説明

放射性物質等の汚染物質の回収方法及びその装置

【課題】グランド等の広域エリアに降下した放射性物質等の汚染物質を、その表土を掘り起こして回収することなく確実に回収できる、効果的で利便性のある回収方法とその回収装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、放射性物質等の汚染物質を吸着可能な粒状吸着材1を散布、敷設する散布敷設工程と、敷設された粒状吸着材1により放射性物質等の汚染物質を吸着する吸着工程と、放射性物質等の汚染物質を吸着した粒状吸着材1を磁着してリフティングする磁着リフティング工程と、磁着リフティングした粒状吸着材1を移動する移動工程と、磁着リフティングして移動した粒状吸着材1を解放、収納する解放収納工程とからなる放射性物質等の汚染物質の回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質等の汚染物質の回収方法と、その回収に使用する装置に関し、詳しくは、放射性物質等の汚染物質を吸着する吸着材を散布し、これに汚染物質を吸着させた後、この吸着材を回収する方法と、その回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核分裂で生ずる放射性物質等の汚染物質には極めて多くのものがある。
例えば、ストロンチューム、ジルコニューム、ルテニューム、サマリューム等が挙げられるが、中でも人体に強い悪影響を及ぼすものとして、ヨウ素、セシウム等が挙げられる。
ヨウ素は甲状腺に、セシウムは筋肉に蓄積して悪影響を及ぼすものとして知られている。
【0003】
これらの放射性物質等の汚染物質は、例えば原子力発電所等の派生源から、風や爆風で飛散し、自然降下や雨により地上に降りて滞まることとなる。
このような状況が、学校グランドのような広域エリアで生じた場合、その放射性物質等の汚染物質を除去するには、グランド表土を一定の深さまで掘り起こして土壌ごと回収している。
【0004】
ところで、放射性物質を含めた有害物質の捕捉、回収については、多くの手段が提案されている。
例えば、特許文献1では、超電動バルク体を使用して、磁場を発生させて通水流路内の有害物質を捕捉する手段が提案されている。
更に、特許文献2では、超電導ソレノイド磁石により強磁場空間を形成して廃液中に含まれる粒子を捕獲している。
そして、特許文献3では、放射性粒子を含む被処理流体を帯磁した回転円筒内に送流して円筒内の極磁に磁着させることを骨子とする放射性粒子の分離方法が提案されている。
【0005】
以上の特許文献における技術手段は、いずれも廃液等の流水内に含まれる有害物質を直接、磁場、或いは磁極を使用して捕捉、回収するものである。
【0006】
また、特許文献4では、ゼオライト粒子と磁性粒子を含有する造粒物粒子を、有害成分を含む水に接触させて有害物質を捕集させた後、造粒物粒子を磁石で回収することで流体中の有害物質を除去する方法が提案されている。
この提案は、上記3文献に比較して吸着材に有害物質を吸着させ、吸着材に混入した磁性粒子を磁着させることで有害物質を捕捉しているところに特徴がある。
【0007】
しかし、特許文献4においてもあくまでも流体内に含有される有害物質を対象としている。
つまり、提案されている手段は、水のような流体内に含有される有害物質を対象としていて、しかもプラント内の処理のように一定の区画された範囲内で実施し得る浄化手段となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許公開公報第2002−119888号公報
【特許文献2】特許公開公報第2000−117142号公報
【特許文献3】特許公開公報第2000−38623号公報
【特許文献4】特許公開公報第2005−177709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記、説明したように、有害物質の捕捉、回収に関しては多くの技術的手段が提案されてはいるが、いずれもプラントのように定められた範囲内で実施可能な処理技術である。
ところが、例えば原子力発電所の事故によって生ずるような放射性物質等の汚染物質の飛散に対して、屋外で放射性物質等の汚染物質を回収するための有効な手段の提案は、今のところ見当たらない。
【0010】
原子力発電所の事故により発生する放射性物質等の汚染物質は風や気流に乗って運ばれ、雨や自然降下により、不特定のエリアに降下して地上に蓄積する。
そして、これらを回収するためには土壌ごと掘り起こして処分することが求められる。
特に、学校グランド等のような広域エリアに拡散した放射性物質等の汚染物質を回収するには、拡散エリアの表土をすべて除去する必要がある。
しかし、この回収作業は、作業自体が困難であるとともに効率も悪く回収した残土の処理も問題となる。
【0011】
本発明は、以上のような諸事情を背景になされたものである。
すなわち、本発明の目的は、グランド等の広域エリアに降下した放射性物質等の汚染物質を、その表土を掘り起こして回収することなく確実に回収できる、効果的で利便性のある回収方法とその回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、鋭意、研究した結果、例えば原子力発電所等で突発的な事故が生じた時点で、グランド等の広域エリアに磁性体を含有した粒状吸着材を敷き詰め、この粒状吸着材に放射性物質等の汚染物質を吸着させた後、粒状吸着材を磁着力を用いて磁着回収することをヒントに本発明を完成させたものである。
【0013】
即ち、本発明は、(1)、放射性物質等の汚染物質を吸着可能な粒状吸着材1を散布、敷設する散布敷設工程と、敷設された粒状吸着材1により放射性物質等の汚染物質を吸着する吸着工程と、放射性物質等の汚染物質を吸着した粒状吸着材1を磁着してリフティングする磁着リフティング工程と、磁着リフティングした粒状吸着材1を移動する移動工程と、磁着リフティングして移動した粒状吸着材1を解放、収納する解放収納工程とからなる放射性物質等の汚染物質の回収方法に存する。
【0014】
即ち、本発明は、(2)、粒状吸着材1が、ゼオライト、そして、又はシリカである吸着材と、鉄属である磁性体とを混練りした後、略、外径が8μm〜15mmの大きさの粒状に焼結して形成される上記(1)記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法に存する。
【0015】
即ち、本発明は、(3)、粒状吸着材1が、ゼオライト、そして、又はシリカである吸着材と、鉄属である磁性体とを混練りした後、略、外径が8μm〜15mmの大きさの粒状にバインダーにより形成される上記(1)記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法に存する。
【0016】
即ち、本発明は、(4)、磁性体がフェライト、そして、又は鉄属との混合したものである上記(2)または(3)記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法に存する。
【0017】
即ち、本発明は、(5)、吸着材がフェロシアン化物の鉄属である上記(2)〜(4)のいずれか1つに記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法に存する。
【0018】
即ち、本発明は、(6)、粒状吸着材1が、粒状に焼結した多孔質のフェライトの表面にフェロシアン化鉄を混入したバインダーをコーティングし、これを乾燥したものである上記(1)記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法に存する。
【0019】
即ち、本発明は、(7)、粒状吸着材1が、磁性体と吸着材とフェノール樹脂とを混練りし、これを焼結してフェノール樹脂を活性炭化して形成される上記(1)記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法に存する。
【0020】
即ち、本発明は、(8)、上記(1)に使用される装置であって、切り替え可能な磁着力を有する電磁リフターLと、該電磁リフターLを往復移動させる電磁リフター移動部Kと、粒状吸着材1を収納する粒状吸着材収納部Bとを備え、電磁リフターLが、磁着力により粒状吸着材1を磁着リフティングした後、電磁リフター移動部Kにより粒状吸着材収納部Bまで移動して、磁着力を解放して粒状吸着材1を粒状吸着材収納部Bに落下させるものである粒状吸着材回収装置Mに存する。
【0021】
即ち、本発明は、(9)、上記(1)に使用される装置であって、互いに一定間隔で配置されたフロントロールR1及びバックロールR2と、該バックロールR2から上方に一定距離離れた補助ロールR3と、これら3つのロールに張架され磁着力を有するエンドレスマグネット帯体Vと、エンドレスマグネット帯体Vの後端下方に配設された粒状吸着材収納部Bと、エンドレスマグネット帯体Vの後端に配設され放射性物質等の汚染物質を吸着した粒状吸着材1を掻き取るための掻き取り具Sとを備え、エンドレスマグネット帯体Vが磁着力により粒状吸着材1を磁着し、一定距離離れた位置で粒状吸着材1を掻き取り具Sにより掻き取って粒状吸着材収納部Bに落下させるものである粒状吸着材回収装置Mに存する。
【0022】
なお、本発明の目的に沿ったものであれば上記(1)〜(9)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の放射性物質等の汚染物質の回収方法は、磁性体を含有する粒状吸着材を、前もって均一にグランド等の表土面に散布する工程を有していて、粒状吸着材を前もって均一にグランド等の表土面に散布、敷設するので、事故が発生した時点で迅速な対応が可能でグランドの表土を放射性物質等の汚染物質の汚染から守ることができる。
【0024】
また、磁性体を含有する粒状吸着材を、該粒状吸着材が放射性物質等の汚染物質を吸着した後、磁着して表土面から持ち上げ移動するので、表土面が大きく荒らされたり損傷することがない。
そして、磁着リフティング、移動した粒状吸着材を、磁着を解放して収納部に収納することができるので、作業者が放射性物質等の汚染物質で汚染した粒状吸着材に触れる機会が殆どなく極めて安全に放射性物質等の汚染物質を回収収納できる大きな利点がある。
【0025】
更に、粒状吸着材が粒状に形成されているので、散布が簡単であり、散布量の調整も容易である。
また表土面の細かい空所に入り込み土に固定し易い。
【0026】
そして、本発明の放射性物質等の汚染物質の回収方法において、粒状吸着材の吸着材が、ゼオライト、又は活性炭、又はシリカ、又はフェロシアン化鉄である場合には、大きな吸着表面が確保され、粒状寸法以上の吸着性能を発揮できる他、化学的な吸着力をも発揮できる利点がある。
【0027】
そして、本発明の放射性物質等の汚染物質の回収方法において、粒状吸着材が、磁性体と吸着材を混練りし、これを焼結して形成されている場合には、焼結後、適宜な寸法の粒状に粉砕形成できる利点がある。
【0028】
そして、本発明の放射性物質等の汚染物質の回収方法において、粒状吸着材が、磁性体と吸着材を混練りし、これをバインダーで固めて形成されている場合には、粒状吸着材の形成に時間を要せず、その製造が容易となる利点があるのに加えて使用する磁性体や吸着材に最適なバインダーを選択できる利点がある。
【0029】
そして、本発明の放射性物質等の汚染物質の回収方法において、粒状吸着材が、磁性体と吸着材とフェノール樹脂とを混練りし、これを焼結してフェノール樹脂を活性炭化して形成される場合には、混練りする吸着材の吸着力とフェノール樹脂を活性炭化して得られる吸着力とで更に大きな吸着力が得られる。
【0030】
そして、本発明の放射性物質等の汚染物質の回収方法において、粒状吸着材が、ソフトフェライトを粒状に焼結して多孔質のフェライトを得て、その表面にフェロシアン化物の鉄族を含む樹脂をコーティングした後、これを乾燥して形成される場合には、多孔質のフェライトとフェロシアン化物の鉄族とで大きな磁着力を得ることができる。
【0031】
そして、本発明の粒状吸着材回収装置が、電磁石を有する電磁リフターと、該電磁リフターを移動させる電磁リフター移動部と、粒状吸着材を収納する粒状吸着材収納部とを備える構造の場合には、電磁リフターで粒状吸着材を磁着リフティングし、これを粒状吸着材収納部に移動させて解放する極めてシンプルな構造となっているので確実に容易に粒状吸着材を回収できる利点がある。
【0032】
そして、本発明の粒状吸着材回収装置が、エンドレスマグネット帯体を回転させつつ、連続的に粒状吸着材を磁着リフティングして収納部に移動できるので、回収作業が極めて効率的となり短時間での回収を可能とする利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、放射性物質等の汚染物質の回収方法に係る工程説明図である。
【図2】図2は、粒状吸着材回収装置Mの概要説明図である。
【図3】図3は、粒状吸着材回収装置Mの作動順説明図である。
【図4】図4は、別の粒状吸着材回収装置Mの概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0035】
(第1の実施の形態)
本実施の形態における放射性物質等の汚染物質の回収方法は、図1の工程説明図に示すように5つの工程で構成される(第3、4、5工程については、図3に示す、粒状吸着材回収装置Mの作動順説明図を参照)。
【0036】
第1工程、つまり、散布敷設工程では、例えば、原子力発電所の事故等が発生したとした場合、学校グランド等、目的とする広域エリアに粒状吸着材1を散布、敷設する。敷設する際の粒状吸着材1の量については、事故の規模や粒状吸着材1の吸着性能、粒径等に応じて決定される。
【0037】
そして、第2工程、つまり、吸着工程では、粒状吸着材1を敷設したまま一定期間放置する。その期間(時間)に、粒状吸着材1の吸着特性を利用して放射性物質等の汚染物質を吸着させる。
【0038】
そして、第3工程、つまり、磁着リフティング工程では、磁着力(磁石)を用いて粒状吸着材を磁着リフティングして、表土から剥離持ち上げる。
【0039】
そして、第4工程、つまり、移動工程では、磁着リフティングした粒状吸着材1を磁着した状態で一定距離移動させ別の箇所まで移動する。ここで別の箇所とは収納箇所や一時仮置き箇所である。
【0040】
そして、第5工程、つまり、解放収納工程では、磁着リフティングして移動してきた粒状吸着材1を、所定の箇所で、磁着力を解放し、粒状吸着材1を所定箇所に落下させる。
上記の第3工程から第5工程までが、例えば後述する粒状吸着材回収装置Mを使って具体的に遂行される。
【0041】
ここで、散布敷設する粒状吸着材1について、以下説明する。
粒状吸着材1は磁性体と吸着材で形成される。吸着材としてはゼオライトを用いる。ゼオライトは多孔質の鉱物であり、合成ゼオライトを使用することも可能である。このゼオライトを粉末状に砕き、鉄やニッケル、又はコバルト等の鉄属である磁性体とを混練りした後、例えば外径が8μm〜15mmの大きさの粒状に焼結して粒状吸着材を得る。
混練りの際にバインダーを用いることも可能である。
【0042】
また、上記の組成において、焼結をせず、バインダーで粒状に固めるだけでも良い。
更に、磁性体としてフェライトを用いることも可能であり、用途に応じては磁性体としてフェライトのみを用いることもあるし、フェライトと鉄属を混合して用いることもできる。
フェライトとしては軟磁性を示すソフトフェライトを使用する。
【0043】
吸着材として、ゼオライトの他にシリカを単独、混合して使用することが可能である。
以上のように本実施の形態では、吸着材としてはゼオライト、シリカが挙げられ、磁性体としては鉄、コバルト、ニッケル、ソフトフェライトを使用し、吸着材としては、ゼオライト、シリカを使用し、これらを焼結、又はバインダーで固めて粒状に形成する。
バインダーとしては多孔質合成樹脂を用いている。
【0044】
更なる手段として、吸着材としてフェロシアン化鉄を用いることで吸着材の性能を高めることができる。
フェロシアン化物の鉄属としては、フェロシアン化鉄の他、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化コバルトがあり、いずれも本実施の形態で使用できる。
フェロシアン化鉄は放射性物質等の汚染物質であるセシウムを吸着する性質を有していて放射性物質等の汚染物質の吸着に効果的である。
【0045】
フェロシアン化鉄の使用実施例について詳細に説明する。ソフトフェライトを粒状に焼結して多孔質のフェライトを得る。
そして、その表面にフェロシアン化鉄を混入したバインダーをコーティングする。
この後、乾燥して粒状吸着材を得る。
この場合、バインダーに他の吸着材を混入することも当然可能であるし、他の磁性体を混入させることも可能である。
【0046】
また、更なる手段として、ゼオライトやシリカ、フェロシアン化鉄の吸着材を吸着性性能、磁着性能を考慮した割合で混合し、これに各種磁性体を加えてフェノール樹脂で混合した後、これを焼結してフェノール樹脂を活性炭化して、放射性物質等の汚染物質を物理的に吸着する性能(磁着による)や、化学的に吸着する性能(イオン化結合等)を併せ持つ粒状吸着材を得ることができる。
目的に応じては、ソフトフェライトとフェノール樹脂のみを混合、焼結して活性炭化した粒状吸着材を得ることもできる。
【0047】
次に、本発明の放射性物質等の汚染物質の回収方法に使用する粒状吸着材回収装置Mについて説明する。
図2の概要説明図に示すように、粒状吸着材回収装置Mは、磁着力を有する電磁リフターLと、該電磁リフターLを往復移動させる電磁リフター移動部Kと、粒状吸着材1を収納する粒状吸着材収納部Bとでなる。
電磁リフターLは、電磁石を備えており磁着力をON・OFFに切り替えることができる。
電磁リフターLは、粒状吸着材1を表土2上から磁着リフティングした後、電磁リフター移動部Kにより粒状吸着材収納部Bまで移動し、電磁石の通電を遮断(OFF)して粒状吸着材1を粒状吸着材収納部B内に落下させることを繰り返す。
【0048】
次に図3の作動順説明図に従ってその作動を更に詳細に説明する。
図3(a)に示すように、粒状吸着材回収装置Mの電磁リフターLが表土2に接近(当接も含む)して、通電(ON)された電磁石(図示しない)により電磁リフターL下面に粒状吸着材1を磁着して持ち上げる。そして、図3(b)に示すように電磁リフターLは粒状吸着材1を保持したまま一定距離移動し、粒状吸着材収納部Bの上方に至る。
そして、図3(c)に示すように、電磁リフターLの電磁石の通電が遮断(OFF)されて磁着力が解放され、粒状吸着材1は、粒状吸着材収納部B内に落下、収納される。この作動を順次繰り返し、粒状吸着材1を回収することとなる。
【0049】
電磁リフターL、粒状吸着材収納部Bは1式の粒状吸着材回収装置Mとして備えられるが、この粒状吸着材回収装置Mは、例えばトラクター等の駆動車に取り付けられて、駆動車から駆動源を得て作動するとともに、エリア内を移動して粒状吸着材1を回収できる設定となっている。
【0050】
更に、図4の概要説明図に示すように、別の粒状吸着材回収装置Mについて説明する。本粒状吸着材回収装置Mは、回転駆動源(図示しない)を有するフロントロールR1と、バックロールR2とが一定間隔で配設されている。
そしてバックロールR2から上方には、一定距離離れて補助ロールR3が配設されている。
これら3つのロールに磁着力を有するエンドレスマグネット帯体Vが、張架されエンドレスな移動を行う。
エンドレスマグネット帯体Vの後端には掻き取り具Sが配設されている。
この掻き取り具Sによりエンドレスマグネット帯体Vに磁着された粒状吸着材1を掻き取る。
エンドレスマグネット帯体Vが磁着力により粒状吸着材1を磁着するのであるが、放射性物質等の汚染物質を吸着した粒状吸着材1は、このフロントロールR1とバックロールR2との間の領域でエンドレスマグネット帯体Vの下方面に磁着されることとなる。
【0051】
そして磁着リフティングされた粒状吸着材1をエンドレスマグネット帯体Vの回転により、一定距離移動させる。
そしてエンドレスマグネット帯体Vの後端に設置した掻き取り具Sによりエンドレスマグネット帯体に磁着された粒状吸着材1を掻き取る。
掻き取られた粒状吸着材1は落下し、真下に配置された粒状吸着材収納部Bに収納される。
この間、エンドレスマグネット帯体Vの下方面には連続して粒状吸着材1が電着リフティングされていく。
この作動を続けつつ、粒状吸着材回収装置Mを前進させていき広い範囲の表土2上の粒状吸着材1を回収して行く。
【0052】
このように粒状吸着材回収装置Mは、エンドレスマグネット帯体V、フロントロールR1、バックロールR2、補助ロールR3、掻き取り掻き取り具S、粒状吸着材収納部Bを備えて構成されているので、粒状吸着材1の散布敷設、放射性物質等の汚染物質を含む粒状吸着材1の磁着リフティング、磁着リフティングした粒状吸着材1の移動、粒状吸着材1の解放、収納が効率よく行われることとなる。
粒状吸着材回収装置Mは、例えばトラクターのような駆動車、或いはブルドーザーのようなキャタピラー駆動車に取り付けられ、粒状吸着材1が敷設されたエリア内を自在に移動することが可能である。
【0053】
以上、本発明をその実施の形態を例に説明したが、本発明は、その本質に変更のない限り、実施の形態のみに限定されるものではなく多様な変形例が可能である。
例えば、放射性物質等の汚染物質の回収方法に関し、粒状吸着材1の散布、敷設は、事故が発生した時点で敷設するのではなく、常時、グランド等の表土2として敷設しておき、放射性物質等の汚染物質の降下の問題が発生した時点で、これを回収する方法であっても当然良い。
そのために、粒状吸着材1に着色等の他の加工を施し、グランドや公園の表土2としての機能を持たせておくことも可能である。
【0054】
また、粒状吸着材1の素材として使用する吸着材は、本実施の形態で示した素材に限定されるものではなく、目的に沿った吸着材の機能を有しているものであれば当然、採用可能であることは言うまでもない。
すなわち放射性物質等の汚染物質を吸着可能な粒状吸着材とは、有機毒物、重金属類等の汚染物質を吸着可能な粒状吸着材1を含むものである。
【0055】
更に、電磁リフターLについても、1体である必要はなく、複数の電磁リフターLを設けて回収能率をあげることができる。
また、電磁リフターLの下面形状についても、平面に限らず、目的エリアの表面形状に見合った曲面等に形成することも可能である。
更に粒状吸着材回収装置Mにおける粒状吸着材収納部Bは粒状吸着材回収装置Mから離れた別の独立したものとすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の放射性物質等の汚染物質の回収方法、並びにその回収装置は、表土2上に粒状吸着材1を散布、敷設して、これを回収する手段であるので、何らかの原因で地表に存在することとなった他の有害物質についても、その物質に見合った粒状吸着材1を形成して散布、敷設することで、充分に本手段を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・粒状吸着材
2・・・表土
B・・・粒状吸着材収納部
K・・・電磁リフター移動部
L・・・電磁リフター
M・・・粒状吸着材回収装置
R1・・・フロントロール
R2・・・バックロール
R3・・・補助ロール
S・・・掻き取り具
V・・・エンドレスマグネット帯体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質等の汚染物質を吸着可能な粒状吸着材を散布、敷設する散布敷設工程と、敷設された粒状吸着材により放射性物質等の汚染物質を吸着する吸着工程と、放射性物質等の汚染物質を吸着した粒状吸着材を磁着してリフティングする磁着リフティング工程と、磁着リフティングした粒状吸着材を移動する移動工程と、磁着リフティングして移動した粒状吸着材を解放、収納する解放収納工程とからなることを特徴とする放射性物質等の汚染物質の回収方法。
【請求項2】
粒状吸着材が、ゼオライト、そして、又はシリカである吸着材と、鉄属である磁性体とを混練りした後、略、外径が8μm〜15mmの大きさの粒状に焼結して形成されることを特徴とする請求項1記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法。
【請求項3】
粒状吸着材が、ゼオライト、そして、又はシリカである吸着材と、鉄属である磁性体とを混練りした後、略、外径が8μm〜15mmの大きさの粒状にバインダーにより形成されることを特徴とする請求項1記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法。
【請求項4】
磁性体がフェライト、そして、又は鉄属との混合したものであることを特徴とする請求項2または3記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法。
【請求項5】
吸着材がフェロシアン化物の鉄属であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法。
【請求項6】
粒状吸着材が、粒状に焼結した多孔質のフェライトの表面にフェロシアン化鉄を混入したバインダーをコーティングし、これを乾燥したものであることを特徴とする請求項1記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法。
【請求項7】
粒状吸着材が、磁性体と吸着材とフェノール樹脂とを混練りし、これを焼結してフェノール樹脂を活性炭化して形成されることを特徴とする請求項1記載の放射性物質等の汚染物質の回収方法。
【請求項8】
請求項1に使用される装置であって、切り替え可能な磁着力を有する電磁リフターと、該電磁リフターを往復移動させる電磁リフター移動部と、粒状吸着材を収納する粒状吸着材収納部とを備え、電磁リフターが、磁着力により粒状吸着材を磁着リフティングした後、電磁リフター移動部Kにより粒状吸着材収納部まで移動して、磁着力を解放して粒状吸着材を粒状吸着材収納部に落下させるものであることを特徴とする粒状吸着材回収装置。
【請求項9】
請求項1に使用される装置であって、互いに一定間隔で配置されたフロントロール及びバックロールと、該バックロールから上方に一定距離離れた補助ロールと、これら3つのロールに張架され磁着力を有するエンドレスマグネット帯体と、エンドレスマグネット帯体の後端下方に配設された粒状吸着材収納部と、エンドレスマグネット帯体の後端に配設され放射性物質等の汚染物質を吸着した粒状吸着材を掻き取るための掻き取り具とを備え、エンドレスマグネット帯体が磁着力により粒状吸着材を磁着し、一定距離離れた位置で粒状吸着材を掻き取り具により掻き取って粒状吸着材収納部に落下させるものであることを特徴とする粒状吸着材回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36944(P2013−36944A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175439(P2011−175439)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(503363909)大和グランド株式会社 (12)
【Fターム(参考)】