説明

斜め投影プロジェクタ用光学系

【課題】 小型でありながらも明るく高品質な画像の提供を保証することができる3板式の斜め投影プロジェクタに好適な斜め投影プロジェクタ用光学系を提供すること
【解決手段】 斜め投影プロジェクタ光学系は、光源部から照射された光を用いて生成された画像を投影光学系を介してスクリーン上に斜めに投影する斜め投影プロジェクタ用光学系において、色の三原色に対応した第一から第三の色成分を、所定の画像信号に基づいて変調する、各色成分に対応した第一から第三の色変調手段と、第一から第三の各変調手段によって変調された第二の直線偏光状態にある第一から第三の色成分を合成し、投影光学系に導く色合成手段と、を有し、第一から第三の色変調手段は、各色変調手段に入射する色成分と該色変調手段から射出される色成分とが異なる光路を進むように、各色変調手段から射出される各色成分の中心線を含む面に対して傾いて配設される構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各色成分に対応する液晶素子を用いて生成されたカラー画像をスクリーン上に斜めに投影する3板式プロジェクタに用いられる光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー液晶プロジェクタには、変調手段として使用する液晶素子の種類によって、透過型と反射型との二種類に分けられる。後者は前者に比べ、液晶膜が薄く構成されており、ON/OFFレスポンスが早い、ライフサイクルが長い、光の利用効率が高いなどの利点を有する。
【0003】
また該反射型液晶プロジェクタは、3板式と単板式の二種類に分類される。詳しくは、前者は、光変調手段として反射型の液晶パネルをR(赤色)、G(緑色)、B(青色)用に3枚使用する。後者は、光変調手段としてR、G、Bに共通の反射型液晶パネルを1枚使用する。前者は後者に比べ、液晶素子の駆動に関する負担が軽減され、高輝度・高画質の映像を投射して表示することができる。このような3板式の反射型液晶プロジェクタは、例えば以下に示す特許文献1に開示される。
【0004】
【特許文献1】特開2002−98937号公報
【0005】
ところで近年、プロジェクタのより一層の小型化を目的として、変調手段およびスクリーンを投影光学系の光軸に対して傾けて配置するように構成されたプロジェクタが提案されている。なお、以下の本文では、このような構成のプロジェクタを、斜め投影プロジェクタという。斜め投影プロジェクタは、例えば、以下の特許文献2に開示される。
【0006】
【特許文献2】特許第2906348号公報
【0007】
特許文献2に開示される斜め投影プロジェクタによれば、投影光学系とスクリーン間の光路長を十分に確保しつつも、該投影光学系をスクリーン側に近づけて配設することができるため、プロジェクタの薄型化、小型化が達成される。このような斜め投影プロジェクタでも、単板式に比べて上記の利点を持つ3板式を採用したいという要望がある。
【0008】
しかし、特許文献1に開示されるカラー3板式プロジェクタの光学系の構成は、あくまで色変調手段およびスクリーンが投影光学系の光軸に対して直交する配置関係にあることを前提としている。そのため、上記の斜め投影プロジェクタを3板式として構成しようとした場合、特許文献1に開示される構成をそのまま使用することはできない。
【0009】
また、特許文献1に記載の反射型液晶プロジェクタは、色分離手段として複数の反射面と、色合成手段として色合成プリズムおよび少なくとも一つの偏光ビームスプリッタ(以下、単にPBSという)とを備える。そのため、部品点数が多くならざるを得ず、プロジェクタ全体を大型化、重量化させる要因になっている。また、PBSを各色成分に対応する3つの反射型液晶パネル(LCOS)の直前に配置しているため、入射光の光路と射出光の光路が一部重複する、あるいは内面反射が起こることにより、フレア光やゴースト光が発生したり、無用な光量損失を招くおそれが指摘されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、3板式の斜め投影プロジェクタに好適な小型な構成であってさらには明るく高品質な画像の提供を保証することができる斜め投影プロジェクタ用光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の斜め投影プロジェクタ光学系は、光源部から照射された光を用いて生成された画像を投影光学系を介してスクリーン上に斜めに投影する斜め投影プロジェクタ用光学系において、色の三原色に対応した第一から第三の色成分を、所定の画像信号に基づいて変調する、各色成分に対応した第一から第三の色変調手段と、第一から第三の各変調手段によって変調された第二の直線偏光状態にある第一から第三の色成分を合成し、投影光学系に導く色合成手段と、を有し、第一から第三の色変調手段は、各色変調手段に入射する色成分と該色変調手段から射出される色成分とが異なる光路を進むように、各色変調手段から射出される各色成分の中心線を含む面に対して傾いて配設されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、斜め投影プロジェクタを実現するために各色変調手段を傾けて配置する。これにより、該色変調手段を偏向手段としても使用することができる。従って、部材点数を削減することができる。また、色変調手段を傾けて配置することにより、色合成手段の厚みを抑えることができ、光学系全体の小型化も達成される。
【0013】
また請求項2に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、光源部から照射される白色光を、第一から第三の色成分に分離し、各色成分を対応する色変調手段に導く色分離手段を有する。
【0014】
上記の色分離手段と、色変調手段および色合成手段とは、各色変調手段から射出される各色成分の中心線を含む面に直交する所定の方向に並んで配置することができる(請求項3)。これにより、光学系を構成する各部材を一箇所に集中して配置することができ、光路を確保するための空間も最小限で足りるため、光学系のより一層の小型化が達成される。
【0015】
また、請求項4に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、色分離手段は、白色光から第一の色成分のみを分離し第一の色変調手段に直接導く第一の色分離面と、該第一の色分離手段を透過した光を第二の色成分と第三の色成分に分離する第二の色分離面と、第二の色成分を第二の色変調手段に直接導く第一の偏向面と、第三の色成分を第三の色変調手段に直接導く第二の偏向面と、から構成することができる。このように本発明によれば、色分離手段を極めて少ない部材数で構成することができる。
【0016】
請求項5に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、第一の色分離面は第一の色変調手段との関係において、第二の色分離面は色合成手段との関係において、第一の偏向面は第二の色変調手段との関係において、第二の偏光面は第三の色変調手段との関係において、それぞれ上述した所定の方向に位置するように配置することができる。
【0017】
また、各色分離面および各偏向面は、入射する光を略直角に偏向するように配設されることが望ましい(請求項6)。これにより、色分離手段と他の部材との相対的な位置決めを容易に行うことができる。
【0018】
より具体的には、請求項7に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、光源部は、第一の直線偏光状態にある白色光を照射し、第一から第三の色変調手段は、前記第一から第三の各色成分を変調する際、第一の直線偏光状態を90°回転した第二の直線偏光状態にする。
【0019】
請求項8に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、色合成手段は、第一の直線偏光状態にある各色成分および第二の直線偏光状態にある第一の色成分のみを反射させる第一の色合成面と、第一の色合成面に直交しかつ第一の直線偏光状態にある各色成分および第二の直線偏光状態にある第二の色成分のみを反射させる第二の色合成面と、を持つことが望ましい。
【0020】
上記のように色合成手段を構成することにより、画像形成に不要な光(所謂OFF光やフレアを発生する不要光)は、各色合成面で複数回の反射を繰り返し、各色変調手段を介して入射してきた方向に再帰反射され、投影光学系には導かれない。これにより、従来のプロジェクタ用光学系において各色変調手段と色合成手段の間に配設されたPBSが不要となる。よって、光学系のより一層の小型化、軽量化を達成することができる。また、ゴースト光やフレア光の発生も有効に防止することもできる。つまり、プロジェクタ全体の小型化を可能にする斜め投影プロジェクタに非常に好適な光学系が提供される。
【0021】
なお、請求項9に記載のプロジェクタ用光学系によれば、第一の直線偏光をS偏光、第二の直線偏光をP偏光として構成することができる。
【0022】
請求項10に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、第一から第三の色変調手段は、入射する色成分を反射しつつ変調する。例えば、反射型液晶素子を使用することができる(請求項11)。
【0023】
請求項12に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、第一から第三の色変調手段は、入射する各色成分が略直角に反射するように傾けられていることが望ましい。これにより、各色変調手段と他の部材との相対的な位置決めが容易になる。
【0024】
また、請求項13に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系によれば、色合成手段は、合成された光が投影光学系の光軸と平行に進むように構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、斜め投影プロジェクタに必須とされる、色変調手段を投影光学系の光軸に対して傾ける構成を効果的に活用して、傾けられた各色変調手段を偏向手段としても使用することにより、光学系ひいてはプロジェクタ全体の小型(薄型)化、軽量化を達成することができる。さらには、色合成手段に波長特性のみならず偏光特性も付与することにより、従来の3板式プロジェクタよりも部品点数を遙かに低減することも可能になる。
【0026】
また、本発明によれば、フレア光やゴースト光といった高品質な画像形成に不要とされる光(不要光)を色合成手段や各色変調手段によって再帰反射させる、換言すれば投影光学系側に導かないように構成される。これにより、従来の3板式プロジェクタの光学系において課題とされていた、不要光の発生も有効に防止することができる。つまり、本発明によれば、3板式の斜め投影プロジェクタに好適な光学系が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は3板式斜め投影プロジェクタに搭載される本発明の第一実施形態のプロジェクタ用光学系100の概略構成を表す上面図である。図2は、図1に示すプロジェクタ用光学系100のα−α面での断面図である。図3は、図1に示すプロジェクタ用光学系100のβ−β面での断面図である。
【0028】
プロジェクタ用光学系100は、光源1、ライトトンネル(登録商標)2、リレーレンズ群3、単一偏光板4、第一ダイクロイックミラー5、第二ダイクロイックミラー6、第一ミラー7、第二ミラー8、R用反射型液晶素子9R、G用反射型液晶素子9G、B用反射型液晶素子9B、色合成素子10、投影レンズ群11、吸収偏光板12を有する。光源1は、高圧水銀ランプ1aと楕円リフレクタ1bとを有する。第一ダイクロイックミラー5は、B成分のみ偏向させる波長特性を持つ。また、第二ダイクロイックミラー6は、G成分のみ偏向させる波長特性を持つ。また、投影レンズ群11は、色合成素子10側から順に第一レンズ群11a、偏向用光学素子11b、第二レンズ群11cを有する。
【0029】
また、図4は、色合成素子10近傍を拡大して示す図である。図4は、説明の便宜上、第一ダイクロイックミラー5、第二ダイクロイックミラー6、第一ミラー7、第二ミラー8と、R用反射型液晶素子9R、G用反射型液晶素子9G、B用反射型液晶素子9B、色合成素子10との間隔は、実際の構成よりも大きく示している。
【0030】
本実施形態の色合成素子10は、直角プリズムを4つ貼り合わせて形成したキューブ状になっている。色合成素子10は、4つの直角プリズムの貼り合わせることにより形成される、第一の色合成面10B、第二の色合成面10Rを有する。第一の色合成面10Bと第二の色合成面10Rは、互いに直交している。
【0031】
本実施形態のプロジェクタ光学系100では、図2〜図4に示すように、各反射型液晶素子9R、9G、9Bと色合成素子10からなる光学素子群からみて、各ミラー5〜8からなる光学素子群が積み上げられた構成を採っている。また、各液晶素子9R、9G、9Bが、色合成素子10を構成する4つの直角プリズムの各斜面に対して所定角度傾いて配設されている。そのため、色合成素子10の厚み(図中Z方向の寸法、つまり上記二つの光学素子群が積み上げられる方向の寸法)を薄く(小さく)することができる。よって、上記二つの光学素子群を積み上げる構成を採っても、従来の光学系と略同一あるいはそれよりも小型にすることができる。
【0032】
高圧水銀ランプ1aから照射された白色光は、楕円リフレクタ1bで反射してライトトンネル2に導かれる。ライトトンネル2は、入射する白色光を、強度分布を均一にしつつ後段にあるリレーレンズ群3に導く。リレーレンズ群3は、ライトトンネル2を介して入射する白色光を平行光束にしつつ単一偏光板4に導く。単一偏光板4は、入射する白色光を第一ダイクロイックミラー5に対してS偏光となるように偏光状態を揃える。
【0033】
単一偏光板4によってS偏光状態に変換された白色光束は直進し、第一ダイクロイックミラー5に入射する。第一ダイクロイックミラー5は、入射する白色光束のうち、B成分のみをに偏向し、それ以外の色成分(R、G)は何ら偏向することなく透過させるような特性を持つ。ここでは、第一ダイクロイックミラー5は、B成分を略直角に偏向するよう配置されている。なお各図中、R成分の光路を実線で、G成分の光路を一点鎖線で、B成分の光路を破線で、それぞれ示す。
【0034】
なお、各図に示すX〜Zの各方向を以下のように定義する。まず、光源1から射出されライトトンネル2を介した光の直進方向をX(+)方向、X(+)方向の逆方向をX(−)方向とする。また、X方向に直交する方向であって、色合成素子10から第一レンズ群11aに向かう方向をY(+)方向、Y(+)方向の逆方向をY(−)方向とする。また、X、Yの各方向に直交する方向であって、第一ダイクロイックミラー5によって直角に偏向された光の直進方向をZ(+)方向、Z(+)方向の逆方向をZ(−)方向とする。
【0035】
第一ダイクロイックミラー5を透過したG、Bの各成分は、X(+)方向を直進し、次いで第二ダイクロイックミラー6に入射する。第二ダイクロイックミラー6は、R成分を何ら偏向することなく透過させ、G成分を偏向するような特性を持つ。ここでは、第二ダイクロイックミラー6は、G成分を直角に、より具体的にはY(−)方向に偏向するよう配置されている。
【0036】
第一ダイクロイックミラー5で略直角に反射し、Z(+)方向を直進するB成分は、B用反射型液晶素子9Bに入射する。B用反射型液晶素子9Bは、第一ダイクロイックミラー5と平行であって、かつ液晶面が該ミラー5の反射面と対向するように配設されている。
【0037】
B用反射型液晶素子9Bは、図示しない制御部から送信される変調信号に従って、ONビットに入射したB成分を変調する。変調信号は、所定のB用の映像情報に基づいて生成される。
【0038】
ONビットに入射したB成分は、液晶の性質によって、入射光束の偏光状態が90°回転したP偏光状態となる。OFFビットに入射したB成分はS偏光状態のままである。B成分は、該液晶素子9Bで反射して、色合成素子10に入射する。
【0039】
ここで、上記の通り、B用反射型液晶素子9Bは、第一ダイクロイックミラー5と平行に配設されている。よって、B成分は、B用反射型液晶素子9Bで略直角に、より具体的にはX(+)方向に反射する。
【0040】
第二ダイクロイックミラー6を透過したR成分は、第一ダイクロイックミラー5と平行に配設された第一ミラー7で略直角に反射し、Z(+)方向を直進する。そして該R成分は、R用反射型液晶素子9Rに入射する。R用反射型液晶素子9Rは、第一ミラー7(第一ダイクロイックミラー5)と直角をなし、かつ液晶面が該ミラー7の反射面と対向するように配設されている。
【0041】
R用反射型液晶素子9Rは、上記B用反射型液晶素子9Bと同一の機能を有する。つまり、ONビットに入射したR成分は変調の際、P偏光状態に変換される。そしてR成分は、R用反射型液晶素子9Rで略直角に、より具体的にはX(−)方向に反射する。
【0042】
第二ダイクロイックミラー6で反射したG成分は、第二ミラー8で略直角に偏向され、Z(+)方向を直進する。そして該G成分は、G用反射型液晶素子9Gに入射する。G用反射型液晶素子9Gは、第二ミラー8と直角をなし、かつ液晶面が該ミラー8の反射面と対向するように配設されている。
【0043】
G用反射型液晶素子9Gは、上記他の反射型液晶素子9R、9Bと同一の機能を有する。つまり、ONビットに入射したG成分は変調の際、P偏光状態に変換される。そしてG成分は、G用反射型液晶素子9Gで略直角に、より具体的にはY(+)方向に反射する。
【0044】
以上、各部材の位置関係を総括すると、色合成素子10を基準とした場合、X(−)方向に反射型液晶素子9B、X(+)方向に反射型液晶素子9R、Y(−)方向に反射型液晶素子9Gが配設される。反射型液晶素子9BからみてZ(−)方向には第一ダイクロイックミラー5が配設される。色合成素子10からみてZ(−)方向には第二ダイクロイックミラー6が配設される。反射型液晶素子9RからみてZ(−)方向には第一ミラー7が配設される。反射型液晶素子9GからみてZ(−)方向には第二ミラー8が配設される。
【0045】
そして、各反射型液晶素子9R、9G、9Bはそれぞれ、入射する各色成分が直角に反射するように色合成素子10に対して傾けて配設されている。つまり、各反射型液晶素子9R、9G、9Bで反射される各成分の中心線は、いずれも同一平面(ここでは、X−Y平面)上に位置している。
【0046】
以上のように各部材を配設することにより、プロジェクタ用光学系100のZ方向の厚みを抑えることが可能になる。そのため、本実施形態のように、色分離手段としての部材5〜8からなる光学素子群を各反射型液晶素子9R、9G、9Bや色合成素子10からなる光学素子群に対してZ方向に並べて配設することが可能になり、より一層の小型化を達成している。
【0047】
なお、色合成素子10の上面、つまり色分離手段としての部材5〜8と対向する面を耐熱黒色塗装することで、色分離手段や色合成素子内部の軸外光による不要光が効果的に吸収遮断されゴースト光やフレア光の発生も有効に防止することもできる。
【0048】
次にこの色合成系を用いた映像の生成プロセスについて説明する。各反射型液晶素子9R、9G、9Bで反射した各成分は、色合成素子10に入射する。図5(A)は、第一の色合成面10Bの、入射光の波長と透過率との関係を概略的に示すグラフである。図5(B)は、第二の色合成面10Rの、入射光の波長と透過率との関係を概略的に示すグラフである。各グラフにおいて、横軸は入射光の波長を、縦軸は透過率を示す。また、実線がP偏光、破線がS偏光を、それぞれ示す。
【0049】
図5(A)に示すように、第一の色合成面10Bは、P偏光状態にあるG、Rの各成分に対して高い透過率を持つ。また、第一の色合成面10Bは、S偏光およびP偏光状態のB成分に対して極めて低い透過率を持つ。図5(B)に示すように、第二の色合成面10Rは、P偏光状態にあるB、Gの各成分に対して高い透過率を持つ。また、第二の色合成面10Rは、S偏光およびP偏光状態にあるR成分に対して極めて低い透過率を持つ。
【0050】
このように、二つの色合成面10B、10Rは、波長特性と偏光特性を兼ね備える。よって、色合成素子10に入射したON光であるP偏光状態のB成分は、第一反射面10Bで直角に反射される。色合成素子10に入射したON光であるP偏光状態のR成分は、第二反射面10Rで直角に反射する。色合成素子10に入射したON光であるP偏光状態のG成分は、いずれの反射面10R、10Bも透過する。これにより、各反射型液晶素子9R、9G、9Bにより変調されたR、G、BのON光の各色成分が合成される。色合成素子から射出された合成光は、投影レンズ群11に入射する。
【0051】
また、色合成素子10に入射したOFF光であるS偏光状態のR、G、Bの各成分は、各色合成面で再帰反射し、反射型液晶素子9R、9G、9Bを介して光源1方向に戻る。つまり、色合成面10B、10Rと各反射型液晶素子9R、9G、9Bによって、不要光は投影レンズ群11に導かれない構成になっている。つまり、フレアやゴーストの発生を有効に防止し、明るく高品質な画像が形成される。なお本実施形態では、より一層の高画質な画像を実現するため、色合成素子10と投影レンズ群11間に、不要光であるS偏光成分をカットするための吸収偏光板12を設けている。
【0052】
色合成素子10から射出された光は、第一レンズ群11aを介して偏向用光学素子11bの近傍で光軸から傾いた中間像を形成する。偏向用光学素子11bは、第一レンズ群11aに対して光軸がずれた状態かつ傾いた状態で配設された偏向機能を持つレンズである。そして第一レンズ群11aの光軸を有効に第二レンズ群11cに導く。ただし、該偏向手段は一般的なレンズに限定されるものではなくフレネルレンズ、フレネルミラー、色消しプリズム等であっても良い。偏向用光学素子11bの位置で形成された中間像は、第一レンズ群11aの光軸に対して各反射型液晶素子9R、9G、9Bが傾いていることにより、像高による倍率変化により台形歪みが発生している。
【0053】
台形歪と光軸に対する傾きをもった中間像を形成した光は偏向用光学素子11bで偏向された後、第二レンズ群11cを介してスクリーンS上に再結像する。ここで、スクリーンSは、第二レンズ群11cの光軸に対して中間像の台形歪を相殺する方向に傾いている。そのため、各反射型液晶素子9R、9G、9Bが傾いているにも拘わらず、結果として、スクリーンSには、台形歪みのない矩形状の画像が表示される。しかも、色合成素子10と各反射型液晶素子9R、9G、9Bによって不要光が良好に除去されているため、スクリーンSには、大画面の明るい高画質なフルカラー映像が投影される。
【0054】
なお、本実施形態では、色分離手段としての部材5〜8を各反射型液晶素子9R、9G、9Bや色合成素子10とZ方向に所定間隔をおいて並べて配設しているが、各部材5〜8を色合成素子10に一体形成することも可能である。
【0055】
以上が本発明の実施形態である。本発明にかかるプロジェクタ用光学系は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形を行っても同様の効果を奏する。
【0056】
上記実施形態において、3板式プロジェクタに搭載されるプロジェクタ用光学系は、必ずしも上記構成に限定されるものではない。
【0057】
例えば、各反射型液晶素子9R、9G、9Bと色合成素子10の間には、液晶動作に合わせた偏光板や位相差板及び補償板を配置して光効率を向上させたり、フレア・高温対策を行ってもよい。また、各反射型液晶素子9R、9G、9Bと色合成素子10の間にプリズムを配置して第1レンズ群11aのFbを光学上短くしてもよい。さらに、種々の光学部材を適宜組み合わせることによって上記各実施形態のプロジェクタ用光学系とは異なる構成で色分離を行うことも可能である。
【0058】
また、上記実施形態で説明した各部材は、光学系全体を小型化しかつ各部材間の相対的な位置決めを容易にする観点から、設置位置や傾き具合を設定している。従って、例えば各反射型液晶素子9R、9G、9Bを上記実施形態以外の角度で傾けることも可能である。
【0059】
他にも、上記実施形態では、斜め投影したことにより、得られる像の台形歪みを回避するために、各反射型液晶素子9R、9G、9BとスクリーンSと中間像のそれぞれを投影光学系の光軸に対して傾ける構成にしている。しかし本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、各反射型液晶素子9R、9G、9BやSスクリーンSの傾き角を、台形歪みが画像観察に支障をきたさない程度に小さく抑え、1つの投影レンズ群を介してスクリーンSに直接結像する構成にも適用することができる。
また、上記1つの投影レンズ群でスクリーンSを傾け直接結像する構成で、各反射型液晶素子9R、9G、9Bを結像方向へ傾けた上で、映像データまたは各反射型液晶素子形状を台形とすることにより、像の台形歪みに関する補正をすることもできる。
【0060】
さらに、例えば、上記実施形態では、光源1からの光束は単一偏光板4によりS偏光状態に変換されると説明したが、P偏光状態に変換される構成であってもよい。また、上記各実施形態における各色成分の光路は任意に置換可能である。すなわち、例えば、第一ダイクロイックミラー5で偏向するのはB成分以外の色成分であっても良い。
【0061】
また、上記では、色変調手段として反射型液晶素子を使用した例を説明したが、色変調手段はこれに限定するものではなく、若干全体の構成が変わるが透過型の液晶素子を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態のプロジェクタ用光学系の概略構成を表す図である。
【図2】図1に示すプロジェクタ用光学系のα−α面での断面図である。
【図3】図1に示すプロジェクタ用光学系のβ−β面での断面図である。
【図4】実施形態の色合成素子近傍を拡大して示す図である。
【図5】図5(A)は、第一の色合成面の、入射光の波長と透過率との関係を概略的に示すグラフ、図5(B)は、第二の色合成面の、入射光の波長と透過率との関係を概略的に示すグラフである。
【符号の説明】
【0063】
1 光源
5、6 ダイクロイックミラー
9R、9G、9B 反射型液晶素子
10 色合成素子
11 投影レンズ群
100 3板式斜め投影プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部から照射された光を用いて生成された画像を投影光学系を介してスクリーン上に斜めに投影する斜め投影プロジェクタ用光学系において、
色の三原色に対応した第一から第三の色成分を、所定の画像信号に基づいて変調する、各色成分に対応した第一から第三の色変調手段と、
前記第一から第三の各変調手段によって変調された前記第一から第三の色成分を合成し、前記投影光学系に導く色合成手段と、を有し、
前記第一から第三の色変調手段は、各色変調手段に入射する色成分と該色変調手段から射出される色成分とが異なる光路を進むように、各色変調手段から射出される各色成分の中心線を含む面に対して傾いて配設されていることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記光源部から照射される白色光を、前記第一から第三の色成分に分離し、各色成分を対応する色変調手段に導く色分離手段を有することを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項3】
請求項2に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記色分離手段と、前記色変調手段および前記色合成手段とは、各色変調手段から射出される各色成分の中心線を含む面に直交する所定の方向に並んで位置していることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記色分離手段は、
前記白色光から第一の色成分のみを分離し前記第一の色変調手段に直接導く第一の色分離面と、
該第一の色分離手段を透過した光を前記第二の色成分と前記第三の色成分に分離する第二の色分離面と、
前記第二の色成分を前記第二の色変調手段に直接導く第一の偏向面と、
前記第三の色成分を前記第三の色変調手段に直接導く第二の偏向面と、から構成されることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項5】
請求項3を引用する請求項4に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記第一の色分離面は前記第一の色変調手段との関係において、前記第二の色分離面は前記色合成手段との関係において、前記第一の偏向面は前記第二の色変調手段との関係において、前記第二の偏光面は前記第三の色変調手段との関係において、それぞれ前記所定の方向に位置することを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項6】
請求項5に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
各色分離面および各偏向面は、入射する光を略直角に偏向するように配設されていることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記光源部は、第一の直線偏光状態にある白色光を照射し、
前記第一から第三の色変調手段は、前記第一から第三の各色成分を変調する際、第一の直線偏光状態を90°回転した第二の直線偏光状態にすることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項8】
請求項7に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記色合成手段は、前記第一の直線偏光状態にある前記各色成分および前記第二の直線偏光状態にある第一の色成分のみを反射させる第一の色合成面と、前記第一の色合成面に直交しかつ前記第一の直線偏光状態にある前記各色成分および前記第二の直線偏光状態にある第二の色成分のみを反射させる第二の色合成面と、を持つことを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記第一の直線偏光がS偏光であり、前記第二の直線偏光がP偏光であることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記第一から第三の色変調手段は、入射する色成分を反射しつつ変調することを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項11】
請求項10に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記第一から第三の色変調手段は、反射型液晶素子であることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記第一から第三の色変調手段は、入射する各色成分が略直角に反射するように傾けられていることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の斜め投影プロジェクタ用光学系において、
前記色合成手段は、合成された光が前記投影光学系の光軸と平行に進むように構成されていることを特徴とする斜め投影プロジェクタ用光学系。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−343632(P2006−343632A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170605(P2005−170605)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】