説明

施肥情報管理システム,施肥情報管理システム用プログラム及び施肥情報管理システム用記録媒体。

【課題】 作物に対する期待される吸収割合としての肥効率を考慮して、施肥する堆肥の特に窒素,リン酸,カリウムの所要成分について、その過不足量を把握できるようにし、正確な施肥情報を提供して、施肥設計を確実に行なうことができるようにする。
【解決手段】 複数種類の作物毎に所定耕作面積当りにおいて所定収穫量を得るために必要な各所要成分の基準量を定めた基準データに基づいて決定された基本基準データと、複数種類の堆肥毎の各所要成分の成分量に係る肥料データとに基づいて、特定の作物に対し指定された施肥面積において施肥すべき当該特定の肥料の施肥量を算出し、算出した特定の肥料の施肥量のうち各所要成分の各々の全成分量を算出し、この全成分量に各所要成分の作物に対して期待される吸収割合としての肥効率を夫々乗じて各所要成分の有効成分量を算出し、この有効成分量及び基本基準データに基づいて各所要成分の施肥の過不足量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物を耕作する圃場の施肥情報をコンピュータにより管理する施肥情報管理システムに係り、特に、自然界にある動植物を原料として醗酵させた堆肥を施肥する際に有用な施肥情報管理システム,施肥情報管理システム用プログラム及び施肥情報管理システム用記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の施肥情報管理システムとしては、例えば、特開2005−80514号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。
これは、農作物を耕作する圃場の土壌の分析から得られた土壌分析情報と、堆肥提供者の堆肥成分の分析から得られた堆肥分析情報とから、農作物生産者が選択した作物の育成に必要な成分量を算出し、必要な成分量を有する最適な堆肥の組み合わせを導出するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−80514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来の施肥情報管理システムにおいては、最適な堆肥の組み合わせを導出してはいるが、作物に対する期待される吸収割合としての肥効率を考慮していないので、施肥する堆肥の特に窒素,リン酸,カリウムの所要成分について、その過不足量を把握できないことから、充分な施肥情報を提供しているとはいえず、施肥設計を確実に行なうことができないという問題があった。
また、土の中に含まれている塩基(石灰、苦土、カリウム等)の比率についても、これらの成分の間には拮抗関係があることから、施肥設計においては、これらの塩基バランスも考慮することが望ましいが、従来のシステムにおいては、これらを考慮した所要成分の過不足量を把握できないことから、この点でも、充分な施肥情報を提供しているとはいえず、施肥設計を確実に行なうことができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、作物に対する期待される吸収割合としての肥効率を考慮して、施肥する堆肥の特に窒素,リン酸,カリウムの所要成分について、その過不足量を把握できるようにし、正確な施肥情報を提供して、施肥設計を確実に行なうことができる施肥情報管理システム,施肥情報管理システム用プログラム及び施肥情報管理システム用記録媒体を提供することを目的とする。
そして、必要に応じ、施肥対象となる圃場の土壌中に含まれている塩基(石灰、苦土、カリウム等)の適正比率についても考慮して、所要成分の過不足量を把握できるようにし、正確な施肥情報を提供して、施肥設計を確実に行なうことができる施肥情報管理システム,施肥情報管理システム用プログラム及び施肥情報管理システム用記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の施肥情報管理システムは、複数種類の作物毎に所定耕作面積当りにおいて所定収穫量を得るために必要な少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分の基準量を定めた基準データを格納する基準データ格納手段と、
複数種類の堆肥毎に上記各所要成分の成分量に係る肥料データを格納する肥料データ格納手段と、
上記各所要成分の成分量のうち作物に対して期待される吸収割合としての肥効率を定めた肥効率データを格納する肥効率データ格納手段と、
上記複数種類の作物のうちの特定の作物及び上記複数種類の堆肥のうちの特定の堆肥を選択するとともに当該特定の作物の施肥面積を指定する項目選択指定手段と、
該項目選択指定手段の選択及び指定があったとき、上記基準データ格納手段に格納された基準データに基づいて決定された基本基準データ及び上記肥料データ格納手段に格納された肥料データに基づいて上記特定の作物に対し指定された施肥面積において施肥すべき当該特定の肥料の施肥量を算出する施肥量算出手段と、
該施肥量算出手段が算出した当該特定の肥料の施肥量のうち上記各所要成分の各々の全成分量を算出する全成分量算出手段と、
該全成分量算出手段が算出した上記各所要成分の全成分量に上記肥効率データ格納手段に格納した各所要成分の肥効率を夫々乗じて当該各所要成分の有効成分量を算出する有効成分量算出手段と、
該有効成分量算出手段が算出した上記各所要成分の有効成分量及び上記基本基準データに基づいて当該各所要成分の施肥の過不足量を算出する過不足量算出手段と備えた構成としている。
【0007】
これにより、本発明の施肥情報管理システムによれば、入力により、基準データが基準データ格納手段に格納され、肥料データが肥料データ格納手段に格納され、肥効率データが肥効率データ格納手段に格納される。
この状態で、項目選択指定手段を機能させ、複数種類の堆肥のうちの特定の堆肥を選択するとともに当該特定の作物の施肥面積を指定する。これにより、施肥量算出手段が、基準データ格納手段に格納された基準データに基づいて決定された基本基準データと、肥料データ格納手段に格納された肥料データに基づいて、特定の作物に対し指定された施肥面積において施肥すべき当該特定の肥料の施肥量を算出する。
更に、全成分量算出手段がこの施肥量から各所要成分の各々の全成分量を算出し、有効成分量算出手段がこの各所要成分の全成分量に、各所要成分の肥効率を夫々乗じ、各所要成分の有効成分量を算出する。その後、過不足量算出手段が各所要成分の有効成分量及び各所要成分の基本基準データに基づいて、各所要成分の施肥の過不足量を算出する。
そのため、施肥する堆肥において、各所要成分の過不足量を知ることができ、不足する成分については、別途化学肥料などを用いて補充することができるようになり、正確な施肥情報を得て、施肥設計を確実に行なうことができるようになる。
特に、作物に対する期待される吸収割合としての肥効率を考慮して、施肥する堆肥の特に窒素,リン酸,カリウムの所要成分について、その過不足量を把握できるようにしているので、より正確な施肥情報を得ることができ、施肥設計を確実に行なうことができる。
【0008】
そして、必要に応じ、複数の圃場毎に各圃場における土壌の少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分に係る所要成分含有量情報及び少なくとも石灰,苦土,カリウムの塩基に関する塩基情報を有する土壌データを格納する土壌データ格納手段と、
予め定めた塩基の適正比,上記土壌データ格納手段が格納した土壌データに基づいて上記基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成する基本基準データ作成手段とを備えた構成としている。
これにより、入力により、土壌データ格納手段に土壌データが格納され、基本基準データ作成手段により、予め定めた塩基の適正比,土壌データ格納手段が格納した土壌データに基づいて、基準データが補正される。このため、基本基準データが、土壌の実情にあった数値になることから、上記の過不足量算出手段によって算出される各所要成分の施肥の過不足量が、より実情に見合った数値になり、より一層、正確な施肥情報を得て、施肥設計を確実に行なうことができるようになる。
【0009】
また、本発明の施肥情報管理システムは、複数種類の作物毎に所定耕作面積当りにおいて所定収穫量を得るために必要な少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分の基準量を定めた基準データを格納する基準データ格納手段と、
複数種類の堆肥毎に上記各所要成分の成分量に係る肥料データを格納する肥料データ格納手段と、
上記各所要成分の成分量のうち作物に対して期待される吸収割合としての肥効率を定めた肥効率データを格納する肥効率データ格納手段と、
複数の圃場毎に各圃場における土壌の少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分に係る所要成分含有量情報及び少なくとも石灰,苦土,カリウムの塩基に関する塩基情報を有する土壌データを格納する土壌データ格納手段と、
上記複数の圃場のうちの特定の圃場,上記複数種類の作物のうちの特定の作物及び上記複数種類の堆肥のうちの特定の堆肥を選択するとともに当該特定の作物の施肥面積及び作土深さを指定する項目選択指定手段と、
該項目選択指定手段の選択及び指定があったとき、予め定めた塩基の適正比,上記土壌データ格納手段が格納した土壌データ,上記項目選択指定手段で指定された施肥面積及び作土深さに基づいて上記基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成する基本基準データ作成手段と、
上記項目選択指定手段の選択及び指定があったとき、上記基本基準データ作成手段が作成した基本基準データ及び上記肥料データ格納手段に格納された肥料データに基づいて上記特定の作物に対し指定された施肥面積において施肥すべき当該特定種類の肥料の施肥量を算出する施肥量算出手段と、
該施肥量算出手段が算出した当該肥料の施肥量のうち上記各所要成分の各々の全成分量を算出する全成分量算出手段と、
該全成分量算出手段が算出した上記各所要成分の全成分量に上記肥料データ格納手段に格納した各所要成分の肥効率を夫々乗じて当該各所要成分の有効成分量を算出する有効成分量算出手段と、
該有効成分量算出手段が算出した上記各所要成分の有効成分量を上記土壌データ格納手段が格納した土壌データに基づいて補正して上記各所要成分の実質有効成分量を算出する実質有効成分量算出手段と、
該実質有効成分量算出手段が算出した上記各所要成分の実質有効成分量及び上記基本基準データに基づいて当該各所要成分の施肥の過不足量を算出する過不足量算出手段と備えた構成としている。
【0010】
これにより、本発明の施肥情報管理システムによれば、入力により、基準データが基準データ格納手段に格納され、肥料データが肥料データ格納手段に格納され、肥効率データが肥効率データ格納手段に格納され、所要成分含有量情報及び塩基情報を有する土壌データが土壌データ格納手段に格納される。
この状態で、項目選択指定手段を機能させ、複数の圃場のうちの特定の圃場,複数種類の堆肥のうちの特定の堆肥を選択するとともに当該特定の作物の施肥面積及び作土深さを指定する。
これにより、先ず、基本基準データ作成手段が、予め定めた塩基の適正比,土壌データ格納手段が格納した土壌データ,項目選択指定手段で指定された施肥面積及び作土深さに基づいて基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成する。
次に、施肥量算出手段が、基本基準データ作成手段が作成した基本基準データと、肥料データ格納手段に格納された肥料データに基づいて、特定の作物に対し指定された施肥面積において施肥すべき当該特定の肥料の施肥量を算出する。
【0011】
更に、全成分量算出手段がこの施肥量から各所要成分の各々の全成分量を算出し、有効成分量算出手段がこの各所要成分の全成分量に、各所要成分の肥効率を夫々乗じ、各所要成分の有効成分量を算出する。その後、過不足量算出手段が各所要成分の有効成分量及び各所要成分の基本基準データに基づいて、各所要成分の施肥の過不足量を算出する。
そのため、施肥する堆肥において、各所要成分の過不足量を知ることができ、不足する成分については、別途化学肥料などを用いて補充することができるようになり、正確な施肥情報を得て、施肥設計を確実に行なうことができるようになる。
特に、作物に対する期待される吸収割合としての肥効率を考慮して、施肥する堆肥の特に窒素,リン酸,カリウムの所要成分について、その過不足量を把握できるようにしているので、より正確な施肥情報を得ることができ、施肥設計を確実に行なうことができる。
また、基本基準データが、土壌の実情にあった数値になることから、上記の過不足量算出手段によって算出される各所要成分の施肥の過不足量が、より実情に見合った数値になり、より一層、正確な施肥情報を得て、施肥設計を確実に行なうことができるようになる。
【0012】
また、必要に応じ、上記実質有効成分量算出手段は、過去の年分の施肥量に基づいて当年分において期待できる上記各所要成分のうち少なくとも窒素の残存有効量を加味して上記実質有効成分量を算出する機能を備えている。窒素の残存有効量を加味して実質有効成分量を算出するので、数値がより正確になり、過不足量算出手段によって算出される各所要成分の施肥の過不足量が、より実情に見合った数値になり、より一層、正確な施肥情報を得て、施肥設計を確実に行なうことができるようになる。
【0013】
更に、必要に応じ、上記実質有効成分量算出手段が算出した上記各所要成分の実質有効成分量及び予め定めた塩基の適正比に基づいて、少なくともカリウムの調整すべき調整量を算出する調整量算出手段を備えた構成としている。
これにより、調整量算出手段が、実質有効成分量算出手段が算出した各所要成分の実質有効成分量及び予め定めた塩基の適正比に基づいて、少なくともカリウムの調整すべき調整量を算出する。この場合、調整量は、塩基の適正比(塩基バランス)を重視した値になっているので、この調整値に見合う肥料を、堆肥とは別に畑地や水田に投入し、バランスの取れた施肥設計を行なうことができるようになる。過剰な場合は投入を見合わせることになる。
即ち、上記で算出した過不足量は、土壌の実態を示すデータであり、この過不足量に従って施肥するようにしても良いが、このデータは、塩基バランスを考慮していないので、必ずしも、良い結果が得られないことがあるが、調整量は、塩基バランスを考慮した値なので、これに基づいて施肥を行なうと、成分によっては過剰なものも出るが、バランスがよいことから、良好な結果を得やすくすることができるようになる。
【0014】
更にまた、必要に応じ、上記調整量を含む対応する土壌に必要な事項を記載した処方箋を作成する処方箋作成手段を備えた構成としている。処方箋を見て施肥設計や計画をたてることができ、より使いやすくなる。
【0015】
また、必要に応じ、上記肥料データ格納手段が格納する肥料データに基づいて上記肥効率を演算により求める肥効率演算手段を備えた構成としている。実際の肥料データに基づいて比効率を求めるので、施肥量をより正確に算出することができるようになる。
【0016】
更に、必要に応じ、上記施肥量算出手段は、上記各所要成分の基本基準データに対して、上記肥料データ格納手段に格納された肥料データにおける各所要成分のうち最初に上記基本基準データの条件を満たす所要成分を検索し、該当する所要成分が検索できたとき、当該条件を満たした所要成分の成分量を基準に施肥量を決定する構成としている。充足する所要成分を基準にするので、過不足の算出が容易になる。
【0017】
更にまた、必要に応じ、上記肥料データ格納手段に格納され上記施肥量算出手段が算出に用いる各堆肥における各所要成分の成分量は、過去に入力された成分量の平均値である構成としている。平均値を用いるので、より一層正確な値にすることができる。
【0018】
また、必要に応じ、過去における各所要成分の施肥の過不足量の推移を表す推移表を作成する過去データ推移表作成手段を備えた構成としている。これにより、施肥推移を知ることができ、施肥設計をより確実にできるようになる。
【0019】
更に、必要に応じ、将来における各所要成分の施肥の過不足量を、推定して算出する将来予測データ算出手段を備えた構成としている。これにより、数年後の施肥の状態をおおむね把握することができ、施肥設計をより確実にできるようになる。
【0020】
そしてまた、本発明は、上記の施肥情報管理システムを実行するコンピュータを機能させるための施肥情報管理システム用プログラムにある。
また、本発明は、上記のプログラムを担持した記録媒体であって、コンピュータで利用可能な施肥情報管理システム用記録媒体にある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、堆肥の施肥量を算出するとともに、各所要成分の施肥の過不足量を算出するので、施肥する堆肥において、各所要成分の過不足量を知ることができ、不足する成分については、別途化学肥料などを用いて補充することができるようになり、正確な施肥情報を得て、施肥設計を確実に行なうことができるようになる。
特に、作物に対する期待される吸収割合としての肥効率を考慮して、施肥する堆肥の特に窒素,リン酸,カリウムの所要成分について、その過不足量を把握できるようにしているので、より正確な施肥情報を得ることができ、施肥設計を確実に行なうことができる。
また、予め定めた塩基の適正比,土壌データに基づいて基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成する場合には、基本基準データが、土壌の実情にあった数値になることから、算出される各所要成分の施肥の過不足量が、より実情に見合った数値になり、より一層、正確な施肥情報を得て、施肥設計を確実に行なうことができるようになる。
【0022】
更に、各所要成分の実質有効成分量及び予め定めた塩基の適正比に基づいて調整量を算出する場合は、調整量は、塩基の適正比(塩基バランス)を重視した値になっているので、この調整値に見合う肥料を、堆肥とは別に畑地や水田に投入し、バランスの取れた施肥設計を行なうことができるようになる。即ち、上記で算出した過不足量は、土壌の実態を示すデータであり、この過不足量に従って施肥するようにしても良いが、このデータは、塩基バランスを考慮していないので、必ずしも、良い結果が得られないことがあるが、調整量は、塩基バランスを考慮した値なので、これに基づいて施肥を行なうと、成分によっては過剰なものも出るが、バランスがよいことから、良好な結果を得やすくすることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムについて詳細に説明する。実施の形態に係る施肥情報管理システムは、図1に示すように、コンピュータのCPU,メモリ等の機能によって実現される制御装置1と、キーボードあるいはマウスなどの入力装置2と、CRTやプリンタなどの出力装置3とを備えている。そして、施肥情報管理システムにおいては、施肥情報管理システム用プログラムが機能する。また、必要に応じ、このプログラムを担持した記録媒体が用いられる。
【0024】
実施の形態に係る施肥情報管理システムは、図1に示すように、制御装置1において、基準データ格納手段10,肥料データ格納手段11,肥効率データ格納手段12及び土壌データ格納手段13を備えている。
基準データ格納手段10は、複数種類の作物毎に所定耕作面積当りにおいて所定収穫量を得るために必要な少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分の基準量を定めた基準データを格納するものである。
基準データとしては、例えば、図6に示すように、地方公共団体が、複数種類の作物毎に所定耕作面積当り(図では10アール当り)において所定収穫量を得るために各所要成分の基準量を定めたものが記載された基準表(図では野菜の施肥基準表)が用いられる。基準データは、入力装置2から予め入力される。
土壌データを格納する土壌データ格納手段13を機能させる場合には、基準データは、後述の基本基準データ作成手段21により補正される。また、土壌データ格納手段13が機能させられない場合には、基本基準データとして基準データがそのまま用いられる。
【0025】
また、肥料データ格納手段11は、複数種類の堆肥毎の各所要成分の成分量に係る肥料データを格納するものである。肥料データは、堆肥供給元から提供され、あるいは、分析により求めたものが用いられ、堆肥を収納した包装袋に記載され、あるいは、別途データシートに記載されている等している。肥料データは、入力装置2から予め入力される。本システムは、入力データに応じ、図9に示すように、データを換算して、実際の堆肥の重量比(現物データ)と乾燥したときの堆肥の重量比(乾物データ)とを算出し、量を把握しやすいように、所要単位(1m3,30リットル,12リットル)毎にその量を格納し、出力装置3に表示可能にしている。
【0026】
また、肥料データ格納手段11に格納され後述の施肥量算出手段22が算出に用いる各堆肥における各所要成分の成分量は、過去に入力された成分量の平均値である。図10に示すように、例えば、直近5回分の平均値が用いられる。
【0027】
更に、肥効率データ格納手段12は、各所要成分の成分量のうち作物に対して期待される吸収割合としての肥効率を定めた肥効率データを格納するものである。また、本装置は、肥料データ格納手段11が格納する肥料データに基づいて、この肥効率を演算により求める肥効率演算手段14を備えている。
詳しくは、実施の形態においては、肥効率は、図13に示すように、リン酸及びカリウムについては、文献などに掲載された、肥効率データが利用され、入力装置2から、図12に示す肥効率入力画面により、予め入力される。
また、実施の形態においては、窒素についての肥効率データは、肥効率演算手段14により、肥料データの乾物における成分量から、所定の計算式により演算により求められる。実際の窒素成分量から求めるので、後述の施肥量をより正確に算出することができるようになる。
【0028】
更にまた、土壌データ格納手段13は、複数の圃場毎に各圃場における土壌の少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分に係る所要成分含有量情報、及び、少なくとも石灰,苦土,カリウムの塩基に関する塩基情報を有する土壌データを格納するものである。土壌データとしては、各圃場の土壌を実際に分析して得られたデータが、図16に示す土壌データ入力画面(簡易土壌診断結果)において、入力装置2から予め入力される。
入力項目としては、仮比重,pH,EC,CEC(陽イオン交換容量),窒素(アンモニア態窒素,硝酸態窒素),リン酸(有効態リン酸),カリウム(交換性カリ)の他、交換性石灰,交換性苦土,塩基飽和度,カリ飽和度,石灰飽和度,苦土飽和度,石灰/苦土(me比),苦土/カリ(me比)がある。この場合、窒素,リン酸,カリウムの各所要成分に係る数値の単位は、一般に、mg/100gである。
尚、土壌データを格納する土壌データ格納手段13は、土壌データを用いない場合には、特に機能させなくても良く、適宜に選択できる。
【0029】
そして、本システムにおいては、図1に示すように、制御装置1において、項目選択指定手段20,基本基準データ作成手段21,施肥量算出手段22,全成分量算出手段23,有効成分量算出手段24,実質有効成分量算出手段25及び過不足量算出手段26を備えている。
項目選択指定手段20は、複数の圃場のうちの特定の圃場,複数種類の作物のうちの特定の作物及び複数種類の堆肥のうちの特定の堆肥を選択するとともに、特定の作物の施肥面積及び作土深さを指定する。選択及び指定は、入力装置2により行なわれ、予め登録した項目から選択され、あるいは数値が入力される。
【0030】
基本基準データ作成手段21は、項目選択指定手段20の選択及び指定があったとき、予め定めた塩基の適正比,土壌データ格納手段13が格納した土壌データ,項目選択指定手段20で指定された施肥面積及び作土深さに基づいて、基準データ格納手段10に格納された基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成するものである。基本基準データは、後述の図17の「基本基準施肥量」欄に表示される。
具体的には、基本基準データとして、窒素、リン酸については、基準データがそのまま用いられる。一方、石灰、苦土、カリウムについては、予め定めた塩基の適正比(塩基バランス),塩基飽和度,土壌データの塩基情報としてのCEC及び仮比重,項目選択指定手段20で指定された施肥面積及び作土深さ等に基づいて、所定の式により算出された値が用いられる。塩基の適正比は、例えば、カリ:石灰:苦土=1:5:2に設定されている。これにより適正塩基飽和度中の3成分の適性割合(飽和度)は、カリが1/8、石灰が5/8,苦土が2/8になる。
【0031】
例えば、カリウムにおいては、以下の式で算出される。
(作物の適正塩基飽和度×カリの適性割合)×土壌分析によるCEC×カリの当量×作土深×面積×土壌診断による仮比重÷100
図17の例では、(70/100×1/8)×22×47×12(cm)×10(a)×0.8÷100≒86.9
尚、ここでは、作物の適正塩基飽和度を70%、適正塩基飽和度中の3成分の適性割合(飽和度)を、カリが1/8、石灰が5/8,苦土が2/8としている。また、土壌の塩基の1ミリグラム当量は、カリが47me,石灰が20me,苦土が28meである。
【0032】
施肥量算出手段22は、項目選択指定手段20の選択及び指定があったとき、基本基準データ作成手段21が作成した基本基準データ及び肥料データ格納手段11に格納された肥料データに基づいて、特定の作物に対し指定された施肥面積において施肥すべき当該特定種類の肥料の施肥量を算出するものである。詳しくは、施肥量算出手段22は、算出された各所要成分の基本基準データに対して、肥料データ格納手段11に格納された肥料データにおける各所要成分のうち最初に基本基準データの条件を満たす所要成分を検索し、該当する所要成分が検索できたとき、当該条件を満たした所要成分の成分量を基準に施肥量を決定する。決定された施肥量は、出力装置3により図17に示す施肥量算出表(「施肥量算出及び登録」)に表示される。図17では、堆肥施肥量が2,885Kg(6,700リットル)となっている。
【0033】
全成分量算出手段23は、施肥量算出手段22が算出した当該肥料の施肥量のうち、各所要成分の各々の全成分量を算出する。全成分量は、出力装置3により、図17に示す施肥量算出表に表示される。
【0034】
有効成分量算出手段24は、全成分量算出手段23が算出した各所要成分の全成分量に、肥料データ格納手段11に格納した各所要成分の肥効率を夫々乗じて当該各所要成分の有効成分量を算出するものである。有効成分量は、出力装置3により、図17に示す施肥量算出表(図17中(a))に表示される。
尚、施肥量算出表においては、代替率が算出されて表示される。代替率とは、基本基準データ対し化学肥料に替え堆肥の有効成分量で代替できる割合をいう。
【0035】
実質有効成分量算出手段25は、図17の施肥量算出表に示すように、有効成分量算出手段24が算出した各所要成分の有効成分量(a)を土壌データ格納手段13が格納した土壌データに係る有効成分量(c)に基づいて補正して各所要成分の実質有効成分量(d)を算出するものである。また、実質有効成分量算出手段25は、過去の年分の施肥量に基づいて当年分において期待できる各所要成分のうち少なくとも窒素(実施の形態では窒素のみ)の残存有効量(b)を加味して、実質有効成分量を算出する機能を備えている。実質有効成分量は、図17に示すように、出力装置3において、施肥量算出表に表示される。
詳しくは、図17に示すように、窒素においては、実質有効成分量(d)=有効成分量(a)+残存有効量(b)+土壌診断有効成分量(c)である。ここで、土壌診断有効成分量(c)=アンモニア態窒素(c1)+硝酸態窒素(c2)である。
リン酸,カリウム,石灰,苦土については、実質有効成分量(d)=有効成分量(a)+土壌診断有効成分量(c)である。
【0036】
また、過不足量算出手段26は、実質有効成分量算出手段25が算出した各所要成分の実質有効成分量及び基本基準データ(各所要成分の基準量)に基づいて、各所要成分の施肥の過不足量を算出するものであり、過不足量は、図17に示すように、出力装置3において、施肥量算出表に表示される。具体的には、過不足量=基本基準データ−実質有効成分量で算出される。
【0037】
更に、本システムは、調整量算出手段30を備えている。これは、実質有効成分量算出手段25が算出した各所要成分の実質有効成分量及び予め定めた塩基の適正比に基づいて、少なくともカリウムの調整すべき調整量を算出する。
また、本システムは、上記調整量を含む対応する土壌に必要な事項を記載した図18に示す処方箋を作成する処方箋作成手段31を備えている。
【0038】
次に、処方箋の記載内容に基づいて、調整量算出手段30の具体的算出手順について説明する。
処方箋において、処方箋を登録してからの累計数を表示した累計番号,日付,作土深,施肥面積,土壌仮比重,土壌のpHについての上記で入力された事項が表示される。
また、下記の項目について、後述の目標値,土壌診断,調整値,調整量が表示される。
「無機態窒素」:アンモニア態窒素と硝酸態窒素の和で、堆肥中の無機化する窒素
「有効態リン酸」:作物に吸収される形態の燐酸
「CEC(陽イオン交換容量)」:土壌粒子がアンモニア、カリウム、カルシウム(石灰)、マグネシウム(苦土)など陽イオンを吸着する容量を表し、ミリグラム当量(me)で表示する。
「塩基飽和度」:土壌の陽イオン交換容量の何割が塩基(カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン)で満たされているかを示したもの。例えば、岩手県の場合、野菜、花卉で60〜80%、水稲で40〜60%である。
「交換性石灰」,「交換性苦土」,「交換性カリ」:交換性石灰の場合、土壌に吸着されていて、他の陽イオンと容易に交換される石灰(カルシウム)のことをいう。交換性苦土,交換性カリも同様である。
「石灰飽和度」,「苦土飽和度」,「カリ飽和度」:石灰飽和度の場合、土壌の陽イオン交換容量に対して、どれだけ交換性石灰で満たされているかを示したもの。苦土飽和度,カリ飽和度も同様である。
「石灰/苦土」,「苦土/カリ」:土壌に含まれる交換性陽イオン相互の残存量の比率で、塩基組成ともいう。ミリグラム当量(me)の比で表す。塩基バランスを適正に保つことは、作物の陽イオンの吸収にとって非常に重要である。すなわち、石灰、苦土、カリウムの3成分間には、拮抗作用が存在し、これら塩基成分の一つが過剰になると他の成分の吸収が抑制される。
例えば、地方公共団体が提示している基準は、石灰/苦土が6以下、苦土/カリが2以上であるが、処方箋においては石灰/苦土が2.5、苦土/カリが2になるように演算が行なわれる。
「施肥量」:上記で算出された施肥量
【0039】
次に、目標値,土壌診断,調整値,調整量について、詳しく説明する。
<目標値>
作物毎の目標とする施肥基準をいう。窒素、リン酸については、上記の基準データの値をそのまま用いる。石灰、苦土、カリは、CEC及び塩基の適正比(塩基バランス)をもとに、所定の計算式により計算される。
詳しくは、窒素,リン酸においては、図7に示す「県基準マスタ登録」において、基肥と追肥を足したもの。CECは、図16に示す「土壌診断結果」の値。塩基飽和度は、県の基準による。この基準によると、野菜,花卉では、60%〜80%(調整値の計算においては70%を使用)、水稲では、40%〜60%(調整値の計算においては50%を使用)、果樹では、60%〜80%(調整値の計算においては70%を使用)である。
【0040】
<土壌診断+堆肥>
上記で算出され、図17に示す施肥量算出表に表示された実質有効成分量(d)(「設計時の有効成分量」)である。交換性石灰,交換性苦土,交換性カリについては、設計時の有効成分量(kg)をmg/100g単位に換算している。また、塩基飽和度の値は、設計時の有効成分量のCECに対する飽和度合である。更に、石灰/苦土,苦土/カリは、図17に示す施肥量算出表に表示された当量比で表したものである。
【0041】
<調整値>
調整値とは、「土壌診断+堆肥」の塩基バランスである石灰/苦土(=4),苦土/カリ(=1.6)が、適正比である石灰/苦土(=2.5),苦土/カリ(=2)に調整するために必要となる値を言う。窒素、リン酸は、基本基準データがそのまま採用される。
【0042】
<調整量>
調整量は、「土壌診断+堆肥」と「調整値」との過不足に基づいて算出される。石灰、苦土、カリについては、[kg]に換算している。また、図18の例では、石灰、苦土、カリについては、塩基バランスが「石灰」の量が一番過剰であることから、この石灰を基準に算出している。
【0043】
更に、本システムは、過去における各所要成分の施肥の過不足量の推移を表す推移表を作成する過去データ推移表作成手段32を備えている。作成結果は、図19乃至図22に示す表に出力される。
【0044】
また、本システムは、土壌データを入力しない場合や、土壌データが入力された場合でも土壌データ格納手段13を機能させないで、施肥量を算出する機能を備えている。図22には、この場合の施肥量算出表(「基本施肥量算出」)を示す。この場合には、施肥量算出は、土壌データを考慮しないで行なわれ、基本基準データとして基準データがそのまま用いられる。また、実質有効成分量算出手段25は、図22の施肥量算出表に示すように、有効成分量算出手段24が算出した各所要成分の有効成分量(a)と、過去の年分の施肥量に基づいて当年分において期待できる各所要成分のうち少なくとも窒素(実施の形態では窒素のみ)の残存有効量(b)とを加算して、実質有効成分量(d)を出力する。
即ち、図22に示すように、実質有効成分量(d)=有効成分量(a)+残存有効量(b)である。
【0045】
更に、本システムにおいては、土壌データを入力しない場合や、土壌データが入力された場合でも土壌データ格納手段13を機能させないで、将来における各所要成分の施肥の過不足量を、推定して算出する将来予測データ算出手段33を備えている。この算出は、図23に示す施肥量算出表(「基本施肥量算出」)表において、経過年数を入力すると(図23の例では5年)、毎年の施肥量に基づいて各年分において残存する残存有効量を算出し、上記と同様に過不足量を算出して表示する。
【0046】
次に、本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムの具体的操作について、図2及び図3に示すフローチャートを用いて説明する。本システムの操作は、出力装置3のCRT等の表示部(図示せず)に、入力用の画像あるいは出力結果を表示する画像を表示し、入力装置2によりデータ入力等の入力操作により行なう。
【0047】
<基準データの入力>
図7に示す基準データの入力画面において、図4にも示す基準データを入力する(S1)。入力は、作物名,目標収量,窒素,リン酸,カリウムの基肥及び追肥の施肥量(基肥及び追肥の合計値を基準データとして用いる)を入力する(S1)。基準データは、例えば、図6に示すように、複数種類の作物毎に所定耕作面積当り(図では10アール当り)において所定収穫量を得るために必要な少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分の基準量を定めた例えば地方公共団体が提供しているものが用いられる。
【0048】
<肥料データの入力>
図8に示すように、複数種類の堆肥毎の項目を入力する画面上において、図4にも示すデータ、即ち、堆肥の供給先(センター名)、堆肥名、製品の容積及び重量のデータを入力する(S1)。
次に、図9に示すように、入力画面(成分分析値登録及び換算表)において、図4にも示すデータ、即ち、複数種類の堆肥毎に各所要成分の成分量に係る肥料データを入力する。入力は、肥料毎の水分,窒素,リン酸,カリウム,石灰,苦土,C/N比,pH,EC等のデータが入力される。
【0049】
本システムにおいては、図10に示すように、各堆肥における各所要成分の成分量のデータを入力毎に記憶しており、これら過去に入力された成分量の平均値を算出して、これらのデータを一覧表に表示できるようになっている。この平均値は、後述の施肥量算出手段22が算出に用いる。
また、本システムにおいては、図11に示すように、製品ごとの成分量を把握しやすくするために、製品容積単位(1m3,30リットル,12リットル)での表示も行なうことができるようになっている。この場合の表示は、乾物あたりの分析値を、現物(水分を含む)当りの量に換算して行なう。
【0050】
<肥効率の入力>
図9に示す表において「肥効率」を選択すると、図12に示すように、各所要成分の成分量のうち作物に対して期待される吸収割合としての肥効率を入力する入力画面が表出し、この入力画面において、図4にも示す肥効率のデータを入力する(S1)。入力は、リン酸,カリウム,石灰,苦土については、例えば、図13に示すように、文献などに掲載された肥効率データを利用して入力する。また、窒素については、肥効率データは、肥効率演算手段14により、上記入力した肥料データの乾物における成分量から、所定の計算式により演算により求められ(図2中S2)、自動的に表示入力される。
【0051】
ここまでの入力が終わると、図14に示すように、各肥料について集約したデータ(堆肥データ管理)として、表示してみることができる。堆肥データ管理表において、「窒素無機化率(16.24%)」とあるのは、肥効率である。
【0052】
<土壌データの入力>
図15に示す複数の圃場を入力する画面上において、図4にも示す圃場の名称を入力する。それから、図16に示す土壌データを入力する入力画面(土壌診断結果)において、図4にも示すデータ、即ち、複数の圃場毎に各圃場における土壌の少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分に係る所要成分含有量情報及び少なくとも石灰,苦土,カリウムの塩基に関する塩基情報を有する土壌データを入力する。この土壌診断結果の画面において、土壌毎の仮比重,酸度,EC,CEC(陽イオン交換容量),アンモニア態窒素,硝酸態窒素,有効態リン酸,交換性石灰,交換性苦土,交換性カリウム等のデータが入力される。尚、この表において、基準値とは予め地方公共団体などが提示した適正範囲値である。
そして、入力されたデータや作成されたデータ等は、基準データ格納手段10,肥料データ格納手段11,肥効率データ格納手段12,土壌データ格納手段13に格納される。
【0053】
<施肥量算出>
次に、施肥量の算出を行なう場合について説明する。入力装置2により項目選択指定手段20を機能させる。詳しくは、算出したい圃場の上記の「土壌診断結果」画面(図16)を表示し、画面中の「施肥算出」を選択する。これにより、図17に示すように、該当する圃場の「施肥量算出及び登録」画面が表示される。この画面において、図5にも示す項目、即ち、施肥したい堆肥名,栽培したい作物名を選択して入力する。また、施肥面積と作土深さを入力する。これにより、図17の表に、堆肥データが表示される。
【0054】
また、この入力が行なわれると、本システムにおいては、基本基準データ作成手段21が、上記の入力された基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成する(S4)。基本基準データ作成手段21は、上記の土壌データに基づいて、基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成する。基本基準データは、図17の「基本基準施肥量」欄に表示される。土壌データを用いる場合には、基本基準データとしては、この基本基準データ作成手段21により作成されるデータを使用する。
【0055】
この入力が行なわれると、施肥量算出手段22が、基準データ格納手段10に格納された基本基準データ及び肥料データ格納手段11に格納された肥料データに基づいて、特定の作物に対し所定耕作面積当りにおいて施肥すべき特定種類の肥料の施肥量を算出する(図2中S5,図5)。この場合、図3に示すように、施肥量算出手段22は、各所要成分の基本基準データと肥料データ格納手段11に格納された肥料データにおける各所要成分とを比較し(図3中S11)、基本基準データに対して肥料データにおける各所要成分のうち最初に基本基準データの条件を満たす所要成分を検索(図3中S12)し、該当する所要成分が検索できたとき(図3中S13)、当該条件を満たした所要成分の成分量を基準に施肥量を決定する(図3中S14)。図17の例では、基本基準データ(窒素:30Kg,リン酸:30Kg,カリウム:86.9Kg)に対して、リン酸(含有率1.04%)が最初に基本基準データの条件を満たす成分なので、このリン酸が30Kgになる堆肥の量(2,885Kg)を算出する。施肥量はその容量とともに、図17の表に表示される。
【0056】
次に、全成分量算出手段23が、施肥量算出手段22が算出した当該肥料の施肥量のうち各所要成分の各々の全成分量を算出する(図2中S6)。算出結果は図17の「全成分量」欄に表示される。
また、有効成分量算出手段24が、全成分量算出手段23が算出した各所要成分の全成分量に、肥料データ格納手段11に格納した各所要成分の肥効率を夫々乗じて当該各所要成分の有効成分量を算出する(図2中S7)。算出結果は図17の「有効成分量(a)」欄に表示される。
【0057】
更に、実質有効成分量算出手段25が、有効成分量算出手段24が算出した各所要成分の有効成分量を土壌データ格納手段13が格納した土壌データに基づいて補正して各所要成分の実質有効成分量を算出する(図2中S8)。この場合、実質有効成分量算出手段25は、過去の年分の施肥量に基づいて当年分において期待できる各所要成分のうち少なくとも窒素(実施の形態では窒素のみ)の残存有効量を加味して、実質有効成分量を算出する。残存有効量は、図17の「有効成分量(b)」欄に表示される。
詳しくは、窒素においては、実質有効成分量=有効成分量+残存有効量+土壌診断有効成分量(アンモニア態窒素+硝酸態窒素)、リン酸,カリウム,石灰,苦土については、実質有効成分量=有効成分量+土壌診断有効成分量、により定められる。実質有効成分量は、図17の「設計時の有効成分量(d)」欄に表示される。
【0058】
そして、過不足量算出手段26が、実質有効成分量算出手段25が算出した各所要成分の実質有効成分量及び基本基準データ(各所要成分の基準量)に基づいて、各所要成分の施肥の過不足量を算出する(図2中S9,図5)。具体的には、過不足量=基本基準データ−実質有効成分量で算出され、図17の「設計時の過不足量」欄に表示される。
これにより、施肥しようとする圃場の施肥状態を明瞭に把握することができる。特に、各所要成分の過不足量を算出するので、その実態が明確に分かる。また、作物に対する期待される吸収割合としての肥効率を考慮して、施肥する堆肥の特に窒素,リン酸,カリウムの所要成分について、その過不足量を把握できるようにしているので、より正確な施肥情報を得ることができ、施肥設計を確実に行なうことができる。
【0059】
そしてまた、調整量算出手段30が、実質有効成分量算出手段25が算出した各所要成分の実質有効成分量及び予め定めた塩基の適正比に基づいて、窒素,リン酸,石灰,苦土,カリウムの調整すべき調整量を算出する(図2中S9,図5)。処方箋作成手段31は、図18に示すように、処方箋を作成する。処方箋においては、算出された調整量を含む対応する土壌に必要な事項が記載されている。
この場合、調整量は、「土壌診断+堆肥」をもとにして、CEC、塩基バランスを重視した値になっているので、この調整値に見合う肥料を、堆肥とは別に畑地や水田に投入し、バランスの取れた施肥設計を行なうことができるようになる。過剰な場合は投入を見合わせることになる。
即ち、図17に示す過不足量は、土壌の実態を示すデータであり、この過不足量に従って施肥するようにしても良いが、このデータは、塩基バランスを考慮していないので、必ずしも、良い結果が得られないことがあるが、図18に示す調整量は、塩基バランスを考慮した値なので、これに基づいて施肥を行なうと、成分によっては過剰なものも出るが、バランスがよいことから、良好な結果を得やすくすることができる。
但し、圃場の土壌条件によっては、塩基飽和度が200%を超える場合もあり、このような場合には、別途施肥設計が必要になる。本発明が提示する調整量は、塩基飽和度が200%以下の、平均的な土壌を対象とし、このような圃場に極めて有効になる。
【0060】
また、本システムは、過去データ推移表作成手段32により、過去における各所要成分の施肥の過不足量の推移を表す推移表を作成して、この結果を、図19乃至図21に示す表に出力してみることができる。これにより、施肥推移を知ることができ、施肥設計をより確実にできるようになる。
【0061】
また、本システムは、土壌データを入力しない場合や、土壌データが入力された場合でも土壌データ格納手段13を機能させないで、施肥量を算出する機能を備えている。施肥量算出は、土壌データを考慮しないで行なわれ、基本基準データとして基準データがそのまま用いられ、図22に示す施肥量算出表(「基本施肥量算出」)において表示される。また、上記と同様に実質有効成分量(設計時の有効成分量)及び過不足量を算出して表示する。
【0062】
更に、本システムにおいては、将来予測データ算出手段33により、土壌データを入力しない場合や、土壌データが入力された場合でも土壌データ格納手段13を機能させないで、将来における各所要成分の施肥の過不足量を、推定して算出できる。図23に示す施肥量算出表(「基本施肥量算出」)表において、経過年数を入力すると、上記と同様に実質有効成分量(設計時の有効成分量)及び過不足量を算出して表示する。これにより、数年後の施肥の状態をおおむね把握することができ、施肥設計をより確実にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムの作動手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムの作動手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、入力項目を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、選択指定項目及び算出項目を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて用いる基準データの一例を示す表図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、基準データの入力画面を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、肥料データの入力画面を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、肥料データの入力画面を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、過去の肥料データをその平均値とともに示す一覧表の画面を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、過去の肥料データをその平均値とともに示す別の一覧表の画面を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、肥効率の入力画面を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて用いる肥効率データの一例を示す表図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、肥料データを集約して示す管理表の画像を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、土壌データの入力画面を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、土壌データの別の入力画面を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、施肥量及び過不足量を算出する画面を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、調整量を算出して表記する処方箋の画像を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、土壌データの過去の推移を示す推移表の画面を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、各所要成分の過不足量の推移を示す推移表の画面を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、各所要成分の過不足量の推移を示す別の推移表の画面を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、土壌データを用いないで施肥量及び過不足量を算出する画面を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態に係る施肥情報管理システムにおいて、土壌データを用いないで将来の施肥量及び過不足量を算出する画面を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 制御装置
2 入力装置
3 出力装置
10 基準データ格納手段
11 肥料データ格納手段
12 肥効率データ格納手段
13 土壌データ格納手段
14 肥効率演算手段
20 項目選択指定手段
21 基本基準データ作成手段
22 施肥量算出手段
23 全成分量算出手段
24 有効成分量算出手段
25 実質有効成分量算出手段
26 過不足量算出手段
30 調整量算出手段
31 処方箋作成手段
32 過去データ推移表作成手段
33 将来予測データ算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の作物毎に所定耕作面積当りにおいて所定収穫量を得るために必要な少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分の基準量を定めた基準データを格納する基準データ格納手段と、
複数種類の堆肥毎に上記各所要成分の成分量に係る肥料データを格納する肥料データ格納手段と、
上記各所要成分の成分量のうち作物に対して期待される吸収割合としての肥効率を定めた肥効率データを格納する肥効率データ格納手段と、
上記複数種類の作物のうちの特定の作物及び上記複数種類の堆肥のうちの特定の堆肥を選択するとともに当該特定の作物の施肥面積を指定する項目選択指定手段と、
該項目選択指定手段の選択及び指定があったとき、上記基準データ格納手段に格納された基準データに基づいて決定された基本基準データ及び上記肥料データ格納手段に格納された肥料データに基づいて上記特定の作物に対し指定された施肥面積において施肥すべき当該特定の肥料の施肥量を算出する施肥量算出手段と、
該施肥量算出手段が算出した当該特定の肥料の施肥量のうち上記各所要成分の各々の全成分量を算出する全成分量算出手段と、
該全成分量算出手段が算出した上記各所要成分の全成分量に上記肥効率データ格納手段に格納した各所要成分の肥効率を夫々乗じて当該各所要成分の有効成分量を算出する有効成分量算出手段と、
該有効成分量算出手段が算出した上記各所要成分の有効成分量及び上記基本基準データに基づいて当該各所要成分の施肥の過不足量を算出する過不足量算出手段と備えたことを特徴とする施肥情報管理システム。
【請求項2】
複数の圃場毎に各圃場における土壌の少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分に係る所要成分含有量情報及び少なくとも石灰,苦土,カリウムの塩基に関する塩基情報を有する土壌データを格納する土壌データ格納手段と、
予め定めた塩基の適正比,上記土壌データ格納手段が格納した土壌データに基づいて上記基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成する基本基準データ作成手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の施肥情報管理システム。
【請求項3】
複数種類の作物毎に所定耕作面積当りにおいて所定収穫量を得るために必要な少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分の基準量を定めた基準データを格納する基準データ格納手段と、
複数種類の堆肥毎に上記各所要成分の成分量に係る肥料データを格納する肥料データ格納手段と、
上記各所要成分の成分量のうち作物に対して期待される吸収割合としての肥効率を定めた肥効率データを格納する肥効率データ格納手段と、
複数の圃場毎に各圃場における土壌の少なくとも窒素,リン酸,カリウムの各所要成分に係る所要成分含有量情報及び少なくとも石灰,苦土,カリウムの塩基に関する塩基情報を有する土壌データを格納する土壌データ格納手段と、
上記複数の圃場のうちの特定の圃場,上記複数種類の作物のうちの特定の作物及び上記複数種類の堆肥のうちの特定の堆肥を選択するとともに当該特定の作物の施肥面積及び作土深さを指定する項目選択指定手段と、
該項目選択指定手段の選択及び指定があったとき、予め定めた塩基の適正比,上記土壌データ格納手段が格納した土壌データ,上記項目選択指定手段で指定された施肥面積及び作土深さに基づいて上記基準データを補正して圃場毎の基本基準データを作成する基本基準データ作成手段と、
上記項目選択指定手段の選択及び指定があったとき、上記基本基準データ作成手段が作成した基本基準データ及び上記肥料データ格納手段に格納された肥料データに基づいて上記特定の作物に対し指定された施肥面積において施肥すべき当該特定種類の肥料の施肥量を算出する施肥量算出手段と、
該施肥量算出手段が算出した当該肥料の施肥量のうち上記各所要成分の各々の全成分量を算出する全成分量算出手段と、
該全成分量算出手段が算出した上記各所要成分の全成分量に上記肥料データ格納手段に格納した各所要成分の肥効率を夫々乗じて当該各所要成分の有効成分量を算出する有効成分量算出手段と、
該有効成分量算出手段が算出した上記各所要成分の有効成分量を上記土壌データ格納手段が格納した土壌データに基づいて補正して上記各所要成分の実質有効成分量を算出する実質有効成分量算出手段と、
該実質有効成分量算出手段が算出した上記各所要成分の実質有効成分量及び上記基本基準データに基づいて当該各所要成分の施肥の過不足量を算出する過不足量算出手段と備えたことを特徴とする施肥情報管理システム。
【請求項4】
上記実質有効成分量算出手段は、過去の年分の施肥量に基づいて当年分において期待できる上記各所要成分のうち少なくとも窒素の残存有効量を加味して上記実質有効成分量を算出する機能を備えていることを特徴とする請求項3記載の施肥情報管理システム。
【請求項5】
上記実質有効成分量算出手段が算出した上記各所要成分の実質有効成分量及び予め定めた塩基の適正比に基づいて、少なくともカリウムの調整すべき調整量を算出する調整量算出手段を備えたことを特徴とする請求項3または4記載の施肥情報管理システム。
【請求項6】
上記調整量を含む対応する土壌に必要な事項を記載した処方箋を作成する処方箋作成手段を備えたことを特徴とする請求項5記載の施肥情報管理システム。
【請求項7】
上記肥料データ格納手段が格納する肥料データに基づいて上記肥効率を演算により求める肥効率演算手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の施肥情報管理システム。
【請求項8】
上記施肥量算出手段は、上記各所要成分の基本基準データに対して、上記肥料データ格納手段に格納された肥料データにおける各所要成分のうち最初に上記基本基準データの条件を満たす所要成分を検索し、該当する所要成分が検索できたとき、当該条件を満たした所要成分の成分量を基準に施肥量を決定することを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の施肥情報管理システム。
【請求項9】
上記肥料データ格納手段に格納され上記施肥量算出手段が算出に用いる各堆肥における各所要成分の成分量は、過去に入力された成分量の平均値であることを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載の施肥情報管理システム。
【請求項10】
過去における各所要成分の施肥の過不足量の推移を表す推移表を作成する過去データ推移表作成手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至9何れかに記載の施肥情報管理システム。
【請求項11】
将来における各所要成分の施肥の過不足量を、推定して算出する将来予測データ算出手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至10何れかに記載の施肥情報管理システム。
【請求項12】
上記請求項1乃至11記載の施肥情報管理システムを実行するコンピュータを機能させるための施肥情報管理システム用プログラム。
【請求項13】
上記請求項12記載のプログラムを担持した記録媒体であって、コンピュータで利用可能な施肥情報管理システム用記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−278816(P2008−278816A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126903(P2007−126903)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(507154321)
【Fターム(参考)】