説明

放電灯始動装置

【課題】 本発明の解決すべき課題は長配線長であっても良好な始動性を発揮しえる放電灯始動装置を提供することにある。
【解決手段】 蓄電コイル34及び蓄電コンデンサ36を直列に接続した蓄電回路32と、
前記蓄電回路32の蓄電コイル34側とパルス発生コイル30の一次巻線30aとの間に直列に接続された双方向スイッチング手段38と、
を備え、前記双方向スイッチング手段38は、蓄電回路側電圧が無負荷時電圧近傍となるとゲートがターン・オンし、蓄電回路32に蓄電された電力が前記一次巻線30aへ供給されることを特徴とする放電灯始動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電灯始動装置、特に長配線長に対応する始動機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
各種放電灯にはその安定点灯のための点灯装置とともに、放電灯の始動時に該放電灯電極間の絶縁破壊を行うため、高電圧パルスを発生させる始動装置が要求される。
従来、放電灯始動装置としては、特開2002−305092号などに開示されるものが公知である。
【0003】
一方、放電灯点灯装置或いは始動装置にはコンデンサ、コイルなどが必要となり、これらを全て放電灯の近傍に設置することは、スペース的、レイアウト的、或いは美観の観点から困難である。
そこで、放電灯点灯装置或いは始動装置は、放電灯より離隔して設置されることも多い。
しかしながら、特に始動装置を放電灯から離隔配置した場合、すなわち始動装置から放電灯までの配線長が長い場合には、始動装置の発する高圧パルスが減衰し、放電灯の始動性が悪化することがあった。
【特許文献1】特開2002−305092号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は長配線長であっても良好な始動性を発揮しえる放電灯始動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明にかかる放電灯始動装置は、
蓄電コイル及び蓄電コンデンサを直列に接続した蓄電回路と、
前記蓄電回路の蓄電コイル側とパルス発生コイルの一次巻線との間に直列に接続された双方向スイッチング手段と、
を備え、前記双方向スイッチング手段は、蓄電回路側電圧が無負荷時電圧近傍となるとゲートがターンオンし、蓄電回路に蓄電された電力が前記一次巻線へ供給されることを特徴とする。
また、前記装置において、双方向スイッチング手段のターンオン電圧は、無負荷時電圧の80〜105%であることが好適である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は前述したように蓄電回路としてコイル及びコンデンサの直列回路を採用し、両者に蓄積された電力を双方向スイッチ手段により放出することとしたので、パルス高、パルス幅ともに大きい高圧パルスを発生することができ、長配線長であってもパルスの減衰を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本実施形態にかかるインバータの構成図である。
【0008】
同図に示すように本実施形態にかかるインバータ10は、交流電源12から供給される電力を整流する整流回路14、整流された電力を平滑化するとともに力率改善する力率改善回路16、出力する電力を制御する電力制御回路18、電力制御回路18から供給される電力を矩形波にするとともに、周波数を調整する矩形波変換回路20、前記力率改善回路16、電力制御回路18、矩形波変換回路20を制御する制御回路部22、及び始動装置24を備え、交流電源12から供給される電力を整流回路14、力率改善回路16、電力制御回路18、矩形波変換回路20、始動装置24を通して放電灯26に供給している。そして放電灯26の点灯を開始させる為に用いられるものが始動装置24である。
【0009】
本実施形態にかかるインバータ10は、図2に示す始動装置24を備える。該始動装置24は、パルス発生コイル30と、該パルス発生コイル30の一次巻線30aに直列接続された蓄電回路32を備える。蓄電回路32は、直列接続された蓄電コイル34及び蓄電コンデンサ34を有し、その蓄電コイル34を双方向スイッチング手段38を介して前記パルス発生コイル30の一次巻線30aに接続する。なお、双方向スイッチング手段38に対して並列に抵抗40,42が接続されている。また、LC発振用コンデンサ44が、放電灯26に対して並列に接続されている。
【0010】
この双方向性スイッチング手段38は、双方向に電流を流すものの、特定方向に対しては一定以上の電圧が印加されなければターンオン作動しないため電流を流さず、また一度オン作動しても、流れる電流が特定の電流値以下になると再びオフ作動するものであり、通常は半導体素子として提供される。そして、本実施形態において、一次巻線30a側より蓄電コイル38へは低電圧より導通可能であり、蓄電コイル38側より一次巻線30aには無負荷電圧近傍の電圧でターンオンし、導通状態となる。
【0011】
前記双方向性スイッチング手段には、放電灯始動前に放電灯の電極間に印加される無負荷電圧がかかり、一次巻線30a及び双方向スイッチング手段38を介して蓄電回路34に蓄電される。そして、蓄電回路32への蓄電により電圧上昇し、蓄電回路32の電圧が無負荷電圧近傍に達すると、双方向性スイッチング素子38がターンオンし、蓄電回路32に蓄電された電力を一気にパルス発生コイル30の一次巻線30a側に導通させる。この際、蓄電回路32には蓄電コイル24と蓄電コンデンサ36の双方に電力が蓄積されており、且つ蓄電コイル34の限流作用により放出電力ピーク巾も大きくなる。
この結果、パルス発生コイルの二次側に発生するパルス電圧は、そのピーク高及びピーク巾の大きいものとなり、長配線長であってもパルス電圧の低下は小さい。
【0012】
図2に示す本実施形態にかかる始動装置と、図3(A)に示す一般的な始動装置を用いた場合とを比較し、配線長とパルス高の関係を図4に示す。
同図より明らかなように、図3に示す始動装置では、配線長が伸びるに従いパルス電圧高が低くなり、電流値が上昇する。そして、約10m程度で放電灯の良好な始動に必要なパルス電圧値3.0kVを下回り、さらに16m付近で始動特性の評価点である2.5kVを下回るようになる。
【0013】
これに対し、本実施形態にかかる始動装置は、配線長が伸びても高いパルス電圧値を示し、配線長が15mを超えても3.0kV以上を維持している。
また、前記本実施形態にかかる始動装置と、図3(B)に示す始動装置との、放電灯点灯後のランプ電圧の波高率を比較した。結果を次の表1に示す。
【0014】
表1
波高率
実施例 1.23
比較例
上記結果より明らかなように、本実施形態においては波高率が大きく改善されている。
【0015】
すなわち、放電灯点灯後にも始動装置が機能しつづけると、無負荷時(放電灯点灯前)ほどではないにしろ、矩形波状の駆動電圧に対してパルスが重畳しつづけ、回路及びランプに短寿命化などの悪影響を及ぼす。
そして、矩形波状駆動電圧に対するパルス電圧の比を示したのが波高率であり、この波高率は低いほうが好ましい。
【0016】
一方、図3(B)に示す始動装置のように、始動特性を改善する観点からは双方向性スイッチング手段を設けないことも可能であり、コイル34Bが電荷ポンプ及びスイッチの役割を果たし、ある程度の長配線長適応性を示す。
しかしながら、コイル34B及びコンデンサ36Bは、放電灯点灯後もLC発振回路として機能しつづけ、波高率を悪化させてしまうのである。
この点で、本実施形態にかかる始動装置は、長配線長に対する適応性とともに、放電灯点灯後のランプ電圧波形の波高率改善をも達成するものである。
【0017】
このため本実施形態にかかる双方向性スイッチング手段の、ターンオン作動する作動開始しきい電圧を、点灯される放電灯によって決定される無負荷電圧と同一或いはこれよりも20%以内で低い程度の高い電圧に設定しておくことが好適である。
【0018】
このような作動開始しきい電圧を有する双方向性スイッチング手段38であれば、放電灯点灯前の無負荷電圧による、高い電圧が印加された際には、無負荷電圧が作動開始しきい電圧より大きいため、オン作動してLC振動を妨害することなく、好適に放電灯26を始動させることができる。また放電灯26が安定点灯しているときには、印加される電圧が作動開始しきい電圧より小さいため、オフ状態のままとなり、図2に示したLC振動を発生させるコイル34とコンデンサー36及び一次巻線30aは回路から切り離された状態となり、始動装置の二次巻線30bを通してLC振動が重畳されていない電力が放電灯26に供給される。このようにしてランプ電圧やランプ電流にLC振動成分が重畳されることが防止される。さらに回路からコイル34、コンデンサー36、一次巻線30aが切り離されるので、ランプ点灯中はこの部分での電力消費がなくなり、省エネの面からも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に好適に用いられるインバータの説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる始動装置の構成図である。
【図3】比較例となる始動装置の構成図である。
【図4】本発明の効果の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
24 始動装置
26 放電灯
30 パルス発生コイル
32 蓄電回路
34 蓄電コイル
36 蓄電コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電コイル及び蓄電コンデンサを直列に接続した蓄電回路と、
前記蓄電回路の蓄電コイル側とパルス発生コイルの一次巻線との間に直列に接続された双方向スイッチング手段と、
を備え、前記双方向スイッチング手段は、蓄電回路側電圧が無負荷時電圧近傍となるとゲートがターンオンし、蓄電回路に蓄電された電力が前記一次巻線へ供給されることを特徴とする放電灯始動装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、双方向スイッチング手段のターンオン電圧は、無負荷時電圧の80〜105%であることを特徴とする放電灯始動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−282723(P2008−282723A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126795(P2007−126795)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】