説明

放電灯点灯装置及び照明装置

【目的】簡単な回路構成で電源電圧が急激に低下した場合の放電灯のちらつきを防止できるようにする。
【構成】発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間にはダイオード50とコンデンサ46と抵抗71,72,73,74,75によるピーク電圧検出回路が設けられており、このピーク電圧検出回路には定電圧回路90が取り付けられている。電源電圧が急激に低下して発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間の電圧が耐圧値以下になった場合には、抵抗72,73の接続点には、ツェナーダイオード92の一定の電圧が加えられ、MOSFET59の抵抗値が一定となりことによりトランジスタ53のオン期間が変化しなくなり、高周波発振回路の出力の制御を中止するようになっている。これにより簡単な回路構成で放電灯のちらつきを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高周波発振回路の耐圧オーバーによる破壊を防止する安全回路が設けられた放電灯点灯装置及び照明装置に係り、特に高周波発振回路の入力電圧が変動した場合に安全回路を適切に動作させることができる放電灯点灯装置及び照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、放電灯としては、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び高圧ナトリウムランプ等が商品化されている。このような放電灯を点灯させる従来の放電灯点灯装置は、電源電圧の変化に対して放電灯の照度を安定化するために高周波発振回路の発振トランジスタのコレクタ・エミッタ間の電圧を一定になるように制御している。
【0003】ところがこのような従来の放電灯点灯装置に接続される電源は、エヤコンやエレベータ等の時間的に大きく変動する付加が接続されている場合、電源電圧が急激に変動する場合がある。電源電圧が急激に変動した場合には、この制御応答速度の問題から、制御回路の電圧が電源の変動に同期せず、高周波発振回路の発振トランジスタのコレクタ・エミッタ間の電圧を安定して制御するのが難しく、放電灯にちらつきを発生させる。このような放電灯のちらつきを防止するために回路を複雑化する方法も考えられるが、これでは外来サージに弱くなってしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の放電灯点灯装置では、電源電圧が急激に変動した場合には、高周波発振回路の発振トランジスタのコレクタ・エミッタ間の電圧を安定して制御するのがむつかしく、放電灯にちらつきを発生させる。
【0005】そこで本発明は、簡単な回路構成で電源電圧が急激に変動した場合の放電灯のちらつきを防止でき、かつ過大な電圧に対してはスイッチング素子を保護できる放電灯点灯装置及び照明装置の提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明による放電灯点灯装置は、商用交流電源からの交流電圧を整流して直流電圧を得る整流手段と、この整流手段からの前記直流電圧をスイッチング素子でオン時間調整可能な状態でオン・オフ制御して高周波電圧を出力する高周波発振回路と、この高周波発振回路の出力が供給される放電灯と、前記整流手段からの入力電圧に応じた電圧を検出し、この検出電圧が設定値を越えた際に、スイッチング素子のオン時間を低下させて、高周波発振回路の出力電圧を一定になるように制御し、前記検出電圧が設定値以下の際に、スイッチング素子のオン時間制御を不作動にするオン時間制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0007】請求項2記載の本発明による照明装置は、商用交流電源からの交流電圧を整流して直流電圧を得る整流手段と、この整流手段からの前記直流電圧をスイッチング素子でオン時間調整可能な状態でオン・オフ制御して高周波電圧を出力する高周波発振回路と、この高周波発振回路の出力が供給される放電灯と、前記整流手段からの入力電圧に応じた電圧を検出し、この検出電圧が設定値を越えた際に、スイッチング素子のオン時間を低下させて、高周波発振回路の出力電圧を一定になるように制御し、前記検出電圧が設定値以下の際に、スイッチング素子のオン時間制御を不作動にするオン時間制御手段と、前記整流手段、定電流発生手段、高周波発振回路及び回路手段とを内部に収納する筐体と、この筐体の外側に設けられ、前記放電灯を取付けるとともに、該放電灯と高周波発振回路の電気的接続を行うソケットとを具備したことを特徴とする。
【0008】
【作用】このような構成によれば、オン時間制御手段は、前記発振トランジスタの電圧を検出し、この検出電圧が設定値を以下の際に、トランジスタのオン時間が一定になるように制御するので、簡単な回路構成で電源電圧が急激に変動した場合の制御回路の変動がなくなり、放電灯のちらつきを防止できる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0010】図1は本発明に係る放電灯点灯装置の一実施例を示す回路図である。
【0011】図1において、41は商用交流電源の端子間には高周波除去用のコンデンサ42と整流回路43が接続されている。商用交流電源41からの交流電源電圧は、整流回路43及び平滑回路を構成するコンデンサ44,45,46、コイル47、ダイオード48,49,50によって整流及び平滑される。高周波発振回路は一石自励式の電圧共振型をなすもので、高周波トランス51の一次巻線51aに共振コンデンサ52を並列に接続し、一次巻線51aの一端に発振トランジスタ53を接続している。高周波トランス51の二次巻線51bは、一端が放電灯54の一端の電極に接続し、他端が正帰還用電流変成器55の一次巻線を介して放電灯54の他端の電極に接続している。また、放電灯54には並列に起動用コンデンサ56が接続されている。正帰還用電流変成器55の二次巻線の一端はトランジスタ53のベースに接続している。変成器55の二次巻線の他端とトランジスタ53のエミッタとの間にはトランジスタ53のオン時間制御用としてコンデンサ57,58、MOSFET59が接続している。またトランジスタ53のベースは、抵抗60を介して整流回路43の正極側に接続するとともに、ダイオード61及びオン時間制御用の抵抗62,63を介して整流回路43の負極側に接続する。MOSFET59は可変抵抗子として働くようになっており、そのゲートには、駆動電圧が供給される。MOSFET59の抵抗値はその駆動電圧によって制御できるようになっている。
【0012】発振トランジスタ53のコレクタには発振トランジスタ53の発振電圧の一定化制御を行うための制御回路が設けられている。即ち、発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間にはダイオード50とコンデンサ46と抵抗71,72,73,74,75によるピーク電圧検出回路が設けられており、抵抗73,74の接続点に得られるピーク電圧値をトランジスタ76のベースに入力している。トランジスタ76のエミッタは抵抗77,78を介して電源整流回路43の正極側に接続し、トランジスタ76のコレクタは、抵抗79を介して電源整流回路43の負極側に接続するとともに、MOSFET59のゲートに接続している。一方、抵抗77,78の接続点は、コンデンサ81を介して整流回路43の負極側に接続している。
【0013】また、ピーク電圧検出回路には、抵抗73,74の接続点に得られるピーク電圧値が所定の値よりも降下しないための定電圧回路90が接続されている。定電圧回路90は、ツェナーダイオード91,92と抵抗93とトランジスタ94,95とから構成される。ツェナーダイオード91は、カソードが抵抗96を介して抵抗71,72の接続点に接続され、アノードがトランジスタ94のベースに接続される。トランジスタ94は、コレクタがトランジスタ95のベースに接続されるとともに抵抗93,78を介して整流回路43の正極側に接続され、エミッタが整流回路43の正極側に接続される。トランジスタ95は、コレクタがツェナーダイオード92のアノード・カソード路を介して抵抗72,73の接続点に接続され、エミッタが整流回路43の正極側に接続される。
【0014】一方、オン時間制御用の抵抗63には、トランジスタ96のコレクタ・エミッタ路が並列に接続されている。トランジスタ96のベースには、ツェナーダイオード97のアノード・カソード路、抵抗98,78の直列接続を介して整流回路43の正極側の端子に接続しており、整流回路43の電圧が所定の危険値を越えた場合には、トランジスタ53のオン時間を低下させる。
【0015】尚、図示しないが放電灯54の電極間にはランプ始動時に高電圧を発生する回路が設けられている。
【0016】このような実施例の動作を以下に説明する。
【0017】まず、整流回路43の電圧が上記所定の危険値を越ない理由について以下に説明する。
【0018】整流回路43の電圧が所定の危険値を越えた場合には、ツェナーダイオード97がオンし、トランジスタ96がオンし、トランジスタ53のオン時間を低下させる。
【0019】次に、発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間の電圧の変動による動作を説明する。
【0020】発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間の電圧が耐圧値を越えた場合、即ち、ピーク電圧値が定電圧回路90により設定された所定の値よりも大きい場合には、定電圧回路90がオフする。このことを詳細に説明すると、ツェナーダイオード91がオンし、トランジスタ94がオンしすることにより、トランジスタ95のベース電圧がローレベルとなって、トランジスタ95がオフする。これにより、ツェナーダイオード92から抵抗73,74の接続点に電圧は加えられず、ピーク電圧検出回路は、発振トランジスタ53のコレクタ電圧により抵抗73,74の接続点に得られるピーク電圧値をスイッチ用トランジスタ76のベースに入力する。ピーク電圧値が増大すると、トランジスタ76のコレクタ電圧は一定のローレベルを維持し、MOSFET59の抵抗値が低下して、トランジスタ53のオン期間が短くなり、高周波発振回路の出力が低下する。これにより、高周波発振回路は、発振出力が一定になるように制御される。
【0021】発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間の電圧が耐圧値以下になった場合、即ち、ピーク電圧値が定電圧回路90により設定された所定の以下の場合には、定電圧回路90がオンする。このことを詳細に説明すると、ツェナーダイオード91がオフし、トランジスタ94がオフすることにより、トランジスタ95のベース電圧がハイレベルとなって、トランジスタ95がオンする。これにより、抵抗72,73の接続点には、ツェナーダイオード92の一定の電圧が加えられ、ピーク電圧検出回路は、ツェナーダイオード92の一定の電圧により抵抗73,74の接続点に得られる一定のピーク電圧値をトランジスタ76のベースに入力する。これにより、トランジスタ76のコレクタ電圧は一定の低いレベルとなり、MOSFET59の抵抗値が発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間の電圧が耐圧値の状態から変化せず、トランジスタ53のオン期間が変化せず、高周波発振回路は、出力の制御が行われなくなる。
【0022】このような実施例によれば、発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間の電圧が規定値を越えた場合は、高周波発振回路の発振出力が一定になるように制御され、発振トランジスタ53のコレクタ・エミッタ間の電圧が耐圧値以下になった場合は、発振トランジスタ53を破壊する危険がないので、高周波発振回路の出力の制御を中止する。これにより電源の急激な変動に対し、発振トランジスタの制御回路の過剰反応がなくなり、これにより、簡単な回路構成で商用交流電圧のゆらぎによる放電灯の発光のチラツキを最小にできる。
【0023】図2は図1の放電灯点灯装置を一般家庭用の照明装置に適用した場合の照明装置の断面図である。
【0024】図2において、符号101は照明装置の筐体であり、この筐体101は、上面が天井102に取り付けられている。筐体101の内部には、図1の放電灯点灯装置の放電灯54を除く回路103が収納されている。筐体101の下面には、1対のソケット104,104が設けられ、ソケット104,104の間に放電灯点54が取り付けられるとともに、このソケット104,104を介して放電灯点54と回路103が電気的に接続している。
【0025】このような照明装置により、図1の放電灯点灯装置を実際に使用することができる。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、簡単な回路構成で電源電圧が急激に低下した場合の放電灯のちらつきを防止できるので、品位の高い放電灯点灯装置及び照明装置をユーザーに提供できる。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る放電灯点灯装置の一実施例を示す回路図。
【0029】
【図2】図2は図1の放電灯点灯装置を適用した照明装置の断面図。
【0030】
【符号の説明】
41 商用交流電源
43 整流回路
44 平滑コンデンサ
51 高周波トランス
53 発振トランジスタ
54 放電灯
90 定電圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 商用交流電源からの交流電圧を整流して直流電圧を得る整流手段と、この整流手段からの前記直流電圧をスイッチング素子でオン時間調整可能な状態でオン・オフ制御して高周波電圧を出力する高周波発振回路と、この高周波発振回路の出力が供給される放電灯と、前記整流手段からの入力電圧に応じた電圧を検出し、この検出電圧が設定値を越えた際に、スイッチング素子のオン時間を低下させて、高周波発振回路の出力電圧を一定になるように制御し、前記検出電圧が設定値以下の際に、スイッチング素子のオン時間制御を不作動にするオン時間制御手段とを具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】 商用交流電源からの交流電圧を整流して直流電圧を得る整流手段と、この整流手段からの前記直流電圧をスイッチング素子でオン時間調整可能な状態でオン・オフ制御して高周波電圧を出力する高周波発振回路と、この高周波発振回路の出力が供給される放電灯と、前記整流手段からの入力電圧に応じた電圧を検出し、この検出電圧が設定値を越えた際に、スイッチング素子のオン時間を低下させて、高周波発振回路の出力電圧を一定になるように制御し、前記検出電圧が設定値以下の際に、スイッチング素子のオン時間制御を不作動にするオン時間制御手段と、前記整流手段、定電流発生手段、高周波発振回路及び回路手段とを内部に収納する筐体と、この筐体の外側に設けられ、前記放電灯を取付けるとともに、該放電灯と高周波発振回路の電気的接続を行うソケットとを具備したことを特徴とする照明装置。

【図2】
image rotate


【図1】
image rotate