放電灯用電極及びその製造方法
【課題】切削型電極において、コイル抜けを防止するとともに、点滅の繰り返しによるコイル間の隙間の発生を抑制する構成を提供する。
【解決手段】放電灯用電極において、放電用の先端部(11)が切削加工された芯棒(10)、及び先端部を露出させた状態で芯棒にnターン巻回されたコイル(20)からなり、少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分(Fa)及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分(Fb)が溶接される構成とした。
【解決手段】放電灯用電極において、放電用の先端部(11)が切削加工された芯棒(10)、及び先端部を露出させた状態で芯棒にnターン巻回されたコイル(20)からなり、少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分(Fa)及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分(Fb)が溶接される構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電灯用電極及びその製造方法に関し、より具体的には、コイルが巻回される先端切削型の放電灯用電極の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放電灯用の電極は先端溶融型電極と先端切削型電極に大別される。先端溶融型電極とは、芯棒の先端部にコイルを巻回し、芯棒先端部及びその付近のコイルをともに溶融してドーム状の先端部を形成した電極である。先端切削型電極とは、先端をテーパー状に切削加工してその先端部を露出させた状態で芯棒にコイルを巻回及び固定した電極である。本発明は、溶接の容易性等から後者の切削型電極を採用する。
【0003】
一般に、芯棒に被覆されるコイルは電極の温度を調整する機能を持ち、これによって始動特性及び放電中の放熱特性が決定され、結果として放電特性が決まる。切削型電極では、コイルが芯棒から抜け落ちるコイル抜けを防止する構造が必要となる。特許文献1−3に切削型電極の例が開示されている。
【0004】
特許文献1によると、芯棒に巻回されたコイルの後端部を芯棒とともに溶接して芯棒とコイルを一体化し、コイル抜けやコイルが後方に伸びるスプリングバックを防止する構成が開示されている。
特許文献2によると、芯棒に多層に巻回されたコイルのうち下層コイルの前端部及び後端部を芯棒に対してレーザー溶接し、コイルを芯棒に固定する構成が開示されている。
特許文献3によると、芯棒に突起が設けられ、その突起によってコイル位置が規制されて位置決めされる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4325518号公報
【特許文献2】特表2001−527271号公報
【特許文献3】特許第4188480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1−2の構成によりコイル抜けは防止されるが、コイル自体のアライメントの乱れを抑制することはできない。例えば、特許文献1の構成によると、放電灯の点灯/消灯の繰り返し(点滅)により電極が熱膨張/収縮を繰り返し、これによりコイルが前方に伸びる等してコイル間に隙間ができる場合がある。また、特許文献2の場合でも、下層コイルの両端部の位置は固定されることが期待されるが、点滅による電極の熱膨張/収縮の繰り返しによって、上層コイルの整列状態が緩み、コイル間に隙間ができる場合がある。
【0007】
このようにコイル間に隙間が発生することによって、コイルの熱伝導特性が設計当初のものから変化してしまい、点滅回数が累積的に多くなるにつれて所望の始動性又は点灯特性が得られなくなる可能性がある。また、コイル間の隙間が発生することにより放電開始の起点位置も変化し、やはり始動時動作が設計当初の所望の状態ではなくなる可能性がある。
【0008】
また、特許文献3のように、コイルの各ターンの位置を固定するためにはターン数に応じて多数の突起が必要となり、芯棒の構成が複雑となるために生産性が悪いという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、切削型電極において、コイル抜けを防止するとともに、点滅の繰り返しによるコイル間の隙間の発生を防止する構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面は、放電灯用電極であって、放電用の先端部(11)が切削加工された芯棒(10)、及び先端部を露出させた状態で芯棒にnターン巻回されたコイル(20)からなり、少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分(Fa)及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分(Fb)が溶接された放電灯用電極である。
【0011】
本発明の第2の側面は、上記第1の側面の放電灯用電極からなる一対の電極(30)及び発光管(40)を備え、一対の放電灯用電極が発光管の内部に対向配置された放電灯である。
【0012】
本発明の第3の側面は、放電灯用電極の製造方法であって、放電用の先端部が切削加工された芯棒を用意する工程、先端部を露出させた状態で芯棒にコイルをnターン巻回する工程、及び少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分を溶接する工程を備える製造方法である。
【0013】
上記の各側面において、第1の部分と第2の部分の間を線状に溶接することもできる。ここで、第1の部分から第2の部分までを芯棒の長手方向に沿って略直線状に連続して溶接するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例を示す放電灯用電極を示す写真である。
【図2A】本発明の第1の実施例の変形例を示す図である。
【図2B】本発明の第1の実施例の変形例を示す図である。
【図3A】本発明の第2の実施例を示す放電灯用電極を示す写真である。
【図3B】本発明の第2の実施例を示す放電灯用電極を示す図である。
【図4A】本発明の第2の実施例の変形例を示す図である。
【図4B】本発明の第2の実施例の変形例を示す図である。
【図5】本発明の放電灯を示す図である。
【図6】本発明の放電灯用電極の製造方法を示すフローチャートである。
【図7A】本発明を補足説明する図である。
【図7B】本発明を補足説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例1.
図1に本発明の第1の実施例による放電灯用電極1を示す。放電灯用電極1は、放電用の先端部11が切削加工された芯棒10、及び先端部11を露出させた状態で芯棒にnターン巻回されたコイル20からなる。本実施例では、コイル20のうち、少なくとも第1ターンT1とその隣接ターンT2の間の第1の部分Fa及び第nターンTnとその隣接ターンTn−1の間の第2の部分Fbが溶接される。溶接はレーザー、TIG、抵抗溶接等で行なわれる。なお、芯棒10とコイル20の間は溶接されない。
【0016】
上記二箇所の溶接により、コイル20の先端径部分(第1ターンT1から第2ターンT2にかけて)及び後端径部分(第n−1ターンTn−1から第nターンTnにかけて)の径が規定されるので、コイル20が緩むことなく、コイル抜けが防止できる。また、コイル20の先端径部分及び後端径部分の形状が確定されることにより、これらの部分が芯棒10を確実にホールドすることができ、コイル20が電極軸方向にずれることがない。従って、コイル間隙間の発生を防止することができる。
【0017】
また、特許文献1及び2ではいずれも溶接がコイルと芯棒の異種材料間(仮に同種であったとしても熱容量が大きく異なる)で行なわれるが、本実施例では溶接がコイル間という同種材料間であるため、溶接の作業性が良い。
【0018】
さらに、図2A及び2Bに本実施例の変形例である電極2及び3を示す。電極2及び3は、溶接部分FaとFbの間に中間的な溶接部分Fc、Fd、Fe及びFfを設けて溶接部分の数を増やし、コイル抜け防止及びコイル間隙間の発生防止の効果をより補強するものである。電極2では溶接部分Fa、Fb、Fc及びFdが同じ方向に面しており、図2Bでは溶接部分Fa、Fb、Fe及びFfが電極軸に対して多方向に分散される。電極2においては、電極2に対してほぼ一方向から溶接できる(例えば、一方向からレーザーを照射できる)ので溶接作業の効率が良い。電極3においては、溶接部分が電極3上で分散されているので、少ない溶接箇所で補強効果を得ることが可能である。なお、図2A及び2Bではそれぞれ2個の中間的溶接部分を示しているが、中間的溶接部分の数は任意である。
【0019】
実施例2.
上記第1の実施例では溶接箇所が点状のものを示したが、第2の実施例では溶接箇所が線状のものを示す。図3Aに本発明の第2の実施例による電極4の写真を示し、図3Bにその図解を示す。本実施例では、第1ターンT1とその隣接ターンT2の間の部分Faから、第nターンTnとその隣接ターンTn−1の間の部分Fbにかけて、芯棒10の長手方向に略直線状に連続して溶接部Fa−bとして溶接される。溶接部Fa−bは一連となっていることが望ましいが、途中で部分的に途切れていても問題はない。本実施例でも、溶接はレーザー、TIG、抵抗溶接等で行なわれ、芯棒10とコイル20の間は溶接されない。
【0020】
上記の溶接部Fa−bにより、コイル20の各ターンの径が規定されるので、コイル20が緩むことなく、コイル抜けが防止できる。また、コイル20の各ターンの形状が確定されることにより、これらの部分が芯棒10を確実にホールドすることができ、コイル20が軸方向にずれることがない。従って、コイル間隙間の発生を防止できる。
【0021】
また、本実施例は各ターンを一体化するので、実施例1の図1の場合と比べてコイル抜け防止及びコイル間隙間の発生防止の効果が高く、しかも、図2A又は2Bの場合に比べて溶接の位置決め精度が要求されず、容易な溶接が可能となる。また、溶接部分を直線状にすることにより最小限の溶接とすることができ、生産性が良い。
【0022】
図4Aに本実施例の変形例による電極5を示す。上記電極4では溶接部分Fa−bをほぼ同一面で直線上に溶接するものとしたが、電極5では溶接部分Fa−bが螺旋状に溶接される。このように、電極5では溶接範囲を広くすることにより、コイル抜け防止及びコイル間隙間の発生防止の効果がさらに向上する。また、溶接箇所が電極軸に対して全方向に分散されるので、電極の物理的プロファイルを電極軸に対して対称にすることができる。
【0023】
図4Bに本実施例の変形例による電極6を示す。上記電極4及び5では溶接部Fa−bを一列としたが、電極6では溶接部を複数列とする。図示するように一方の溶接部Fa´は溶接部Faを含み、他方の溶接部Fb´は溶接部Fbを含む。そして、各溶接部が電極軸に対して平行となるようにしている。この構成により、コイル20の端部21及び22付近を溶接しつつも溶接長を最小にすることができる。また、例えばレーザー溶接する場合に、一回の溶接動作において、レーザーと電極6とを電極軸に対して相対的に回転させながら溶接を行なう必要がなく(即ち、電極6を軸回転させながらレーザーを照射したり、レーザーを電極6の周りに回転させながら照射したりする必要がなく)、製造が容易となる。
【0024】
なお、溶接長を最小にするために溶接部Fa´とFb´は長さ方向に重なりを持たない長さとしているが、各溶接部の長さは図示したものよりも長くてもよい。例えば、Fa´が第nターンTnに到達していてもよいし、Fb´が第1ターンT1に到達していてもよい。言い換えると、図3における線状の溶接部を複数本としてもよい。
【0025】
図5に上記各実施例による一対の電極30を用いる放電灯を示す。放電ランプは石英ガラス等の発光管40、及び発光管40内に対向配置された一対の電極30を備える。一対の電極30は上記の電極1−6のいずれかであればよい。発光管40は各電極30に接続されたモリブデン箔31及びリード32を備える。なお、発光管40の内部には少なくとも水銀及び不活性ガスが封入されている。本発明の電極は高圧放電灯に特に適している。
これにより、始動特性及び放電特性について、点滅回数が累積されても設計当初の所望の特性を維持できる放電灯が得られる。
【0026】
図6に本発明の放電灯用電極の製造方法のフローチャートを示す。
工程S100で、放電用の先端部11が切削加工された芯棒10が用意される。
工程S110で、先端部11を露出させた状態で芯棒10にコイル20がnターン巻回される。
【0027】
工程S120で、少なくとも第1ターンT1とその隣接ターンT2の間の第1の部分Fa及び第nターンTnとその隣接ターンTn−1の間の第2の部分Fbを溶接する。ここで、前述したように、第1の部分Faと第2の部分Fbとの間に他の溶接部分を設けてもよいし、第1の部分Faと第2の部分Fbとの間を線状に溶接してもよい。
【0028】
上記製造方法により、コイル抜けを防止するとともに、点滅の繰り返しによるコイル間の隙間の発生を防止する構成の電極を高い生産性で製造することができる。
【0029】
以上に、本発明の最も好適な実施例を示したが、本発明は発明の趣旨を逸脱しない範囲で以下のように変形可能である。
(1)上記各実施例において、図7Aに示すように、溶接部分Faが第1ターンT1の端部を含み、溶接部分Fbが第nターンTnの端部を含むようにしてもよい。これにより、コイル端部からの望ましくない放電を防止できる。
(2)上記実施例では単層巻きコイルを示したが、多層巻きコイルの場合でも、例えば図7Bのように、下層から上層にわたって連続して溶接することにより本発明の効果を達成できる。
(3)上記実施例では、コイル20の巻き方向について、電極先端側を第1ターン(電極根元側を第nターン)としているが、電極根元側を第1ターン(電極先端側を第nターン)としてもよい。また、溶接部Fa、Fb、Fc、Fd、Fe及びFfの溶接順序は任意であり、溶接部Fa−b、Fa´又はFb´の溶接方向も任意である。
【符号の説明】
【0030】
1−6.電極
10.芯棒
11.先端部
20.コイル
30.電極
40.発光管
Fa、Fb、Fc、Fd、Fe、Ff、Fa−b、Fa´、Fb´.溶接部
【技術分野】
【0001】
本発明は放電灯用電極及びその製造方法に関し、より具体的には、コイルが巻回される先端切削型の放電灯用電極の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放電灯用の電極は先端溶融型電極と先端切削型電極に大別される。先端溶融型電極とは、芯棒の先端部にコイルを巻回し、芯棒先端部及びその付近のコイルをともに溶融してドーム状の先端部を形成した電極である。先端切削型電極とは、先端をテーパー状に切削加工してその先端部を露出させた状態で芯棒にコイルを巻回及び固定した電極である。本発明は、溶接の容易性等から後者の切削型電極を採用する。
【0003】
一般に、芯棒に被覆されるコイルは電極の温度を調整する機能を持ち、これによって始動特性及び放電中の放熱特性が決定され、結果として放電特性が決まる。切削型電極では、コイルが芯棒から抜け落ちるコイル抜けを防止する構造が必要となる。特許文献1−3に切削型電極の例が開示されている。
【0004】
特許文献1によると、芯棒に巻回されたコイルの後端部を芯棒とともに溶接して芯棒とコイルを一体化し、コイル抜けやコイルが後方に伸びるスプリングバックを防止する構成が開示されている。
特許文献2によると、芯棒に多層に巻回されたコイルのうち下層コイルの前端部及び後端部を芯棒に対してレーザー溶接し、コイルを芯棒に固定する構成が開示されている。
特許文献3によると、芯棒に突起が設けられ、その突起によってコイル位置が規制されて位置決めされる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4325518号公報
【特許文献2】特表2001−527271号公報
【特許文献3】特許第4188480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1−2の構成によりコイル抜けは防止されるが、コイル自体のアライメントの乱れを抑制することはできない。例えば、特許文献1の構成によると、放電灯の点灯/消灯の繰り返し(点滅)により電極が熱膨張/収縮を繰り返し、これによりコイルが前方に伸びる等してコイル間に隙間ができる場合がある。また、特許文献2の場合でも、下層コイルの両端部の位置は固定されることが期待されるが、点滅による電極の熱膨張/収縮の繰り返しによって、上層コイルの整列状態が緩み、コイル間に隙間ができる場合がある。
【0007】
このようにコイル間に隙間が発生することによって、コイルの熱伝導特性が設計当初のものから変化してしまい、点滅回数が累積的に多くなるにつれて所望の始動性又は点灯特性が得られなくなる可能性がある。また、コイル間の隙間が発生することにより放電開始の起点位置も変化し、やはり始動時動作が設計当初の所望の状態ではなくなる可能性がある。
【0008】
また、特許文献3のように、コイルの各ターンの位置を固定するためにはターン数に応じて多数の突起が必要となり、芯棒の構成が複雑となるために生産性が悪いという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、切削型電極において、コイル抜けを防止するとともに、点滅の繰り返しによるコイル間の隙間の発生を防止する構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面は、放電灯用電極であって、放電用の先端部(11)が切削加工された芯棒(10)、及び先端部を露出させた状態で芯棒にnターン巻回されたコイル(20)からなり、少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分(Fa)及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分(Fb)が溶接された放電灯用電極である。
【0011】
本発明の第2の側面は、上記第1の側面の放電灯用電極からなる一対の電極(30)及び発光管(40)を備え、一対の放電灯用電極が発光管の内部に対向配置された放電灯である。
【0012】
本発明の第3の側面は、放電灯用電極の製造方法であって、放電用の先端部が切削加工された芯棒を用意する工程、先端部を露出させた状態で芯棒にコイルをnターン巻回する工程、及び少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分を溶接する工程を備える製造方法である。
【0013】
上記の各側面において、第1の部分と第2の部分の間を線状に溶接することもできる。ここで、第1の部分から第2の部分までを芯棒の長手方向に沿って略直線状に連続して溶接するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例を示す放電灯用電極を示す写真である。
【図2A】本発明の第1の実施例の変形例を示す図である。
【図2B】本発明の第1の実施例の変形例を示す図である。
【図3A】本発明の第2の実施例を示す放電灯用電極を示す写真である。
【図3B】本発明の第2の実施例を示す放電灯用電極を示す図である。
【図4A】本発明の第2の実施例の変形例を示す図である。
【図4B】本発明の第2の実施例の変形例を示す図である。
【図5】本発明の放電灯を示す図である。
【図6】本発明の放電灯用電極の製造方法を示すフローチャートである。
【図7A】本発明を補足説明する図である。
【図7B】本発明を補足説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例1.
図1に本発明の第1の実施例による放電灯用電極1を示す。放電灯用電極1は、放電用の先端部11が切削加工された芯棒10、及び先端部11を露出させた状態で芯棒にnターン巻回されたコイル20からなる。本実施例では、コイル20のうち、少なくとも第1ターンT1とその隣接ターンT2の間の第1の部分Fa及び第nターンTnとその隣接ターンTn−1の間の第2の部分Fbが溶接される。溶接はレーザー、TIG、抵抗溶接等で行なわれる。なお、芯棒10とコイル20の間は溶接されない。
【0016】
上記二箇所の溶接により、コイル20の先端径部分(第1ターンT1から第2ターンT2にかけて)及び後端径部分(第n−1ターンTn−1から第nターンTnにかけて)の径が規定されるので、コイル20が緩むことなく、コイル抜けが防止できる。また、コイル20の先端径部分及び後端径部分の形状が確定されることにより、これらの部分が芯棒10を確実にホールドすることができ、コイル20が電極軸方向にずれることがない。従って、コイル間隙間の発生を防止することができる。
【0017】
また、特許文献1及び2ではいずれも溶接がコイルと芯棒の異種材料間(仮に同種であったとしても熱容量が大きく異なる)で行なわれるが、本実施例では溶接がコイル間という同種材料間であるため、溶接の作業性が良い。
【0018】
さらに、図2A及び2Bに本実施例の変形例である電極2及び3を示す。電極2及び3は、溶接部分FaとFbの間に中間的な溶接部分Fc、Fd、Fe及びFfを設けて溶接部分の数を増やし、コイル抜け防止及びコイル間隙間の発生防止の効果をより補強するものである。電極2では溶接部分Fa、Fb、Fc及びFdが同じ方向に面しており、図2Bでは溶接部分Fa、Fb、Fe及びFfが電極軸に対して多方向に分散される。電極2においては、電極2に対してほぼ一方向から溶接できる(例えば、一方向からレーザーを照射できる)ので溶接作業の効率が良い。電極3においては、溶接部分が電極3上で分散されているので、少ない溶接箇所で補強効果を得ることが可能である。なお、図2A及び2Bではそれぞれ2個の中間的溶接部分を示しているが、中間的溶接部分の数は任意である。
【0019】
実施例2.
上記第1の実施例では溶接箇所が点状のものを示したが、第2の実施例では溶接箇所が線状のものを示す。図3Aに本発明の第2の実施例による電極4の写真を示し、図3Bにその図解を示す。本実施例では、第1ターンT1とその隣接ターンT2の間の部分Faから、第nターンTnとその隣接ターンTn−1の間の部分Fbにかけて、芯棒10の長手方向に略直線状に連続して溶接部Fa−bとして溶接される。溶接部Fa−bは一連となっていることが望ましいが、途中で部分的に途切れていても問題はない。本実施例でも、溶接はレーザー、TIG、抵抗溶接等で行なわれ、芯棒10とコイル20の間は溶接されない。
【0020】
上記の溶接部Fa−bにより、コイル20の各ターンの径が規定されるので、コイル20が緩むことなく、コイル抜けが防止できる。また、コイル20の各ターンの形状が確定されることにより、これらの部分が芯棒10を確実にホールドすることができ、コイル20が軸方向にずれることがない。従って、コイル間隙間の発生を防止できる。
【0021】
また、本実施例は各ターンを一体化するので、実施例1の図1の場合と比べてコイル抜け防止及びコイル間隙間の発生防止の効果が高く、しかも、図2A又は2Bの場合に比べて溶接の位置決め精度が要求されず、容易な溶接が可能となる。また、溶接部分を直線状にすることにより最小限の溶接とすることができ、生産性が良い。
【0022】
図4Aに本実施例の変形例による電極5を示す。上記電極4では溶接部分Fa−bをほぼ同一面で直線上に溶接するものとしたが、電極5では溶接部分Fa−bが螺旋状に溶接される。このように、電極5では溶接範囲を広くすることにより、コイル抜け防止及びコイル間隙間の発生防止の効果がさらに向上する。また、溶接箇所が電極軸に対して全方向に分散されるので、電極の物理的プロファイルを電極軸に対して対称にすることができる。
【0023】
図4Bに本実施例の変形例による電極6を示す。上記電極4及び5では溶接部Fa−bを一列としたが、電極6では溶接部を複数列とする。図示するように一方の溶接部Fa´は溶接部Faを含み、他方の溶接部Fb´は溶接部Fbを含む。そして、各溶接部が電極軸に対して平行となるようにしている。この構成により、コイル20の端部21及び22付近を溶接しつつも溶接長を最小にすることができる。また、例えばレーザー溶接する場合に、一回の溶接動作において、レーザーと電極6とを電極軸に対して相対的に回転させながら溶接を行なう必要がなく(即ち、電極6を軸回転させながらレーザーを照射したり、レーザーを電極6の周りに回転させながら照射したりする必要がなく)、製造が容易となる。
【0024】
なお、溶接長を最小にするために溶接部Fa´とFb´は長さ方向に重なりを持たない長さとしているが、各溶接部の長さは図示したものよりも長くてもよい。例えば、Fa´が第nターンTnに到達していてもよいし、Fb´が第1ターンT1に到達していてもよい。言い換えると、図3における線状の溶接部を複数本としてもよい。
【0025】
図5に上記各実施例による一対の電極30を用いる放電灯を示す。放電ランプは石英ガラス等の発光管40、及び発光管40内に対向配置された一対の電極30を備える。一対の電極30は上記の電極1−6のいずれかであればよい。発光管40は各電極30に接続されたモリブデン箔31及びリード32を備える。なお、発光管40の内部には少なくとも水銀及び不活性ガスが封入されている。本発明の電極は高圧放電灯に特に適している。
これにより、始動特性及び放電特性について、点滅回数が累積されても設計当初の所望の特性を維持できる放電灯が得られる。
【0026】
図6に本発明の放電灯用電極の製造方法のフローチャートを示す。
工程S100で、放電用の先端部11が切削加工された芯棒10が用意される。
工程S110で、先端部11を露出させた状態で芯棒10にコイル20がnターン巻回される。
【0027】
工程S120で、少なくとも第1ターンT1とその隣接ターンT2の間の第1の部分Fa及び第nターンTnとその隣接ターンTn−1の間の第2の部分Fbを溶接する。ここで、前述したように、第1の部分Faと第2の部分Fbとの間に他の溶接部分を設けてもよいし、第1の部分Faと第2の部分Fbとの間を線状に溶接してもよい。
【0028】
上記製造方法により、コイル抜けを防止するとともに、点滅の繰り返しによるコイル間の隙間の発生を防止する構成の電極を高い生産性で製造することができる。
【0029】
以上に、本発明の最も好適な実施例を示したが、本発明は発明の趣旨を逸脱しない範囲で以下のように変形可能である。
(1)上記各実施例において、図7Aに示すように、溶接部分Faが第1ターンT1の端部を含み、溶接部分Fbが第nターンTnの端部を含むようにしてもよい。これにより、コイル端部からの望ましくない放電を防止できる。
(2)上記実施例では単層巻きコイルを示したが、多層巻きコイルの場合でも、例えば図7Bのように、下層から上層にわたって連続して溶接することにより本発明の効果を達成できる。
(3)上記実施例では、コイル20の巻き方向について、電極先端側を第1ターン(電極根元側を第nターン)としているが、電極根元側を第1ターン(電極先端側を第nターン)としてもよい。また、溶接部Fa、Fb、Fc、Fd、Fe及びFfの溶接順序は任意であり、溶接部Fa−b、Fa´又はFb´の溶接方向も任意である。
【符号の説明】
【0030】
1−6.電極
10.芯棒
11.先端部
20.コイル
30.電極
40.発光管
Fa、Fb、Fc、Fd、Fe、Ff、Fa−b、Fa´、Fb´.溶接部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯用電極であって、
放電用の先端部(11)が切削加工された芯棒(10)、及び
前記先端部を露出させた状態で前記芯棒にnターン巻回されたコイル(20)
からなり、
少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分(Fa)及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分(Fb)が溶接された放電灯用電極。
【請求項2】
請求項1の放電灯用電極であって、前記第1の部分と前記第2の部分の間が線状に溶接された放電灯用電極。
【請求項3】
請求項2の放電灯用電極であって、前記第1の部分から前記第2の部分までが前記芯棒の長手方向に沿って略直線状に連続して溶接された放電灯用電極。
【請求項4】
請求項1記載の放電灯用電極からなる一対の電極(30)及び発光管(40)を備え、該一対の放電灯用電極が該発光管の内部に対向配置された放電灯。
【請求項5】
放電灯用電極の製造方法であって、
放電用の先端部が切削加工された芯棒を用意する工程、
前記先端部を露出させた状態で前記芯棒にコイルをnターン巻回する工程、及び
少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分を溶接する工程
を備える製造方法。
【請求項6】
請求項5の製造方法であって、前記溶接する工程が、前記第1の部分と前記第2の部分との間を線状に溶接する工程を含む、製造方法。
【請求項7】
請求項5の製造方法であって、前記溶接する工程が、前記第1の部分から前記第2の部分までを前記芯棒の長手方向に沿って略直線状に連続して溶接する工程を含む、製造方法。
【請求項1】
放電灯用電極であって、
放電用の先端部(11)が切削加工された芯棒(10)、及び
前記先端部を露出させた状態で前記芯棒にnターン巻回されたコイル(20)
からなり、
少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分(Fa)及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分(Fb)が溶接された放電灯用電極。
【請求項2】
請求項1の放電灯用電極であって、前記第1の部分と前記第2の部分の間が線状に溶接された放電灯用電極。
【請求項3】
請求項2の放電灯用電極であって、前記第1の部分から前記第2の部分までが前記芯棒の長手方向に沿って略直線状に連続して溶接された放電灯用電極。
【請求項4】
請求項1記載の放電灯用電極からなる一対の電極(30)及び発光管(40)を備え、該一対の放電灯用電極が該発光管の内部に対向配置された放電灯。
【請求項5】
放電灯用電極の製造方法であって、
放電用の先端部が切削加工された芯棒を用意する工程、
前記先端部を露出させた状態で前記芯棒にコイルをnターン巻回する工程、及び
少なくとも第1ターンとその隣接ターンの間の第1の部分及び第nターンとその隣接ターンの間の第2の部分を溶接する工程
を備える製造方法。
【請求項6】
請求項5の製造方法であって、前記溶接する工程が、前記第1の部分と前記第2の部分との間を線状に溶接する工程を含む、製造方法。
【請求項7】
請求項5の製造方法であって、前記溶接する工程が、前記第1の部分から前記第2の部分までを前記芯棒の長手方向に沿って略直線状に連続して溶接する工程を含む、製造方法。
【図2A】
【図2B】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図1】
【図3A】
【図2B】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図1】
【図3A】
【公開番号】特開2011−216444(P2011−216444A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86130(P2010−86130)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【特許番号】特許第4748466号(P4748466)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【特許番号】特許第4748466号(P4748466)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
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