判別する操作者判別手段と、を備えた事を特徴とするものである。
【0008】
また、前記操作者判別手段は、前記複数のセンサの内隣接するセンサが乗員の腕部を検出した場合、前記操作者判別手段は前記隣接するセンサの中間位置を算出し、該中間位置と乗員が入力手段に接触した位置に応じて操作者を判別するものである事を特徴とするものである。
【0009】
また、前記複数のセンサは、乗員が入力手段に接触したタイミングに応じて乗員の腕部の検出を行う事を特徴とするものである。
【0010】
前記操作者判別手段が判別不可能な場合は、前記表示部に警告を表示する事を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のような構成により、本発明に係る操作者判別装置はより精度が高く操作者の判別を行なう事を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る操作者判別装置10の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態に係る操作者判別装置を概略的に示したブロック図であり、図中1は操作者判別手段を示している。操作者判別手段にはタッチパネル3、エスカッションスイッチ2からなる入力手段4、周囲センサ5、D/P席判断DB6および入力手段座標DB7を備える記憶手段9、同じ車両に搭載される各種電子機器(例えば、オーディオ装置20、ナビゲーション装置30)がそれぞれ接続されている。操作者判別装置10には図示しないCPUや、ROM、RAMなどを備えた操作者判別手段1と、前記各種電子機器の操作を行ないかつ操作者の指等の接触位置を判別する入力手段4と、全ての入力手段を包囲するように配置され操作者の指や手や腕といった腕部を検出する複数のセンサからなる周囲センサ5と、操作者を判別する為のデータを記憶するD/P席判断DB6および入力手段座標DB7、を備える記憶手段8とを含んで構成されている。
【0013】
図2は本発明の実施の形態に係る操作者判別装置10の前部近傍を概略的に示した斜視図である。図中11は筐体を示している。筐体前部にはCRTまたは液晶表示素子等を含んで構成された表示手段12が配設され、表示手段12の表示面にはナビゲーション映像やDVD映像、オーディオ情報として音楽の曲名や歌手名、その他各種装置を操作するための操作ボタン例えばDVD映像や音楽CDの再生、停止、早送、巻戻、一時停止、AM・FMラジオの放送局選択、音響特性の各種設定等の操作ボタン(共に表示せず)が表示されるようになっている。筐体11の前面パネルにはエスカッションスイッチ2が配設されており、エスカッションスイッチ2例えばナビゲーション装置の目的地を設定、地図情報の縮尺変更、各種装置を選択する為の画面の呼び出し、その他各種装置を操作するための操作ボタン等を含んで構成される。表示手段12の表示面上にはタッチパネル3が配置されている。前面パネルに配置される入力手段4であるタッチパネル3およびエスカッションスイッチ2の周囲には超音波の発信部及び受信部(共に図示せず)を含んで構成された周囲センサ5が配設されており、周囲センサ5は複数のセンサ5-1〜センサ5-28から形成されている。また、周囲センサ5は操作者判別手段1に電気的に接続されている。操作者がタッチパネル3やエスカッションスイッチ2に接触すると、該接触したタッチパネル3やエスカッションスイッチ2の仮想位置情報(詳細は後述)を前記操作者判別手段へ送信すると共に周囲センサ5の発信部からは超音波5aが前面パネルの前方に放射される。この中に腕部(図示せず)が存在すると周囲センサ5の受信部を介して操作者判別手段へ信号が送られ、仮想位置情報と周囲センサ5の検出データを用いて操作者を判別し、操作者に応じた制御が行なわれる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る操作者判別装置10の動作を図3,4,5に基づいて説明する。図3は本発明の実施の形態に係る操作者判別手段1の動作を概略的に示したフローチャートである。操作者の指等が入力手段4に接触すると、操作者判別手段1は入力手段が指等と接触した位置の仮想画像位置番号(詳細は後述)を取得する(S1-1)。次に、操作者判別手段1は、操作者の腕部の入力方向を検出する為に周囲センサ5に対して検出の指示を行う(S1-2)。次に、周囲センサ5の内、腕部を検出したセンサの番号を取得する(S1-3)。次に、運転席側からの操作または助手席側からの操作を判定する為のD/P席判断DB6を備えた記憶手段9から、D/P席判断DB6の情報を取得する。その情報とS1-1で入力手段が指等と接触した仮想画面番号と、(S1-3)で周囲センサ5の内、腕部を検出したセンサの番号とで照合処理(照合具体的方法は後述する)を行う(S1-4)。照合の結果、運転席側からの操作であると判定された場合、D席側出力信号を出力し(S1-5)、助手席側からの操作であると判定された場合、P席側出力信号を出力する(S1-6)。照合の結果、運転席側・助手席側のどちらにも適合しない場合は運転席側または助手席側の操作である事を判定できない旨を操作者に伝えるために表示や音声による警告を行うと共に操作者が運転席側の操作者であるのか、助手席側の操作者であるのかを操作者に選択させる釦を所定時間表示させる(S1-7)。所定時間の間に操作者が釦操作により運転席側の操作者であるか助手席側の操作者であるかをタッチパネル3等により選択した場合は選択結果に応じた制御信号を同じ車両に搭載される各種電子機器へ出力する。所定時間の間に操作者が釦操作を行われなかった場合はそのまま終了となる。
【0015】
上記、説明から明らかなように、操作者判別装置10は乗員が入力手段に接触したタイミングで周囲センサ5に対して検出の指示を行う為、周囲センサ5が常に検出を行っているものではない。よって、周囲センサ5の超音波5aにかかる消費電力を削減できるという効果をもつ。また、周囲センサ5が常に検出を行なう場合、電子機器の操作を行う意思の無い運転操作中の乗員の腕部等が周囲センサ5の超音波5aを遮ると操作者判別装置10はその度に腕部等を検出する処理を行う。その結果、操作者判別装置10のCPUは腕部等が周囲センサ5の超音波5aを遮る度に検出処理を行なう事となり負荷が大きくなる。しかし、本発明によると操作者判別装置は乗員が入力手段に接触したタイミングで周囲センサ5に対して検出の指示を行う為、不要なCPU負荷をかける事がなくなる。また、操作者判別装置10は運転席および助手席の判別が不可能な場合は、操作者にその旨を警告・通知する。こうして、操作者判別装置10が操作者を判別できない場合であっても、操作者は故障であると誤認識をすることがない。また、運転席側の操作者であるのか助手席側の操作者であるのかを釦操作により操作者に選択させるので、操作者判別装置10が操作者を判別できない為に電子機器を操作できなくなる事がない。
【0016】
図4および図5は図3(S1-4)にある照合処理の具体的方法の一例を説明する為のものである。図4は操作者判別装置10の前部近傍を概略的に示した平面図であり、図5は記憶手段に記憶されている操作者を判別する為のD/P席判断DB6の一部を示すものである。図中3-1〜3-16は画面仮想位置を示すための番号である。画面仮想位置とは操作者の指等が入力手段に接触する位置を操作者判別手段が認識する為に区切られた画面上の仮想の位置である。この画面仮想位置は記憶手段9に記憶されている入力手段座標DBの座標位置を仮想的にパネルスイッチ3上に示すものである。なお、図中画面仮想位置3-1〜3-16を区切る点線は画面仮想位置を説明する為に設けたものであり、通常の各種電子機器操作の際に表示手段12に表示されるものではない。図中5-1〜5-28は入力手段の周囲に配置された周囲センサ5であり、腕部を検出する為の複数のセンサである。前述の図3(S1-1)で操作者の指等が画面仮想位置番号3-7に接触し、図3(S1-3)で操作者の腕部がセンサ5-14により検出された場合を例として説明する。図3の(S1-4)照合処理では、(S1-1)で取得した画面仮想位置番号3-7をキーとして、操作者判別手段は図5の記憶手段に記憶してあるD/P席判断DB7の仮想画面位置番号に対応する運転席、助手席センサ番号を取得する。画面仮想位置番号3-7はセンサ5-8〜センサ5-17により腕部が検出された場合には運転席と判定し、センサ5-20〜5-28およびセンサ5-1〜5-5により、腕部が検出された場合には助手席と判定する。センサ5-6,5-7,5-18,5-19が反応した場合、およびどのセンサも反応しなかった場合は警告表示の指示を行う。今回の例ではセンサ5-14により腕部が検出されている為、照合処理の結果は運転席側からの操作であると判断し運転席側制御信号を出力させる指示を行う。
【0017】
上記説明から明らかなように、精度良く操作者の判断を行う事が可能となる。
上記本発明の実施の形態においては、D/P席判断DB7は製品出荷時に予め設定されているものであるが、操作者による設定を行えるようにしても良い。図6はその設定動作を概略的に示したフローチャートである。その設定手法としては表示手段12に登録設定画面を表示する。その登録設定画面とは例えば図4の画面仮想位置3-1〜3-16それぞれに対して1〜16までの番号を表示し、仮想画面位置を区切る点線も実際に表示をする。
以下、D/P席判断DB7の設定の動作を概略的に説明する。まず、操作者の釦操作により、D/P席判断DB7の設定モードへ移行し操作者が座っている座席を入力する(S2-1)。次に前述の登録設定画面が表示手段12へ表示される(S2-2)。仮想画像位置番号x(x>0)を操作者が接触するように音声出力または表示手段12へ表示する(S2-3)。仮想画像位置番号xの位置からの入力を検知したか否かを判断する(S2−4)。仮想画像位置番号x以外の位置の入力が検知された場合、(S2-3)へ戻る。仮想画像位置番号xの位置からの入力を検知した場合、周囲センサ5により腕部の検出のための出力を行う(S2-5)。周囲センサ5のうち検出されたセンサの番号を(S2−1)で入力した位置である仮想画像位置番号xに応じて、記憶手段のD/P判断DBに記憶させる(S2-7)。次に、周囲センサをOFFする(S2-8)。次に仮想画像位置番号xが最終の番号N以上になったか否かを判断する(S2-9)。Nに満たない場合は仮想画像位置番号xを1番増加させて(S2-3)へもどる。N以上になった場合登録設定を終了する。
【0018】
上記説明から明らかなように、操作者に応じたD/P席判断DBが作成されるため、より精度の高い操作者判別を行う事が可能となる。
【0019】
また、上記本発明の実施の形態における例においては腕部を検出する、センサは1つしか検出していない。しかし、センサが2つ以上検出する場合であってかつそのセンサが隣接するセンサである場合は、隣接する複数のセンサの中間値を算出し、該値をセンサ番号としても良い。また、隣接するセンサ以外のセンサが複数検出された場合は、(S1-7)と同様の警告を音声出力または表示手段12に表示するようにしても良い。
【0020】
また、周囲センサ5の水平方向に設置されるセンサは仮想画面位置の区切り線の延長線上に設置するようにし、操作者が仮想画面位置の区切り線上に指等を接触させた場合は指等の接触面積が一番多い仮想画面位置番号の画面を接触している仮想画面位置としてもよい。こうする事によって操作者が入力手段に接触している仮想位置とセンサの位置とは垂直になる確率が少なくなる為、検出精度をより向上させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の操作者判別装置を概略的に示したブロック図
【図2】本発明の操作者判別装置の前部近傍を概略的に示した斜視図
【図3】本発明の操作者判別手段の動作を概略的に示したフローチャート
【図4】本発明の操作者判別装置の前部近傍を概略的に示した平面図
【図5】本発明の記憶手段に記憶されているD/P判断DBの一部
【図6】本発明のD/P判断DBの設定動作を概略的に示したフローチャート
【符号の説明】
【0022】
1 操作者判別手段
4 入力手段
5 周囲センサ
12 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機の操作を行う入力手段と、
前記入力手段からの操作に応じて表示を行う表示手段と、
前記入力手段の周囲に配置され乗員の腕部を検出する複数のセンサからなる周囲センサと、
前記複数のセンサの内、乗員の腕部を検出したセンサと乗員が入力手段に接触した位置に応じて操作者を判別する操作者判別手段と、
を備えた事を特徴とする操作者判別装置。
【請求項2】
前記操作者判別手段は、
前記複数のセンサの内隣接するセンサが乗員の腕部を検出した場合、
前記操作者判別手段は前記隣接するセンサの中間位置を算出し、該中間位置と乗員が入力手段に接触した位置に応じて操作者を判別するものである事を特徴とする請求項1に記載の操作者判別装置。
【請求項3】
前記複数のセンサは、乗員が入力手段に接触したタイミングに応じて乗員の腕部の検出を行う事を特徴とする請求項1,2に記載の操作者判別装置。
【請求項4】
前記操作者判別手段が運転席および助手席の判別が不可能な場合は、操作者に操作者の判別が不可能である事を通知する事を特徴とする請求項1,2,3に記載の操作者判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−241707(P2009−241707A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89680(P2008−89680)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】