説明

改良された石膏ボード

【課題】 使用安全性が高く軽量で施工性に優れ、且曲げ強度の向上と亀裂発生も防止しえる石膏ボードの提供。
【解決手段】 焼石膏に適宜重量%割合で加水混練したスラリー状石膏を所要の厚さで且両面をボード用原紙で接合し一体的に凝結する石膏ボードにおいて、焼石膏に対し竹繊維チョップドストランドが5乃至40重量%割合で分散混合された竹繊維チョップドストランド混合スラリーが用いられる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された石膏ボードに係るもので、更に詳しくは高い使用安全性と曲げ強力の向上及び軽量化を実現できる、改良された石膏ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボードは石膏即ち硫酸カルシウムを芯材として、両面をボード用原紙で被覆し、板状に成形したもので、この石膏とボード用原紙とは硫酸カルシウムの水和反応に伴う針状の構造の関与により接着がなされるもので、耐圧縮強度や曲げ強度に優れるばかりか、不燃性や遮音性に加えて寸法安定性も良く、特にはコスト的安価さから建築用板材として多量に使用されて来ている。
【0003】
而して近年に至っては一方において環境保全指向の高まりにより生産財や消費財はもとより空気、水及び土地にまで安全や安心が希求されており、加えて成長期において多数建設された建物もその建替え期を迎えて各所で解体が頻繁になされており、建築廃材も廃棄上の制約からコンクリートや金属、合成樹脂或いは石膏ボード等に分別され廃棄がなされるものの、廃棄石膏ボードにおいてはその保管場所や保管条件等によって硫酸還元細菌が増殖して多量の硫化水素を発生し人的被害が多発していることから、これの対策が重要な課題として提起されている。
【0004】
更に現状の石膏ボードは、その重さが一般的な厚さ9.5mmの物でも略6.3乃至6.7kg/m以上、及びその暑さが12.5mmの物でも略8.0乃至9.0kg/mと極めて多重であって、今日の如く建設作業者の高齢化に伴って、かかる多重な石膏ボードでは過大な労力の付加により作業性も著しく損われる結果となっている。
【0005】
発明者等はかかる実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、近年に至り孟宗竹や和竹若しくは笹竹等の竹材が異常に繁殖して植林や自然林を初め果樹園や農地にまで侵入し、根拡による育成養分の剥奪や日照阻害等により成長や栽培阻害の発生、所謂竹害が全国的に蔓延していることから、竹材の筏採とその有効利用について検討がなされている。
【0006】
そしてこの竹材の有効利用の一策として竹材を適宜の大きさに破砕し加圧混練し、硬組織と柔組織とを解体混交させ且適宜長さに切断のうえ、ノズルより常圧下に減圧吐出させて膨潤拡散させることにより細胞壁を形成するセルロースやヘミセルロースをリグニンより解離させて開繊された竹繊維チョップドストランドが形成されることに着目するとともに、該竹繊維チョップドストランドは竹材本来の性能とされる強靭性や屈撓性と熱安定性に加えて抗菌性を保持するとともに、加圧混練や膨潤拡大に伴う解体や解離に伴う多孔陥部並びに外表面の粗面化により、保湿性や消臭性及びガス吸着性が創出されることを究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は使用安全性が高く軽量で施工性に優れるとともに曲げ強度の向上と亀裂発生も防止しえる改良された石膏ボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、焼石膏を粉砕のうえ加水混練したスラリー状石膏を所要の厚さで且両面をボード用原紙で接合し一体的に凝結させて板状となす石膏ボードにおいて、該焼石膏に対し孟宗竹や和竹若しくは笹竹等の竹材を、適宜大きさに破砕し加圧混練して硬組織と柔組織の解体混交と適宜長さにカットのうえ、且吐出口より常圧下に減圧吐出し膨潤拡散させて細胞壁の形成セルロース及びヘミセルロースをリグニンより解離させ、多孔陥部の膨大数形成と且表面粗面化により嵩高に開繊させてなる竹繊維チョップドストランドが5乃至40重量%割合で分散混合された竹繊維チョップドストランド混合スラリーを用いた構成からなる石膏ボードを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述の如き構成からなるもので、竹繊維チョップドストランドは竹材本来の強靭性や屈撓性、熱安定性を初め抗菌性をも保持するとともに、加圧混練による硬組織と柔組織とが細繊維に解体及び混交され、且減圧吐出と膨潤拡散により細胞壁形成セルロース及びヘミセルロースもリグニンより解離されて比表面積の増大と外表面の粗面化とにより嵩高で接触摩擦抵抗も大きく形成されるため、加水されてなる竹繊維チョップドストランド混合スラリーと容易に分散混合されるとともに、加熱乾燥によるボード用原紙との一体的凝結に際しても、熱安定性に優れるため均質な凝結がなされるばかりか、石膏ボードの最大の弱点とされる曲げ強力の低下も竹繊維チョップドストランドの多方向への分散混合とともに外表面の粗面化による竹繊維チョップドストランド混合スラリーとの凝結も強固になされて防止されるとともに亀裂発生も防止される。
【0010】
加えて該竹繊維チョップドストランドは、本質的に抗菌性を保持するため嫌気性条件下におかれても硫酸還元細菌の繁殖自体が抑制されるため硫化水素の発生が防止されるとともに、仮令硫化水素の発生がなされても外部放出前に多孔陥部による膨大な比表面積を以って吸着される。
而も竹繊維チョップドストランドは多孔陥部や外表面の粗面化とにより見掛比重が0.2と軽量であるから焼石膏に対して5乃至40重量%割合で分散混合されることにより、形成される石膏ボードは従来品に比べて略4乃至30重量%程度の軽量化が実現できる。更に当然の事ながら本発明において、竹繊維チョップドストランドの分散混合割合が多くなると、形成される本発明石膏ボード外表面のガス吸着性も発揮されて、シックハウス対策にも有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
焼石膏に適宜割合で加水してなるスラリー状石膏を所要の厚さで且両面をボード用原紙で接合し一体的に凝結させて板状となす石膏ボードにおいて、焼石膏に対して竹材を適宜に破砕のうえ加圧混練し硬組織と柔組織とを細繊維に解体し混交させ且適宜長さに切断のうえ、減圧吐出し膨潤拡散により細胞壁のセルロース及びヘミセルロースをリグニンより解離させて多孔陥部が大多数形成されて比表面積の大きな竹繊維チョップドストランドが5乃至40の重量%割合で分散混合された構成。
【実施例1】
【0012】
以下に本発明実施例を図とともに説明すれば、図1は本発明に使用するスラリー状石膏1の説明図であって、該スラリー状石膏1は焼石膏1A即ちCaSO・1/2HOに適宜重量割合の加水2をなし形成されるものであって、一般的な焼石膏1Aはβ形半水塩に属するもので、加水2の割合量は概ね焼石膏に対して70乃至80重量%割合が目処となる。
而して本発明においては、かかるスラリー状石膏1に竹繊維チョップドストランド3が分散混合されるもので、この竹繊維チョップドストランド3は、図2に示すように通常においてはその繊維長も略2.0mm乃至40mm程度であり、且その単繊維3Aの太さとしては概ね太い物でも略0.2mm以下、一般的には0.1mm以下の細繊維に形成されている。
【0013】
ところでこの竹繊維チョップドストランド3は、図3に示すように孟宗竹や和竹若しくは笹竹等の竹材30を、所望の大きさに破砕のうえ適宜の加圧混練装置31を用い、そのホッパー31Aに供給する。
そして加圧混練装置31内には、供給される竹材30を加圧移送させつつ剪断力を以って竹材30の硬組織と柔組織とを解体させつつ混交させる移送スクリュー31Cがシリンダー31B内に回転可能に配置されている。
【0014】
加えて竹材30が加圧混練され解体され混交されたうえは、更にストレーナー31Dにより内部圧力を高めたうえカッター31Eにより所要の長さにカットがなされる。
かかる場合において加圧混練に際しての内部圧力は使用する竹材30、即ち孟宗竹の如く全体的硬い素材の場合には略20乃至50kg/cm程度で、更に笹竹の如く素材が柔らかな場合では略10乃至20kg/cm程度が目処となる。そして竹繊維チョップドストランド3の繊維長は、竹材30の破砕の大きさと且かかるカッター31Eのカット条件とにより可成りの範囲で調整できる。
【0015】
かくして加圧混練装置31内で竹材30の硬組織と柔組織とが解体され且混交されたうえ所要の長さに切断され、而も十分な内部圧力が付加されたうえその先端の吐出ノズル31Fより常圧下に減圧吐出させることで、爆発的な膨潤拡散が誘発されて細胞各個の細胞壁を形成するセルロース及びヘミセルロースがリグニンより解離され、膨大数の多孔陥部3Bの形成と表面形状の粗面化3Cに伴い、図4に示す如く比表面積の増大による保湿性やガス吸着性が創出され、更には嵩高性の向上に伴う軽量化と且竹繊維チョップドストランド混合スラリー4との分散混合後の加熱乾燥による凝結係止が大きく働き、強固な凝結が図れる。
【0016】
図5は本発明に用いる竹繊維チョップドストランド混合スラリー4の説明図であって、該竹繊維チョップドストランド混合スラリー4は、焼石膏1Aに所要重量%割合の加水2して形成されるスラリー状石膏1の焼石膏1Aに対して、少なくとも5重量%割合から、最大40重量%割合で竹繊維チョップドストランド3を分散混合させたものである。
かかる場合の竹繊維チョップドストランド3の分散混合割合が、焼石膏1Aに対して5重量%以下では特に硫化水素発生に係る硫酸還元細菌の繁殖抑制や、或いは発生した硫化水素を吸着し外部放散を防止するには至らず、且曲げ強力の向上や亀裂発生防止にも至らず而も軽量化にも十分には発揮されない。
反面竹繊維チョップドストランド3の分散混合割合が焼石膏1Aに対して40重量%を超えると、保湿性やガス吸着性、軽量性等は十分に発揮されるものの、耐圧縮強力やとりわけ不燃性の面に難点が生ずる。
これがためかかる問題の解決手段として竹繊維チョップドストランド3の水分率を10乃至30%割合に保持させることが好適である。
【0017】
かくして竹繊維チョップドストランド混合スラリー4を用いて、図6に示すような石膏ボード成形装置5により、本発明改良された石膏ボード7が形成されるものであって、この石膏ボード成形装置5は図示する如く、極めて長い鋼板製ベルトコンベア5Cの一方側端に、下面側ボード原紙6が延出されて該鋼板製ベルトコンベア5C上に載置移送させつつ、その移送側には下部位に所要の厚さで延出された下面側ボード原紙6上に竹繊維チョップドストランド混合スラリー4を塗着させるフラットノズル5Bが設けられた塗着タンク5Aが配位されている。そしてこの塗着タンク5Aの更に移送側には、フラットノズル5Bより所要の厚さを以って下面側ボード原紙6上に竹繊維チョップドストランド混合スラリー4が塗着されたその上面に接合されるよう上面側ボード原紙6Aが延出され、而して乾燥帯5Eにおいて加熱乾燥をなしつつ、表裏面のボード原紙6及び6Aと竹繊維チョップドストランド混合スラリー4とを水和作用により一体的に凝結させて、以って図7に示す本発明改良された石膏ボード7が形成される。かかる場合に鋼板製ベルトコンベアー5Cには極めて大きな荷重が付加されるため、この荷重を支持するための多数のローラー5Dが配位されている。
【0018】
以下に本発明により作成した改良された石膏ボードについての性能試験結果を以下に述べれば、試験に用いた試料はβ形焼石膏CaSO・1/2HOを粉砕のうえ、この焼石膏に対して孟宗竹の竹材より形成しその繊維長が略2.0乃至4.0mmで且単繊維の太さが略0.1mm以下の竹繊維チョップドストランドを5.0重量%割合、12.5重量%割合及び25.0重量%割合で分散混合のうえ加水して竹繊維チョップドストランド混合スラリーとしたうえ、JISA6901に準じて厚さ9.5mmの石膏ボードを作成した。
そして従来の焼石膏のみで作成したものを対照とし、竹繊維チョップドストランドを5.0重量%割合で分散混合した物を試料1とし、同12.5重量%割合で分散混合したものを試料2、及び同25重量%割合で分散混合させた物を試料3としたもので、機械的性能は表1の通りである。
【0019】
【表1】

【0020】
次に対照及び試料についてガス吸着性試験結果について述べれば、ガス吸着試験は厚さ9.5mm縦及び横15cmに切断した対照並びに試料1、試料2及び試料3を、デシケーター内にそれぞれ載置のうえ、エチレンガスを注入密閉し経過時間とともに、その残留ガス濃度をガス検知管を用いて測定しガス吸着性を判断したもので、結果は表2の通りである。
【0021】
【表2】

【0022】
更に抗菌性試験は、シャーレー内に培養培地としてポテトデキストリンを用いて大腸菌群を植成させるとともに、その中央位置に2cm平方にカットした対照並びに試料1乃至試料3を載置し、インキュベーター内で30℃48時間培養させたうえコロニー生成状態を判読して抗菌性を判断したもので、結果は表3の通りであった。
【0023】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0024】
従来の石膏ボードと同様に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 スラリー状石膏の説明図である。
【図2】 竹繊維チョップドストランドの説明図である。
【図3】 加圧混練装置の説明図である。
【図4】 多孔陥部と表面粗面化された竹繊維の拡大説明図である。
【図5】 竹繊維チョップドストランド混合スラリーの説明図である。
【図6】 石膏ボード成形装置の説明図である。
【図7】 本発明の断面説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 スラリー状石膏
1A 焼石膏
2 加水
3 竹繊維チョップドストランド
3A 単繊維
3B 多孔陥部
3C 粗面化
4 竹繊維チョップドストランド混合スラリー
5 石膏ボード成形装置
5A 塗着タンク
5B フラットノズル
5C ベルトコンベア
5D ローラー
5E 乾燥帯
6 下側面ボード原紙
6A 上側面ボード原紙
7 本発明石膏ボード
30 竹材
31 加圧混練装置
31A ホッパー
31B シリンダー
31C 移送スクリュー
31D ストレーナー
31E カッター
31F 吐出ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼石膏を粉砕し且該焼石膏に対して、竹材を破砕し加圧混練のうえ適宜長さに切断し解体混交のうえ、而も減圧吐出による膨潤拡散により形成される竹繊維チョップドストランドが5乃至40重量%割合で分散混合されたうえ加水してなる竹繊維チョップドストランド混合スラリーで、所要の厚さに且両面をボード用原紙で接合し一体的に凝結させてなることを特徴とする改良された石膏ボード。
【請求項2】
分散混合される竹繊維チョップドストランドの繊維長が2.0乃至40mmで且その単繊維の太さが0.2mm以下である請求項1記載の改良された石膏ボード。
【請求項3】
分散混合される竹繊維チョップドストランドの水分率が10乃至30%割合である請求項1乃至請求項2記載の改良された石膏ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−87049(P2013−87049A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240650(P2011−240650)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(507095840)長崎工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】