説明

改質木質材料の製造方法及び改質木質材料

【課題】耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料の製造方法及び改質木質材料を提供すること。
【解決手段】本発明において、木質材料を含浸させる処理液として、アクリル酸亜鉛5〜18重量%とアクリル酸アルミニウム2〜6重量%とヒドロキシルエチルアクリレート5〜24重量%とラジカル発生剤の所要量とを含む水溶液が用いられる。当該水溶液に、木質材料に含浸させ、重合及び縮合させることによって、耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料の製造方法及び改質木質材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐朽性及び耐蟻性を有するように、木質材料を改質するための方法として、特許文献1に開示されている方法がある。特許文献1では、アクリル酸亜鉛とポリエチレングリコールメタクレートとジメチロールエチレン尿素とを含む水溶液に、木質材料を浸透させて、重合及び縮合させて乾燥させることによって、耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料が製造されることが開示されている。特許文献1に開示されている製造方法を用いることによって、ポリアクリル酸亜鉛及びジメチロールエチレン尿素樹脂が含浸された改質木質材料が提供される。
【特許文献1】特公平5−39761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、尿素樹脂は、高温下で加水分解されて、ホルムアルデヒドを発生する可能性があることが指摘されている。したがって、特許文献1に開示されている製造方法によって得られた改質木質材料は、環境面で、好ましくない可能性がある。
【0004】
それゆえ、本発明の目的は、環境への影響が少なく、かつ耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料の製造方法及び改質木質材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の改質木質材料は、アクリル酸亜鉛5〜18重量%とアクリル酸アルミニウム2〜6重量%とヒドロキシルエチルアクリレート5〜24重量%とラジカル発生剤の所要量とを含む水溶液を、木質材料に浸透させ、重合及び縮合させることによって得られる。
【0006】
ラジカル発生剤は、たとえば、アゾ化合物や過酸化物などがよいが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ラジカル発生剤として、アゾビスイソブチルアミン塩を0.2〜6重量%用いるとよい。
【0007】
かかる木質材料処理用の水溶液を用いて、改質木質材料を製造するには、たとえば、以下のような方法がある。木材含浸用の耐圧容器に当該水溶液を収容し、これに処理対象の木質材料を浸漬して蓋を閉じ、一旦減圧して、木質材料中の空気を抜き、その後、所定の圧力値に達するまで加圧して木質材料中に水溶液を圧入する。次に、圧力を解放して含浸させた木質材料を取り出し、余分な水溶液を除いた後、加熱乾燥機に移して樹脂を重合及び縮合させると共に十分に乾燥する。
【0008】
このようにして得られた本発明の改質木質材料は、ポリアクリル酸亜鉛及びポリアクリル酸アルミニウムが含浸されて材料の細胞壁に沈着しているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ジメチロールエチレン尿素樹脂を用いることなく、耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料が提供されることとなる。よって、環境への影響が少なく、かつ耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料の製造方法及び改質木質材料が提供されることとなる。また、本発明では、ラジカル重合性有機酸金属塩であるアクリル酸亜鉛及びアクリル酸アルミニウムに加えて、水溶性ラジカル重合性化合物であるヒドロキシルエチルアクリレートが混合された水溶液が処理剤として用いられるので、耐朽性等の面で、より改質効果が向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
アクリル酸亜鉛5〜18重量%とアクリル酸アルミニウム2〜6重量%とヒドロキシルエチルアクリレート5〜24重量%とラジカル発生剤の所要量とを含む水溶液を用意する。ラジカル発生剤として、たとえば、アゾ化合物や過酸化物などを用いる。好ましくは、ラジカル発生剤として、アゾビスイソブチルアミン塩を0.2〜6重量%用いるとよい。
【0011】
得られた水溶液を木材含浸用の耐圧容器に収容する。これに、処理対象の木質材料を浸漬して蓋を閉じ、一旦減圧して、木質材料中に空気を抜き、その後、所定の圧力値に達するまで加圧して木質材料中に水溶液を圧入する。次に、圧力を解放して含浸させた木質材料を取り出し、余分な水溶液を除いた後、加熱乾燥機に移して樹脂を重合及び縮合させると共に十分に乾燥する。
【0012】
これによって、ポリアクリル酸亜鉛及びポリアクリル酸アルミニウムが含浸されて細胞壁に沈着している改質木質材料が得られる。
【実施例】
【0013】
(実施例)
アクリル酸亜鉛7.5重量部、アクリル酸アルミニウム2.5重量部、ヒドロキシルエチルアクリレート10重量部、水溶性ラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチルアミン塩0.24重量部を含む合計100重量部の水溶液からなる処理液を用意した。
【0014】
上記実施例の処理液中に、木口面10mm、繊維方向20mmのスギ辺材を浸漬して、耐圧釜を用いて−680mmHgで減圧操作を20分間行い木材中の空気を抜いた。その後、大気圧に戻した後、5kgf/cm2で加圧操作を20分間行い、当該スギ辺材に処理液を注入した。その後、大気圧に戻し、−680mmHgで減圧操作を20分間行い過剰な処理液を除去した。このようにして薬剤処理されたスギ辺材を、室内に24時間静置した後、恒温恒湿庫にて、80度、80%で72時間加熱し、処理液を硬化させて、実施例に係る改質木質材料を得た。
【0015】
(比較例1)
アクリル酸亜鉛7.5重量部、ジメチロールエチレン尿素15重量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート15重量部、水溶性ラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチルアミン塩0.24重量部、及び高級アルカノールアミン塩酸塩1.5重量部を含む合計100重量部の水溶液からなる処理液を用意した。上記比較例1の処理液を用いて、実施例と同様の方法によって、比較例1に係る改質木質材料を得た。
【0016】
(比較例2)
比較例2として、水道水を用いて、上記実施例と同様の方法によって処理したスギ辺材を用いた。
【0017】
(耐蟻効力試験)
(社)日本木材保存協会規格第11号1981の「塗布・吹付け・浸漬用木材防蟻剤の防蟻効力試験法(1)室内試験方法 総合試験」にほぼ準拠して、実施例並びに比較例1及び2について、耐蟻効力試験を行った。直径8cm、長さ6cmのアクリル樹脂製円筒の一端に硬石膏を約5mmに固め飼育容器とし、実施例並びに比較例1及び2の試験体の繊維方向を垂直にして1個ずつおき、イエシロアリの職蟻150頭と兵蟻15頭を投入し、水を加えた脱脂綿を敷き詰めた蓋付き容器中に飼育容器を並べ、28度の暗所にて21日間飼育した。
【0018】
飼育の前後、実施例並びに比較例1及び2の試験体を60度で乾燥させて、飼育前後の恒量W1,W2を求めた。試験体の質量減少率を、((W1−W2)/W1)×100で計算した。実施例の試験体については、2回の試験を行い、質量減少率の平均値を求めた。比較例1の試験体については、3回の試験を行い、質量減少率の平均値を求めた。比較例1の試験体について、1回の試験を行い、質量減少率を求めた。表1は、実施例並びに比較例1及び2の質量減少率を示す。
【表1】

【0019】
比較例2では、シロアリが十分に活動し、試験体の質量が大幅に減少したと考えられる。よって、実施例と比較例2とを比較すれば、実施例に係る試験体が耐蟻性を有していることが分かる。また、実施例と比較例1とを比較すると、実施例に係る試験体が従来品と同等の耐蟻性を有していることが分かる。
【0020】
実施例に係る試験体は、ポリアクリル酸亜鉛及びポリアクリル酸アルミニウムが含浸されて材料の細胞壁に沈着しているので、樹脂化されており、耐朽性を有することが分かる。
【0021】
このように、ジメチロールエチレン尿素樹脂を用いることなく、従来品と同程度の耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料が本実施例によって提供されたと言える。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係る改質木質材料の製造方法によって、耐朽性及び耐蟻性を有する改質木質材料が提供され、土木建築等の分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸亜鉛5〜18重量%とアクリル酸アルミニウム2〜6重量%とヒドロキシルエチルアクリレート5〜24重量%とラジカル発生剤の所要量とを含む水溶液を、木質材料に含浸させ、重合及び縮合させることを特徴とする改質木質材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法によって得られた改質木質材料。