説明

放射線撮影装置

【課題】放射線源を支持する支柱の撓みにより生じるFPDと照射範囲との位置ズレを取り除くことにより、診断に適した画像を取得しつつ、被検体の無用な被曝を避けることができる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、X線管3を支持する支柱5の撓みにより生じるFPD4の検出面4aとX線の照射範囲との位置のズレを確実に取り除くことが可能なX線撮影装置1を提供できる。すなわち、本発明によれば、支柱5の傾斜に応じてFPD4の検出面4aと照射範囲との位置関係を天板2の長手方向について調整するようになっている。この様にすると、FPD4の検出面4aとX線の照射範囲との位置のズレが確実に取り除かれ、診断に適した画像が取得できる。また、本発明によれば、被検体Mの無用な被曝を避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を照射して被検体のイメージングを行う放射線撮影装置に係り、特に放射線の照射範囲を制限するコリメータを備えた放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線を照射して被検体のイメージングを行う放射線撮影装置が配備されている。このような放射線撮影装置は、放射線の照射範囲を制限するコリメータを備えている。
【0003】
図15は、従来の放射線撮影装置の構成を示している。従来の放射線撮影装置51は、図15に示すように被検体を載置する天板52と、天板52の上方に設けられた放射線を照射する放射線源53と、天板52の下方に設けられた放射線を検出するFPD54とを備えている。放射線源53は、天板52と直交する方向に伸びた支柱55により支持されている。
【0004】
放射線源53には、放射線の照射範囲を制限できるコリメータ53aが設けられている。コリメータ53aの開度を調節することにより、放射線の照射範囲を狭めたり広げたりすることができる。図16の左側は、コリメータ53aを操作することにより放射線がFPD54の全面に入射するようにしたときの図である。このときFPD54の検出面と放射線の照射範囲Rが一致している。図16においては、説明の便宜上、照射範囲RがFPD54の検出面よりもやや広く描かれている。
【0005】
ところで、天板52は、天板52の短手方向に平行な軸を中心軸として傾斜することができる。放射線源53,コリメータ53a,FPD54,支柱55は、この天板52の傾斜に追従して傾斜する。このように天板52の傾斜に伴って支柱55が傾斜されると、放射線源53の荷重により支柱55は撓んでしまう。これが、診断に好適な画像の取得の妨げになる。
【0006】
図16の右側は、天板52を傾斜することにより支柱55が撓んだ状態でコリメータ53aを操作して放射線をFPD54の全面に入射させようとしたときの図である。すなわち、支柱55が撓むと、FPD54の検出面と放射線の照射範囲Rとが一致しなくなる。照射範囲RはFPD54に対して回転したようにずれてしまう。
【0007】
従来構成によれば、放射線撮影装置51は、放射線源53からFPD54に向かう方向を中心軸として、放射線源53に対してコリメータ53aを回転させるコリメータ回転機構を備えている。そして、天板52が傾斜された状態で試しの放射線撮影を行う。撮影で得られた画像からFPD54に対する照射範囲Rのズレ角度を算出して、このズレ角度に応じてコリメータ53aを放射線源53に対して回転させるようにしている。この様にすると、放射線の照射範囲RとFPD54の検出面との位置関係を一致させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−82205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の放射線撮影装置51においては、次のような問題点がある。
従来の放射線撮影装置51における調節だけでは放射線の照射範囲RとFPD54の検出面との位置関係を充分に一致させることができない。
【0010】
天板52を傾斜させると、支柱55の撓みにより放射線の照射範囲RはFPD54の検出面に対して天板52の長手方向にずれる。このズレは従来の放射線源53に対するコリメータ53aの回転では補正することができない。すなわち、従来構成において、天板52を傾斜させた状態で撮影を行うと、図17左側に示すように、照射範囲RがFPD54に対して天板52の長手方向にシフトした状態で撮影が行われてしまう。これを防ぐには、図17右側に示すように照射範囲RをFPD54よりも大きくなるように予め設定しておく必要がある。この様な構成とすると、放射線がFPD54の外側にはみ出して照射されることになるので、検査時における被検体に対する無用な被曝が発生してしまう。
【0011】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、放射線源を支持する支柱の撓みにより生じるFPDの検出面と放射線の照射範囲との位置のズレを確実に取り除くことにより、診断に適した画像が取得できるとともに、被検体の無用な被曝を避けることができる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
本発明に係る放射線撮影装置は、被検体を載置する天板と、放射線を被検体に対して照射する天板の一面側に設けられた放射線源と、放射線源を支持する支柱と、放射線を検出する天板の他面側に設けられた放射線検出手段と、放射線源から照射される放射線をコリメートして、放射線検出手段の放射線を検出する検出面が属する平面上に放射線が到達する範囲である照射範囲を調整するコリメータと、天板を天板の短手方向に平行な軸を中心軸として傾斜させることにより、放射線源、放射線検出手段、支柱およびコリメータをも天板に対する位置関係を保った状態で傾斜させる天板傾斜手段と、天板傾斜手段を制御する天板傾斜制御手段と、天板を傾斜させ支柱が撓んだ状態でコリメートされた放射線が放射線検出手段の一部に照射されることにより放射線検出手段から出力される検出信号を受信して検出面と放射線の照射範囲との位置関係を示す校正用画像を生成する画像生成手段と、天板の傾斜に応じて検出面と照射範囲との位置関係を天板の長手方向について調整する調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]本発明によれば、放射線源を支持する支柱の撓みにより生じる放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との位置のズレを確実に取り除くことが可能な放射線撮影装置を提供することができる。すなわち、本発明によれば、天板の傾斜に応じて放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との位置関係を天板の長手方向について調整するようになっている。この様にすると、支柱が撓んでも放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との位置を正確に一致させることができるので、診断に適した画像が取得できる。また、本発明によれば、放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との位置ズレを考慮して照射範囲に余裕を持たせて大きくする必要がない。これにより、被検体の無用な被曝を避けることができる。
【0014】
また、放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との位置ズレを天板の長手方向に調整する手段は、新たな機構を追加せずとも、既存の移動機構を利用するだけでよい。
【0015】
また、上述の放射線撮影装置において、天板を傾斜させ支柱が撓んだ状態でコリメートされた放射線が放射線検出手段の一部に照射されることにより放射線検出手段から出力される検出信号を受信して検出面と放射線の照射範囲との位置関係を示す校正用画像を生成する画像生成手段を備え、調整手段は校正用画像を用いて動作すればより望ましい。
【0016】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。すなわち、本発明の放射線撮影装置の画像生成手段は、支柱が撓んだ状態で放射線が放射線検出手段の一部に照射されることにより検出面と放射線の照射範囲との位置関係を示す校正用画像を生成する。この校正用画像は、放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲とのズレを実際に写し込んだものとなっている。この校正用画像を用いて検出面と照射範囲とのズレを天板の長手方向について調整するようにすれば、放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との位置のズレが確実に取り除かれる。
【0017】
また、上述の放射線撮影装置において、調整手段は、放射線検出手段を支柱とは独立に天板の長手方向に移動させる検出器移動手段であり、検出器移動手段を制御する検出器移動制御手段を備えればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。天板の長手方向に検出手段を支柱とは独立に移動させる検出器移動手段は、特定のアプリケーションを実現する目的で放射線撮影装置に搭載されることが多い。そこで本発明の放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との天板長手方向のズレ調整を検出器移動手段により実現するようにすれば、従来構成の放射線撮影装置に新たな移動機構を設けなくとも本発明の効果の達成が可能である。
【0019】
また、上述の放射線撮影装置において、調整手段は、支柱を放射線検出手段とは独立に天板の長手方向に移動させる支柱移動手段であり、支柱移動手段を制御する支柱移動制御手段を備えればより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。天板の長手方向に支柱を放射線検出手段とは独立に移動させる支柱移動手段は、特定のアプリケーションを実現する目的で放射線撮影装置に搭載されることが多い。そこで本発明の放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との天板長手方向のズレ調整を支柱移動手段により実現するようにすれば、従来構成の放射線撮影装置に新たな移動機構を設けなくとも本発明の効果の達成が可能である。
【0021】
また、上述の放射線撮影装置において、支柱を天板の短手方向に平行な軸を中心軸として天板に対し傾斜させる支柱傾斜手段を備えればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。すなわち、本発明は、支柱を天板に対し傾斜させる構成に適用することができる。
【0023】
また、上述の放射線撮影装置において、調整手段は、天板の短手方向に平行な軸を中心軸として放射線源を天板に対して回転させることにより、コリメータを放射線源に対する位置関係を保った状態で回転させる放射線源回転手段であり、放射線源回転手段を制御する放射線源回転制御手段を備えればより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。天板の短手方向に平行な軸を中心軸として放射線源を回転させる放射線源回転手段は、撮影方法を変更する目的で放射線撮影装置に搭載されることが多い。そこで本発明の放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との天板長手方向のズレ調整を放射線源回転手段により実現するようにすれば、検出器移動手段や支柱移動手段を有していない放射線撮影装置であっても、新たな移動機構を設けることなく本発明の効果の達成が可能である。
【0025】
また、上述の放射線撮影装置において、天板の傾斜角度を変えながら校正用画像を生成することにより生成される検出面・照射範囲間の補正量と天板の傾斜角度とが関連した関連テーブルを記憶する記憶手段を備え、調整手段は、傾斜制御手段により現在の天板の傾斜角度を取得して、記憶手段の関連テーブルを参照することで現在の傾斜角度に対応する補正量を読み出すことにより位置関係を調整すればより望ましい。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。検出面・照射範囲間の補正量と天板の傾斜角度とが関連した関連テーブルに基づいて調整手段が動作するようにすれば、調整手段は補正量を傾斜角度毎に把握することができる。この様にすればより正確な位置ズレの補正が可能である。
【0027】
また、上述の放射線撮影装置において、コリメータを駆動させて開度を変更させるコリメータ駆動手段と、コリメータ駆動手段を制御するコリメータ駆動制御手段とを備え、コリメータ駆動制御手段は、照射範囲の形状が検出面と一致するようにコリメータの開度を制御すればより望ましい。
【0028】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。この様にすれば、検出面と照射範囲との形状が一致するので、被検者の無用な被曝を避けつつ、診断に適した撮影ができる放射線撮影装置が提供できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、放射線源を支持する支柱の撓みにより生じる放射線の照射範囲と放射線検出手段の検出面との位置のズレを確実に取り除くことが可能な放射線撮影装置を提供できる。すなわち、本発明によれば、天板の傾斜に応じて検出面と照射範囲との位置関係を天板の長手方向について調整するようになっている。この様にすると、放射線検出手段の検出面と放射線の照射範囲との位置のズレが確実に取り除かれ、診断に適した画像が取得できる。また、本発明によれば、被検体の無用な被曝を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線撮影装置の支柱の移動と検出器の移動を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係るX線撮影装置の天板の傾斜を説明する模式図である。
【図4】実施例1に係るコリメータを説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る支柱の撓みを説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る検出面と照射範囲を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る検出面と照射範囲とのズレを説明する模式図である。
【図8】実施例1に係る検出面と照射範囲との回転方向ズレの補正を説明する模式図である。
【図9】実施例1に係る検出面と照射範囲との天板長手方向ズレの補正を説明する模式図である。
【図10】実施例1に係る関連テーブルを説明する模式図である。
【図11】実施例1に係る校正用画像を説明する模式図である。
【図12】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャート図である。
【図13】本発明の1変形例に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図14】本発明の1変形例に係るX線撮影装置の支柱の傾斜を説明する模式図である。
【図15】従来構成を説明する模式図である。
【図16】従来構成を説明する模式図である。
【図17】従来構成の問題点を説明する模式図である。
【実施例1】
【0031】
以降、本発明の実施例を説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。また、FPDは、フラット・パネル・ディテクタの略である。
【0032】
<X線撮影装置の全体構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、図1に示すように仰臥位の被検体Mを載置する天板2と、天板2の上側(一面側)に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の下側(他面側)に設けられたX線を検出するFPD4とを備えている。FPD4は、被検体Mの体軸方向Aまたは体側方向Sのいずれかに沿った4つの辺を有する矩形となっている。また、X線管3は、四角錐形状のX線をFPD4に向けて照射する。FPD4は、X線を全面で受光することになる。FPD4のX線を検出する検出面4aには、X線検出素子が体軸方向Aおよび体側方向Sに2次元的に配列されている。支柱5は、天板2の下側(他面側)から天板2の上側(一面側)に向けて伸びており、X線管3を支持している。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当する。
【0033】
支柱移動機構7(図1参照)は、支柱5を天板2に対して天板2の長手方向(体軸方向A)に移動させることにより、図2左側に示すようにX線管3を天板2の長手方向に移動させる目的で設けられている。支柱移動制御部8は、支柱移動機構7を制御する目的で設けられている。X線管3を支柱移動機構7により移動させると、X線管3に付属されたコリメータ3aもこれに追従して移動する。コリメータ3aの具体的構成は後述のものとする。支柱移動機構7は、本発明の支柱移動手段および調整手段に相当し、支柱移動制御部8は、本発明の支柱移動制御手段に相当する。
【0034】
FPD移動機構9(図1参照)は、FPD4を天板2に対して天板2の長手方向(体軸方向A)に移動させる目的で設けられている(図2右側参照)。FPD移動制御部10は、FPD移動機構9を制御する目的で設けられている。FPD移動機構9は、本発明の検出器移動手段および調整手段に相当し、FPD移動制御部10は、本発明の検出器移動制御手段に相当する。
【0035】
天板傾斜機構15(図1参照)は、天板2を天板2の短手方向(体側方向S)に平行な軸を中心軸として回転させる目的で設けられている。天板傾斜制御部16は、天板傾斜機構15を制御する目的で設けられている。天板傾斜機構15は、図3の左側に示すように、被検体Mの頭部が下側となるように天板2を傾斜させることができる。このような天板2の傾斜を逆立位の傾斜と呼ぶ。また、天板傾斜機構15は、図3の右側に示すように、被検体Mの頭部が上側となるように天板2を傾斜させることもできる。このような天板2の傾斜を立位の傾斜と呼ぶ。天板傾斜機構15は、本発明の傾斜手段に相当し、天板傾斜制御部16は、本発明の傾斜制御手段に相当する。
【0036】
図3に示すように、天板傾斜機構15が天板2を傾斜させると、X線管3,FPD4,支柱5およびコリメータ3aが天板2に対する位置関係を保った状態で検査室の床面に対して傾斜される。つまり、天板傾斜機構15は、天板2およびその他の部材3,4,5,3aを一体に傾斜させるものである。これにより、支柱5は、X線管3,コリメータ3aとの位置関係を保った状態で傾斜される。
【0037】
X線管3には、X線の照射範囲を制限するコリメータ3aが設けられている(図1参照)。コリメータ3aは、開度の調節が可能となっている。コリメータ3aは、図4左側に示すように、軸Cを基準として鏡像対称に移動する1対のリーフ3bを有し、同じく軸Cを基準として鏡像対称に移動するもう1対のリーフ3bを備えている。このコリメータ3aは、リーフ3bを移動させることで、FPD4が有する検出面4aの全面にコーン状のX線Bを照射させることもできれば、たとえば、検出面4aの中心部分だけにファン状のX線Bを照射させることもできる。なお、軸Cは、X線Bの中心を示す軸となっている。また、リーフ3bの2対のうち一方は、4角錐形状となっているX線Bの体軸方向Aへの広がりを調整するものであり、もう一方のリーフ3bの対は、X線Bの体側方向Sへの広がりを調整するものである。X線管3を移動させるとコリメータ3aもX線管3に伴って移動する。コリメータ駆動機構17(図1参照)は、リーフ3bを駆動させてコリメータ3aの開度を変更するものである。コリメータ駆動制御部18は、コリメータ駆動機構17を制御する目的で設けられている。コリメータ駆動機構17は、本発明のコリメータ駆動手段に相当し、コリメータ駆動制御部18は、本発明のコリメータ駆動制御手段に相当する。
【0038】
コリメータ3aは、コリメータ3aをX線管3に対して回転させるコリメータ回転機構19を備えている(図1参照)。コリメータ回転制御部20は、コリメータ回転機構19を制御する目的で設けられている。コリメータ回転機構19がコリメータ3aを回転させると、図4右側に示すようにコリメータ3aを構成する各リーフ3bが互いの相対位置を保った状態でX線管3に対して軸Cを中心に回転する。
【0039】
X線管制御部6(図1参照)は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。X線管制御部6の制御によりX線がX線管3から発せられると、X線は、被検体Mを透過してFPD4の検出面4aに入射する。FPD4は入射したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11(図1参照)に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ画像が生成される。生成された画像は、表示部25(図1参照)に送出され、そこで表示される。画像生成部11は、後述の校正用画像P0も生成する。画像生成部11は、本発明の画像生成手段に相当する。
【0040】
画像生成部11は、被検体Mが写り込んでいる画像のみでなく、X線管3とFPD4とのズレを示す校正用画像P0をも生成する。校正用画像P0は、天板2に何も載置しない状態で撮影された画像であり、FPD4の検出面4aとX線の照射範囲との位置関係を示す画像となっている。関連テーブル生成部12(図1参照)は、後述の関連テーブルTを生成する目的で設けられている。
【0041】
操作卓26(図1参照)は、術者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27(図1参照)は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することによりX線管制御部6および各部を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28(図1参照)は、画像処理に用いられるパラメータ等のX線撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。記憶部28は、本発明の記憶手段に相当する。
【0042】
<支柱の撓み>
次に、図5を参照して支柱5の撓みについて説明する。支柱5は、重荷物のX線管3を支持するものなので、剛性が必要となる。しかし、支柱5の剛性をあまりに追求しすぎると、X線撮影装置の製造コストが増加してしまう。したがって、X線撮影装置を構成する際には、支柱5がX線管3の重みによりある程度撓むことを許容するようにしている。図5左側は、X線撮影装置1を被検体Mの体軸方向Aから見たときの図である。支柱5は、図5左側に示すように天板2の短手方向(体側方向S)に伸びた枝部5aを有しており、全体としてL形となっている。そして、枝部5aの先端にX線管3が取り付けられる。
【0043】
天板2を傾斜させると支柱5もこれに追従して傾斜する。すると、支柱5の撓みが激しくなる。図5の中央は、傾斜された支柱5の撓みについて説明している。支柱5は実線で示した撓みのない状態からX線管3の重みによりX線管3が垂れ下がるように曲がって破線で示した状態のように撓む。また、同様に支柱5が有する枝部5aもX線管3の重みにより曲がるように撓む。
【0044】
支柱5を傾斜させた状態では、枝部5aは曲がりだけでなく、捻れも加わった撓みとなる。すなわち、図5右側に示すように、枝部5aは実線で示した撓みのない状態からX線管3の重みにより曲げられかつ捻られて破線で示した状態のように撓む。支柱5を傾斜させていくと、支柱5とその枝部5aの撓み量は、傾斜角度に応じて変化していく。
【0045】
<検出面と照射範囲の位置関係のズレ>
この様な支柱5の撓みによりX線管3の照射範囲RとFPD4の検出面4aとがどのようにずれるかを説明する。図6は、照射範囲Rと検出面4aとのズレを説明するのに用いる仮想平面Fと照射範囲Rとを示している。仮想平面Fは、FDP4の検出面4aが属する平面であり、検出面4aを仮想的に拡張したものである。照射範囲Rは、コリメータ3aにコリメートされたX線が仮想平面F上に到達する範囲を示している。図6においては、検出面4aと照射範囲Rとが、説明の便宜上、互いに全く重なっていないように描いている。しかし、実際のX線撮影においては、X線検出の必要性から少なくとも検出面4aの全面が照射範囲Rに属するようにしなければならない。更に被検体Mの無用な被曝を抑制するには照射範囲Rが狭い方がよいことからすると、理想的には、検出面4aと照射範囲Rとが一致した状態でX線撮影が行われることが望ましい。
【0046】
コリメータ駆動制御部18(図1参照)は、支柱5に撓みのない状態で照射範囲Rが検出面4aと一致するようにコリメータ3aの開度を制御している。したがって、コリメータ駆動制御部18によって、検出面4aと照射範囲Rの形状は一致している。
【0047】
コリメータ3aの開度調節により検出面4aと照射範囲Rの形状を一致させても、天板を傾斜させると支柱5の撓みにより検出面4aに対して照射範囲Rがずれてしまう。図7の左側は、検出面4aと照射範囲Rとの位置関係が理想的な状態を示している。この状態においては、照射範囲Rと検出面4aとが仮想平面F上で一致している。ただし、図7においては、説明の便宜上、照射範囲Rを検出面4aよりも少し大きく描いている。また、図7におけるC4aは、仮想平面F上の検出面4aの中心を意味しており、CRは、仮想平面F上の照射範囲Rの中心を意味している。なお、以降の説明においては、天板2が検査室の床面と平行な無傾斜状態となったときに照射範囲Rと検出面4aとの位置関係が図7左側に示す理想状態となっているものとする。
【0048】
天板2を傾斜させていくと支柱5の傾斜も大きくなり、それに応じて支柱5の撓みが激しくなる。すなわち、支柱5とその枝部5aとが撓み、FPD4に対するX線管3の位置が天板2の長手方向にずれる。すると、照射範囲Rが検出面4aに対して同方向に移動することになる。さらに、X線管3の位置はFPD4に対して長手方向にずれるのみならず、回転もしてしまう。すると、コリメータ3aもX線管3の回転に追従して回転し、照射範囲Rが検出面4aに対して回転することになる。
【0049】
図7の右側は、支柱5の撓みにより照射範囲Rが検出面4aに対してずれた状態を示している。すなわち、照射範囲Rの中心CRが検出面4aの中心C4aに対して天板2の長手方向(体軸方向A)に移動してしまっているとともに、照射範囲Rが検出面4aに対して回転してしまっている。この様な状態で撮影を行うと、検出面4aの一部にX線が入射しない。すると画像生成部11は、FPD4においてX線が照射されていない部分が偽像となる撮影画像を生成してしまう。
【0050】
また、照射範囲Rが検出面4aに対してずれた状態となると、照射範囲Rが検出面4aから部分的にはみ出てしまう。このはみ出しが被検体Mの無用なX線被曝を招来してしまう。なお、この検出面4aに対する照射範囲Rの長手方向ズレと回転方向ズレの大きさは、天板2の傾斜により変動する。このような照射範囲Rの検出面4aに対する長手方向ズレと回転方向ズレは、軸Cに対してリーフ3bを単に鏡像対称に進退移動させることにより実現されるコリメータ3aの開度調節によっては解消することができない。
【0051】
<検出面と照射範囲の位置関係の調整>
本発明のX線撮影装置は、この様な事情があるので、撮影に先立って検出面4aと照射範囲Rとの位置関係を調整するようになっている。すなわち、コリメータ回転制御部20は、コリメータ回転機構19を制御して、コリメータ3aをX線管3に対して回転させることにより、検出面4aに対する照射範囲Rの回転ズレを調整する。この調整の様子は、図8に示されている。コリメータ回転制御部20がコリメータ3aをある補正角度だけ回転させると、コリメータ3aは、図中の点線矢印が示すように検出面4aに対して回転する。この回転は、被検体MのX線撮影の前に行われる。X線撮影前にコリメータ回転制御部20が補正角度を認識できる理由は後述とする。
【0052】
コリメータ回転制御部20の回転調整が終了すると、コリメータ回転制御部20は、調整が終了した旨をFPD移動制御部10に送出する。そして、FPD移動制御部10は、FPD移動機構9を制御して、FPD4をX線管3に対して天板2の長手方向(体軸方向A)に対して移動させることにより、検出面4aの中心の位置を照射範囲Rの中心の位置に一致させる。このようにして、検出面4aと照射範囲Rとの位置関係が調整されるのである。
【0053】
照射範囲Rに対する検出面4aの位置ズレ調整の様子は、図9に示されている。すなわち、FPD移動機構9がFPD4を移動させると、検出面4aは、図中の点線矢印が示すように照射範囲Rに対して天板2の長手方向(体軸方向A)にある補正距離だけ移動する。この移動は、被検体MのX線撮影の前に行われる。X線撮影前にFPD移動制御部10が補正距離を認識できる理由は後述とする。
【0054】
上述の例では、照射範囲Rを検出面4aに対して回転させた後に検出面4aを移動させるようにしているが、これに代えて検出面4aを移動させた後に照射範囲Rを回転させるようにしても良い。
【0055】
<位置関係の調整の実際>
次に、位置関係の調整の実際について説明する。術者が操作卓26を通じて天板2の傾斜を指示したとする。この指示は天板傾斜制御部16に送出され、天板傾斜機構15を通じて天板2を検査室の床面に対して傾斜させる。
【0056】
このように天板2が傾斜されたとしても、天板2と支柱5とのなす角度は天板2の傾斜に関わらず一定である。したがって、天板傾斜制御部16が天板2を傾斜させると、これと同じ角度だけ支柱5も傾斜することになる。
【0057】
なお、天板2が傾斜された状態で支柱移動機構7により支柱5が天板2の長手方向(体軸方向A)に移動したとしても、支柱5の傾斜角度は変わらないので、支柱5の撓みの状況は変化することがない。したがって、天板2の傾斜が定まれば支柱5の撓みの状況も定まることになる。
【0058】
天板傾斜制御部16の動作説明に戻る。天板傾斜制御部16は、術者の指示に従って天板2を傾斜させた後、現在の天板2の傾斜角度をコリメータ回転制御部20およびFPD移動制御部10に送出する。すると、各制御部10,20は、記憶部28に記憶された関連テーブルTを参照して現在の天板2の傾斜角度に対応する補正値を読み出して動作する。この関連テーブルTは、天板2の傾斜角度と補正値とが関連したテーブルとなっている。このように各制御部10,20は、事前に設定された補正値に基づいて動作するようになっているので、被検体MのX線撮影の前であっても検出面4aと照射範囲Rとの位置合わせの動作が可能である。
【0059】
<関連テーブルとその生成方法>
関連テーブルTは、図10に示すように天板2の傾斜角度、コリメータ3aの補正角度、およびFPD4の補正距離とが関連づけられたテーブルとなっている。図10におけるコリメータ補正角度は、X線管3に対するコリメータ3aの回転の補正値を意味しており、FPD補正距離は、照射範囲Rに対する天板2の長手方向における検出面4aの位置ズレの補正値を意味している。
【0060】
関連テーブルTにおいて天板2の傾斜角度が0となっていると、天板2が検査室の床面に平行な状態(支柱5が検査室の床面から鉛直に伸びた状態)を意味している。傾斜角度が0から増加して正の値をとるときは、天板2が図3右側の立位状態となって、支柱5が図3において右方向に傾いていることを意味している。傾斜角度が0から減少して負の値をとるときは、天板2が図3左側の逆立位状態となって、支柱5が図3において左方向に傾いていることを意味している。
【0061】
関連テーブルTの生成方法について説明する。関連テーブルTは、被検体MのX線撮影に先立って事前に準備されるものである。具体的には、関連テーブルTは、天板2に被検体Mを載置しない状態で実際にX線撮影を行ってみて、校正用画像P0を取得することで生成される。すなわち、関連テーブルTは、天板2の傾斜角度を変えながら次々と校正用画像P0を生成し、これを基に各天板傾斜角度に対応する補正値(補正角度・補正距離)を取得することで生成される。
【0062】
校正用画像P0を撮影するときには、支柱5が撓んだ条件下でコリメータ3aによりコリメートされたX線を検出面4aの一部に照射することにより、画像生成部11がFPD4から検出信号を受信して校正用画像P0を生成する。
【0063】
図11は、校正用画像P0を示している。校正用画像P0を生成するときには、図11のように前準備として照射範囲Rが検出面4aに収まるようにコリメータ3aの開度を十分に狭めるようにすれば望ましい。生成された校正用画像P0は、撮影時の天板2の傾斜角度情報とともに関連テーブル生成部12へ送出される(図1参照)。校正用画像P0は、検出面4aと照射範囲Rとの位置関係(天板長手方向ズレ・回転ズレの程度)を示している。
【0064】
関連テーブル生成部12は、校正用画像P0を解析して、校正用画像P0の中心点CP0と照射範囲Rの中心CRとのズレ長さH,および矩形となっている照射範囲Rが校正用画像P0の周縁に対してどの程度回転しているか示すズレ角度θを算出する(図11参照)。関連テーブル生成部12は、得られたズレ長さHを打ち消すFPD移動機構9の動作量を補正距離とし、得られたズレ角度θを打ち消すコリメータ回転機構19の動作量を補正角度とする。そして、関連テーブル生成部12は、これらの補正値を校正用画像P0撮影時の天板2の傾斜角度情報と関連づける。関連テーブル生成部12は、この関連づけを天板2の傾斜角度が異なる条件で撮影された複数の校正用画像P0に亘って実行することで関連テーブルTを生成する。
【0065】
<X線撮影装置の動作>
次に、図12を参照してX線撮影装置の動作について説明する。この動作に際し、関連テーブルTは予め生成されているものとする。
【0066】
X線撮影の動作としては、まず被検体Mを天板2に載置し(載置ステップS1),術者が操作卓26を通じて天板傾斜の指示を与えることにより天板2が傾斜される(天板傾斜ステップS2)。そして、照射範囲Rと検出面4aとの位置ズレの調整が行われ(調整ステップS3)術者が操作卓26を通じて撮影開始の指示を与えることにより画像の撮影が開始される(撮影開始ステップS4)。以降これらの各ステップの詳細について順を追って説明する。
【0067】
<載置ステップS1,天板傾斜ステップS2>
まず、天板2に被検体Mが載置される。このとき被検体Mは天板2の傾斜により天板2から落下することがないように天板2に固定される。術者が操作卓26を通じて天板2の傾斜の指示を与えると、天板傾斜制御部16は、天板2の短手方向(体側方向S)を中心軸として天板2を回転させ、天板2が傾斜される。これに伴って、各部材3,4,5,3aも傾斜され、X線管3を支持する支柱5は、X線管3の重みにより撓むことになる。すると、検出面4aとX線管3から照射されるX線の照射範囲Rとが一致しなくなる(図7右側参照)。
【0068】
<調整ステップS3>
天板傾斜制御部16は、現在の天板2の傾斜角度を示す傾斜角度情報をコリメータ回転制御部20およびFPD移動制御部10に送出する。コリメータ回転制御部20は、図11に示す校正用画像P0を基に生成された関連テーブルTを参照して、現在の天板2の傾斜角度に対応する補正角度を記憶部28より読み出す。そして、コリメータ回転制御部20は、この補正角度に基づいて検出面4aに対する照射範囲Rの回転ズレを調整する。
【0069】
その後、FPD移動制御部10は、図11に示す校正用画像P0を基に生成された関連テーブルTを参照して、現在の天板2の傾斜角度に対応する補正距離を記憶部28より読み出す。そしてFPD移動制御部10は、この補正距離に基づいて照射範囲Rに対する検出面4aの位置ズレを調整する。
【0070】
調整ステップS3を通じて、検出面4aと照射範囲Rとの位置関係は、図8左側に示す状態から、図9右側に示す状態となる。つまり、コリメータ駆動制御部18は、予め検出面4aと照射範囲Rとが一致するようにコリメータ3aの開度を調整していたことになる。
【0071】
<撮影開始ステップS4>
術者が操作卓26を通じて撮影開始の指示を与えると、操作卓26はその指示をX線制御部6に送出する。X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている画像撮影用の撮影条件を読み出す。そして、X線管制御部6は、読み出された撮影条件でX線管3にX線照射させる。このX線照射は、単発のパルス照射となっている。調整ステップS3によって検出面4aと照射範囲Rとの位置合わせがされているので、コリメータ3aでコリメートされてFPD4に到達するX線ビームは、検出面4aの全面に入射するとともに検出面4aの周縁から外側へはみ出すことがない。
【0072】
FPD4は、被検体Mを透過してきたX線を検出し、検出信号を画像生成部11に送出する。画像生成部11は、検出信号を基に被検体像が写り込んだ画像を生成し、表示部25に送出する。表示部25が画像を表示して検査は終了となる。
【0073】
以上のように本発明によれば、X線管3を支持する支柱5の撓みにより生じるFPD4の検出面4aとX線の照射範囲Rとの位置のズレを確実に取り除くことが可能なX線撮影装置1を提供することができる。すなわち、本発明のX線撮影装置1の画像生成部11は、支柱5が撓んだ状態でX線がFPD4の一部に照射されることにより検出面4aと照射範囲Rとの位置関係を示す校正用画像P0を生成する。この校正用画像P0は、検出面4aと照射範囲Rとのズレを実際に写し込んだものとなっている。この校正用画像P0を用いて検出面4aと照射範囲Rとのズレを天板2の長手方向について調整するようにすれば、FPD4の検出面4aとX線の照射範囲Rとの位置のズレが確実に取り除かれる。すなわち、本発明によれば、支柱5が撓んでも検出面4aとX線の照射範囲Rの位置を正確に一致させることができるので、診断に適した画像が取得できる。また、本発明によれば検出面4aとX線の照射範囲Rとの位置ズレを考慮して照射範囲Rに余裕を持たせて大きくする必要がない。これにより、被検体Mの無用な被曝を避けることができる。
【0074】
また、検出面4aと照射範囲Rとの位置ズレを天板2の長手方向に調整するようにすれば、支柱5の撓みに起因する検出面4aと照射範囲Rとの位置ズレを確実に取り除くことができるとともに、既存の移動機構を利用して位置ズレを調整することができる。
【0075】
また、天板2の長手方向に検出手段を移動させるFPD移動機構9は、撮影視野を変更する目的で従来よりX線撮影装置1に搭載されることが多い。そこで本発明の検出面4aとX線の照射範囲Rとの位置ズレをFPD移動機構9により実現するようにすれば、従来構成のX線撮影装置1に新たな移動機構を設けなくても本発明の効果の達成が可能である。
【0076】
上述のように、検出面・照射範囲間の補正量と天板2の傾斜角度とが関連した関連テーブルTに基づいてコリメータ回転制御部20・FPD移動制御部10が動作するようにすれば、両制御部10,20は補正量を傾斜角度毎に把握することができる。この様にすればより正確な位置ズレの補正が可能である。
【0077】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施をすることができる。
【0078】
(1)上述の構成は、FPD4をX線管3に対して移動させることにより検出面4aと照射範囲Rとの位置関係を調整するようにしていたが、本発明はこの構成に限らない。FPD4が支柱5に対して天板2の長手方向(体軸方向A)に移動しない構成においても本発明を適用することができる。本変形例の構成は図13に示すように、X線管3を支柱5に対して傾斜させるX線管回転機構9aと、これを制御するX線管回転制御部10aとを備えている。X線管回転機構9aによってX線管3は、X線管3を貫くとともに天板2の短手方向(体側方向S)に平行な軸を中心軸として図13の矢印で示す方向に回転する。X線管回転機構9aがX線管3を回転させると、コリメータ3aもX線管3に対する位置関係を保った状態で回転する。X線管回転機構9aは、本発明の放射線源回転手段に相当し、X線管回転制御部10aは、本発明の放射線源回転制御手段に相当する。
【0079】
また、本変形例の構成は、支柱5を傾斜させる支柱傾斜機構7aとこれを制御する支柱傾斜制御部8aを備えている。支柱傾斜機構7aによって支柱5は、図14に示すように天板2に対して体側方向Sに平行な軸を中心軸として傾斜される。この中心軸は、支柱5を貫くとともに、支柱5における天板2に近い基部側に設けられている。支柱5を傾斜させると、X線管3,コリメータ3aはこの移動に追従して傾斜する。また、この様な構成においては、図1で説明したFPD移動機構9およびFPD移動制御部10を必ずしも備えてはいない。なお、本変形例のX線撮影装置におけるその他の構成については、図1と同様であるので説明を省略する。本変形例における関連テーブルTは、天板2の傾斜角度、支柱5の補正傾斜角度およびコリメータ補正角度をリスト化したものとなっている。
【0080】
本変形例における関連テーブルTの作成手順について説明する。関連テーブルTを作成するには、まず、支柱5を傾けない状態で天板2を傾けながら校正用画像P0を撮影する。そして、校正用画像P0を元にズレ長さHを取得する。そして、今度は、天板2を傾けた状態で支柱5を傾けてズレ長さHが小さくなる支柱5の傾斜角度を特定することを続けてズレ長さHが0となる支柱5の傾斜角度を特定する。このときの支柱5の傾斜角度を補正傾斜角度として記憶する。そして、支柱5を傾斜させることでズレ長さHが0となっているときに撮影された校正用画像P0を基にズレ角度θを取得する。そしてこのズレ角度θを支柱5の補正傾斜角度および天板2の傾斜角度と関連づけて記憶する。この動作を天板2の傾斜角度を変更しながら行えば、天板2の傾斜角度、支柱5の傾斜角度、ズレ角度θが関連した関連テーブルTが生成される。
【0081】
天板2が傾斜されると、関連テーブルTを参照することにより、天板2の傾斜角度に対応した補正角度だけ支柱5が傾斜され、ズレ角度θだけコリメータ3aが回転されて、FPD4に対するX線ビームの位置ズレが解消される。
【0082】
支柱5の傾斜の動作は、術者の指示によって行われる。すなわち、術者が操作卓26を通じて支柱5の傾斜を指示すると、この指示は支柱傾斜制御部8aに送出される。支柱傾斜制御部8aは、支柱傾斜機構7aを通じて天板2に対して支柱5を傾斜させる。支柱5を傾斜させていくと、支柱5の歪みが次第に激しくなる。
【0083】
支柱傾斜制御部8aは上述の動作に加えて、支柱5の現在の傾斜角度をコリメータ回転制御部20およびX線管回転制御部10aに送出する動作をする。傾斜角度を受信したコリメータ回転制御部20およびX線管回転制御部10aは、記憶部28に記憶された関連テーブルTを参照して現在の支柱5の傾斜角度に対応する補正値を記憶部28より読み出して動作する。この関連テーブルTは、支柱5の傾斜角度と補正値とが関連したテーブルとなっている。すなわち、関連テーブルTは、図11におけるFPD補正距離がX線管3の補正角度に置き換わったような表となっている。このようにコリメータ回転制御部20およびX線管回転制御部10aは、事前に設定された補正値に基づいて動作するようになっているので、X線撮影の前であっても検出面4aと照射範囲Rとの位置合わせの動作が可能である。X線管回転制御部10aは、本発明の放射線源回転制御手段に相当する。
【0084】
関連テーブルTの生成方法について説明する。関連テーブルTは、被検体MのX線撮影に先立って事前に準備されるものである。具体的には、関連テーブルTは、天板2に被検体Mを載置しない状態で実際にX線撮影を行ってみて、校正用画像P0を取得することで生成される。すなわち、関連テーブルTは、支柱5の傾斜角度を変えながら次々と校正用画像P0を生成し、これを基に各傾斜角度に対応する補正値(2種類の補正角度)を取得することで生成される。校正用画像P0を生成するときには、コリメータ3aによりコリメートされたX線がFPD4の一部に照射されることにより、画像生成部11がFPD4から検出信号を受信して校正用画像P0を生成する。
【0085】
図11は、このとき生成される校正用画像P0を示している。関連テーブル生成部12は、校正用画像P0を解析して、校正用画像P0の中心点P0Rと照射範囲Rの中心CRとのズレ長さH,および矩形となっている照射範囲Rが校正用画像P0の周縁に対してどの程度回転しているか示すズレ角度θを算出する(図11参照)。関連テーブル生成部12は、得られたズレ長さHを打ち消すX線管回転機構9aの動作量をX線管補正角度とし、得られたズレ角度θを打ち消すコリメータ回転機構19の動作量をコリメータ補正角度とする。そして、関連テーブル生成部12は、これら補正値を校正用画像P0撮影時の支柱5の傾斜角度情報と関連づける。関連テーブル生成部12は、この関連づけを支柱5の傾斜角度が異なる条件で撮影された複数の校正用画像P0に亘って実行することで関連テーブルTを生成する。この関連テーブルTは、記憶部28に記憶され、コリメータ回転制御部20およびX線管回転制御部10aに参照される。
【0086】
本変形例のように、天板2の短手方向に平行な軸を中心軸としてX線管3を回転させるX線管回転機構9aは、撮影視野を変更する目的で従来よりX線撮影装置1に搭載されることが多い。そこで本発明の検出面4aとX線の照射範囲Rとの位置ズレをX線管回転機構9aにより実現するようにすれば、FPD移動機構9を有していないX線撮影装置1であっても、新たな移動機構を設けることなく本発明の効果の達成が可能である。
【0087】
(2)上述した実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0088】
(3)上述した実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適用できる。
【符号の説明】
【0089】
M 被検体
P0 校正用画像
R 照射範囲
T 関連テーブル
2 天板
3 X線管(放射線源)
3a コリメータ
4 FPD(放射線検出手段)
4a 検出面
5 支柱
7a 支柱傾斜機構(傾斜手段)
8a 支柱傾斜制御部(傾斜制御手段)
9 FPD移動機構(検出器移動手段、調整手段)
9a X線管回転機構(放射線源回転手段)
10 FPD移動制御部(検出器移動制御手段)
10a X線管回転制御部(放射線源回転制御手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
15 天板傾斜機構(天板傾斜手段)
16 天板傾斜制御部(天板傾斜制御手段)
17 コリメータ駆動機構(コリメータ駆動手段)
18 コリメータ駆動制御部(コリメータ駆動制御手段)
28 記憶部(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を載置する天板と、
放射線を被検体に対して照射する前記天板の一面側に設けられた放射線源と、
前記放射線源を支持する支柱と、
放射線を検出する前記天板の他面側に設けられた放射線検出手段と、
前記放射線源から照射される放射線をコリメートして、前記放射線検出手段の放射線を検出する検出面が属する平面上に放射線が到達する範囲である照射範囲を調整するコリメータと、
前記天板を前記天板の短手方向に平行な軸を中心軸として傾斜させることにより、前記放射線源、前記放射線検出手段、前記支柱および前記コリメータをも前記天板に対する位置関係を保った状態で傾斜させる天板傾斜手段と、
前記天板傾斜手段を制御する天板傾斜制御手段と、
前記天板を傾斜させ前記支柱が撓んだ状態でコリメートされた放射線が前記放射線検出手段の一部に照射されることにより前記放射線検出手段から出力される検出信号を受信して前記検出面と放射線の前記照射範囲との位置関係を示す校正用画像を生成する画像生成手段と、
前記天板の傾斜に応じて前記検出面と前記照射範囲との位置関係を前記天板の長手方向について調整する調整手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記天板を傾斜させ前記支柱が撓んだ状態でコリメートされた放射線が前記放射線検出手段の一部に照射されることにより前記放射線検出手段から出力される検出信号を受信して前記検出面と放射線の前記照射範囲との位置関係を示す校正用画像を生成する画像生成手段を備え、
前記調整手段は前記校正用画像を用いて動作することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記調整手段は、前記放射線検出手段を前記支柱とは独立に前記天板の長手方向に移動させる検出器移動手段であり、
前記検出器移動手段を制御する検出器移動制御手段を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線撮影装置において、
前記調整手段は、支柱を放射線検出手段とは独立に前記天板の長手方向について移動させる支柱移動手段であり、
前記検出器移動手段を制御する支柱移動制御手段を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記支柱を前記天板の短手方向に平行な軸を中心軸として天板に対し傾斜させる支柱傾斜手段を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線撮影装置において、
前記調整手段は、前記天板の短手方向に平行な軸を中心軸として前記放射線源を前記天板に対して回転させることにより、前記コリメータを前記放射線源に対する位置関係を保った状態で回転させる放射線源回転手段であり、
前記放射線源回転手段を制御する放射線源回転制御手段を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記天板の傾斜角度を変えながら前記校正用画像を生成することにより生成される検出面・照射範囲間の補正量と前記天板の傾斜角度とが関連した関連テーブルを記憶する記憶手段を備え、
前記調整手段は、前記傾斜制御手段により現在の前記天板の傾斜角度を取得して、前記記憶手段の前記関連テーブルを参照することで現在の傾斜角度に対応する補正量を読み出すことにより位置関係を調整することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記コリメータを駆動させて開度を変更させるコリメータ駆動手段と、
前記コリメータ駆動手段を制御するコリメータ駆動制御手段とを備え、
前記コリメータ駆動制御手段は、前記照射範囲の形状が前記検出面と一致するように前記コリメータの開度を制御することを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−27476(P2013−27476A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164480(P2011−164480)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】