説明

断熱サッシおよびその窓枠の組立方法

【課題】障子の金属製框材自体に樹脂等の断熱部材を組み合わせなくても、断熱効果がよく、コストも低減することができるほか、金属製框に付着した雨水、結露水を受け止めることで、雨水や結露水の滴下や、ガラス表面の流下を防止することができるサッシを提案する。
【解決手段】壁の開口部に嵌め込まれた窓枠1と、この窓枠1に開閉可能に配置された障子2とを備え、前記障子2を金属製の框材3、4から構成し、前記窓枠1を屋外側に面する金属製の金属枠1aと屋内側に面する合成樹脂製の樹脂枠1bとを結合した構成とするとともに、前記樹脂枠1bには、前記障子2の閉鎖時に前記障子2の金属製框材3、4の屋内側見付面を覆うように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切妻部等に設けられるサッシで、雨水や結露の処理にも有効な住宅用断熱サッシおよびそのサッシに供される窓枠の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の断熱構造における障子を構成する框材として、金属製框材の室内側を合成樹脂部材で被覆した複合構造のものが知られている。このような障子は断熱効果には優れているものの、サッシを構成する部材の数が多くなり、コスト的に高かった。
【0003】
また、従来のサッシにおいては、サッシ障子の上部を乗り越えて内側に入り込んだ雨水や障子框に発生した結露水が、框に付着した塵埃を取り込んで框の出隅角部から滴下したりガラス内面を伝って落ちるため、ガラス表面や開口部の屋内側木枠やカーテン等を汚したりカビの発生原因となったりしている。
【0004】
一方、従来の断熱サッシの窓枠においては、屋内側の樹脂枠材は屋外側を構成する金属枠材に挿入または嵌合して結合することにより一体の複合枠材となるような断面形状になっており、竪枠と横枠等の枠材相互の接合仕口部では、両枠材を突合せるためには、端部の加工は複雑なものとなる。そのため、加工工数が増大し、サッシのコストアップの要因となる。特に、切妻部等に設けられるサッシのように、矩形以外の三角形や円形をなす異形サッシの場合は、枠材の端部を斜めに切断加工する必要があるため、その影響が大きい。
【0005】
また、メンテナンス等で屋内側樹脂枠材の交換を行う際、その脱着には、仕口部で樹脂材相互が重なり合うことや、内装納まり、他部材との干渉等により極めて手間のかかる作業となる。
【0006】
特に異形サッシの場合、屋内側樹脂枠を、サッシの面内方向に取り外す際、外した樹脂枠が留まる空間が確保されていないため、両端部が近傍の枠に干渉してそのままでは取り外すことができない。
【特許文献1】実開平5−92383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点を解消し、障子の金属製框材自体に樹脂等の断熱部材を組み合わせなくても、断熱効果がよく、コストも低減することができるほか、金属製框材に付着した雨水や結露水を受け止めることで、雨水や結露水の滴下や、ガラス表面の流下を防止することができる断熱サッシを提供することをその課題とする。
【0008】
また、本発明は、樹脂枠材の加工負荷を削減し、脱着や交換を容易に行なうことができる断熱サッシおよびその窓枠の組立方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、請求項1に係る断熱サッシは、壁の開口部に嵌め込まれた窓枠と、この窓枠の内側に配置された障子とを備え、前記障子の框を金属製の框材から構成し、前記窓枠を屋外側に面する金属製の金属枠と屋内側に面する合成樹脂製の樹脂枠とを結合した構成とするとともに、前記樹脂枠によって前記障子の閉鎖時に前記障子の框の屋内側見付面を覆うように形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る断熱サッシは、請求項1に記載の断熱サッシにおいて、前記樹脂枠によって前記障子の框の屋内側見付面を覆うことに代え、前記樹脂枠に合成樹脂製の樹脂網戸枠を取り付け、前記障子の框の屋内側見付面を前記樹脂枠と樹脂網戸枠とによって覆うことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る断熱サッシは、請求項1又は2記載の断熱サッシにおいて、前記樹脂枠を構成する樹脂枠材のうち水平の又は傾斜した上部枠には、前記障子のガラス面に近接する位置まで延長する突出部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る断熱サッシは、請求項3記載の断熱サッシにおいて、前記突出部は樋形状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る断熱サッシの窓枠の組立方法は、壁の開口部に嵌め込まれる窓枠を屋外側の金属製の金属枠と屋内側の合成樹脂製の樹脂枠とを結合した構成とし、前記金属枠に対して前記樹脂枠を結合させる際に、前記樹脂枠を構成する樹脂枠材相互の接合仕口部に合成樹脂製のジョイナーブロックを取り付け、2つのジョイナーブロック間に前記樹脂枠材を嵌め込んで成ることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の断熱サッシ又はその窓枠の組立方法において、前記窓枠が円形又は矩形以外の多角形状の異形サッシの窓枠であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の断熱サッシ又はその窓枠の組立方法において、前記樹脂枠に代え、木製枠としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、金属製の障子框の屋内側見付面は窓枠の樹脂枠によって覆われるので、障子框からの熱は樹脂枠によって断熱され、屋内側の熱は樹脂枠によって断熱されて障子框に伝えられる。このため、断熱性が確保される。
【0017】
また、屋内側からは樹脂枠のみが見えることになるので、障子の框が金属であっても、ガラス面の周囲の部分があたかも単一の材料で構成されているように見え、また金属製框材に水滴が付着しても室内側からは見えないので、内観が損なわれることがない。
【0018】
さらに、障子を構成する金属製框を合成樹脂で被覆する必要がないので、部材数が減り、組立コスト、材料コスト等が低減できる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、障子の框の屋内側見付面を前記樹脂枠と樹脂網戸枠とによって覆うので、樹脂枠の見付寸法を網戸枠分小さくできるから、コストを低減することができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、上部枠には、障子のガラス面に近接する位置まで突出する突出部が一体に形成されているので、障子の金属製の框材周辺の空気の対流が抑制され、断熱効果がさらに向上する。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、障子の框材やガラス面を伝う結露水等を受け止めて一時的に貯めたり(突出部の上部枠が水平の場合)、流下させたり(上部枠が傾斜している場合)して容易に処理することができるので、屋内側の見え掛かり部の汚れ、カビ等の発生が防止されて、サッシの内観の見栄えを長期間保持できる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、樹脂枠材の端部の加工が単純な直切断のみとなり、大幅に加工工数が削減でき、その結果、製造コストを低減することができる。
【0023】
また、樹脂枠材の脱着が容易であるから、内装納まりや他部材との干渉に影響を受けることなく樹脂枠材を容易に交換できるから、一般のサッシと同様にメンテナンスすることが可能となる。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、窓枠が円形又は矩形以外の多角形状の異形サッシの窓枠であっても、請求項1、2又は4に係る発明によるものと同様の効果を得ることができる。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、木製の枠でも同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態を図1の住宅の切妻部に設けられた断熱サッシAについて説明する。上記サッシAは壁の開口部に嵌め込まれた窓枠1と、この窓枠1の屋外側に水平方向に突出して開閉するように配置された障子2とから構成されている。
【0027】
障子2の框は、詳しくは図5に示されるように、金属製の框材、つまり左右に斜めに配置された傾斜框3と下框4とを框組みすることによって構成され、全体が三角形状に形成されている。
【0028】
窓枠1は、図1〜図4に示されるように、屋外側の金属製の金属枠1aと屋内側の合成樹脂製の樹脂枠1bとを結合した構成である。金属枠1aは枠材(金属傾斜枠5と金属下枠6)を三角形状に枠組みしたもので、その外周にはさらに金属製の枠受け材7a、7bが固定されている。また、上記金属枠1aは壁開口部を構成する躯体構造材8へ取付けることにより、その内周面は屋内側に露出する。そこで、断熱性を確保するため、この内周面には合成樹脂製の樹脂枠1bが結合されている。
【0029】
樹脂枠1bは合成樹脂製の樹脂枠材(樹脂傾斜枠9と樹脂下枠10)を三角形状に枠組みしたもので、後述のジョイナーブロック27(図8参照)とともに嵌合とネジ止めによって金属枠1aに結合している。樹脂枠1bは断面が中空の樹脂部材を用いるのが好ましいが、図3、4のように、断面コ字形の合成樹脂部と屋外側に開口した開口部を金属板部11で閉鎖するように構成したものであってもよい。そして、上記樹脂枠1bは、障子2の閉鎖時には、障子2の框の屋内側見付面13を覆うように形成されている。なお、上記樹脂枠1bの屋内側には樹脂製網戸枠14が取り付けられている。
【0030】
上記構成によれば、障子2の金属製框材3、4からなる障子框の屋内側見付面は窓枠1の樹脂枠1bによって覆われるので、金属製障子框からの熱は樹脂枠1bによって断熱され、また屋内側からの熱は樹脂枠1bによって断熱されて障子框材に伝えられる。このため、断熱性が確保される。
【0031】
また、屋内側からは樹脂枠1bのみが見えることになるので、障子2の框材3、4が金属であっても内観が損なわれることがない。
【0032】
また、障子框を金属製の框材3、4のみから形成したので、部材点数が減り、組立コストおよび材料コストを低減できる。
【0033】
次に、上記樹脂傾斜枠9には、障子2のガラス面15に近接する位置まで突出する突出部16が一体に形成されている。また、図6に示されるように、この突出部16は傾斜框3等に生じた結露を受けることが可能な位置まで延長され、その断面は樋形状に形成されて水受けを構成している。
【0034】
また、金属下枠6と樹脂下枠10には、図示しないが、その上面の屋外側と屋外側に開口する排水孔が形成され、排水経路が設定されている。下枠に集められた雨水や結露水は上記排水孔から屋外に排出される。
【0035】
上記構成によれば、樹脂枠1bには、障子2のガラス面15に近接する位置まで突出する突出部16が一体に形成されているので、障子2の金属製の框材3、4周辺の空気の対流が抑制され、断熱効果がより向上する。
【0036】
また、上記突出部16の断面は樋形状に形成されているから、障子2の框材3やガラス面を伝う結露水等を受け止めて一時的に貯めたり(突出部の上部枠が水平の場合)、流下させたり(上部枠が傾斜している場合)して容易に処理することができるので、屋内側の見え掛かり部の汚れ、カビ等の発生が防止されて、サッシの内観の見栄えを長期間保持できる。
【0037】
このように、屋内側の見え掛かり部の汚れ、カビ等の発生も防止されるので、サッシの内観の見栄えを長期間保持できる。また、樹脂傾斜枠9と水受けを一体とすることで、製造コストをほとんど上げることなく機能を追加することができる。
【0038】
次に、図5および図7に示されるように、傾斜框3と下框4の中間部には垂直に対向する1対の縦桟17が架設されている。これに対し、前記窓枠1の内側には、図2、図4、図5および図8に示されるように、傾斜枠5と下枠6の中間部に垂直に対向する1対の補助縦枠22が架設されている。上記補助縦枠22は金属本体22aと樹脂カバー22bとから構成され、樹脂カバー22bは図4に示されるように、断面略コ字形で、金属本体22aに対して屋内側から所定の位置まで水平方向に移動させた後に、金属本体22a方向に金属本体22aと平行を保ちながら近接させて嵌め込んでねじ止めすることによって取り付けられている。なお、障子2の縦桟17と窓枠1の補助縦枠22とは互いに相対する位置に設けられ、障子2の閉鎖時には縦桟17は補助縦枠22の開口部から内側に納まるように構成されている。上記補助縦枠22と縦桟17とはリンク機構24を介して連結されている。
【0039】
上記構成により、屋内側からハンドル25を操作することによりリンク機構24を作動させることにより、障子2を図5のように屋外側に水平方向に移動して開き又は閉じ作動する。
【0040】
なお、障子2の框材3、4は必ずしも樹脂枠1bのみによって覆われる例に限定されない。図9に簡略に示されるように、樹脂枠1bに合成樹脂製の樹脂網戸枠26を取り付け、前記障子2の框の屋内側見付面を樹脂枠1bと樹脂網戸枠26によって覆う構成であってもよい。
【0041】
上記構成によれば、断熱効果とともに、樹脂枠1bの見付寸法を網戸枠分小さくすることができ、コストを削減することができる。
【0042】
ところで、上記樹脂枠1bは金属枠1aを三角形状に枠組みした後、その内周側に嵌め込み状に取り付けられるが、図8に示されるように、両側の樹脂傾斜枠9間および樹脂傾斜枠9と樹脂下枠10aとの相互の接合仕口部には合成樹脂製のジョイナーブロック27が固定され、2つのジョイナーブロック27間に樹脂枠材9、10aを嵌め込むという方法で取り付けられている。ジョイナーブロック27は、合成樹脂の一体成形部品で、金属枠材5、6による両側の角部の内側に嵌め込み固定できる形状になっており、1つの金属枠材5又は6の両端に配置されたジョイナーブロック27は、相対する面が平行になるように形成されている。
【0043】
ジョイナーブロック27は金属枠1aの角部に取り付けられるだけであるから、嵌め込み作業も容易かつ確実におこなうことができる。また、その後に取り付けられる樹脂傾斜枠9と樹脂下枠10は、両端部を直切断した形状のものをジョイナーブロック27間に嵌め込み装着し、ネジ等で固定すればよい。取り外す必要があるときは樹脂枠材9、10を外した後、ジョイナーブロック27を外せばよい。
【0044】
このように、樹脂枠材9、10の端部の加工が単純な直切断のみとなり、大幅に加工工数が削減でき、その結果、製造コストを低減することができる。
【0045】
また、樹脂枠材9、10の脱着が容易であるから、内装納まりや他部材との干渉に影響を受けることなく樹脂枠材9、10を容易に交換できるから、一般のサッシと同様にメンテナンスすることが可能となる。
【0046】
なお、窓枠は通常の矩形であってもよい。この場合、上部枠は水平の上枠である。さらに、金属枠が円形又は三角形・矩形以外の多角形状の異形窓枠であっても、同様に、ジョイナーブロックを介して樹脂枠材を容易に取り付けることができる。
【0047】
さらに、上記断熱サッシとその窓枠の組立方法は、開き窓、FIX窓等の一般的な窓にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】切妻部にサッシを設けた住宅の斜視図である。
【図2】上記サッシの内観図である。
【図3】図2のX−X線上の断面図である。
【図4】図2のY−Y線上の断面図である。
【図5】障子を開いた状態の斜視図である。(外観図)
【図6】傾斜枠による結露案内説明図である。
【図7】障子の分解斜視図である。(内観図)
【図8】補助縦枠と樹脂枠の取付態様説明図である。(内観図)
【図9】障子框材を覆うための他の手段の例の簡略説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 窓枠
1a 金属枠
1b 樹脂枠
2 障子
3 傾斜框
4 下框
9 樹脂傾斜枠
10 樹脂下枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の開口部に嵌め込まれた窓枠と、この窓枠の内側に配置された障子とを備え、前記障子の框を金属製の框材から構成し、前記窓枠を屋外側に面する金属製の金属枠と屋内側に面する合成樹脂製の樹脂枠とを結合した構成とするとともに、前記樹脂枠によって前記障子の閉鎖時に前記障子の框の屋内側見付面を覆うように形成したことを特徴とする断熱サッシ。
【請求項2】
前記樹脂枠によって前記障子の框の屋内側見付面を覆うことに代え、前記樹脂枠に合成樹脂製の樹脂網戸枠を取り付け、前記障子の框の屋内側見付面を前記樹脂枠と樹脂網戸枠とによって覆うことを特徴とする、請求項1に記載の断熱サッシ。
【請求項3】
前記樹脂枠を構成する樹脂枠材のうち水平の又は傾斜した上部枠には、前記障子のガラス面に近接する位置まで延長する突出部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱サッシ。
【請求項4】
前記突出部は樋形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の断熱サッシ。
【請求項5】
壁の開口部に嵌め込まれる窓枠を屋外側の金属製の金属枠と屋内側の合成樹脂製の樹脂枠とを結合した構成とし、前記金属枠に対して前記樹脂枠を結合させる際に、前記樹脂枠を構成する樹脂枠材相互の接合仕口部に合成樹脂製のジョイナーブロックを取り付け、2つのジョイナーブロック間に前記樹脂枠材を嵌め込んで成ることを特徴とする断熱サッシの窓枠の組立方法。
【請求項6】
前記窓枠が円形又は矩形以外の多角形状の異形サッシの窓枠である、請求項1〜5のいずれかに記載の断熱サッシ又はその窓枠の組立方法。
【請求項7】
前記樹脂枠に代え、木製枠とした、請求項1〜6のいずれかに記載の断熱サッシ又はその窓枠の組立方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−132210(P2006−132210A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322951(P2004−322951)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】