説明

放射性金属廃棄物処理装置

【課題】 放射性金属廃棄物の減容をすると共に、特に汚染モニタに掛ける解体廃棄物の前処理をより省力化し、解体廃棄物をより容易に利用できる形状で供給することができる放射性金属廃棄物処理装置を提供する。
【解決手段】 放射性金属廃棄物または解体廃棄物を溶融する高周波溶融炉5と、平板なインゴットを形成する複数の鋳型8と、高周波溶融炉中の溶湯を鋳型に鋳込む鋳込み装置と、鋳型ごと搬送する搬送装置6と、鋳型に鋳込まれた溶湯を搬送中に冷却してインゴットにするための冷却ノズル10と、冷却後に鋳型からインゴット20を取り出す脱塊装置11と、を有し、放射性金属廃棄物または解体廃棄物を平板なインゴット20に形成して供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力施設の廃止により生じる廃棄物などのうち、放射能レベルの低い金属廃棄物を処理する放射性金属廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電や核燃料サイクル事業など原子力開発利用に伴い、放射線防御の観点から特別の管理を必要とする放射性廃棄物のほかに、放射性廃棄物でない廃棄物や放射性物質として扱う必要のない廃棄物も大量に発生する。
たとえば、廃止措置が執られている東海発電所で発生する廃棄物には低レベル放射性廃棄物が11%含まれるとされるが、それ以外は放射性廃棄物でない廃棄物と放射性物質として扱う必要のない廃棄物である。
【0003】
放射性廃棄物として区分されるものについては、公衆や環境に悪影響を及ばさないように適切に処理・処分しなければならないが、放射能汚染のない廃棄物や放射性物質として扱う必要のない廃棄物までも、放射性廃棄物と同等の処理・処分をすることは、大きな無駄である。合理的に達成できる限りにおいて、リサイクルなどの循環的利用や、より簡易な適正処分を行うことが好ましい。
人体は、天然放射性物質や宇宙線に起因する自然放射線を常に受けているが、この自然界の放射線レベルと比較して十分小さい線量しか放出しない微量の放射性物質しか含まない物体は、放射性物質として扱う必要がないとする考えをクリアランスといい、放射線防護に係る規制の体系から外してもよい物を区分するレベルをクリアランスレベルという。
【0004】
たとえば対象物のクリアランスレベルは、対象物中に含まれる放射性核種の核種ごとの放射能を対象物の重量で除した値を核種それぞれのクリアランスレベルで除した値の総和によって評価する。各放射性核種について、クリアランスレベルを導出するための線量は10μSv/年を目安としている。
クリアランスレベル以下の線量しか出さない物体を放射性物質でない物として扱うことは、放射線防護の観点からも合理的である。すなわち、原子力の研究開発および利用に伴い発生する廃棄物から人の健康に対するリスクが無視できるものを分別して、再使用あるいは再生利用が可能なものを活用し、また放射線防護を考慮しないより簡易な処分方法により廃棄することができる。
【0005】
クリアランスレベルより高い廃棄物は従来通り放射性廃棄物として適切に管理し、厳密な安全確認の下、クリアランスレベル以下の物のみをクリアランスするシステムを確保するために、クリアランスレベルを用いて放射性物質として扱う必要のない物であるとする事業者の判断に対して、国が適切な関与を行う、クリアランスレベル検認が予定されている。このように、公的な機関による検認を受けたものだけをクリアランス金属として活用するものとされている。
【0006】
クリアランスレベル検認は、事業者において事前の評価、適切な測定・判断、事後の保管・管理等の各段階を高い信頼性を持って実行した結果に対して、公的機関がその妥当性や結果を確認するものである。
【0007】
特許文献1には、原子力施設の解体撤去に伴う解体廃棄物から分別されたクリアランス対象物を除染する除染装置と、除染されたクリアランス対象物の表面汚染密度の測定を行うクリアランス前測定装置と、クリアランス前測定の結果汚染の高い部位がないことが確認されたクリアランス対象物について放射能濃度を測定するクリアランス測定装置とを有するクリアランス処理システムが開示されている。
【0008】
以下、従来の低濃度の放射性金属廃棄物処理装置について、解体廃棄物を処理する場合を例にとって説明する。
図4は、従来より実施されてきた汚染廃棄物の放射線管理区域からの搬出手順の1例を説明する流れ図である。
図示した手順によると、解体廃棄物を収納したボックスパレットを保管場所から仕分けエリアに搬入して開封し、切断エリアに移送する。解体廃棄物には、配管、平板、形鋼、弁やポンプ類などの複雑な形状の小型機器を分解した物や、ボルトやナットなどの小物が含まれている。
【0009】
事前の評価結果に基づいて選定し、必要に応じ除染やはつりなどの前処理により放射性廃棄物を分離した解体廃棄物が、ボックスパレットに収納された状態で供給されるので、作業員の手作業により解体廃棄物をボックスパレットから取り出して作業台に載せる(S1)。
作業台では、解体廃棄物について、放射性物質による汚染を除きやすくするため、弁、配管、タンクなどは、作業員がハンドソーで縦割りにするなどして、事前の評価により汚染の度合いが高いとされる部分が露出するように細断する(S2)。
解体廃棄物は、汚染モニタの構造に基づいて、たとえば、断面が400mm平方に収まり、高さが40mm以下であることなどが要求される。また、突起物は100mm以下になるように管理される。このため、作業員の手作業により解体廃棄物を細断して、汚染モニタに掛け易い形状と寸法に整える(S3)。
【0010】
これら細断作業において特に時間の掛かる作業は、厚板を所定の厚さにする作業、突起物を撤去する作業、太い配管を縦割りにして汚染面を露出させる作業である。また、弁なども弁箱内部が露出するように分割する必要がある。
なお、切断に伴い発生する切粉やドロスは、汚染モニタに掛けることが困難であるため、現実的には、放射能濃度が低いにも拘わらず、放射能濃度の高い廃棄物として取り扱われている。
形状を整えた解体廃棄物は、再度ボックスパレットに収納して除染エリアに移送する。除染エリアでは、解体廃棄物を取り出し、たとえば手動ブラストによりブラスト除染を実施して、放射性物質、表面酸化物、塗装などを除去し(S4)、秤量する(S5)。
【0011】
秤量の済んだ解体廃棄物は、その後、クレーン等を用いてボックスパレットに収納し(S6)、汚染モニタ測定をする(S7)。そして、汚染度合いに応じた適切な処分を行う(S8)。
このように、現在の工程では、汚染モニタに通すための前処理に手数が掛かり、合理化の要請がある。なお、ある量の解体廃棄物に対して上記の工程を実行するために、およそ10人の熟練作業者が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−248066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、放射性金属廃棄物の減容をすると共に、たとえば汚染モニタに掛ける解体廃棄物の前処理をより省力化し、検認後の解体廃棄物を取り扱いやすい形状で供給することができる放射性金属廃棄物処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の放射性金属廃棄物処理装置は、放射性金属廃棄物を溶融する高周波溶融炉と、平板なインゴットを形成する複数の鋳型と、高周波溶融炉中の溶湯を鋳型に鋳込む鋳込み装置と、鋳型ごと搬送する搬送装置と、鋳型に鋳込まれた溶湯を搬送中に冷却してインゴットにする冷却装置と、冷却後に鋳型からインゴットを取り出す脱塊装置と、を有し、放射性金属廃棄物を平板なインゴットに形成して供給することを特徴とする。
【0015】
汚染モニタに掛ける場合は、鋳型により形成されるインゴットは、汚染モニタにおいて放射線計測が可能な平板な形状であることが好ましい。
なお、本発明の放射性金属廃棄物処理装置は、取り出したインゴットにブラストを照射するブラスト装置と、汚染モニタの測定部位に適合するパレットにインゴットを収納するクレーンなどの移動収納装置をさらに備えても良い。
また、鋳型は、搬送装置の搬送帯(たとえばコンベアベルトなど)に所定の間隔で固定して、搬送帯と一緒に移動する間に、鋳込み、冷却、離型をするようにしてもよい。
【0016】
本発明の放射性金属廃棄物処理装置によれば、対象物を溶融し所定の鋳型に鋳込み、鋳型より所定の形状および寸法を持ったインゴットに形成することにより放射性金属廃棄物を減容することができる。
したがって、個々の解体廃棄物について、汚染モニタに掛けるために手作業により形状を整える細断作業を省略することができる。
また、放射性金属廃棄物は溶融炉内で完全に混合するので、局部的な汚染部は希釈化される。材料の表面における放射性物質の濃度が規制される場合であっても、除染のために汚染面を露出させる細断を省略してもよい。
【0017】
なお、インゴットの形状は単純な平板が好ましい。平板状のインゴットであれば、冷却したばかりのインゴットの表面に付着したスラッジあるいは酸化物は剥離しやすいので、従来のように作業員が手作業で、対象物の形状に対応して適切な照射方法を選択してブラスト照射する必要はなく、照射部分にインゴットを据えてブラスト照射装置に掛けるだけで機械的に対象物の表面不純物を除去することができる。
【0018】
また、本発明の放射性金属廃棄物処理装置によれば、対象物は一旦溶融されて鋳型に鋳込まれるため、後工程に都合の良い形状と寸法に一定する。したがって、たとえば、汚染モニタにおいて課せられる形状条件に適合した被検体として供給することができる。測定対象の形状や位置は測定ごとに一定するから、異常の検出は容易になり、モニタリング時間を短縮化することができる。
【0019】
特に、従来の解体廃棄物は様々な形状寸法を有するため、再生利用には余分なコストが必要になるなど、活用が必ずしも容易ではなかった。本発明の放射性金属廃棄物処理装置によれば、鋳型を適宜に選択することにより、たとえば数100mm平方の平板あるいはタイルなど、活用しやすい形状・寸法を有する金属材料として供給することができる。
また、鋳物として得られる金属材料は、鋳物自体あるいは多数の鋳物を収納したパレットを整然と配列させたり積み重ねたりすることができるので、保管場所における保管を合理化する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の放射性金属廃棄物処理装置により、作業員による複雑で熟練を要する細断、除染などの前処理を省力化して、たとえば従来10人程度の作業員で実施するとされた量の汚染測定の前処理がほぼ半減の5人で実施でき、高い省力化効果が得られることが分かった。
さらに、解体廃棄物を平板状のインゴットとして供給する場合は、より広い適用分野において、より容易に再利用あるいは活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る放射性金属廃棄物処理装置の1実施例における工程の前半部分を示す工程図である。
【図2】本実施例における工程の後半部分を示す工程図である。
【図3】本実施例の工程を説明する流れ図である。
【図4】従来の放射性金属廃棄物処理装置における工程を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例を用いて本発明の放射性金属廃棄物処理装置について詳細に説明する。
図1と図2は、本実施例の放射性金属廃棄物処理装置における各要素装置の配列により解体廃棄物前処理の工程を説明する工程図、図3は本実施例の工程を説明する流れ図である。図1に示した工程の後の工程を図2に示している。
【0023】
本実施例の放射性金属廃棄物処理装置は、放射能濃度の低い解体廃棄物に関する放射線管理区域からの搬出測定の前処理を行う装置である。本実施例の放射性金属廃棄物処理装置は、排気を全てダスト回収装置が付属した配管を経由して排出するようにして、外気を汚さないように配慮した建屋内に設置される。
本実施例の放射性金属廃棄物処理装置は、仮に、装填領域、溶融鋳込み領域、冷却脱塊領域、除染収納領域に分けることができる。解体廃棄物は、ボックスパレットに収納された状態で、本実施例の放射性金属廃棄物処理装置に供給される。
【0024】
図1に示したように、装填領域には、材料供給コンベヤ1と、対象物秤量器2と、投入用ジブクレーン3が配置される。
装填領域における作業手順は、図3に示すように、始めに、材料供給工程(S11)として、作業員がクレーンなどを使って、解体廃棄物をボックスパレットから材料供給コンベヤ1のシュータへ移動させる。
【0025】
次に、対象物秤量工程(S12)では、対象物秤量器2の上に投入バスケット4が載置されているので、材料供給コンベヤ1を進行させて解体廃棄物を投入バスケット4に落下させると、対象物秤量器2は投入バスケット4ごと投入量を測定する。対象物秤量器2の目盛りが所望の重量になると、材料供給コンベヤ1を停止して解体廃棄物の供給を中止させる。対象物秤量器2の出力に基づいて、自動的に材料供給コンベヤ1の作動を調整するようにしても良い。
所望の重量になった投入バスケット4は、投入用ジブクレーン3により、溶融鋳込み領域の溶融炉の上に移動させられる。
【0026】
溶融鋳込み領域には、図1と図2に亘って示したように、高周波溶融炉5と、鋳込み装置と、鋳型コンベア6が配置されている。
溶融鋳込み領域における作業手順は、まず、炉内投入工程(S13)として、遠隔操作により、高周波溶融炉5の炉上に持ち込まれた投入バスケット4の底を開口させると、解体廃棄物が溶融炉中に落下し溶融物中に補給される。補給量は、先に対象物秤量器2で計測した解体廃棄物の量になる。空になった投入バスケット4は投入用ジブクレーン3により再び対象物秤量器2にセットされ、次の補給を待ち受ける。
【0027】
溶融工程(S14)において、坩堝搬送リフターにより高周波溶融炉5にセットされ坩堝7内に供給された解体廃棄物は、高周波電源により誘導加熱され溶融する。坩堝7内の溶融体が少なくなれば、投入バスケット4を用いて随時補給することができる。
高周波溶融炉5の炉中にセットされる坩堝7はいくつか用意されていて、坩堝7が消耗したときばかりでなく、解体廃棄物の種類や成分が変化するときに不純物が混入しないように、高周波溶融炉5内の坩堝7を交換することができるようにされている。
【0028】
溶融炉傾動工程(S15)において、高周波溶融炉5で溶融された解体廃棄物の溶湯は、高周波溶融炉5を傾動させることにより、鋳型に注ぎ込むことができる。
鋳込み工程(S16)において、鋳型コンベア6には鋳型8が設置されており、高周波溶融炉5を傾動させることにより、溶湯を鋳型8に注入する。
鋳型8は、たとえば、幅と奥行きが500mm、深さが40mmなど、既存の汚染モニタの測定台に適合する寸法の試料が形成されるようにすることが好ましい。
鋳型8により、解体廃棄物のインゴットが単純なタイル形状を有するようにした場合は、測定の便宜のみならず、再使用あるいは再生利用するためにも便利なものとなる。
【0029】
冷却脱塊領域は、図2に示すように、冷却室9の中に設けられ、冷却ノズル10と、脱塊装置11と、鋳型コンベヤ6が配置されている。冷却室9は、内部の空気を、フィルタ12を通して吸引して負圧にするブロワ13を備える。ブロワ13の排気は、放射性金属廃棄物処理装置の建屋に設けられたダスト回収装置で完全に除染してから外気に排出する。
【0030】
鋳型コンベヤ6の下には冷却ノズル10を設け、室外の空気を噴出させて、インゴットの冷却を促進させる。
冷却工程(S17)において、冷却ノズル10により、冷却室内の負圧で吸引した外気を鋳型コンベヤ6で搬送する鋳型8に吹き付け、溶融体を冷却して固化する。溶湯を入れた鋳型8を冷却して昇温した空気は、ブロワ13により吸引して排出し、冷却室9内の温度が上昇しないようにする。
【0031】
インゴット取り出し工程(S18)では、鋳型8内で固化した解体廃棄物のインゴット14は、コンベヤ端部の脱塊装置11の位置まで運ばれ、鋳型8を反転させてハンマーを使って裏側から衝撃を与える操作などにより離型させて、インゴット搬送コンベヤ15に落とす。脱塊装置11の下にはスラグ回収コンベア16が配置されていて、鋳型8の反転、衝撃に伴って解体廃棄物のインゴット14から剥離するスラグや酸化物が散逸しないように回収する。鋳型8から分離したインゴット14は、インゴット搬送コンベヤ15により冷却室9から搬出され除染収納領域に供給される。
空になった鋳型8は、集められて点検を受け再使用可能と判定された場合は、鋳型ラックに収納して再度の使用に控えさせる。次に使用するときには、鋳型8の表面に、離型剤スプレーで噴霧して離型剤を処理し、予熱してから、再び鋳込み位置に供給される。
【0032】
図2に示すように、除染収納領域には、インゴット搬送コンベヤ15と、ブラスト照射装置17と、インゴット秤量器18と、整列用ジブクレーン19と、パレット積載ジブクレーン21が配置されている。
ブラスト照射工程(S19)において、インゴット搬送コンベヤ15は、インゴットをブラスト照射装置17の照射位置に搬送する。ブラスト照射装置17は自動化された手順に従って、照射位置にあるインゴットに対してブラストを照射し、表面の不純物を削り落とす。ブラスト照射装置17はフードの中に設置され、放射性物質を含むかもしれないスラグがブラスト照射により飛散して外部に拡散しないようにしている。
【0033】
次に、インゴット秤量工程(S20)において、表面のスラグ等を除去したインゴット20は、インゴット秤量器18の測定位置に搬送してインゴット20ごとの重量を計量して記録する。
搬出工程(S21)において、インゴット秤量後のインゴット20をパレット積載ジブクレーン21の把持位置に搬送し、パレット積載ジブクレーン21を用いてパレット22に整然と収納し、パレット22を次の工程に搬送する。
【0034】
さらに、秤量後にインゴット20ひとつずつを目視検査して、目視で判定できる異常品を排除するようにしても良い。
なお、次の工程で直ちに処理することができないときには、インゴット20を収容したパレット22は、処理可能になるまで、建屋内の適宜の保管場所に運んで保管しておいてもよい。
【0035】
次の工程では、汚染モニタ測定(S22)を行い、対象とする解体廃棄物の放射能濃度が所定の処分条件を満足することを確認する。
汚染モニタ測定(S22)において、解体廃棄物が所定の処分条件を超えたレベルの廃棄物として扱う必要があると判定された場合は、改めて回収し、高いレベルの廃棄物として処分する。
【0036】
汚染モニタの測定台に搭載できる測定対象物は、たとえば、部分的突起部分を除くと、縦横おのおの1000mm、厚さ40mmの領域に収まる必要がある。
なお、この装置の場合、縦横500mm以下の物は、最大4品まで同時計測が可能である。そこで、たとえば、四角い板状に形成された解体廃棄物のインゴットを4枚配列して一度に測定するようにして、測定効率が上げることができる。
【0037】
本実施例の放射性金属廃棄物処理装置によれば、解体廃棄物を溶融してインゴットにすることにより、厚板を厚さ方向に割ったり、配管内面を露出させたり、汚染部分をはつったりする整形処理や細断処理が不要になり、表面汚染測定の前処理を省力化することができる。たとえば、従来方法においてはおよそ10人の熟練作業者が必要とされると評価された量の解体廃棄物について、材料供給工程(S11)から溶融工程(S14)までに2名、溶融炉傾動工程(S15)からインゴット秤量工程(S20)までに2名、搬出工程(S21)に1名、合わせて5名の作業者でこなせ、労力が半減すると評価される。
【0038】
また、汚染モニタに掛ける金属の形状と大きさが一定になるため、測定時間を短縮することができる。
さらに、切断により生じる切り粉が減少し、放射性廃棄物として扱うべき廃棄物の量が減少する。
【0039】
また、さらに、インゴット状の解体廃棄物は、他の用途に再生利用する場合に、たとえば再び溶融して任意の形状に形成し直すなど、適応性が高い。
また、保管する場合にも、一定の面積内に高密度に近接して配列することができ、さらに、容易に重ねることができるので、保管効率も高い。また、適当なパレットに複数収納してパレット同士を密着配列して、高密度保管することもできる。
また、適宜な形状をした対象物を溶融して所定形状に整形するため、減容効果が大きく、搬送・保管などにおける効率が向上する。さらに、埋設などの処分するときは、減容効果により処分効率が向上する。
【0040】
なお、予め評価して所定の処分条件より低いことが期待される部位の廃棄物であっても、局所的に放射性物質の濃度が高いことがあるが、このような部位が小さい場合は、放射線汚染の小さい部分と一緒に溶融して混合することにより、放射性物質濃度の高い部分が全体に分散して希釈化し、所定の処分条件を満足させることができる場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の放射性金属廃棄物処理装置より、各放射性物質濃度レベルの金属廃棄物についても、減容効果が見込め、処分費用が合理化できる。また、後工程に便宜な方形板の形状として供給することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 材料供給コンベヤ
2 対象物秤量器
3 投入用ジブクレーン
4 投入バスケット
5 高周波溶融炉
6 鋳型コンベア
7 坩堝
8 鋳型
9 冷却室
10 冷却ノズル
11 脱塊装置
12 フィルタ
13 ブロワ
14 インゴット
15 インゴット搬送コンベア
16 スラグ回収コンベア
17 ブラスト照射装置
18 インゴット秤量器
19 整列用ジブクレーン
20 インゴット
21 パレット積載ジブクレーン
22 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線利用施設で発生する処理対象の金属解体廃棄物を高周波溶融する高周波溶融装置と、平板なインゴットを形成する複数の鋳型と、前記高周波溶融炉中の溶融体を前記鋳型に鋳込む鋳込み装置と、前記鋳型を搬送する搬送装置と、前記鋳型に鋳込まれた溶融体を搬送中に冷却してインゴットにする冷却装置と、冷却後に前記鋳型から前記インゴットを取り出す脱塊装置と、を有し、前記処理対象の金属解体廃棄物を平板なインゴットに形成して供給することを特徴とする放射性金属廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記鋳型は、汚染モニタ装置において放射線計測が可能な平板な形状のインゴットを形成するものであることを特徴とする請求項1記載の放射性金属廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記複数の鋳型は前記搬送装置の搬送帯上に所定の間隔で固定され、搬送帯が歩進するたびに次の鋳型に溶湯を流し込むことができる構造になっていることを特徴とする請求項1または2記載の放射性金属廃棄物処理装置。
【請求項4】
さらに、取り出した前記インゴットにブラストを照射するブラスト装置と、前記インゴットを汚染モニタ装置の測定部位に適合するパレットに収納する移動収納装置をさらに備えた、請求項1から3のいずれか1項に記載の放射性金属廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40841(P2013−40841A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177583(P2011−177583)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000222174)東洋エンジニアリング株式会社 (69)