説明

支持部材

【課題】基部に対する本体部の移動を、滑らかに、無段階に、かつロックおよびロック解除の手間を要せずに行うことを可能とする手段を提供する。
【解決手段】支持部材1は、基部Sに対する本体部Bの位置をロックする固定部14と、固定部14による本体部Bのロックが解除された時に本体部Bを移動可能に支持する回動支持部と、軸周りに回動可能に固定されたレバーとを備えている。ユーザが本体部Bの上下方向を変えるように力を加えると、その力の下方成分により本体部Bとともに回動支持部が押し下げられ、その押し下げの力によりレバーを介して固定部14もまた押し下げられる。その際、梃子の原理により固定部14は回動支持部の変位量よりも大きい変位量で変位する。その結果、固定部14が本体部Bから離れロックが解除されるとともに、回動支持部のローラ154上で本体部Bがスムーズに移動可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被支持物を下方から支持しつつ当該被支持物の移動を可能とする仕組みに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置などの一部の家電製品においては、ユーザに対する本体部の上下方向および左右方向の角度調整の仕組みが求められる。上下方向の角度調整の仕組みはチルト機構、左右方向の角度調整の仕組みはスイーベル機構と呼ばれ、チルト機構もしくはスイーベル機構に関する提案は既に数多く存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、基台に対し自在にチルト調整およびスイーベル調整が可能な載置台に係合孔を設け、当該係合孔に対するロック部材の挿入・取り外しにより、チルト調整およびスイーベル調整のロックおよびロック解除の切り替えを行う仕組みが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、スタンド基台に設けられたガイド溝孔に沿って移動するスライダに係合孔を設け、スタンド基台に一体成形されたストッパー部をユーザが押し下げるとスライダの係合孔に嵌合していたストッパー部のストッパー凸部が外れてスタンド基台に対しスライダが移動可能となり、ユーザがストッパー部を離すとストッパー凸部が嵌合孔に嵌合してスライダの移動がロックされる、という仕組みが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−244576号公報
【特許文献2】特開2000−337592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基部に対する本体部の角度を調整する仕組みにおいて、一般的に、基部に対する本体部の移動をより滑らかにしたいというニーズ、基部に対する本体部の位置決めをユーザの望む任意の位置で無段階に行いたいというニーズ、そして基部に対する本体部の移動のロックおよびロック解除の操作を簡便にしたいというニーズがある。
【0007】
そこで、本発明は、基部に対する本体部の移動を、従来技術にかかるものよりも滑らかに、無段階に、かつロックおよびロック解除の手間を要せずに行うことを可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的に鑑みて想到されたものであり、
基部に連結され、前記基部と前記基部の上方に配置される本体部との間に配置され、前記本体部を下方から支持する支持部材であって、
前記本体部に対し付勢され、前記本体部の前記基部に向かう方向の変位に伴い変位する被加力部と、
前記本体部に対し付勢され、前記本体部に接触することで前記基部に対する前記本体部の位置を固定し、前記被加力部の変位に伴い前記本体部から離れる方向に変位する固定部と、
少なくとも前記固定部が前記本体部に接触していない状態において前記本体部に接触しつつ回動することにより前記本体部を移動可能に支持する回動支持部と
を備え、
前記被加力部の変位に伴い生じる前記固定部の変位は、前記被加力部の変位よりも大きい
支持部材を提供する(第1の実施態様)。
【0009】
また、本発明は、
本体部に連結され、前記本体部と前記本体部の下方に配置される基部との間に配置され、前記本体部を下方から支持する支持部材であって、
前記基部に対し付勢され、前記本体部の前記基部に向かう方向の変位に伴い変位する被加力部と、
前記基部に対し付勢され、前記基部に接触することで前記基部に対する前記本体部の位置を固定し、前記被加力部の変位に伴い前記基部から離れる方向に変位する固定部と、
少なくとも前記固定部が前記基部に接触していない状態において前記基部に接触しつつ回動することにより前記本体部を移動可能に支持する回動支持部と
を備え、
前記被加力部の変位に伴い生じる前記固定部の変位は、前記被加力部の変位よりも大きい
支持部材を提供する(第2の実施態様)。
【0010】
また、上記の第1または2の実施態様において、
前記被加圧部と前記回動支持部とが一体に構成されている
構成を採用してもよい(第3の実施態様)。
【0011】
また、上記の第1乃至3のいずれかの実施態様において、
一の軸の周りに回動可能に固定されたレバーを備え、
前記被加力部および前記固定部は各々、前記レバーの所定の位置に連結され、
前記レバーの回動の中心を支点、前記レバーの前記被加力部が連結されている位置を力点、前記レバーの前記固定部が連結されている位置を作用点とする場合、前記支点から前記作用点までの距離が前記支点から前記力点までの距離よりも長い
構成を採用してもよい(第4の実施態様)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1もしくは第2の実施態様にかかる支持部材によれば、ユーザが本体部に力を加えると、基部に対する本体部の移動をロックしている固定部が本体部もしくは基部から離れ、ロックが解除されると同時に、本体部が回動支持部に支持されつつスムーズに移動可能となる。また、ユーザが本体部から手を離すと、固定部が本体部もしくは基部に接触し、基部に対する本体部のロックが行われる。従って、ユーザは別途ロックおよびロック解除の操作を要することなく、本体部に対し移動したい方向に力を加え、希望の位置で本体部から手を離すだけで、所定範囲内の任意の位置で基部に対する本体部の位置決めを行うことができる。
【0013】
また、本発明の第3の実施態様にかかる支持部材によれば、ユーザが加えた力によって生じる本体部の基部に向かう方向の移動に応じて固定部の本体部もしくは基部からのリリースを行う被加圧部と、固定部がリリースされた後に本体部もしくは基部に接触しつつ回動する回動支持部とが一体となっているため、支持部材全体の構造が簡易化されるとともに、被加力部と本体部もしくは基部との間に生じる摩擦を回動支持部における転がり摩擦に限定することができる。
【0014】
また、本発明の第4の実施態様にかかる支持部材によれば、梃子(てこ)の原理を用いてレバーにより固定部のリリースが行われるため、支持部材全体の構造が簡易化される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施例にかかる支持部材を用いたサーキュレータの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例にかかる支持部材を用いたサーキュレータの正面図および右側面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例にかかる支持部材を用いたサーキュレータの断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例にかかるロック状態の支持部材を左右方向に垂直な切断面で切断して右側から見た断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例にかかるロック状態の支持部材を前後方向に垂直な切断面で切って前側から見た断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例にかかるロック状態の支持部材の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例にかかるロック状態の支持部材からスライダを取り外した状態の斜視図である。
【図8】図8は、本発明の一実施例にかかるロック解除状態の支持部材を左右方向に垂直な切断面で切断して右側から見た断面図である。
【図9】図9は、本発明の一実施例にかかるロック解除状態の支持部材を前後方向に垂直な切断面で切って前側から見た断面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施例にかかるロック解除状態の支持部材の斜視図である。
【図11】図11は、本発明の一実施例にかかるロック解除状態の支持部材からスライダを取り外した状態の斜視図である。
【図12】図12は、本発明の一実施例の一変形例にかかる支持部材の構造を模式的に示した図である。
【図13】図13は、本発明の一実施例の一変形例にかかる支持部材を用いたスタンド付き球状物の構造を模式的に示した図である。
【図14】図14は、本発明の一実施例の一変形例にかかる支持部材を用いたスタンド付き球状物の構造を模式的に示した図である。
【図15】図15は、本発明の一実施例の一変形例にかかる支持部材の構造を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例)
以下、本発明の一実施例にかかる支持部材1を用いたサーキュレータCを、図面を用いて説明する。
【0017】
図1はサーキュレータCの斜視図であり、図2はサーキュレータCの正面図(図2(a))および右側面図(図2(b))である。また、図3はサーキュレータCの断面図である。より詳しくは、図3(a)は図2(b)のE−E矢視図であり、図3(b)は図2(a)のD−D矢視図である。
【0018】
図2に示されるように、サーキュレータCは送風を行う本体部Bと、本体部Bを下方から支持する支持台である基部Sと、基部Sと本体部Bとの間に配置され基部Sに対する本体部Bのチルト調整機能を提供する部材である支持部材1とを備えている。
【0019】
支持部材1は基部Sの上に載置された状態で支持部材1に移動不可能に連結されている。また、支持部材1の上には本体部Bが載置され、本体部Bが支持部材1に対し本体部Bに設けられたレールに沿って移動可能に連結されている。以下に、主として本実施例にかかる支持部材1に関し説明を行う。
【0020】
図4は、図3(b)に点線枠Gで示される部分の拡大図であり、図5は図3(a)に点線枠Fで示される部分の拡大図である。また、図6はサーキュレータCから取り外した状態の支持部材1の斜視図であり、図7は支持部材1の構成部材のうち本体部Bに設けられたレールに嵌め込まれる構成部材であるスライダ13を取り除いた状態の支持部材1の斜視図である。
【0021】
支持部材1はまず、上面が開口した箱状体であるケーシング11を備えている。ケーシング11の手前側壁部および奥側壁部の各々の上には、上方に向かい延伸する柱状体であるピラー12が取り付けられている。ピラー12は主としてケーシング11内に配置される固定部14および回動支持部15(後述)と本体部Bの底面との間に所定範囲内の間隔を確保する役割を果たす。
【0022】
これら2本のピラー12を架橋するようにスライダ13が取り付けられている。スライダ13は、2本のピラー12の各々に設けられた軸孔内に配置され左右方向を長手方向とする軸棒131と、軸棒131の両端に各々回動可能に取り付けられたローラ132と、手前側の軸棒131と奥側の軸棒131とを架橋するように取り付けられた概ね板状体であるブリッジ133とを備える。
【0023】
スライダ13は本体部Bの底面に設けられた断面が「T」字形状のレールに嵌め込まれ、チルト調整に伴う本体部Bの移動において、レール内をスライドすることで本体部Bの移動をレールに沿った所定範囲内に制約する役割を果たす。なお、スライダ13は本体部Bに設けられたレールの湾曲にフィットするように側方から見た形状が湾曲している。
【0024】
ケーシング11内(図7参照)には、基部Sに対する本体部Bの位置を固定するための部材である固定部14が配置されている。固定部14は下方からバネ(図示略)により上方に付勢されている。そのため、本体部Bに対し外部からの加力が行われていない状態において、固定部14の一部が本体部Bの底面に押し当てられる。その結果、本体部Bとの間に生じる摩擦力により本体部Bの位置を固定する役割を果たす。
【0025】
上記の摩擦力を高めるため、固定部14が本体部Bの底面と接する部分(左右計2カ所)にはラバーシート141が取り付けられている。ラバーシート141は、例えばゴム製のシート状体であり、摩擦力を高めるとともに、本体部Bと固定部14との接触時における緩衝材の役割も果たす。
【0026】
また、ケーシング11内(図4参照)には、本体部Bをその底面(レールの外側)において下方から支持する回動支持部15が配置されている。回動支持部15はまず、ケーシング11内の中央付近に左右方向を長手方向とするように配置された1本の軸棒151を備えている。軸棒151の左端部および右端部には各々、手前側と奥側に各々延伸する概ね「L」字形状の支持棒152(計4本)が軸周りに回動可能に取り付けられている。
【0027】
これら4本の支持棒152の端部(軸棒151と連結されている側と反対側の端部)には各々軸孔が設けられている。手前側に延伸する2本の支持棒152の軸孔間および奥側に延伸する2本の支持棒152の軸孔間の各々に関し、それらの軸孔間を架橋するように軸棒153が配置されている。これら2本の軸棒153の各々の両端部にはローラ154が軸周りに回動可能に取り付けられている。支持棒152の各々は下方からバネ(図示略)により上方に付勢されている。
【0028】
ここで、手前側および奥側の回動支持部15がバネにより下方から受ける上向きの力の合力が、本体部Bが重力により下方に引かれる力より大きくなるように、それらのバネの強さが選択されている。その結果、本体部Bに外部から加力が行われていない状態において、本体部Bはその底面の下側から手前側および奥側の回動支持部15のローラ154(および固定部14のラバーシート141)により下方から付勢されつつ支持される。
【0029】
また、固定部14および回動支持部15により上方へ付勢される本体部Bは、図4に示されるように本体部Bのレールの下面がスライダ13のローラ132に衝突すると、それ以上はローラ132により上方への移動が妨げられる。その結果、本体部Bは底面を下方から押し上げる固定部14および回動支持部15と、レールの下面を上方から押さえ込むように働くスライダ13との間に挟み込まれた状態で、基部Sに対する位置が固定される。
【0030】
ケーシング11内には、上記の基部Sに対する本体部Bの固定を解除しチルト調整を可能とするための機構として、回動支持部15の押し下げに伴い固定部14を押し下げるように働くレバー16が配置されている。
【0031】
レバー16は、ケーシング11の手前側の壁部および奥側の壁部に設けられた軸孔内に各々配置され左右方向を長手方向とする軸棒161と、手前側の軸棒161および奥側の軸棒161の各々に軸周りに回動可能に一方の端部が取り付けられた梃子棒162とを備えている。
【0032】
手前側の梃子棒162の軸棒161に連結されている側と反対側の端部は、固定部14の内側に設けられた中空部を横断するように配置された横棒142の上に配置されている。同様に、奥側の梃子棒162の軸棒161に連結されている側と反対側の端部もまた、同じ横棒142の上に配置されている。
【0033】
また、手前側の梃子棒162の軸棒161の中腹位置には楕円孔163が設けられており、その楕円孔163には回動支持部15の手前側の左右の支持棒152の「L」字の角部あたりを架橋するように配置された横棒155が貫通している。同様に、奥側の梃子棒162の軸棒161の中腹位置にもまた、楕円孔163が設けられており、その楕円孔163には回動支持部15の奥側の左右の支持棒152の「L」字の角部あたりを架橋するように配置された横棒155が貫通している。
【0034】
上記のように手前側および奥側の各々において固定部14と回動支持部15とに架橋されるように配置された梃子棒162は、軸棒161との連結位置を支点、回動支持部15の横棒155との連結位置(楕円孔163の位置)を力点、固定部14の横棒142との接触位置(軸棒161に連結されている側と反対側の端部の位置)を作用点とする梃子の作用をもたらす。
【0035】
レバー16の作用により、ユーザが本体部Bに対し下方の成分を含む力を加えると、固定部14による基部Sに対する本体部Bの位置の固定(ロック)が解除される。その結果、ユーザはレールに沿った範囲内において、基部Sに対する本体部Bの上下方向の角度調整、すなわちチルト調整をスムーズかつ無段階に行うことができるようになる。
【0036】
図8乃至図11は、ユーザにより本体部Bに対し所定の大きさ以上の下方成分を含む力が加えられた状態(すなわち、本体部Bが押し下げられた状態)における支持部材1を示した図である。なお、図8乃至図11は各々、図4乃至図7に対応している。
【0037】
ユーザが本体部Bを押し下げると(図8参照)、まず、回動支持部15が押し下げられる。それに伴い、回動支持部15の横棒155が梃子棒162を押し下げる。その結果、梃子棒162が軸棒161の軸周りに下方に回動し、軸棒161に連結されている側と反対側の端部が固定部14の横棒142を押し下げる。
【0038】
なお、手前側の梃子棒162と奥側の梃子棒162は各々独立して回動するため、手前側のローラ154および奥側のローラ154のいずれか一方がユーザの加力により押し下げられると、押し下げられた側の梃子棒162により固定部14が押し下げられる。
【0039】
ユーザの加力により回動支持部15および固定部14からの上方への付勢に抗して押し下げられた本体部Bは、そのレールの上面にスライダ13のローラ132が衝突すると、それ以上はローラ132により下方への移動が妨げられる。その結果、本体部Bは底面により回動支持部15を押し下げつつ、レールの上面に接するスライダ13のローラ132により下方から支持された状態となる。
【0040】
ここで注目すべきは、図8乃至図11に示すように、本体部Bが押し下げられた状態においては、本体部Bから固定部14が自動的に離れ、そのロックが解除されている、という点である。すなわち、本体部Bが押し下げられた状態においては、本体部Bにはスライダ13のローラ132および回動支持部15のローラ154しか接しておらず、ユーザの加える力の方向に応じたそれらのローラの回動に伴い、本体部Bがレールに沿った範囲内で基部Sに対し自由に移動する。
【0041】
上記のように、ユーザが本体部Bを押し下げるだけで自動的に固定部14が本体部Bから離れる理由は、梃子棒162が固定部14を押し下げる際の梃子において、支点と力点の間の距離よりも支点と作用点の間の距離が長くなるようにそれらの位置の設定が行われているためである。そのように支点、力点および作用点の設定を行うと、本体部Bの押し下げに伴い回動支持部15が押し下げられた際、レバー16の作用により本体部Bおよび回動支持部15の変位量より大きな変位量で固定部14が押し下げられる。その結果、本体部Bから固定部14が引き離されることになる。
【0042】
ユーザが本体部Bの移動を終えた後、本体部Bから手を離し本体部Bに対する加力を止めると、本体部Bは回動支持部15の上方に向かう付勢に応じて上方に移動し、図4乃至図7に示される状態に戻る。その際、固定部14のラバーシート141が本体部Bの底面に再び接触するため、ユーザが本体部Bから手を離した位置において基部Sに対する本体部Bの位置の固定が自動的に行われる。
【0043】
以上説明したように、本実施例にかかる支持部材1によれば、ユーザはサーキュレータCの本体部Bの上下方向の角度を調整したい場合、本体部Bに対し移動したい方向に力を加え、本体部Bの角度が望ましい角度になったら力を加えていた手を本体部Bから離すだけでよい。その際、加力に伴いロックが自動的に解除され、加力を止めると自動的にロックが行われる。また、ロックが解除された状態においては、本体部Bはローラにより支持されるため、スムーズに本体部Bの移動を行うことができる。
【0044】
(変形例)
上述した実施例は、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形が可能である。以下にそれらの変形の例を示す。
【0045】
例えば、上述した支持部材1においては、回動支持部15が(1)ロック時において本体部Bを下方から支持する役割と、(2)本体部Bが押し下げられた際に梃子棒162を介して固定部14を本体部Bから引き離す役割と、(3)固定部14によるロックが解除された状態において本体部Bの移動を許容しつつ本体部Bを下方から支持する役割と、を全て行う。
【0046】
本発明は同じ構成部材が上記(1)乃至(3)の役割を全て行う構成に限られず、上記(1)乃至(3)の役割を2以上の構成部材により分担して行わせる構成が採用されてもよい。
【0047】
図12は、そのような構成の支持部材の仕組みを模式的に示した図である。なお、図12における上向きの矢印は付勢の方向を示している。
【0048】
当該変形例にかかる支持部材においては、本体部Bの底面に接し、本体部Bの押し下げに伴い押し下げられる被加力部17が、回動支持部15とは別に設けられている。この場合、回動支持部15は本体部Bの押し下げに伴い移動することはなく、所定位置に固定されている。
【0049】
本体部Bに加力が行われていない状態(図12(a))においては、本体部Bは主として固定部14による上方に向けた付勢を受け、ロックされるとともに支持される。
【0050】
ユーザにより本体部Bが押し下げられると(図12(b))、被加力部17がそれに伴い押し下げられ、梃子棒162を押し下げる。その結果、固定部14が本体部Bから引き離され、ロックが解除される。本体部Bによる支持を失った本体部Bは回動支持部15により支持され、ローラ154上を転がり移動可能となる。
【0051】
ユーザが本体部Bから手を離すと、固定部14が再び本体部Bを上方に向けて押し上げ、ロックが行われる。
【0052】
なお、本変形例にかかる支持部材においては、被加力部17が常時、本体部Bの底面に接することになるため、本体部Bがチルト調整に伴い移動する際、本体部Bと被加力部17との間の摩擦力が大きくならないように、それらの表面の素材や形状が選択される必要がある。
【0053】
他の変形例として、上述した支持部材1の上下を反対にした構成が採用されてもよい。すなわち、上述した支持部材1は、固定部14および回動支持部15が本体部Bに接触する向きで基部Sと本体部Bとの間に配置されるものとした。これに代えて、支持部材1を、固定部14および回動支持部15が基部Sに接触する向きとなるように基部Sと本体部Bとの間に配置されてもよい。その場合、支持部材1は本体部Bに対し移動不可能に連結され、基部Sに対し移動可能に連結もしくは接触することになる。
【0054】
図13は、そのような変形例にかかる支持部材1を採用したスタンド付き球状物G1の構造を模式的に示した図である。スタンド付き球状物G1は、まず上述した実施例と同様に、基部Sと基部Sの上に移動不可能に配置された支持部材1Aを備えている。支持部材1Aの上には、支持部材1Aに対する被支持物である本体B1および中空の半球形状の容器B2が載置されている。容器B2の底面にはレールが設けられており、上述した実施例と同様にそのレールに沿って容器B2が上下方向(矢印Xの方向)に移動可能となっている。
【0055】
本体B1は、容器B2に対し、その直径方向に設けられた適度に撓る軸棒Hの軸周り(矢印Yの方向)に回動可能に取り付けられている。本体B1の容器B2に対向する面上には、支持部材1Bが取り付けられている。支持部材1Bは上述した実施例における支持部材1からピラー12およびスライダ13を取り除いた構造を備えている。また、支持部材1Bは固定部14および回動支持部15が容器B2に接する向きで配置され、本体B1に移動不可能に固定されている。
【0056】
上記のような構成のスタンド付き球状物G1によれば、ユーザの本体B1に対する上下方向の加力に従い支持部材1Aのロックが解除されチルト調整が可能となり、ユーザの本体B1に対する左右方向の加力に従い支持部材1Bのロックが解除されスイーベル調整が可能となる。
【0057】
さらに他の変形例として、図14に模式的に示すような構造のスタンド付き球状物G2も考えられる。スタンド付き球状物G2においては、基部Sが備える中空の半球形状の容器に複数の支持部材1Cが取り付けられており、それらの支持部材1Cの上に球状の本体部B2が載置されている。
【0058】
支持部材1Cは上述した実施例における支持部材1からピラー12およびスライダ13を取り除いた構造を備えている。さらに、支持部材1Cにおいては、回動支持部15のローラ154に代えて、ボールベアリングが採用されている。すなわち、支持部材1Cの回動支持部は、ロックが解除された状態において本体B2を360度いずれの方向にも移動可能に支持する。
【0059】
このような構成のスタンド付き球状物G2によれば、ユーザは本体部B2に対し任意の方向に力を加えることにより、本体部B2を任意の方向に回転移動させるとともに、任意の位置で本体部B2から手を離すことで、その位置に本体部B2を固定させることができる。
【0060】
さらに他の変形例として、梃子によらない他の仕組みにより、回動支持部15(もしくはそれと独立した被加力部17)の変位量より大きな変位量で固定部14を移動させる構成が採用されてもよい。図15は、レバー16に代えてギア機構を採用した変形例の構成を模式的に示した図である。
【0061】
本変形例にかかる支持部材1は、レバー16に代えてギア機構18を備えている。ギア機構18は、回動支持部15の側面に設けられたラック181と、ラック181と互いに噛み合う平歯車182と、平歯車182と互いに噛み合う平歯車183と、平歯車183と互いに噛み合うとともに固定部14の側面に設けられたラック184をと備えている。
【0062】
本体部Bの押し下げに伴い回動支持部15が押し下げられると、ラック181が下方に移動し、その移動が平歯車182および平歯車183を介してラック184に伝達され、固定部14が押し下げられる。
【0063】
ここで、例えばラック181とラック184のピッチ(歯の間隔)は同じであるが、平歯車182の歯数が平歯車183の歯数よりも多い。そのため、平歯車182の回転角よりも平歯車183の回転角が大きくなり、ラック181の変位量よりもラック184の変位量が大きくなる。
【0064】
もしくは、例えば平歯車182と平歯車183の歯数は同じとし、ラック181のピッチよりもラック184のピッチを広くしても同様の結果が得られる。
【0065】
なお、上述した実施例およびその変形例における支持部材1の各構成要素を特定する数量、形状、位置などはあくまでも一例であって、用途に応じて他の数量、形状、位置などが採用されてもよい。
【0066】
例えば、上述した実施例においては、固定部14が手前側のローラ154および奥側のローラ154の間に配置される構成が採用されているが、固定部14の位置をそれらのローラ154の外側に配置するなど、その配置は様々に変更され得る。
【0067】
また、本体部Bが固定部14に接する部分が磁性体である場合、固定部14による固定の能力を高める目的で、固定部14に磁石を用いる構成が採用されてもよい。その場合、摩擦力に加え磁力により、本体部Bをよりしっかりと固定することができる。
【0068】
さらに、固定部14に磁石を用いる場合、その磁石を電磁石とし、ロック時にのみ当該電磁石に対する電力供給を行う構成が採用されてもよい。その場合、ロック解除時に磁力が働かないため、ロック解除時も磁力が働く場合と比較し、よりスムーズに本体部Bの移動を行うことができる。
【0069】
また、上述した実施例においては、本体部Bが基部Sに対し湾曲面に沿って移動する例を説明したが、本体部Bが基部Sに対し平面に沿って移動する構成において支持部材1が用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の支持部材によれば、基部に対する本体部の位置や角度の調整がスムーズかつ簡易に行える。従って、家電や玩具などの様々な製品において採用され得るため、大量に製造・販売され、いわゆる製造業や小売業などのサービス業において利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…支持部材、11…ケーシング、12…ピラー、13…スライダ、14…固定部、15…回動支持部、16…レバー、17…被加力部、18…ギア機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部に連結され、前記基部と前記基部の上方に配置される本体部との間に配置され、前記本体部を下方から支持する支持部材であって、
前記本体部に対し付勢され、前記本体部の前記基部に向かう方向の変位に伴い変位する被加力部と、
前記本体部に対し付勢され、前記本体部に接触することで前記基部に対する前記本体部の位置を固定し、前記被加力部の変位に伴い前記本体部から離れる方向に変位する固定部と、
少なくとも前記固定部が前記本体部に接触していない状態において前記本体部に接触しつつ回動することにより前記本体部を移動可能に支持する回動支持部と
を備え、
前記被加力部の変位に伴い生じる前記固定部の変位は、前記被加力部の変位よりも大きい
支持部材。
【請求項2】
本体部に連結され、前記本体部と前記本体部の下方に配置される基部との間に配置され、前記本体部を下方から支持する支持部材であって、
前記基部に対し付勢され、前記本体部の前記基部に向かう方向の変位に伴い変位する被加力部と、
前記基部に対し付勢され、前記基部に接触することで前記基部に対する前記本体部の位置を固定し、前記被加力部の変位に伴い前記基部から離れる方向に変位する固定部と、
少なくとも前記固定部が前記基部に接触していない状態において前記基部に接触しつつ回動することにより前記本体部を移動可能に支持する回動支持部と
を備え、
前記被加力部の変位に伴い生じる前記固定部の変位は、前記被加力部の変位よりも大きい
支持部材。
【請求項3】
前記被加圧部と前記回動支持部とが一体に構成されている
請求項1または2に記載の支持部材。
【請求項4】
一の軸の周りに回動可能に固定されたレバーを備え、
前記被加力部および前記固定部は各々、前記レバーの所定の位置に連結され、
前記レバーの回動の中心を支点、前記レバーの前記被加力部が連結されている位置を力点、前記レバーの前記固定部が連結されている位置を作用点とする場合、前記支点から前記作用点までの距離が前記支点から前記力点までの距離よりも長い
請求項1乃至3のいずれかに記載の支持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−61051(P2013−61051A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201426(P2011−201426)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(508157370)バルミューダ株式会社 (4)