説明

改変されたエフェクター機能を有するFc受容体結合ポリペプチド

そのFv部分を介した標的抗原との結合を保持したままで前炎症性メディエーターの阻害の増加をもたらす、ヒトFcγ受容体IIA(CD32A)に対して改変された結合特徴を有する改変体ポリペプチド(たとえば抗体)を産生する方法であって、少なくとも2つのアミノ酸残基を、ヒトIgG CH2領域のEU位置325、326または328で、SAAF、SKAF、NAAFおよびNKAFから選択される配列で置換することによってポリペプチドを改変することを含む方法を開示する。また、野生型CDR3領域と比較して改変された少なくとも1つのアミノ酸を含む改変体CDR3領域を含む分子、詳細にはポリペプチド、より詳細には免疫グロブリン(たとえば抗体)も開示する。本発明の方法に従って生成することができるポリペプチドは高度に可変性があり、これらには、Fc領域またはその生物活性のある部分を含む抗体および融合タンパク質が含まれ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本特許出願は、2007年5月14日に出願された米国仮特許出願第60/930,276号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/930,276号の内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、改変体Fc領域を含む分子、詳細にはポリペプチド、より詳細には免疫グロブリン(たとえば抗体)に関し、前記改変体Fc領域は、野生型Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、改変体Fc領域は、ヒトFcγ受容体IIA(CD32A)に対する改変された結合特徴を有し、これは前炎症性メディエーターの放出の予防をもたらす(たとえば、TNF−α、インターロイキン(IL)−1、IL−6、IL−8およびケモカイン)。本発明はまた、野生型CDR3領域と比較して改変された少なくとも1つのアミノ酸を含む改変体CDR3領域を含む分子、詳細にはポリペプチド、より詳細には免疫グロブリン(たとえば抗体)にも関する。本発明はまた、一般に、そのような分子を産生する方法、エフェクター機能を改変する方法、ならびにそのような改変された抗体を治療剤および診断剤として使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
抗体、または免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって一緒に連結された2本の重鎖、および2本の軽鎖を含み、それぞれの軽鎖は、ジスルフィド結合によって対応する重鎖と連結されている。クラスIgGの抗体(すなわち、クラスγ(G)の免疫グロブリン(Ig)の一般的構造の模式図を、図1Aに示す。
【0004】
それぞれの重鎖は、一方の末端に可変ドメインを有し、いくつかの定常ドメインが続く。それぞれの軽鎖は、一方の末端に可変ドメインを有し、その他方の末端に定常ドメインを有し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列しており、軽鎖定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列している。
【0005】
抗原は、軽鎖および重鎖のそれぞれの対の可変ドメイン中の抗原結合部位を介して、抗体と結合する。エフェクター分子として知られる他の分子は、分子の残りの部分中の他の部位、すなわち、抗原結合部位以外と結合し、抗体のこの部分は、抗体の「定常部分」と呼ばれ、そのような部位は、特に、軽鎖の末端を越えて伸びる重鎖の部分によって構成されるFc領域中に位置する。
【0006】
抗体の定常部分は、「エフェクター」細胞上の受容体と特異的に相互作用する。たとえば、Fc領域は、2つの分類に分けられているエフェクター機能を媒介する。第1の分類は、抗原結合とは独立して起こる機能である。主要組織適合複合体クラスI関連の受容体FcRnによるこれらの機能は、IgGに、循環中の残留性、および経細胞輸送によって細胞障壁を超えて移行される能力を与える(Ghetie VおよびWard S参照)。第2の分類は、抗体が抗原と結合した後に作動する機能である。これらの機能は、補体カスケードまたはFc受容体(FcR)を保有する細胞の関与を含む。
【0007】
FcRは、免疫グロブリンアイソタイプに対するその特異性によって定義される。たとえば、IgG抗体に対するFc受容体はFcγRと呼ばれる。FcRは、免疫複合体の貪食による抗体でコーティングされた病原体の除去と、対応する抗体でコーティングされた赤血球および様々な他の細胞標的(たとえば腫瘍細胞)の溶解をどちらも媒介する、造血細胞上の特殊な細胞表面受容体である。
【0008】
FcγRは、免疫動員の抑止または増強において重要な役割を果たす。現在、3つのクラスのFcγRが免疫系の細胞上で識別されている:単量体IgGと結合することができる高親和性受容体Fc RI(CD64)、ならびに低親和性受容体FcγRII(CD32)、および複合体形成したIgGと優先的に相互作用するFcγRIII(CD16)である。さらに、FcγRIIおよびFcγRIIIクラスは、「A」型と「B」型をどちらも含む(Gessner−JEら、Ann Heamatol、1998年、The IgG Fc receptor family、76:231〜248頁)。
【0009】
FcγRIIタンパク質は、単量体Igに対する低い親和性が原因で(10−1)複合体形成したIgGとしか結合しない、40KDaの膜内在性糖タンパク質である。この受容体は最も幅広く発現されるFcγRであり、単球、マクロファージ、B細胞、NK細胞、好中球、肥満細胞、および血小板を含めたすべての造血細胞上に存在する。FcγRIIは、その免疫グロブリン結合鎖中に2つの免疫グロブリン様領域しか持たず、したがって、IgGに対する親和性がFcγRIよりもはるかに低い。3つのヒトFcγRII遺伝子(FcγRII−A、FcγRII−B、FcγRII−C)が存在し、これらはすべて、IgGと凝集体または免疫複合体中で結合する。FcγRIIa受容体の遺伝子は、コドン131にGまたはAのどちらかを含み、第2の細胞外ドメイン中でそれぞれアルギニン(CGT)またはヒスチジン(CAT)のどちらかをもたらす。この変化は、受容体がIgGと結合する能力を改変する。FcγRIIA His−131、A/A遺伝子型を有する細胞は、位置131にArgを有するものよりも相当に高い親和性でヒトIgG2と結合し、逆に、Arg−131、G/G遺伝子型を有する細胞は、位置131にHisを有するものよりも相当に高い親和性でネズミIgG1と結合する(非特許文献1)。当初、T細胞増殖を始動させるためのネズミIgG1サブクラスの抗CD3抗体との単球の相互作用を用いた研究では、個体を高レスポンダーまたは低レスポンダーとして表現型で分類していた(非特許文献2)。現在では、このアッセイにおける高レスポンダーの細胞はG/GまたはA/G遺伝子型を有する一方で、低レスポンダー細胞はA/A遺伝子型を有することが知られている。FcγRIIa131R/R遺伝子型は、一部の感染症および自己免疫疾患に対する感受性の危険因子である(非特許文献3)。
【0010】
FcγRII−AおよびFcγRII−Bの細胞質ドメイン内の明確な差異が、受容体ライゲーションに対して2つの機能的に異種な応答を生じる。基本的な差異は、Aアイソフォームは貪食および呼吸バーストなどの細胞活性化をもたらす細胞内シグナル伝達を開始する一方で、BアイソフォームはたとえばB細胞活性化を阻害する阻害性シグナルを開始することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Salmonら、1992年、J. Clin. Invest. 89:1274〜1281頁
【非特許文献2】Taxら、1983年、Nature:304:445〜447頁
【非特許文献3】Van der Pol W.L.およびVan de Winkel J.G.J、1998年、Imrnunogenetics 48:222〜232頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
モノクローナル抗体(mAb)は現在、ヒト患者において疾患を治療するために使用されている。一部のmAbは抗体のエフェクター機能を利用せずに有効に機能し得るが(たとえば中和抗体)、多くの場合、免疫応答が誘発されるように免疫系を動員するように、抗体のFc部分を操作することが望ましい場合がある。当分野では、所定の標的と結合する能力を保持したままで増加した力価を有する改変体Fc領域を含む抗体を生成する必要性が存在する。したがって、改変されていない抗体と比較して、抗原との結合を保持したままで改変されたFc受容体活性を誘発する、改変されたIgG抗体を生成する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書に記載する改変ポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域の少なくともFcγR結合部分を含む。本発明の改変された抗体にはまた、抗体のCDR3領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されている改変体CDR3領域を有する、改変された抗体も含まれる。本発明の改変された抗体および改変ポリペプチドにはまた、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域の少なくともFcγR結合部分および改変体CDR3領域を含むポリペプチドも含まれる。本発明の改変された抗体および改変ポリペプチドにはまた、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも改変体Fc領域および改変体CDR3領域を含むポリペプチドも含まれる。
【0014】
本明細書に記載する改変ポリペプチドには、改変された抗体が、改変されていない抗体と比較して、抗原との結合を保持したままで抗原依存性のエフェクター機能の改変を誘発するように、たとえば、Fc領域またはそのFcR結合断片内に少なくとも1つの特異的なアミノ酸置換を含む抗体(たとえば、IgG定常ドメイン内にアミノ酸置換を有するポリペプチド)が含まれる。たとえば、改変された抗体は、前炎症性メディエーターの放出の阻止を誘発する。好ましい実施形態では、改変された抗体は、ヒトかつIgGアイソタイプの抗体である。たとえば、改変された抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプである。本明細書に記載する改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、増加した力価を有する。
【0015】
本発明の改変された抗体には、抗体のFc部分の定常領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されている、改変された抗体が含まれる。たとえば、Fc部分のCH2ドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸は、異なる残基、すなわちアミノ酸置換によって置き換えられている。本明細書に記載する改変された抗体中では、残基325、326および328に対応するアミノ酸残基のうちの1つまたは複数は、改変されていない抗体と比較して、異なる残基で置換されている。γ重鎖中の残基の番号付けは、EUインデックスのものである(Edelman, G.M.ら、1969年; Kabat, E, A.、T.T. Wu、H. M. Perry、K. S. Gottesman、およびC. Foeller.、1991年。Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Dept. of Health and Human Services、メリーランド州Bethesda、NIH Publication 91〜3242頁参照)。
【0016】
突然変異したFc部分を有するこれらの改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、改変されたエフェクター機能、たとえば、改変されたFc受容体活性を誘発する。たとえば、ヒトFc受容体はCD32Aである。一部の実施形態では、改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、CD32Aとのライゲーションに続いて、前炎症性メディエーターの放出の阻害の増加を誘発する。したがって、本明細書に記載する改変された抗体は、標的抗原と結合する能力を保持したままで、前炎症性メディエーターの放出の阻害を増加させるなど、改変されたFc受容体活性を誘発する。一部の実施形態では、改変された抗体は中和抗体であり、改変された抗体は、Fv結合を介して標的抗原の1つまたは複数の生物活性を中和する能力を保持したままで、改変されたFc受容体活性を誘発する。
【0017】
改変された抗体がヒトIgG1アイソタイプである実施形態では、改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、マウスIgG1γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328のアミノ酸置換を、単独で、またはEUアミノ酸位置325および326と一緒に含む。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328が、アラニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびチロシンなどの非極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328が、フェニルアラニンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置325が、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、セリンまたはスレオニンなどの極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置325が、セリンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置326が、アラニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびチロシンなどの非極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置326が、アラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変された抗体は、ヒトIgG1γ重鎖定常領域中の1つまたは2つのアミノ酸置換を伴うEUアミノ酸位置328を含み、置換は、EUアミノ酸位置325および326から選択される1つまたは2つのアミノ酸残基で起こる。一実施形態では、改変されたヒトIgG1抗体は、EU位置326および328でアミノ酸置換を含む。たとえば、ヒトIgG1γ重鎖定常領域の残基326が、アラニンで置換されており、ヒトIgG1γ重鎖定常領域の残基328が、フェニルアラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変されたヒトIgG1抗体のγ重鎖定常領域のEU位置325〜328は、SAAF、SKAF、NAAFおよびNKAFから選択される配列からなる。
【0018】
改変された抗体がヒトIgG2アイソタイプである実施形態では、改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、EUアミノ酸位置328のアミノ酸置換を、単独で、またはEUアミノ酸位置325および326と一緒に含む。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328が、アラニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびチロシンなどの非極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328が、フェニアラニンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置325が、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、セリンまたはスレオニンなどの極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置325が、セリンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置326が、アラニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびチロシンなどの非極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置326が、アラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変された抗体は、ヒトIgG2γ重鎖定常領域中の1つまたは2つのアミノ酸置換を伴うEUアミノ酸位置328を含み、置換は、EUアミノ酸位置325および326から選択される1つまたは2つのアミノ酸残基で起こる。一実施形態では、改変されたヒトIgG2抗体は、EU位置326および328でアミノ酸置換を含む。たとえば、ヒトIgG2γ重鎖定常領域の残基326が、アラニンで置換されており、ヒトIgG2γ重鎖定常領域の残基328が、フェニルアラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変されたヒトIgG2抗体のγ重鎖定常領域のEU位置325〜328は、SAAF、SKAF、NAAFおよびNKAFから選択される配列からなる。
【0019】
改変された抗体がヒトIgG3アイソタイプである実施形態では、改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、EUアミノ酸位置328のアミノ酸置換を、単独で、またはEUアミノ酸位置325および326と一緒に含む。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328が、アラニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびチロシンなどの非極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328が、フェニアラニンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置325が、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、セリンまたはスレオニンなどの極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置325が、セリンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置326が、アラニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびチロシンなどの非極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置326が、アラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変された抗体は、ヒトIgG3γ重鎖定常領域中の1つまたは2つのアミノ酸置換を伴うEUアミノ酸位置328を含み、置換は、EUアミノ酸位置325および326から選択される1つまたは2つのアミノ酸残基で起こる。一実施形態では、改変されたヒトIgG3抗体は、EU位置326および328でアミノ酸置換を含む。たとえば、ヒトIgG3γ重鎖定常領域の残基326が、アラニンで置換されており、ヒトIgG3γ重鎖定常領域の残基328が、フェニルアラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変されたヒトIgG3抗体のγ重鎖定常領域のEU位置325〜328は、SAAF、SKAF、NAAFおよびNKAFから選択される配列からなる。
【0020】
改変された抗体がヒトIgG4アイソタイプである実施形態では、改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、EUアミノ酸位置328のアミノ酸置換を、単独で、またはEUアミノ酸位置325および326と一緒に含む。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328が、アラニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびチロシンなどの非極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置328が、フェニアラニンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置325が、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、セリンまたはスレオニンなどの極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置325が、セリンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置326が、アラニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびチロシンなどの非極性アミノ酸で置換されている。最も好ましくは、γ重鎖定常領域のEUアミノ酸位置326が、アラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変された抗体は、ヒトIgG4γ重鎖定常領域中の1つまたは2つのアミノ酸置換を伴うEUアミノ酸位置328を含み、置換は、EUアミノ酸位置325および326から選択される1つまたは2つのアミノ酸残基で起こる。一実施形態では、改変されたヒトIgG4抗体は、EU位置326および328でアミノ酸置換を含む。たとえば、ヒトIgG4γ重鎖定常領域の残基326が、アラニンで置換されており、ヒトIgG4γ重鎖定常領域の残基328が、フェニルアラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変されたヒトIgG4抗体のγ重鎖定常領域のEU位置325〜328は、SAAF、SKAF、NAAFおよびNKAFから選択される配列からなる。
【0021】
本発明の改変された抗体にはまた、抗体のCDR3領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されている改変体CDR3領域を有する、改変された抗体も含まれる。本発明の改変された抗体および改変ポリペプチドにはまた、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域の少なくともFcγR結合部分および改変体CDR3領域を含むポリペプチドも含まれる。本明細書に記載する改変ポリペプチドには、改変された抗体が、改変されていない抗体と比較して、抗原との結合を保持したままで抗原依存性のエフェクター機能の改変を誘発するように、たとえば、Fc領域またはそのFcR結合断片内に改変体CDR3領域および少なくとも1つの特異的なアミノ酸置換を含む抗体(たとえば、IgG定常ドメイン内にアミノ酸置換を有するポリペプチド)が含まれる。
【0022】
改変体CDR3領域には、実施例4に示す改変体VH CDR3領域が含まれる:KDPSDAFPY(配列番号80)およびKDPSEGFPY(配列番号81)。改変体CDR3領域には、実施例4に示す改変体VL CDR3領域が含まれる:QNSHSFPLT(配列番号82)、QQGHSFPLT(配列番号83)、QNSSSFPLT(配列番号84)、およびQQSHSFPLT(配列番号85)。
【0023】
一部の実施形態では、改変された抗体は、改変体Fc領域と改変体CDR3領域をどちらも含む。一部の実施形態では、改変された抗体は、実施例3に示す改変体Fc領域と実施例4に示す改変体CDR3領域、たとえば配列番号80〜85をどちらも含む。一部の実施形態では、改変された抗体は、Fc領域中の改変体CH2ドメインと改変体CDR3領域をどちらも含む。一部の実施形態では、改変された抗体は、実施例3に示すFc領域中の改変体CH2ドメインと実施例4に示す改変体CDR3領域、たとえば配列番号80〜85をどちらも含む。一部の実施形態では、改変された抗体は、残基325、326および/または328(the EU index、Edelmanらのようにγ重鎖中の残基の番号付けを使用)に対応する残基のうちの1つまたは複数が突然変異したFc領域中の改変体CH2ドメインと改変体CDR3領域をどちらも含む。一部の実施形態では、改変された抗体は、実施例3に示す残基325、326および/または328(the EU index、Edelmanらのようにγ重鎖中の残基の番号付けを使用)に対応する残基のうちの1つまたは複数が突然変異したFc領域中の改変体CH2ドメインと実施例4に示す改変体CDR3領域、たとえば配列番号80〜85をどちらも含む。
【0024】
本発明の改変ポリペプチドおよび抗体にはまた、配列番号2、12、22、32、45、46、49、51、52、66、もしくは68のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有する重鎖可変アミノ酸配列、および/または配列番号7、17、27、37、47、48、50、53、71、73、75もしくは77のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有する軽鎖可変アミノ酸を含む抗体も含まれる。
【0025】
本発明の改変ポリペプチドおよび抗体にはまた、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域の少なくともFcγR結合部分を含み、かつ配列番号2、12、22、32、45、46、49、51、52、66、もしくは68のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有する重鎖可変アミノ酸配列、および/または配列番号7、17、27、37、47、48、50、53、71、73、75もしくは77のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有する軽鎖可変アミノ酸を含むポリペプチドも含まれる。一部の実施形態では、改変された抗体には、実施例3に示すFc領域中の改変体CH2ドメインをどちらも含む。一部の実施形態では、改変された抗体は、残基325、326および/または328(the EU index、Edelmanらのようにγ重鎖中の残基の番号付けを使用)に対応する残基のうちの1つまたは複数が突然変異したFc領域中の改変体CH2ドメインをどちらも含む。
【0026】
本発明の改変ポリペプチドおよび抗体にはまた、改変体Fc領域を含み、かつ配列番号2、12、22、32、45、46、49、51、52、66、もしくは68のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有する重鎖可変アミノ酸配列、および/または配列番号7、17、27、37、47、48、50、53、71、73、75もしくは77のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有する軽鎖可変アミノ酸を含むポリペプチドおよび抗体も含まれる。一部の実施形態では、改変された抗体は、実施例3に示すFc領域中の改変体CH2ドメインをどちらも含む。一部の実施形態では、改変された抗体は、残基325、326および/または328(the EU index、Edelmanらのようにγ重鎖中の残基の番号付けを使用)に対応する残基のうちの1つまたは複数が突然変異したFc領域中の改変体CH2ドメインをどちらも含む。
【0027】
本発明の改変ポリペプチドおよび抗体にはまた、Fc領域中の改変体CH2ドメインを含み、かつ配列番号2、12、22、32、45、46、49、51、52、66、もしくは68のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有する重鎖可変アミノ酸配列、および/または配列番号7、17、27、37、47、48、50、53、71、73、75もしくは77のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有する軽鎖可変アミノ酸を含むポリペプチドおよび抗体も含まれる。一部の実施形態では、改変された抗体には、実施例3に示すFc領域中の改変体CH2ドメインをどちらも含む。一部の実施形態では、改変された抗体には、残基325、326および/または328(the EU index、Edelmanらのようにγ重鎖中の残基の番号付けを使用)に対応する残基のうちの1つまたは複数が突然変異したFc領域中の改変体CH2ドメインをどちらも含む。
【0028】
本発明の改変された抗体およびポリペプチドにはまた、(i)配列番号3、13、23、および33からなる群から選択されるVH CDR1配列、(ii)配列番号4、14、24、および34からなる群から選択されるVH CDR2配列、(iii)配列番号5、15、25、35、80および81からなる群から選択されるVH CDR3配列のそれぞれと、少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有するアミノ酸配列を有する、3つの重鎖の相補性決定領域(CDR)、ならびに/または(iv)配列番号8、18、28、および38からなる群から選択されるVL CDR1配列、(v)配列番号9、19、29および39からなる群から選択されるVL CDR2配列、(vi)配列番号10、20、30、40、82、83、84および85からなる群から選択されるVL CDR3配列のそれぞれと、少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれより高い同一性を有するアミノ酸配列を含む3つのCDRを有する軽鎖を含む、ポリペプチドおよび抗体も含まれる。
【0029】
本発明はまた、抗体が、改変されていない抗体と比較して、ヒトCD32Aと結合した際に抗原との結合を保持したままで前炎症性メディエーターの放出の阻害の増加を誘発するように、γ重鎖定常領域の少なくともEUアミノ酸位置328が、改変されていない抗体中の対応するアミノ酸残基とは異なる同じ位置で、重鎖γ鎖定常領域のEU位置325および326に対応するアミノ酸残基のうちの1つまたは2つと一緒に、マウスIgG1の対応するEUアミノ酸残基で置換されている、モノクローナル抗体によってヒトCD32Aを標的化する方法も提供する。一部の実施形態では、改変された抗体は、実施例4に示す改変体VH CDR3領域をさらに含む:KDPSDAFPY(配列番号80)およびKDPSEGFPY(配列番号81)ならびに/または実施例4に示す改変体CDR3領域:QNSHSFPLT(配列番号82)、QQGHSFPLT(配列番号83)、QNSSSFPLT(配列番号84)、およびQQSHSFPLT(配列番号85)。
【0030】
一部の実施形態では、γ重鎖定常領域のEU位置325に対応するアミノ酸残基が、セリンで置換されている。一部の実施形態では、γ重鎖定常領域のEU位置326に対応するアミノ酸残基が、アラニンで置換されている。一部の実施形態では、γ重鎖定常領域のEU位置328に対応するアミノ酸残基が、フェニルアラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変された抗体は、実施例4に示す改変体VH CDR3領域をさらに含む:KDPSDAFPY(配列番号80)およびKDPSEGFPY(配列番号81)ならびに/または実施例4に示す改変体CDR3領域:QNSHSFPLT(配列番号82)、QQGHSFPLT(配列番号83)、QNSSSFPLT(配列番号84)、およびQQSHSFPLT(配列番号85)。
【0031】
一部の実施形態では、改変された抗体は、トル様受容体(TLR)、MD2アクセサリータンパク質およびCD14から選択される標的と結合する。たとえば、改変された抗体は、可溶性TLR4、TLR4/MD2複合体、または可溶性TLR4とTLR4/MD2複合体の両方と結合する。一部の実施形態では、改変された抗体は、TLR2と結合する。たとえば、抗体は、LPSに誘発される炎症誘発性サイトカインの産生を遮断、たとえば中和することができる。
【0032】
一部の実施形態では、改変された抗体は、少なくともEU位置328のアミノ酸残基の改変を、可能な場合はアミノ酸残基325および326から選択されるγ重鎖定常領域の少なくとも1つのアミノ酸残基の改変と一緒に含むヒトIgG1アイソタイプ抗体であり、改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、ヒトCD32Aと結合した際に、抗原との結合を保持したままで改変されたFcエフェクター活性を誘発し、抗体は、(a)配列番号3、13、23または33のアミノ酸配列を含むV CDR1領域、(b)配列番号4、14、24または34のアミノ酸配列を含むV CDR2領域、(c)配列番号5、15、25、35、80または81のアミノ酸配列を含むV CDR3領域、(d)配列番号8、18、28または38のアミノ酸配列を含むV CDR1領域、(e)配列番号9、19、29または39のアミノ酸配列を含むV CDR2領域、および(f)配列番号10、20、30、40、82、83、84、または85のアミノ酸配列を含むV CDR3領域を含み、抗体は、可溶性TLR4、MD2、TLR4/MD2複合体または可溶性TLR4とTLR4/MD2複合体の両方と結合する。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEU位置325が、セリンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEU位置326が、アラニンで置換されている。一実施形態では、γ重鎖定常領域のEU位置328が、フェニルアラニンで置換されている。
【0033】
一部の実施形態では、改変された抗体は、改変されていない抗体中の対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基による2つ以上の置換を有するγ重鎖定常領域を含み、置換は、EU位置328ならびにγ重鎖定常領域の残基325および326から選択される1つまたは2つのアミノ酸残基で起こる。一実施形態では、置換は残基326および328である。たとえば、重鎖定常領域のEU位置326が、アラニンで置換されており、重鎖定常領域のEU位置328が、フェニルアラニンで置換されている。一部の実施形態では、改変された抗体は、γ重鎖定常領域のEU位置325〜328がSAAF、SKAF、NAAFおよびNKAFから選択される配列からなる重鎖定常領域を含む。一実施形態では、改変されたヒトIgG1抗体のV CDR1領域には配列番号23のアミノ酸配列が含まれ、V CDR2領域には配列番号24のアミノ酸配列が含まれ、V CDR3領域には配列番号25または配列番号80または配列番号81のアミノ酸配列が含まれ、V CDR1領域には配列番号28のアミノ酸配列が含まれ、V CDR2領域には配列番号29のアミノ酸配列が含まれ、V CDR3領域には配列番号30、配列番号82、配列番号83、配列番号84または配列番号85のアミノ酸配列が含まれる。
【0034】
一部の実施形態では、改変された抗体は、本明細書で16G7、mu16G7、7E3、mu7E3、15C1、mu15C1、18H10およびmu18H10と呼ぶ、抗体の改変されたバージョンである。TLR4/MD2複合体を認識するこれらの抗体の改変されたバージョンは、改変された、たとえば阻害性のヒトCD32A活性を誘発し、LPSに誘発される炎症誘発性サイトカインの産生を、市販の抗TLR4非遮断モノクローナル抗体HTA125よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、75倍、または100倍多く阻害する。
【0035】
一部の実施形態では、改変された抗体は、CD14を認識する抗体の改変されたバージョン、たとえば28C5として知られている抗CD14モノクローナル抗体(たとえば、その全体が本明細書に参照により組み込まれている米国特許第6,444,206号参照)、および、たとえばT2.5として知られている抗TLR2モノクローナル抗体を含めた、TLR2を認識する抗体の改変されたバージョン(たとえば、その全体が本明細書に参照により組み込まれているWO2005/028509参照)である。
【0036】
本発明はまた、ガンマ1Fc(γ1Fc)領域が含まれる単離したポリペプチドも提供し、領域のEU位置325〜328のアミノ酸残基は、SAAF、SKAF、NAAFおよびNKAFから選択されるアミノ酸モチーフからなる。
【0037】
本発明の改変された抗体は、当業者に周知の技術を含めた、任意の適切な技術を用いて産生する。たとえば、改変された抗体は、既知の抗体を、Fc領域中、詳細にはCH2ドメイン中、より詳細にはEU位置325、326および328から選択される位置に少なくとも1つの突然変異が含まれるように改変することによって産生する。γ重鎖中の残基の番号付けは、EUインデックスのものである(Edelman, G.M.ら、1969年; Kabat, E, A.、T.T. Wu、H. M. Perry、K. S. Gottesman、およびC. Foeller.、1991年。Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Dept. of Health and Human Services、メリーランド州Bethesda、NIH Publication 91〜3242頁参照)。本明細書に記載する抗体の免疫グロブリンの可変領域の番号付けは、E.A. Kabatら、1991年によって定義されるとおりである。(Kabat, E, A.、T.T. Wu、H. M. Perry、K. S. Gottesman、およびC. Foeller.、1991年。Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Dept. of Health and Human Services、メリーランド州Bethesda、NIH Publication 91〜3242頁)。
【0038】
本発明による薬剤組成物には、本発明の改変された抗体および担体が含まれることができる。改変された抗体は、様々な免疫グロブリン間で配列相同性が高い限りは、等しくネズミ、ヒトおよびラット起源であり得る。組成物には、単一のアイソタイプクラス、たとえばIgG1アイソタイプの改変された抗体、またはラット、マウスおよびヒトのIgGアイソタイプクラスの任意の組合せ、たとえば、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、IgG4およびそれらの組合せが含まれることができる。これらの薬剤組成物は、たとえば診断的キットなどのキット中に含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】マウスおよびキメラのIgG1 15C1抗体の模式図である。軽鎖および重鎖のマウスの可変および定常ドメインを無地の黒色で示す。軽鎖および重鎖のヒト定常ドメインを斜線の黒色で示す。マウスIgG1 15C1は、ヒトTLR4に特異的なIgG1サブクラスのマウス免疫グロブリンである。キメラIgG1 15C1は、ヒトIgG1重鎖およびκ軽鎖定常領域と融合した15C1のマウスの重鎖および軽鎖可変領域からなる、組換え免疫グロブリンである。V=可変ドメイン、L=軽鎖、H=重鎖、CK=軽鎖のκ定常ドメイン、CH1、CH2、CH3=重鎖の定常ドメイン。
【図1B】マウスおよびキメラのIgG1 15C1による、ヒトTLR4/MD2を発現するヒト胚性腎臓293細胞(HEK293)上のLPS依存性のIL−8の産生を示すグラフである。
【図2】マウスおよびキメラのIgG1 15C1抗体による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図3】組換えマウスIgG1 15C1およびD265A突然変異抗体による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図4A】全血中のIL−6の産生によって測定して、α−CD32 MAb AT10またはα−CD32A MAb IV.3のどちらかを加えることで、LPSのMAb 15C1阻害が同程度まで減少したことを示す図である。
【図4B−1】15C1のマウスIgG1またはヒトIgG4のバージョンを用いた、ホモ接合性およびヘテロ接合性の個体に由来する全血における、LPS依存性のTLR4活性化の15C1媒介性の遮断を示す図である。IL−6の産生の度合が様々なドナー間で変動していたため、結果は、アイソタイプ対照抗体(100%のLPS活性化に対応する)で得られた値と比較したIL−6放出の阻害のパーセンテージとして示す。エラーバーは±SEMを示す。
【図4B−2】15C1のマウスIgG1またはヒトIgG4のバージョンを用いた、ホモ接合性およびヘテロ接合性の個体に由来する全血における、LPS依存性のTLR4活性化の15C1媒介性の遮断を示す図である。IL−6の産生の度合が様々なドナー間で変動していたため、結果は、アイソタイプ対照抗体(100%のLPS活性化に対応する)で得られた値と比較したIL−6放出の阻害のパーセンテージとして示す。エラーバーは±SEMを示す。
【図5A】マウスおよびヒトのIgG1 CH2ドメインをそれぞれ含むキメラおよびマウスのIgG1 15C1抗体の模式図である。軽鎖および重鎖のマウスの可変および定常ドメインを黒色で示す。軽鎖および重鎖のヒト定常ドメインを斜線の黒色で示す。マウスIgG1 15C1は、ヒトTLR4に特異的なIgG1サブクラスのマウス免疫グロブリンである。キメラIgG1 15C1は、ヒトIgG1の重鎖およびκ軽鎖定常領域と融合した15C1のマウスの重鎖および軽鎖可変領域からなる、組換え免疫グロブリンである。V=可変ドメイン、L=軽鎖、H=重鎖、CK=軽鎖のκ定常ドメイン、CH1、CH2、CH3=重鎖の定常ドメイン。
【図5B】マウスおよびキメラのIgG1 15C1抗体間でCH2ドメインを交換することによる、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図6A】突然変異体A、B、CおよびDについて、それぞれ相同的な対応するヒトIgG1 CH2サブ領域、残基231〜262、318〜340、295〜318および262〜295を含む、4つのマウスCH2突然変異体(A、B、CおよびD)の模式図である。
【図6B】その表面上にヒトTLR4−MD2複合体を発現するCHO安定細胞系との結合を示すグラフである。
【図6C】マウスとヒトのIgG1の間のハイブリッドCH2サブ領域ドメインを含むキメラIgG1 15C1による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図7A】マウスIgG1 CH2ドメイン残基319〜340を含むキメラIgG1 15C1の模式図である。軽鎖および重鎖のマウスの可変および定常ドメインを黒色で示す。軽鎖および重鎖のヒト定常ドメインを斜線の黒色で示す。キメラIgG1 15C1は、ヒトIgG1の重鎖およびκ軽鎖定常領域と融合した15C1のマウスの重鎖および軽鎖可変領域からなる、組換え免疫グロブリンである。V=可変ドメイン、L=軽鎖、H=重鎖、CK=軽鎖のκ定常ドメイン、CH1、CH2、CH3=重鎖の定常ドメイン。
【図7B】キメラIgG1 15C1または完全長もしくは突然変異体の319〜340マウスCH2ドメインのどちらかを含むキメラIgG1 15C1による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図8A】重鎖CH2ドメインのマウスIgG1 C末端(残基319〜340)および重鎖CH2ドメインのヒトIgG1 C末端(残基319〜340)の推定アミノ酸配列のアラインメントを例示する図である。ダッシュ記号は、マウス配列中のものと同一のアミノ酸を示す。配列は、EUの番号付けに従った最大の核酸アラインメントに基づいて、アラインメントを行った。
【図8B】重鎖CH2ドメインのマウスIgG1 C末端(残基319〜340)および5つの突然変異体(A〜E)ならびに重鎖CH2ドメインのヒトIgG1 C末端(残基319〜340)の推定アミノ酸配列のアラインメントを例示する図である。ダッシュ記号は、マウス配列中のものと同一のアミノ酸を示す。配列は、EUの番号付けに従った最大の核酸アラインメントに基づいて、アラインメントを行った。突然変異は、マウスアミノ酸残基、続いてマウスとヒトの配列間の7つの差異に対応する1から7の番号、最後に、それが突然変異したヒトアミノ酸によって示す。
【図8C】キメラIgG1 15C1、完全長または突然変異体319〜340マウスCH2のどちらかを含むキメラIgG1 15C1による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図9A】その表面上にヒトTLR4−MD2を発現するCHO安定細胞系との結合を示すグラフである。
【図9B】キメラIgG1 15C1、muCH2 15C1および突然変異体キメラIgG1 15C1抗体による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図10】キメラIgG1 15C1、マウスIgG1 15C1、マウスCH2を含むキメラIgG1 15C1およびマウスCH2を含むヒト化15C1による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図11A】その表面上にヒトTLR4−MD2を発現するCHO安定細胞系との結合を示すグラフである。
【図11B】ヒト化15C1突然変異体C、F、GおよびHならびにマウスCH2を含むヒト化15C1による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図12】キメラIgG1 15C1、ヒト化15C1突然変異体CおよびマウスCH2を含むヒト化15C1による、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示すグラフである。
【図13A】マウス抗TLR2(13A)、マウス抗MD2(18H10、13B)およびマウス抗CD14(13C)MAによる、マウス抗ヒトCD32モノクローナル抗体を用いたまたは用いない、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示す一連のグラフである。
【図13B】マウス抗TLR2(13A)、マウス抗MD2(18H10、13B)およびマウス抗CD14(13C)MAによる、マウス抗ヒトCD32モノクローナル抗体を用いたまたは用いない、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示す一連のグラフである。
【図13C】マウス抗TLR2(13A)、マウス抗MD2(18H10、13B)およびマウス抗CD14(13C)MAによる、マウス抗ヒトCD32モノクローナル抗体を用いたまたは用いない、ヒト全血アッセイにおけるLPS依存性のIL−6の産生を示す一連のグラフである。
【図14A】アクセサリータンパク質MD−2をコードしている核酸配列を例示する図である(配列番号41)。
【図14B】成熟MD−2アクセサリータンパク質のアミノ酸配列を例示する図である(配列番号42)。
【図15】ヒトトル様受容体4(TLR4)のアミノ酸配列を例示する図である(配列番号43)。
【図16】ヒト、マウスおよびラットのIgGアイソタイプのCH2ドメインのタンパク質ディスプレイを例示する図である。「」は、その行の残基が、アラインメント中のすべての配列で同一であることを意味する。
【図17A】組換えヒトTLR4−MD2を発現する細胞上のフローサイトメトリーによる、15C1ヒト化突然変異体の分析を示す一連のグラフである。
【図17B】組換えヒトTLR4−MD2を発現する細胞上のフローサイトメトリーによる、15C1ヒト化突然変異体の分析を示す一連のグラフである。
【図17C】組換えヒトTLR4−MD2を発現する細胞上のフローサイトメトリーによる、15C1ヒト化突然変異体の分析を示す一連のグラフである。
【図17D】組換えヒトTLR4−MD2を発現する細胞上のフローサイトメトリーによる、15C1ヒト化突然変異体の分析を示す一連のグラフである。
【図17E】組換えヒトTLR4−MD2を発現する細胞上のフローサイトメトリーによる、15C1ヒト化突然変異体の分析を示す一連のグラフである。
【図17F】組換えヒトTLR4−MD2を発現する細胞上のフローサイトメトリーによる、15C1ヒト化突然変異体の分析を示す一連のグラフである。
【図17G】組換えヒトTLR4−MD2を発現する細胞上のフローサイトメトリーによる、15C1ヒト化突然変異体の分析を示す一連のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書に記載する改変された抗体は、改変された抗体が、改変されていない抗体と比較して、抗原との結合を保持したままで抗原依存性のエフェクター機能の改変を誘発するように、γ重鎖定常領域中に少なくとも1つの特異的なアミノ酸置換を含む抗体である。好ましい実施形態では、改変された抗体は、ヒトである。たとえば、改変された抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプである。
【0041】
本発明の改変された抗体にはまた、抗体のCDR3領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されている改変体CDR3領域を有する、改変された抗体も含まれる。本発明の改変された抗体および改変ポリペプチドにはまた、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域の少なくともFcγR結合部分および改変体CDR3領域を含むポリペプチドも含まれる。本発明の改変された抗体および改変ポリペプチドにはまた、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも改変体Fc領域および改変体CDR3領域を含むポリペプチドも含まれる。改変体CDR3領域には、実施例4に示す改変体VH CDR3領域が含まれる:KDPSDAFPY(配列番号80)およびKDPSEGFPY(配列番号81)。改変体CDR3領域には、実施例4に示す改変体VL CDR3領域が含まれる:QNSHSFPLT(配列番号82)、QQGHSFPLT(配列番号83)、QNSSSFPLT(配列番号84)、およびQQSHSFPLT(配列番号85)。
【0042】
本発明の改変された抗体には、抗体のFc部分のCH2ドメイン中の少なくともEU位置328のアミノ酸残基が改変されている、改変された抗体が含まれる。たとえば、少なくともEU位置328のアミノ酸残基がフェニルアラニンで置換されている。本明細書に記載する改変された抗体中では、改変されていない抗体と比較して、少なくともEU位置328のアミノ酸残基が、単独で、またはEUアミノ酸位置325および326と一緒に、異なる残基で置換されている。
【0043】
改変されたFc部分を有するこれらの改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、改変されたエフェクター機能、たとえば改変されたFc受容体活性を誘発する。たとえば、ヒトFc受容体は、CD32Aである。一部の実施形態では、改変された抗体は、改変されていない抗体と比較して、CD32Aとのライゲーションに続いて、前炎症性メディエーターの放出の防止を誘発する。したがって、本明細書に記載する改変された抗体は、標的抗原と結合する能力を保持したままで、前炎症性メディエーターの放出の阻止などの改変されたFc受容体活性を誘発する。一部の実施形態では、改変された抗体は中和抗体であり、改変された抗体は、標的抗原の1つまたは複数の生物活性を中和する能力を保持したままで、改変されたFc受容体活性を誘発する。
【0044】
たとえば、本発明の改変された抗体には、ヒトTLR4/MD−2受容体の複合体と結合するモノクローナル抗体が含まれる。この受容体複合体は、グラム陰性細菌の外膜の主要な構成要素であるリポ多糖(LPS)によって活性化される。本発明の改変された抗体は、LPSを介して受容体活性化および続く細胞内シグナル伝達を阻害する。したがって、改変された抗体は、TLR4/MD−2受容体の複合体の活性化を中和する。具体的には、本発明は、細胞表面上に発現されるTLR4/MD−2受容体の複合体を認識する、改変された抗体を提供する。これらの改変された抗体は、LPSに誘発されるIL−8の産生を遮断する。さらに、本発明の一部の改変された抗体はまた、MD−2と複合体形成していない場合にもTLR4を認識する。改変された抗体は、たとえばヒト化抗体である。
【0045】
本発明の抗体には、ヒトTLR4/MD−2受容体の複合体と結合し、また、MD−2の存在とは独立してもTLR4と結合する抗体が含まれる。本発明の抗体にはまた、ヒトTLR4/MD−2受容体の複合体のTLR4部分と結合するが、結合がMD−2の存在に依存する抗体も含まれるが、MD−2の存在によって結合が大きく増強され、これは、MD−2の存在がTLR4中のコンホメーション変化を引き起こして、抗体によって結合されるエピトープが曝露することを示唆している。さらに、本発明の抗体には、ヒトTLR4/MD−2受容体の複合体と結合し、TLR4の存在下でMD−2とも結合する抗体が含まれる。
【0046】
本発明の改変された抗体にはまた、任意のトル様受容体などの標的を認識する抗体も含まれる。トール受容体は、Drosophila中で最初に発見され、タンパク質の細胞外部分にロイシンに富んだ反復(LRR)を有し、1つまたは2つのシステインに富んだドメインを有する、I型膜貫通タンパク質である。Drosophilaトール受容体の哺乳動物の相同体は、「トル様受容体」(TLR)として知られている。TLRは、微生物粒子を認識し、これらの微生物粒子源に対して免疫細胞を活性化することによって、自然免疫において役割を果たす。
【0047】
現在、11種類のトル様受容体、TLR1〜11がヒトで同定されている(Pandey SおよびAgrawal DK、Immunobiology of Toll−like−receptors:emerging trends。Immunol. Cell Biol.、2006年; 84:333〜341頁)。これらのTLRは、その細胞内ドメインの、IL−1受容体のそれに対する相同性によって、かつ細胞外のロイシンに富んだ反復の存在によって、特徴づけられている。様々な種類のTLRは様々な種類の微生物粒子によって活性化される。たとえば、TLR4は、主にリポ多糖(LPS)によって活性化される一方で、TLR2はリポテイコ酸(LTA)、リポアラビノマンナン(LAM)、リポタンパク質(BLP)、およびペプチドグリカン(PGN)によって活性化される。RP105などのトール受容体相同体も同定されている。
【0048】
たとえば、本発明の改変された抗体には、たとえば、T2.5として知られている抗TLR2モノクローナル抗体の1つまたは複数の改変されたバージョンを含めた、TLR2を認識する抗体が含まれる(たとえば、その全体が本明細書に参照により組み込まれているWO2005/028509参照)。
【0049】
他の適切な改変された抗体には、CD14を認識する抗体、たとえば、28C5として知られている抗CD14モノクローナル抗体の1つまたは複数の改変されたバージョンが含まれる(たとえば、その全体が本明細書に参照により組み込まれている米国特許第6,444,206号参照)。
定義:
別段に定義しない限りは、本発明に関連して使用する科学用語および技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有する。さらに、内容からそうでないことが必要でない限りは、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれる。一般に、本明細書に記載する、細胞および組織の培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴ−またはポリヌクレオチドの化学およびハイブリダイゼーションに関連して利用する学名、またその技術は、当分野で周知かつ一般的に使用されているものである。標準の技術を、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(たとえば、電気穿孔、リポフェクション)に用いる。酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書に従って、または当分野で一般的に達成されているもしくは本明細書に記載するように行う。前述の技術および手順は、一般に、当分野で周知の慣用の方法に従って、および本明細書全体にわたって引用かつ記述した、様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載のように行う。たとえば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年))を参照されたい。本明細書に記載する、分析化学、合成有機化学、および医薬や製薬化学に関連して利用する学名、ならびにその実験室の手順および技術は、当分野で周知かつ一般的に使用されているものである。標準の技術を、化学合成、化学分析、製薬の調製、配合、および送達、ならびに患者の治療に用いる。
【0050】
本開示に従って利用する以下の用語は、別段に指定しない限りは、以下の意味を有すると理解されたい。
【0051】
本明細書で使用する用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子をいう。「特異的に結合する」または「免疫反応する」または「免疫特異的に結合する」とは、抗体が所望の抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドとは反応しない、またははるかに低い親和性(K>10−6)で結合することを意味する。抗体には、それだけには限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片、scFv、ならびにFab発現ライブラリが含まれる。
【0052】
基本的な抗体構造単位は、四量体を含むことが知られている。それぞれの四量体は2つの同一のポリペプチド鎖の対からなり、それぞれの対は、1本の「軽鎖」(約25kDa)および1本の「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。それぞれの鎖のアミノ末端部分には、主に抗原認識を担っている、約100〜110個またはそれより多くのアミノ酸の可変領域が含まれる。それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担っている定常領域を定義する。一般に、ヒトから得られた抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのうちのいずれかに関連し、これらは、分子中に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスにはサブクラスも存在し、たとえば、IgG1、IgG2などである。さらに、ヒトでは、軽鎖はκ鎖またはλ鎖であり得る。
【0053】
本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」とは、一意の軽鎖遺伝子産物および一意の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の1つの分子種のみを含む、抗体分子の集団をいう。具体的には、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、集団のすべての分子で同一である。MAbは、それに対する独特の結合親和性によって特徴づけられた抗原の特定のエピトープと、免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
【0054】
用語「抗原結合部位」または「結合部分」とは、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分をいう。抗原結合部位は、重鎖(「H」)および軽鎖(「L」)のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と呼ばれる重鎖および軽鎖のV領域内の3つの相違性が高いストレッチが、「フレームワーク領域」または「FR」として知られている、より保存されているフランキングストレッチの間に挿入されている。したがって、用語「FR」とは、天然では、免疫グロブリン中の超可変領域の間およびそれに隣接して見つかる、アミノ酸配列をいう。抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、抗原結合表面を形成するように三次元空間内で互いに対して配置されている。抗原結合表面は、結合した抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。それぞれのドメインのアミノ酸の割当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、メリーランド州Bethesda(1987年および1991年))、またはChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901〜917頁(1987年)、Chothiaら、Nature 342:878〜883頁(1989年)の定義に従う。
【0055】
本明細書で使用する用語「エピトープ」には、免疫グロブリン、scFv、またはT細胞受容体と特異的結合することができる任意のタンパク質決定因子が含まれる。用語「エピトープ」には、免疫グロブリンまたはT細胞受容体と特異的結合することができる任意のタンパク質決定因子が含まれる。エピトープ決定因子は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性のある表面基からなり、通常、特異的な三次元構造的特徴、および特異的な荷電特徴を有する。たとえば、抗体は、ポリペプチドのN末端またはC末端ペプチドに対して産生し得る。抗体は、解離定数が≦1μM、たとえば≦100nM、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦1nMである場合に、抗原と特異的に結合すると言われる。
【0056】
本明細書で使用する用語「免疫学的結合」および「免疫学的結合特性」とは、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異的な抗原との間で起こる種類の非共有的相互作用をいう。免疫学的結合の相互作用の強度、または親和性は、相互作用の解離定数(K)の観点から表すことができ、より小さなKがより高い親和性を表す。選択したポリペプチドの免疫学的結合特性は、当分野で周知の方法を用いて定量することができる。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原の複合体の形成および解離の速度の測定を伴い、これらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および速度に両方向で同等に影響を与える幾何学的パラメータに依存する。したがって、「会合速度定数」(Kon)と「解離速度定数」(Koff)はどちらも、濃度ならびに会合および解離の実際の速度を計算することによって決定できる。(Nature 361:186〜87頁(1993年)参照)。Koff/Konの比により、親和性に関連しないすべてのパラメータの相殺が可能となり、これが解離定数Kに等しい。(一般に、Daviesら、(1990年)Annual Rev Biochem 59:439〜473頁参照)。本発明の抗体は、放射性リガンド結合アッセイまたは当業者に知られている同様のアッセイなどのアッセイによって測定して、平衡結合定数(K)が≦1μM、たとえば≦100nM、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦1nMである場合に、その標的と特異的に結合すると言われる。
【0057】
本明細書で使用する用語「単離したポリヌクレオチド」とは、ゲノム、cDNA、もしくは合成起源のまたはその何らかの組合せポリヌクレオチドを意味し、その起源が原因で、「単離したポリヌクレオチド」は、(1)「単離したポリヌクレオチド」が天然で見つかるポリヌクレオチドの全体もしくは一部分と会合していないか、(2)天然では連結していないポリヌクレオチドと作動可能に連結しているか、または(3)天然においてより大きな配列の一部として存在しない。本発明によるポリヌクレオチドには、本明細書に記載する、重鎖免疫グロブリン分子をコードしている核酸分子、および軽鎖免疫グロブリン分子をコードしている核酸分子が含まれる。
【0058】
本明細書で言及する用語「単離したタンパク質」とは、cDNA、組換えRNA、もしくは合成起源またはその何らかの組合せのタンパク質を意味し、その起源または由来源が原因で、「単離したタンパク質」は、(1)天然で見つかるタンパク質と会合していないか、(2)同じ供給源からの他のタンパク質を含まない、たとえば、ネズミタンパク質を含まないか、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるか、または(4)天然に存在しない。
【0059】
本明細書において、用語「ポリペプチド」は、ポリペプチド配列のネイティブタンパク質、断片、または類似体に言及する一般用語として使用する。したがって、ネイティブタンパク質断片および類似体は、ポリペプチド属の種である。本発明によるポリペプチドは、本明細書に記載する重鎖免疫グロブリン分子および軽鎖免疫グロブリン分子、重鎖免疫グロブリン分子とκ軽鎖免疫グロブリン分子などの軽鎖免疫グロブリン分子、およびその逆を含む組合せによって形成される抗体分子、ならびにそれらの断片および類似体を含む。
【0060】
物体に適用して本明細書で使用する用語「天然に存在する」とは、物体を天然で見つけることができることをいう。たとえば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、天然での供給源から単離することができ、実験室内または他の様式で意図的に人工改変されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0061】
本明細書で使用する用語「作動可能に連結した」とは、そのように記載した構成要素の位置が、その意図した様式で機能することを可能にする関係にあることをいう。コード配列と「作動可能に連結した」制御配列は、コード配列の発現が制御配列に適合した条件下で達成されるように、ライゲーションする。
【0062】
本明細書で使用する用語「制御配列」とは、それがライゲーションしているコード配列の発現およびプロセシングをもたらすために必要なポリヌクレオチド配列をいう。そのような制御配列の性質は宿主生物に応じて変化し、原核生物では、そのような制御配列には、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が含まれ、真核生物では、一般に、そのような制御配列には、プロモーターおよび転写終結配列が含まれる。用語「制御配列」には、最小でも、その存在が発現およびプロセシングに必須であるすべての構成要素が含まれることを意図し、その存在が有利である追加の構成要素、たとえば、リーダー配列および融合パートナー配列も含まれることができる。本明細書で言及する用語「ポリヌクレオチド」とは、少なくとも10個の塩基長のヌクレオチドのポリマーホウ素、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのどちらか、またはいずれかの種のヌクレオチドの改変された形態を意味する。この用語には、DNAの一本鎖および二本鎖形態が含まれる。
【0063】
本明細書で使用する20個の慣用のアミノ酸およびその略記は、慣用の用法に従う。Immunology − A Synthesis(第2版、E.S. GolubおよびD.R. Gren編、Sinauer Associates、マサチューセッツ州Sunderland(1991年))を参照されたい。20個の慣用のアミノ酸の立体異性体(たとえばD−アミノ酸)、α−,α−二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の慣用でないアミノ酸も、本発明のポリペプチドの適切な構成要素であり得る。慣用でないアミノ酸の例には、4ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、σ−N−メチルアルギニン、ならびに他の同様のアミノ酸およびイミノ酸(たとえば4−ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書で使用するポリペプチドの表示では、標準の用法および慣例に従って、左側の方向がアミノ末端の方向であり、右側の方向がカルボキシ末端の方向である。
【0064】
ポリペプチドに適用する用語「実質的な同一性」とは、2つのペプチド配列が、初期設定のギャップウェイトを用いたプログラムGAPまたはBESTFITによってなど、最適にアラインメントした場合に、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。
【0065】
好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0066】
保存的アミノ酸置換とは、類似した側鎖を有する残基の互換性をいう。たとえば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニン、およびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0067】
本明細書に記載する、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列の軽微な変動は、アミノ酸配列中の変動が少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは99%であることを維持している限りは、本発明によって包含されることを企図する。具体的には、保存的アミノ酸置換が企図される。保存的置換とは、その側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝子にコードされているアミノ酸は、一般に、ファミリーに分類される。(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸であり、(2)塩基性アミノ酸は、リシン、アルギニン、ヒスチジンであり、(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、(4)無電荷の極性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸には、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、セリン、およびスレオニンが含まれる。疎水性アミノ酸には、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびバリンが含まれる。他のアミノ酸のファミリーには、(i)脂肪族−ヒドロキシファミリーであるセリンおよびスレオニン、(ii)アミド含有ファミリーであるアスパラギンおよびグルタミン、(iii)脂肪族ファミリーであるアラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、ならびに(iv)芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが含まれる。たとえば、ロイシンをイソロイシンもしくはバリンで、アスパラギン酸をグルタミン酸で、スレオニンをセリンで置き換える隔離した置き換え、または1つのアミノ酸を構造的に関連したアミノ酸で置き換える同様の置き換えは、特に置き換えがフレームワーク部位内のアミノ酸に関与しない場合、生じる分子の結合または特性に大きな影響は与えないと予測することが妥当である。アミノ酸の変化が機能的なペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性のアッセイを行うことによって、容易に決定することができる。アッセイは、本明細書に詳述されている。抗体または免疫グロブリン分子の断片または類似体は、当業者によって容易に調製することができる。断片または類似体の好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に生じる。構造的および機能的ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを公共または独自所有の配列データベースと比較することによって、同定することができる。好ましくは、コンピュータによる比較方法を用いて、既知の構造および/または機能の他のタンパク質中で生じる、配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンホメーションドメインを同定する。既知の三次元構造へと折り畳まれるタンパク質配列を同定する方法は、知られている。Bowieら、Science 253:164頁(1991年)。したがって、前述の例は、当業者が、本発明による構造的および機能的ドメインを定義するために使用し得る配列モチーフおよび構造的コンホメーションを認識できることを、実証している。
【0068】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させるもの、(2)酸化に対する感受性を減少させるもの、(3)タンパク質複合体を形成する結合親和性を改変するもの、(4)結合親和性を改変するもの、および(4)そのような類似体に他の物理化学的または機能的特性を与えるまたはそれを改変させるものである。類似体には、天然に存在するペプチド配列以外の配列の、様々な突然変異体タンパク質が含まれることができる。たとえば、単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列中(好ましくは、分子間接触を形成するドメイン外のポリペプチドの部分に行い得る。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を相当に変化させないべきである(たとえば、置換するアミノ酸は、親配列中に存在するらせんを破壊したり、または親配列を特徴づける他の種類の二次構造を乱したりする傾向を持たないべきである)。当分野で認識されているポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles(Creighton編、W. H. Freeman and Company、New York(1984年)); Introduction to Protein Structure(C. BrandenおよびJ. Tooze編、Garland Publishing、ニューヨーク州New York(1991年));ならびにThorntonら、Nature 354:105頁(1991年)に記載されている。
【0069】
本明細書で使用する用語「標識」または「標識した」とは、検出可能なマーカーの取り込み、たとえば、放射標識したアミノ酸の取り込み、またはポリペプチドに印を付けたアビジン(たとえば、光学的もしくは熱量的方法によって検出することができる蛍光マーカーもしくは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分を付着させることによるものをいう。特定の状況では、標識またはマーカーは治療的であることもできる。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当分野で知られており、使用し得る。ポリペプチドの標識の例には、それだけには限定されないが、以下のものが含まれる:放射性同位体または放射性核種(たとえば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(たとえば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光性、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される事前に決定されたポリペプチドエピトープ(たとえば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。一部の実施形態では、標識は、潜在的な立体障害を減少するために、様々な長さのスペーサーアームによって付着させる。本明細書で使用する用語「製薬または薬物」とは、患者に適切に投与した場合に所望の治療効果を誘発することができる化学物質または組成物をいう。
【0070】
本明細書の他の化学用語は、The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker, S.編、McGraw−Hill、San Francisco(1985年))によって例示されるように、当分野の慣用の用法に従って使用する。
【0071】
本明細書で使用する「実質的に純粋」とは、1つの物体種が、存在する優勢の種であり(すなわち、モル濃度に基づいて、組成物中のすべての他の個々の種よりも多く存在する)、好ましくは、実質的に精製した画分とは、物体種が存在するすべての巨大分子種の少なくとも約50%(モル濃度に基づく)を構成する組成物である。
【0072】
一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在するすべての巨大分子種の約80%より多く、より好ましくは約85%、90%、95%、および99%より多くを構成する。最も好ましくは、物体種を、本質的に均質(汚染物質種が、慣用の検出方法によって組成物中に検出できない)まで精製し、組成物が本質的に単一の巨大分子種からなる。
【0073】
用語、患者には、ヒトおよび獣医学上の対象が含まれる。
抗体
本明細書に記載する改変された抗体とは、改変された抗体が、改変されていない抗体と比較して、抗原との結合を保持したままで抗原依存性のエフェクター機能の改変を誘発するように、γ重鎖定常領域中に少なくとも1つの特異的なアミノ酸置換を含む抗体である。好ましい実施形態では、改変された抗体は、ヒトである。たとえば、改変された抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプである。
【0074】
本発明の改変された抗体にはまた、抗体のCDR3領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されている改変体CDR3領域を有する、改変された抗体も含まれる。本発明の改変された抗体および改変ポリペプチドにはまた、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域の少なくともFcγR結合部分および改変体CDR3領域を含むポリペプチドが含まれる。本発明の改変された抗体および改変ポリペプチドにはまた、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも改変体Fc領域および改変体CDR3領域を含むポリペプチドも含まれる。改変体CDR3領域には、実施例4に示す改変体VH CDR3領域が含まれる:KDPSDAFPY(配列番号80)およびKDPSEGFPY(配列番号81)。改変体CDR3領域には、実施例4に示す改変体VL CDR3領域が含まれる:QNSHSFPLT(配列番号82)、QQGHSFPLT(配列番号83)、QNSSSFPLT(配列番号84)、およびQQSHSFPLT(配列番号85)。
【0075】
一実施形態では、TLR4、MD2および/またはTLR4/MD2複合体を認識する改変された抗体は、LPSに誘発される炎症誘発性サイトカインの産生を阻害する能力を有する。この阻害は、その改変されたFc部分がヒトCD32Aと結合している間に、改変された抗体のFv部分がその標的抗原と結合することのクロストーク機構によって達成される。阻害は、たとえば、ヒト全血および本明細書に記載するhuTLR4/MD2で形質移入したHEK293細胞アッセイにおいて決定される。本実施形態では、改変された抗体は、たとえば、本明細書で「mu18H10」、「hu18H10」、「mu16G7」、「mu15C1」、「hu15C1」、「mu7E3」および「hu7E3」と呼ぶ、モノクローナル抗体の改変されたバージョンである。mu18H10およびhu18H10抗体は、TLR4/MD−2複合体を認識するが、TLR4と複合体形成していない場合にはMD−2タンパク質を認識しない。mu16G7、mu15C1、hu15C1、mu7E3およびhu7E3モノクローナル抗体は、TLR4/MD−2複合体を認識する。mu15C1、hu15C1および16G7はまた、MD−2と複合体形成していない場合でもTLR4を認識する。
【0076】
本発明にはまた、本明細書に記載する改変された抗体と同じエピトープと結合する抗体も含まれる。たとえば、本発明の改変された抗体は、TLR4/MD−2複合体と特異的に結合し、抗体は、図15に示すアミノ酸配列の残基289〜375のヒトTLR4上の1つまたは複数のアミノ酸残基が含まれるエピトープと結合する。別の例では、改変された抗体は、TLR4/MD2複合体と特異的に結合し、抗体は、図14Bに示すアミノ酸配列の残基19〜57のヒトMD−2上のエピトープと結合する。当業者には、必要以上の実験を行わずに、モノクローナル抗体が、本発明の改変された抗体と同じ特異性を有するかどうかを決定することが、前者が、後者が標的(たとえば、TLR2、CD14、TLR4/MD−2複合体またはMD−2と複合体形成していない場合のTLR4)と結合することを妨げるかどうかを確認することによって可能であることを、理解されよう。試験するモノクローナル抗体が、本発明の改変された抗体による結合の減少によって示されるように本発明の改変された抗体と競合する場合、2つの抗体は、同じ、または密に関連するエピトープと結合する。モノクローナル抗体が本発明の改変された抗体の特異性を有するかどうかを決定する代替方法は、本発明の改変された抗体を、それが通常反応性を有する標的とプレインキュベーションし、その後、試験するモノクローナル抗体を加えて、試験するモノクローナル抗体の標的と結合するその能力が阻害されているかどうかを決定する。試験するモノクローナル抗体が阻害されている場合は、これは、ほとんど確実に、本発明のモノクローナル抗体と同じ、または機能的に等価なエピトープ特異性を有する。
【0077】
当分野で知られている様々な手順を用いて、所定の標的、たとえば、トル様受容体、TLR4/MD−2複合体、もしくはMD−2と複合体形成していない場合のTLR4、TLR2、CD14などに対する、またはそれらの誘導体、断片、類似体、相同体もしくは相同分子種に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体の産生に用い得る。(たとえば、本明細書に参照により組み込まれているAntibodies: A Laboratory Manual、Harlow EおよびLane D、1988年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州Cold Spring Harborを参照)。
【0078】
抗体は、主に免疫血清のIgG画分をもたらすプロテインAまたはプロテインGを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの周知の技術によって精製する。続いて、またはその代わりに、求める免疫グロブリンの標的の特異的な抗原、またはそのエピトープを、カラム上に固定して、イムノアフィニティークロマトグラフィーによって免疫特異的抗体を精製し得る。免疫グロブリンの精製は、たとえば、D. Wilkinson(The Scientist、The Scientist, Inc.出版、ペンシルベニア州Philadelphia、第14巻、第8号(2000年4月17日)、25〜28頁)によって記載されている。
【0079】
好ましくは、本発明の改変された抗体は、モノクローナル抗体である。改変された抗体は、たとえば、BALB/cマウスを、その表面上に高レベルの所定の標的を発現する細胞形質移入体の組合せで免疫化することによって、作製する。その後、骨髄腫/B細胞の融合から生じるハイブリドーマを、選択した標的に対する反応性についてスクリーニングする。
【0080】
モノクローナル抗体は、たとえば、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495頁(1975年)によって記載されているものなどのハイブリドーマ方法を用いて調製する。ハイブリドーマ方法では、典型的には、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を免疫剤で免疫化して、免疫剤と特異的に結合する抗体を産生するまたは産生する能力を有するリンパ球を誘発させる。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫化することができる。
【0081】
免疫剤には、典型的には、タンパク質抗原、その断片またはその融合タンパク質が含まれる。一般に、ヒト起源の細胞を所望する場合は末梢血リンパ球を使用し、または非ヒト哺乳動物起源を所望する場合は脾臓細胞もしくはリンパ節細胞を使用する。その後、リンパ球を、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞系と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、Academic Press、(1986年)59〜103頁)。不死化細胞系は、通常、形質転換させた哺乳動物細胞、特にげっ歯類、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞系を用いる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは融合していない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つまたは複数の物質を含む適切な培地中で、培養することができる。たとえば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマの培地には、典型的には、HGPRT欠乏細胞の増殖を防止する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンが含まれる(「HAT培地」)。
【0082】
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による抗体の安定した高レベル発現を支持し、HAT培地などの培地に感受性のあるものである。より好ましい不死化細胞系は、たとえば、Salk Institute Cell Distribution Center、カリフォルニア州San DiegoおよびAmerican Type Culture Collection、バージニア州Manassasから得ることができるネズミ骨髄腫系である。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒト異種骨髄腫の細胞系も、モノクローナル抗体の産生について記載されている。(Kozbor、J. Immunol.、133:3001頁(1984年); Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、Marcel Dekker, Inc.、New York、(1987年)51〜63頁)参照)。
【0083】
その後、ハイブリドーマ細胞を培養した培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によってまたはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのin vitro結合アッセイによって決定する。そのような技術およびアッセイは当分野で知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、たとえば、MunsonおよびPollard、Anal. Biochem.、107:220頁(1980年)のスキャッチャード分析によって決定することができる。さらに、モノクローナル抗体の治療的な応用では、標的抗原に対して高い度合の特異性および高い結合親和性を有する抗体を同定することが重要である。
【0084】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限界希釈手順によってサブクローニングし、標準の方法によって増殖させることができる。(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、Academic Press、(1986年)59〜103頁参照)。この目的に適した培養培地には、たとえば、ダルベッコ変法イーグル培地およびRPMI−1640培地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中の腹水としてin vivoで増殖させることができる。
【0085】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、たとえば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの慣用の免疫グロブリン精製手順によって、培地または腹水から単離または精製することができる。
【0086】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号に記載のものなどの、組換えDNA方法によっても産生することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードしているDNAは、慣用の手順を用いて(たとえば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子と特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役割を果たす。単離した後、DNAを発現ベクター内に入れることができ、その後、これを、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞内に形質移入して、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成が得られる。DNAはまた、たとえば、ヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を相同的なネズミ配列の代わりに置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison、Nature 368、812〜13頁(1994年)参照)、または免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全体もしくは一部を共有結合させることによっても、改変することができる。そのような非免疫グロブリンポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインで置換するか、または本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインで置換して、キメラ二価抗体を作製することができる。
【0087】
本発明のモノクローナル抗体には、ヒト化抗体またはヒト抗体が含まれる。これらの抗体は、投与した免疫グロブリンに対するヒトによる免疫応答を発生させずに、ヒトに投与するために適している。抗体のヒト化形態は、主にヒト免疫グロブリンの配列からなり、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片である(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)または他の抗体の抗原結合部分配列など)。ヒト化は、たとえば、Winterおよび同僚の方法(Jonesら、Nature、321:522〜525頁(1986年); Riechmannら、Nature、332:323〜327頁(1988年); Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536頁(1988年))に従うことによって、げっ歯類のCDRまたはヒト抗体の対応する配列のCDR配列を置換することによって行う。(米国特許第5,225,539号も参照。)一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を対応する非ヒト残基によって置き換える。ヒト化抗体はまた、たとえば、レシピエント抗体中にも、輸入したCDRまたはフレームワーク配列中にも見つからない残基も含む。一般に、ヒト化抗体には、少なくとも1つ、典型的には2つの、可変ドメインの実質的にすべてが含まれ、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体にはまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも、最適に含まれる(Jonesら、1986年; Riechmannら、1988年;およびPresta、Curr. Op. Struct. Biol.、2:593〜596頁(1992年))。
【0088】
完全にヒトの抗体とは、CDRを含めた軽鎖と重鎖の両方の配列全体が、ヒト遺伝子から生じる抗体分子である。そのような抗体は、本明細書で「ヒト抗体」または「完全にヒトの抗体」と呼ぶ。モノクローナル抗体は、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983年、Immunol Today 4:72頁参照)、およびモノクローナル抗体を産生するEBVハイブリドーマ技術(Coleら、1985年、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R. Liss, Inc.、77〜96頁参照)を用いることによって調製することができる。モノクローナル抗体を利用してよく、ヒトハイブリドーマを用いることによって(Coteら、1983年、Proc Natl Acad Sci USA 80:2026〜2030頁参照)、またはヒトB細胞をエプスタインバーウイルスで、in vitroで形質転換させることによって(Coleら、1985年、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R. Liss, Inc.、77〜96頁参照)、産生し得る。
【0089】
さらに、ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含めたさらなる技術を用いて産生することもできる。(HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227:381頁(1991年); Marksら、J. Mol. Biol.、222:581頁(1991年)参照)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位を、内在性の免疫グロブリン遺伝子を部分的または完全に失活させたトランスジェニック動物、たとえば、マウス内に導入することによって、産生することができる。免疫誘発後、ヒト抗体の産生が観察され、これは、遺伝子の再配置、アセンブリ、および抗体レパートリーを含めた、すべての観点からヒトで見られるものとよく似ている。この手法は、たとえば、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号、ならびにMarksら、Bio/Technology 10、779〜783頁(1992年); Lonbergら、Nature 368、856〜859頁(1994年); Morrison、Nature 368、812〜13頁(1994年); Fishwildら、Nature Biotechnology 14、845〜51頁(1996年); Neuberger、Nature Biotechnology 14、826頁(1996年);ならびにLonbergおよびHuszar、Intern. Rev. Immunol. 13、65〜93頁(1995年)に記載されている。
【0090】
ヒト抗体はさらに、抗原による免疫誘発に応答して動物の内在性抗体ではなく完全にヒトの抗体を産生するように改変した、トランスジェニック非ヒト動物を用いて産生し得る。(PCT公報WO94/02602参照)。非ヒト宿主中の重鎖および軽鎖免疫グロブリン鎖をコードしている内在性遺伝子を無能力にし、ヒトの重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードしている活性座位を宿主のゲノム内に挿入する。たとえば必須のヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を用いて、ヒト遺伝子を取り込ませる。その後、改変の、完全より少ない補体を含む中間トランスジェニック動物を交雑させることによって、すべての所望の改変を提供する動物が子孫として得られる。そのような非ヒト動物の例は、PCT公報WO96/33735およびWO96/34096に開示されている、Xenomouse(商標)と呼ばれるマウスである。この動物は、完全にヒトの免疫グロブリンを分泌するB細胞を生じる。抗体は、目的の免疫原で免疫化した後に動物から直接、たとえばポリクローナル抗体の調製物として、あるいは、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマなどの動物に由来する不死化B細胞から、得ることができる。さらに、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードしている遺伝子を回収し、発現させて、抗体を直接得ることができるか、またはさらに改変して、抗体の類似体、たとえば単鎖Fv(scFv)分子などを得ることができる。
【0091】
内在性免疫グロブリン重鎖の発現を欠くマウスとして例示されている、非ヒト宿主を生成する方法の例は、米国特許第5,939,598号に開示されている。これは、座位の再配置を防止し、再配置された免疫グロブリン重鎖座位の転写物の形成を防止するために、胚性幹細胞中の少なくとも1つの内在性重鎖座位からJセグメント遺伝子を欠失させることであって、欠失が、選択マーカーをコードしている遺伝子を含む標的化ベクターにより行われることと、胚性幹細胞から、体性細胞および生殖細胞が選択マーカーをコードしている遺伝子を含むトランスジェニックマウスを作製することとを含む方法によって得ることができる。
【0092】
ヒト抗体などの目的の抗体を産生するための1つの方法が、米国特許第5,916,771号に開示されている。この方法は、重鎖をコードしているヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、培養中の1つの哺乳動物宿主細胞内に導入することと、軽鎖をコードしているヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、別の哺乳動物宿主細胞内に導入することと、2つの細胞を融合させてハイブリッド細胞を形成することとを含む。ハイブリッド細胞は、重鎖および軽鎖を含む抗体を発現する。
【0093】
本手順のさらなる改善では、免疫原上の臨床的に意味のあるエピトープを同定する方法、および関連するエピトープと高い親和性で特異的に結合する抗体を選択するための相関性の方法が、PCT公報WO99/53049に開示されている。
【0094】
抗体は、上述の単鎖抗体をコードしているDNAセグメントを含むベクターによって発現させることができる。
【0095】
これらには、ベクター、リポソーム、裸DNA、アジュバント支援DNA、遺伝子銃、カテーテルなどが含まれることができる。ベクターには、WO93/64701に記載のものなどの、標的化部分(たとえば細胞表面受容体に対するリガンド)および核酸結合部分(たとえばポリリシン)を有する化学コンジュゲート、ウイルスベクター(たとえば、DNAまたはRNAウイルスベクター)、PCT/US95/02140(WO95/22618)に記載のものなどの、標的部分(たとえば標的細胞に特異的な抗体)および核酸結合部分(たとえばプロタミン)を含む融合タンパク質である融合タンパク質、プラスミド、ファージなどが含まれる。ベクターは、染色体、非染色体または合成であり得る。
【0096】
好ましいベクターには、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学コンジュゲートが含まれる。レトロウイルスベクターには、モロニーネズミ白血病ウイルスが含まれる。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターには、オルソポックスまたはトリポックスベクターなどのポックスベクター、単純ヘルペスI型ウイルス(HSV)ベクターなどのヘルペスウイルスベクター(Geller, A. I.ら、J. Neurochem、64:487頁(1995年); Lim, F.ら、DNA Cloning: Mammalian Systems、D. Glover編(Oxford Univ. Press、英国Oxford)(1995年); Geller, A.I.ら、Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603頁(1993年); Geller, A. I.ら、Proc Natl. Acad. Sci USA 87:1149頁(1990年)参照、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalleら、Science、259:988頁(1993年); Davidsonら、Nat. Genet 3:219頁(1993年); Yangら、J. Virol. 69:2004頁(1995年)参照、ならびにアデノ関連ウイルスベクター(Kaplitt, M. G.ら、Nat. Genet. 8:148頁(1994年)参照が含まれる。
【0097】
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞の細胞質内に導入する。トリポックスウイルスベクターは、短期間の核酸の発現しかもたらさない。アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、核酸を神経細胞内に導入するために好ましい。アデノウイルスベクターは、HSVベクターより短いアデノ関連ウイルス(約4カ月)よりも短期間の発現(約2カ月)をもたらす。選択する具体的なベクターは、標的細胞および治療する状態に依存する。導入は、標準の技術、たとえば、感染、形質移入、形質導入または形質転換によるものであり得る。遺伝子導入様式の例には、たとえば、裸DNA、CaPO沈殿、DEAEデキストラン、電気穿孔、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞微量注入、およびウイルスベクターが含まれる。
【0098】
ベクターは、本質的に任意の所望の標的細胞を標的とするために用いることができる。たとえば、定位注入を用いて、ベクター(たとえば、アデノウイルス、HSV)を所望の位置に向けることができる。さらに、粒子は、SynchroMed Infusion Systemなどのミニポンプインフュージョンシステムを用いて、側脳室内(icv)インフュージョンによって送達することができる。また、対流と呼ばれるバルク流に基づく方法が、大分子を脳の広範な領域に送達することにおいて有効性が示され、ベクターを標的細胞に送達することにおいて有用であり得る。(Boboら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:2076〜2080頁(1994年); Morrisonら、Am. J. Physiol. 266:292〜305頁(1994年)参照)。使用できる他の方法には、カテーテル、静脈内、非経口、腹腔内および皮下注射、ならびに経口または他の既知の投与経路が含まれる。
【0099】
二重特異性抗体とは、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する抗体である。本例では、結合特異性のうちの1つは、TLR4、MD2、TLR4/MD2複合体、TLR2、CD14または任意のトル様受容体などの標的に対するものである。第2の結合標的は任意の他の抗原であり、有利には、細胞表面タンパク質または受容体もしくは受容体サブユニットである。
【0100】
二重特異性抗体を産生する方法は、当分野で知られている。伝統的には、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖の対の同時発現に基づいており、2本の重鎖は異なる特異性を有する(MilsteinおよびCuello、Nature、305:537〜539頁(1983年))。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖がランダムな組合せであるため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を生じ、そのうちの1つだけが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィーステップによって達成する。同様の手順は、1993年5月13日公開のWO93/08829、およびTrauneckerら、EMBO J.、10:3655〜3659頁(1991年)に開示されている。
【0101】
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原の結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させることができる。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとである。融合体のうちの少なくとも1つ中に存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体をコードしているDNA、および、所望する場合は、免疫グロブリン軽鎖は、別々の発現ベクター内に挿入され、適切な宿主生物内に同時形質移入する。二重特異性抗体の産生のさらなる詳細には、たとえば、Sureshら、Methods in Enzymology、121:210頁(1986年)を参照されたい。
【0102】
WO96/27011に記載の別の手法によれば、一対の抗体分子間の境界を、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合が最大となるように操作することができる。好ましい境界には、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部が含まれる。本方法では、第1の抗体分子の境界からの1つまたは複数の小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(たとえば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換える。大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(たとえば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、大きな側鎖(複数可)と同一または同様の大きさの代償的な「空洞」が、第2の抗体分子の境界上に生じる。これは、ヘテロ二量体の収率をホモ二量体などの他の望ましくない最終産物を超えて増加させる機構をもたらす。
【0103】
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術は、文献に記載されている。たとえば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。産生された二重特異性抗体は、酵素を選択的に固定する薬剤として使用することができる。
【0104】
二重特異性抗体断片を組換え細胞培養物から直接産生および単離するための様々な技術も、記載されている。たとえば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生されている。Kostelnyら、J. Immunol. 148(5):1547〜1553頁(1992年)。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを、2つの異なる抗体のFab’部分に、遺伝子融合によって連結させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元させて単量体を形成し、その後、再度酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444〜6448頁(1993年)によって記載されている「二重特異性抗体」技術により、二重特異性抗体断片を産生する代替機構が提供されている。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)と結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、1つの断片のVおよびVドメインは、別の断片の相補的VおよびVドメインと対合することが強いられ、それにより2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)二量体を使用することによって二重特異性抗体断片を産生する別の戦略も報告されている。Gruberら、J. Immunol. 152:5368頁(1994年)を参照されたい。
【0105】
2つよりも多い結合価を有する抗体が企図される。たとえば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら、J. Immunol. 147:60頁(1991年)。
【0106】
例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープと結合することができ、その少なくとも1つは本発明のタンパク質抗原を起源とする。あるいは、細胞防御機構を、特定の抗原を発現する細胞に集中させるために、免疫グロブリン分子の抗抗原アームを、T細胞受容体分子(たとえば、CD2、CD3、CD28、もしくはB7)などの白血球上の始動分子、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)などのIgG(FcγR)に対するFc受容体と結合するアームと合わせることができる。二重特異性抗体はまた、細胞毒性剤を、特定の抗原を発現する細胞に向けるためにも使用することができる。これらの抗体は、抗原結合アームおよび細胞毒性剤または放射性核種キレート剤、たとえば、EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETAと結合するアームを保有する。別の目的の二重特異性抗体は、本明細書に記載するタンパク質抗原と結合し、さらに組織因子(TF)と結合する。
【0107】
ヘテロコンジュゲート抗体も、本発明の範囲内にある。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。そのような抗体は、たとえば、免疫系細胞を望ましくない細胞へと標的化するために(米国特許第4,676,980号参照)、およびHIV感染症を治療するため(WO91/00360、WO92/200373、EP03089参照)に提案されている。抗体は、in vitroで、架橋剤を含むものを含めた、合成タンパク質化学の知られている方法を用いて調製できることが企図される。たとえば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデートならびにたとえば米国特許第4,676,980号に開示のものが含まれる。
【0108】
たとえば、異常なLPSシグナル伝達に関連する疾患および障害の治療における抗体の有効性を増強するために、本発明の抗体を、エフェクター機能に関して改変することが望ましい場合がある。たとえば、システイン残基(複数可)をFc領域内に導入し、それにより、この領域中に鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にすることができる。したがって、産生されたホモ二量体抗体は、向上した内部移行能力ならびに/または増加した補体媒介性細胞死滅および抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を有することができる。(Caronら、J. Exp Med.、176:1191〜1195頁(1992年)およびShopes、J. Immunol.、148:2918〜2922頁(1992年)参照)。あるいは、抗体は、二重のFc領域を有し、したがって増強した補体溶解およびADCC能力を有することができるように、抗体を操作することができる。(Stevensonら、Anti−Cancer Drug Design、3:219〜230頁(1989年)参照)。
【0109】
本発明はまた、毒素(たとえば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性のある毒素、またはその断片)などの細胞毒性剤、あるいは放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)とコンジュゲートした抗体を含む、免疫コンジュゲートにも関する。
【0110】
使用できる酵素的に活性のある毒素およびその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、リストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが含まれる。様々な放射性核種が、放射性コンジュゲート抗体を産生するために利用可能である。例には、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが含まれる。
【0111】
抗体および細胞毒性剤のコンジュゲートは、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピイミデートHCLなど)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレートなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6−ジイソシアネートなど)、およびビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)等の、様々な二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製する。たとえば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science 238:1098頁(1987年)に記載のように調製することができる。炭素−14で標識した1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体とコンジュゲートさせるための例示的なキレート化剤である。(WO94/11026参照)。
【0112】
当業者は、様々な可能な部分を生じた本発明の抗体とカップリングさせることができることを、認識されよう。(たとえば、その内容全体が本明細書に参照により組み込まれている、「Conjugate Vaccines」、Contributions to Microbiology and Immunology、J. M. CruseおよびR. E. Lewis, Jr(編)、Carger Press、New York、(1989年)参照)。
【0113】
カップリングは、抗体および他の部分がそのそれぞれの活性を保持する限りは、2つの分子を結合させる任意の化学反応によって達成し得る。結合には、多くの化学機構、たとえば、共有結合、親和性結合、挿入、配位結合および複合体形成が含まれることができる。しかし、好ましい結合は共有結合である。共有結合は、既存の側鎖の直接縮合によって、または外部架橋分子の取り込みによって、達成することができる。多くの二価または多価の結合剤が、本発明の抗体などのタンパク質分子を他の分子とカップリングさせるために有用である。たとえば、代表的なカップリング剤には、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンなどの有機化合物が含まれることができる。このリストは、当分野で知られている様々なカップリング剤のクラスを網羅していることを意図せず、むしろ、より一般的なカップリング剤の例示である。(KillenおよびLindstrom、Jour. Immun. 133:1335〜2549頁(1984年); Jansenら、Immunological Reviews 62:185〜216頁(1982年);ならびにVitettaら、Science 238:1098頁(1987年)参照。
【0114】
好ましいリンカーは文献中に記載されている。(たとえば、MBS(M−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの使用を記載している、Ramakrishnan, S.ら、Cancer Res. 44:201〜208頁(1984年)を参照されたい)。また、オリゴペプチドリンカーによって抗体とカップリングしたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用を記載している、米国特許第5,030,719号も参照されたい。特に好ましいリンカーには、(i)EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミドヒドロクロリド、(ii)SMPT(4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(Pierce Chem.Co.、カタログ(21558G)、(iii)SPDP(スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.、カタログ#21651G)、(iv)スルホ−LC−SPDP(スルホスクシンイミジル6[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.カタログ#2165−G)、および(v)EDCとコンジュゲートしたスルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミド:Pierce Chem.Co.、カタログ#24510)が含まれる。
【0115】
上述のリンカーは、異なる特質を有する構成要素を含み、したがって、異なる物理化学的特性を有するコンジュゲートがもたらされる。たとえば、アルキルカルボキシレートのスルホ−NHSエステルは、芳香族カルボキシレートのスルホ−NHSエステルよりも安定である。NHS−エステルを含むリンカーは、スルホ−NHSエステルよりも可溶性が低い。さらに、リンカーSMPTは、立体障害のあるジスルフィド結合を含み、増加した安定性を有するコンジュゲートを形成することができる。ジスルフィド結合はin vitroで切断され、利用可能なコンジュゲートの減少をもたらすため、ジスルフィド結合は、一般に、他の結合よりも安定性が低い。特に、スルホ−NHSは、カルボジイミドカップリングの安定性を増強させることができる。カルボジイミドカップリング(EDCなど)は、スルホ−NHSと併せて使用した場合に、カルボジイミドカップリング反応単独よりも加水分解に対して耐性があるエステルを形成する。
【0116】
本明細書に開示する抗体はまた、免疫リポソームとしても配合し得る。抗体を含むリポソームは、Epsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82:3688頁(1985年); Hwangら、Proc. Natl Acad. Sci. USA、77:4030頁(1980年)、ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号に記載のものなどの、当分野で知られている方法によって調製する。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0117】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いて、逆相蒸発方法によって作製することができる。リポソームは、定義された孔径のフィルターを通して押し出して、所望の直径を有するリポソームが得られる。Martinら、J. Biol. Chem.、257:286〜288頁(1982年)に記載のように、ジスルフィド交換反応によって、本発明の抗体のFab’断片をリポソームとコンジュゲートさせることができる。
改変された抗体の使用
本発明による治療部分の投与は、適切な担体、賦形剤、および改善された移動、送達、耐性などをもたらすために配合物中に取り込ませる他の薬剤と共に投与することを、理解されよう。多数の適切な配合物を、すべての薬剤師に知られている処方集の中に見つけることができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences(第15版、Mack Publishing Company、ペンシルベニア州Easton(1975年))、特にその中のBlaug、Seymourによる第87章。これらの配合物には、たとえば、散剤、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(陽イオンまたは陰イオン性)を含有する小胞(Lipofectin(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水の乳濁液、乳濁液カーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含む半固体混合物が含まれる。配合物中の活性成分が配合物によって失活されず、配合物が投与経路と生理的に適合しており、かつそれに耐えられる限りは、前述の混合物のうちの任意のものが、本発明による処置および治療において適切であり得る。薬剤師に周知の配合物、賦形剤および担体に関するさらなる情報には、Baldrick P.「Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.」Regul. Toxicol Pharmacol. 32(2):210〜8頁(2000年)、Wang W.「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.」Int. J. Pharm. 203(1〜2):1〜60頁(2000年)、Charman WN「Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery−some emerging concepts.」J Pharm Sci. 89(8):967〜78頁(2000年)、Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA J Pharm Sci Technol. 52:238〜311頁(1998年)およびその中の引用文献も参照されたい。
【0118】
本発明の改変された抗体を含む本発明の治療配合物は、免疫関連障害に関連する症状を治療または緩和させるために使用する。本発明はまた、免疫関連障害に関連する症状を治療または緩和させる方法を提供する。治療レジメンは、標準の方法を用いて対象、たとえば、免疫関連障害を患っている(またはそれを発生する危険性にある)ヒト患者を同定することによって、実施する。たとえば、本発明の改変された抗体は、自己免疫疾患および/または炎症性障害の治療における有用な治療的手段である。特定の実施形態では、TLRシグナル伝達を変調、たとえば、阻害、中和、またはそれと干渉する、改変された抗体の使用は、自己免疫疾患および/または炎症性障害の治療に企図される。
【0119】
自己免疫疾患には、たとえば、後天性免疫不全症候群(AIDS、自己免疫の構成要素を有するウイルス性疾患)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ球増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアック病−ヘルペス状皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素病、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合性クリオグロブリン血症、線維筋痛症−線維筋炎、グレーブス病、ギラン−バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性真性糖尿病、若年性慢性関節炎(スチル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋炎、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)としても知られている)、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑ならびにウェゲナー肉芽腫症が含まれる。
【0120】
炎症性障害には、たとえば、慢性および急性の炎症性障害が含まれる。炎症性障害の例には、アルツハイマー病、喘息、アトピー性アレルギー、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、気管支喘息、湿疹、糸球体腎炎、移植片対宿主病、溶血性貧血、骨関節炎、敗血症、脳卒中、組織および器官の移植、血管炎、糖尿病性網膜症ならびに人工呼吸器誘発肺損傷が含まれる。
【0121】
たとえば、改変された抗体は、微生物の産物(たとえばLPS)によって誘発された急性炎症および敗血症ならびにこの急性炎症から生じる再燃、たとえば、慢性閉塞性肺疾患および喘息などの治療に有用である(その全体が本明細書に参照により組み込まれている、O’Neill、Curr. Opin. Pharmacol. 3:396〜403頁(2003年)参照)。そのような抗体はまた、神経変性自己免疫疾患の治療においても有用である。(その全体が本明細書に参照により組み込まれている、Lehnardtら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:8514〜8519頁(2003年))。
【0122】
さらに、本発明の抗体はまた、機械的ストレスによって引き起こされ、ひいてはTLR4を始動させる内在性の可溶性「ストレス」因子を誘発させる、たとえば骨関節炎などの疾患の治療における治療試薬としても、有用である。内在性の可溶性ストレス因子には、たとえば、Hsp60(Ohashiら、J. Immunol. 164:558〜561頁(2000年)参照)およびフィブロネクチン(Okamuraら、J. Biol. Chem. 276:10229〜10233頁(2001年)参照、ならびにヘパリン硫酸、ヒアルロナン、gp96、β−デフェンシン−2または界面活性プロテインA(たとえば、Johnsonら、Crit. Rev. Immunol.、23(1〜2):15〜44頁(2003年)参照、それぞれその全体が本明細書に参照により組み込まれている)が含まれる。本発明の抗体はまた、機械的ストレス、たとえば、レスピレーター、人工呼吸器および他の呼吸器支援装置を行っている対象および患者に関連する機械的ストレスなどに関連する様々な障害の治療にも有用である。たとえば、本発明の抗体は、人工呼吸関連肺損傷(「VALI」)とも呼ばれる人工呼吸器誘発肺損傷(「VILI」)の治療において有用である。
【0123】
TLR4機能の阻害が有益な場合がある他の疾患領域には、たとえば、慢性炎症(たとえば、アレルギー状態および喘息に関連する慢性炎症)、自己免疫疾患(たとえば、炎症性腸障害)ならびにアテローム性動脈硬化症が含まれる(その全体が本明細書に参照により組み込まれている、O’Neill、Curr. Opin. Pharmacol. 3:396〜403頁(2003年)参照)。
【0124】
これらの免疫関連障害に関連する症状には、たとえば、炎症、発熱、全身倦怠感、発熱、疼痛、多くの場合炎症領域に局在するもの、速い脈拍速度、関節痛または疼痛(joint painまたはache)(関節痛(arthralgia))、速い呼吸または他の異常な呼吸パターン、悪寒、錯乱、失見当識、扇動、眩暈、咳、呼吸困難、肺感染症、心不全、呼吸不全、浮腫、体重増加、粘液膿性再発、悪液質、喘鳴、頭痛、および腹部の症状、たとえば、腹痛、下痢または便秘などが含まれる。
【0125】
治療の有効性は、特定の免疫関連障害を診断または治療するための任意の既知の方法に関連して決定する。免疫関連障害の1つまたは複数の症状の緩和は、抗体が臨床上の利点を与えることを示している。
【0126】
所望の特異性を保有する抗体をスクリーニングする方法には、それだけには限定されないが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および当分野で知られている他の免疫学的に媒介される技術が含まれる。
【0127】
TLR2、CD14、TLR4、MD2、TLR4/MD−2複合体または任意のトル様受容体(またはその断片)などの標的に対する抗体は、これらの標的の位置特定および/または定量に関連する、当分野で知られている方法で、たとえば、適切な生理的試料中のこれらの標的のレベル測定における使用、診断方法における使用、タンパク質のイメージングにおける使用など)において使用し得る。所定の実施形態では、これらの標的のうちの任意のものに特異的な抗体、またはその抗体に由来する抗原結合ドメインを含むその誘導体、断片、類似体もしくは相同体を、薬理学的に活性な化合物として利用する(本明細書において以降「治療薬」と呼ぶ)。
【0128】
本発明の改変された抗体を使用して、免疫親和性、クロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準の技術を用いて特定の標的を単離することができる。本発明の改変された抗体(またはその断片)は、臨床的試験手順の一部として組織中のタンパク質レベルを監視するために、たとえば、たとえば所定の治療レジメンの有効性を決定するために、診断的に使用することができる。検出は、抗体を検出可能な物質とカップリング(すなわち、物理的に連結)させることによって、容易にすることができる。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適切な補欠分子族の複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ、適切な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリスリンが含まれ、発光物質の例には、ルミノールが含まれ、生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが含まれ、適切な放射性物質の例には、125I、131I、35SまたはHが含まれる。
【0129】
ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化および完全にヒトの抗体を含めた本発明の抗体は、治療剤として用い得る。そのような薬剤は、一般に、対象における所定の標的の異常な発現または活性化に関連する疾患または病理を治療または予防するために用いる。抗体調製物、好ましくは、その標的抗原に対して高い特異性および高い親和性を有するものを、対象に投与し、一般に、標的とのその結合が原因で効果をもたらす。抗体の投与は、標的のシグナル伝達機能を抑止または阻害またはそれと干渉し得る。抗体の投与は、標的とそれが天然に結合する内在性リガンドとの結合を、抑止または阻害またはそれと干渉し得る。たとえば、抗体は標的と結合し、LPSに誘発される炎症誘発性サイトカインの産生を中和する。
【0130】
治療上有効な量の本発明の抗体は、一般に、治療目的を達成するために必要な量に関連する。上に注記したように、これは、特定の場合では標的が機能することと干渉する、抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であり得る。投与する必要がある量はさらに、抗体の、その特異的抗原に対する結合親和性に依存し、また、投与した抗体が、それを投与する他の対象の自由体積から枯渇する速度にも依存する。本発明の抗体または抗体断片の治療上有効な投薬の一般的な範囲は、非限定的な例として、約0.1mg/体重1kg〜約50mg/体重1kgであり得る。一般的な投薬頻度は、たとえば、1日2回から週に1回の範囲であり得る。
【0131】
本発明の抗体またはその断片は、様々な疾患および障害を治療するために、薬剤組成物の形態で投与することができる。そのような組成物の調製に関与する原理および考察、ならびに構成要素の選択における指針は、たとえば、Remington: The Science And Practice Of Pharmacy、第19版(Alfonso R. Gennaroら編)Mack Pub. Co.、ペンシルベニア州Easton:1995年; Drug Absorption Enhancement: Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends、Harwood Academic Publishers、ペンシルベニア州Langhorne、1994年;およびPeptide And Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences、第4巻)、1991年、M. Dekker、New Yorkに提供されている。
【0132】
抗体断片を使用する場合、標的タンパク質の結合ドメインと特異的に結合する、阻害が最も小さい断片が好ましい。たとえば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列と結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。そのようなペプチドは、組換えDNA技術によって化学合成および/または産生することができる。(たとえば、Marascoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:7889〜7893頁(1993年)参照)。配合物はまた、必要に応じて治療する具体的な適応症のための複数の活性化合物、好ましくは、互いに有害効果をもたらさない相補的活性を有するものも含むことができる。あるいは、またはさらに、組成物は、その機能を増強する薬剤、たとえば、細胞毒性剤、サイトカイン、化学療法剤、または成長阻害剤などを含むことができる。そのような分子は、組み合わせて、意図する目的のために有効な量で適切に存在する。
【0133】
活性成分はまた、たとえば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製したマイクロカプセル、たとえば、それぞれコロイド状薬物送達系(たとえば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中の、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に封入することもできる。
【0134】
in vivo投与に使用する配合物は、無菌的でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することによって、容易に達成することができる。
【0135】
持続放出調製物を調製することができる。持続放出調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、マトリックスは、成形した物品、たとえば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態にある。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(たとえば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは100日間を超える分子の放出を可能にする一方で、特定のヒドロゲルはより短い期間にわたってタンパク質を放出する。
【0136】
本発明による抗体は、試料中の所定の標的(またはそのタンパク質断片)の存在を検出するための薬剤として使用することができる。一部の実施形態では、抗体は検出可能な標識を含む。抗体は、ポリクローナルであるか、またはより好ましくはモノクローナルである。インタクトな抗体、またはその断片(たとえば、Fab、scFv、またはF(ab)2)を使用する。プローブまたは抗体に関する用語「標識した」には、検出可能な物質をプローブまたは抗体とカップリング(すなわち、物理的に連結)させることによって、プローブまたは抗体を直接標識すること、および直接標識されている別の試薬と反応させることによってプローブまたは抗体を間接的に標識することが包含されることを意図する。間接的に標識することの例には、蛍光標識した二次抗体を用いて一次抗体を検出すること、および蛍光標識したストレプトアビジンで検出できるように、DNAプローブをビオチンで末端標識することが含まれる。用語「生体試料」には、対象から単離した組織、細胞および生体液、ならびに対象中に存在する組織、細胞および生体液が含まれることを意図する。したがって、用語「生体試料」の用法には、血清、血漿、またはリンパ液を含めた、血液および血液の画分または構成要素が含まれる。すなわち、本発明の検出方法を用いて、生体試料中の分析物であるmRNA、タンパク質、またはゲノムDNAを、in vitroおよびin vivoで検出することができる。たとえば、分析物mRNAを検出するためのin vitro技術には、ノーザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションが含まれる。分析物タンパク質を検出するためのin vitro技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降、および免疫蛍光が含まれる。分析物ゲノムDNAを検出するためのin vitro技術には、サザンハイブリダイゼーションが含まれる。免疫アッセイを実施する手順は、たとえば、「ELISA: Theory and Practice: Methods in Molecular Biology」、第42巻、J. R. Crowther(編)Human Press、ニュージャージー州Totowa、1995年;「Immunoassay」、E. DiamandisおよびT. Christopoulus、Academic Press, Inc.、カリフォルニア州San Diego、1996年;ならびに「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」、P. Tijssen、Elsevier Science Publishers、Amsterdam、1985年に記載されている。さらに、分析物タンパク質を検出するためのin vivo技術には、対象内に、標識した抗分析物タンパク質抗体を導入することが含まれる。たとえば、抗体を、対象中の存在および位置を標準のイメージング技術によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
薬剤組成物
本発明の抗体または可溶性キメラポリペプチド(本明細書で「活性化合物」とも呼ぶ)、ならびにその誘導体、断片、類似体および相同体を、投与に適した薬剤組成物内に取り込ませることができる。そのような組成物は、典型的には、抗体または可溶性キメラポリペプチドおよび製薬上許容される担体を含む。本明細書で使用する用語「製薬上許容される担体」には、製薬の投与に適合した、任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれることを意図する。適切な担体は、当分野の標準の参考教科書であり、本明細書に参照により組み込まれている、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。そのような担体または希釈剤の好ましい例には、それだけには限定されないが、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%のヒト血清アルブミンが含まれる。リポソームおよび不揮発性油などの非水性ビヒクルも使用し得る。製薬活性のある物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当分野で周知である。任意の慣用の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合以外は、組成物中でのその使用が企図される。補足の活性化合物も、組成物内に取り込ませることができる。
【0137】
本発明の薬剤組成物は、その意図する投与経路と適合するように配合する。投与経路の例には、非経口、たとえば、静脈内、皮内、皮下、経口(たとえば吸入)、経皮(すなわち局所的)、経粘膜、および直腸の投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下の施用に使用する液剤または懸濁液には、以下の構成要素が含まれることができる:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤、アセテート、シトレートまたはホスフェートなどの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性を調節する薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てのシリンジまたは複数用量バイアル中に封入することができる。
【0138】
注射での使用に適した薬剤組成物には、無菌水溶液(水溶性の場合)または無菌注射用液剤もしくは分散液を即時調製するための分散液および無菌散剤が含まれる。静脈内投与では、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州Parsippany)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合で、組成物は無菌的でなければならず、容易なシリンジ通過性が存在する程度まで流体であるべきである。これは、製造および保管の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその適切な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は必要な粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張化剤、たとえば、糖、ポリアルコール、たとえば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを、組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、たとえば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによって、もたらすことができる。
【0139】
無菌注射用液剤は、活性化合物を必要な量で、適切な溶媒中で、必要に応じて上に列挙した成分の1つまたは組合せと共に取り込ませ、続いて滅菌濾過することによって、調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本の分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含む無菌ビヒクル内に取り込ませることによって、調製する。無菌注射用液剤を調製するための無菌散剤の場合、調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、事前に滅菌濾過したその溶液から活性成分および任意の追加の所望の成分の散剤が得られる。
【0140】
経口組成物には、一般に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。これらは、ゼラチンカプセル中に封入するか、または錠剤へと圧縮することができる。経口の治療的投与の目的には、活性化合物を賦形剤と共に取り込ませ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口液として使用するために流体担体を用いて調製することもでき、流体担体中の化合物を経口的に施用し、クチュクチュとして吐き出すまたは飲み込む。製薬的に適合した結合剤および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分のうちの任意のもの、または同様の性質の化合物を含むことができる:結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの香味料。
【0141】
吸入による投与には、化合物は、適切な噴霧剤、たとえば二酸化炭素などの気体を含む加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達する。
【0142】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によることもできる。経粘膜または経皮投与には、透過する障壁に適した浸透剤を配合物中で使用する。そのような浸透剤は一般に当分野で知られており、たとえば、経粘膜投与には、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐薬を使用することで達成することができる。経皮投与には、活性化合物を、当分野で一般に知られているように軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームへと配合する。
【0143】
化合物はまた、直腸送達用の坐薬(たとえば、カカオ脂および他のグリセリドなどの慣用の坐薬基剤を用いて)または保留浣腸の形態で調製することもできる。
【0144】
一実施形態では、活性化合物は、植込錠およびミクロカプセル封入の送達系を含めた徐放性配合物などの、化合物を身体からの迅速な排除から保護する担体を用いて調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような配合物を調製する方法は、当業者に明らかであろう。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入して入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的としたリポソームを含む)も、製薬上許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に知られている方法に従って、たとえば米国特許第4,522,811号に記載のように調製することができる。
【0145】
投与を容易にし、用量を均一にするために、経口または非経口組成物を単位用量形態で配合することが特に有利である。本明細書で使用する単位用量形態とは、治療する対象の単位用量として適した物理的に別々の単位をいい、それぞれの単位は、必要な製薬担体と会合して所望の治療効果をもたらすように計算した、事前に決定された量の活性化合物を含む。本発明の単位用量形態の仕様は、活性化合物の独特な特徴および達成する具体的な治療効果、ならびに個体を治療するための活性化合物などの配合の分野に固有の制限によって指示され、それに直接依存する。
【0146】
薬剤組成物は、容器、パック、またはディスペンサー中に、投与の指示と一緒に含めることができる。
【0147】
本発明を、以下の実施例でさらに記載するが、これらは特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0148】
(実施例1)
モノクローナル抗体の産生
以下の研究は、TLR4、MD2および/またはTLR4/MD2複合体上のエピトープを認識する抗体の使用を記載する。本明細書に提示する研究中で使用する抗体は、それぞれその全体が本明細書に参照により組み込まれている、同時係属中の2004年12月10日出願の米国出願第11/009939号および2004年6月15日出願の第11/151916号ならびに2004年12月10日出願のWO05/065015および2004年6月15日出願のPCT/US2005/020930に記載の方法を用いて産生した。
【0149】
抗TLR4/MD2抗体の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)領域のアミノ酸および核酸配列を以下に示す。Chothiaら、1989年、E.A. Kabatら、1991年によって定義される相補性決定領域(CDR)を包含するアミノ酸は、以下に下線および斜体の文字で強調する。(Chothia, Cら、Nature 342:877〜883頁(1989年); Kabat, EAら、Sequences of Protein of immunological interest、第5版、US Department of Health and Human Services、US Government Printing Office(1991年)参照)。
18H10 VHヌクレオチド配列
【0150】
【化1】

【0151】
【化2】

【0152】
【化3】

【0153】
【化4】

【0154】
【化5】

それぞれのモノクローナル抗体が、TLR4/MD2で形質移入した細胞上におけるLPSに誘発されるIL−8の誘発を中和する能力を、形質移入した細胞を、それぞれのモノクローナル抗体と共に、LPS投与の前に30分間プレインキュベートすることによって、分析した。さらに、それぞれのモノクローナル抗体を、全血中でLPSに誘発されるIL−8誘発を中和する能力について試験した。
【0155】
それぞれのモノクローナル抗体の特異性は、それぞれのモノクローナル抗体と以下の組合せで形質移入した細胞との結合を評価することによって、試験した:(1)ヒトTLR4およびヒトMD−2、(2)ウサギTLR4およびウサギMD−2、(3)ヒトTLR4およびウサギMD−2、(4)ウサギTLR4およびヒトMD−2。
【0156】
(実施例2)
ネズミモノクローナル抗体のヒト化
以下の研究は、TLR4、MD2および/またはTLR4/MD2複合体上のエピトープを認識する抗体のヒト化を記載する。抗体は、それぞれその全体が本明細書に参照により組み込まれている、同時係属中の2004年6月15日出願の米国出願第11/151916号(米国特許公開第US2008−0050366 A1号)および2004年6月15日出願のPCT/IB2005/004206(PCT公報WO07/110678)に記載の方法を用いてヒト化した。
【0157】
hu15C1抗体には、以下の配列番号45に示す可変重鎖(V)4〜28または以下の配列番号46に示すV3〜66が含まれる。hu15C1抗体には、以下の配列番号47に示す可変軽鎖(V)L6または以下の配列番号48に示すA26が含まれる。Chothiaら、1989年、E.A. Kabatら、1991年によって定義される相補性決定領域(CDR)を包含するアミノ酸は、以下に提供する配列中に四角で囲む。(Chothia, Cら、Nature 342:877〜883頁(1989年); Kabat, EAら、Sequences of Protein of immunological interest、第5版、US Department of Health and Human Services、US Government Printing Office(1991年)参照)。
15C1 Hu Vバージョン4〜28
【0158】
【化6】

式中、XはThrまたはSerであり、
式中、XはIleまたはMetであり、
式中、XはValまたはIleであり、
式中、XはMetまたはIleである。
15C1 Hu Vバージョン3〜66
【0159】
【化7】

式中、XはAlaまたはValであり、
式中、XはValまたはMetであり、
式中、XはLeuまたはPheである。
15C1 Hu VLバージョンL6
【0160】
【化8】

式中、XはLysまたはTyrである。
15C1 Hu VLバージョンA26
【0161】
【化9】

hu18H10抗体には、以下の配列番号49に示すV1〜69が含まれる。hu18H10抗体には、以下の配列番号50に示すVL6が含まれる。Chothiaら、1989年、E.A. Kabatら、1991年によって定義される相補性決定領域(CDR)を包含するアミノ酸は、以下に提供する配列中に四角で囲む。(Chothia, Cら、Nature 342:877〜883頁(1989年); Kabat, EAら、Sequences of Protein of immunological interest、第5版、US Department of Health and Human Services、US Government Printing Office(1991年)参照)。
18H10 Hu VHバージョン1〜69
【0162】
【化10】

式中、XはMetまたはIleであり、
式中、XはLysまたはThrであり、
式中、XはMetまたはLeuである。
18H10 Hu VLバージョンL6
【0163】
【化11】

式中、XはPheまたはTyrである。
【0164】
hu7E3抗体には、以下の配列番号51に示すV2〜70または以下の配列番号52に示すV3〜66が含まれる。hu7E3抗体には、以下の配列番号53に示すVL19が含まれる。Chothiaら、1989年、E.A. Kabatら、1991年によって定義される相補性決定領域(CDR)を包含するアミノ酸は、以下に提供する配列中に四角で囲む。(Chothia, Cら、Nature 342:877〜883頁(1989年); Kabat, EAら、Sequences of Protein of immunological interest、第5版、US Department of Health and Human Services、US Government Printing Office(1991年)参照)。
7E3 Hu VHバージョン2〜70
【0165】
【化12】

式中、XはSerまたはThrであり、
式中、XはIleまたはPheであり、
式中、XはIleまたはAlaである。
7E3 Hu VHバージョン3〜66
【0166】
【化13】

式中、XはPheまたはAlaであり、
式中、XはValまたはLeuであり、
式中、XはIleまたはPheであり、
式中、XはLysまたはArgであり、
式中、XはLeuまたはValであり、
式中、XはIleまたはAlaである。
7E3 Hu VLバージョンL19
【0167】
【化14】

式中、XはPheまたはTyrであり、
式中、XはTyrまたはPheである。
【0168】
実施例1に上述したキメラ抗体を用いて、ヒト化したモノクローナル抗体がヒトTLR4/MD2複合体と結合する能力を評価した。ヒト化したモノクローナル抗体のそれぞれは、対応するキメラ抗体と類似の様式でTLR4/MD2と結合することが見い出された。さらに、キメラ抗体を用いて、ヒト化したモノクローナル抗体がヒト全血中でLPSに誘発されるIL−6の産生を阻害する能力を評価した。ヒト化したモノクローナル抗体のそれぞれは、対応するキメラ抗体と類似の様式で血液白血球に対するLPSの効果を阻害することが見い出された。
【0169】
(実施例3)
改変したモノクローナル抗体の力価の増加
本明細書に記載する研究は、抗体のFc部分中の1つまたは複数の残基を改変することによって中和抗体の力価を増加させる方法に関する。具体的には、本明細書に記載する研究では、TLR4/MD2複合体を認識する改変された中和抗体を使用する。これらの抗TLR4/MD2抗体は、Fc部分、具体的にはFc部分のCH2ドメイン中に1つまたは複数の突然変異が含まれるように改変する。
【0170】
上述し、本明細書で「mu15C1」と呼ぶネズミIgG1/K抗ヒトTLR4/MD2モノクローナル抗体を、mu15C1のマウス定常領域をヒトIgG1のそれで置き換えることによって改変して、本明細書で「キメラIgG1 15C1」(図1A)と呼ぶキメラ抗体を産生した。対応するMAbの相対結合親和性は変化がなかった。
【0171】
LPSの効果を中和するキメラIgG1 15C1抗体の能力を、TLR4/MD−2で形質移入した細胞系を用いて評価した。HEK293細胞を、96ウェルプレート中に6×10個の細胞/ウェルで蒔いた。培地を実験当日に除去し、30μlの、6%の熱失活させたヒト血漿を含む培地を加えた。マウスIgG1 15C1(四角)またはキメラIgG1 15C1(三角)のMAbを30μlの基本培地で適切な濃度まで希釈し、細胞に1時間37℃で加えた。LPSを30μlの培地で希釈し、細胞に加え、24時間37℃でインキュベーションした。培養上清中のIL−8分泌をELISA(Endogen)によって監視した。
【0172】
キメラ抗体は、TLR4/MD−2で形質移入した細胞系HEK293に対するLPSの効果を中和することができた(IL−8産生によって測定)。図1Bは、マウスIgG1主鎖上の15C1(マウスIgG1 15C1と呼ぶ;図1Aの模式的説明を参照)およびヒトIgG1主鎖上の15C1(キメラIgG1 15C1と呼ぶ;図1Aの模式的説明を参照)が、この細胞系に対するその中和能力が等価であることを示している。
【0173】
ヒト全血中でキメラ抗体がLPSの効果を中和する能力も評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、マウスおよびキメラのIgG1 15C1のMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0174】
ヒト全血アッセイでは、ネズミおよびキメラの抗体で異なるプロフィールが見られた。図2は、マウスIgG1 15C1が、LPSを中和するその能力において、キメラIgG1 15C1よりも有意に強力であったことを示す(IL−6の産生によって測定)。この観察は、アッセイ中で使用するMAbの濃度が低いほど、より著しかった。2つのMAb(典型的にはFab領域を含む)の結合親和性は等価であるため、この差異は分子のFc領域に起因していると結論づけられた。
【0175】
さらに、この差異はFc受容体依存性の機構に媒介されると考察された。Fcγ受容体の発現に対して陰性のHEK293細胞(図1B)上では、2つのMAb、すなわちキメラおよびネズミの15C1は同等に強力であった一方で、白血球がFcγ受容体の発現に対して陽性であるex−vivoヒト全血アッセイでは、これらの間で明白な差異が見られた。
【0176】
推定上の阻害性応答におけるMAbのFc部分とFcγ受容体との間の相互作用の関与をさらに実証するために、マウスIgG1 15C1の改変体を、抗体が細胞Fcγ受容体と結合する能力が、その同族抗原TLR4/MD2に対するその親和性を保持したままで破壊されるように、操作した。EUアミノ酸残基位置265でAspからAlaへの突然変異(D265A)をマウスIgG1 15C1γ重鎖遺伝子内に導入し、この突然変異配列を、15C1マウスκ鎖と共に、PEAK細胞中で発現させて、突然変異(D265A)抗体を産生させた。平行組換えでは、野生型15C1の重鎖および軽鎖をPEAK細胞中で同時発現させて、組換えマウスIgG1 15C1を産生させた。突然変異D265Aは、マウスIgG1アイソタイプ中で操作した場合(IgG1−D265A)、IgG1−D265A含有免疫複合体とマウスFc−γ受容体IIB(FcγRIIB)、III(FcγRIII)およびIV(FγRIV)との結合を強固にする(Nimmerjahnら、Immunity、2005年、23:41〜51頁)、ならびに(FcγRI)を無効にするまたはすべてのヒトFcγ受容体(FcγRIIA、FcγRIIBおよびFcγRIII)とのその結合を大きく減少させる(Shieldsら、JBC、2001年; 276:6591〜6604頁)ことが、示されている。
【0177】
組換えマウスIgG1 15C1および組換えマウスIgG1−D265A 15C1抗体の中和能力を、ヒト全血アッセイで評価した。具体的には、健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、組換えマウスIgG1 15C1(rec−マウスIgG1 150)およびEU位置265でAspからAlaへの突然変異を含む組換えマウスIgG1 15C1(rec−マウスD265A 15C1)のMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0178】
ヒト全血実験(図3)では、組換えマウスD265A IgG1(rec−D265AマウスIgG1 15C1)は、LPSの効果を阻害することにおいて(IL−6の産生によって測定)、組換えマウスIgG1 15C1 WT IgG1(recマウスIgG1 15C1)よりも、顕著に弱かった。この結果により、マウスIgG1のFc部分とヒトFcγ受容体との結合が、15C1がLPSの炎症誘発性刺激を中和する力価に寄与するという仮説を確認した。
【0179】
マウスIgG1は、文献に、ヒトFcγRIIまたはCD32に対して高い親和性を有すると記載されている。実際、ヒトCD32に対するマウスIgG1のこの高い親和性により、この受容体の発見が可能となった。したがって、CD32がヒト白血球上のマウスIgG1のFcの主要な標的受容体となると仮定された。この可能性を確認するために、この受容体に対するマウスIgG1のFcの結合を防止するために、2つの異なる抗ヒトCD32抗体(CD32AおよびCD32Bを同等に良好に認識するAT10、ならびにCD32Aと結合し、CD32Bと弱く結合するIV.3)を用いて、ヒト全血アッセイを行った。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、マウス抗ヒトCD32モノクローナル抗体(クローンAT10、マウスIgG1、カタログ番号MCA1075XZ、AbD Serotec、クローンIV.3、マウスIgG2b、カタログ番号01470、StemCell Technologies)を含むまたは含まない、マウスIgG1 15C1 MAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0180】
ヒト全血アッセイでは、AT10抗体とIV.3抗ヒトCD32抗体がどちらも、マウスIgG1 15C1の力価をキメラIgG1 15C1で見られるものと同様のレベルまで減少させることが実証された(図4A)。IV.3が、CD32Aと強力に結合し、FcγRIIAのどちらの表現型も同等に良好に認識し、CD32Bと弱く結合することは、CD32BではなくヒトCD32Aの関与を指し示している。
【0181】
CD32Aは、その細胞外ドメイン中のアミノ酸131で多型性(ヒスチジンまたはアルギニン)を含む。この多型性の性質は、マウスIgG1とCD32Aとの結合に影響を及ぼし、アルギニンホモ接合性個体は、マウスIgG1に対する親和性がヒスチジンホモ接合体よりもはるかに高い。アルギニン/ヒスチジンヘテロ接合体は中間の親和性を有する(Dijstelbloem, H.M.ら、2001年、Trends Immunol. 22:510〜516頁)。健康な個体を、この多型性でそのCD32A遺伝子型についてスクリーニングし、ホモ接合性およびヘテロ接合性の個体に由来する全血における、LPS依存性のTLR4活性化の15C1媒介性の遮断を試験した。この実験では、15C1は、その元々の形態(すなわち、マウスIgG1主鎖上)で、またはヒトIgG4主鎖上の15C1可変領域を用いたキメラMAbとして、PEAK細胞中で産生させた。ヒトIgG4はCD32に対して非常に乏しい親和性しか有さないことが知られているため、この形態を選択した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー精製後、形質移入したCHO細胞上でのTLR4/MD−2の結合における、両方のMAbの完全性が確認され、等価であることが示された。全血LPS活性化実験では、15C1のmIgG1バージョンは、Arg/ArgおよびArg/Hisドナーを試験した場合に、TLR4を阻害することにおいて、hIgG4バージョンよりも相当に強力であった。対照的に、mIgG1 15C1は、His/Hisドナーにおいて、hIgG4 15C1よりもわずかだけ強力だった(図4B)。それぞれの用量応答曲線について得られたIC50値を表3に示す。これらの値は、様々なCD32遺伝子型ドナーの15C1 mIgG1およびhIgG4構築体間の力価の差異を強調している。mIgG1構築体は、Arg/ArgからHis/Hisドナーで力価の劇的な損失を示している一方で(約35倍まで)、hIgG4構築体は力価のわずかな損失しか示していない(約3倍まで)。これらの結果は、TLR4シグナル伝達に対する15C1 MAbの阻害活性における、CD32Aの寄与を強めている。
【0182】
同じドナー由来のヒト全血において、熱失活させたE.coliを刺激として使用して(10cfu/ml)、同一の結果が得られた。
【0183】
その後、研究を、Fc領域全体の生物学的寄与を維持するために十分な、マウスIgG1抗体のFc領域内の重要な領域を決定するために設計した。文献中で、Fc領域のCH2とCH3のドメインがどちらも、Fcγ受容体との相互作用に直接寄与できることが知られている。この阻害効果に寄与する重要な領域の同定に向かった第1のステップでは、FcとFcγ受容体との相互作用におけるその役割が十分に文献に記載されているため、CH2ドメイン(EU位置231〜340、図16のCH2ドメインのアラインメント参照)の重要性に焦点を当てるように研究を設計した。ヒトIgG1のCH2ドメインをマウスIgG1のそれで置き換え(後にmuCH2−キメラIgG1 15C1と呼ぶ、図5A参照)、相反的に、マウスIgG1のCH2ドメインをヒトIgG1のそれで置き換えた(後にhuCH2−マウスIgG1 15C1と呼ぶ、図5A参照)。抗体をPEAK細胞中で産生させ、形質移入した細胞の上清からプロテインG親和性カラムクロマトグラフィーによって精製した。FACSによってCHO TLR4/MD2形質移入体との等価な結合が観察され、これは、CH2ドメインの変化が、抗原に対する相対親和性に有意な影響を与えなかったことを示している。ネズミ15C1、huCH2−マウスIgG1 15C1、キメラIgG1 15C1およびmuCH2−キメラIgG1 15C1の中和能力を、ヒト全血アッセイで評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、マウスIgG1 15C1、キメラIgG1 15C1、ヒトCH2を含むマウスIgG1 15C1およびマウスCH2を含むキメラIgG1 15C1のMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0184】
ヒト全血アッセイでは、マウスCH2ドメインを含む組換えバージョンは、完全にマウスのIgG1 15C1 IgG1と同様の阻害活性を有していることが見い出された。他方で、ヒトCH2を含む組換えバージョンは、完全にマウスのIgG1 15C1 IgG1ほど強力ではなかったが、キメラIgG1 15C1まで減少された活性を有していた(図5B)。これらのデータから、Fcに媒介される阻害の寄与は、マウスIgG1の重鎖のCH2ドメインに限定されると結論づけられた。
【0185】
その後、研究を、マウスCH2ドメインのどの残基がFcに媒介される阻害活性に必要であるかを評価するために設計した。完全長マウスCH2ドメインを含むキメラIgG1 15C1から開始して、手法は、Fcに媒介される阻害活性の損失が観察されない最大数のヒト残基を導入することによって、CH2ドメインの重要な領域を同定することであった。これらの重要な残基の同定は、マウスCH2を4つの部分(A:EU位置231〜261、B:EU位置319〜340、C:EU位置296〜318およびD:EU位置262〜295)に細分し、4つのサブ領域のそれぞれを、ヒトIgG1の対応するCH2アミノ酸配列内に導入することによって決定した(図6A参照)。マウスCH2の4つのサブ領域への細分は、純粋にヒトCH2とのアミノ酸配列相同性に基づくものであった。4つの重鎖突然変異体は重複PCRによって操作し、組換えMAbはPEAK中で発現させた。対応する抗体は、形質移入した細胞の上清からプロテインG親和性カラムクロマトグラフィーによって精製し、以下の抗体の、その表面上にヒトTLR4−MD2複合体を発現するCHO安定細胞系との結合を決定した:muCH2−キメラIgG1 15C1、キメラIgG1 15C1、A mu231〜261 CH2キメラIgG1 15C1、B mu319〜340 CH2キメラIgG1 15C1、C mu296〜318 CH2キメラIgG1 15C1、およびD mu262〜295 CH2キメラIgG1 15C1。4×10個の細胞/ウェルを、30分間4℃で、50μlの1%のウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBS−1%のBSA)、および適切な抗体の段階希釈物または無関係のヒトIgG1アイソタイプ対照のいずれか中でインキュベーションした。細胞をPBS−1%のBSAで1回洗浄し、FMAT−Blue(登録商標)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトκ軽鎖抗体(1:250希釈、Sigma K3502)を含む同じ緩衝液中で、30分間4℃でインキュベーションした。細胞をPBS−1%のBSAで2回洗浄し、FACScalibur(登録商標)フローサイトメーター(Applied Biosystems)を用いて、FL−4チャネルで分析した。
【0186】
TLR4/MD2との等価な結合は、FACS分析によって実証した(図6B参照)。その後、これらの抗体中和能力を、ヒト全血アッセイを用いて評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、マウスCH2の様々なサブ領域を含む突然変異体キメラIgG1 15C1のMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0187】
ヒト全血アッセイ(図6C)では、マウスCH2ドメインを含む抗体の阻害活性は、EU位置319〜340のヒトIgG1アミノ酸残基(突然変異体B)を導入した場合に、劇的に減少することが判明した。この突然変異体の組から、マウスCH2ドメイン内の阻害活性は、EU位置319〜340にマウスIgG1残基を含むアミノ酸配列に主に限定されることが結論づけられた。
【0188】
その後、研究を、マウスIgG1 CH2アミノ酸残基を位置319〜340で、キメラIgG1 15C1抗体内のヒトCH2ドメイン内に移植する効果を決定するために設計した。マウスIgG1 CH2のEU位置319〜340の残基を、キメラIgG1 15C1のCH2内に重複PCRによって導入した(図7A参照)。突然変異体MAbをPEAK細胞中で発現させ、形質移入した細胞の上清からプロテインG親和性カラムクロマトグラフィーによって精製した。キメラIgG1 15C1、muCH2−キメラIgG1 15C1およびmu319〜340キメラIgG1 15C1抗体の中和能力を、ヒト全血アッセイを用いて評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、完全長のマウスCH2またはマウスCH2残基319〜340(EUの番号付け)のどちらかを含むキメラIgG1 15C1およびキメラIgG1 15C1のMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0189】
ヒト全血アッセイ(図7B)では、マウスCH2アミノ酸残基をEU位置319〜340で含む抗体の阻害活性が、完全長マウスCH2ドメインを含む15C1抗体と同様のレベルまで増加した。ヒトCH2内に22個のマウスIgG1アミノ酸残基のストレッチ(EU位置319〜340)を移植することが、完全マウスIgG1 15C1で見られるものと等価なレベルまで完全な阻害活性を回復させるために十分であることが、結論づけられた。
【0190】
その後、研究を、マウスIgG1 Fcの全体的な阻害活性を維持するために必要かつ十分な、マウスIgG1、EU位置319〜340、CH2ドメイン内の最小の残基数を決定するために設計した。マウスおよびヒトのIgG1間で位置319〜340のアミノ酸残基のアミノ酸配列のアラインメントから、7つの差異が見られた(図8Aで1〜7と番号付け)。これらの7残基の中から生物活性を維持するために重要なものを決定するために、マウスIgG1の残基をヒトIgG1の残基で交換する効果を検査した。この目的のために、マウスCH2領域のEU位置319〜340を含むキメラIgG1 15C1から開始して、StratageneのQuickChange突然変異プロトコルを用いて、5個の突然変異体の組を操作した(図8Bの突然変異体A〜E)。5つの突然変異体MAbをPEAK中で発現させ、形質移入した細胞の上清からプロテインG親和性カラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0191】
5つの突然変異体MAbの中和能力を、ヒト全血アッセイで評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、キメラIgG1 15C1、EU位置319〜340にマウスCH2アミノ酸残基を含むキメラIgG1 15C1および突然変異体A〜EのMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0192】
ヒト全血アッセイ(図8C)では、突然変異体DおよびEは、キメラIgG1 15C1と同じ阻害活性を示した一方で、突然変異体A、BおよびCは、少なくともマウスCH2領域のEU位置319〜340を含むキメラIgG1 15C1と同程度である阻害活性を示した。5つの突然変異体のヒト全血アッセイの結果およびアミノ酸配列の分析から、一方で、4個のヒトアミノ酸残基、Y1(EU位置319)、K2(EU位置322)、S3(EU位置324)およびA7(EU位置339)(図8B参照)の導入は、対応する抗体の阻害活性に対して有害効果を与えないが、他方で、2個のヒトアミノ酸残基、N4(EU位置325)およびL6(EU位置326)の導入は、Fc部分が原因で阻害効果の損失を伴う負の効果を有することが、結論づけられた。全体的に、マウスIgG1 Fcの阻害効果を潜在的に担っている7つのマウス残基のうち、3つのみ、すなわち、Ser4(EU位置325)、Ala5(EU位置326)およびPhe6(EU位置328)が、マウスIgG1 Fcの全体的な阻害活性に重要であると考えられることが、結論づけられた。
【0193】
その後、研究を、キメラIgG1 15C1抗体のヒトCH2ドメイン内に対応するEU位置で移植した場合に、ネイティブマウスIgG1 15C1抗体の阻害力価を回復させるマウス残基の最小数を決定するために設計した。マウスIgG1 CH2ドメイン内で、3つのアミノ酸残基、すなわち、Ser326、Ala327およびPhe329(EUの番号付け)がマウスIgG1 15C1の全体的な阻害活性を担っていると同定した後、キメラIgG1 15C1内に、マウスおよびヒトの配列間の6つの可能なコンビナトリアル組合せすべてをこれら3つのEU位置で導入するために、新しい組の突然変異体を設計した。新しい突然変異体F、GおよびHの配列、ならびに突然変異体C、DおよびEの配列(図8Bに以前に記載)を、以下の表1に示す。
表1.キメラIgG1 15C1のCH2ドメイン内のEU位置325〜328における6つの突然変異体(CからH)のアミノ酸配列
【0194】
【表1】

3つの突然変異体は、StratageneのQuick Change突然変異誘発プロトコルを用いて操作し、PEAK細胞中で発現させ、形質移入した細胞の上清からプロテインG親和性カラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0195】
これらの突然変異抗体の相対結合親和性は、細胞表面上にヒトTLR4/MD2を発現するCHO安定細胞系を用いて決定した。4×10個の細胞/ウェルを、30分間4℃で、1%のウシ血清アルブミンを含む50μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBS−1%のBSA)、および適切な抗体の段階希釈または無関係のヒトIgG1アイソタイプ対照のいずれか中でインキュベーションした。細胞をPBS−1%のBSAで1回洗浄し、FMAT−Blue(登録商標)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトκ軽鎖抗体(1:250希釈、Sigma K3502)を含む同じ緩衝液中で、30分間4℃でインキュベーションした。細胞をPBS−1%のBSAで2回洗浄し、FACScalibur(登録商標)フローサイトメーター(Applied Biosystems)を用いて、FL−4チャネルで分析した。
【0196】
これらの突然変異抗体の中和能力も、ヒト全血アッセイを用いて評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、キメラIgG1 15C1、マウスCH2を含むキメラIgG1 15C1、ならびに突然変異体C、FおよびHのMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0197】
FACS分析によって、すべての突然変異体が、CHO細胞上に発現されるTLR4/MD2複合体に対して同様の相対親和性を有することが示された(図9A参照)。ヒト全血アッセイ(図9B)では、突然変異体CおよびFは、マウスCH2を含むキメラIgG1 15C1よりも良好な阻害活性を示し、突然変異体Cは、2つのうちより強力であった。突然変異体HはキメラIgG1 15C1よりも強力であったが、マウスCH2を含むキメラIgG1 15C1よりは弱かった。突然変異体D、EおよびGの阻害活性は、キメラIgG1 15C1と同様であったが、それより良好ではなかった。
【0198】
結論として、ネイティブマウスIgG1 15C1と少なくとも同じほど良好な阻害活性を有する、キメラIgG1 15C1のCH2ドメイン内の2つの突然変異体が同定された。これら2つの突然変異体CおよびFは、それぞれ3個および2個のアミノ酸残基が、同じEU位置でIgG1 CH2ドメインの対応するマウス残基に突然変異している。2つの突然変異体のうち最も強力な阻害活性を有すると考えられる突然変異体Cは、以下の3個のマウス残基、Ser、AlaおよびPheをそれぞれEU位置325、326および328で有する。突然変異体Fは、同じ突然変異からなるが、EU位置325および328のみである。
【0199】
その後、研究を、キメラIgG1 15C1で得られた結果が、15C1のヒト化したバージョンにも当てはまるかどうかを評価するために設計した。軽鎖バージョンA26(15C1 Hu VLバージョンA26)と対合した重鎖バージョン4〜28(15C1 Hu VHバージョン4〜28)からなるマウスmAb 15C1のヒト化したバージョンを、本明細書およびその内容全体が本明細書に参照により組み込まれている国際特許出願PCT/IB2005/004174に記載のように、CDR移植によって構築した。このヒト化したバージョンは、後にヒト化IgG1 15C1と呼び、FACS分析によって、CHO細胞の表面で発現されるTLR4/MD2複合体に対して、キメラIgG1 15C1と類似の相対親和性を有することが以前に示されている。
【0200】
第1の組の実験では、マウスCH2を含むキメラIgG1 15C1(muCH2 chim15C1)の阻害活性を、マウスCH2を含むヒト化IgG1 15C1(muCH2 hum15C1)と比較した。これらのMAbは、PEAK細胞中で発現させ、形質移入した細胞の上清からプロテインG親和性カラムクロマトグラフィーによって精製した。TLR4/MD2を発現するCHOに対する等価な結合が、FACS分析によって実証された。
【0201】
muCH2ヒト化15C1抗体の中和能力を、ヒト全血アッセイを用いて評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、マウスIgG1 15C1、キメラIgG1 15C1、マウスCH2を含むマウスIgG1 15C1およびマウスCH2を含むヒト化IgG1 15C1のMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0202】
ヒト全血アッセイ(図10)では、マウスCH2ドメインを含むキメラとヒト化したバージョンがどちらも、マウスIgG1 15C1と類似の阻害活性を有し、この活性は、キメラIgG1 15C1で見られるものよりも高かったことが見い出された。これらの結果から、キメラIgG1 15C1で以前に見られたように、ヒト化IgG1 15C1 MAbの阻害活性は、マウスCH2ドメインをそのFc部分内に導入することによって、ネイティブマウスIgG1 15C1と同様のレベルまで増加させることができることが結論づけられた。
【0203】
キメラIgG1 15C1で行った作業と同様に、CH2ドメイン内のEU位置325、326および328でヒトまたはマウスのアミノ酸残基のいずれかを使用することに基づいて、6つの突然変異体C〜Hの組(表1参照)を構築した。対応する抗体は、形質移入した細胞の上清からプロテインG親和性カラムクロマトグラフィーによって精製した。これらの突然変異抗体の結合親和性は、細胞表面上にヒトTLR4/MD2を発現するCHO安定細胞系を用いて決定した。4×10個の細胞/ウェルを、30分間4℃で、50μlの1%のウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBS−1%のBSA)、および適切な抗体の段階希釈または無関係のヒトIgG1アイソタイプ対照のどちらか中でインキュベーションした。細胞をPBS−1%のBSAで1回洗浄し、FMAT−Blue(登録商標)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトκ軽鎖抗体(1:250希釈、Sigma K3502)を含む同じ緩衝液中で、30分間4℃でインキュベーションした。細胞をPBS−1%のBSAで2回洗浄し、FACScalibur(登録商標)フローサイトメーター(Applied Biosystems)を用いて、FL−4チャネルで分析した。
【0204】
FACS分析によって、すべての突然変異体が、CHO細胞上に発現されるTLR4/MD2複合体に対して同様の相対親和性を有することが示された(図11A参照)。
【0205】
様々な突然変異体ヒト化抗体の中和能力を、ヒト全血アッセイを用いて評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、ヒト化IgG1 15C1突然変異体C、F、GおよびHならびにマウスCH2を含むヒト化IgG1 15C1のMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0206】
ヒト全血アッセイでは、6つの突然変異体の阻害活性を、muCH2ヒト化IgG1 15C1と比較した。図11Bに示す結果は、突然変異体CおよびFはmuCH2ヒト化IgG1 15C1と少なくとも同じほど強力である一方で、突然変異体GおよびHは効率性がより低いことを、明らかに示している。突然変異体DおよびEも、muCH2ヒト化IgG1 15C1よりも効率性が低いことが示された。結果は、キメラIgG1 15C1について上記で得られたものと十分に一致している(図9B)。
【0207】
最後に、最良のヒト化CH2突然変異体、すなわち、EU位置325(Ser)、326(Ala)および328(Phe)で3個のマウスアミノ酸残基を含む突然変異体#Cの阻害活性を、ヒト全血アッセイで、キメラIgG1 15C1およびマウスCH2ドメインを含むヒト化IgG1 15C1(muCH2ヒト化15C1)と共に試験した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、キメラIgG1 15C1、ヒト化IgG1 15C1突然変異体#CおよびマウスCH2を含むヒト化15C1のMAbのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。図12に示すデータは、突然変異体#Cが、muCH2ヒト化IgG1 15C1と類似であり、キメラIgG1 15C1よりもはるかに強力な阻害活性を有することを示している。
【0208】
炎症誘発性サイトカインIL−6の阻害によって監視される、抗TLR2、抗MD2および抗CD14マウスIgG1モノクローナル抗体の阻害効果の増加におけるCD32の関連を、ヒト全血アッセイを用いて評価した。健康なボランティア由来の新鮮なヘパリン処理した血液を静脈穿刺によって得て、RPMI1640で1:2に希釈した。希釈した血液を60μl/ウェルで96ウェルプレート中に蒔き、15分間37℃でインキュベーションした。その後、30μlの、マウス抗ヒトCD32モノクローナル抗体(クローンAT10、カタログ番号2125−3210、AbD Serotec)を含むまたは含まない、マウス抗TLR2(13A)、マウス抗MD2(18H10、13B)およびマウス抗CD14(13C)のMAのRPMI1640中の段階希釈物を血液に加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、30μlのE.coli K12 LPS(0.1%のHSAを含むRPMI1640中で最終2ng/ml)をウェルに加え、6時間インキュベーションすることによって、血液細胞を刺激した。その後、IL−6の産生をELISAによって測定した。
【0209】
図13A〜13Cに示す結果は、TLR4以外の他の系、すなわち、TLR2、MD2およびCD14において、推定上の阻害性応答におけるMAbのFc部分およびヒトFcγRIIAとの間の相互作用の関与を実証する傾向にある。
【0210】
図16のすべてのヒト、マウスおよびラットのIgGアイソタイプのCH2ドメインのアラインメントは、マウスIgG1以外に、ラットIgG2aもEU位置325〜328でSAAFモチーフを含む一方で、ラットIgG1は、同じEU位置で非常に相同的なSGAF配列を含むことを示している。他のヒト、マウスまたはラットのIgGアイソタイプはどれも、このSAAFモチーフを含まない。CH2ドメインのγ鎖のEUの番号付け(Edelman, G.M.ら、1969年、Proc. Natl Acad. Sci. USA 63、78〜85頁)は、231から開始して340で終わる。ヒトIgG1、IgG3およびIgG4、マウスIgG2ab、IgG2aa、IgG2bおよびIgG3、ならびにラットIgG2bのCH2エクソンは、110個のアミノ酸をコードしている。ヒトIgG2およびラットIgG2cのCH2エクソンは、3個のヌクレオチド(nt)の欠失が原因で、109個のアミノ酸をコードしている。マウスIgG1、ラットIgG1およびIgG2aのCH2エクソンは、9個のntの欠失が原因で、107個のアミノ酸をコードしている。
【0211】
(実施例4)
CDR3が突然変異した中和抗体。
【0212】
本明細書に記載する研究は、抗体のCDR3部分中の1つまたは複数の残基を改変することによって中和抗体の力価を増加させる方法に関する。具体的には、本明細書に記載する研究では、TLR4/MD2複合体を認識する改変された中和抗体を使用する。これらの抗TLR4/MD2抗体は、CDR3部分中に1つまたは複数の突然変異が含まれるように改変する。これらの抗体には以下の配列が含まれ、CDR3領域内の単一の点突然変異を、アミノ酸配列内で下線を引いた:
【0213】
【化15】

【0214】
【化16】

【0215】
【化17】

これらの突然変異体の結合は、組換えヒトTLR4−MD2を発現する細胞上のFACSによって分析した。PEAK細胞を、1ugの、15C1ヒト化VH突然変異体1または2、および15C1ヒト化VL A26または15C1ヒト化VH4〜28、および実施例4に示す15C1ヒト化VL突然変異体1、2、3または4をコードしている発現ベクターの組合せを用いて、Trans IT−LT1形質移入試薬(Mirus Bio Corporation、ウィスコンシン州Madison)を使用して、同時形質移入した。すべての形質移入は、2つ組で実施した。形質移入の72時間後、PEAK細胞の上清を収集し、組換えヒトIgG1/κの濃度をELISAによって測定した。その後、すべての上清の抗体濃度を0.33μg/mlに調節した。その後、これらの上清ならびに0.11および0.04ug/mlの2つの段階希釈物を、その表面にヒトTLR4−MD2を発現するCHO細胞との結合について、FACSによって試験した。5×10個の細胞を、希釈したPEAK上清と共に、1時間4℃でインキュベーションした。2回の洗浄後、細胞を、二次抗体(アロフィコシアニンとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体(1:200希釈、Molecular Probes)と共にインキュベーションした。細胞は、FACSCaliburフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて、FL−4チャネルで分析した(図17A〜17G)。図17A−17Gの、15C1のヒト化突然変異バージョンとTLR4との結合は、様々な抗体濃度の平均蛍光強度として表す。4つの実験のうちの代表的な1つ。エラーバーは±S.D.を示す。VH突然変異体1およびVL突然変異体2のバージョンは、特許取得されているヒト化したバージョンよりも高いMFIを有すると考えられ、これは、これら2つのバージョンが、ヒト化したバージョンよりも高い相対親和性を有することを示している。
他の実施形態
本発明を、その詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲を例示することを意図し、それを限定することを意図しない。他の態様、利点、および変形は、以下の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始ポリペプチドと比較して少なくとも1つの突然変異を含み、少なくとも1つの突然変異が、EUアミノ酸位置325での置換、326での置換および328での置換からなる群から選択される、Fc領域の少なくともFcγR結合部分を含む改変ポリペプチド。
【請求項2】
改変されたFcγ受容体活性を誘発する、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項3】
抗体またはその断片である、請求項1または2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項4】
融合タンパク質である、請求項1または2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項5】
前記FcγR結合部分または前記Fc領域が、マウス、ラットまたはヒト抗体に由来する、請求項1または2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項6】
前記FcγR結合部分が完全Fc領域を含む、請求項5に記載の改変ポリペプチド。
【請求項7】
前記改変されたFcγ受容体活性が、前炎症性メディエーターの放出の阻害である、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項8】
前記Fcγ受容体がヒトCD32Aである、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項9】
前記抗体が、ヒトIgG1アイソタイプ、ヒトIgG2アイソタイプ、ヒトIgG3アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプである、請求項3に記載の改変ポリペプチド。
【請求項10】
EU位置325のアミノ酸残基が、極性アミノ酸、たとえばセリンで置換されている、請求項9に記載の改変ポリペプチド。
【請求項11】
EU位置326のアミノ酸残基が、非極性アミノ酸、たとえばアラニンで置換されている、請求項9に記載の改変ポリペプチド。
【請求項12】
EU位置328のアミノ酸残基が、非極性アミノ酸、たとえばフェニルアラニンで置換されている、請求項9に記載の改変ポリペプチド。
【請求項13】
重鎖定常領域が、改変されていない抗体中の対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基による2つ以上のアミノ酸置換を含み、前記置換が、前記重鎖定常領域のEU位置325、326および328から選択される2つ以上のアミノ酸残基で起こる、請求項9に記載の改変ポリペプチド。
【請求項14】
前記置換がEU位置326および328での置換である、請求項13に記載の改変ポリペプチド。
【請求項15】
前記重鎖定常領域のEU位置326がアラニンで置換されており、前記重鎖定常領域のEU位置328がフェニルアラニンで置換されている、請求項14に記載の改変ポリペプチド。
【請求項16】
前記重鎖定常領域のEU位置325〜328が、SAAF、SKAFおよびNKAFから選択される配列からなる、請求項9に記載の改変ポリペプチド。
【請求項17】
トル様受容体(TLR)、MD2アクセサリータンパク質およびCD14から選択される標的と結合する、請求項1または2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項18】
可溶性TLR4、TLR4/MD2複合体、または可溶性TLR4とTLR4/MD2複合体の両方と結合する、請求項17に記載の改変ポリペプチド。
【請求項19】
TLR2と結合する、請求項17に記載の改変ポリペプチド。
【請求項20】
改変体CDR3領域をさらに含む、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項21】
前記改変体CDR3が、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84および配列番号85のアミノ酸配列から選択される、請求項20に記載の改変ポリペプチド。
【請求項22】
ヒトFcγR CD32Aを、Fc領域の少なくともFcγR結合部分を含む改変ポリペプチドと結合させることを含み、前記ポリペプチドが、EU位置325、326および328に対応するアミノ酸残基のうちの1つまたは複数から選択される前記重鎖定常領域の少なくとも1つの改変されていない突然変異アミノ酸を含み、前記突然変異アミノ酸は、改変されていないポリペプチド中の対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基であり、前記改変ポリペプチドが、改変されていないポリペプチドと比較して、そのFv領域を介した抗原との結合を保持したままで、ヒトFcγR CD32Aとのライゲーションによる前炎症性メディエーターの放出の阻害を誘発する、ICAMシグナル伝達を活性化させる方法。
【請求項23】
前記改変ポリペプチドが、改変された抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記改変された抗体のEU位置325のアミノ酸残基が、セリンで置換されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記改変された抗体のEU位置326のアミノ酸残基が、アラニンで置換されている、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記改変された抗体のEU位置328のアミノ酸残基が、フェニルアラニンで置換されている、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記改変された抗体の前記重鎖定常領域が改変されていない抗体中の対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基による2つ以上の置換を含み、前記置換が、EU位置325、326および328に対応する残基から選択される2つ以上のアミノ酸残基で起こる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記置換が、前記改変された抗体のEU位置326および328に対応する残基での置換である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記改変された抗体のEU位置326の残基がアラニンで置換されており、前記改変された抗体のEU位置328の残基がフェニルアラニンで置換されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記改変された抗体のEU位置325〜328の残基が、SAAF、SKAFおよびNKAFから選択される配列からなる、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記改変された抗体が、トル様受容体(TLR)、MD2アクセサリータンパク質およびCD14から選択される標的と結合する、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記改変された抗体が、可溶性TLR4、TLR4/MD2複合体、または可溶性TLR4とTLR4/MD2複合体の両方と結合する、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記改変された抗体がTLR2と結合する、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記改変ポリペプチドが改変体CDR3領域をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記改変体CDR3が、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84および配列番号85のアミノ酸配列から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ガンマFc(γFc)領域を含む単離したポリペプチドであって、前記領域のEU位置325〜328の残基がSAAFおよびSKAFから選択されるアミノ酸モチーフからなる単離したポリペプチド。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B−1】
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【図4B−2】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図17G】
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【公表番号】特表2010−526868(P2010−526868A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508009(P2010−508009)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003978
【国際公開番号】WO2009/101479
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(506198562)
【Fターム(参考)】