説明

支柱立て起し機具

【課題】下端部が支柱保持部に回動可能に配置された支柱を、簡易な構成で、多くの人手を要することなく容易に立て起すことができる支柱立て起し機具を提供すること。
【解決手段】水平接地バー部21及びその水平接地バー部21に実質的に直交する方向に延びる主回動バー部22を備えるT字形状のバー本体20と、主回動バー部22より短いバー状に設けられると共に、上端部33において主回動バー部22の上端部23に軸着されることで構成される水平接地バー部21の軸芯と実質的に平行な上部回動軸31を中心にして回動自在に設けられ、下端32が地面に接地して主回動バー部22と共になって逆V字状に立つことができるように設けられた補助バー30と、その補助バー30又は主回動バー部22の上端部33、23に吊下げられることで配されて、支柱10を吊り上げるように設けられた吊り上げ装置40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下端部が支柱保持部に回動可能に配置された支柱を、その下端部を中心に回動させることで立て起す支柱立て起し機具に関する。なお、本発明にかかる支柱としては、例えば旗を掲揚するための柱状の部材が含まれ、柱材、竿材、棒材又はポールと呼ばれるものも対象とされる。
【背景技術】
【0002】
長くて重量のある支柱を立てる作業は、一般的に支柱を途中まで直接的に持ち上げると共に、ロープによって支柱が倒れている側とは反対の側から引っ張ることで行われている。このような作業は、人手で行う場合、大勢の人による大きな力が必要となる。
【0003】
これに対して、例えば、以下の構成の柱材の建て起し方法及び装置が提案されている。
柱材の両端にその両端を夫々固定したチェーンを吊り治具の滑車に懸架し、前記柱材の一端と該柱材以外の固定点間を拘束ワイヤによって連結し、前記吊り治具を吊下げて前記柱材を傾斜または垂直とした状態ならしめた後前記ワイヤを取り外す。前記吊り治具は遠隔操作可能なチェーンロック機構を有する(特許文献1参照)。
この柱材の建て起し方法及び装置にあっては、柱材の全体をワイヤで吊り上げるものであって、装置が大型化すると共に、極めて大きな動力を必要とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−184294(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支柱立て起し機具に関して解決しようとする問題点は、長くて重量のある支柱を立て起す場合に人手による場合は大勢の力を必要とし、機械化による場合は装置が大型化して大きな動力を必要とすることにある。
そこで本発明の目的は、支柱を、簡易な構成で、多くの人手を要することなく容易に立て起すことができる支柱立て起し機具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る支柱立て起し機具の一形態によれば、下端部が支柱保持部に回動可能に配置された支柱を、該下端部を中心に回動させることで立て起す支柱立て起し機具であって、バー状の全長に亘って地面に接地して配置される水平接地バー部、及び該水平接地バー部に実質的に直交する方向に延長されて該水平接地バー部の軸芯を中心にして上端部が上下方向に回動される主回動バー部を備えるT字形状のバー本体と、前記主回動バー部より短いバー状に設けられると共に、上端部において前記主回動バー部の上端部に軸着されることで構成される前記水平接地バー部の軸芯と実質的に平行な上部回動軸を中心にして回動自在に設けられ、下端が地面に接地して前記主回動バー部と共になって逆V字状に立つことができるように設けられた補助バーと、該補助バー又は前記主回動バー部の上端部に吊下げられることで配されて、前記支柱を吊り上げるように設けられた吊り上げ装置とを具備する。
【0007】
また、本発明に係る支柱立て起し機具の一形態によれば、前記吊り上げ装置が、チェーンブロックであることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明に係る支柱立て起し機具の一形態によれば、前記上部回動軸が、前記主回動バー部の上端に設けられた管状の回動軸受部と、該回動軸受部の管内に挿通されるように前記補助バーの上端に水平方向へ延長されて設けられた回動軸芯部とによって構成されていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る支柱立て起し機具の一形態によれば、前記T字形状のバー本体が、水平接地バー部と主回動バー部とに分割可能に設けられていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る支柱立て起し機具の一形態によれば、前記T字形状のバー本体の下端部と、前記補助バーの下端部との開きを制限するように、両者の間に開き制限用ロープが設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る支柱立て起し機具によれば、支柱を、簡易な構成で、多くの人手を要することなく容易に立て起すことができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る支柱立て起し機具の形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る支柱立て起し機具の形態例を示す正面図である。
【図3】図2の形態例の側面図である。
【図4】本発明に係る支柱立て起し機具の使用工程を説明する第1の模式図である。
【図5】本発明に係る支柱立て起し機具の使用工程を説明する第2の模式図である。
【図6】本発明に係る支柱立て起し機具の使用工程を説明する第3の模式図である。
【図7】本発明に係る支柱立て起し機具の使用工程を説明する第4の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る支柱立て起し機具の形態例を添付図面(図1〜7)に基づいて詳細に説明する。
この支柱立て起し機具は、下端部12が支柱保持部15に回動可能に配置された支柱10を、その下端部12を中心に回動させることで立て起すものである。本形態例における支柱保持部15は、支柱10を立てた状態に固定するもので、その下部に支柱10の下端部12が回動可能に軸着されるように設けられている。なお、この支柱保持部15は、これに限定されず、支柱10をその下端部12を中心に回動できるように保持できるものであれば、例えば支柱10の下端を滑らないように受けるストッパであってもよい。
【0013】
20はT字形状のバー本体であり、バー状の全長に亘って地面に接地して配置される水平接地バー部21、及びその水平接地バー部21に実質的に直交する方向に延長されてその水平接地バー部21の軸芯を中心にして上端部23が上下方向に回動される主回動バー部22を備える。本形態例では、軽量化のため、パイプ材で形成されている。なお、実質的に直交するとは、その角度が同等の作用効果を奏する範囲であればよく、厳密に直交していることを要しないことを意味する。
【0014】
30は補助バーであり、主回動バー部22より短いバー状に設けられると共に、上端部33において主回動バー部22の上端部23に軸着されることで構成される水平接地バー部21の軸芯と実質的に平行な上部回動軸31を中心にして回動自在に設けられ、下端32が地面に接地して主回動バー部22と共になって逆V字状(先の尖った山形状)に立つことができるように設けられている。本形態例では、軽量化のため、パイプ材で形成されている。なお、ここで逆V字状に立つとは、自立することではなく、支えられて起立状態になることである。なお、実質的に平行とは、その平行度が同等の作用効果を奏する範囲であればよく、厳密に平行であることを要しないことを意味する。
【0015】
40は吊り上げ装置であり、補助バー30又は主回動バー部22の上端部33、23に吊下げられることで配されて、支柱10を吊り上げるように設けられている。
本形態例の吊り上げ装置40は、手動のチェーンブロックによって構成されている。41はチェーンブロック本体であり、42はロードチェーンであり、43はハンドチェーンである。また、本形態例のチェーンブロック(吊り上げ装置40)は、補助バー30の上端部33に設けられた回動軸芯部33aの先端部33bに吊下げられている。
【0016】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、電動式のチェーンブロックや、他のワイヤ式の巻上げ装置など、既知の吊り上げ機構を採用できるのは勿論である。また、その取付け位置も本形態例に限定されず、支柱10を吊り上げられるように本発明に係る支柱立て起し機具の上部に配されていればよい。
【0017】
また、本形態例では、上部回動軸31が、主回動バー部22の上端に設けられた管状の回動軸受部23aと、その回動軸受部23aの管内に挿通されるように補助バー30の上端に水平方向へ延長されて設けられた回動軸芯部33aとによって構成されている。なお、回動軸受部23aはパイプ材によって形成されており、パイプ材から成る主回動バー部22に溶接によって固定されている。また、回動軸芯部33aは、回動軸受部23aよりも小径のパイプ材によって形成されており、補助バー30に溶接によって固定されている。
これによれば、簡単な構成によって、バー本体20と補助バー30とが、好適に相対的に回動できる構成となると共に、大きな荷重にも適切に対応して吊り上げることができる形態になっている。
【0018】
また、図2及び図3に示すように、T字形状のバー本体20を、水平接地バー部21と主回動バー部22とに分割可能に設けてもよい。本形態例では、水平接地バー部21に固定された設けられた連結部21aに主回動バー部22の下端が差し込まれ、ピン25によって両者を連結できるように設けられている。
このようにバー本体20を分解できる形態とすることで、コンパクトに収納でき、搬送を効率良く行うことができる。
【0019】
また、図1〜図3に示すように、T字形状のバー本体20の下端部24と、補助バー30の下端部34との開きを制限するように、両者の間に開き制限用ロープ50を設けてもよい。
このように開き制限用ロープ50を設けることで、意図しない状態に大きく開いてしまうことを防止できるため、操作性が向上し、作業を行い易くすることができる。
【0020】
次に、図4〜図7に基づいて、本発明に係る支柱立て起し機具の使用方法について詳細に説明する。
図4は、支柱10の立て起し作業を開始する際の状態を示す第1の工程模式図である。
支柱10は、その下端部12が支柱保持部15に軸着されている。本発明に係る支柱立て起し機具は、バー本体20の主回動バー部22と補助バー30とによって逆V字状に起立した状態に置かれる。なお、水平接地バー部21は、支柱保持部15から所要の間隔をおいた位置で、支柱10と実質的に直交する方向に置かれる、そして、吊り上げ装置40(チェーンブロック)のロードチェーン42の先端が、支柱10の中途部に連結された状態となっている。具体的には、支柱10の中途部に掛け回した紐に、ロードチェーン42の先端に設けられたフックを引っ掛けた状態になっている。なお、図4〜図7ではチェーンブロックの詳細な形態は省略して記載しており、ロードチェーン42の作動状態のみを点線で示してある。
【0021】
図5は、支柱10を45度回動して持ち上げた状態を示す第2の工程模式図である。
ロードチェーン42を図5のように引き上げると、そのリンク機構的な性質によって、支柱10が持ち上げられるように回動されると共に、主回動バー部22が水平接地バー部21の軸芯を中心にして自動的に起立する方向に回動する。これに伴って、補助バー30は、主回動バー部22よりも若干短く形成されているため、自動的に地面から浮いて回動自在になる。なお、図5では、説明のため、補助バー30を傾けた状態に図示してあるが、何も力を与えない状態では真下に垂れ下がった状態になる。
【0022】
図6は、支柱10を70度まで回動して持ち上げた状態を示す第3の工程模式図である。
ロードチェーン42を図5から図6の状態のように引き上げると、そのリンク機構的な性質によって、主回動バー部22が支柱保持部15の側へ若干倒れるようになるまで回動すると共に、支柱10がさらに立て起される。この間、補助バー30は、図5の状態から継続して回動自在な状態になっている。なお、図6では、説明のため、補助バー30を傾けた状態に図示してあるが、何も力を与えない状態では真下に垂れ下がった状態になる。これによれば、補助バー30は、図5の状態から主回動バー部22の反対側に回動した状態になる。
【0023】
図7は、支柱10を垂直に立て起し、その作業を終了させた状態を示す第4の工程模式図である。
これによれば、ロードチェーン42を図6から図7の状態のようにさらに引き上げることによって、そのリンク機構的な性質によって、主回動バー部22がさらに倒れるように回動すると共に、支柱10が垂直に立て起される。このとき、補助バー30の下端32が地面に接地して、支柱10が倒れないように保持される。この状態で、支柱固定用のピン51を支柱10と支柱保持部15の間に挿入するなどして、支柱10を支柱保持部15に固定することで、支柱10の立て起し作業が完成する。
以上の作業操作は、ロードチェーン42を巻き上げる操作を主に行えばよく、極めて簡単であり、一人の作業として行うこともできる。従って、本発明に係る支柱立て起し機具によれば、簡易な構成によって設けられ、支柱10を多くの人手を要することなく容易に立て起すことができる。
【0024】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0025】
10 支柱
12 下端部
15 支柱保持部
20 バー本体
21 水平接地バー部
22 主回動バー部
23 上端部
23a 回動軸受部
24 下端部
30 補助バー
31 上部回動軸
32 下端
33 上端部
33a 回動軸芯部
34 下端部
40 吊り上げ装置
41 チェーンブロック本体
50 開き制限用ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部が支柱保持部に回動可能に配置された支柱を、該下端部を中心に回動させることで立て起す支柱立て起し機具であって、
バー状の全長に亘って地面に接地して配置される水平接地バー部、及び該水平接地バー部に実質的に直交する方向に延長されて該水平接地バー部の軸芯を中心にして上端部が上下方向に回動される主回動バー部を備えるT字形状のバー本体と、
前記主回動バー部より短いバー状に設けられると共に、上端部において前記主回動バー部の上端部に軸着されることで構成される前記水平接地バー部の軸芯と実質的に平行な上部回動軸を中心にして回動自在に設けられ、下端が地面に接地して前記主回動バー部と共になって逆V字状に立つことができるように設けられた補助バーと、
該補助バー又は前記主回動バー部の上端部に吊下げられることで配されて、前記支柱を吊り上げるように設けられた吊り上げ装置とを具備することを特徴とする支柱立て起し機具。
【請求項2】
前記吊り上げ装置が、チェーンブロックであることを特徴とする請求項1記載の支柱立て起し機具。
【請求項3】
前記上部回動軸が、前記主回動バー部の上端に設けられた管状の回動軸受部と、該回動軸受部の管内に挿通されるように前記補助バーの上端に水平方向へ延長されて設けられた回動軸芯部とによって構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の支柱立て起し機具。
【請求項4】
前記T字形状のバー本体が、水平接地バー部と主回動バー部とに分割可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の支柱立て起し機具。
【請求項5】
前記T字形状のバー本体の下端部と、前記補助バーの下端部との開きを制限するように、両者の間に開き制限用ロープが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の支柱立て起し機具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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