説明

放送方法

【課題】特定のエリアごとに特化した放送コンテンツの提供を可能とし、地域における視聴者のニーズや有用性に即した放送コンテンツを提供することが可能な放送方法を提供する。
【解決手段】地域を区分することにより設定される特定のエリア10に当該特定エリア10を放送範囲とする放送電波の送信設備を設け、特定エリア10向けの放送コンテンツを放送するようにする。特定エリア10は、例えば、地域を等サイズの正六角形に区分して設定されるエリアとする。また例えば、特定エリア10は、広域放送や県域放送等の広域を対象として行われる一般放送の不感エリア20とする。送信設備は、常設型の送信設備11又は移動型の送信設備12を用いる。放送電波としては、例えば、ワンセグ放送又はデジタルラジオ放送の放送電波を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンセグ放送やデジタルラジオ放送を利用した放送方法に関し、とくに特定のエリアごとに特化した放送コンテンツの提供を可能とし、地域における視聴者のニーズに即した放送コンテンツを提供することが可能な放送方法を提供するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上デジタル放送やワンセグ(1セグ)放送、デジタルラジオ放送(1、3セグラジオ)等、放送のデジタル化が急ピッチで進められている。デジタル放送では、高画質、高音質といった基本サービスの向上に加え、デジタル化によって始めて実現可能となる高度なサービスの活用が期待されている。とくに、データ放送の実現や双方向型サービス、移動体端末向けの放送サービスなど、従来の視聴スタイルとは異なるサービスを活用することにより、今後デジタル放送は放送事業者及び視聴者の双方にとって、極めて有用かつ利便性の高いメディアへと発展していくものと考えられる。
【0003】
ここで放送は不特定多数への一斉同報が基本であるのに対し、インターネットに代表される通信は、特定少数への情報伝達が基本である。昨今、技術的な面及び社会的機能面において、放送と通信の融合に関する様々な試みがなされており、地上デジタル放送やワンセグ放送、デジタルラジオ放送の実施によって、今後は放送と通信との融合がより本格的に進められていくものと予想される(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2004−72472号公報
【特許文献2】特開2003−18579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、広域放送や県域放送などの一般向けのテレビ放送やラジオ放送などの広域を対象として行われる放送(以下、一般放送という。)は、視聴者の幅が非常に広いため、その放送コンテンツは万人受けするような平均的・一般的なものにならざるを得ない。このため、一般放送によるビジネスモデルはいきおいマス広告配信業的なものとなる。
【0005】
しかしながら、近時、視聴者の趣味・嗜好・必要情報の多様化が進んでおり、万人受けするような平均的・一般的な放送コンテンツを提供するのみでは、視聴率の向上に限界があり、視聴者のニーズに十分応えることは難しい。
【0006】
ここで、放送される情報(コンテンツ)に対する有用性やニーズには、通常、地域差が存在する。例えば、津波や河川の氾濫などの情報は、沿岸部や河川周辺などの特定の地域に存在する人々と、他の地域に存在する人々との間で有用性が異なる。また例えば、渋谷や秋葉原などの趣味や嗜好の共通する者が集まる場所においては、ファッション情報やコンピュータ情報、アニメ情報などの特定の情報に対するニーズが非常に高くなる。
【0007】
本発明は、このような情報に対する有用性やニーズに地域差が存在することに着目してなされたもので、特定のエリアごとに特化した放送コンテンツの提供を可能とし、地域における視聴者のニーズや有用性に即した放送コンテンツを提供することが可能な放送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のうちの主たる発明は、放送方法であって、地域を区分することにより設定される特定のエリアに当該特定エリアを放送範囲とする放送電波の送信設備を設け、前記特定エリア向けの放送コンテンツを放送することとする。
【0009】
このように、地域を区分することにより設定される特定エリアを対象として特定エリア向け、すなわち、特定エリアに特化した放送コンテンツを放送することで、特定エリアに存在する視聴者のニーズや有用性に即した放送コンテンツを提供することができる。
【0010】
ここで特定エリアは、例えば、地域を等サイズの正六角形に区分して設定されるエリアである。特定エリアを正六角形とすることで、特定エリアの中心に送信設備を設けた場合における、隣接する送信設備間の放送電波の干渉を最小にすることができ、また放送電波の周波数を効率よく割り当てることが可能となる。
【0011】
広域放送や県域放送などの一般放送の不感エリアを特定エリアとしてもよい。不感エリアは、一般放送の放送電波が届かないので、特定エリアにおけるエリアポータル放送の放送電波の周波数を一般放送と同一の周波数に設定することができ、限られた周波数(チャンネル)を有効に利用することが可能となる。
【0012】
送信設備はこれを車輛等に搭載して移動型とすることもできる。これにより、例えば、期間限定のニーズが存在する特定エリアに対して臨機応変に放送コンテンツを提供することが可能となる。
【0013】
放送電波としては、ワンセグ放送又はデジタルラジオ放送の放送電波を用いることができる。また放送コンテンツは、例えば、防災関連即時情報収集システム、ITS関連即時情報収集システム、平時サービス即時情報システムのうちの少なくともいずれかによって提供される情報に基づいて生成する。
【0014】
また放送コンテンツは、コンテンツの収集を行うコンテンツ収集・蓄積機能、コンテンツの制作加工及び受信機検証を行うコンテンツ加工・検証・蓄積機能、送信設備への放送コンテンツの送出及び配信を行うコンテンツ送出・配信機能によって生成され、前記コンテンツ加工・検証・蓄積機能及び前記コンテンツ送出・配信機能として、コンテンツ収集・蓄積機能によって提供されるコンテンツの種類によらずに汎用的に機能するものを用いることとする。
【0015】
これにより、ライフサイクルの短い視聴者のニーズに即した放送コンテンツを迅速かつ容易にポータルエリア放送によって提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定のエリアごとに特化した放送コンテンツの提供を可能とし、地域における視聴者のニーズに即した放送コンテンツを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態につき詳細に説明する。
【0018】
=エリアポータル放送=
本発明の放送方法(以下、エリアポータル放送という。)は、広域放送や県域放送など(以下、一般放送という。)の広域を対象として行われる放送とは異なり、地域を数km圏といった複数の小エリアに区分して設けられる特定のエリアごとに放送電波の送信設備を設け、送信設備からその送信設備が設けられている特定エリアに特化した情報をのせた放送電波を送信するようにした放送方法である。
【0019】
本発明のエリアポータル放送の放送電波としては、例えば、ワンセグ放送の放送電波や、デジタルラジオ放送の放送電波を用いることができる。またエリアポータル放送の受信端末は、例えば、ワンセグ放送が受信可能な携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistance)、ノート型パソコンなどの情報端末である。
【0020】
図1にエリアポータル放送における放送エリアとなる特定エリア10の設定例を示している。この例では、東京都及び神奈川県とその周辺地域を等サイズの正六角形状に区分して得られるエリアを単位として特定エリアを設定している。各特定エリアの中心には、その特定エリアをカバーするようにアンテナ高や送信出力が設定された、放送電波の送信設備が設けられている。なお、特定エリアを正六角形とすることで、特定エリアの中心に送信設備を設けた場合における、隣接する送信設備間の放送電波の干渉を最小にすることができ、また放送電波の周波数を効率よく割り当てることが可能となる。
【0021】
図1に示すように、隣接する特定エリア(正六角形)の間には、隙間が存在しているが、この隙間は、隣接する送信設備から送信されるエリアポータル放送の放送電波が干渉し、いずれのエリアポータル放送を受信することができない放送電波の不感エリアである。
【0022】
エリアポータル放送の送信設備には、常設型の送信設備11と、車載等により任意の場所に移動して設置することが可能な移動型の送信設備12とがある。例えば、主要駅の駅前広場やオフィス街など、人が恒常的に集まる場所(以下、滞留拠点という。)には、常設型の送信設備11が設けられる。一方、期間限定で放送が行われる場所には、移動型の送信設備12が設けられる。例えば、移動型の送信設備12は、津波や河川の氾濫などにおける災害情報や被災情報を提供する場合にこれらの情報を必要とするニーズの高い特定エリアに設けられる。また期間限定のイベント会場などにおいて、来場者向けのエリアポータル放送を行うような場合にも、移動型の送信設備12が設けられる。このように、移動型の送信設備12を用いることで、例えば、期間限定のニーズが存在する特定エリアに対して臨機応変に放送コンテンツを提供することが可能となる。
【0023】
図1に示す例では、新宿エリア、秋葉原ビル内、横浜駅周辺エリア、みなとみらい21地区の各特定エリアには常設型の送信設備11が設けられている。また、お台場イベント会場、横浜八景島イベント会場、及び相模川上流地区の3つの特定エリアには、移動型の送信設備12が設けられている。
【0024】
<不感エリアの利用>
一般放送のように広域に行われる放送には、通常、放送電波の不感エリアが存在する。例えば、図2に示すように、都心の主要駅周辺の建物内やコンコース、地下街の多くは放送電波の不感エリア20である。また、高層ビルの内部など不感エリア20は立体方向にも存在する。このような不感エリアは、エリアポータル放送における特定エリア10として利用できる。そして、不感エリア20を特定エリア10としてエリアポータル放送を行うことで、エリアポータル放送は一般放送を補間するための有効な放送メディアとなる。
【0025】
ここで不感エリア20においては、一般放送の放送電波が届かないので、不感エリア20を特定エリア10に設定した場合には、特定エリア10におけるエリアポータル放送の放送電波の周波数を一般放送と同一の周波数に設定することができ、限られた周波数(チャンネル)を有効に利用することが可能となる。
【0026】
なお、このように一般放送の周波数と同じ周波数を使う場合は、一般放送の放送電波と、エリアポータル放送の放送電波が干渉するエリアを適切に設定する必要がある。この設定は、いずれか一方の放送電波が受信できるための条件、すなわち、2つのデジタル放送電波の電界強度に差(28dB)が必要である点を考慮しつつ、混信エリア(受信不能エリア)、共存エリア(アンダーレイ、オーバレイ)を設定する必要がある。図3に示すように、エリアポータル放送の実施化に際しては、混信エリア31及び共存エリア32は、例えば、一般放送の放送電波の送信出力及び放送アンテナ33の地上高の調節、エリアポータル放送の放送電波の送信出力及び放送アンテナ34の地上高の調節、キャンセラー技術の適用などによって適切に設定していくことになる。そしてこのようにして特定エリアを設定していくことで、一般放送とエリアポータル放送との共存が可能となる。
【0027】
=放送コンテンツの収集と配信=
図4にエリアポータル放送における放送コンテンツの収集及び配信の仕組みの一例を示している。放送コンテンツは、防災に関するリアルタイムな情報を収集するシステムである防災関連即時情報収集システム411、ITS(Intelligent Transport Systems)によって収集される情報を収集するシステムであるITS関連即時情報収集システム412、平時におけるエリアポータル放送の放送コンテンツを収集するシステムである平時サービス即時情報収集システム413等の、各種コンテンツ収集・蓄積機能410によって収集・蓄積される。またコンテンツ収集・蓄積機能410は、防災関連即時情報収集システム411、ITS関連即時情報収集システム412、及び平時サービス即時情報収集システム413などによって収集された情報を、TVCML(Television Common extensible Markup Language)形式のデータとしてコンピュータ(以下、即時情報サーバ421という。)に格納する。
【0028】
次に、コンテンツ加工・検証・蓄積機能420におけるコンテンツ制作加工システム422は、即時情報サーバ421に格納されている情報に基づいて、特定エリアへの配信時等に参照されるメタデータ(位置情報等)、防災情報や被災情報、交通情報の配信等に利用される地図データ、平時サービス等において利用される蓄積データ(超流通形式)などのポータルエリア放送の放送に必要となるデータを生成する。これらのデータは、受信機検証システム423によって受信端末での受信が可能な放送コンテンツであるかどうかが検証された後、コンピュータ(以下、データ放送コンテンツサーバ424という。)にBML(Broadcast Markup Language)形式で格納される。そしてデータ放送コンテンツサーバ424に格納されたBML形式のデータは、放送送信設備431によって特定エリアに設けられている送信設備11,12に送出・配信される。
【0029】
ここで図4に示す仕組みのうち、コンテンツ加工・検証・蓄積機能420及びコンテンツ送出・配信機能430は、汎用的に利用可能なシステムとして構築されている。このため、コンテンツ収集・蓄積機能によって新たな種類の情報が収集・蓄積される場合でも、これらのシステムについては仕様変更が発生せず、汎用的に使用することが可能である。このような仕組みにより、ライフサイクルの短い視聴者のニーズに即した放送コンテンツを迅速かつ容易にポータルエリア放送によって提供することが可能となる。
【0030】
=適用例=
次に、エリアポータル放送のいくつかの適用例について説明する。図5に示すように、エリアポータル放送によれば、例えば、防災情報・被災情報の提供、交通情報の提供地域密着型情報の提供など、特定エリア内に存在する人をターゲットとした特定エリアに特化した情報を提供することが可能となる。以下、エリアポータル放送の様々な適用事例について紹介する。
【0031】
<防災情報・被災情報の提供>
エリアポータル放送によれば、特定エリアに存在する人々にとって有用な防災情報や被災情報を提供することができる。例えば、滞留拠点や移動幹線(公共交通、高速道路等)に沿った特定エリアにおいて、各人が次に取るべき行動を決定するのに必要な情報を適時に提供することが可能となる。
【0032】
被災情報については、データベースに行動目的に応じて体系化した情報コンテンツとして管理しておく。図6に被災情報の体系化の一例を示す。この例では、1.被災情報、2.道路・気象情報、3.河川情報、4.交通機関情報、5.避難先(避難拠点)情報、6.医療情報、7.生活手段情報、8.ライフライン状況、9.ボランティア情報、10.災害予知情報といった情報項目を詳細情報ごとに体系化してデータベースに管理している。
【0033】
また行動目的に対応する情報項目をデータベースに管理し、行動目的に応じて必要な情報を迅速にエリアポータル放送によって提供できるようにする。例えば、自宅に帰るという行動目的に対応する情報を提供する場合には、1.被災情報、2,道路・気象情報、3.河川情報、4.交通機関情報、5.避難先(避難拠点)情報、10.災害余地情報といったコンテンツを放送する。また、ライフラインの復旧作業という行動目的に対応する情報を提供する場合には、1.被災情報、2,道路・気象情報、3.河川情報、5.避難先(避難拠点)情報、6.医療情報、7.生活手段情報、8.ライフライン状況といったコンテンツを放送する。また消防活動という行動目的に対応する情報を提供する場合には、1.被災情報、2,道路・気象情報、3.河川情報、4.交通機関情報といったコンテンツを放送する。
【0034】
このように、情報コンテンツと行動目的に対応する情報コンテンツとをデータベースに体系化して管理するようにすることで、各特定エリアにおいて必要とされる被災情報を迅速に放送することが可能となる。なお、津波情報、河川氾濫情報、テロに関する情報などの情報は、沿岸部や河川周辺、テロが発生した地域など、ある特定エリアに存在する人には有用であるが、他のエリアの人には必ずしも有用ではない。そこでこのような情報については、これらの情報を必要とする特定エリアに移動型の送信設備を配置して、情報をスポット的に配信するようにする。
【0035】
<交通情報サービス>
エリアポータル放送によれば、特定エリアに存在する受信端末に対して有用な交通情報を提供することができる。図7は、エリアポータル放送によって交通情報サービスを提供するようにした場合における、カーナビゲーションシステムの表示画面に表示されるエリアポータル放送の画面の一例である。
【0036】
同図において、カーナビゲーションシステムの基本機能によって表示される、カーナビゲーション画面71には、サブ画面72が表示されている。エリアポータル放送によって放送されるコンテンツは、このサブ画面72に表示される。同図に示す例では、サブ画面72には、現在車輛が存在している特定エリアにおける交通情報が、地図形式で表示されている。サブ画面72には、カーナビゲーションシステムよって提供される情報よりも細かい、特定エリアに特化した交通情報が表示される。
【0037】
また図8に示すように、サブ画面72に表示される交通情報は、車輛が移動して他の特定エリアに入ると、自動的にハンドオーバされて、現在車輛が存在する特定エリアにおいてエリアポータル放送により放送されている交通情報に基づく内容に自動的に切り替わる。このため、サブ画面72には、常に車輛にとって有用な現在の車輛位置に対応した交通情報が表示されることとなる。
【0038】
なお、エリアポータル放送によって提供される、道路・橋などの最新の通行状況、交通渋滞情報交通情報などの交通情報は、例えば、ITS関連即時情報収集システム412によって収集される情報である。またこの情報は、例えば、図9に示すような分散型信号柱91に設けられた分散型信号機92によって収集される光ビーコン、DSRC(狭域通信:Dedicated Short Range Communication)等によって収集される情報であり、極めて即時性の高い情報(位置情報、速度情報等)である。
【0039】
<地域密着型情報の提供(平時サービス)>
エリアポータル放送によれば、即時性の高い地域密着型の情報を平時サービスとして提供することができる。また例えば、渋谷駅周辺や秋葉原駅周辺などのように、一定の趣味思考を持った人々(以下、個衆という)が集まる場所では、ファッションに関する情報やコンピュータに関する情報、アニメに関する情報など、個衆の興味を引く情報をエリアポータル放送により平時サービスとして提供することができる。また特定エリアに特化した情報として、特定エリア内における店舗で開催される時限セールス情報や、イベント会場の案内情報など、特定エリアに限って有用となるような情報も積極的に放送することができる。
【0040】
すなわち、広域を放送対象とする一般放送では、視聴者の趣味思考が多岐にわたるため、万人受けを狙った平均的な放送コンテンツを提供せざるを得ないが、エリアポータル放送では、特定のジャンルに特化した情報を放送することができ、視聴者のニーズに合った放送コンテンツを積極的に提供することができる。また放送する側としても、高い広告宣伝効果が期待できる。
【0041】
一方、エリアポータル放送とインターネット等を利用した通信サービスとの融合により、個衆向けに特化した即時性の高いサービスを提供することが可能となる。すなわち、エリアポータル放送と通信サービスとの融合により、20世紀型の大衆娯楽コンテンツを中心としたマス・ビジネスから脱却し、個衆向けのコンテンツサービスを核とした新しいセグメントマーケティングのバリューチェーンが創生されることとなる。また優良コンテンツ、個衆セグメントの発掘を利益の源泉とし、最適な特定エリアに向けた配信サービスにより効率的なサービスシステムを実現することができ、高収益型のプラットフォーム事業の創生が期待される。
【0042】
図10にエリアポータル放送を利用したプラットフォーム事業モデルの一例を示す。同図に示すように、エリアポータル放送を利用した個衆コミュニティ型のコンテンツ91としては、例えば、国際交流に関するもの(語学、文化等)、地域活性に関するもの(タウン情報、美術館等)、趣味交流(音楽、ゲーム等)が考えられる。そして、これら個衆コミュニティ型コンテンツ91を基盤とするエリアポータル放送を利用したプラットフォーム事業モデルとして、これら個衆コミュニティ型コンテンツの宣伝・広告を行うB2B型の事業(請負又は成功報酬)としての広告事業92が創生される。また、B2B、B2C型の事業(レベニューシェア)として販促・集客支援事業93が創生される。
【0043】
その一方で、インターネット等の通信を介して行われる個衆コミュニティについて、その形成・運営を行う事業94が創生される。またこれらの事業モデルを実現基盤となるエリアポータル放送の送信システム・受信システムを構築するB2B型の事業(請負又は共同事業)として、システム構築事業95が必然的に創生される。
【0044】
上記広告事業92には、例えば、ワンセグ放送やデジタルラジオ放送における広告の制作や配信などがある。広告事業92は、インターネット等を介して行われる通信サービスとの融合による個衆コミュニティの形成と効果測定が特徴的である。コンテンツ販促・集客支援事業93としては、例えば、ワンセグ放送番組による販売促進や集客支援などがある。またデジタルラジオ放送による音楽、教育コンテンツ、電子書籍、ゲーム等の大容量配信サービスも考えられる。なお、コンテンツ販促・集客支援事業93は、蓄積型DRM技術(超流通)による大量蓄積とデマンド通信の利用が特徴的である。
【0045】
システム構築事業95としては、例えば、受信端末向けの技術供与、特定エリア(大規模業務・商業・教育施設、交通システム、テーマパーク、催事会場、観光地向けエリアポータル放送のサービスの構築があげられる。またエリアポータル放送に関するシステムの構築後は、広告事業92、コンテンツ販促・集客支援事業93等の出口として利用され、これらの運用サービス事業が成立する。
【0046】
なお、エリアポータル放送の適用例は、以上に説明したものに限られず、特定の地域、特定の期間、特定の視聴者を対象として特定の情報を配信するニーズが存在する様々なケースに適用することができる。すなわち、エリアポータル放送は、適材適所な情報提供が必要となる様々な場面への適用可能性を秘めた極めて斬新な放送方法である。
【0047】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態として説明する、エリアポータル放送における放送エリアとなる特定エリア10の設定例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態として説明する、不感エリアの例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態として説明する、一般放送の放送電波と、エリアポータル放送の放送電波が干渉するエリアの設定方法を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態として説明する、エリアポータル放送における放送コンテンツの収集及び配信の仕組みの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態として説明する、エリアポータル放送の適用例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態として説明する、被災情報の体系化の一例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態として説明する、エリアポータル放送によって交通情報サービスを提供するようにした場合における、カーナビゲーションシステムの表示画面に表示されるエリアポータル放送の画面例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態として説明する、交通情報がハンドオーバされて表示される仕組みを説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態として説明する、光ビーコンによるITS関連即時情報の収集方法を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態として説明する、エリアポータル放送を利用したプラットフォーム事業モデルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 特定エリア
11 常設型の送信設備
12 移動型の送信設備
20 不感エリア
410 コンテンツ収集・蓄積機能
411 防災関連即時情報収集システム
412 ITS関連即時情報収集システム
413 平時サービス即時情報収集システム
420 コンテンツ加工・検証・蓄積機能
421 即時情報サーバ
424 データ放送コンテンツサーバ
430 コンテンツ送出・配信機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域を区分することにより設定される特定のエリアに当該特定エリアを放送範囲とする放送電波の送信設備を設け、前記特定エリア向けの放送コンテンツを放送することを特徴とする放送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放送方法であって、前記特定エリアは、前記地域を等サイズの正六角形に区分して設定されるエリアであることを特徴とする放送方法。
【請求項3】
請求項1に記載の放送方法であって、前記特定エリアは、一般放送の不感エリアであることを特徴とする放送方法。
【請求項4】
請求項1に記載の放送方法であって、移動型の前記送信設備を前記特定エリアに移動させることにより設けることを特徴とする放送方法。
【請求項5】
請求項1に記載の放送方法であって、前記放送電波はワンセグ放送又はデジタルラジオ放送の放送電波であることを特徴とする放送方法。
【請求項6】
請求項1に記載の放送方法であって、前記放送コンテンツを、防災関連即時情報収集システム、ITS関連即時情報収集システム、平時サービス即時情報システムのうちの少なくともいずれかによって提供される情報に基づいて生成することを特徴とする放送方法。
【請求項7】
請求項1に記載の放送方法であって、前記放送コンテンツは、コンテンツの収集を行うコンテンツ収集・蓄積機能、コンテンツの制作加工及び受信機検証を行うコンテンツ加工・検証・蓄積機能、送信設備への放送コンテンツの送出及び配信を行うコンテンツ送出・配信機能によって生成され、
前記コンテンツ加工・検証・蓄積機能及び前記コンテンツ送出・配信機能として、コンテンツ収集・蓄積機能によって提供されるコンテンツの種類によらずに汎用的に機能するものを用いることを特徴とする放送方法。


【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−295341(P2007−295341A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121703(P2006−121703)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(500530683)エリアポータル株式会社 (2)
【出願人】(000005979)三菱商事株式会社 (56)