説明

改善された快適性をもつモーターサイクリスト用衣服

レザースーツなどモーターサイクリスト用衣服の選択された部位、例えば脚部と腕部に伸縮性挿入体(15,25)を組み込む。衣服のレスト状態の形状が、着用者がオートバイ乗車時に取る姿勢に対応するよう、前記挿入体の形状および適用の態様が定められるとともに、オートバイのサドルに跨っていない場合には着用者の自由な動きが許容されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターサイクリストが用いる衣服に関し、より詳しくは、ボディピースにズボンが分離不能に組み合わされたスーツのみならず、ボディピース自体すなわちジャケットおよび、ズボン自体にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の衣服はレザーで作られるのが通常であり、使用時の状態が多少なりとも一様でないこと(ill-matched)に特徴がある。第1の使用状態はオートバイに乗っているときに関連するもので、衣服はこれを着けている人の身体にフィットして、好ましくない空気力学的効果が生じないようにするだけでなく、動きを妨げることのないようになっていなければならない。これは特にスポーツ競技において必要であるが、しかしこれに限られるものでもない。第2の使用状態は人がオートバイのサドルに跨っていないときに関連するもので、衣服はこれを着ける者の歩行、概して上肢および下肢の自由な動きを許容するものでなければならない。ほとんどの場合、製造者はこの第2の使用状態に適するようにすることを課題として衣服を作る傾向があり、第1の使用状態への適合が損ねられている。このことは、多くのユーザにとって不便であり、不満なものであった。
【0003】
かかる問題を解決することを試みたデザインとして、特許文献1に開示されたレザースーツがある。これは、目に見える表面上に多くの伸縮性挿入体を適用することを示している。この文献の全体に記載され、例示された挿入体のうち、ただ1つだけ「U」字形状の伸縮帯(elastic strip)があり、これは3つの部分からなっている。その2つは胴の両側にそれぞれ適用されるものであり、挿入体にある折り目がレスト状態(すなわちスーツが着用されていない状態)で実質的に鉛直である。他は背の下部に適用されるものであり、対応する折り目は実質的に水平である。ここで、U形状伸縮帯の種々の部分で弾性が最大となる方向は、前記部分の長手方向に延びるラインに実質的に垂直な方向である。しかしながら、この伸縮性挿入体の効果は身体の胴によって制限され、このスーツは他のものに比べれば満足度が高いものではあるが、それでもなおオートバイに乗るのに最適な特徴を持つものとは言い難い。さらに、U字形状の伸縮帯は3つの部分をそれぞれ形成してから互いに端部同士を縫い合せて得られるものであり、スーツに適用した後には最大限展張した状態を維持するようにされていなければならないということにも注意すべきである。これはスーツの製造を少なからず複雑にし、従ってコストも上昇する。直線状の制限された伸長性をもつ他の挿入体はスーツの他の部位に適用される。
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0950360号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
望ましく、かつ実際に本発明の主たる目的をなすものは、想定される姿勢およびオートバイ乗車時に行われる操作に有利であり、またスポーツ競技用に使用される場合にも有利であり、しかも歩行時や、着用者がオートバイのサドルに跨っていないときに、下肢および/または上肢の動きの自由度を制限することのない衣服をユーザに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的およびその他の目的を達成するためのモーターサイクリスト用スーツは請求の範囲に記載された特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して実施形態を説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0008】
スーツは、図1〜図3に示すように、好ましくはレザー製のズボン10およびボディピース20が互いに分離不能に組み合わされた衣服であり、背の下部に限界される従来の伸縮性挿入体を有している。様々なジッパーが設けられ、特に21で示すものはボディピース20の正面の中心軸に沿って設けられ、他のもの(簡略化のために図示していない)はふくらはぎ部分12の下側および袖22に設けられている。
【0009】
本発明においては、伸縮性挿入体はスーツ内に組み込まれ、周囲のステッチ(簡略化のために図示していない)によってスーツの隣接部分に取り付けられている。リング状の挿入体15がズボンの脚部に形成されている一方、逆L字状の挿入体25がボディピース20の一部として形成されている。これらの挿入体のすべては当該分野の専門家に良く知られた技術を用いて作られている。すなわち、非常に薄い伸縮性繊維の層を、これが十分に展張されるようにする機能を果たすために近接配置された横ステッチを用いてレザーの層に組み合わせる技術(必要に応じて強化繊維の中間層も介挿される)である。
【0010】
ズボン10の部分を形成するリング状の挿入体15は、実際には膝16、すなわち腿18およびふくらはぎ12の間の関節の両側に連続して延びている。実際には、これらの挿入体のそれぞれは、図6Aにおいて展張状態で示す平面図から明らかなように、膝16の上の腿18の下部に位置するよう設計された中央帯152と、ふくらはぎ12の側部に沿って延在するよう設計された2つの連結部154と、各端縁部が互いに近接する位置までふくらはぎに沿ってさらに下側かつ背面側に延在する2つのテーパ付ウィングと、を具えている。ここで、本発明に係るスーツがレスト状態にある場合の形状(図1〜図4Aに示されている)では、各ふくらはぎ12の軸と各腿18とのなす角度が80度から100度の間、好ましくは90度であるようになっている。最も普通のオートバイ乗車状態すなわち非競技時の乗車状態において、各ふくらはぎ12の軸と各腿18とのなす角度がまさに80度から100度の間、好ましくは約90度であると考えられるのであれば、本発明は、使用時の上記第1状態において着用者の要求を十分に満たすような人間工学的特徴を提供する。この状態では、挿入体15は、図2、図3、図4Aおよび図5Bに示されるように、溝によって隔てられたほぼ等距離の複数の折り目を有している。
【0011】
さらにこれは、次のようなスーツの他の使用状態に対しても何ら悪影響を及ぼさない。すなわち、
・図5Aは、スーツ着用者の歩行(あるいはいずれにしても直立している)姿勢に関連しており、上述した角度は180度に近く、例えば165度である。
・図5Cはオートバイの競技時における第1の乗車姿勢に関連しており、上述した角度は約60度である。
・図5Dはオートバイの競技時における第2の乗車姿勢に関連しており、上述した角度は約45度未満、例えば36度である。
【0012】
図5Bと図5Aとの比較から明らかなとおり、挿入体15の折り目は膝16上ではより緻密となり、ふくらはぎ12ではより間隔が開いたものとなる一方、図5Cおよび図5Dは挿入体の折り目は膝16上ではより間隔が開いたものとなり、ふくらはぎ12では多少ともより緻密となる。
【0013】
図7は本発明の変形例であり、ここでは挿入体15のテーパ付ウィングがスーツのズボン10の裾まで、実際には踵の直近の部位まで延在している。
【0014】
他の例としては、スーツのボディピースの袖部22内や、肘すなわち上腕および前腕間の関節部分のいずれかの側部内にリング状の伸縮性挿入体を組み込むことで、スーツのレスト状態にあるときに、ボディピースの形状が、ズボンに関して前述したものとほぼ同様となり、オートバイ乗車時の最も通常の状態と合うようにすることができる。
【0015】
従来のデザインによるスーツでは、膝上に適用される挿入体(例えば図4Bにおいて参照番号17で示されるもの)は概して限られた範囲にしか広がっておらず、膝のいずれの側部にも広がるものではなく、ただその上にあるだけである。図4Bに示されるように、ふくらはぎ12が腿18となす角度は約130度であって、オートバイ乗車時の他のいかなる姿勢をとる際の角度とも相当に異なっている。従って、従来のスーツは人間工学的なデザイン性に劣り、使用時の上記第1状態を十分に満たすものではなかった。
【0016】
図8〜図10に示すように、本発明に係るスーツのボディピース20に組み込まれる伸縮性挿入体25は、胴の両側に沿って延在する第1側部252と、上方すなわち肩24Aに向かって傾斜する第2側部254とを有している。挿入体25の広がりの全体にわたって、折り目は、スーツのレスト状態に対応した形状において胴の長手軸に関し約45度傾いた状態となっており、オートバイ乗車時の腕22Aを上げた状態(図8参照)と背26Aを曲げた状態(図10参照)との双方に有利なものとなっている。
【0017】
添付した請求の範囲によって定義される範囲内で、他の変形例および実施形態を採用することが可能である。特に、本発明の対象となるものは、スーツだけでなく、ズボン自体およびボディピース自体を含むことを認識すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るモーターサイクリスト用スーツ外側から見た図であり、ズボンはレスト状態すなわちスーツが着用されていないときの形状で示されている。
【図2】図1のスーツを正面から見た図である。
【図3】図1のスーツを背面から見た図である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、それぞれ、本発明および従来例に係るスーツのズボンの部分を外側から見た図であり、レスト状態にある場合の両スーツの比較が容易となるように示している。
【図5】図5A、図5B、図5Cおよび図5Dは、前図と同じ方向から見た図であり、異なる使用状態において、本発明に係るスーツのズボンの脚によって取り得る4つの異なる形状を示している。
【図6】図6Aは図4Aに示した本発明に係る伸縮性挿入体を展張状態で示す平面図、図6Bは図4Bに示した従来例を展張状態で示す平面図である。
【図7】本発明に係るスーツのズボンに適用される伸縮性挿入体の変形例を図4Aと同様に示す図である。
【図8】スーツ着用者が腕を上げたときの形状で、本発明に係るボディピースを外側から部分的に示した図である。
【図9】図8と同様であるが、スーツ着用者がオートバイに乗車したときの形状でボディピースを示す図である。
【図10】図8および図9に示したボディピースの伸縮性挿入体を展張状態で示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性の挿入体を組み込んだズボン(10)およびボディピース(20)を具えたスーツ状のモーターサイクリスト用衣服であって、前記衣服のレスト状態の形状が、着用者がオートバイ乗車時に取る姿勢に対応するよう、前記挿入体(15,25)の形状および適用の態様が定められていることを特徴とするモーターサイクリスト用衣服。
【請求項2】
関節(16)の側部に延在するリング状の伸縮性挿入体が下肢および/または上肢に対応した前記衣服の部分に組み込まれていることを特徴とする請求項2に係る衣服。
【請求項3】
前記ズボン(10)に組み込まれる前記伸縮性挿入体(15)は、前記膝(16)の上の腿の下部に適用されるよう設計された中央帯(152)と、ふくらはぎ(12)の後方に延在して端縁が互いに近接するように設計された2つのテーパ付ウィング(156)と、前記中央帯および前記テーパ付ウィング間にあって前記ふくらはぎ(12)の内側および外側に延びるよう設計された2つの連結部(154)とからなり、前記レスト状態において、前記ふくらはぎ(12)の軸が前記腿(18)の軸に対してなす角度が80度から100度の間、好ましくは90度となるようにしたことを特徴とする請求項2に係る衣服。
【請求項4】
前記ボディピース(20)には逆L字形状の2つの挿入体(25)が設けられ、該挿入体は、腋の下から胴の側部に沿って延在するよう設計された第1側部(252)と、上方すなわち肩(24)に向かって傾斜するよう設計された第2側部(254)とを有し、前記レスト状態において、それぞれの前記挿入体(25)の折り目がなす角度が前記胴の長手軸に対して約45度となるようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに係る衣服。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズボン(10)およびボディピース(20)を具え、前記ズボンの脚部および/または前記ボディピースの袖部(22)に複数の伸縮性挿入体(15,25)を組み込んでなるスーツ状のモーターサイクリスト用衣服であって、膝(16)の側部および/または肘の側部に沿って前記挿入体(15)をリング状に連続して延在させ、前記衣服がレスト状態にあるときに、ふくらはぎ(12)および腿(18)の軸がなす角度と、上腕および前腕の軸がなす角度とが、それぞれオートバイ乗車時の通常の状態に対応するようにしたことを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記ズボンの前記膝(16)の関節の側部に延在する前記伸縮性挿入体(15)の各々は、前記膝(16)の上の腿の下部に適用されるよう設計された中央帯(152)と、前記ふくらはぎ(12)の後方に延在して端縁が互いに近接するように設計された2つのテーパ付ウィング(156)と、前記中央帯および前記テーパ付ウィング間にあって前記ふくらはぎ(12)の内側および外側に延びるよう設計された2つの連結部(154)とからなり、前記衣服のレスト状態において、前記ふくらはぎ(12)の軸が前記腿(18)の軸に対してなす角度が80度から100度の間、好ましくは90度となるようにしたことを特徴とする請求項1に係る衣服。
【請求項3】
前記膝および/または前記肘の前記挿入体に加えてさらに、前記ボディピース(20)には逆L字形状の2つの挿入体(25)が設けられ、該挿入体は、腋の下から胴の側部に沿って延在するよう設計された第1側部(252)と、上方すなわち肩(24)に向かって傾斜するよう設計された第2側部(254)とを有し、前記レスト状態において、それぞれの前記挿入体(25)の折り目がなす角度が前記胴の長手軸に対して約45度となるようにしたことを特徴とする請求項1に係る衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−504877(P2006−504877A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547593(P2004−547593)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011991
【国際公開番号】WO2004/039189
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(502016471)アルパインスターズ リサーチ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (9)
【Fターム(参考)】