放射線画像読取装置
【課題】清掃手段の部品又はユニットの交換が容易であり、且つ、通常の読み取りにおける処理能力の低下をもたらすことがない放射線画像読取装置の提供。
【解決手段】放射線画像情報を記録した輝尽性蛍光体シートに、励起光を照射して輝尽発光光を受光する画像読取部を、前記輝尽性蛍光体シートに対向させながら移動することによって前記放射線画像情報を読み取る放射線画像読取装置であって、前記画像読取部が前記輝尽性蛍光体シートに対向しながら移動するように案内するガイド部材と、前記ガイド部材に沿って前記画像読取部を移動させる移動手段と、設定された処理モードを基に、前記画像読取部の移動範囲を決定し、前記移動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする放射線画像読取装置の実現。
【解決手段】放射線画像情報を記録した輝尽性蛍光体シートに、励起光を照射して輝尽発光光を受光する画像読取部を、前記輝尽性蛍光体シートに対向させながら移動することによって前記放射線画像情報を読み取る放射線画像読取装置であって、前記画像読取部が前記輝尽性蛍光体シートに対向しながら移動するように案内するガイド部材と、前記ガイド部材に沿って前記画像読取部を移動させる移動手段と、設定された処理モードを基に、前記画像読取部の移動範囲を決定し、前記移動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする放射線画像読取装置の実現。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像読取装置に関し、特に、輝尽性蛍光体シートに記録された放射線画像情報を読み取る放射線画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像に代表される放射線画像は、従来から病気診断等に広く用いられているものである。
【0003】
被写体を透過したX線を蛍光スクリーンに照射して、蛍光スクリーンから生じた可視光により銀塩フィルムを感光させて放射線画像を得る技術は長い歴史を持ち、病気診断の上で大きな貢献をしてきた。
【0004】
一方、被爆線量の低減、デジタル画像処理との整合等への要求に対応するために、被写体を透過した放射線を輝尽性蛍光体シートに照射して潜像を形成し、この潜像に励起光を当てることにより出力される輝尽発光光を受光して放射線画像を読み出す技術も多用されるようになってきた。
【0005】
一般に、前記潜像の読み出しは、レーザ光源、ポリゴン、レンズ、ミラー等からなる励起手段と、輝尽発光光を受光する受光手段とを有する画像読取部を輝尽性蛍光体シートの面に沿って移動させることにより行われる。
【0006】
ところが、前記輝尽性蛍光体シートや前記画像読取部には、異物、特に、前記輝尽性蛍光体を収容したカセッテを放射線画像読取装置に装填する際に装置内部に持ち込まれる埃、塵、人毛等が付着する場合がある。
【0007】
これらの異物は、読み取り時の画像形成に影響することから、できる限りこれらの異物を除去しなければならないという問題がある。
【0008】
この問題に対応するために、画像読取部の移動時に画像読取部に接触して画像読取部の清掃を行う清掃手段と、画像読取部の移動時に輝尽性蛍光体シートに接触して輝尽性蛍光体シートの清掃を行う清掃手段とを設けるという提案もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかしながら、このような清掃手段の清掃性能を維持する為には、清掃手段の部品又はユニットを、適切な時機に交換する必要がある。この交換作業は、放射線画像読取装置内で最も重要で、且つ多くの部品やユニットが入り組んだ領域で行なわなければならないことから、作業者には細心の注意力が要求される。
【0010】
従って、専門の保守要員に代わりユーザがこのような作業を行うことが困難になる場合もある。
【特許文献1】WO2006/064636A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述したような状況に鑑みてなされたもので、その目的は、清掃手段の部品又はユニットの交換が容易であり、且つ、通常の読み取りにおける処理能力の低下をもたらすことがない放射線画像読取装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の発明を実現することにより達成される。
1.放射線画像情報を記録した輝尽性蛍光体シートに、励起光を照射して輝尽発光光を受光する画像読取部を、前記輝尽性蛍光体シートに対向させながら移動することによって前記放射線画像情報を読み取る放射線画像読取装置であって、
前記画像読取部が前記輝尽性蛍光体シートに対向しながら移動するように案内するガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って前記画像読取部を移動させる移動手段と、
設定された処理モードを基に、前記画像読取部の移動範囲を決定し、前記移動手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする放射線画像読取装置。
2.設定される処理モードのうちに、
前記輝尽性蛍光体シートから放射線画像情報を読み取る通常モードと、
保守点検のための保守点検モードと
を含むことを特徴とする1項に記載の放射線画像読取装置。
3.前記画像読取部は、前記輝尽性蛍光体シートを清掃する清掃手段を備えていることを特徴とする1又は2項に記載の放射線画像読取装置。
4.前記保守点検モードにおける前記画像読取部の移動範囲内に、前記画像読取部の移動を防止する画像読取部固定手段を有することを特徴とする1〜3項のいずれか1項に記載の放射線画像読取装置。
5.前記放射線画像読取装置は、
開閉可能な扉と、
前記扉を閉状態に保つロック手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記画像読取部固定手段による前記画像読取部の固定処理が完了するまで、前記扉が閉状態を保つように前記ロック手段を制御することを特徴とする1〜4項のいずれか1項に記載する放射線画像読取装置。
6.前記放射線画像読取装置は、
前記画像読取部固定手段により固定された前記画像読取部の清掃を行う清掃手段を備えることを特徴とする4又は5項に記載の放射線画像読取装置。
7.前記前記画像読取部の清掃を行う清掃手段は、前記画像読取部のスリットに沿って移動することを特徴とする6項に記載の放射線画像読取装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、画像読取部の移動範囲が設定されたモードに対応して決定されるので、通常の読み取り動作における処理能力の低下が無く、且つ、清掃手段の保守作業に適した位置に画像読取部を停止させ、その位置に固定するので、保守作業を容易に行うことができる放射線画像読取装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図を基に説明する。
【0015】
図1は、放射線画像読取装置Dの斜視図である。
【0016】
図に示すように、放射線画像読取装置Dは箱状の形状をしており、その上面の外装部20には、操作部21と、開口部23が設けられている。この開口部23は、後に説明する輝尽性蛍光体シートを収容したカセッテ100の挿入口である。
【0017】
前面と側面には、開閉可能な扉である前面扉30と側面扉40が設けられており、各扉の開閉の可否は、各扉が備えるロック手段(図1に不図示、図2に図示)の施錠の状態により決定される。
【0018】
図2は、放射線画像読取装置Dの制御関係を示すブロック図である。
【0019】
放射線画像読取装置Dの内部に配置された制御手段Cは、CPU、メモリM、入出力I/O、通信用インターフェイス、駆動回路等からなるコンピュータシステムである。
【0020】
制御対象となる各手段の制御は、メモリMに格納されているプログラムを実行させることによりなされる。また、前記制御手段Cは、通信手段を介して、画像処理や画像の保存処理を行う情報処理機器との情報交換を行うことができる。
【0021】
なお、本図では、本発明の説明に直接関係しないブロックの記載が省略されている。
【0022】
図3は、カセッテ100の概念図である。
【0023】
カセッテ100は、フロント板101、バック板102、輝尽性蛍光体シートK、シート保持部材103等から構成されている。
【0024】
4辺が折り曲げられているトレイ状のフロント板101とバック板102は、図のように向かい合わされて留め金(不図示)にて固定されている。
【0025】
輝尽性蛍光体シートKはシート保持部材103を介して、前記バック板102の内面に固定されている。
【0026】
前記フロント板101の矢印eで示す方向の面は、4辺の端部を除き、遮光性を有し放射線は透過する部材が用いられている。また、前記バック板102は磁石により吸着可能な部材で作られている。
【0027】
前記フロント板101と前記バック板102とは、留め金をはずすことにより、図の矢印a、及びbで示す方向に分離される。前記フロント板101と前記バック板101とが分離されると、前記バック板102に保持された輝尽性蛍光体シートKが露出される。
【0028】
図4は、放射線画像読取装置Dの内部における輝尽性蛍光体シートKの移動経路を示す図である。
【0029】
露光済みの輝尽性蛍光体シートKを保持した前記カセッテ100は、矢印cで示すように放射線画像読取装置Dの上面の開口部23から挿入され、カセッテ保持手段(不図示)により保持され下方にある所定の位置に固定される。
【0030】
所定の位置に固定された前記カセッテ100のバック板102は、フロント板101と分離され、矢印dで示すような往復移動するバック板保持手段のバック板保持板201により保持されて、図の点線位置から実線位置に移動し、固定される。
【0031】
この際、前記フロント板101は、前記カセッテ保持手段に保持されたまま、所定位置に残されることから、前記バック板102に固定されている輝尽性蛍光体シートKは、図に示すように露出される。
【0032】
前記バック板102に固定されている輝尽性蛍光体シートKの表面は、図の双方向矢印fで示す間を、図の奥行き方向から手前に進行する画像読取部300により走査されて、潜像の読み出しが行われる。
【0033】
図5は、バック板保持板201と画像読取部300の位置関係を示す図である。
【0034】
バック板保持板201の前面には、磁石が貼り付けられており、この磁石によりバック板保持板はバック板102を保持する。
【0035】
前記バック板保持板201は、保持板ガイド部材202に沿って移動し、画像読取部300は矢印gの方向に移動する。
【0036】
本発明においては、前記画像読取り部300の移動範囲は、前記バック板保持板201輝尽性蛍光体シートKを読み取る移動範囲から図の点線で示す位置、即ち、前記画像読取り部300が完全に輝尽性蛍光体シートKから外れる位置まで延長している。
【0037】
図6は、バック板保持手段200の移動機構の概念図である。
【0038】
移動機構は複数のリンクレバー210、ボールジョイント211、ボールネジ212、モータMT等から構成されている。
【0039】
前記ボールネジ212を介して、前記ボールジョイント211は、制御手段Cにより回転制御されるモータMTの回転と停止により、上下移動と停止とが制御される。
【0040】
前記ボールジョイント211は、前記リンクレバー210の一端に接続されており、ボールジョイント211の位置により、リンクレバー210の支点213を中心にした相互の角度αが変わる。
【0041】
即ち、相互の角度αが予め設定した最小値になるときに、バック板保持板201はカセッテ保持手段に保持されているカセッテ100のバック板102に接している位置にあり、最大値のときには、バック板保持板201は、バック板102に固定されている輝尽性蛍光体シートKが画像読取部300によって読み取りが行われる位置にある。
【0042】
図7は、画像読取部300の移動手段350を説明する概念図である。
【0043】
移動手段350は、台座351、ガイドレール352、リニアモータ360、ワイヤ372、ロータリーエンコーダ374等から構成されている。
【0044】
画像読取部300は、直方体状の外装に覆われており、台座351の上部に固定されている。
【0045】
台座351は、ガイドレール352に沿って移動可能であり、両端が固定された円形シャフト状のマグネット部361と、台座351固定された円柱状の可動コイル362とから構成されるリニアモータ360が制御手段Cにより制御されることにより移動が制御される。
【0046】
前記台座351にはワイヤ取り付け部材371を介してワイヤ372が接続され、前記ワイヤ372は、画像読取部300の移動と共に移動する。
【0047】
また、前記ワイヤ372が巻き付けられたプーリを保持するプーリ保持部373に接近して、前記プーリと共に回転するロータリーエンコーダ374が取り付けられている。
【0048】
前記ロータリーエンコーダ374の出力信号は制御手段Cに送られ、制御手段Cは送られた出力信号を基に、画像読取部300の移動速度と移動距離とを制御する。
【0049】
なお、上述したような画像読取部300の移動手段350は公知の技術である。
【0050】
図8は、画像読取部300の移動範囲を説明する上面概念図である。
【0051】
画像読取部300の外装の内部には、レーザ光源(不図示)、コリメータレンズ(不図示)、ポリゴン301、ミラー302、303、導光体304、集光管305、光センサ(不図示)、消去ランプ308等が収納されている。
【0052】
集束されたレーザ光であるレーザビームLBは、ポリゴン301によって図の手前から奥行き方向に、又はその逆方向に振られる。レーザビームLBはミラー302、303に導かれてスリット307から矢印x方向に出射する。
【0053】
輝尽性蛍光体シートKの表面は、振られている前記レーザビームLBが等速移動する画像読取部300と共に移動することにより走査される。
【0054】
前記レーザビームの走査により励起された輝尽性蛍光体シートKの輝尽発光光は、反射板306、導光体304、集光管305を介して光センサに導かれる。なお、光センサとしては、フォトマルチプライヤ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、その他の適当な光電変換素子を使用することができる。
【0055】
光電変換された前記輝尽発光光は画像の読み取り情報として制御手段Cに送られる。
【0056】
なお、前記スリット307の近傍の画像読取部300の外装の角部には、除電機能を有する軟質素材の布を備えた第1清掃手段310が交換可能に取り付けられており、画像読取部300と共に移動する。
【0057】
前記第1清掃手段310は、レーザビームLBによる走査が行われる直前の輝尽性蛍光体シートKの表面に接しながら移動することによって、表面に付着した画像の読み取りに影響する異物の除去をすることができる。
【0058】
前記画像読取部300は、前記レーザビームLBによる走査が輝尽性蛍光体Kの全面の走査を完了する位置する位置まで移動する場合(矢印y1)と、さらに移動して画像読取部固定手段により固定される位置(保守作業位置)まで移動する場合(矢印y2)とがある。
【0059】
本説明では、上述した移動範囲をそれぞれ、通常読み取り移動範囲(矢印y1)、保守移動範囲(矢印y2)と称す。
【0060】
保守作業位置に停止した画像読取部300のスリット307の位置には、第2清掃手段320が配置されており、所定の清掃処理が実行される。
【0061】
また、通常読み取り移動範囲を移動し、輝尽性蛍光体シートKに記録された画像の読み取りを終えて一旦停止した画像読取部300は、制御手段Cによって消去ランプ310の点灯がなされた後、再度、走査開始前のホームポジションに戻る。この際、輝尽性蛍光体シートKは前記消去ランプ310により全面が照射され、記録されている画像は全て消去される。
【0062】
なお、画像読取部300の移動速度は、輝尽性蛍光体シートKの画像を読み取る場合と、画像の消去を行う場合とで、異なるようにしても良い。また、保守移動範囲を移動する場合には輝尽性蛍光体シートKの画像を読み取る場合よりも速くするようにしてもよい。
【0063】
図9は、画像読取部固定手段560を説明する図である。
【0064】
画像読取部300の台座351の下方には、ガイドレール352に沿って画像読取部300を移動させるための摺動部材353が設けられている。
【0065】
前記摺動部材353の下部には図で示す様な切り欠きが設けられており、画像読取部300が保守作業位置に移動すると、画像読取部固定手段560のロックレバー561の噛み合い部は前記摺動部材353との接触により一旦押し下げられた後、前記摺動部材353の切り欠きと噛み合うことにより上昇して、画像読取部300の移動が防止される。
【0066】
なお、前記ロックレバー561は、支点562を中心にして回転可能で、バネ563の付勢によって、前記摺動部材353と接触しない時には、回転規制部材564に突き当たる位置にある。
【0067】
前記ロックレバー561が上昇した位置にあることは、レバー位置センサSにより検知され、検知情報は制御手段Cに送られる。
【0068】
制御手段Cは、画像読取部300を保守作業位置まで移動させ、前記ロックレバー361の上昇を確認すると、リニアモータ360への通電を停止させる。
【0069】
即ち、リニアモータへの通電を停止しても、画像読取部300が自由に移動する状態にはならないように保守作業位置に固定することができる。
【0070】
また、前記ロックレバー561には、噛み合いを解除するためのソレノイド565が接続されている。
【0071】
制御手段Cは、操作部21から入力される指示情報を基にソレノイド565をオンにすることにより噛み合いを解除した後にリニアモータ360を駆動して、画像読取部300を、画像読取りを開始する前に待機する位置(ホームポジション)に移動させる。
【0072】
図10は、第2清掃手段400の概念図である。
【0073】
第2清掃手段400は、保守作業位置に停止し、画像読取部固定手段560により固定されている画像読取部300のスリット307に沿って移動する清掃手段である。
【0074】
前記第2清掃手段400は、ブラシ基板401、複数の除塵ブラシ402、昇降部材403、スライドレール404等から構成される。
【0075】
除塵ブラシ402は、5〜25μm程度の直径を有し、長さ20〜30mmのステンレス繊維、又はカーボン繊維を束ねて作られたブラシであり、図に示すように各ブラシの取り付け方向が異なるように配置されてブラシ基板401に固定されている。
【0076】
図のように各ブラシの取り付け方向を変えることは、全て同方向に配置した場合との比較において、異物の除去能力の向上と、異物の再付着を防止する効果をもたらす。
【0077】
また、前記除塵ブラシ402の先端はスリット307から画像読取部300の内部に約1〜10mm程度、望ましくは1〜5mm程度入るように、スリット307と第2清掃手段400との配置が決められている。
【0078】
なお、スリット内部に入り込むブラシの量が大き過ぎると、清掃開始時にブラシの先端がスリット内部に入り込まない場合があったり、また、除去した異物を再度スリット内部に落としてしまうという不都合をもたらす。
【0079】
第2清掃手段400は、前記除塵ブラシ402を保持しているブラシ基板401とスライドレール404とを接続している昇降部材403を、スリット307に平行して設けられたスライドレール404に沿って移動させることにより、スリット307近傍に設けられている導光体304、反射板306等の光学部材に付着している塵、ゴミ、その他異物を除去する。
【0080】
すなわち、ブラシの向きが互いに異なる複数の除塵ブラシ402が、前記光学部材に接触しながらスリット307に沿って動くことにより、確実な除塵が行われる。
【0081】
図11は、除塵ブラシ402と画像読取部300の位置関係を示す図である。
【0082】
図に示すように、昇降部材403がスライドレール404に沿って移動する。昇降部材の移動は、手動で行っても良いし、動力を有する昇降手段を適宜に設けても良い。
【0083】
図12は、設定された処理モードに対応して、移動手段350とロック手段を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
【0084】
放射線画像読取装置Dの操作部21から作動を開始させる情報が入力されると(ステップS1:Y)、通常の読み取り動作を指示する通常モードが設定されているか、あるいは保守作業を行う保守点検モードが設定されているかを調べる(ステップS2)。なお、モードの設定は、作動を開始させる前に、オペレータによって操作部21にて設定されるものである。
【0085】
もし、保守点検モードが設定されていた場合には(ステップS2:Y)、制御手段Cは移動手段350を制御することにより、画像読取部300を保守移動範囲で移動させて(ステップS3)、画像読取部300が保守作業位置まで画像読取部300が移動し(ステップS5:Y)、画像読取部固定手段560のレバー561の先端が摺動部材353の切り欠き部に入ったことが検知されると、制御手段Cは、リニアモータ360への通電を遮断して、外装の扉30、40の施錠を行うロック手段31、41の解錠をする(ステップS6)。
【0086】
もし、画像読取りを行う通常モードが設定されていた場合には(ステップS2:N)、輝尽性蛍光体シートKに記録されている画像を読み出す移動範囲である通常読み取り移動範囲の予め定められた位置まで移動させて(ステップS4)、ルーチンを出る。
【0087】
以上説明したように、本発明による放射線画像読取装置Dは次のような特徴を有する。
【0088】
即ち、輝尽性蛍光体シートKから画像を読取る通常モード以外に、保守点検モードを有し、保守点検モードが選択されていた場合には、画像読取部300を輝尽性蛍光体シートKの走査を行う通常読み取り移動範囲を越える移動範囲である保守移動範囲で移動させる。
【0089】
保守作業位置への移動後、移動手段350のリニアモータ360への通電を遮断し、画像読取部300を保守位置に固定した後、外装扉の施錠を解除する。
【0090】
従って、オペレータは、画像読取部300の清掃を行う保守作業、あるいは第1及び第2清掃手段に使用されている部材の交換を行う保守作業を、十分な空間が確保された状況下で、安全に行うことができる。
【0091】
また、通常モードにおける画像読取部300の移動範囲は、保守点検モードにおける移動範囲読み取り移動範囲よりも小さく、保守点検モードを設けたことによる処理能力の低下がない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】放射線画像読取装置の斜視図である。
【図2】放射線画像読取装置の制御関係を示すブロック図である。
【図3】カセッテの概念図である。
【図4】輝尽性蛍光体シートの移動経路を示す図である。
【図5】バック板保持板と画像読取部の位置関係を示す図である。
【図6】バック板保持手段の移動機構の概念図である。
【図7】画像読取部の移動手段を説明する概念図である。
【図8】画像読取部の移動範囲を説明する上面概念図である。
【図9】画像読取部固定手段を説明する図である。
【図10】第2清掃手段の概念図である。
【図11】除塵ブラシと画像読取部の位置関係を示す図である。
【図12】移動手段とロック手段を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
31、41 ロック手段
100 カセッテ
300 画像読取部
310 第1清掃手段
350 移動手段
400 第2清掃手段
560 画像読取部固定手段
C 制御手段
D 放射線画像読取装置
K 輝尽性蛍光体シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像読取装置に関し、特に、輝尽性蛍光体シートに記録された放射線画像情報を読み取る放射線画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像に代表される放射線画像は、従来から病気診断等に広く用いられているものである。
【0003】
被写体を透過したX線を蛍光スクリーンに照射して、蛍光スクリーンから生じた可視光により銀塩フィルムを感光させて放射線画像を得る技術は長い歴史を持ち、病気診断の上で大きな貢献をしてきた。
【0004】
一方、被爆線量の低減、デジタル画像処理との整合等への要求に対応するために、被写体を透過した放射線を輝尽性蛍光体シートに照射して潜像を形成し、この潜像に励起光を当てることにより出力される輝尽発光光を受光して放射線画像を読み出す技術も多用されるようになってきた。
【0005】
一般に、前記潜像の読み出しは、レーザ光源、ポリゴン、レンズ、ミラー等からなる励起手段と、輝尽発光光を受光する受光手段とを有する画像読取部を輝尽性蛍光体シートの面に沿って移動させることにより行われる。
【0006】
ところが、前記輝尽性蛍光体シートや前記画像読取部には、異物、特に、前記輝尽性蛍光体を収容したカセッテを放射線画像読取装置に装填する際に装置内部に持ち込まれる埃、塵、人毛等が付着する場合がある。
【0007】
これらの異物は、読み取り時の画像形成に影響することから、できる限りこれらの異物を除去しなければならないという問題がある。
【0008】
この問題に対応するために、画像読取部の移動時に画像読取部に接触して画像読取部の清掃を行う清掃手段と、画像読取部の移動時に輝尽性蛍光体シートに接触して輝尽性蛍光体シートの清掃を行う清掃手段とを設けるという提案もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかしながら、このような清掃手段の清掃性能を維持する為には、清掃手段の部品又はユニットを、適切な時機に交換する必要がある。この交換作業は、放射線画像読取装置内で最も重要で、且つ多くの部品やユニットが入り組んだ領域で行なわなければならないことから、作業者には細心の注意力が要求される。
【0010】
従って、専門の保守要員に代わりユーザがこのような作業を行うことが困難になる場合もある。
【特許文献1】WO2006/064636A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述したような状況に鑑みてなされたもので、その目的は、清掃手段の部品又はユニットの交換が容易であり、且つ、通常の読み取りにおける処理能力の低下をもたらすことがない放射線画像読取装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の発明を実現することにより達成される。
1.放射線画像情報を記録した輝尽性蛍光体シートに、励起光を照射して輝尽発光光を受光する画像読取部を、前記輝尽性蛍光体シートに対向させながら移動することによって前記放射線画像情報を読み取る放射線画像読取装置であって、
前記画像読取部が前記輝尽性蛍光体シートに対向しながら移動するように案内するガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って前記画像読取部を移動させる移動手段と、
設定された処理モードを基に、前記画像読取部の移動範囲を決定し、前記移動手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする放射線画像読取装置。
2.設定される処理モードのうちに、
前記輝尽性蛍光体シートから放射線画像情報を読み取る通常モードと、
保守点検のための保守点検モードと
を含むことを特徴とする1項に記載の放射線画像読取装置。
3.前記画像読取部は、前記輝尽性蛍光体シートを清掃する清掃手段を備えていることを特徴とする1又は2項に記載の放射線画像読取装置。
4.前記保守点検モードにおける前記画像読取部の移動範囲内に、前記画像読取部の移動を防止する画像読取部固定手段を有することを特徴とする1〜3項のいずれか1項に記載の放射線画像読取装置。
5.前記放射線画像読取装置は、
開閉可能な扉と、
前記扉を閉状態に保つロック手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記画像読取部固定手段による前記画像読取部の固定処理が完了するまで、前記扉が閉状態を保つように前記ロック手段を制御することを特徴とする1〜4項のいずれか1項に記載する放射線画像読取装置。
6.前記放射線画像読取装置は、
前記画像読取部固定手段により固定された前記画像読取部の清掃を行う清掃手段を備えることを特徴とする4又は5項に記載の放射線画像読取装置。
7.前記前記画像読取部の清掃を行う清掃手段は、前記画像読取部のスリットに沿って移動することを特徴とする6項に記載の放射線画像読取装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、画像読取部の移動範囲が設定されたモードに対応して決定されるので、通常の読み取り動作における処理能力の低下が無く、且つ、清掃手段の保守作業に適した位置に画像読取部を停止させ、その位置に固定するので、保守作業を容易に行うことができる放射線画像読取装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図を基に説明する。
【0015】
図1は、放射線画像読取装置Dの斜視図である。
【0016】
図に示すように、放射線画像読取装置Dは箱状の形状をしており、その上面の外装部20には、操作部21と、開口部23が設けられている。この開口部23は、後に説明する輝尽性蛍光体シートを収容したカセッテ100の挿入口である。
【0017】
前面と側面には、開閉可能な扉である前面扉30と側面扉40が設けられており、各扉の開閉の可否は、各扉が備えるロック手段(図1に不図示、図2に図示)の施錠の状態により決定される。
【0018】
図2は、放射線画像読取装置Dの制御関係を示すブロック図である。
【0019】
放射線画像読取装置Dの内部に配置された制御手段Cは、CPU、メモリM、入出力I/O、通信用インターフェイス、駆動回路等からなるコンピュータシステムである。
【0020】
制御対象となる各手段の制御は、メモリMに格納されているプログラムを実行させることによりなされる。また、前記制御手段Cは、通信手段を介して、画像処理や画像の保存処理を行う情報処理機器との情報交換を行うことができる。
【0021】
なお、本図では、本発明の説明に直接関係しないブロックの記載が省略されている。
【0022】
図3は、カセッテ100の概念図である。
【0023】
カセッテ100は、フロント板101、バック板102、輝尽性蛍光体シートK、シート保持部材103等から構成されている。
【0024】
4辺が折り曲げられているトレイ状のフロント板101とバック板102は、図のように向かい合わされて留め金(不図示)にて固定されている。
【0025】
輝尽性蛍光体シートKはシート保持部材103を介して、前記バック板102の内面に固定されている。
【0026】
前記フロント板101の矢印eで示す方向の面は、4辺の端部を除き、遮光性を有し放射線は透過する部材が用いられている。また、前記バック板102は磁石により吸着可能な部材で作られている。
【0027】
前記フロント板101と前記バック板102とは、留め金をはずすことにより、図の矢印a、及びbで示す方向に分離される。前記フロント板101と前記バック板101とが分離されると、前記バック板102に保持された輝尽性蛍光体シートKが露出される。
【0028】
図4は、放射線画像読取装置Dの内部における輝尽性蛍光体シートKの移動経路を示す図である。
【0029】
露光済みの輝尽性蛍光体シートKを保持した前記カセッテ100は、矢印cで示すように放射線画像読取装置Dの上面の開口部23から挿入され、カセッテ保持手段(不図示)により保持され下方にある所定の位置に固定される。
【0030】
所定の位置に固定された前記カセッテ100のバック板102は、フロント板101と分離され、矢印dで示すような往復移動するバック板保持手段のバック板保持板201により保持されて、図の点線位置から実線位置に移動し、固定される。
【0031】
この際、前記フロント板101は、前記カセッテ保持手段に保持されたまま、所定位置に残されることから、前記バック板102に固定されている輝尽性蛍光体シートKは、図に示すように露出される。
【0032】
前記バック板102に固定されている輝尽性蛍光体シートKの表面は、図の双方向矢印fで示す間を、図の奥行き方向から手前に進行する画像読取部300により走査されて、潜像の読み出しが行われる。
【0033】
図5は、バック板保持板201と画像読取部300の位置関係を示す図である。
【0034】
バック板保持板201の前面には、磁石が貼り付けられており、この磁石によりバック板保持板はバック板102を保持する。
【0035】
前記バック板保持板201は、保持板ガイド部材202に沿って移動し、画像読取部300は矢印gの方向に移動する。
【0036】
本発明においては、前記画像読取り部300の移動範囲は、前記バック板保持板201輝尽性蛍光体シートKを読み取る移動範囲から図の点線で示す位置、即ち、前記画像読取り部300が完全に輝尽性蛍光体シートKから外れる位置まで延長している。
【0037】
図6は、バック板保持手段200の移動機構の概念図である。
【0038】
移動機構は複数のリンクレバー210、ボールジョイント211、ボールネジ212、モータMT等から構成されている。
【0039】
前記ボールネジ212を介して、前記ボールジョイント211は、制御手段Cにより回転制御されるモータMTの回転と停止により、上下移動と停止とが制御される。
【0040】
前記ボールジョイント211は、前記リンクレバー210の一端に接続されており、ボールジョイント211の位置により、リンクレバー210の支点213を中心にした相互の角度αが変わる。
【0041】
即ち、相互の角度αが予め設定した最小値になるときに、バック板保持板201はカセッテ保持手段に保持されているカセッテ100のバック板102に接している位置にあり、最大値のときには、バック板保持板201は、バック板102に固定されている輝尽性蛍光体シートKが画像読取部300によって読み取りが行われる位置にある。
【0042】
図7は、画像読取部300の移動手段350を説明する概念図である。
【0043】
移動手段350は、台座351、ガイドレール352、リニアモータ360、ワイヤ372、ロータリーエンコーダ374等から構成されている。
【0044】
画像読取部300は、直方体状の外装に覆われており、台座351の上部に固定されている。
【0045】
台座351は、ガイドレール352に沿って移動可能であり、両端が固定された円形シャフト状のマグネット部361と、台座351固定された円柱状の可動コイル362とから構成されるリニアモータ360が制御手段Cにより制御されることにより移動が制御される。
【0046】
前記台座351にはワイヤ取り付け部材371を介してワイヤ372が接続され、前記ワイヤ372は、画像読取部300の移動と共に移動する。
【0047】
また、前記ワイヤ372が巻き付けられたプーリを保持するプーリ保持部373に接近して、前記プーリと共に回転するロータリーエンコーダ374が取り付けられている。
【0048】
前記ロータリーエンコーダ374の出力信号は制御手段Cに送られ、制御手段Cは送られた出力信号を基に、画像読取部300の移動速度と移動距離とを制御する。
【0049】
なお、上述したような画像読取部300の移動手段350は公知の技術である。
【0050】
図8は、画像読取部300の移動範囲を説明する上面概念図である。
【0051】
画像読取部300の外装の内部には、レーザ光源(不図示)、コリメータレンズ(不図示)、ポリゴン301、ミラー302、303、導光体304、集光管305、光センサ(不図示)、消去ランプ308等が収納されている。
【0052】
集束されたレーザ光であるレーザビームLBは、ポリゴン301によって図の手前から奥行き方向に、又はその逆方向に振られる。レーザビームLBはミラー302、303に導かれてスリット307から矢印x方向に出射する。
【0053】
輝尽性蛍光体シートKの表面は、振られている前記レーザビームLBが等速移動する画像読取部300と共に移動することにより走査される。
【0054】
前記レーザビームの走査により励起された輝尽性蛍光体シートKの輝尽発光光は、反射板306、導光体304、集光管305を介して光センサに導かれる。なお、光センサとしては、フォトマルチプライヤ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、その他の適当な光電変換素子を使用することができる。
【0055】
光電変換された前記輝尽発光光は画像の読み取り情報として制御手段Cに送られる。
【0056】
なお、前記スリット307の近傍の画像読取部300の外装の角部には、除電機能を有する軟質素材の布を備えた第1清掃手段310が交換可能に取り付けられており、画像読取部300と共に移動する。
【0057】
前記第1清掃手段310は、レーザビームLBによる走査が行われる直前の輝尽性蛍光体シートKの表面に接しながら移動することによって、表面に付着した画像の読み取りに影響する異物の除去をすることができる。
【0058】
前記画像読取部300は、前記レーザビームLBによる走査が輝尽性蛍光体Kの全面の走査を完了する位置する位置まで移動する場合(矢印y1)と、さらに移動して画像読取部固定手段により固定される位置(保守作業位置)まで移動する場合(矢印y2)とがある。
【0059】
本説明では、上述した移動範囲をそれぞれ、通常読み取り移動範囲(矢印y1)、保守移動範囲(矢印y2)と称す。
【0060】
保守作業位置に停止した画像読取部300のスリット307の位置には、第2清掃手段320が配置されており、所定の清掃処理が実行される。
【0061】
また、通常読み取り移動範囲を移動し、輝尽性蛍光体シートKに記録された画像の読み取りを終えて一旦停止した画像読取部300は、制御手段Cによって消去ランプ310の点灯がなされた後、再度、走査開始前のホームポジションに戻る。この際、輝尽性蛍光体シートKは前記消去ランプ310により全面が照射され、記録されている画像は全て消去される。
【0062】
なお、画像読取部300の移動速度は、輝尽性蛍光体シートKの画像を読み取る場合と、画像の消去を行う場合とで、異なるようにしても良い。また、保守移動範囲を移動する場合には輝尽性蛍光体シートKの画像を読み取る場合よりも速くするようにしてもよい。
【0063】
図9は、画像読取部固定手段560を説明する図である。
【0064】
画像読取部300の台座351の下方には、ガイドレール352に沿って画像読取部300を移動させるための摺動部材353が設けられている。
【0065】
前記摺動部材353の下部には図で示す様な切り欠きが設けられており、画像読取部300が保守作業位置に移動すると、画像読取部固定手段560のロックレバー561の噛み合い部は前記摺動部材353との接触により一旦押し下げられた後、前記摺動部材353の切り欠きと噛み合うことにより上昇して、画像読取部300の移動が防止される。
【0066】
なお、前記ロックレバー561は、支点562を中心にして回転可能で、バネ563の付勢によって、前記摺動部材353と接触しない時には、回転規制部材564に突き当たる位置にある。
【0067】
前記ロックレバー561が上昇した位置にあることは、レバー位置センサSにより検知され、検知情報は制御手段Cに送られる。
【0068】
制御手段Cは、画像読取部300を保守作業位置まで移動させ、前記ロックレバー361の上昇を確認すると、リニアモータ360への通電を停止させる。
【0069】
即ち、リニアモータへの通電を停止しても、画像読取部300が自由に移動する状態にはならないように保守作業位置に固定することができる。
【0070】
また、前記ロックレバー561には、噛み合いを解除するためのソレノイド565が接続されている。
【0071】
制御手段Cは、操作部21から入力される指示情報を基にソレノイド565をオンにすることにより噛み合いを解除した後にリニアモータ360を駆動して、画像読取部300を、画像読取りを開始する前に待機する位置(ホームポジション)に移動させる。
【0072】
図10は、第2清掃手段400の概念図である。
【0073】
第2清掃手段400は、保守作業位置に停止し、画像読取部固定手段560により固定されている画像読取部300のスリット307に沿って移動する清掃手段である。
【0074】
前記第2清掃手段400は、ブラシ基板401、複数の除塵ブラシ402、昇降部材403、スライドレール404等から構成される。
【0075】
除塵ブラシ402は、5〜25μm程度の直径を有し、長さ20〜30mmのステンレス繊維、又はカーボン繊維を束ねて作られたブラシであり、図に示すように各ブラシの取り付け方向が異なるように配置されてブラシ基板401に固定されている。
【0076】
図のように各ブラシの取り付け方向を変えることは、全て同方向に配置した場合との比較において、異物の除去能力の向上と、異物の再付着を防止する効果をもたらす。
【0077】
また、前記除塵ブラシ402の先端はスリット307から画像読取部300の内部に約1〜10mm程度、望ましくは1〜5mm程度入るように、スリット307と第2清掃手段400との配置が決められている。
【0078】
なお、スリット内部に入り込むブラシの量が大き過ぎると、清掃開始時にブラシの先端がスリット内部に入り込まない場合があったり、また、除去した異物を再度スリット内部に落としてしまうという不都合をもたらす。
【0079】
第2清掃手段400は、前記除塵ブラシ402を保持しているブラシ基板401とスライドレール404とを接続している昇降部材403を、スリット307に平行して設けられたスライドレール404に沿って移動させることにより、スリット307近傍に設けられている導光体304、反射板306等の光学部材に付着している塵、ゴミ、その他異物を除去する。
【0080】
すなわち、ブラシの向きが互いに異なる複数の除塵ブラシ402が、前記光学部材に接触しながらスリット307に沿って動くことにより、確実な除塵が行われる。
【0081】
図11は、除塵ブラシ402と画像読取部300の位置関係を示す図である。
【0082】
図に示すように、昇降部材403がスライドレール404に沿って移動する。昇降部材の移動は、手動で行っても良いし、動力を有する昇降手段を適宜に設けても良い。
【0083】
図12は、設定された処理モードに対応して、移動手段350とロック手段を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
【0084】
放射線画像読取装置Dの操作部21から作動を開始させる情報が入力されると(ステップS1:Y)、通常の読み取り動作を指示する通常モードが設定されているか、あるいは保守作業を行う保守点検モードが設定されているかを調べる(ステップS2)。なお、モードの設定は、作動を開始させる前に、オペレータによって操作部21にて設定されるものである。
【0085】
もし、保守点検モードが設定されていた場合には(ステップS2:Y)、制御手段Cは移動手段350を制御することにより、画像読取部300を保守移動範囲で移動させて(ステップS3)、画像読取部300が保守作業位置まで画像読取部300が移動し(ステップS5:Y)、画像読取部固定手段560のレバー561の先端が摺動部材353の切り欠き部に入ったことが検知されると、制御手段Cは、リニアモータ360への通電を遮断して、外装の扉30、40の施錠を行うロック手段31、41の解錠をする(ステップS6)。
【0086】
もし、画像読取りを行う通常モードが設定されていた場合には(ステップS2:N)、輝尽性蛍光体シートKに記録されている画像を読み出す移動範囲である通常読み取り移動範囲の予め定められた位置まで移動させて(ステップS4)、ルーチンを出る。
【0087】
以上説明したように、本発明による放射線画像読取装置Dは次のような特徴を有する。
【0088】
即ち、輝尽性蛍光体シートKから画像を読取る通常モード以外に、保守点検モードを有し、保守点検モードが選択されていた場合には、画像読取部300を輝尽性蛍光体シートKの走査を行う通常読み取り移動範囲を越える移動範囲である保守移動範囲で移動させる。
【0089】
保守作業位置への移動後、移動手段350のリニアモータ360への通電を遮断し、画像読取部300を保守位置に固定した後、外装扉の施錠を解除する。
【0090】
従って、オペレータは、画像読取部300の清掃を行う保守作業、あるいは第1及び第2清掃手段に使用されている部材の交換を行う保守作業を、十分な空間が確保された状況下で、安全に行うことができる。
【0091】
また、通常モードにおける画像読取部300の移動範囲は、保守点検モードにおける移動範囲読み取り移動範囲よりも小さく、保守点検モードを設けたことによる処理能力の低下がない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】放射線画像読取装置の斜視図である。
【図2】放射線画像読取装置の制御関係を示すブロック図である。
【図3】カセッテの概念図である。
【図4】輝尽性蛍光体シートの移動経路を示す図である。
【図5】バック板保持板と画像読取部の位置関係を示す図である。
【図6】バック板保持手段の移動機構の概念図である。
【図7】画像読取部の移動手段を説明する概念図である。
【図8】画像読取部の移動範囲を説明する上面概念図である。
【図9】画像読取部固定手段を説明する図である。
【図10】第2清掃手段の概念図である。
【図11】除塵ブラシと画像読取部の位置関係を示す図である。
【図12】移動手段とロック手段を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
31、41 ロック手段
100 カセッテ
300 画像読取部
310 第1清掃手段
350 移動手段
400 第2清掃手段
560 画像読取部固定手段
C 制御手段
D 放射線画像読取装置
K 輝尽性蛍光体シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像情報を記録した輝尽性蛍光体シートに、励起光を照射して輝尽発光光を受光する画像読取部を、前記輝尽性蛍光体シートに対向させながら移動することによって前記放射線画像情報を読み取る放射線画像読取装置であって、
前記画像読取部が前記輝尽性蛍光体シートに対向しながら移動するように案内するガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って前記画像読取部を移動させる移動手段と、
設定された処理モードを基に、前記画像読取部の移動範囲を決定し、前記移動手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする放射線画像読取装置。
【請求項2】
設定される処理モードのうちに、
前記輝尽性蛍光体シートから放射線画像情報を読み取る通常モードと、
保守点検のための保守点検モードと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取部は、前記輝尽性蛍光体シートを清掃する清掃手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像読取装置。
【請求項4】
前記保守点検モードにおける前記画像読取部の移動範囲内に、前記画像読取部の移動を防止する画像読取部固定手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像読取装置。
【請求項5】
前記放射線画像読取装置は、
開閉可能な扉と、
前記扉を閉状態に保つロック手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記画像読取部固定手段による前記画像読取部の固定処理が完了するまで、前記扉が閉状態を保つように前記ロック手段を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載する放射線画像読取装置。
【請求項6】
前記放射線画像読取装置は、
前記画像読取部固定手段により固定された前記画像読取部の清掃を行う清掃手段を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の放射線画像読取装置。
【請求項7】
前記前記画像読取部の清掃を行う清掃手段は、前記画像読取部のスリットに沿って移動することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像読取装置。
【請求項1】
放射線画像情報を記録した輝尽性蛍光体シートに、励起光を照射して輝尽発光光を受光する画像読取部を、前記輝尽性蛍光体シートに対向させながら移動することによって前記放射線画像情報を読み取る放射線画像読取装置であって、
前記画像読取部が前記輝尽性蛍光体シートに対向しながら移動するように案内するガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って前記画像読取部を移動させる移動手段と、
設定された処理モードを基に、前記画像読取部の移動範囲を決定し、前記移動手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする放射線画像読取装置。
【請求項2】
設定される処理モードのうちに、
前記輝尽性蛍光体シートから放射線画像情報を読み取る通常モードと、
保守点検のための保守点検モードと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取部は、前記輝尽性蛍光体シートを清掃する清掃手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像読取装置。
【請求項4】
前記保守点検モードにおける前記画像読取部の移動範囲内に、前記画像読取部の移動を防止する画像読取部固定手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像読取装置。
【請求項5】
前記放射線画像読取装置は、
開閉可能な扉と、
前記扉を閉状態に保つロック手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記画像読取部固定手段による前記画像読取部の固定処理が完了するまで、前記扉が閉状態を保つように前記ロック手段を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載する放射線画像読取装置。
【請求項6】
前記放射線画像読取装置は、
前記画像読取部固定手段により固定された前記画像読取部の清掃を行う清掃手段を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の放射線画像読取装置。
【請求項7】
前記前記画像読取部の清掃を行う清掃手段は、前記画像読取部のスリットに沿って移動することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−89968(P2008−89968A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270554(P2006−270554)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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