放電灯電子式安定器
【課題】放電灯のランプ電流が反転した際に再点弧電圧が上昇しても、必要なランプ電流を安定して流すことができ、チラツキや立ち消えを防止できる放電灯の電子式安定器を提供すること。
【解決手段】
降圧チョッパ型の電力調整回路において、高周波成分除去用のコンデンサを、互いに並列接続された第1コンデンサC1および第2コンデンサC2に分割して構成する。そして第2コンデンサC2の電流I2および放電灯Laの電流I3の合計電流が一定となるように、電力調整用スイッチング素子Q1をオン/オフ制御する。ランプ電流I3が反転した際、第1コンデンサC1の電流I1が定電流制御を受けないため、第1コンデンサC1が短時間で充電され、続けて第2コンデンサC2が充電される。従って、従来よりも早くコンデンサ端子間電圧を再点弧電圧に到達させることができる。
【解決手段】
降圧チョッパ型の電力調整回路において、高周波成分除去用のコンデンサを、互いに並列接続された第1コンデンサC1および第2コンデンサC2に分割して構成する。そして第2コンデンサC2の電流I2および放電灯Laの電流I3の合計電流が一定となるように、電力調整用スイッチング素子Q1をオン/オフ制御する。ランプ電流I3が反転した際、第1コンデンサC1の電流I1が定電流制御を受けないため、第1コンデンサC1が短時間で充電され、続けて第2コンデンサC2が充電される。従って、従来よりも早くコンデンサ端子間電圧を再点弧電圧に到達させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタルハライド系、水銀系、高圧ナトリウム系に属する同一定格の高輝度高圧放電灯(いわゆるHIDランプ)の電子式安定器に関し、特に放電灯に流れるランプ電流の方向を反転させた場合にチラツキ及び立ち消えを防止できる機能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
放電灯はその始動時に放電の開始を行い、且つ放電開始後は電流の限流を行うため、いわゆる安定器を用いる必要がある。そして、放電灯を商用電源の周波数で正弦波点灯した場合にはチラツキを生じやすく、最近ではインバータ方式の電子式安定器を用いて一定のランプ電力を供給する矩形波点灯が主流となっている。
【0003】
特許文献1には、従来の電子式安定器が開示されている。この電子式安定器を図4に基づいて説明すると、直流電力を供給する直流電源1と、この出力端に接続され、かつ放電灯Laへの供給電力を調整する電力調整回路2を有する。なお、特許文献1には記載されていないが、図4のように調整された電力を放電灯Laに供給する際、放電灯Laに流れるランプ電流の方向を所定周期で反転させる電流方向反転回路3を設けても、基本となる回路構成は特許文献1と共通する。電力調整回路2は一般的な降圧チョッパ回路であり、電力調整用スイッチング素子Q1と、インダクタLと、ダイオードDと、高周波除去用コンデンサCとを有して構成され、高周波除去用コンデンサCの両端に電流方向反転回路3を介して放電灯Laが接続される。電流方向反転回路3は、例えば4つのスイッチング素子Q2〜Q5をブリッジ接続して、電力調整用スイッチング素子Q1よりも遅い周期で各スイッチング素子をオン/オフ制御することで、放電灯Laに流れる電流の方向を低周波で交番させている。
【0004】
制御回路21は、高周波除去用コンデンサCに流れる電流I1とランプ電流I2の合成電流(I1+I2)が一定となるように、電力調整用スイッチング素子Q1を高周波でオン/オフ制御する。合成電流(I1+I2)は、コンデンサCおよびダイオードDの負極側の各端子を接続するランプ電流検知抵抗Rで検知される。制御回路21は合成電流(I1+I2)に基づいてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数又はオンデューティを決定し、ランプ電流I2の定電流制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−45795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、上記の電子式安定器に、同一定格で種類の異なる放電灯を取り付けて、定電流制御を行っても問題なく安定点灯させることができたが、昨今、放電灯の色温度、発光管内の添加物、外球管内のガス、発光管形状などは多岐に渡り、中には前述した従来のランプ電流の定電流制御方式では、同一定格の放電灯でも再点弧電圧の上昇により安定点灯できない放電灯も現れてきた。
放電灯の再点弧電圧について図5に基づいて簡単に説明する。図5は、時間Tx1にて放電灯に流れる電流の方向が反転すると、放電灯がハイインピーダンス状態になる。ハイインピーダンス状態の放電灯に、反転前と同じ大きさのランプ電流I2を流すには、反転前の安定点灯状態よりも高いランプ電圧V2を印加しなければならない。このハイインピーダンス状態で所定の大きさのランプ電流I2を流すのに必要な電圧を再点弧電圧と呼ぶ。図5に示すように電流方向の反転後は、この再点弧電圧が上昇するため、すぐに所定の大きさのランプ電流I2を流すことができず、図中の期間Txに放電灯が消えかかった不安定な点灯状態が続く。この期間TxにコンデンサCが充電されて、ランプ電圧V2が再点弧電圧に到達すれば、再びランプ電流I2が増大して、放電灯が安定点灯状態になる。一方、所定の期間でランプ電圧V2が再点弧電圧に達しないと、放電を維持し続けることができなくなり、チラツキや立ち消えが発生してしまう。
このように同一定格のランプでも、種類が異なるランプを点灯させる場合には、再点弧電圧の上昇に対応するために電子式安定器の仕様を変更しなければならない。そのため、同じ仕様の電子式安定器であっても同一定格の多種ランプとの組み合わせを可能とする電子式安定器が強く要求されるようになった。
【0007】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、直流電力を供給する直流電源回路と、前記直流電源回路からの直流電力を所定の大きさに調整する電力調整回路とを備え、ランプ電流の方向を交番して放電灯に供給する放電灯電子式安定器において、
その解決すべき課題は、放電灯に流れる電流の方向が反転した際に再点弧電圧が上昇しても、必要なランプ電流を安定して流すことができ、チラツキや立ち消えを防止でき、放電灯の寿命を長くすることができる放電灯の電子式安定器を提供することにある。また、その結果として同一定格であっても種類の異なる放電灯を安定点灯できる放電灯電子式安定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明にかかる放電灯電子式安定器においては、
前記電力調整回路は、前記直流電源回路の出力端間に直列に接続された、高周波数でスイッチング可能な電力調整用スイッチング素子と、このスイッチングに応じて磁気エネルギを蓄積/放出して電流を限流するインダクタと、この限流された電流が交番周波数で供給される前記放電灯とを有する。
前記放電灯の両端にはコンデンサが接続され、当該コンデンサは、前記ランプ電流の方向が反転した際、前記インダクタによって限流された電流により充電されて前記放電灯に必要なランプ電圧を生成可能に設けられている。
前記電力調整回路は、前記ランプ電流の方向が反転して、前記ランプ電流が略零になると、前記コンデンサを充電して当該コンデンサ端子間電圧を上昇させるとともに、前記コンデンサ端子間電圧が前記放電灯に必要なランプ電圧に達すると、前記放電灯に安定したランプ電流が流れるように設けられている。
そして、前記コンデンサの充電期間を短縮するために、当該コンデンサは、並列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサによって構成され、かつ、前記電力調整回路は、前記第2コンデンサの電流および前記放電灯のランプ電流の合計電流が一定となるように、前記電力調整用スイッチング素子を高周波でスイッチング制御して、前記第1コンデンサを一定電流制御されない電流によって充電することを特徴とする。
ここで、前記第2コンデンサの容量は、前記第1コンデンサの容量よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ランプ電流の方向が反転したあと充電が開始されるコンデンサを、第1コンデンサと、これより容量の大きい第2コンデンサとの並列接続による回路で構成した。かつ、ランプ電流に対する定電流制御を、放電灯に流れるランプ電流と第2コンデンサに流れる電流との合計の電流にも基づいて実行するようにした。これにより、従来よりも実際のランプ電流に近い電流値を捉えることができて、コンデンサの充電期間が短縮される。言い換えると、第1コンデンサに流れる電流は制御対象ではないため、第1コンデンサには制御されない大きな電流が流れて充電期間を短縮することができる。従って、交番するランプ電流の方向が反転した際、放電灯の再点弧電圧が上昇しても、短期間でコンデンサの充電を完了させることができ、放電灯に必要なランプ電流が流れ出すまでの不安定な点灯状態の期間を短くすることができる。そのため、再点弧電圧の発生によるチラツキ、立ち消えを防止することができ、放電灯の寿命を長くすることができる。また、その結果として同一定格であっても種類の異なる放電灯を安定して点灯できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる放電灯電子式安定器の概略回路構成の説明図である。
【図2】図1に示した回路の具体的な回路構成の説明図である。
【図3】図2に示した回路の電流方向反転回路のスイッチング素子のオン/オフ状態の説明図である。
【図4】従来の放電灯電子式安定器の概略回路構成の説明図である。
【図5】図4に示した回路のランプ電流とランプ電圧の関係を示すグラフである。
【図6】図4に示した回路のランプ電流とランプ電圧の実際の波形を示すグラフである。
【図7】比較例としての放電灯電子式安定器の概略回路構成図の説明図である。
【図8】図1に示した回路のランプ電流とランプ電圧の関係を示すグラフである。
【図9】第2実施形態にかかる放電灯電子式安定器の回路構成の説明図である。
【図10】図9に示した回路のスイッチング素子のオン/オフ状態の説明図である。
【図11】第3実施形態にかかる放電灯電子式安定器の回路構成の説明図である。
【図12】図11に示した回路のスイッチング素子のオン/オフ状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態にかかる放電灯電子式安定器の回路構成を示し、図2はその具体的な回路構成を示す。
図1において、電子式安定器は、直流電力を供給する直流電源1と、直流電源1の出力端に接続され放電灯Laへの供給電力を調整する降圧チョッパ型の電力調整回路2と、電力調整回路2からの直流電力を放電灯Laに供給する際、放電灯Laに流れる電流の方向を所定の周期で反転させる電流方向反転回路3とを備える。
直流電源1として、例えば図2に示すように交流電源ACの交流出力を整流する整流回路11と、整流回路の出力端間に接続され整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサC0とによって構成され、平滑コンデンサC0に蓄積した静電エネルギを電力調整回路2に出力可能な整流平滑回路を採用してもよい。
【0012】
電力調整回路2は、図2のように以下の各素子が接続されて構成されている。まず、直流電源1(平滑コンデンサC0)の正極側の出力端に電力調整用スイッチング素子Q1の一端を接続し、直流電源1(平滑コンデンサC0)の負極側の出力端と電力調整用スイッチング素子Q1の他端の間にインダクタLおよび第1コンデンサC1の直列回路を接続し、第1コンデンサC1の端子間に、これよりも容量の大きい第2コンデンサC2を並列に接続する。そして第2コンデンサC2の両端に電流方向反転回路3を介して放電灯Laが接続されている。
【0013】
電流方向反転回路3は、4つのスイッチング素子Q2〜Q5をブリッジ接続して構成される。各スイッチング素子Q2〜Q5および前述の電力調整用スイッチング素子Q1のオン/オフ制御は、制御回路21で一括して行われる。電力調整用スイッチング素子Q1は、数十kHzの高い周波数でオン/オフ制御される。各スイッチング素子Q2〜Q5は、電力調整用スイッチング素子Q1よりも低い、数10Hz〜数100Hzの周波数でをオン/オフ制御される。
【0014】
スイッチング素子Q2がオフに切換ってから次にオフに切換るまでを一周期Tとして、電流方向反転回路3の動作を図3に基づき説明する。一周期Tの前半では、スイッチング素子Q2、Q5がオフ状態で、スイッチング素子Q3、Q4がオン状態であり、一周期Tの後半では、全スイッチング素子Q2〜Q5が切換り、スイッチング素子Q2、Q5がオン状態で、スイッチング素子Q3、Q4がオフ状態になる。従って、ランプ電流I3が前半には電流方向反転回路3をQ4→La→Q3の順に流れ、後半にはQ2→La→Q5の順に流れる。このオン/オフ動作の繰り返しによって、放電灯Laに流れるランプ電流I3の方向が低周波で交番する。
【0015】
これらの電力調整回路2および電流方向反転回路3において、第1コンデンサC1と第2コンデンサC2が、本発明にかかる並列接続された第1コンデンサと第2コンデンサに相当する。そして、本実施形態の電力調整回路2の構成を言い換えると、直流電源1の出力端間に、電力調整用スイッチング素子Q1と、インダクタLと、電流方向反転回路3を介して放電灯Laとが直列に接続されており、放電灯Laの両端にはコンデンサが接続され、当該コンデンサは、並列接続された第1コンデンサC1と第2コンデンサC2によって構成されていると言える。
【0016】
次に、電力調整用スイッチング素子Q1の高周波スイッチング制御について説明する。
電力調整用スイッチング素子Q1がオン状態である期間に、このスイッチング素子Q1を流れる直流電源1の直流電流によってインダクタLに磁気エネルギが蓄積される。すなわち、スイッチング素子Q1がオンになると、平滑コンデンサC0の正極の端子からの直流電流が、スイッチング素子Q1→インダクタL→電流方向反転回路3→放電灯Laの順番で平滑コンデンサC0の負極の端子に流れて、インダクタLに磁気エネルギが蓄積される。
そして、電力調整用スイッチング素子Q1がオンからオフに切り替わった際、インダクタLの磁気エネルギの放出によってインダクタLには電流Iが連続して流れようとする。電力調整回路2には、スイッチング素子Q1がオフに切り替わった後、インダクタLからの電流Iが、電流方向反転回路3および放電灯Laを経由して再びインダクタLに戻るような閉ループの電流経路が形成されている。すなわち、インダクタLと第1コンデンサC1の直列回路の両端間が、インダクタLに戻る方向のみに電流を流すダイオードDによって接続されて、閉ループの電流経路が形成されている。従って、スイッチング素子Q1がオフになると、直流電流の供給が遮断され、スイッチング素子Q1とインダクタLの接続点における電圧が略零になる。そして、インダクタL1の磁気エネルギが電流となって放出され、インダクタL→電流方向反転回路3→放電灯La→ダイオードDの順番でインダクタLに戻るようになっている。
【0017】
なお、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2の負極側の端子間には、電流検知抵抗Rが接続されている。この抵抗Rは、インダクタLを流れる電流Iのうちの第2コンデンサC2へ流れる電流I2と、放電灯Laを流れるランプ電流I3の合計の電流(I2+I3)を検知する。検知電流(I2+I3)は制御回路21に入力される。
制御回路21は、マイクロ・コンピータにより構成されており、検知電流(I2+I3)値が一定の電流になるようにスイッチング素子Q1のオンデューティ(オン期間)を決定するアルゴリズムを有し、放電灯の定電流制御を行っている。
【0018】
このように電力調整回路2および電流方向反転回路3によって、放電灯Laには、電力調整用スイッチング素子Q1によって高周波駆動でありながら、低周波のランプ電流I3が流れる。電力調整回路2において、スイッチング素子Q1の高周波スイッチングにより、直流電流から矩形波電流が形成されると同時に、インダクタLによって限流される。さらに、第2コンデンサC2によって高周波成分が除去されることで、電力調整された直流電流が得られる。この電流が、電流方向反転回路3において低周波で交番するランプ電流となって放電灯に供給される。
【0019】
<電流方向の反転時に、再点弧電圧が上昇して、立ち消え現状が発生する場合の説明>
この現象について、図4に示す従来の電子式安定器、図7に示す比較例としての電子式安定器を用いて以下に説明する。
図4の従来の回路構成では、電流検知抵抗Rが、ダイオードDおよびコンデンサCの負極側の端子間に接続されている。電流検知抵抗Rに流れる合成電流(I1+I2)が一定となるように、スイッチング素子Q1のオン期間(Ton)が制御される。この定電流制御においてもランプ点灯が安定すると仮定すると、放電灯Laに流れるランプ電流I2とランプ電圧V2の関係は図5のようになり、以下の過程で変化する。
【0020】
(A)ランプ電流の方向(極性)が反転するまでは放電灯Laは安定点灯状態であり、放電灯Laに所定のランプ電流I2が流れる。この安定点灯状態では、コンデンサCに流れる電流I1はスイッチング素子Q1のスイッチング周期での充放電サイクルであり、積分すればゼロとなる。従って、電流検知抵抗Rの両端で観測される電流は、ランプ電流I2にほぼ等しい。
(B)ランプ電流の方向が反転すると(図中の時刻Tx1)、放電灯側がハイインピーダンス状態になり、放電灯の再点弧電圧が上昇する。そのため、コンデンサCに残留した電圧では、ランプ電流I2を流すことができなくなり微量の電流が流れるだけとなる。所定量のランプ電流I2を再び流す(再点弧する)には、コンデンサCを充電して、コンデンサCの端子間電圧が再点弧電圧に達するようにしなければならない。
(C)上記の充電過程では、コンデンサCへの充電電流I1が、電流検知抵抗Rを通過するため、充電電流I1が定電流制御を受ける。そのため、コンデンサ両端電圧の上昇は時間に比例する線形となる。
【0021】
(D)コンデンサCの電圧が上昇すると、直流電源1の出力電圧V1との電圧差ΔVが小さくなるため、スイッチング素子Q1のTonを最大にしても、定電流を維持できなくなり、コンデンサCの電圧上昇が緩やかになる。
(E)コンデンサ電圧上昇が緩やかになったとしても、時刻Tx2にて再点弧電圧を上回ることができれば、消えかかっていた放電灯Laのランプ電流が増大し安定点灯状態に戻る。再点弧電圧も通常電圧に戻る。
以上の過程(A)〜(E)のサイクルが点灯周波数(例えば160Hz)の半周期T/2で実行される。半周期T/2ごとに上記サイクルが実行されれば、放電灯の点灯を維持できる。
【0022】
図6に、図4の従来の電子式安定器で点灯させた場合に検出したランプ電圧V2とランプ電流I2の各波形を示す。同図(A)中のI2はランプ電流(縦軸0.5A/div)、V2はランプ電圧(縦軸100V/div)を示し、同図(B)も同様である。同図(B)は、同図(A)の期間Taを拡大して示したもので、横軸の時間軸の目盛は、同図(A)にて2mSec/div、同図(B)にて200μSec/divである。
時刻Tx1までは安定点灯状態であり、負の極性の略100Vのランプ電圧V2が印加されており、略0.5Aのランプ電流I2が負の方向に流れている。
時刻Tx1に電流方向が反転すると、ランプ電流I2は正の極性の略100V付近となるが、既に再点弧電圧がより高い値まで上昇しているため、ランプ電流I2は微量となる。
ランプ電圧V2が緩やかに上昇して時刻Tx2で再点弧電圧に達すると、ランプ電流I2が急激に増大する。時刻Tx2直後のランプ電流I2には、コンデンサCの放電電流が加算されるため、急上昇する。
【0023】
しかしながら、上記の過程(E)において、コンデンサCの電圧が再点弧電圧に達するまでの期間(図6中のTx)が長くなると、放電灯Laは放電を維持することができなくなり、立ち消えとなってしまう。この立ち消え現象は、放電灯の始動の際にも同じ原理で起こり得る現象である。
再点弧電圧の上昇は、放電灯固有の特性であり、解消のしようがない。従って、立ち消え現象を回避するためには、ランプ電圧V2、つまりコンデンサCの電圧を如何に速く上昇させるかということになる。
【0024】
コンデンサCへ流れる電流I1が一定の電流であれば、コンデンサCの容量を減らすことで電圧の上昇が速くなる。例えば、コンデンサ容量を0.47μFから0.1μFに減少させたところ、始動不良・立ち消えが減少した。
【0025】
次に、コンデンサCへの電流I1を定電流制御せず、放電灯Laへ流れる電流I2のみを定電流制御するために、電流検知抵抗Rの接続位置を変更して実験を行った。その回路構成を図7に示す。電流検知抵抗Rは、コンデンサCおよび放電灯Laの負極側の端子間に接続されている。
図7の回路構成にしたところ、電流検知抵抗Rの両端で検出される電流は、ランプ電流I2のみとなり、コンデンサCへの電流I1は定電流制御されない。従ってランプ電流I2の流れない区間(図6中のTx)では、電力調整用スイッチング素子Q1のオン時間Tonを最大(オンデューティーを約80%)にして直流電流を導通することにより、コンデンサCに大きな電流I1が流れ、コンデンサ電圧の上昇が速くなった。図7の回路構成に変更することで、再点弧電圧発生時にランプ立ち消えを抑える効果が確認できた。
【0026】
なお、図7の回路構成における、コンデンサCへの電流I1は、インダクタのインダクタンス値(L)と、インダクタ両端の電圧差ΔV、つまり直流電源の電圧V1とランプ電圧V2の差、そしてスイッチング素子Q1のオン時間Tonで決まり、次式のようになる。
【数1】
【0027】
上式に示すように、電圧V1が高いほど、オン時間Tonが長いほど、インダクタンス値(L)が小さいほど、より大きな再点弧電圧に応対できるようになる。
しかし、図7の回路構成では、コンデンサCへの電流I1が最大となる場合でも、インダクタLが飽和しないように設計しなければならない。また、コンデンサCの容量を減らした回路構成や、図7の回路構成にすると、ランプ立ち消えを抑える効果が得られるが、下記のような問題点も生じる。
【0028】
<ランプ電圧・電流リップルが大きくなる点>
コンデンサCの容量を減らすと、ランプ電圧・電流に残留するリップルが大きくなる。つまり、コンデンサCの充電を早くするために容量を減らすことで、ランプ電圧・電流に大きなリップルが残留してしまう。ランプ電圧・電流リップルを抑制するためにスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を上げると、電力損、放射ノイズに影響を与えてしまう。
<直流電源の電圧を上がることによる電力損>
また、コンデンサCの充電を早くするために直流電源1の出力電圧V1を上げると、電力損が大きくなってしまう。
<インダクタの大型化、高価なコアの使用>
コンデンサCに大きな電流I1を流すとインダクタLが飽和しやすくなるため、インダクタLの飽和電流耐量も大きくしなければならない。その結果、インダクタLが大型化したり、高価なコアを使用したりする必要が生じる。
【0029】
そこで本発明においては、以上の問題点を出すことなく放電灯Laの立ち消え現象を抑制するために、図1に示した回路構成を採用した。本実施形態では、再点弧するまでの期間を短縮して、再点弧電圧が従来よりも低い段階で再点弧させることを可能とした。
【0030】
図1の回路構成において、第1コンデンサC1は、第2コンデンサC2より早く充電を完了するように小さめの容量としている。また、第2コンデンサC2の容量は、第1コンデンサC1との合成容量によりランプ電圧・電流リップルを除去できるようにも調整されている。電流検知抵抗Rは、ランプ電流I3と第2コンデンサC2に流れる電流I2を合わせて観測することになるが、既存の降圧コンバータ回路に比べて放電灯側へ流れるランプ電流値(I3)に近い値を捉えることができる。
【0031】
図8には、図1に示した回路構成におけるランプ電圧V2とランプ電流I3の関係を示す。ランプ電圧V2およびランプ電流I3は以下の過程で変化する。
(A)ランプ電流の方向が反転するまでは放電灯は安定点灯状態であり、放電灯Laに所定のランプ電流I3が流れる。この安定点灯状態では、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2に流れる電流I1、I2はスイッチング素子Q1のスイッチング周期での充放電サイクルであり、積分すればゼロとなる。従って、電流検知抵抗Rの両端で観測される電流は、ランプ電流I3にほぼ等しい。
(B)ランプ電流の方向が反転すると(図中の時刻Tx1)、放電灯側がハイインピーダンス状態になり、放電灯の再点弧電圧が上昇する。容量の大きい第2コンデンサC2に残留した電圧でも、ランプ電流I3を流すことができなくなり微量の電流が流れるだけとなる。所定量のランプ電流I3を再び流す(再点弧する)には、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2を充電して、容量の大きい第2コンデンサC2の端子間電圧が再点弧電圧に達するようにしなければならない。
(C)上記の充電過程では、第1コンデンサC1への充電電流I1が、電流検知抵抗Rを通過しないため、充電電流I1に対して定電流制御されない。そのため、第1コンデンサC1には制御されない大きい電流が流れ、第1コンデンサC1両端電圧の上昇は時間に比例する線形ではあるが、従来よりも勾配の大きな線形となる。つまり、図5に示すコンデンサC両端電圧の上昇カーブよりも勾配が大きい上昇カーブとなる。従って、第1コンデンサC1の容量分を比較すると、従来のコンデンサよりも充電が早く完了する。
【0032】
(D)時刻Tx2にて第1コンデンサC1の充電が完了する。続いて時刻Tx3にて第2コンデンサC2の充電が完了する。この小容量の第1コンデンサC1の充電が完了してから大容量の第2コンデンサC2の充電が完了するまでの期間(Tx)中は、第2コンデンサC2への充電電流I2が電流検知抵抗Rを通過するため定電流制御を受ける。
(E)また、第2コンデンサC2の電圧が上昇すると、直流電源1の出力電圧V1との電圧差ΔVが小さくなるため、スイッチング素子Q1のTonを最大にしても、定電流を維持できなくなり、第2コンデンサC2の電圧上昇が緩やかになる。
(F)第2コンデンサC2の電圧上昇が緩やかになったとしても、時刻Tx3にて再点弧電圧を上回ることができれば、消えかかっていた放電灯Laのランプ電流が増大し安定点灯状態に戻る。再点弧電圧も通常電圧に戻る。
さらに従来の図5と比較すると、コンデンサC1、C2の充電期間が短縮されているので、再点弧電圧が図5ほど高くなる前に、第2コンデンサC2の電圧が再点弧電圧に達することができる。
【0033】
図4に示す従来の回路構成では、1つのコンデンサCが充電完了したのち、放電灯側にランプ電流が流れる。しかもコンデンサCに流れる電流は定電流制御されており充電速度に制限がある。これに対して本実施形態の回路構成(図1)では、第1コンデンサC1への充電電流I1は定電流制御の対象ではないため、図4の回路構成と比べて充電速度が速くなる。第2コンデンサC2の充電電流I2は制御対象であるため、従来の回路構成と充電速度は変わらない。しかし、第2コンデンサC2の容量は、従来の回路構成のコンデンサCの容量よりも小さいため、その分だけ充電時間は短縮される。このように、第1コンデンサC1は制御対象から外れているため充電速度が速く、かつ第2コンデンサC2の容量は従来回路のコンデンサCの容量よりも小さいため充電時間が短くなり、従来回路よりも早く充電を完了して放電灯Laに必要なランプ電流を早く送ることができる。
【0034】
本実施形態の図1の回路構成の場合に、前述の問題点は以下のように解消される。
<ランプ電圧・電流リップルが大きくなる点>
本実施形態では第1コンデンサC1と第2コンデンサC2の合成容量が従来のコンデンサ容量を維持しているために、残留するランプ電圧・電流リップルが大きくならない。また、第2コンデンサがリップル除去の機能を有するため、リップル電流の発生を抑制して電子式安定器に要求される規格を満足させることができる。また、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数を上げる必要がなく、電力損や放射ノイズに影響を与えない。
また、図7の比較例では、電流検知抵抗Rの位置を移動させたため、コンデンサ電流I1が制御されない。そのため、コンデンサ電流I1が大きくなり過ぎて、電流I3側まで影響を及ぼし、ランプ電流規格の一つである波高率が大きくなってしまう。本実施形態では、第1コンデンサC1に流れる電流I1は制御を受けないが、第1コンデンサC1の容量は従来のコンデンサ容量の一部であるから、その充電電流I1は少なくて済み、波高率の規格を満足させることができる。
【0035】
<直流電源の電圧を上がることによる電力損>
コンデンサCの充電を早くするために直流電源1の出力電圧V1を上げると、電力損が大きくなってしまうが、本実施形態では、従来のコンデンサを第1コンデンサC1と第2コンデンサC2に分割することでコンデンサ全体の充電時間を短縮することができる。従って、出力電圧V1を維持することが可能となり、電力損の問題が生じない。
<インダクタの大型化、高価なコアの使用>
図7の比較例のようにコンデンサCに制御されない大電流が流れるとインダクタLが飽和しやすくなるが、本実施形態では、制御されない第1コンデンサC1の充電電流I1は、比較例のコンデンサCの充電電流よりも少なくて済み、インダクタLの飽和電流耐量の増加がなく、インダクタLの大型化や高価なコアの使用を避けることができる。
【0036】
以上のように分割された第1、第2コンデンサC1、C2を設けて、第2コンデンサC2の電流I2と放電灯のランプ電流I3との合計電流を定電流制御することにより、各種ランプを電子式安定器で点灯制御する際の立ち消え現象と、リップル電流の発生を同時に抑制することができる。従って、ランプ寿命も長くなり、安定性の優れた点灯が可能となる。
本実施形態では第2コンデンサC2の容量が第1コンデンサC1の容量よりも大きく場合を説明したが、本発明としては、第1コンデンサおよび第2コンデンサが同じ容量であっても、第2コンデンサC2が第1コンデンサC1の容量よりも小さい容量であっても、定電流制御されない大きい充電電流I1によって第1コンデンサC1の充電時間が短縮されるから、前述と同様の効果が得られる。すなわち、コンデンサとしては、少なくとも2つの第1コンデンサおよび第2コンデンサによって構成され、各コンデンサが並列に接続されていればよい。なお、第2コンデンサC2の容量を第1コンデンサC1の容量よりも大きくすることで、第2コンデンサC2によるリップル除去性能、波高率の抑制効果をより高めることができる。
【0037】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態における電力調整回路2と電流方向反転回路3との両方の機能をもつ回路を、図9に示すように4個のスイッチング素子Q6〜Q9をブリッジ接続したフルブリッジ回路2Aにより構成したものである。第1実施形態における電力調整用スイッチング素子Q1、インダクタL、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、ダイオードDおよび放電灯Laの接続方法は、本実施形態において共通するので省略する。
なお、電流検知抵抗Rは、第2コンデンサC2の電流I2とランプ電流I3との合計電流(I2+I3)を検知する。この検知電流が一定になるように、制御回路21がスイッチング素子Q6〜Q9をオンオフ制御する。
【0038】
各スイッチング素子Q6〜Q9は、制御回路21からの制御信号によって、図10(A)〜(D)に示すように、スイッチング素子Q6がオンで、Q9が高周波スイッチングされて、スイッチング素子Q7、Q8がオフの状態と、スイッチング素子Q6、Q9がオフで、スイッチング素子Q7がオンで、Q8が高周波スイッチングされる状態とを交互に低周波(数十Hz〜数百Hz)で繰り返す。つまり素子Q6〜Q9によって図2におけるスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2〜Q5を代用している。
【0039】
スイッチング素子Q6がオンで、Q9が高周波スイッチングしている期間においては、スイッチング素子Q9のオン時、インダクタLにエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q9のオフ時、インダクタLに蓄積されているエネルギが放出され、インダクタL→ダイオードD8→スイッチング素子Q6→放電灯La→インダクタLの経路で電流が流れる。一方、スイッチング素子Q7がオンで、Q8が高周波スイッチングしている期間においては、スイッチング素子Q8のオン時、インダクタLにエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q8のオフ時、インダクタLに蓄積されているエネルギが放出され、インダクタL→放電灯La→スイッチング素子Q7→ダイオードD9→インダクタLの経路で電流が流れる。このため、ダイオードD8〜D9により図2におけるダイオードD1を代用することができる。
【0040】
本実施形態によれば、前述の実施形態と同様に、分割された第1、第2コンデンサC1、C2を設けて、第2コンデンサC2の電流I2と放電灯のランプ電流I3との合計電流を定電流制御することにより、各種ランプを電子式安定器で点灯制御する際の立ち消え現象と、リップル電流の発生を同時に抑制することができる。従って、ランプ寿命も長くなり、安定性の優れた点灯が可能となる。
【0041】
また、スイッチング素子Q6〜Q9として例えばFET(MOSFET)を採用すれば、FETは寄生ダイオードを有するので、各FETの寄生ダイオードによりダイオードD8〜D9を兼用することができ、4つのFETで、第2実施形態におけるスイッチング素子Q1、ダイオードD1、スイッチング素子Q2〜Q5の6つの素子を代用することができるので、部品点数が削減でき装置全体の低コスト化及び小型化が可能となる。
【0042】
(第3実施形態)
本実施形態は、図2に示した第1実施形態における電力調整回路2と電流方向反転回路3との両方の機能をもつ回路を、図11に示すような一対のスイッチング素子Q10、Q11の直列回路を有するハーフブリッジ回路2Bにより構成したものである。ここで、直流電源回路1Bの両コンデンサC0、C0’の接続点と、ハーフブリッジ回路2Bの両スイッチング素子Q10、Q11の接続点との間に、インダクタLと放電灯Laとが直列に接続され、放電灯Laの両端に、第1コンデンサC1と第2コンデンサC2の並列回路が接続されている。
なお、電流検知抵抗Rは、第2コンデンサC2の電流I2とランプ電流I3との合計電流(I2+I3)を検知する。この検知電流が一定になるように、制御回路21がスイッチング素子Q10、Q11を交互にオンオフ制御することにより、放電灯Laに交流電流が供給される。以下、本実施形態の動作を、図12を参照しながら説明する。
【0043】
スイッチング素子Q10、Q11は、第2実施形態のスイッチング素子Q8、Q9の関係と同様に、それぞれ同図(A)、(B)に示すように交互に高周波スイッチングを繰り返す。つまり、スイッチング素子Q10、Q11は、図2におけるスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2〜Q5を代用したものである。本実施形態では、スイッチング素子Q11が高周波スイッチングしている期間においては、スイッチング素子Q11がオン時、インダクタLにエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q11がオフ時、インダクタLに蓄積されているエネルギが放出され、インダクタL→ダイオードD10→平滑コンデンサC0→放電灯La→インダクタLの経路で電流が流れる(つまり、インダクタLのエネルギがダイオードD10を介して平滑コンデンサC0に帰還される)。また、スイッチング素子Q10が高周波スイッチングしている期間においては、スイッチング素子Q10のオフ時、インダクタLにエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q10のオフ時、インダクタL1に蓄積されているエネルギが放出され、インダクタL→放電灯La→平滑コンデンサC0’→ダイオードD11→インダクタLの経路で電流が流れる(つまり、インダクタLのエネルギがダイオードD11を介してコンデンサC0’に帰還される)。したがって、ダイオードD10、D11により図2におけるダイオードD1を代用することができ、別途にダイオードを接続する必要がなく、部品点数の削減や小型化が可能となる。
【0044】
本実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、交流電流を放電灯Laに供給することができ、放電灯Laを調整された電力で交流点灯させることができる。
また、前述の実施形態と同様に、分割された第1、第2コンデンサC1、C2を設けて、第2コンデンサC2の電流I2と放電灯のランプ電流I3との合計電流を定電流制御することにより、各種ランプを電子式安定器で点灯制御する際の立ち消え現象と、リップル電流の発生を同時に抑制することができる。従って、ランプ寿命も長くなり、安定性の優れた点灯が可能となる。
本実施形態においてもスイッチング素子Q10、Q11に例えばFETのような寄生ダイオードを有する素子を用いれば、ダイオードD10、D11をFETの寄生ダイオードで兼用することができ、2つのFETで、第2実施形態におけるスイッチング素子Q1、ダイオードD1、スイッチング素子Q2〜Q5の6つの素子を代用することができるので、低コスト化及び小型化が可能となる。
【0045】
また、本発明は、水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどのHIDランプのほか、キセノンランプを含む高圧放電点灯装置に応用できるし、産業用紫外線応用のための高圧放電点灯装置に応用できる。さらに、本発明にかかる放電灯点灯装置は、オフィスや店舗用の照明器具に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 直流電源回路
2 電力調整回路
3 電流方向反転回路
21 制御回路
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
D ダイオード
L インダクタ
La 放電灯
Q1 電力調整用スイッチング素子
【技術分野】
【0001】
本発明はメタルハライド系、水銀系、高圧ナトリウム系に属する同一定格の高輝度高圧放電灯(いわゆるHIDランプ)の電子式安定器に関し、特に放電灯に流れるランプ電流の方向を反転させた場合にチラツキ及び立ち消えを防止できる機能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
放電灯はその始動時に放電の開始を行い、且つ放電開始後は電流の限流を行うため、いわゆる安定器を用いる必要がある。そして、放電灯を商用電源の周波数で正弦波点灯した場合にはチラツキを生じやすく、最近ではインバータ方式の電子式安定器を用いて一定のランプ電力を供給する矩形波点灯が主流となっている。
【0003】
特許文献1には、従来の電子式安定器が開示されている。この電子式安定器を図4に基づいて説明すると、直流電力を供給する直流電源1と、この出力端に接続され、かつ放電灯Laへの供給電力を調整する電力調整回路2を有する。なお、特許文献1には記載されていないが、図4のように調整された電力を放電灯Laに供給する際、放電灯Laに流れるランプ電流の方向を所定周期で反転させる電流方向反転回路3を設けても、基本となる回路構成は特許文献1と共通する。電力調整回路2は一般的な降圧チョッパ回路であり、電力調整用スイッチング素子Q1と、インダクタLと、ダイオードDと、高周波除去用コンデンサCとを有して構成され、高周波除去用コンデンサCの両端に電流方向反転回路3を介して放電灯Laが接続される。電流方向反転回路3は、例えば4つのスイッチング素子Q2〜Q5をブリッジ接続して、電力調整用スイッチング素子Q1よりも遅い周期で各スイッチング素子をオン/オフ制御することで、放電灯Laに流れる電流の方向を低周波で交番させている。
【0004】
制御回路21は、高周波除去用コンデンサCに流れる電流I1とランプ電流I2の合成電流(I1+I2)が一定となるように、電力調整用スイッチング素子Q1を高周波でオン/オフ制御する。合成電流(I1+I2)は、コンデンサCおよびダイオードDの負極側の各端子を接続するランプ電流検知抵抗Rで検知される。制御回路21は合成電流(I1+I2)に基づいてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数又はオンデューティを決定し、ランプ電流I2の定電流制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−45795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、上記の電子式安定器に、同一定格で種類の異なる放電灯を取り付けて、定電流制御を行っても問題なく安定点灯させることができたが、昨今、放電灯の色温度、発光管内の添加物、外球管内のガス、発光管形状などは多岐に渡り、中には前述した従来のランプ電流の定電流制御方式では、同一定格の放電灯でも再点弧電圧の上昇により安定点灯できない放電灯も現れてきた。
放電灯の再点弧電圧について図5に基づいて簡単に説明する。図5は、時間Tx1にて放電灯に流れる電流の方向が反転すると、放電灯がハイインピーダンス状態になる。ハイインピーダンス状態の放電灯に、反転前と同じ大きさのランプ電流I2を流すには、反転前の安定点灯状態よりも高いランプ電圧V2を印加しなければならない。このハイインピーダンス状態で所定の大きさのランプ電流I2を流すのに必要な電圧を再点弧電圧と呼ぶ。図5に示すように電流方向の反転後は、この再点弧電圧が上昇するため、すぐに所定の大きさのランプ電流I2を流すことができず、図中の期間Txに放電灯が消えかかった不安定な点灯状態が続く。この期間TxにコンデンサCが充電されて、ランプ電圧V2が再点弧電圧に到達すれば、再びランプ電流I2が増大して、放電灯が安定点灯状態になる。一方、所定の期間でランプ電圧V2が再点弧電圧に達しないと、放電を維持し続けることができなくなり、チラツキや立ち消えが発生してしまう。
このように同一定格のランプでも、種類が異なるランプを点灯させる場合には、再点弧電圧の上昇に対応するために電子式安定器の仕様を変更しなければならない。そのため、同じ仕様の電子式安定器であっても同一定格の多種ランプとの組み合わせを可能とする電子式安定器が強く要求されるようになった。
【0007】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、直流電力を供給する直流電源回路と、前記直流電源回路からの直流電力を所定の大きさに調整する電力調整回路とを備え、ランプ電流の方向を交番して放電灯に供給する放電灯電子式安定器において、
その解決すべき課題は、放電灯に流れる電流の方向が反転した際に再点弧電圧が上昇しても、必要なランプ電流を安定して流すことができ、チラツキや立ち消えを防止でき、放電灯の寿命を長くすることができる放電灯の電子式安定器を提供することにある。また、その結果として同一定格であっても種類の異なる放電灯を安定点灯できる放電灯電子式安定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明にかかる放電灯電子式安定器においては、
前記電力調整回路は、前記直流電源回路の出力端間に直列に接続された、高周波数でスイッチング可能な電力調整用スイッチング素子と、このスイッチングに応じて磁気エネルギを蓄積/放出して電流を限流するインダクタと、この限流された電流が交番周波数で供給される前記放電灯とを有する。
前記放電灯の両端にはコンデンサが接続され、当該コンデンサは、前記ランプ電流の方向が反転した際、前記インダクタによって限流された電流により充電されて前記放電灯に必要なランプ電圧を生成可能に設けられている。
前記電力調整回路は、前記ランプ電流の方向が反転して、前記ランプ電流が略零になると、前記コンデンサを充電して当該コンデンサ端子間電圧を上昇させるとともに、前記コンデンサ端子間電圧が前記放電灯に必要なランプ電圧に達すると、前記放電灯に安定したランプ電流が流れるように設けられている。
そして、前記コンデンサの充電期間を短縮するために、当該コンデンサは、並列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサによって構成され、かつ、前記電力調整回路は、前記第2コンデンサの電流および前記放電灯のランプ電流の合計電流が一定となるように、前記電力調整用スイッチング素子を高周波でスイッチング制御して、前記第1コンデンサを一定電流制御されない電流によって充電することを特徴とする。
ここで、前記第2コンデンサの容量は、前記第1コンデンサの容量よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ランプ電流の方向が反転したあと充電が開始されるコンデンサを、第1コンデンサと、これより容量の大きい第2コンデンサとの並列接続による回路で構成した。かつ、ランプ電流に対する定電流制御を、放電灯に流れるランプ電流と第2コンデンサに流れる電流との合計の電流にも基づいて実行するようにした。これにより、従来よりも実際のランプ電流に近い電流値を捉えることができて、コンデンサの充電期間が短縮される。言い換えると、第1コンデンサに流れる電流は制御対象ではないため、第1コンデンサには制御されない大きな電流が流れて充電期間を短縮することができる。従って、交番するランプ電流の方向が反転した際、放電灯の再点弧電圧が上昇しても、短期間でコンデンサの充電を完了させることができ、放電灯に必要なランプ電流が流れ出すまでの不安定な点灯状態の期間を短くすることができる。そのため、再点弧電圧の発生によるチラツキ、立ち消えを防止することができ、放電灯の寿命を長くすることができる。また、その結果として同一定格であっても種類の異なる放電灯を安定して点灯できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる放電灯電子式安定器の概略回路構成の説明図である。
【図2】図1に示した回路の具体的な回路構成の説明図である。
【図3】図2に示した回路の電流方向反転回路のスイッチング素子のオン/オフ状態の説明図である。
【図4】従来の放電灯電子式安定器の概略回路構成の説明図である。
【図5】図4に示した回路のランプ電流とランプ電圧の関係を示すグラフである。
【図6】図4に示した回路のランプ電流とランプ電圧の実際の波形を示すグラフである。
【図7】比較例としての放電灯電子式安定器の概略回路構成図の説明図である。
【図8】図1に示した回路のランプ電流とランプ電圧の関係を示すグラフである。
【図9】第2実施形態にかかる放電灯電子式安定器の回路構成の説明図である。
【図10】図9に示した回路のスイッチング素子のオン/オフ状態の説明図である。
【図11】第3実施形態にかかる放電灯電子式安定器の回路構成の説明図である。
【図12】図11に示した回路のスイッチング素子のオン/オフ状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態にかかる放電灯電子式安定器の回路構成を示し、図2はその具体的な回路構成を示す。
図1において、電子式安定器は、直流電力を供給する直流電源1と、直流電源1の出力端に接続され放電灯Laへの供給電力を調整する降圧チョッパ型の電力調整回路2と、電力調整回路2からの直流電力を放電灯Laに供給する際、放電灯Laに流れる電流の方向を所定の周期で反転させる電流方向反転回路3とを備える。
直流電源1として、例えば図2に示すように交流電源ACの交流出力を整流する整流回路11と、整流回路の出力端間に接続され整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサC0とによって構成され、平滑コンデンサC0に蓄積した静電エネルギを電力調整回路2に出力可能な整流平滑回路を採用してもよい。
【0012】
電力調整回路2は、図2のように以下の各素子が接続されて構成されている。まず、直流電源1(平滑コンデンサC0)の正極側の出力端に電力調整用スイッチング素子Q1の一端を接続し、直流電源1(平滑コンデンサC0)の負極側の出力端と電力調整用スイッチング素子Q1の他端の間にインダクタLおよび第1コンデンサC1の直列回路を接続し、第1コンデンサC1の端子間に、これよりも容量の大きい第2コンデンサC2を並列に接続する。そして第2コンデンサC2の両端に電流方向反転回路3を介して放電灯Laが接続されている。
【0013】
電流方向反転回路3は、4つのスイッチング素子Q2〜Q5をブリッジ接続して構成される。各スイッチング素子Q2〜Q5および前述の電力調整用スイッチング素子Q1のオン/オフ制御は、制御回路21で一括して行われる。電力調整用スイッチング素子Q1は、数十kHzの高い周波数でオン/オフ制御される。各スイッチング素子Q2〜Q5は、電力調整用スイッチング素子Q1よりも低い、数10Hz〜数100Hzの周波数でをオン/オフ制御される。
【0014】
スイッチング素子Q2がオフに切換ってから次にオフに切換るまでを一周期Tとして、電流方向反転回路3の動作を図3に基づき説明する。一周期Tの前半では、スイッチング素子Q2、Q5がオフ状態で、スイッチング素子Q3、Q4がオン状態であり、一周期Tの後半では、全スイッチング素子Q2〜Q5が切換り、スイッチング素子Q2、Q5がオン状態で、スイッチング素子Q3、Q4がオフ状態になる。従って、ランプ電流I3が前半には電流方向反転回路3をQ4→La→Q3の順に流れ、後半にはQ2→La→Q5の順に流れる。このオン/オフ動作の繰り返しによって、放電灯Laに流れるランプ電流I3の方向が低周波で交番する。
【0015】
これらの電力調整回路2および電流方向反転回路3において、第1コンデンサC1と第2コンデンサC2が、本発明にかかる並列接続された第1コンデンサと第2コンデンサに相当する。そして、本実施形態の電力調整回路2の構成を言い換えると、直流電源1の出力端間に、電力調整用スイッチング素子Q1と、インダクタLと、電流方向反転回路3を介して放電灯Laとが直列に接続されており、放電灯Laの両端にはコンデンサが接続され、当該コンデンサは、並列接続された第1コンデンサC1と第2コンデンサC2によって構成されていると言える。
【0016】
次に、電力調整用スイッチング素子Q1の高周波スイッチング制御について説明する。
電力調整用スイッチング素子Q1がオン状態である期間に、このスイッチング素子Q1を流れる直流電源1の直流電流によってインダクタLに磁気エネルギが蓄積される。すなわち、スイッチング素子Q1がオンになると、平滑コンデンサC0の正極の端子からの直流電流が、スイッチング素子Q1→インダクタL→電流方向反転回路3→放電灯Laの順番で平滑コンデンサC0の負極の端子に流れて、インダクタLに磁気エネルギが蓄積される。
そして、電力調整用スイッチング素子Q1がオンからオフに切り替わった際、インダクタLの磁気エネルギの放出によってインダクタLには電流Iが連続して流れようとする。電力調整回路2には、スイッチング素子Q1がオフに切り替わった後、インダクタLからの電流Iが、電流方向反転回路3および放電灯Laを経由して再びインダクタLに戻るような閉ループの電流経路が形成されている。すなわち、インダクタLと第1コンデンサC1の直列回路の両端間が、インダクタLに戻る方向のみに電流を流すダイオードDによって接続されて、閉ループの電流経路が形成されている。従って、スイッチング素子Q1がオフになると、直流電流の供給が遮断され、スイッチング素子Q1とインダクタLの接続点における電圧が略零になる。そして、インダクタL1の磁気エネルギが電流となって放出され、インダクタL→電流方向反転回路3→放電灯La→ダイオードDの順番でインダクタLに戻るようになっている。
【0017】
なお、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2の負極側の端子間には、電流検知抵抗Rが接続されている。この抵抗Rは、インダクタLを流れる電流Iのうちの第2コンデンサC2へ流れる電流I2と、放電灯Laを流れるランプ電流I3の合計の電流(I2+I3)を検知する。検知電流(I2+I3)は制御回路21に入力される。
制御回路21は、マイクロ・コンピータにより構成されており、検知電流(I2+I3)値が一定の電流になるようにスイッチング素子Q1のオンデューティ(オン期間)を決定するアルゴリズムを有し、放電灯の定電流制御を行っている。
【0018】
このように電力調整回路2および電流方向反転回路3によって、放電灯Laには、電力調整用スイッチング素子Q1によって高周波駆動でありながら、低周波のランプ電流I3が流れる。電力調整回路2において、スイッチング素子Q1の高周波スイッチングにより、直流電流から矩形波電流が形成されると同時に、インダクタLによって限流される。さらに、第2コンデンサC2によって高周波成分が除去されることで、電力調整された直流電流が得られる。この電流が、電流方向反転回路3において低周波で交番するランプ電流となって放電灯に供給される。
【0019】
<電流方向の反転時に、再点弧電圧が上昇して、立ち消え現状が発生する場合の説明>
この現象について、図4に示す従来の電子式安定器、図7に示す比較例としての電子式安定器を用いて以下に説明する。
図4の従来の回路構成では、電流検知抵抗Rが、ダイオードDおよびコンデンサCの負極側の端子間に接続されている。電流検知抵抗Rに流れる合成電流(I1+I2)が一定となるように、スイッチング素子Q1のオン期間(Ton)が制御される。この定電流制御においてもランプ点灯が安定すると仮定すると、放電灯Laに流れるランプ電流I2とランプ電圧V2の関係は図5のようになり、以下の過程で変化する。
【0020】
(A)ランプ電流の方向(極性)が反転するまでは放電灯Laは安定点灯状態であり、放電灯Laに所定のランプ電流I2が流れる。この安定点灯状態では、コンデンサCに流れる電流I1はスイッチング素子Q1のスイッチング周期での充放電サイクルであり、積分すればゼロとなる。従って、電流検知抵抗Rの両端で観測される電流は、ランプ電流I2にほぼ等しい。
(B)ランプ電流の方向が反転すると(図中の時刻Tx1)、放電灯側がハイインピーダンス状態になり、放電灯の再点弧電圧が上昇する。そのため、コンデンサCに残留した電圧では、ランプ電流I2を流すことができなくなり微量の電流が流れるだけとなる。所定量のランプ電流I2を再び流す(再点弧する)には、コンデンサCを充電して、コンデンサCの端子間電圧が再点弧電圧に達するようにしなければならない。
(C)上記の充電過程では、コンデンサCへの充電電流I1が、電流検知抵抗Rを通過するため、充電電流I1が定電流制御を受ける。そのため、コンデンサ両端電圧の上昇は時間に比例する線形となる。
【0021】
(D)コンデンサCの電圧が上昇すると、直流電源1の出力電圧V1との電圧差ΔVが小さくなるため、スイッチング素子Q1のTonを最大にしても、定電流を維持できなくなり、コンデンサCの電圧上昇が緩やかになる。
(E)コンデンサ電圧上昇が緩やかになったとしても、時刻Tx2にて再点弧電圧を上回ることができれば、消えかかっていた放電灯Laのランプ電流が増大し安定点灯状態に戻る。再点弧電圧も通常電圧に戻る。
以上の過程(A)〜(E)のサイクルが点灯周波数(例えば160Hz)の半周期T/2で実行される。半周期T/2ごとに上記サイクルが実行されれば、放電灯の点灯を維持できる。
【0022】
図6に、図4の従来の電子式安定器で点灯させた場合に検出したランプ電圧V2とランプ電流I2の各波形を示す。同図(A)中のI2はランプ電流(縦軸0.5A/div)、V2はランプ電圧(縦軸100V/div)を示し、同図(B)も同様である。同図(B)は、同図(A)の期間Taを拡大して示したもので、横軸の時間軸の目盛は、同図(A)にて2mSec/div、同図(B)にて200μSec/divである。
時刻Tx1までは安定点灯状態であり、負の極性の略100Vのランプ電圧V2が印加されており、略0.5Aのランプ電流I2が負の方向に流れている。
時刻Tx1に電流方向が反転すると、ランプ電流I2は正の極性の略100V付近となるが、既に再点弧電圧がより高い値まで上昇しているため、ランプ電流I2は微量となる。
ランプ電圧V2が緩やかに上昇して時刻Tx2で再点弧電圧に達すると、ランプ電流I2が急激に増大する。時刻Tx2直後のランプ電流I2には、コンデンサCの放電電流が加算されるため、急上昇する。
【0023】
しかしながら、上記の過程(E)において、コンデンサCの電圧が再点弧電圧に達するまでの期間(図6中のTx)が長くなると、放電灯Laは放電を維持することができなくなり、立ち消えとなってしまう。この立ち消え現象は、放電灯の始動の際にも同じ原理で起こり得る現象である。
再点弧電圧の上昇は、放電灯固有の特性であり、解消のしようがない。従って、立ち消え現象を回避するためには、ランプ電圧V2、つまりコンデンサCの電圧を如何に速く上昇させるかということになる。
【0024】
コンデンサCへ流れる電流I1が一定の電流であれば、コンデンサCの容量を減らすことで電圧の上昇が速くなる。例えば、コンデンサ容量を0.47μFから0.1μFに減少させたところ、始動不良・立ち消えが減少した。
【0025】
次に、コンデンサCへの電流I1を定電流制御せず、放電灯Laへ流れる電流I2のみを定電流制御するために、電流検知抵抗Rの接続位置を変更して実験を行った。その回路構成を図7に示す。電流検知抵抗Rは、コンデンサCおよび放電灯Laの負極側の端子間に接続されている。
図7の回路構成にしたところ、電流検知抵抗Rの両端で検出される電流は、ランプ電流I2のみとなり、コンデンサCへの電流I1は定電流制御されない。従ってランプ電流I2の流れない区間(図6中のTx)では、電力調整用スイッチング素子Q1のオン時間Tonを最大(オンデューティーを約80%)にして直流電流を導通することにより、コンデンサCに大きな電流I1が流れ、コンデンサ電圧の上昇が速くなった。図7の回路構成に変更することで、再点弧電圧発生時にランプ立ち消えを抑える効果が確認できた。
【0026】
なお、図7の回路構成における、コンデンサCへの電流I1は、インダクタのインダクタンス値(L)と、インダクタ両端の電圧差ΔV、つまり直流電源の電圧V1とランプ電圧V2の差、そしてスイッチング素子Q1のオン時間Tonで決まり、次式のようになる。
【数1】
【0027】
上式に示すように、電圧V1が高いほど、オン時間Tonが長いほど、インダクタンス値(L)が小さいほど、より大きな再点弧電圧に応対できるようになる。
しかし、図7の回路構成では、コンデンサCへの電流I1が最大となる場合でも、インダクタLが飽和しないように設計しなければならない。また、コンデンサCの容量を減らした回路構成や、図7の回路構成にすると、ランプ立ち消えを抑える効果が得られるが、下記のような問題点も生じる。
【0028】
<ランプ電圧・電流リップルが大きくなる点>
コンデンサCの容量を減らすと、ランプ電圧・電流に残留するリップルが大きくなる。つまり、コンデンサCの充電を早くするために容量を減らすことで、ランプ電圧・電流に大きなリップルが残留してしまう。ランプ電圧・電流リップルを抑制するためにスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を上げると、電力損、放射ノイズに影響を与えてしまう。
<直流電源の電圧を上がることによる電力損>
また、コンデンサCの充電を早くするために直流電源1の出力電圧V1を上げると、電力損が大きくなってしまう。
<インダクタの大型化、高価なコアの使用>
コンデンサCに大きな電流I1を流すとインダクタLが飽和しやすくなるため、インダクタLの飽和電流耐量も大きくしなければならない。その結果、インダクタLが大型化したり、高価なコアを使用したりする必要が生じる。
【0029】
そこで本発明においては、以上の問題点を出すことなく放電灯Laの立ち消え現象を抑制するために、図1に示した回路構成を採用した。本実施形態では、再点弧するまでの期間を短縮して、再点弧電圧が従来よりも低い段階で再点弧させることを可能とした。
【0030】
図1の回路構成において、第1コンデンサC1は、第2コンデンサC2より早く充電を完了するように小さめの容量としている。また、第2コンデンサC2の容量は、第1コンデンサC1との合成容量によりランプ電圧・電流リップルを除去できるようにも調整されている。電流検知抵抗Rは、ランプ電流I3と第2コンデンサC2に流れる電流I2を合わせて観測することになるが、既存の降圧コンバータ回路に比べて放電灯側へ流れるランプ電流値(I3)に近い値を捉えることができる。
【0031】
図8には、図1に示した回路構成におけるランプ電圧V2とランプ電流I3の関係を示す。ランプ電圧V2およびランプ電流I3は以下の過程で変化する。
(A)ランプ電流の方向が反転するまでは放電灯は安定点灯状態であり、放電灯Laに所定のランプ電流I3が流れる。この安定点灯状態では、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2に流れる電流I1、I2はスイッチング素子Q1のスイッチング周期での充放電サイクルであり、積分すればゼロとなる。従って、電流検知抵抗Rの両端で観測される電流は、ランプ電流I3にほぼ等しい。
(B)ランプ電流の方向が反転すると(図中の時刻Tx1)、放電灯側がハイインピーダンス状態になり、放電灯の再点弧電圧が上昇する。容量の大きい第2コンデンサC2に残留した電圧でも、ランプ電流I3を流すことができなくなり微量の電流が流れるだけとなる。所定量のランプ電流I3を再び流す(再点弧する)には、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2を充電して、容量の大きい第2コンデンサC2の端子間電圧が再点弧電圧に達するようにしなければならない。
(C)上記の充電過程では、第1コンデンサC1への充電電流I1が、電流検知抵抗Rを通過しないため、充電電流I1に対して定電流制御されない。そのため、第1コンデンサC1には制御されない大きい電流が流れ、第1コンデンサC1両端電圧の上昇は時間に比例する線形ではあるが、従来よりも勾配の大きな線形となる。つまり、図5に示すコンデンサC両端電圧の上昇カーブよりも勾配が大きい上昇カーブとなる。従って、第1コンデンサC1の容量分を比較すると、従来のコンデンサよりも充電が早く完了する。
【0032】
(D)時刻Tx2にて第1コンデンサC1の充電が完了する。続いて時刻Tx3にて第2コンデンサC2の充電が完了する。この小容量の第1コンデンサC1の充電が完了してから大容量の第2コンデンサC2の充電が完了するまでの期間(Tx)中は、第2コンデンサC2への充電電流I2が電流検知抵抗Rを通過するため定電流制御を受ける。
(E)また、第2コンデンサC2の電圧が上昇すると、直流電源1の出力電圧V1との電圧差ΔVが小さくなるため、スイッチング素子Q1のTonを最大にしても、定電流を維持できなくなり、第2コンデンサC2の電圧上昇が緩やかになる。
(F)第2コンデンサC2の電圧上昇が緩やかになったとしても、時刻Tx3にて再点弧電圧を上回ることができれば、消えかかっていた放電灯Laのランプ電流が増大し安定点灯状態に戻る。再点弧電圧も通常電圧に戻る。
さらに従来の図5と比較すると、コンデンサC1、C2の充電期間が短縮されているので、再点弧電圧が図5ほど高くなる前に、第2コンデンサC2の電圧が再点弧電圧に達することができる。
【0033】
図4に示す従来の回路構成では、1つのコンデンサCが充電完了したのち、放電灯側にランプ電流が流れる。しかもコンデンサCに流れる電流は定電流制御されており充電速度に制限がある。これに対して本実施形態の回路構成(図1)では、第1コンデンサC1への充電電流I1は定電流制御の対象ではないため、図4の回路構成と比べて充電速度が速くなる。第2コンデンサC2の充電電流I2は制御対象であるため、従来の回路構成と充電速度は変わらない。しかし、第2コンデンサC2の容量は、従来の回路構成のコンデンサCの容量よりも小さいため、その分だけ充電時間は短縮される。このように、第1コンデンサC1は制御対象から外れているため充電速度が速く、かつ第2コンデンサC2の容量は従来回路のコンデンサCの容量よりも小さいため充電時間が短くなり、従来回路よりも早く充電を完了して放電灯Laに必要なランプ電流を早く送ることができる。
【0034】
本実施形態の図1の回路構成の場合に、前述の問題点は以下のように解消される。
<ランプ電圧・電流リップルが大きくなる点>
本実施形態では第1コンデンサC1と第2コンデンサC2の合成容量が従来のコンデンサ容量を維持しているために、残留するランプ電圧・電流リップルが大きくならない。また、第2コンデンサがリップル除去の機能を有するため、リップル電流の発生を抑制して電子式安定器に要求される規格を満足させることができる。また、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数を上げる必要がなく、電力損や放射ノイズに影響を与えない。
また、図7の比較例では、電流検知抵抗Rの位置を移動させたため、コンデンサ電流I1が制御されない。そのため、コンデンサ電流I1が大きくなり過ぎて、電流I3側まで影響を及ぼし、ランプ電流規格の一つである波高率が大きくなってしまう。本実施形態では、第1コンデンサC1に流れる電流I1は制御を受けないが、第1コンデンサC1の容量は従来のコンデンサ容量の一部であるから、その充電電流I1は少なくて済み、波高率の規格を満足させることができる。
【0035】
<直流電源の電圧を上がることによる電力損>
コンデンサCの充電を早くするために直流電源1の出力電圧V1を上げると、電力損が大きくなってしまうが、本実施形態では、従来のコンデンサを第1コンデンサC1と第2コンデンサC2に分割することでコンデンサ全体の充電時間を短縮することができる。従って、出力電圧V1を維持することが可能となり、電力損の問題が生じない。
<インダクタの大型化、高価なコアの使用>
図7の比較例のようにコンデンサCに制御されない大電流が流れるとインダクタLが飽和しやすくなるが、本実施形態では、制御されない第1コンデンサC1の充電電流I1は、比較例のコンデンサCの充電電流よりも少なくて済み、インダクタLの飽和電流耐量の増加がなく、インダクタLの大型化や高価なコアの使用を避けることができる。
【0036】
以上のように分割された第1、第2コンデンサC1、C2を設けて、第2コンデンサC2の電流I2と放電灯のランプ電流I3との合計電流を定電流制御することにより、各種ランプを電子式安定器で点灯制御する際の立ち消え現象と、リップル電流の発生を同時に抑制することができる。従って、ランプ寿命も長くなり、安定性の優れた点灯が可能となる。
本実施形態では第2コンデンサC2の容量が第1コンデンサC1の容量よりも大きく場合を説明したが、本発明としては、第1コンデンサおよび第2コンデンサが同じ容量であっても、第2コンデンサC2が第1コンデンサC1の容量よりも小さい容量であっても、定電流制御されない大きい充電電流I1によって第1コンデンサC1の充電時間が短縮されるから、前述と同様の効果が得られる。すなわち、コンデンサとしては、少なくとも2つの第1コンデンサおよび第2コンデンサによって構成され、各コンデンサが並列に接続されていればよい。なお、第2コンデンサC2の容量を第1コンデンサC1の容量よりも大きくすることで、第2コンデンサC2によるリップル除去性能、波高率の抑制効果をより高めることができる。
【0037】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態における電力調整回路2と電流方向反転回路3との両方の機能をもつ回路を、図9に示すように4個のスイッチング素子Q6〜Q9をブリッジ接続したフルブリッジ回路2Aにより構成したものである。第1実施形態における電力調整用スイッチング素子Q1、インダクタL、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、ダイオードDおよび放電灯Laの接続方法は、本実施形態において共通するので省略する。
なお、電流検知抵抗Rは、第2コンデンサC2の電流I2とランプ電流I3との合計電流(I2+I3)を検知する。この検知電流が一定になるように、制御回路21がスイッチング素子Q6〜Q9をオンオフ制御する。
【0038】
各スイッチング素子Q6〜Q9は、制御回路21からの制御信号によって、図10(A)〜(D)に示すように、スイッチング素子Q6がオンで、Q9が高周波スイッチングされて、スイッチング素子Q7、Q8がオフの状態と、スイッチング素子Q6、Q9がオフで、スイッチング素子Q7がオンで、Q8が高周波スイッチングされる状態とを交互に低周波(数十Hz〜数百Hz)で繰り返す。つまり素子Q6〜Q9によって図2におけるスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2〜Q5を代用している。
【0039】
スイッチング素子Q6がオンで、Q9が高周波スイッチングしている期間においては、スイッチング素子Q9のオン時、インダクタLにエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q9のオフ時、インダクタLに蓄積されているエネルギが放出され、インダクタL→ダイオードD8→スイッチング素子Q6→放電灯La→インダクタLの経路で電流が流れる。一方、スイッチング素子Q7がオンで、Q8が高周波スイッチングしている期間においては、スイッチング素子Q8のオン時、インダクタLにエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q8のオフ時、インダクタLに蓄積されているエネルギが放出され、インダクタL→放電灯La→スイッチング素子Q7→ダイオードD9→インダクタLの経路で電流が流れる。このため、ダイオードD8〜D9により図2におけるダイオードD1を代用することができる。
【0040】
本実施形態によれば、前述の実施形態と同様に、分割された第1、第2コンデンサC1、C2を設けて、第2コンデンサC2の電流I2と放電灯のランプ電流I3との合計電流を定電流制御することにより、各種ランプを電子式安定器で点灯制御する際の立ち消え現象と、リップル電流の発生を同時に抑制することができる。従って、ランプ寿命も長くなり、安定性の優れた点灯が可能となる。
【0041】
また、スイッチング素子Q6〜Q9として例えばFET(MOSFET)を採用すれば、FETは寄生ダイオードを有するので、各FETの寄生ダイオードによりダイオードD8〜D9を兼用することができ、4つのFETで、第2実施形態におけるスイッチング素子Q1、ダイオードD1、スイッチング素子Q2〜Q5の6つの素子を代用することができるので、部品点数が削減でき装置全体の低コスト化及び小型化が可能となる。
【0042】
(第3実施形態)
本実施形態は、図2に示した第1実施形態における電力調整回路2と電流方向反転回路3との両方の機能をもつ回路を、図11に示すような一対のスイッチング素子Q10、Q11の直列回路を有するハーフブリッジ回路2Bにより構成したものである。ここで、直流電源回路1Bの両コンデンサC0、C0’の接続点と、ハーフブリッジ回路2Bの両スイッチング素子Q10、Q11の接続点との間に、インダクタLと放電灯Laとが直列に接続され、放電灯Laの両端に、第1コンデンサC1と第2コンデンサC2の並列回路が接続されている。
なお、電流検知抵抗Rは、第2コンデンサC2の電流I2とランプ電流I3との合計電流(I2+I3)を検知する。この検知電流が一定になるように、制御回路21がスイッチング素子Q10、Q11を交互にオンオフ制御することにより、放電灯Laに交流電流が供給される。以下、本実施形態の動作を、図12を参照しながら説明する。
【0043】
スイッチング素子Q10、Q11は、第2実施形態のスイッチング素子Q8、Q9の関係と同様に、それぞれ同図(A)、(B)に示すように交互に高周波スイッチングを繰り返す。つまり、スイッチング素子Q10、Q11は、図2におけるスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2〜Q5を代用したものである。本実施形態では、スイッチング素子Q11が高周波スイッチングしている期間においては、スイッチング素子Q11がオン時、インダクタLにエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q11がオフ時、インダクタLに蓄積されているエネルギが放出され、インダクタL→ダイオードD10→平滑コンデンサC0→放電灯La→インダクタLの経路で電流が流れる(つまり、インダクタLのエネルギがダイオードD10を介して平滑コンデンサC0に帰還される)。また、スイッチング素子Q10が高周波スイッチングしている期間においては、スイッチング素子Q10のオフ時、インダクタLにエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q10のオフ時、インダクタL1に蓄積されているエネルギが放出され、インダクタL→放電灯La→平滑コンデンサC0’→ダイオードD11→インダクタLの経路で電流が流れる(つまり、インダクタLのエネルギがダイオードD11を介してコンデンサC0’に帰還される)。したがって、ダイオードD10、D11により図2におけるダイオードD1を代用することができ、別途にダイオードを接続する必要がなく、部品点数の削減や小型化が可能となる。
【0044】
本実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、交流電流を放電灯Laに供給することができ、放電灯Laを調整された電力で交流点灯させることができる。
また、前述の実施形態と同様に、分割された第1、第2コンデンサC1、C2を設けて、第2コンデンサC2の電流I2と放電灯のランプ電流I3との合計電流を定電流制御することにより、各種ランプを電子式安定器で点灯制御する際の立ち消え現象と、リップル電流の発生を同時に抑制することができる。従って、ランプ寿命も長くなり、安定性の優れた点灯が可能となる。
本実施形態においてもスイッチング素子Q10、Q11に例えばFETのような寄生ダイオードを有する素子を用いれば、ダイオードD10、D11をFETの寄生ダイオードで兼用することができ、2つのFETで、第2実施形態におけるスイッチング素子Q1、ダイオードD1、スイッチング素子Q2〜Q5の6つの素子を代用することができるので、低コスト化及び小型化が可能となる。
【0045】
また、本発明は、水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどのHIDランプのほか、キセノンランプを含む高圧放電点灯装置に応用できるし、産業用紫外線応用のための高圧放電点灯装置に応用できる。さらに、本発明にかかる放電灯点灯装置は、オフィスや店舗用の照明器具に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 直流電源回路
2 電力調整回路
3 電流方向反転回路
21 制御回路
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
D ダイオード
L インダクタ
La 放電灯
Q1 電力調整用スイッチング素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を供給する直流電源回路と、
前記直流電源回路からの直流電力を所定の大きさに調整する電力調整回路とを備え、ランプ電流の方向を交番して放電灯に供給する放電灯電子式安定器であって、
前記電力調整回路は、前記直流電源回路の出力端間に直列に接続された、高周波数でスイッチング可能な電力調整用スイッチング素子と、このスイッチングに応じて磁気エネルギを蓄積/放出して電流を限流するインダクタと、この限流された電流が交番周波数で供給される前記放電灯とを有し、
前記放電灯の両端にはコンデンサが接続され、当該コンデンサは、前記ランプ電流の方向が反転した際、前記インダクタによって限流された電流により充電されて前記放電灯に必要なランプ電圧を生成可能に設けられ、
前記電力調整回路は、前記ランプ電流の方向が反転して、前記ランプ電流が略零になると、前記コンデンサを充電して当該コンデンサ端子間電圧を上昇させるとともに、前記コンデンサ端子間電圧が前記放電灯に必要なランプ電圧に達すると、前記放電灯に安定したランプ電流が流れるように設けられ、
前記コンデンサの充電期間を短縮するために、当該コンデンサは、並列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサによって構成され、かつ、前記電力調整回路は、前記第2コンデンサの電流および前記放電灯のランプ電流の合計電流が一定となるように、前記電力調整用スイッチング素子を高周波でスイッチング制御して、前記第1コンデンサを一定電流制御されない電流によって充電することを特徴とする放電灯電子式安定器。
【請求項2】
請求項1記載の放電灯電子式安定器において、
前記第2コンデンサの容量は、前記第1コンデンサの容量よりも大きいことを特徴とする放電灯電子式安定器。
【請求項1】
直流電力を供給する直流電源回路と、
前記直流電源回路からの直流電力を所定の大きさに調整する電力調整回路とを備え、ランプ電流の方向を交番して放電灯に供給する放電灯電子式安定器であって、
前記電力調整回路は、前記直流電源回路の出力端間に直列に接続された、高周波数でスイッチング可能な電力調整用スイッチング素子と、このスイッチングに応じて磁気エネルギを蓄積/放出して電流を限流するインダクタと、この限流された電流が交番周波数で供給される前記放電灯とを有し、
前記放電灯の両端にはコンデンサが接続され、当該コンデンサは、前記ランプ電流の方向が反転した際、前記インダクタによって限流された電流により充電されて前記放電灯に必要なランプ電圧を生成可能に設けられ、
前記電力調整回路は、前記ランプ電流の方向が反転して、前記ランプ電流が略零になると、前記コンデンサを充電して当該コンデンサ端子間電圧を上昇させるとともに、前記コンデンサ端子間電圧が前記放電灯に必要なランプ電圧に達すると、前記放電灯に安定したランプ電流が流れるように設けられ、
前記コンデンサの充電期間を短縮するために、当該コンデンサは、並列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサによって構成され、かつ、前記電力調整回路は、前記第2コンデンサの電流および前記放電灯のランプ電流の合計電流が一定となるように、前記電力調整用スイッチング素子を高周波でスイッチング制御して、前記第1コンデンサを一定電流制御されない電流によって充電することを特徴とする放電灯電子式安定器。
【請求項2】
請求項1記載の放電灯電子式安定器において、
前記第2コンデンサの容量は、前記第1コンデンサの容量よりも大きいことを特徴とする放電灯電子式安定器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−159519(P2011−159519A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20855(P2010−20855)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】
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