説明

放射線不透過性、非生分解性、水不溶性の、ポリ(ビニルアルコール)のヨウ素化ベンジルエーテル、その製造方法、それを含む注射可能な塞栓組成物、およびその使用方法

本発明は、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有する共有結合グラフト化したヨウ素化ベンジル基を有するポリ(ビニルアルコール)から成ることを特徴とする放射線不透過性、非生分解性、水不溶性である、ポリ(ビニルアルコール)のヨウ素化ベンジルエーテル(ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA)、0〜100%加水分解のポリ(ビニルアルコール)を、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有するヨウ素化ベンジル誘導体と、無水条件で塩基存在下、極性非プロトン溶媒中で反応させる工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの製造方法に関する。上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、注射可能な塞栓組成物中の塞栓剤として特に有用である。本発明はまた、上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを含有し、および上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの沈降によって体液と接触することによって凝集塊を形成することができる、注射可能な塞栓組成物に関する。本発明は、生体内で血管中に、または腫瘍中に、凝集塊を形成するのに特に有用である。本発明は更に、上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを含有し、医療用具上へ放射線不透過性コーティングを形成することができるコーティング組成物に関する。本発明は更に、上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAから形成された粒子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線不透過性、非生分解性、水不溶性のヨウ素化ポリマー、特に 放射線不透過性、非生分解性、水不溶性の、ポリ(ビニルアルコール)のヨウ素化ベンジルエーテル、塞栓剤としてのその使用方法、その製造方法、それを含む注射可能な塞栓組成物およびその使用方法、それを含有するコーティング組成物、並びにそれから形成したミクロ粒子およびナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の塞栓術は、出血(例えば、臓器の出血、消化管出血、血管の出血、動脈瘤と関連付けられる出血など)を防止/制御するのに、またはその血液供給を遮断することによって患部組織(例えば、腫瘍等)を切除することは重要である。
【0003】
血管の血管内塞栓術は、腫瘍の血管内治療や、動脈瘤、動静脈奇形、動静脈瘻などの出血がコントロールできないような傷害の治療を含むさまざまな目的のために外科的処置の選択肢として実施されることが知られています。
【0004】
塞栓すべき血管の部位への選択的配置を可能にするカテーテル技術によって、血管の血管内塞栓術を達成する。
【0005】
最近の技術により、塞栓剤としてのポリマー材料を含む注射可能な塞栓組成物を用いることによって血管を塞栓することが提案されている。
【0006】
上記ポリマー材料を動脈瘤または動静脈奇形(AVM)の内部に、動脈瘤または動静脈奇形の形状で充填され、上記動脈瘤または動静脈奇形が完全に血液循環から排除されるため、動脈瘤または動静脈奇形の治療において塞栓組成物を使用することが有利である。
【0007】
また、直接穿刺法による腫瘍の治療用に、塞栓剤としてのポリマー材料を含む注射可能な塞栓組成物を使用することができることが知られている。そのような場合、上記塞栓組成物は、腫瘍組織または腫瘍を包囲する血管床に針技術によって、直接、血管床に注入される。
【0008】
塞栓組成物に用いられる公知のポリマー材料として、例えば、予め生成されたポリマーをキャリア溶液から、血管部位に、または腫瘍の中へ、生体内で沈降させたものを含む。
【0009】
塞栓組成物において、血液または組織内の他の如何なる体液環境との接触によって、境界の明確な固体または半固体の凝集塊、空間充填材料を形成するために、上記予め生成されたポリマーは、迅速に沈降することができるように選択しなければならない。
【0010】
更に、これらの組成物は、最新の放射線技術を使用して、効率的な画像形成が可能となるようにするため、滅菌した、安定な、生体適合性を有し、かつ、更に高い放射線不透過性を有するものでなければならない。
【0011】
この最後の特性は、注射、血管部位へ堆積、および臨床フォローアップの際に、塞栓組成物を視覚化するために必要である。
【0012】
数多くの文献には、血管の塞栓用を意図し、生体適合性で水混和性の有機溶媒中に溶解された、水不溶性で、有機溶解性で、生体適合性の予め生成したポリマーおよび固体の水不溶性で、生体適合性で、放射線不透過性の造影剤、例えばタンタル、酸化タンタル、タングステン、三酸化ビスマス、硫酸バリウムを含有する、液体製剤が開示されている。
【0013】
血液との接触によって沈殿するこれらの公知の放射線不透過性塞栓組成物は、水混和性の有機溶媒中に溶解された予め生成したポリマーおよび従来の放射線不透過性の造影剤の単なる物理的混合物である。
【0014】
特許文献1には、二酢酸セルロースポリマー、DMSOなどの生体適合性溶媒、タンタル、酸化タンタル、硫酸バリウムなどの水不溶性造影剤を含有する、血管を塞栓する用途に好適な組成物が開示されている。
【0015】
特許文献2には、エチレンビニールアルコール共重合体、DMSOなどの生体適合性溶媒、タンタル、酸化タンタル、硫酸バリウムなどの水不溶性造影剤を含有する、血管を塞栓する用途に好適な組成物が開示されている。
【0016】
特許文献3には、酢酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロース、ブチル酸酢酸セルロース、エチレンビニールアルコール共重合体、ハイドロゲル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、ウレタン/カーボネートの共重合体、スチレン/マレイン酸の共重合体およびそれらの混合物から成る群から選択される生体適合性ポリマー、DMSO、エタノール、アセトンなどの生体適合性溶媒、並びにタンタル、酸化タンタル、タングステン、硫酸バリウムなどの造影剤を含有する、血管を塞栓用に使用される組成物が開示されている。
【0017】
しかしながら、これらの製剤において、上記塞栓組成物が均一な分散液となるように、放射線不透過性造影剤はポリマー溶液中で懸濁している。
【0018】
従って、上記造影剤をポリマー構造へ化学的に導入することができず、カテーテル検査中の上記造影剤の沈降または周辺領域での時間的に遅い解放が生じ、臨床フォローアップに対して重大な欠点となり、深刻な毒性作用をひき起こすため、上記組成物を用いて永久的な放射線不透過性は確保されないかもしれない。
【0019】
このタイプの公知の市販の製剤は、透視観察を行うための「オニキス(OnyxTM)」、DMSO中に溶解したエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)の、液状ポリマー/DMSO混合物中の微粉化タンタル粉末との混合物である。
【0020】
「オニキス(OnyxTM)」は、透視下で、マイクロカテーテルによってターゲットの傷害に供給される。
【0021】
体液(即ち、血液)と接触することによって、溶媒(DMSO)は急速に拡散し、上記造影剤の存在下で上記ポリマーの生体内沈降を起こし、そして放射線不透過性ポリマーインプラントを形成する。
【0022】
「オニキス(OnyxTM)」は、治療する傷害の種類に最適な供給および沈降特性を有するようにする液状粘度の範囲で入手可能である。
【0023】
しかしながら、上記製剤は、以下のような欠点を有する。
【0024】
上記製剤は、使用する前に入念な準備が必要であり、時間がかかり、アプリケーションエラーにつながる可能性がある。
【0025】
更に、放射線不透過性造影剤はポリマー溶液中で懸濁しているので、塞栓術中の堆積に関して、均質な放射線不透過性を確保することができない。上記放射線不透過性造影剤はまた、ビームハードニングアーチファクト(beam−hardening artifacts)のため、CTスキャンによる非侵襲的追跡画像を制限する。更に、金属の放射線不透過性造影剤の捕捉は保証されず、相分離が発生する可能性がある。
【0026】
結果として、放射線不透過性造影剤はポリマーの位置を反映せず、放射線画像追跡研究中にインプラントの可視性が変化するかもしれない。解放された金属の放射線不透過性造影剤は潜在的に毒性を有する。
【0027】
ポリマー溶液の懸濁液中に造影剤を含む製剤の欠点を克服するため、本発明者等は液状塞栓組成物中の塞栓剤として用いるための本質的に放射線不透過性のポリマーを提供することが必要であることに焦点を合わせた。
【0028】
この目的のために、本発明者等は、ヨードベンゾイルクロリドをポリ(ビニルアルコール)にエステル結合によりグラフト化することによって、ヨウ素化ポリ(ビニルアルコール)(I−PVA)を合成し、そのようなI−PVAポリマーを試験した。
【0029】
そのようなI−PVAを液状塞栓組成物に用いた場合に得られる結果が、用いたI−PVAを同定していない、以下の数多くの刊行物(非特許文献1〜6)に報告されている。
【0030】
しかしながら、このI−PVAは加水分解に対する安定性を有しておらず、塞栓剤として使用すると、長い年月の間に潜在的に毒性を有する分解生成物を体内に誘導する部分的性能劣化を受ける。
【0031】
更に、塞栓塊は、長期間持ちこたえることが期待されるので、ヨウ素化マーカーの持続可能な取り付けが要求される。
【0032】
従って、本発明者らは、安定性の向上した新規のヨウ素化ポリ(ビニルアルコール)を提供することの必要性に関する調査に焦点を合わせ、驚くべきことに加水分解に対して向上した安定性だけでなく、予期せぬ低溶液粘度によってより高い濃度の塞栓剤を有し、従ってより少量の有機溶媒を有する液状塞栓組成物を提供することも期待することができる新規のヨウ素化ポリ(ビニルアルコール)を発見し、それによって本発明を完成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】米国特許第5,580,568号明細書
【特許文献2】米国特許第5,851,508号明細書
【特許文献3】米国特許第5,695,480号明細書
【0034】
【非特許文献1】O.Jordanらの 19th European Conference on Biomaterials, 2005年, ソレント(Sorrento)、イタリア、"Novel organic vehicles for the embolization of vascular malformations and intracranial aneurysms"
【非特許文献2】O.JordanらのTransactions of the 7th World Biomaterials Congress、シドニー(Sydney)、オーストラリア,706頁, 2004年、"Novel Radiopaque Polymer for Interventional Radiology"
【非特許文献3】O.JordanらのAmerican Society of Neuroradiology 42nd annual meeting, シアトル(Seattle)、6月、5−11頁、2004年、"Liquid Embolization of Experimental Wide-Necked Aneurysms with Polyvinyl Alcohol Polymer: A New, Nonadhesive, Iodine−containing Liquid Embolic Agent
【非特許文献4】O.Dudeck, O.JordanらのAm. J. Neuroradiol., 27:1900−1906頁、2006年、"Organic solvents as vehicles for precipitating liquid embolics"
【非特許文献5】O.Dudeck, O.JordanらのAm. J. Neuroradiol., 27:1849−55頁, 10月、2006年、"Embolization of Experimental Wide−Necked Aneurysm with Iodine−Containing Polyvinyl Alcohol Solubilized in a Low−Angiotoxicity Solvent
【非特許文献6】O.Dudeck, O.JordanらのJ.Neurosurg. 104:290−297頁、2月、2006年、"Intrinsically radiopaque iodine−containing polyvinyl alcohol as a liquid embolic agent:evaluation in experimental wide−necked aneurysms"
【発明の概要】
【0035】
第1の態様により、本発明は、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有する共有結合グラフト化したヨウ素化ベンジル基を有するポリ(ビニルアルコール)から成ることを特徴とする放射線不透過性、非生分解性、水不溶性である、ポリ(ビニルアルコール)のヨウ素化ベンジルエーテル(ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA)を提供する。
【0036】
第2の態様により、出発材料のPVAとしての0〜100%加水分解のポリ(ビニルアルコール)を、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有するヨウ素化ベンジル誘導体と、無水条件で塩基存在下、極性非プロトン溶媒中で反応させる工程を含む本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの製造方法を提供する。
【0037】
第3の態様により、本発明は、注射可能な塞栓組成物中の塞栓剤としての、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの使用方法を提供する。
【0038】
第4の態様により、本発明は、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAおよび該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを可溶化する水混和性の、生物学的適合性溶媒を含む注射可能な塞栓組成物であって、該組成物中の該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度が5〜65重量%の範囲内から選択され、該組成物が、該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの沈降によって体液と接触することによって凝集塊を形成することができる、注射可能な塞栓組成物を提供する。
【0039】
第5の態様により、本発明は、生体内で血管中に凝集塊、例えば動静脈奇形(AVM)または血管動脈瘤を形成するための、本発明の注射可能な塞栓組成物の使用方法を提供する。
【0040】
第6の態様により、本発明は、生体内で腫瘍中に凝集塊を形成するための、本発明の注射可能な塞栓組成物の使用方法を提供する
【0041】
第7の態様により、本発明は、ハイパーサーミアによって前記腫瘍を治療するために、生体内で半固体のインプラントを腫瘍内に形成するための、本発明の注射可能な塞栓組成物の使用方法を提供する。
【0042】
第8の態様により、本発明は、尿失禁を治療するため、生体内で温熱療法用の半固体インプラントを形成するための、本発明の注射可能な塞栓組成物の使用方法を提供する。
【0043】
第9の態様により、本発明は、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAおよび該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを可溶化する溶媒を含む医療用具上にコーティングを形成するためのコーティング組成物であって、該組成物中の該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度が5〜65重量%の範囲内から選択され、医療用具上への被覆および溶媒蒸発の後、該組成物が放射線不透過性コーティングを形成することができる、コーティング組成物を提供する。
【0044】
第10の態様により、本発明は、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAから形成されたミクロ粒子およびナノ粒子から成る群から選択される粒子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1で調製された、本発明のポリ(ビニルアルコール)の2,3,5−トリヨードベンジルエーテルのH−NMRスペクトルを示す。
【図2】実施例2で調製された、本発明のポリ(ビニルアルコール)の4−ヨードベンジルエーテルのH−NMRスペクトルを示す。
【図3a】N−メチルピロリドン(NMP)中10重量%の濃度で溶解した、実施例1で調製されたポリ(ビニルアルコール)の2,3,5−トリヨードベンジルエーテルの水中の沈殿を示す写真である。
【図3b】NMP中33重量%の濃度で溶解した、実施例1で13KDaのPVDから調製されたポリ(ビニルアルコール)の2,3,5−トリヨードベンジルエーテルの水中の沈殿を示す写真である。
【図4】DMSO中33重量%の濃度で溶解した、実施例2で13KDaのPVDから調製されたポリ(ビニルアルコール)の4−ヨードベンジルエーテルの水中の沈殿を示す写真である。
【図5】溶液中のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度(重量%)の変化に対する、13KDaのPVDから調製された本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを含有する2つの溶液の粘度[mPa・s]の変化を示すグラフ図を表す。
【図6】「オニキス(OnyxTM)18」および「オニキス(OnyxTM)34」の放射線不透過度と比較した、本発明の2つの注射可能な塞栓組成物の放射線不透過度を説明するグラフ図を表す。
【図7a】NMP中に溶解した33重量%のポリ(ビニルアルコール)の2,3,5−トリヨードベンジルエーテルを含有する本発明の注射可能な塞栓組成物を用いた動脈瘤モデルの塞栓を示す写真である。
【図7b】NMP中に溶解した33重量%のポリ(ビニルアルコール)の4−ヨードベンジルエーテルを含有する本発明の注射可能な塞栓組成物を用いた動脈瘤モデルの塞栓を示す写真である。
【図7c】市販の塞栓組成物「オニキス(OnyxTM)34」を用いた動脈瘤モデルの塞栓を示す写真である。
【図8】実施例13で調製された、47kDaの本発明のMTIB−PVAのH−NMRスペクトルを示す。
【図9a】実施例14に記載された、NMP中、47kDaの2,3,5−トリヨードベンジルエーテル−PVAの2つの濃度30重量%および35重量%での本発明の注射可能な塞栓組成物から得られたハイドロゲルモデルを遮断する栓の写真であり、右から左へ塩水が流れる。
【図9b】実施例14に記載された、NMP中、47kDaの2,3,5−トリヨードベンジルエーテル−PVAの2つの濃度30重量%および35重量%での本発明の注射可能な塞栓組成物から得られたハイドロゲルモデルを遮断する栓の蛍光X線画像であり、右から左へ塩水が流れる。
【図10】実施例14に記載された、NMP中の合計濃度33重量%での、61kDaの4−モノ−ヨードベンジルエーテル−PVA(DS=67%)および61kDaの2,3,5−トリヨードベンジルエーテル−PVA(DS=58%)の50重量%:50重量%混合物のハイドロゲルモデルへの注入によって得られた栓を示す写真であり、右から左へ塩水が流れる。
【図11a】実施例16に記載された、NMP中の濃度33重量%で、47kDaの4−モノ−ヨードベンジルエーテル−PVA(DS=56%)を含有し、20%(質量/体積)で超常磁性酸化鉄ナノ粒子を充填した本発明の粘稠の注射可能な塞栓製剤を示す写真である。
【図11b】実施例16に記載されたように、図11aに示した本発明の粘稠の注射可能な塞栓製剤をハイドロゲルモデルへの注入後に形成される、温熱療法用の半固体の平滑インプラントを示す写真である。
【図12】交流磁場に暴露下で、図11bに示した温熱療法用のインプラントにより得られる温度上昇を説明するグラフ図を表す。
【図13】実施例17に記載されたように、塩水媒体中の本発明の注射可能な塞栓製剤から形成された放射線不透過性栓から放出されるドキソルビシンを説明するグラフ図を表す(n=3、エラーバーは平均値の標準誤差(sem)を示す)。
【図14】実施例18に記載された本発明のコーティング組成物を被覆したカテーテルを示す。
【図15】実施例20−1に記載されたように、47kDaの4−モノ−ヨードベンジルエーテル−PVAおよび47kDaの4−モノ−ヨードベンゾエート−PVAに対するナノ粒子分解生成物の吸光度変化を説明するグラフ図を表す。
【図16】実施例20−2に記載されたように、13kDaの2,3,5−トリ−ヨードベンジルエーテル−PVAおよび13kDaの2,3,5−トリ−ヨードベンゾエート−PVAに対するナノ粒子分解生成物の吸光度変化を説明するグラフ図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書および特許請求の範囲において、本発明のポリ(ビニルアルコール)のヨウ素化ベンジルエーテルは、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAとして示すものとする。
【0047】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有するエステル結合により共有結合グラフト化したヨウ素化ベンジル基を有するポリ(ビニルアルコール)から成ることを特徴とする放射線不透過性、非生分解性、水不溶性である、ポリ(ビニルアルコール)のヨウ素化ベンジルエーテルである。
【0048】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの置換度(DS)は特に限定されない。
【0049】
しかしながら、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAに適当な放射線不透過度を提供するために、置換度は好ましくは少なくとも0.2である。
【0050】
好ましい態様では、置換度は少なくとも0.4、より好ましくは少なくとも0.5である。
【0051】
上記置換度(DS)は、以下の式:
DS=x/(x+y)
[式中、xはグラフト化した繰り返し単位の数を表し、(x+y)は繰り返し単位の合計数を表す(グラフト化した繰り返し単位および非グラフト化繰り返し単位)。]
として定義され、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAのNMR線の積分から計算する。
【0052】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAにおけるグラフト化および非グラフト化繰り返し単位の意味することについて明確にするため、グラフト化繰り返し単位は、以下の式:
【化1】

(式中、nはベンジル基におけるヨウ素原子数を表す)
によって表すことができ、非グラフト化繰り返し単位は、以下の式:
【化2】


によって表すことができる。
【0053】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAのヨウ素含有量(%I)は、特に限定されないが、十分に放射線不透過性とするために、好ましくは少なくとも20重量%とするべきである。
【0054】
本発明の好ましい態様では、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAはヨウ素含有量少なくとも40重量%を有する。
【0055】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、グラフト化したヨウ素化ベンジル基が全て同じヨード‐ベンジルエーテル‐PVAであっても、またはグラフト化したヨウ素化ベンジル基が異なるヨウ素原子数を有する2以上の異なるヨウ素化ベンジル基であるヨード‐ベンジルエーテル‐PVAであってもよい。
【0056】
上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAが同じヨウ素化ベンジル基でグラフト化される場合、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAのヨウ素含有量(%I)は、以下の式:
【数1】


[式中、
(iodone)はヨウ素原子の原子質量(即ち、〜27)を表し、
nはベンジル基1つ当たりのヨウ素原子数(即ち、1〜4個)を表し、
(non−grafted)は非グラフト化繰り返し単位のモル質量(即ち、〜44)を表し、
(grafted)はグラフト化繰り返し単位のモル質量(例えば、
上記ベンジル基が置換基として1つのヨウ素のみを有する場合、〜260であり、
上記ベンジル基が置換基として2つのヨウ素のみを有する場合、〜386であり、
上記ベンジル基が置換基として3つのヨウ素のみを有する場合、〜512であり、
上記ベンジル基が置換基として4つのヨウ素のみを有する場合、〜638である)を表す。]
のように置換度(DS)から計算することができる。
【0057】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAが、異なるヨウ素原子数を有する2以上の異なるヨウ素化ベンジル基でグラフト化される場合、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAのヨウ素含有量(%I)は、各タイプのグラフト化したヨウ素化ベンジル基の分布の合計である。
【0058】
従って、異なるヨウ素原子数を有する2以上の異なるヨウ素化ベンジル基でグラフト化されたヨード‐ベンジルエーテル‐PVAのヨウ素含有量(%I)は、各タイプのヨウ素化ベンジル基に対する置換度(DS)を決定し、次に各タイプのヨウ素化ベンジル基に対して上記式を用いて置換度(DS)をベースとしたヨウ素含有量(%I)を計算し、最後に各タイプのヨウ素化ベンジル基に対して計算したヨウ素含有量(%I)を加えることによって計算することができる。
【0059】
例えば、モノ−ヨードベンジル基およびトリ−ヨードベンジル基の両方を有する本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAに対して、ヨウ素含有量(%I)は、モノ−ヨードベンジル基(n=1)に対するヨウ素含有量(%I)とトリ−ヨードベンジル基に対するヨウ素含有量(%I)との合計である。
【0060】
上記ヨウ素含有量は、元素分析によって決定されても、または確認されてもよい。
【0061】
本発明によれば、ポリ(ビニルアルコール)にグラフト化されたヨウ素化ベンジルエーテルは、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有しなければならない。
【0062】
本発明においては、上記ベンジル基は、ヨウ素原子に加えて、更に他の置換基、例えばアミノ基、アミド基、エステル基および/またはカルバモイル基を含有してもよいが、本発明の特に好ましい態様においては、上記ベンジル基は、置換基としてヨウ素原子のみを含有する。
【0063】
グラフト化したヨウ素化ベンジル基が全て同じである本発明の1つの好ましい態様では、各ベンジル基が置換基として1つのヨウ素原子のみを含有し、より好ましくはベンジル基の4位に1つのヨウ素原子を有する。
【0064】
グラフト化したヨウ素化ベンジル基が全て同じである本発明のもう1つの好ましい態様では、各ベンジル基が置換基として3つのヨウ素原子のみを含有し、より好ましくはベンジル基の2位、3位および5位に3つのヨウ素原子を有する。
【0065】
しかしながら、各ベンジル基は、上記ベンジル基のどの位置に、1〜4個のヨウ素原子を含有してもよい。
【0066】
上記グラフト化したヨウ素化ベンジル基が異なるヨウ素原子数を有する異なるヨウ素化ベンジル基である好ましい態様では、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAはその上に、4位に1つのヨウ素原子を有するヨウ素化ベンジル基および2位、3位および5位に3つのヨウ素原子を有するヨウ素化ベンジル基をグラフト化する。
【0067】
しかしながら、上記ヨウ素化ベンジル基がベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有すれば、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAはその上に、他のタイプのヨウ素化ベンジル基およびヨウ素化ベンジル基の組み合わせをグラフト化してもよい。
【0068】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの平均モル質量(M)は特に限定されず、選択された用途に応じて決定されなければならない。
【0069】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAのモル質量は、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの製造方法において、グラフト化されるべき出発材料のPVAポリマーのモル質量(M)を適当に選択することによって容易に制御することができる。
【0070】
塞栓組成物がカテーテルによって注入するにはあまりにも粘稠になるため、あまりに高いモル質量を有するヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは塞栓組成物の塞栓剤としての使用には適切ではないことに注意すべきであり、塞栓組成物が固体または半固体の塞栓インプラントを形成する凝集塊として堆積しないため、あまりに低いモル質量を有するヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは液状塞栓組成物の塞栓剤としての使用には適切ではないことに注意すべきである。
【0071】
更に、有利なことではないが、塞栓組成物は多量の溶媒中に低濃度の塞栓剤を有するべきであるため、高いモル質量を有する、従って高い溶液中の粘度を有するヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは塞栓組成物の塞栓剤として使用する際には好ましいことに注意すべきである。
【0072】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの平均モル質量(M)は、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを製造するのに用いられる出発材料のPVAポリマーのモル質量および本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの置換度に依存する
【0073】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、PVAのヨウ素化ベンジル誘導体とのエーテル化反応によって製造されてもよい。
【0074】
特に、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、出発材料のPVAとしての0〜100%加水分解のポリ(ビニルアルコール)を、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有するヨウ素化ベンジル誘導体と、無水条件で塩基存在下、極性非プロトン溶媒中で反応させる工程を含む方法によって製造されてもよい。
【0075】
ポリ(ビニルアルコール)(PVA)は、側鎖のヒドロキシル基を有する、炭素原子から成るポリマー鎖であり、いくつかの側鎖アセチル基を含有してもよい。
【0076】
本発明の方法においては、0%加水分解のポリ(ビニルアルコール)は、ポリマー鎖に、0%の側鎖ヒドロキシル基および100%の側鎖アセチル基を含有するPVAを意味する。
【0077】
本発明の方法においては、100%加水分解のポリ(ビニルアルコール)は、側鎖ヒドロキシル基のみを含有するPVAを意味する。
【0078】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAが側鎖ヒドロキシル基および側鎖のグラフト化されたヨウ素化ベンジルエーテル基のみを含有するように、グラフト化反応中に、出発材料のPVA中に存在してもよい側鎖アセチル基は除去されることに注意すべきである。
【0079】
本発明の特に好ましい態様では、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの製造方法は、出発材料のPVAとしての75〜100%加水分解のポリ(ビニルアルコール)をヨウ素化ベンジル誘導体と反応させる工程を含む。
【0080】
本発明の方法に用いられる出発材料のPVAの平均モル質量(M)は特に限定されず、用途に応じて、最終生成物のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAに対して予想される平均モル質量(M)に依存して決定されなければならない。
【0081】
しかしながら、あまりに高いモル質量またはあまりに低いモル質量を有するPVAを用いて本発明の方法を実行すると、液状塞栓組成物の塞栓剤としての使用に好適なヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを得ることにつながらない。
【0082】
従って、液状塞栓組成物の塞栓剤として用いられるヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを製造するための出発材料のPVAの平均モル質量(M)は、好ましくは5,000〜200,000ダルトン、より好ましくは10,000〜130,000ダルトン、更により好ましくは10,000〜50,000ダルトンである。
【0083】
例えば、本発明の方法の出発材料のPVAとして用いてもよい市販のPVAは、重量平均モル質量(Mw)13,000〜23,000ダルトンおよび加水分解度87〜89%を有するシグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)から市販されている医薬品グレードのPVAであってもよい。
【0084】
しかしながら、如何なる加水分解度を有する如何なる市販のPVAを、本発明の方法にしたがって、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを製造するために用いてもよい。
【0085】
本発明の方法において、上記ヨウ素化ベンジル誘導体は、得られるヨード‐ベンジルエーテル‐PVAに応じて、グラフト化されるべき試薬として選択され、例えばヨウ素化塩化ベンジル、ヨウ素化臭化ベンジルまたはヨウ素化ベンジルメシレートであってもよい。
【0086】
好ましい態様では、すべてのベンジル基の4位に1つのヨウ素原子を含有するヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを、ヨウ素化ベンジル誘導体として、市販の4−ヨードベンジルブロミド(例えばシグマアルドリッチ社から市販されている)を用いることによって製造してもよい。
【0087】
別の好ましい態様では、すべてのベンジル基の2位、3位および5位に3つのヨウ素原子を含有するヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを、ヨウ素化ベンジル誘導体として、2,3,5−トリヨードベンジルブロミドを用いることによって製造してもよい。
【0088】
2,3,5−トリヨードベンジル誘導体は、製造例1〜4の実験部分に記載されているように、容易に製造することができる。
【0089】
本発明の別の態様において、4位に1つのヨウ素原子を含有するベンジル基および2位、3位および5位に3つのヨウ素原子を含有するベンジル基の両方を含有するヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを、ヨウ素化ベンジル誘導体として、4−ヨードベンジルブロミドおよび2,3,5−トリヨードベンジルブロミドの混合物を用いることによって製造してもよい。
【0090】
しかしながら、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有する異なるベンジル基をグラフト化した本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを、2以上の異なるヨウ素化ベンジル誘導体の如何なる混合物を用いることによって製造してもよい。
【0091】
本発明の方法に用いてもよいヨウ素化ベンジル誘導体は、市販されているか、或いは、例えば従来の方法または製造例1〜4の実験部の記載をベースとした方法にしたがって、対応するヨウ素化安息香酸または対応するヨウ素化ベンジルアルコールから当業者によって容易に製造されてもよい。
【0092】
本発明の合成方法に用いられる極性非プロトン性溶媒の例には、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)およびTHF(テトラヒドロフラン)などが挙げられる。
【0093】
本発明の方法に用いられる塩基の例には、NaOH、KOHおよびNaHなどが挙げられる。
【0094】
本発明の方法の好ましい態様において、極性非プロトン性溶媒はNMPであり、塩基はNaOHである。
【0095】
速度論の研究により、置換度(DS)がグラフト化反応時間に依存しており、上記置換度(DS)がグラフト化反応時間を制御することによって容易に決定することができるように、通常、約1/2から15時間後に最大値に達することが示されている。
【0096】
必要に応じて、上記方法によって得られた本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、特に限定されないが、要求される純度を達成するための沈殿/溶解/沈殿サイクルを含む従来の技術によって、更に精製してもよい。
【0097】
本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、塞栓組成物の塞栓剤として有用である。
【0098】
本発明の注射可能な塞栓組成物は、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVA、および本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを溶解する水混和性で、生体適合性の溶媒を含有する。
【0099】
ポリマー溶液の粘度は、特に高濃度で、ポリマーモル質量に非常に敏感であることが知られているため、上記粘度がこの用途に対して高すぎたり低すぎたりしないようにするために、塞栓組成物中に含まれる上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAのモル質量を適当に選択することが重要である。
【0100】
例えば、モル質量に関して、塞栓組成物の塞栓剤として用いられる好ましいヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、出発材料PVAとして、モル質量5,000〜200,000ダルトン、好ましくは10,000〜130,000ダルトン、より好ましくは10,000〜50,000ダルトンを有するPVAを用いることによって得ることができる。
【0101】
溶液中のポリマー濃度はまた、ポリマー溶液の粘度だけでなく、ポリマーの沈降挙動に影響を与える。
【0102】
塞栓組成物中の本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度は5〜65重量%の範囲内で選択され、上記選択はターゲットとなる塞栓組成物の粘度に依存し、それ自体は上記塞栓組成物に用いられる本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの平均モル質量に依存する。
【0103】
本発明によれば、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度の選択は、
注射可能であり、即ち、注入するために粘度が高すぎず、更に、体液などの水性媒体と接触して、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの堆積によって、固体または半固体の凝集塊を形成することができる、塞栓組成物を得ることができるものでなければならない。
【0104】
好ましくは、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度は、溶媒量の低減された塞栓組成物を提供するために、できるだけ高く選択される。
【0105】
本発明の特に好ましい態様において、塞栓組成物中の本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度は、20〜50重量%の範囲内で選択される。
【0106】
更に、本発明の注射可能な塞栓組成物に用いられる本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、向上した放射線不透過性を塞栓組成物、および上記塞栓組成物の体液との接触によるヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの堆積によって形成される塞栓塊にも提供するために、ヨウ素含有量(%I)少なくとも20%(w/w)、より好ましくは少なくとも40%(w/w)を有する。
【0107】
本発明の注射可能な塞栓組成物に用いられる、水混和性で、生体適合性の溶媒は、上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを溶解して均一溶液を形成すれば、特に限定されない。
【0108】
好ましい態様では、水混和性で生体適合性の溶媒は、ジメチルスルホキシド、N−メチピロリドン、グリコフロール、ピロリドン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルケタル(solketalTM)、グリセロールホルマール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジメチルイソソルビド、乳酸エチル、ヒドロキシエチルラクトアミドおよびN,N‐ジメチルアセトアミドから成る群から選択され、より好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチピロリドン(NMP)およびグリコフロールから成る群から選択される。
【0109】
本発明の1つの態様によると、本発明の注射可能な塞栓組成物は、本発明の1つのヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを含有する。
【0110】
好ましい態様では、本発明の注射可能な塞栓組成物に含まれる本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、各ベンジル基が4位に1つのヨウ素原子を含有するヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(以下、「4−モノ−ヨードベンジルエーテル−PVA」または「MIB−PVB」という)である。
【0111】
別の好ましい態様では、本発明の注射可能な塞栓組成物に含まれる本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAは、各ベンジル基が2位、3位および5位に3つのヨウ素原子を含有するヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(以下、「2,3,5−トリ−ヨード−ベンジルエーテル−PVA」または「TIB−PVB」という)である。
【0112】
本発明の別の態様によれば、本発明の注射可能な塞栓組成物は、本発明の注射可能な塞栓組成物に含まれる本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの合計濃度が5〜65重量%の範囲内であれば、異なる数または異なる位置のヨウ素原子を有する2以上の異なる本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを含有してもよい。
【0113】
好ましい態様では、本発明の注射可能な塞栓組成物は、様々な比率で、4−モノ−ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(MIB−PVA)および2,3,5−トリ−ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(TIB−PVA)を含有する。
【0114】
例えば、4−モノ−ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(MIB−PVA)または2,3,5−トリ−ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(TIB−PVA)に基づいて、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの粘度と機械的特性は全く異なる。
【0115】
4−モノ−ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(MIB−PVA)は、2,3,5−トリ−ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(TIB−PVA)より軟らかい材料であり、より低いガラス転移温度を有するため(MIB−PVAのTg:55℃、TIB−PVAのTg:111℃)、より脆くない。
【0116】
更に、NMP中の2,3,5−トリ−ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(TIB−PVA)の溶液は、水性環境中で、4−モノ−ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(MIB−PVA)より速く沈降する傾向がある。
【0117】
従って、様々な比率でのMIB−PVAおよびTIB−PVAの混合物は、最終的に堆積したインプラントの機械的特性を調整するのに使用することができる。
【0118】
例えば、NMP中に溶解した等比のMIB−PVAおよびTIB−PVAは、MIB−PVAおよびTIB−PVAの間の中間の製剤粘度、沈降時間および機械的特性を示す。
【0119】
従って、実施例14 に示すように、MIB−PVA:TIB−PVAのブレンドは、一群の液状塞栓組成物を生成することができる。
【0120】
2種以上のヨウ素化繰り返し単位をベースとしたPVAポリマーを用いることによって、インプラントの特性を調整することも可能である。
【0121】
例えば、実施例13に示すように、反応バイアル中に等モル量のモノ−ヨードベンジル誘導体およびトリ−ヨードベンジル誘導体を混合することによって、MIBとTIBでグラフト化したPVAポリマーを得ることができる。得られるコポリマーMTIB−PVAは、MIB:TIB質量比38:62に相当する、ほぼ50:50モル比の4−モノ−ヨード‐ベンジルエーテルおよび2,3,5−トリ−ヨードベンジルエーテルのグラフト化基を示す。
【0122】
そのようなコポリマーMTIB−PVAは、MIB−PVAおよびTIB−PVAの間の中間のガラス転移温度(Tg=68℃)を有し、実施例15には、沈殿物もMIB−PVAおよびTIB−PVAの間の中間の特性が得られることが示されている。
【0123】
同様に、コポリマーをベースとして、コポリマーのモル質量、濃度およびMIB/TIB比によって液体塞栓特性を調整する全ての群の製剤を得ることができる。
【0124】
当業者には、組成物の水中での沈降試験を行うことによって、選択された濃度の本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAおよび選択された水混和性で生体適合性の溶媒を含有する組成物が塞栓組成物として用いるのに好適かどうか容易に決定することができる。
【0125】
本発明の注射可能な塞栓組成物は、ヒトまたは他の哺乳動物対象の治療のために、生体内で血管中または腫瘍内に固体または半固体の凝集塊を形成するのに用いる場合、特に有用である。
【0126】
血管を塞栓するのに、特に傷害、例えば動脈瘤、動静脈奇形、動静脈瘻および腫瘍を治療するのに本発明の塞栓組成物を用いる場合、蛍光透視下でカテーテルによるデリバリー手段によって血管内に導入され、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAが沈降した後、沈殿したヨード‐ベンジルエーテル‐PVAによって形成された塞栓塊によって血管を塞栓する。
【0127】
本発明の塞栓組成物を直接穿刺による腫瘍の治療に用いる場合、針技術によって、直接、腫瘍組織に注入され、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAが沈降した後、沈殿したヨード‐ベンジルエーテル‐PVAによって形成された塞栓塊を用いて腫瘍を充填する。
【0128】
用いた特定量の塞栓組成物を、塞栓すべき脈管構造または組織の合計体積、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの沈降速度などによって規定し、そのようなファクタの決定は当業者の能力の範囲内である。
【0129】
本発明の1つの態様では、本発明の注射可能な塞栓組成物には、薬剤または生物製剤を含む。
【0130】
薬剤または生物製剤を含む注射可能な塞栓組成物は、上記薬剤または生物製剤で充填された固体または半固体の凝集塊を生体内で形成するのに特に有用であり、次いで上記薬剤または生物製剤を放出することによって生体内に送達することができる。
【0131】
実施例17には、抗癌剤を含む本発明の注射可能な塞栓組成物を用いる場合に、得られる沈殿した凝集塊からの抗癌剤の塩酸ドキソルビシンの放出が記載されている。
【0132】
本発明の別の態様では、上記注射可能な塞栓組成物は、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)を含有する。
【0133】
SPIONを含む上記注射可能な塞栓組成物は、温熱療法によって腫瘍を治療するために、SPIONで充填した固体または半固体のインプラントを生体内で腫瘍内に形成するのに特に有用である。
【0134】
本発明の注射可能な塞栓組成物に用いられるSPIONは、適切に被覆またはカプセル化されても、またはシリカビーズ中に固定化されてもよい。
【0135】
本発明の注射可能な塞栓組成物に用いられるSPIONは、市販のSPION、例えばマグシリカ(MagSilica)50−85[ドイツ、エボニック(Evonik)]などのシリカビーズ中に固定されたSPIONであっても、或いは、例えば国際公開WO−A−2006/125452パンフレットに開示された、またはMatthieu Chastellainらによって、"Superparamagnetic Silica−Iron Oxide Nanocomposites for Application in Hyperthermia"、Advanced Engineering Materials, 6:235−241頁、2004年に開示されたSPIONであってもよい。
【0136】
実施例16には、本発明の注射可能な塞栓組成物を用いることによって、制御された局所的温熱療法のために、シリカビーズ中に固定されたSPIONで充填した温熱療法インプラントを生体内で形成することが記載されている。
【0137】
図12には、実施例16で得られた温熱療法インプラントを交流磁場に暴露すると、温度が上昇し、従って、SPIONで充填した本発明の注射可能な塞栓組成物は、温熱療法によって、治療、例えば腫瘍の治療に用いることができることを示すグラフ図を示している。
【0138】
本発明の別の態様では、本発明の注射可能な塞栓組成物は、局所的組織増大による尿失禁を治療するための半固体インプラントを生体内で形成するために用いることができる。
【0139】
例えば、女性の間に広まった病気である尿失禁の治療に関して、尿道充填は標準的治療として認識されている。
【0140】
上記治療は、組織内に膨らみを形成する生体適合物質を膀胱粘膜下に注入し、こうして尿道の閉鎖を増加することから成る。今日ではコラーゲンが使用されるが、その効果は数ヶ月間持続するのみである。
【0141】
従って、長期のフォローアップのための画像形成能を提供すべき、長期的に持続する非分解性のインプラントが要求される。
【0142】
従って、本発明の注射可能な塞栓組成物は、有効な代替物を提供する。
【0143】
本発明はまた、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAおよび上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを可溶化する溶媒を含む医療用具上にコーティングを形成するためのコーティング組成物であって、上記組成物中の上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度が5〜65重量%の範囲内から選択され、医療用具上への被覆および溶媒蒸発の後、上記組成物が放射線不透過性コーティングを形成することができる、コーティング組成物に関する。
【0144】
本発明のコーティング組成物は、放射線不透過性コーティングを医療用具上に被覆して、X線画像形成によって可視化する。
【0145】
本発明のコーティング組成物の被覆、次いで乾燥によって、上記コーティングを製造することができる。
【0146】
上記コーティングの厚さは、いくつかの要因、その中でも上記コーティング組成物の粘度に依存する。
【0147】
本発明のコーティング組成物において、上記ヨード−ベンジルエーテル−PVAを可溶化するために使用することができる溶媒には、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドを含む。
【0148】
ジクロロメタンなどの不十分な生体適合性を有する溶媒の場合、使用前に溶媒を完全に除去しなければならず、低沸点を有する有機溶媒に対しては乾燥することによって行うことができる。
【0149】
例えば、上記コーティング組成物は、実施例17に記載され、図14に示されているように、カテーテルの先端をコーティングするのに有用であるかもしれない。
【0150】
本発明は、更に、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAから形成されたナノ粒子およびミクロ粒子などの粒子に関する。
【0151】
医療分野でのX線画像形成技術の使用を助けるまたは改善するために、ナノ粒子またはミクロ粒子を製造することができる。
【0152】
例えば、特定の組織にマーク付けしたり、注射により生理液の流れを追跡したりするために、造影剤として用いることができる。
【0153】
好ましい態様では、本発明の放射線不透過性粒子は、更に薬剤または製剤を含む。
【0154】
薬剤または生物製剤を充填した放射線不透過性粒子は、投与後、例えば腫瘍内投与後に、体内で追跡することができる。
【0155】
本発明の放射線不透過性粒子は、粒子製造の当業者に公知の任意の技術を使用して、本発明のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAから製造することができる。
【0156】
例えば、実施例19では、ナノ沈殿技術によって、47kDaのMIB−PVA(DS=49%)および13kDaのTIB−PVA(DS=53%)から、異なるサイズのナノ粒子を作製するための手段が提供される。
【0157】
以下の実施例は、本発明を説明することを目的とするものであるが、いずれの場合にも、本発明の範囲を制限するものとして見なすことはできないものである。
【実施例】
【0158】
移動相として酢酸エチル/ヘキサンの1/3混合物および波長254nmのUV照明下での観察を用いるシリカ上の薄層クロマトグラフィーによって、反応をモニターすることができる。
【0159】
H−NMRおよび13C−NMRスペクトルを、それぞれブルカー(Brucker)300MHzおよびブルカー(Brucker)400MHzスペクトロメータにより測定した。化学シフトをppm単位で示した[H−NMR用のリファレンスδ=7.27(CDCl)、2.50(DMSO−d6)および13C−NMR用のリファレンスδ=77.1(CDCl)、39.5(DMSO−d6)]。
【0160】
置換度(DS)を、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAのH−NMRスペクトルのNMR線の積分から算出した。
【0161】
ヨウ素含有量を、明細書中に記載したように置換度をベースとして算出し、元素分析によって確認した。
【0162】
ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの放射線不透過性を、粉末試料および溶液のX線可視化の下で評価した。
【0163】
IR透過スペクトルを、ニコレット(Nicolet)460スペクトロメータESPによって記録した。
【0164】
1mgの化合物と100mgのKBr粉末をプレスすることによって、ペレットを調製した。
【0165】
融点を、ティー・エイ・インスツルメント社(TA Instrument)の熱分析装置Q200による示差走査熱量法(DSC)によって決定した。
【0166】
PVA 13kDaは、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)から市販されている、重量平均モル質量(Mw)13,000〜23,000ダルトンおよび加水分解度87〜89%を有するポリビニルアルコールである。
【0167】
PVA 47kDaは、モウィオール(Mowiol)6−98、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)から市販されている、重量平均モル質量(Mw)47,000ダルトン、加水分解度98.0〜98.8%およびH0中4%、20℃での粘度6mPa・sを有するポリビニルアルコールである。
【0168】
PVA 61kDaは、モウィオール(Mowiol)10−98、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)から市販されている、重量平均モル質量(Mw)61,000ダルトン、加水分解度98.0〜98.8%およびH0中4%、20℃での粘度10mPa・sを有するポリビニルアルコールである。
【0169】
PVA 125kDaは、モウィオール(Mowiol)20−98、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)から市販されている、重量平均モル質量(Mw)12,500ダルトン、加水分解度98.0〜98.8%およびH0中4%、20℃での粘度20mPa・sを有するポリビニルアルコールである。
【0170】
2,3,5−トリヨード安息香酸は、Changzhou Dahua Imp.And Exp.Corp. Ltd.(中国)から市販されている。
【0171】
4−ヨードベンジルブロミドは、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)から市販されている。
【0172】
他の試薬は、市販品を使用し、特に記述のない限り、受け入れ状態で使用した。
【0173】
THFとCHClは、塩基性活性アルミナAlを通過させることによって乾燥した。
【0174】
Oは、イオン交換水を意味する。
【0175】
(製造例1)2,3,5−トリヨードベンジルアルコール1の合成
【化3】


BH−テトラヒドロフラン(75mL、75ミリモル)の溶液(1M)を、乾燥窒素ガス流の下で反応器内の温度を2℃以下に維持しながら、乾燥テトラヒドロ フラン(10mL)中の2,3,5−トリヨード安息香酸 (5g、10ミリモル)の溶液に滴下して追加した。上記反応混合物を、0℃で1時間15分間撹拌し、次いで室温(18℃)で1時間撹拌し、白色沈殿物を得た。過剰のボランを加水分解するため、13:2のテトラヒドロフラン/H0冷溶液(26mL)を(反応器を冷却することで温度を監視した)そのままの上記混合物に徐々に加え、上記混合物をNaHCOの冷溶液(〜100mL)による希釈により中和した。白色沈殿物は、撹拌1時間後に現れた。固体を濾過によって回収し、HOと無水の冷エタノールで洗浄した。蒸発後のエタノールの痕跡を排除するためには、上記白色固体をCHCl中に溶解し、次いで蒸発し、次いで真空下で乾燥した。白色透明固体の形の2,3,5−トリヨードベンジルアルコールを、収量(4.8g)で得た。
融点(Mp):156〜159℃
IR:3186、2904、1524、1400、1368、1235、1144、1047、997、859、719、675cm−1
H−NMR(DMSO−d6):8.16(d、1H、J=2.0Hz)、7.70(d、1H、J=2.0Hz)、5.69(s、1H、OH)、4.34(s、2H、CH
13C−NMR(DMSO d6):69.83(CH)、95.77(Cq)、109.84(Cq)、112.99(Cq)、134.56(CH)、144.13(Cq)、149.27(CH)
【0176】
(製造例2)2,3,5−トリヨードベンジルメシレート2の合成
【化4】


塩化メシル(0.6mL、8ミリモル)を、0℃、乾燥窒素ガス流下で、ジイソプロピルエチルアミン(1.4mL、8ミリモル)を含む乾燥ジクロロメタン(30mL)中の2,3,5−トリヨードベンジルアルコール1(1.94g、4ミリモル)の懸濁液に滴下して加えた。上記反応混合物を0℃で1時間15分間撹拌し、次いで冷HO(40mL)を加えた。得られた水性相をジクロロメタン(10mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をHO(8mL)で洗浄し、次いで乾燥し(NaS0)、濾過し、濃縮した。上記淡黄色の固体を更に、冷メタノール(35mL)で洗浄した。白色透明固体の形の1.894gの2,3,5−トリヨードベンジルメシレートを、収率84%で得た。
融点(Mp):130〜133℃
IR:3026、1525、1342、1330、1176、1168、1008、975、862、836cm−1
H−NMR(CDCl):8.23(d,1H,J=1.5Hz)、7.69(d,1H,J=1.5Hz)、5.23(s,2H,CH)、3.11(s,3H,Me)
13C−NMR(CDCl):38.29(Me)、76.32(CH)、94.72(Cq)、110.98(Cq)、112.29(Cq)、136.96(CH)、140.69(Cq)、147.48(CH)
【0177】
(製造例3)2,3,5‐トリヨードベンジルブロミド3の合成
【化5】


三臭化リンの溶液(3.8mL、40ミリモル)を、0℃、乾燥窒素ガス流下で、乾燥テトラヒドロフラン(50mL)中の2,3,5−トリヨードベンジルアルコール1(9.72g、20ミリモル)の溶液に滴下して加えた。上記反応混合物を0℃で5分間撹拌し、次いで室温(18℃)で20分間撹拌し、次いで冷HO/DCM(60/60mL)を加えた。得られた水性相をジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をNaHCO水溶液(20mL)およびHO(20mL)で洗浄し、次いで乾燥し(NaS0)、濾過し、濃縮した。上記白色固体を更に、冷メタノール(45mL)で洗浄した。白色透明固体の形の9.35gの2,3,5‐トリヨードベンジルブロミドを、収率85%で得た。
融点(Mp):120〜121℃
IR:710、866、980、1157、1212、1398、1515、3026cm−1
H−NMR(DMSO−d6):4.81(s,2H,CH)、7.95(d,1H,J=2.1Hz)、8.18(d,1H,J=2.1Hz)
13C−NMR(DMSO d6):42.33(CH)、95.77(Cq)、113.95(Cq)、114.97(Cq)、137.69(CH)、144.87(Cq)、145.92(CH)
【0178】
(製造例4)2,3,5‐トリヨードベンジルクロリド4の合成
【化6】


塩化メシル(4.24mL、56ミリモル)を、0℃、乾燥窒素ガス流下で、ジイソプロピルエチルアミン(11mL、64ミリモル)および塩化リチウム(4.24g、100ミリモル)を含む乾燥ジクロロメタン(140mL)中の2,3,5−トリヨードベンジルアルコール1(9.72g、20ミリモル)の懸濁液に滴下して加えた。上記反応混合物を室温で5時間撹拌し、次いで冷HO(100mL)を加えた。得られた水性相をジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をNaHCO水溶液(20mL)およびHO(20mL)で洗浄し、次いで乾燥し(NaS0)、濾過し、濃縮した。上記淡黄色の固体を更に、無水の冷エタノール(25mL)で洗浄した。白色透明固体の形の9.05gの2,3,5−トリヨードベンジルクロリドを、収率90%で得た。
融点(Mp):97〜98℃
IR:680、731、859、867、1007、1133、1267、1371、1439、1520cm−1
H−NMR(DMSO−d6):4.87(s,2H,CH)、7.92(d,1H,J=1.9Hz)、8.21(d,1H,J=1.9Hz)
13C−NMR(DMSO d6):53.58(CH)、95.78(Cq)、113.89(Cq)、114.65(Cq)、137.74(CH)、144.48(Cq)、146.08(CH)
【0179】
(製造例5)2,3,5-トリ-ヨードベンゾエート-PVA 13kDa(TIB/Ester-PVA 13kDa)の合成
【化7】


グラフト化反応は、D. Mawad、H. Mouaziz、 A. Penciu、 H. Me'hier、B. Fenet、 H. Fessi, Y.Chevalierの「局所的薬剤送達の生体内での制御用の放射線不透過性ヨウ素化ナノ粒子の作製(Elaboration of radiopaque iodinated nanoparticles for in situ control of local drug delivery)」、バイオマテリアルズ(Biomaterials)2009年、30、5667-5674頁に報告された研究を採用した。
【0180】
PVA 13kDaを窒素ガス流下で乾燥NMP中に溶解し、塩化トリヨードベンゾイルのNMP溶液を加えた。次いで、乾燥ピリジンDMAPを加えた。12時間後、冷水を加え、沈殿したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄した。精製工程用に、上記未処理のペースト材料をNMP中に溶解し(濃度:22重量%)、冷エタノールを加えた。沈殿したペースト材料を濾過し、NMRスペクトルによって分析した。 H−NMRスペクトルによって、残余試液には上記グラフト化PVAは含有せず、極微量の溶媒を示した。上記極微量の溶媒を排除するため、上記グラフト化PVAをTHF中に溶解し(濃度:30重量%)、冷水を加えた。沈殿したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥した。上記グラフト化PVAを茶色の固体として得た。
H−NMR(DMSO−d6):1.35〜1.95ppm (m、5.81au、CHPVA鎖、2(x+y))、3.81ppm (s、2.09au、CHPVA鎖、、y)、4.21〜4.67ppm (m、2.69au、OH)、5.37(s、0.78au、CHPVA鎖、x)、7.71ppm(s、1.0au、H芳香族、x)、8.34ppm(s、1.0au、H芳香族、x)
NMRスペクトルをベースとして、DS34%を有するTIB/Ester-PVA 13kDaを得た。
【0181】
(製造例6)4―モノ―ヨードベンゾエート−PVA 47kDa(MIB/Ester-PVA 47kDa)の合成
【化8】


反応条件は、製造例5における2,3,5-トリ-ヨードベンゾエート-PVA 13kDaに用いたのと同様であった。上記PVAをNMPに溶解し、4―モノ―ヨードベンゾエートクロリドの溶液を加えた。次いで、乾燥ピリジンとDMAPを加えた。6時間後、冷水を加え、沈殿したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄した。精製工程用に、上記未処理のペースト材料をNMP中に溶解し(濃度:14重量%;上記混合物は黄色であったが不透明であり、上記粒子のすべてを溶解した)、NaHCOの溶液100mLを加えた。沈殿した固形分を濾過し、メタノールで洗浄した。上記4―モノ―ヨードベンゾエートクロリドが除去されるまで、この工程を繰り返した。次いで、上記固形分をNMP中に溶解し(濃度:19重量%)、冷水を加えた。沈殿した固形分を濾過し、メタノールで洗浄した。上記固形分をNMRスペクトルによって分析した。
H−NMR(DMSO−d6):1.05−2.4ppm(m、5.49au、CHPVA鎖、2(x+y))、3.81ppm(s、1.28au、CHPVA鎖、y)、4.21−4.67ppm(m、0.77au、OH)、5.37ppm(s、1.0au、CHPVA鎖、x)、7.10−7.90ppm(m、4.35au、H芳香族、4x)
NMRスペクトルをベースとして、MIB/Ester-PVA 47kDaがDS40%で得られた。
【0182】
(実施例1)本発明のポリ(ビニルアルコール)の2,3,5−トリヨードベンジルエーテル(TIB-PVA 13kDa)を調製するための2,3,5‐トリヨードベンジルブロミドのPVAへのグラフト化
【化9】


294mgのPVA 13kDa(6ミリモル)を、窒素ガス流下で20mLの乾燥NMP(PVA濃度:0.3M)中に溶解した。上記反応混合物を130℃で5分間撹拌し、次いで上記温度を50℃に下げた。4.94gの2,3,5‐トリヨードベンジルブロミド3(9ミリモル)を加え、上記反応混合物を10分間撹拌した。480mgの粉末にした乾燥NaOH(12ミリモル)を10分間かけて加えた。5時間後、上記混合物を室温まで冷却し、撹拌しながら冷水20mLを加えた。析出した固形沈殿物を濾過し、メタノールおよびジクロロメタンで洗浄した。3.15gの未処理の固形分を得、H−NMRによって分析して、56%の非グラフト化トリヨードベンジルブロミドおよび30%のグラフト化PVAを含有する未処理生成物を同定した。上記グラフト化PVAを単離するため、上記未処理固形分をNMP中に溶解し(濃度:7重量%) 、同体積の冷メタノールを加えた。沈殿したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄し、H−NMRによって分析した。グラフト化PVAの純度は86%であった。このペースト材料をNMP中に溶解し(濃度:17重量%) 、同体積の冷メタノールを加えた。沈殿したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄し、H−NMRによって分析した。グラフト化PVAの純度は97%であった。100%の純度を得るために、上記ペースト材料をNMP中に溶解し(濃度:17重量%) 、同体積の冷水を加えた。上記固形沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄して、純度100%のベージュ色の固体の形で、NMR分析による全収率19%のグラフト化PVAを得た。
【0183】
上記グラフト化PVA中に残留した極微量のNMPを排除するため、上記グラフト化PVAをTHF中に溶解し(濃度:13重量%)、冷水を加えた。上記グラフト化PVA(TIB-PVA 13kDa)が沈殿し、H−NMRによって分析した。上記NMRスペクトルを図1に示し、上記NMRスペクトルは上記グラフト化PVA中の極微量のTHFを示した。
H−NMR(DMSO−d6):1.51−1.85(m、3.8au、CH PVA鎖(2(x+y))、3.4−4.05(m、1.5au、CHPVA鎖(x+y))、4.16−4.52(m、2.4au、CHベンジルおよび残留OH、(2x+y))、7.60(s、1.0au、H芳香族(x))、8.04(s、1.0、H芳香族、(x))
【0184】
置換度(DS)を、NMR線の積分から計算したNMRスペクトルのピークの下の領域から測定した。芳香族線の領域のPVA鎖のCHの領域に対する比が、x/2(x+y)=DS/2である。従って、DSは0.54(即ち、DS=54%)であった。
【0185】
上記DSから計算した予想されるヨウ素含有量は69%であり、元素分析によって確認されたヨウ素含有量は64%であった。
【0186】
(実施例2)本発明のポリ(ビニルアルコール)の4−モノヨードベンジルエーテル(MIB-PVA 13kDa)を調製するための4−モノヨードベンジルブロミドのPVAへのグラフト化
【化10】


589mgのPVA 13kDa(12ミリモル)を、窒素ガス流下で40mLの乾燥NMP中に溶解した。上記反応混合物を130℃で5分間撹拌し、次いで上記温度を50℃に下げた。5.3gの4−ヨードベンジルブロミド(18ミリモル)を加え、上記反応混合物を10分間撹拌した。次いで、960mgの粉末にした乾燥NaOH(24ミリモル)を10分間かけて加えた。4時間後、上記混合物を室温まで冷却し、撹拌しながら冷水40mLを加えた。析出したペースト材料を濾過し、メタノールおよびジクロロメタンで洗浄した。3.9gの未処理のペースト材料を得、H−NMRによって分析して、44%の非グラフト化4−ヨードベンジルブロミドおよび56%のグラフト化PVAを含有するペースト材料を同定した。上記グラフト化PVAを単離するため、上記ペースト材料をDMF中に溶解し(濃度:50重量%) 、2倍体積の冷メタノールを加えた。沈殿したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄し、H−NMRによって分析した。グラフト化PVAの純度は80%であった。このペースト材料をTHF中に溶解し(濃度:50重量%) 、3倍体積の冷メタノールを加えた。沈殿したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄し、H−NMRによって分析した。グラフト化PVAの純度は95%であった。上記ペースト材料をTHF中に溶解し(濃度:28重量%) 、2倍体積の冷メタノールを加えた。析出したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄した。純度は98%であった。100%の純度を得るために、上記グラフト化PVAをTHF中に溶解し(濃度:29重量%) 、3倍体積の冷水を加えた。析出したペースト材料を濾過し、メタノールで洗浄した。乾燥後、上記グラフト化PVA(MIB-PVA 13kDa)を、オレンジ色の固体の形で、全収率24%で得た。によって分析した。上記MIB-PVA 13kDaのH−NMRスペクトルを図2に示す。
H−NMR(DMSO−d6):1.34−1.90(m、3.8au、CH PVA鎖(2(x+y))、3.58−3.78(m、1.5 au、CH PVA鎖 (x+y))、4.23−4.48(m、2.4 au、CHベンジル、残留OH、(2x+y))、7.00(s、2.0 au、H芳香族 (2x))、7.54(s、2.0、H芳香族 (2x))
【0187】
置換度(DS)を、NMR線の積分から計算したNMRスペクトルのピークの下の領域から測定した。芳香族線の領域のPVA鎖のCHの領域に対する比が、2x/2(x+y)=DSである。従って、DSは0.56(即ち、DS=56%)であった。
【0188】
上記DSから計算した予想されるヨウ素含有量は43%であり、元素分析によって確認されたヨウ素含有量は43%であった。
【0189】
(実施例3)沈殿テスト
実施例1で得られたTIB-PVA 13kDaをNMP中に濃度10重量%および33重量%で溶解し、これら2つの注射可能な組成物を、直径0.8mmの針を有する注射器を使用して水中に沈殿させた。得られた結果を、図3aおよび図3bに示す。
【0190】
図3aに示すように、NMP中に溶解した10重量%のTIB-PVA 13kDaを含有する注射可能な組成物は、凝集塊として沈殿しなかったので、本発明の注射可能な塞栓組成物としては適切でなかった。
【0191】
しかしながら、図3bに示すように、NMP中に溶解した33重量%のTIB-PVA 13kDaを含有する注射可能な組成物は凝集塊として沈殿したので、本発明の注射可能な塞栓組成物として適切である。
【0192】
更に、実施例2で得られたMIB-PVA 13kDaを濃度33重量%でDMSO中に溶解し、この注射可能な組成物を直径0.9mmの針を有する1mL注射器を使用して水中に沈殿させた。
【0193】
図4に示すように、DMSO中に溶解した33重量%のMIB-PVA 13kDaを含有する注射可能な塞栓組成物は凝集塊として沈殿したので、本発明の注射可能な塞栓組成物として適切である。
【0194】
NMP中に溶解したTIB-PVA 13kDaまたはDMSO中に溶解したMIB-PVA 13kDaを含有する全組成物は、20重量%を超える濃度に対して、凝集塊として沈殿することを、更に別の実験で示した。
【0195】
(実施例4)塞栓組成物および粘度
粘度は、塞栓術用の注射可能な組成物中の上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA濃度を選択するための重要なパラメータであるため、以下の実験を行った。
【0196】
実施例2で得られたMIB-PVA 13kDaを濃度20〜50重量%でDMSO中に溶解し、溶液の粘度を測定した。
【0197】
粘度は、コーンプレートレオメータ[マルバーン・インスツルメンツ(Malvern Instruments)社のボーリン(Bohlin)CVO120]を用いて25℃で測定した。
【0198】
図5には、特定溶媒中のPVA 13kDaから得られた上記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA濃度を増加した時の粘度の増加を示す。
【0199】
従って、図5には、上記塞栓組成物の粘度は、動脈瘤の塞栓術に必要な高い粘度(約500mPa・s)、そして小さな毛細血管の塞栓に適切な低粘度(約50mPa・s)を得るために、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度、ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの種類および溶媒の性質によって調整することが可能であることが示されている。
【0200】
比較として、市販の塞栓組成物であるオニキス(OnyxTM)34は、粘度55mPa・sを有する。
【0201】
(実施例5)塞栓組成物の放射線不透過性
実施例2で得られたMIB-PVA 13kDaおよび実施例1で得られたTIB-PVA 13kDaの、NMP中濃度33重量%の溶液を、放射線透過性の1mLのエッペンドルフ(マイクロチューブ;Eppendorf)に注入した。0.5mmアルミニウムウィンドウを用いるコンピュータ断層撮影走査[CTスキャン;ベルギーのスカイスキャン(Skyscan)のスカイスキャン(Skyscan)1076]により、50kVおよび200μAでX線吸収を測定した。180度の断層撮影を行い、再現し(ベルギーのスカイスキャン(Skyscan)のNrecon 1.5.1.4)、画素濃度レベルを塞栓画像の全体にわたって平均化した[(イメージJ(Image−J)プログラム、NIH(米国国立衛生研究所)]。ハウンズフィールド単位(HU)における校正は、水(HU=0)および空気(HU=1000)を用いた。
【0202】
図6に示すように、TMP中の33重量%の実施例1のTIB-PVA 13kDaを含有する組成物の放射線不透過性は、20%の放射線不透過性タンタルを含有する市販の液状塞栓組成物(「オニキス(OnyxTM)34」および「オニキス(OnyxTM)18」)の放射線不透過性に匹敵する。
【0203】
しかしながら、TMP中の33重量%の実施例2のMIB-PVA 13kDaを含有する塞栓組成物は、それ自体のより低いヨウ素含有量から予想されるように、より低い放射線不透過性を示した。
【0204】
注目すべきは、数分以上静置しておくと、オニキス(OnyxTM)中のタンタルが沈降し、かなり不均一な放射線不透過性となった。
【0205】
これらのデータから、TMP中の55重量%のポリ(ビニルアルコール)の4−モノヨードベンジルエーテルを含有する上記組成物は、上記オニキス(OnyxTM)組成物に匹敵する放射線不透過性を有するものと予想される。
【0206】
(実施例6)モデル動脈瘤塞栓術
本発明の2種の注射可能な塞栓組成物と市販の「オニキス(OnyxTM)34」組成物を、ガラス管に動脈瘤モデルを充填する能力に関して試験した。
商業組成動脈瘤モデルを記入する能力でテストされました。ガラス管に貼り付けた直径10mmの球体をモデルとして使用した。上記モデルを、ロータリーポンプを用いて血流を模擬する流速30cm/秒下での生理食塩水で洗い流した。上記注射可能な塞栓組成物を、22G針を用いて、上記動脈瘤モデルに注入した。
【0207】
図7aは、実施例1で得られたTMP中の33重量%のTIB-PVA 13kDaを含有する本発明の注射可能な塞栓組成物(A)を用いた動脈瘤モデルの塞栓を示す。
【0208】
図7bは、実施例2で得られたTMP中の33重量%のMIB-PVA 13kDaを含有する本発明の注射可能な塞栓組成物(B)を用いた動脈瘤モデルの塞栓を示す。
【0209】
図7cは、市販の「オニキス(OnyxTM)34」塞栓組成物(C)を用いた動脈瘤モデルの塞栓を示す。
【0210】
これらの図7a、7bおよび7cは、市販の「オニキス(OnyxTM)34」注射可能な塞栓組成物(C)に匹敵する方法で、本質的に放射線不透過性の注射可能な塞栓組成物(A、B)の、緻密な塊で上記球体を完全に充填する能力を明確に示している。
【0211】
すべての注射可能な塞栓組成物A、BおよびCに対して、凝集塊がの流動下で3分以内に形成された。
【0212】
(実施例7)PVA 13kDaからの2,3,5-トリ-ヨードベンジルエーテル-PVA(TIB−PVA 13kDa)の合成
447mgのPVA 13kDa(9ミリモル)を、窒素ガス流下で30mLの乾燥NMP(PVA濃度:0.3M)中に溶解した。上記反応混合物を130℃で5分間撹拌し、次いで上記温度を50℃に下げた。727mgの粉末にした乾燥NaOH(18ミリモル、2当量)を加え、上記混合物を10分間撹拌した。次いで、5gの2,3,5‐トリヨードベンジルブロミド(9ミリモル、1当量)を加えた。30分後、上記混合物を室温まで冷却し、撹拌しながら冷水30mLを加えた。析出した固形沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄した。従来の精製工程を行った後、26%の残留NMPを含む800mgのTIB-PVA 13kDaを得た(208mgのNMPおよび592mgのTIB-PVA 13kDaで表される)。
H−NMR(DMSO−d6):1.35−1.76ppm(m,3.74au,CH PVA鎖(2(x+y)),1.9ppm(q,4.65au,CH),2.1ppm(t,3.82au,CH),2.6ppm(s, 5.63au,CH、3.6−4.0ppm(m,1.79au,CH PVA鎖(x+y))、4.1−4.6ppm(m,2.71au,CH ベンジルおよび残留OH (2x+y)),7.6ppm(s,1.04 au,H 芳香族(x))、8.06ppm(s,1.0 au,H芳香族(x))
残留NMP
実施例1の方法に従ってNMR線から計算したDSは53%であった。
【0213】
(実施例8)PVA 47kDaからの2,3,5‐トリ‐ヨードベンジルエーテル‐PVA(TIB‐PVA 47kDa)の合成
PVA 47kDaで2,3,5‐トリヨードベンジルブロミドをグラフト化するために、実施例7と同様の合成方法を用いた。従来の精製工程を行った後、残留NMPを含むTIB-PVA 47kDaを得た。
H−NMR(DMSO−d6):1.35−1.76ppm(m,3.42 au,CH PVA鎖(2(x+y)),2.1ppm(t,3.07 au,CH,3.6−4.0ppm(m,1.81 au,CH PVA鎖(x+y)),4.1−4.6ppm(m,2.72 au,CH ベンジルおよび残留OH (2x+y)),7.59ppm(s,1.0 au,H芳香族(x)),8.04ppm(s,1.0 au,H芳香族(x))
残留NMP
実施例1の方法に従ってNMR線から計算したDSは58%であった。
【0214】
(実施例9)PVA 61kDaからの2,3,5‐トリ‐ヨードベンジルエーテル‐PVA(TIB‐PVA 61kDa)の合成
PVA 61kDaで2,3,5‐トリヨードベンジルブロミドをグラフト化するために、実施例7と同様の合成方法を用いた。従来の精製工程を行った後、残留NMPを含むTIB-PVA 61kDaを得た。
H−NMR(DMSO−d6):1.35−1.76ppm(m,4.33 au,CH PVA鎖(2(x+y)),2.1ppm(t,6.36 au,CH,3.6−4.0ppm(m,2.23 au, CH PVA鎖 (x+y)),4.1−4.6ppm(m,2.97 au,CH ベンジルおよび残留OH (2x+y)),7.59ppm(s,1.0 au,H 芳香族(x)),8.05ppm(s,1.0 au,H 芳香族(x))
残留NMP
実施例1の方法に従ってNMR線から計算したDSは46%であった。
【0215】
(実施例10)PVA 13kDaからの4‐モノ‐ヨードベンジルエーテル‐PVA(MIB‐PVA 13kDa)の合成
825mgのPVA 13kDaを、窒素ガス流下130℃で55mLの乾燥NMP中に溶解した。次いで上記温度を50℃に下げ、5gの4−ヨードベンジルブロミド(18ミリモル)を加えた。10分後、1.35gの乾燥水酸化ナトリウムNaOHを加えた。反応5時間後、冷水を加え、ペースト材料が析出した。上記ペーストは粘着性が高くて濾過できなかった。上記材料はフラスコ壁に付着していたので、水を容易に除去した。水を流出させた後、ペースト残留物をメタノールで洗浄し、乾燥した。従来の精製工程を行った後、残留NMPを含むMIB-PVA 13kDaを得た。
H−NMR(DMSO−d6):1.35−1.76ppm(m,2.9 au, CH PVA鎖(2(x+y)),1.9ppm(q,1.02 au,CH,2.1ppm(t,1 au,CH,2.7ppm(s,1.5 au, CH,3.6−3.79ppm(m,1.6 au,CH PVA鎖(x+y)),4.38−4.48ppm(m,2.6 au,CH ベンジルおよび残留OH(2x+y)),7.03ppm(s,2.0 au,H 芳香族(2x)),7.55ppm(s,2.0 au,H 芳香族(2x))
残留NMP
実施例2の方法に従ってNMR線から計算したDSは69%であった。
【0216】
(実施例11)PVA 47kDaからの4‐モノ‐ヨードベンジルエーテル‐PVA(MIB‐PVA 47kDa)の合成
PVA 47kDaで4‐モノヨードベンジルブロミドをグラフト化するために、実施例10と同様の合成方法を用いた。従来の精製工程を行った後、残留NMPを含むMIB-PVA 47kDaを得た。
H−NMR(DMSO−d6):1.35−1.76ppm(m,4.1 au,CH PVA鎖(2(x+y)),1.9ppm(q,0.9 au,CH,2.1ppm(t,0.9 au,CH,2.7ppm(s,1.3 au,CH,3.3ppm(t,0.98 au,CH,3.6−3.79ppm(m,1.9 au,CH PVA鎖(x+y)),4.38−4.48ppm(m,2.9 au,CH ベンジルおよび残留OH(2x+y)),7.03ppm(s,2.0 au,H 芳香族(2x)),7.55ppm(s,2.0 au,H 芳香族(2x))
残留NMP
実施例2の方法に従ってNMR線から計算したDSは49%であった。
【0217】
(実施例12)PVA 61kDaからの4‐モノ‐ヨードベンジルエーテル‐PVA(MIB‐PVA 61kDa)の合成
PVA 61kDaで4‐モノヨードベンジルブロミドをグラフト化するために、実施例10と同様の合成方法を用いた。従来の精製工程を行った後、残留NMPを含むMIB-PVA 61kDaを得た。
H−NMR(DMSO−d6):1.35−1.76ppm(m,3.9 au,CH PVA鎖(2(x+y)),1.9ppm(q,2.4 au,CH,2.1ppm(t,2.2 au,CH,2.7ppm(s,3.3 au,CH,3.6−3.79ppm(m,1.4 au,CH PVA鎖(x+y)),4.38−4.48ppm(m,2.7 au,CH ベンジルおよび残留OH(2x+y)),7.00ppm(s,1.9 au,H 芳香族(2x)),7.54ppm(s,2.0 au,H 芳香族(2x))
残留NMP
実施例2の方法に従ってNMR線から計算したDSは51%であった。
【0218】
(実施例13)混合グラフト化単位(4‐モノヨードベンジルエーテル)(2,3,5‐トリ‐ヨードベンジルエーテル)‐PVA 47kDaを有するポリマー(MTIB‐PVA 47kDa)を調製するための4‐モノヨードベンジルブロミドおよび2,3,5‐トリヨードベンジルブロミドのPVA 47kDaへのグラフト化
火炎乾燥した3口フラスコ中でN雰囲気下で合成を行った。ポリ(ビニルアルコール)(MW=47000、80ミリモルのモノマー単位、3.52g)を、上記反応フラスコ中に入れ、次いで、N真空パージを行った。無水NMP(280mL)を、密封されたボトルから、カニューレを使用して反応フラスコに移動させた。上記ポリマーのすべてを溶解するために、上記混合物を130℃で30分間撹拌した。続いて、上記混合物を冷却し、50℃で撹拌した。ペレット微粉末に粉砕したばかりのNaOH(2当量、160ミリモル、6.4g)を、一気に加えた。上記混合物を50℃で30分間撹拌し、その結果として、黄色から褐色への色の変化が生じた。ビーカー中でスパチュラを用いて2つの固形物を混合することによって得られた、4‐モノヨードベンジルブロミド(0.5当量、40ミリモル、11.9g)および2,3,5‐トリヨードベンジルブロミド(0.5当量、40ミリモル、22.0g)の混合物を粉末として一気に加えた。この結果として、褐色から黄色に戻る急速な色の変化が生じた。上記混合物を1時間撹拌した。室温まで冷却後、十分撹拌した脱イオン水(2.8L)に上記溶液を滴下して加えることによって、上記ポリマーを沈殿させ、結果として、白色の固形フレークが分離した。上記混合物を、次いで、P1ガラスフィルターによって濾過し、上記白色の未処理材料を、別の脱イオン水500mL、次いで500mLのアセトンで2回洗浄した。上記未処理の生成物を真空下で一晩乾燥し、THF(200mL)中に再溶解した。上記ポリマーを、次いで、非溶媒としてのトルエンを用いる沈殿によって精製した。上記THF溶液を滴下して十分撹拌したトルエン(2L)に移動して、P4ガラスフィルターで濾過した乳白色混合物を得た。上記白色固形材料を、次いで、500mLのアセトンで洗浄し、100℃で真空下(〜10−2ミリバール)で一晩乾燥し、淡褐色固形材料としての生成物11.5gを得た。
【0219】
上記DSは、図8に示す少量の水を含むDMSO−d6により測定されたH−NMRスペクトルから計算されます。シグナルの最大値の化学シフトを有する以下の広範なシグナルが同定される。

【0220】
MIBとTIBの置換度(DS)はそれぞれ、以下のDSMIBとDSTIBとして計算される。
DSMIB=S/S
DSTIB=2S/S
全体的な置換度(DS)は、DS=DSMIB+DSTIBである。
NMRデータから計算されるDSは、DSMIB=0.3(30%)およびDSTIB=0.3(30%)である。%I(ヨウ素含有量)は、以下の式:
【数2】


(式中、
:ヨードベンジル単位#1の芳香環のヨウ素原子数
:ヨードベンジル単位#2の芳香環のヨウ素原子数
grafted−1:ヨードベンジル単位#1のモル質量
grafted−2:ヨードベンジル単位#2のモル質量
p:ヨードベンジル単位#1のモルフラクション;p=DS/(DS+DS
である)
によって決定される。
【0221】
MTIB‐PVA 47kDaのNMR線から計算したDSは60%であった。MTIB‐PVA 47kDaのDSから計算したヨウ素含有量(%I)は62%であった。
【0222】
(実施例14)ハイドロゲルのモデルを使用する本発明の種々の放射線不透過性ポリマーまたはポリマー配合物のブレンドの塞栓能力
4‐モノ‐ヨードベンジル‐PVA(MIB)および2,3,5‐トリ‐ヨードベンジル‐PVA(TIB)の溶液をベースとする本発明の塞栓配合物を、種々のモル質量のPVA(13kDa PVA、47kDa PVA、61kDa PVAおよび125kDa PVAと略記される13,000〜23,000、47,000、61,000および125,000g/モル)から合成した。
【0223】
上記溶液は、(他に表示しない限り)各ポリマーをNMP中に最終濃度33重量%で溶解することによって調製した。
【0224】
更に、種々の比(重量%単位のMIB−PVA:TIB−PVAで、25:75、40:60、50:50、60:40、75:25)のMIB−PVA 47kDaおよびTIB−PVA 47kDaの混合物も評価した。
【0225】
この実施例に用いた本発明の上記ヨードベンジルエーテル‐PVAの置換度(DS)は、MIB−PVA 47kDaに対して53%、TIB−PVA 47kDaに対して58%、MIB−PVA 61kDaに対して67%、TIB−PVA 61kDaに対して58%およびTIB−PVA 125kDaに対して61%であった。
【0226】
溶解を促進するために90℃での加熱を用いた。液状塞栓配合物をポリビニルアルコール製ハイドロゲルのモデルにおいて試験した(図9aおよび9b参照)。ヒドロゲルの直径3mmの穴に、ポンプを使用して、毛細血管の血流を模擬する生理食塩水流れ(10mL/分)を供給した。カテーテルを挿入し、分流器によって塞栓による圧力上昇を制御した。
【0227】
各塞栓配合物の約1mLの注入によって、結果として毛細血管の閉塞となる円柱状ポリマープラグを形成することができた。
【0228】
図9aおよび9bには、NMPでの濃度30%および35%でのTIB−PVA 47kDaを含有する本発明の配合物を用いて得られる典型的なプラグを示す。
【0229】
このような特定の調節において、最も高いポリマー濃度によって、わずかに良好な塞栓能力、そして改善された放射線不透過性を示した。
【0230】
逆流した場合、一般的に1〜3分間、注入を停止することによって、遠位の塞栓を続けることができる。
【0231】
カテーテルは一般的に容易に引き出すことができ、本発明の上記MIB−PVAおよびTIB−PVAはカテーテルに対してほとんど粘着性を示さない。
【0232】
より低い溶液粘度を示す低モル質量ポリマーが微小血管構造の塞栓のためには好ましいが、同様にして、TIB−PVA 47kDa、TIB−PVA 61kDaおよびTIB−PVA 125kDaによって、ハイドロゲル毛細血管を塞栓することができた。上記TIB−PVAより遅い沈殿を示すが、MIB−PVA 47kDaおよびMIB−PVA 61kDaによって、同様にハイドロゲル毛細血管モデルを塞栓することができた。
【0233】
種々の比のMIB−PVAおよびTIB−PVAの混合物はまた、それらの沈殿に続いて、上記毛細血管を完全に閉塞することもできた。
【0234】
TIB−PVAの含有量の増加と共に、そしてより硬いがより脆い沈殿成形物において、ますます、より速い沈殿が観察された。
【0235】
これらの結果によって、ポリマーのモル質量、濃度およびMIB−PVA/TIB−PVAの比を適合させることによって特性を調整する、MIB−PVAおよびTIB−PVAを用いることによって、同系の配合物を得ることができることを示す。
【0236】
(実施例15)
混合モノ‐ヨードベンジル基およびトリ‐ヨードベンジル基でグラフト化したPVAポリマーの塞栓能力
MIB:TIBの比が38:62重量%に相当する、合成用の等モル比の4‐モノ‐ヨードベンジルブロミドおよび2,3,5‐トリヨードベンジルブロミドを用いて、実施例13からMTIB−PVA 47kDaを得た。PVA 47kDa出発物質は、DS=60%に置換することができた。上記MTIB−PVA 47kDaをNMP中に最終濃度33重量%で溶解することによって、液状塞栓配合物を作製した。溶解を促進するために、90℃での加熱を用いた。上記液状配合物を、実施例14に示したように、ポリビニルアルコール製ハイドロゲルのモデルにおいて試験した。約0.1mLの注入によって、上記NMP中のポリマー溶液は、ハイドロゲル毛細血管の管腔を塞栓することができた。閉塞および流れの阻止を引き起こす、ポリマープラグを形成することができた。上記カテーテルは容易に引き出すことができた。これらの結果により、ポリマーのモル質量、濃度並びに4‐モノ‐ヨードベンジルブロミドおよび2,3,5‐トリヨードベンジルブロミドのモル比を適合させることによって特性を調整する、MTIB−PVAポリマーを用いることによって、同系の配合物を得ることができることが指摘されている。
【0237】
(実施例16)局所的ハイパーサーミアを制御するためのSPION含有シリカビーズを加えた塞栓組成物の生体内での形成
DS56%を有するMIB−PVA 47kDaの溶液を、33重量%でNMP中に溶解した。超常磁性酸化鉄ナノ粒子[デグサマグシリカ(Degussa MagSilica)50−80]を充填したシリカビーズをこの溶液に濃度20w/v%で加えた。得られた粘性液体を21G針によって注入し、半固体の平滑な褐色ポリマーボールを3分以内に形成した(図11aおよび11b参照)。直径3mmの真っ直ぐな管のハイドロゲルモデル(実施例14と同様)中への注入により、この配合物の、本来の血管の塞栓を模擬する10mL/分の流れを止める能力を説明した。
【0238】
上記ペーストを直径6mmの小さな筒内に沈殿させた。このインプラントを室温で断熱熱量計に挿入し、9mT、141kHz(Huttinger TIG−2.5/300)の交流磁場を5分間与えた。光学プローブによって記録された温度は、図12に示すように、DT=+16.6℃の温度上昇の平坦部に達するまでの迅速な上昇を示した。傾き16℃/分を有する上記迅速な温度上昇は、酸化鉄の5.1W/gの電力消費に相当する。このような温度上昇は、生体内で周囲組織の高温度療法へと導くものと予想される。
【0239】
(実施例17)沈殿した放射線不透過性ポリマー塊からの抗癌剤の充填および放出
塩酸ドキソルビシンをN−メチルピロリドン(NMP、25mg/mL)中に溶解した。DS58%を有するTIB−PVA 47kDaを最終濃度33重量%で加えた。上記溶液を円筒形アルジネート成形型に注入して、直径6mmのプラグ(それぞれ約0.3g)を作製した。上記ドキソルビシン充填試料を、撹拌下で37℃で100mLの生理食塩水中で静置した。上記上澄液の波長479nmでの光吸収の測定によってドキソルビシンの量を測定した。図13には、3日間にわたる抗癌剤の徐放を示している。
【0240】
(実施例18)放射線不透過性ポリマー溶液を用いる医療用具の被覆
放射線不透過性コーティングを、浸漬および溶媒の蒸発によって、カテーテル先端上に被覆した。簡単に言えば、DS58%を有するTIB−PVA 47kDaを最終濃度33重量%で40℃でNMP中に溶解した。均一なコーティングを得るためにカテーテルを軸回転させながら、カテーテル[コーディス・エンボイ(Cordis Envoy GC)]の先端を上記放射線不透過性ポリマー溶液中に5秒間浸漬し、引き上げ、室温で乾燥した。TIB−PVA 47kDaで被覆した先端を、図14aおよび図14bに示した。放射線不透過性ポリマーとカテーテルは、溶媒の蒸発によって、共に結合された。同様の放射線不透過性コーティングを得るため、DMSOなどの他の溶媒を評価した。
【0241】
(実施例19)
ナノ沈殿法による本発明の放射線不透過性ヨード‐ベンジルエーテルからのナノ粒子の作製
以下のように、放射線不透過性ナノ粒子をナノ沈殿法によって作製した。100mgのDS49%を有するMIB−PVA 47kDaを室温でTHF(20mL)中に溶解して、拡散相を形成した。次いで、注射器によって上記拡散相を、0.25%の界面活性剤「プルロニック(PluronicTM)F68」を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS、40mL)から成る分散相に撹拌しながら加えた。最終的に均一な乳白色分散液とするために、有機相としての乳白色に変化した上記水性相を注入した。減圧下でTHFを蒸発させた。マルバーン・ナノ(Malvern Nano)ZS装置を用いて測定した、ナノ粒子の平均直径は、単一モード分散で170nmであった。
【0242】
同様の方法を用いて、DS53%を有するTIB−PVA 47kDaを有する粒子を作製した。
【0243】
以下の表には、上記拡散相中のTIB−PVA 13kDaの濃度またはPBS中のプルロニック(PluronicTM)F68の濃度の関数としての、上記TIB−PVA 13kDaナノ粒子直径を示されており、更に、ナノ粒子直径は、上記拡散相中のTIB−PVA 13kDaの濃度またはPBS中のプルロニック(PluronicTM)F68の濃度を変化させることによって調整することができることも説明されている。直径範囲50〜90nmのより小さな粒子は、PBSの代わりに純水を使用することによって得ることができた。
【表1】

【0244】
(実施例20)
放射線不透過性ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA(エーテル)ナノ粒子と放射線不透過性ヨード‐ベンゾエート‐PVA(エステル)ナノ粒子との分解の比較
1.MIB−PVA 47kDa系ナノ粒子の分解
予想される分解生成物、4−モノ−ヨード安息香酸の吸光度によって、ポリマーの分解をモニターした。ポリマーナノ粒子は、その高い表面積のために使用された。エーテルとの比較のため、放射線不透過性ポリマーのエステルを、製造例5および6において調製した(D. Mawad、H. Mouaziz、 A. Penciu、 H. Me'hier、B. Fenet、 H. Fessi, Y.Chevalierの「局所的薬剤送達の生体内での制御用の放射線不透過性ヨウ素化ナノ粒子の作製(Elaboration of radiopaque iodinated nanoparticles for in situ control of local drug delivery)」、バイオマテリアルズ(Biomaterials)2009年、30、5667-5674頁)。実施例11で作製されたMIB−PVA 47kDaおよび製造例6で作製されたMIB/エステル‐PVA 13kDa(それぞれDS=49%および40%)のナノ粒子を、実施例19に記載されているように、PBS中のナノ沈殿法によって製造し、両者ともに平均直径約170nmを有した。
【0245】
放出された分解生成物を研究する、ナノ粒子の懸濁液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に37℃で保存した。所定時間において、上記ナノ粒子を遠心分離によって回収し、遠心分離した懸濁液の上澄液を、4−モノ−ヨード安息香酸の波長250nmでの紫外線吸光度−吸光度最大値によって分析した。図15には、上記吸光度の時間発展を示しており、分解生成物の放出を反映している。2ヶ月後、上記エーテル系ナノ粒子に関して、測定可能な放出は観察されなかったのに対し、エステル系ナノ粒子に関して、エステル系ポリマーの急な分解を示す、明確な増加が急に観察された。これらの結果は、上記エステル系ナノ粒子はそうでないのに対して、上記エーテル系ナノ粒子は1ヶ月後であってもPBS中で安定であることを示している。
【0246】
2.TIB−PVA 13kDa系ナノ粒子の分解
実施例7で得られたTIB−PVA 13kDaおよび製造例5で得られたTIB/エステル−PVA 13kDa(それぞれDS=53%および34%)を用いて、同様の方法によってナノ粒子分解試験を繰り返した。両方のポリマーに対して、直径約170nmのナノ粒子をPBS中で作製した。上記吸光度波長を、予想される分解生成物、2,3,5‐トリ‐ヨード安息香酸のピーク吸収に対応する、229nmに固定した。図16に記載されているように、上記エステル上澄液の吸光度は、1ヶ月後、上記ヨウ素化基の8%の放出に相当する、0.16まで徐々に増加した。上記エーテルポリマーに関しては、測定可能な放出は観察されなかった。これらの結果は、上記エステル系ナノ粒子はそうでないのに対して、上記エーテル系ナノ粒子は1ヶ月後であってもPBS中で安定であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有する共有結合グラフト化したヨウ素化ベンジル基を有するポリ(ビニルアルコール)から成ることを特徴とする放射線不透過性、非生分解性、水不溶性である、ポリ(ビニルアルコール)のヨウ素化ベンジルエーテル(ヨード‐ベンジルエーテル‐PVA)。
【請求項2】
置換度(DS)少なくとも0.2を有する請求項1記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVA。
【請求項3】
ヨウ素含有量少なくとも40重量%を有する請求項1または2記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVA。
【請求項4】
前記グラフト化したヨウ素化ベンジル基のすべてが、同一のヨウ素化ベンジル基である、請求項1〜3のいずれか1項記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVA。
【請求項5】
各ベンジル基が、4位に1つのヨウ素原子を含有する、請求項4記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVA。
【請求項6】
各ベンジル基が、2位、3位および5位に3つのヨウ素原子を含有する、請求項4記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVA。
【請求項7】
前記グラフト化したヨウ素化ベンジル基が、異なるヨウ素原子数を有する2以上の異なるヨウ素化ベンジル基である、請求項1〜3のいずれか1項記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVA。
【請求項8】
出発材料のPVAとしての0〜100%加水分解のポリ(ビニルアルコール)を、ベンジル基1つ当たりヨウ素原子1〜4個を含有するヨウ素化ベンジル誘導体と、無水条件で塩基存在下、極性非プロトン溶媒中で反応させる工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの製造方法。
【請求項9】
出発材料のPVAとしての75〜100%加水分解のポリ(ビニルアルコール)を、前記ヨウ素化ベンジル誘導体と、反応させる工程を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記出発材料のPVAが、平均モル質量(M)5,000〜200,000ダルトンを有する、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記ヨウ素化ベンジル誘導体が、異なるヨウ素原子数を有する2以上の異なるヨウ素化ベンジル誘導体の混合物である、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記ヨウ素化ベンジル誘導体が、4‐ヨードベンジルブロミドおよび2,3,5‐トリヨードベンジルブロミド、またはそれらの混合物から成る群から選択される、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記極性非プロトン溶媒がN‐メチルピロリドン(NMP)であり、前記塩基が水酸化ナトリウムである、請求項8〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
注射可能な塞栓組成物中の塞栓剤としての、請求項1〜7のいずれか1項記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの使用方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1項記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAおよび該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを可溶化する水混和性の、生体適合性溶媒を含む注射可能な塞栓組成物であって、該組成物中の該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度が5〜65重量%の範囲内から選択され、該組成物が、該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの沈降によって体液と接触することによって凝集塊を形成することができる、注射可能な塞栓組成物。
【請求項16】
前記組成物中の前記ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度が20〜50重量%の範囲内から選択される、請求項15記載の注射可能な塞栓組成物。
【請求項17】
前記溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N‐メチルピロリドン(NMP)およびグリコフロールから成る群から選択される、請求項15または16記載の注射可能な塞栓組成物。
【請求項18】
請求項4〜6のいずれか1項記載の2以上の異なるヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを含有する、請求項15〜17のいずれか1項記載の注射可能な塞栓組成物。
【請求項19】
更に薬剤または生物製剤を含有する、請求項15〜18のいずれか1項記載の注射可能な塞栓組成物。
【請求項20】
更に超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)を含有する、請求項15〜19のいずれか1項記載の注射可能な塞栓組成物。
【請求項21】
生体内で血管中に凝集塊を形成するための、請求項15〜19のいずれか1項記載の注射可能な塞栓組成物の使用方法。
【請求項22】
生体内で腫瘍中に凝集塊を形成するための、請求項15〜20のいずれか1項記載の注射可能な塞栓組成物の使用方法。
【請求項23】
ハイパーサーミアによって前記腫瘍を治療するために、生体内で温熱療法用の固体または半固体のインプラントを腫瘍内に形成するための、請求項20記載の注射可能な塞栓組成物の使用方法。
【請求項24】
尿失禁を治療するため、生体内で温熱療法用の半固体インプラントを形成するための、請求項20記載の注射可能な塞栓組成物の使用方法。
【請求項25】
請求項1〜7のいずれか1項記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAおよび該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAを可溶化する溶媒を含む医療用具上にコーティングを形成するためのコーティング組成物であって、該組成物中の該ヨード‐ベンジルエーテル‐PVAの濃度が5〜65重量%の範囲内から選択され、医療用具上への被覆および溶媒蒸発の後、該組成物が放射線不透過性コーティングを形成することができる、コーティング組成物。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれか1項記載のヨード‐ベンジルエーテル‐PVAから形成されたナノ粒子およびミクロ粒子から成る群から選択される放射線不透過性粒子。
【請求項27】
更に薬剤または生物製剤を含有する、請求項26記載の放射線不透過性粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−521087(P2013−521087A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556504(P2012−556504)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053536
【国際公開番号】WO2011/110589
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(500034033)ユニヴェルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ (2)
【出願人】(592236245)サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィク (8)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LARECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(512208408)アンティア・セラピューティクス・ソシエテ・アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】ANTIA THERAPEUTICS S.A.
【Fターム(参考)】