説明

旋盤用チャック装置

【課題】旋盤で異種類の加工を行う場合にチャック装置の付け替えを簡易かつ迅速に行う。
【解決手段】チャック開閉用の中空操作棒3が挿入された中空主軸1の軸端部に着脱自在に装着される旋盤用チャック装置において、複数種のチャック装置が、上記軸端部に固定される中空の共用固定部2と、この共用固定部の先端に着脱自在に装着されるチャック部5と、上記共用固定部の中空内に挿入され上記中空操作棒の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部6とに分けられる。すべてのチャック装置で共用する単一の共用固定部2が上記軸端部に固定され、この共用固定部に対して所望のチャック装置のチャック部5が取り付けられ、このチャック部に対応するチャック開閉操作部が上記中空操作棒の先端に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤で複数種類の加工を行う場合に各加工に合わせて簡易にチャックを交換することができる旋盤用チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤には、その主軸が中空に形成され、その中空内にコレットチャックが収納されたものがある。この主軸内に長い棒材を通し、コレットチャックで把持して棒材を回転させることにより、棒材を加工することができる。また、このNC旋盤に棒材供給機を連結し、棒材供給機で長尺の棒材の後端を保持しつつ主軸側に送るようにすると、一本の棒材から一定長さの製品を多数切り出すことができる(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−59117号公報
【特許文献2】特開2003−191103号公報
【特許文献3】特開2000−33501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような旋盤によれば棒材の加工を簡易に行うことができるが、異形フランジ部品の加工等のように他の異種類の加工を行う場合は、主軸の軸端部からコレットチャックタイプのチャック装置を取り外し、ジョータイプのチャック装置等他の方式のチャック装置を取り付ける必要がある。この付け替え作業は、ことに多種少量生産の場合頻繁に行わなければならないので、生産効率が低下するという問題がある。
【0005】
従って、本発明はこのような問題点を解消することができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、チャック開閉用の中空操作棒(3)が挿入された中空主軸(1)の軸端部(1a)に着脱自在に装着される旋盤用チャック装置において、複数種のチャック装置が、上記軸端部(1a)に固定される中空の共用固定部(2)と、この共用固定部(2)の先端に着脱自在に装着されるチャック部(5,12,18,20,27)と、上記共用固定部(2)の中空内に挿入され上記中空操作棒(3)の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部(6,21)とに分けられ、すべてのチャック装置で共用する単一の共用固定部(2)が上記軸端部(1a)に固定され、この共用固定部(2)に対して所望のチャック装置のチャック部(5,12,18,20,27)が取り付けられ、このチャック部(5,12,18,20,27)に対応するチャック開閉操作部(6,21)が上記中空操作棒(3)の先端に連結されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の旋盤用チャック装置において、所望のチャック装置のチャック開閉操作部(6)が中空に形成され、チャック部(5)がチャック開閉操作部(6)のスライドによって拡縮するスプリングコレット(8)を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の旋盤用チャック装置において、所望のチャック装置のチャック部(12)が、チャック開閉操作部(6)のスライドによって拡縮するスプリングコレット(8)と、スプリングコレット(8)の拡縮に連動して開閉動作するジョー(16)とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1に記載の旋盤用チャック装置において、所望のチャック装置のチャック部(18)が、上記チャック開閉操作部(6)のスライドによって変形するダイアフラム(18a)と、ダイアフラム(18a)の変形に連動して開閉動作するジョー(19)とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項1に記載の旋盤用チャック装置において、所望のチャック装置のチャック開閉操作部(21)がその先端にテーパー棒(22)を有し、チャック部(20)がテーパー棒(22)のスライドによって拡縮するスプリングコレット(24)を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項2に記載の旋盤用チャック装置において、スプリングコレット(28)がその一端面に開口するすり割溝(28a)と他端面に開口するすり割溝(28b)とを有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チャック開閉用の中空操作棒(3)が挿入された中空主軸(1)の軸端部(1a)に着脱自在に装着される旋盤用チャック装置において、複数種のチャック装置が、上記軸端部(1a)に固定される中空の共用固定部(2)と、この共用固定部(2)の先端に着脱自在に装着されるチャック部(5,12,18,20,27)と、上記共用固定部(2)の中空内に挿入され上記中空操作棒(3)の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部(6,21)とに分けられ、すべてのチャック装置で共用する単一の共用固定部(2)が上記軸端部(1a)に固定され、この共用固定部(2)に対して所望のチャック装置のチャック部(5,12,18,20,27)が取り付けられ、このチャック部(5,12,18,20,27)に対応するチャック開閉操作部(6,21)が上記中空操作棒(3)の先端に連結されることから、従来と同様に長尺の棒材(A)を簡易に加工することができるのはもちろんのこと、異形フランジ材(C,D)の加工等のように他の異種類の加工を行う場合は、主軸(1)の軸端部(1a)からチャック装置の全体を取り外することなく、複数種のチャック装置の共用固定部(2)は主軸(1)側に残したまま、所望のチャック装置のチャック部(5,12,18,20,27)及びチャック開閉操作部(6,21)のみを付け替えることで直ちに他の加工を行うことができる。従って、チャック装置の付け替え作業を簡易かつ迅速に行うことができ、ことに多種少量生産の場合のように頻繁にチャック装置を変更する場合であっても、効率良く生産することができる。また、複数種類のチャック装置を低廉にて製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
NC旋盤は、図1に示すような主軸1を備える。この主軸1の軸端部であるフランジ部1aに後述する各種チャック装置が装着される。図1では各種チャック装置の共用固定部2のみが固定され、他部分は図示を省略されている。
【0016】
主軸1は中空であり、この中空内をチャック開閉用の中空操作棒3が挿入されている。中空操作棒3の中空内には被加工材である長尺の棒材Aが挿入可能である。主軸1の上記軸端部と反対側には油圧式の回転シリンダ装置4が連結されており、この回転シリンダ装置4内のピストン4aに中空操作棒3の後端が連結される。図示しない駆動源からの動力で主軸1が回転すると、この主軸1の空洞内の中空操作棒3も主軸1と一体で回転する。また、主軸1の静止時又は回転時に回転シリンダ装置4内のピストン4aが移動すると、これに連動して中空操作棒3が主軸1内を前進し又は後退する。
【0017】
チャック装置は複数種用意され、この実施の形態では、(1)図2及び図3に示すコレットタイプのチャック装置と、(2)図4、図5及び図6に示すジョータイプのチャック装置と、(3)図7及び図8に示すダイアフラムタイプのチャック装置と、(4)図9及び図10に示すテーパー棒タイプのチャック装置と、(5)図11及び図12に示す短コレットタイプのチャック装置とが用意される。
【0018】
(1)図2及び図3に示すように、コレットタイプのチャック装置は、上記主軸1の軸端部に固定される中空の共用固定部2と、この共用固定部2の先端に着脱自在に装着されるチャック部5と、共用固定部2の中空内に挿入され上記主軸1内の中空操作棒3の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部6とに分けられる。
【0019】
共用固定部2は、図3に示すように、概ね円筒体であり、その前後端にはそれぞれフランジ部2a,2bが形成される。この共用固定部2は他の種類のチャック装置との間で共用されるもので、図1乃至図3に示すように後側のフランジ部2bが上記主軸1の軸端部であるフランジ部1aに重ね合わされ複数本のボルト7により固定される。
【0020】
この共用固定部2内に、中空状のチャック開閉操作部6が挿入される。チャック開閉操作部6は、その後端部が上記主軸1の軸端部から突出する中空操作棒3の先端部に螺合することで、中空操作棒3に連結される。チャック開閉操作部6は中空操作棒3が主軸1内をスライドすることにより、共用固定部2内を前後方向にスライド可能である。図3中、中心線の上半分は中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドした状態を示し、下半分は後方にスライドした状態を示す。チャック開閉操作部6の後部は円筒体として形成され、前部の内周にはテーパー面6aが形成される。
【0021】
チャック部5は、図2及び図3に示すように、チャック開閉操作部6のスライドによって拡縮するスプリングコレット8を備える。スプリングコレット8の前方は、共用固定部2の前側のフランジ部2aにボルト9で固定されるリング状の端板10により閉じられる。この端板10のテーパー面10aにスプリングコレット8のテーパー面8cが当接可能である。また、この端板10の前面にはリング状のカバー11が固定され、このカバー11によりスプリングコレット8の前端が外部から遮蔽される。スプリングコレット8の後部は円筒体として形成され、前部には複数本のすり割溝8aが形成されると共にその外周にはテーパー面8bが形成される。このスプリングコレット8の後部の円筒体が、上記チャック開閉操作部6の後部の円筒体内にスライド自在に挿入され、スプリングコレット8の前部のテーパー面8bが、上記チャック開閉操作部6の前部のテーパー面6aに当てられる。
【0022】
これにより、図3中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドすると、チャック開閉操作部6とスプリングコレット8のテーパー面6a,8b同士の摺接およびスプリングコレット8と端板10のテーパー面8c,10a同士の摺接により、スプリングコレット8の前部が縮径し棒材Aを締め付けて把持する。また、図3中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドすると、チャック開閉操作部6のテーパー面6aがスプリングコレット8のテーパー面8bに対する押圧を解き、スプリングコレット8の前部がそのバネ力により拡径し棒材Aに対する締め付けを解く。
【0023】
(2)図4、図5及び図6に示すように、ジョータイプのチャック装置は、上記主軸1の軸端部に固定される中空の共用固定部2と、この共用固定部2の先端に着脱自在に装着されるチャック部12と、共用固定部2の中空内に挿入され上記主軸1内の中空操作棒3の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部6とに分けられる。
【0024】
共用固定部2は、上述したコレットタイプのチャック装置の共用固定部2と同一であり、すでに主軸1の軸端部に固定されている。
【0025】
チャック開閉操作部6は、上述したコレットタイプのチャック装置のチャック開閉操作部6と略同じ構成であり、その後端部が上記主軸1の軸端部から前方に突出する中空操作棒3の先端部に螺合することで、中空操作棒3の先端に連結される。チャック開閉操作部6は中空操作棒3が主軸1内をスライドすることにより、共用固定部2内を前後方向にスライド可能である。図6中、中心線の上半分は中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドした状態を示し、下半分は後方にスライドした状態を示す。チャック開閉操作部6の後部は円筒体として形成され、前部の内周にはテーパー面6aが形成される。
【0026】
チャック部12は、図4及び図6に示すように、チャック開閉操作部6のスライドによって拡縮するスプリングコレット8を備える。スプリングコレット8は上述したコレットタイプのチャック装置のスプリングコレット8と略同様な構成である。すなわち、スプリングコレット8の後部は円筒体として形成され、前部には複数本のすり割溝8aが形成されると共にその外周にはテーパー面8bが形成される。このスプリングコレット8の後部の円筒体が、上記チャック開閉操作部6の後部の円筒体内にスライド自在に挿入され、スプリングコレット8の前部のテーパー面8b,8cが、上記チャック開閉操作部6の前部のテーパー面6aとチャック部12のテーパー面12aとにそれぞれ当てられる。
【0027】
スプリングコレット8の前方は、共用固定部2の前側のフランジ部2aにボルト9およびピン13で固定される案内板14により閉じられる。この案内板14にスプリングコレット8の前端が後述するように係合する。案内板14の中心部にはスプリングコレット8の中空に通じる孔が形成される。
【0028】
図4乃至図6に示すように、案内板14には複数本のガイド溝14aが放射状に形成され、各ガイド溝14aにスライダ15がスライド自在に嵌め込まれる。スライダ15の背面はスプリングコレット8の前端側に対峙し、その露出箇所に凹部15aが形成される。このスライダ15の各凹部15aにスプリングコレット8のすり割溝8aで分割されたコレット片の先端が嵌り込む。また、スライダ15の前面は案内板14の前面から突出し、その突出した箇所にジョー16がボルト17で固定される。このジョー16はいわゆる生爪であり、旋盤のバイトで所望の形状に切削されたうえで短寸の被加工材Bのチャッキングに使用される。案内板14の前面にはリング状のカバー11が固定され、このカバー11によりスプリングコレット8の前端等が外部から遮蔽される。
【0029】
これにより、図6中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドすると、チャック開閉操作部6とスプリングコレット8のテーパー面6a,8b同士の摺接およびスプリングコレット8と案内板14のテーパー面8c,12a同士の摺接により、スプリングコレット8の前部が縮径する。これに連動して全スライダ15が案内板14上を半径方向内側にスライドし、ジョー16が閉動作して被加工材Bを締め付けて把持する。また、図6中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドすると、チャック開閉操作部6のテーパー面6aがスプリングコレット8のテーパー面8bに対する押圧を解き、スプリングコレット8の前部がそのバネ力により拡径する。これに連動して全スライダ15が半径方向外側にスライドし、ジョー16が開動作して被加工材Bを解放する。
【0030】
(3)図7及び図8に示すように、ダイアフラムタイプのチャック装置は、上記主軸1の軸端部に固定される中空の共用固定部2と、この共用固定部2の先端に着脱自在に装着されるチャック部18と、共用固定部2の中空内に挿入され上記主軸1内の中空操作棒3の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部6とに分けられる。
【0031】
共用固定部2は、上述したコレットタイプのチャック装置及びジョータイプのチャック装置の共用固定部2と同一であり、すでに主軸1の軸端部に固定されている。
【0032】
チャック開閉操作部6は、上述したコレットタイプのチャック装置及びジョータイプのチャック装置のチャック開閉操作部6と略同じ構成であり、その後端部が上記主軸1の軸端部から突出する中空操作棒3の先端部に螺合することで、中空操作棒3に連結される。チャック開閉操作部6は中空操作棒3が主軸1内をスライドすることにより、共用固定部2内を前後方向にスライド可能である。図8中、中心線の上半分は中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドした状態を示し、下半分は後方にスライドした状態を示す。チャック開閉操作部6の後部は円筒体として形成され、前部の内周にはテーパー面6aが形成される。
【0033】
チャック部18は、図8に示すように、チャック開閉操作部6のスライドによって変形するダイアフラム18aを備える。ダイアフラム18aはその外周を環状保持部18bによって支えられ、環状保持部18bが共用固定部2の前側のフランジ部2aにボルト9で固定されることにより、チャック開閉操作部6の空洞に対峙する。このダイアフラム18aの内面に環状突起18cが形成され、環状突起18cの外周面がチャック開閉操作部6のテーパー面6aに対向するテーパー面18dとして形成される。
【0034】
また、ダイアフラム18aの外面にはボス18eが形成され、このボス18e上に複数個のジョー19がボルト17で固定される。この場合複数個の全ジョー19は一体成形され、ジョー19間はすり割溝19aで分割されている。ジョー19の先端面には浅い穴19bが形成され、被加工材である薄い異形フランジ材Cをこの穴19b内に嵌め込んでジョー19で挟むようになっている。
【0035】
これにより、図8中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドすると、チャック開閉操作部6のテーパー面6aとダイアフラム18aの環状突起18cのテーパー面18dとの摺接により、環状突起18cが矢印aの方向に撓みダイアフラム18aが外方向である前方に膨らむ。これに連動して全てのジョー19が矢印bのように外方向に開き、穴19b内に薄い異形フランジ材Cが導かれる。また、図8中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドすると、チャック開閉操作部6のテーパー面6aが環状突起18cのテーパー面18dに対する押圧を解き、ダイアフラム18aがそのバネ力により元の形状に復帰する。これに連動して全てのジョー19が矢印dのように内方向に閉じ、薄い異形フランジ材Cを穴19b内に拘束する。
【0036】
(4)図9及び図10に示すように、テーパー棒タイプのチャック装置は、上記主軸1の軸端部に固定される中空の共用固定部2と、この共用固定部2の先端に着脱自在に装着されるチャック部20と、共用固定部2の中空内に挿入され上記主軸1内の中空操作棒3の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部21とに分けられる。
【0037】
共用固定部2は、上述したコレットタイプのチャック装置、ジョータイプのチャック装置及びダイアフラムタイプのチャック装置の共用固定部2と同一のものであり、すでに主軸1の軸端部に固定されている。
【0038】
チャック開閉操作部21は、その後端部が上記主軸1の軸端部から前方に突出する中空操作棒3の先端部に螺合することで中空操作棒3の先端に連結される。チャック開閉操作部21は中空操作棒3が主軸内をスライドすることにより、共用固定部2内を前後方向にスライド可能である。図10中、中心線の上半分は中空操作棒3及びチャック開閉操作部21が前方にスライドした状態を示し、下半分は後方にスライドした状態を示す。チャック開閉操作部21は概ね円筒体として形成され、その前端は円形の端板21aで閉じられる。端板21aの中心にはネジ孔21bが形成され、このネジ孔21b内にテーパー棒22の後端がねじ込まれる。これにより、テーパー棒22はチャック開閉操作部21の前端から共用固定部2外へと突出する。チャック開閉操作部21には長さ方向に溝21cが形成され、共用固定部2に固定された回り止めピン23がこの溝21c内に嵌り込んでいる。
【0039】
チャック部20は、図9及び図10に示すように、チャック開閉操作部21と一体のテーパー棒22のスライドによって拡縮するスプリングコレット24を備える。スプリングコレット24は、その後端のフランジ部24aがリング状の端板25の内面にボルト30で固定され、この端板25が共用固定部2の前側のフランジ部2aに固定されることにより共用固定部2に装着される。スプリングコレット24の内面にはテーパー棒22のテーパー面22aが当たるテーパー面24cが形成される。スプリングコレット24の先端部は小径部24bとして形成され、この小径部24bが被加工材である異形フランジ材Dの穴内に入り込み拡縮することで異形フランジ材Dを保持し又は解放するようになっている。このテーパー棒22にも長さ方向に溝22bが形成され、フランジ部24aに埋設された回り止めピン26がこの溝22bに嵌り込んでいる。
【0040】
これにより、図10中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部21が前方にスライドし、テーパー棒22がスプリングコレット24内を先端側に前進すると、テーパー棒22のテーパー面22aとスプリングコレット24のテーパー面24aとの摺接により、スプリングコレット24の小径部24bが異形フランジ材Dの穴内で拡開する。この拡開する小径部24bの外周面により異形フランジ材Dが保持される。また、図10中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部21が後方にスライドし、テーパー棒22がスプリングコレット24内を後退すると、テーパー棒22のテーパー面22aがスプリングコレット24のテーパー面24cに対する押圧を解き、スプリングコレット24がそのバネ力により元の形状に縮径する。このため異形フランジ材Dがスプリングコレット24から解放される。
【0041】
(5)図11及び図12に示すように、短コレットタイプのチャック装置は、上記主軸1の軸端部に固定される中空の共用固定部2と、この共用固定部2の先端に着脱自在に装着されるチャック部27と、共用固定部2の中空内に挿入され上記主軸1内の中空操作棒3の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部6とに分けられる。
【0042】
共用固定部2は、上述したコレットタイプのチャック装置、ジョータイプのチャック装置、ダイアフラムタイプのチャック装置及びテーパー棒タイプのチャック装置の共用固定部2と同一のものであり、すでに主軸1の軸端部に固定されている。
【0043】
チャック開閉操作部6は、コレットタイプのチャック装置のチャック開閉操作部6と共用可能である。チャック開閉操作部6はその後端部が上記主軸1の軸端部から突出する中空操作棒3の先端部に螺合することで、中空操作棒3の先端に連結される。チャック開閉操作部6は中空操作棒3が主軸1内をスライドすることにより、共用固定部2内を前後方向にスライド可能である。図12中、中心線の上半分は中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドした状態を示し、下半分は後方にスライドした状態を示す。チャック開閉操作部6の後部は円筒体として形成され、前部の内周にはテーパー面6aが形成される。
【0044】
チャック部27は、図12に示すように、チャック開閉操作部6のスライドによって拡縮する短スプリングコレット28を備える。この短スプリングコレット28は、図11に示すように、その一端面に開口するすり割溝28aと他端面に開口するすり割溝28bとを有する。短スプリングコレット28の先端側の外周面には環状溝28cが形成され、環状溝28cより後側の外周面にはテーパー面28dが形成される。この短スプリングコレット28のテーパー面28dに上記チャック開閉操作部6の前部のテーパー面6aが当たるようになっている。
【0045】
短スプリングコレット28の前方は、共用固定部2の前側のフランジ部2aに固定されるリング状の端板29により閉じられる。この端板29の中心孔の内側には環状突起29aが形成され、この環状突起29aが短スプリングコレット28の環状溝28c内に嵌り込むことにより、短スプリングコレット28の後方向への移動を阻止している。また、この端板29の前面にはリング状のカバー11が固定され、このカバー11により短スプリングコレット28の前端が外部から遮蔽される。
【0046】
これにより、図12中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドすると、チャック開閉操作部6と短スプリングコレット28のテーパー面6a,28d同士の摺接および短スプリングコレット28と端板29のテーパー面28e,29b同士の摺接により、短スプリングコレット28が縮径し被加工材である短い被加工材Eを締め付けて把持する。また、図12中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドすると、チャック開閉操作部6のテーパー面6aが短スプリングコレット28のテーパー面28dに対する押圧を解き、短スプリングコレット28がそのバネ力により拡径し被加工材Eを解放する。
【0047】
次に、上記チャック装置の作用について説明する。
【0048】
(1)図1に示すように、すべてのチャック装置で共用する単一の共用固定部2がNC旋盤の主軸1の軸端部であるフランジ部1aに固定される。
【0049】
(2)長尺の棒材Aを加工する場合は、図2及び図3に示すように、コレットタイプのチャック装置に換装する。この換装に際しては、図1の状態にある中空操作棒3の先端にチャック開閉操作部6を連結し、スプリングコレット8をチャック開閉操作部6内に挿入し、端板10を共用固定部2に取り付ける。
【0050】
回転シリンダ装置4の作動により、図3中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドすると、チャック開閉操作部6とスプリングコレット8のテーパー面6a,8b同士の摺接およびスプリングコレット8と端板10のテーパー面8c,10a同士の摺接により、スプリングコレット8の前部が縮径し棒材Aを締め付けて把持する。
【0051】
その後主軸1が回転し、チャック装置から前方に突出する棒材Aの先端部分に図示しない刃物により加工が行われる。加工された製品部分は図示しない刃物により切り落とされる。
【0052】
加工が終了すると、図3中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドし、チャック開閉操作部6のテーパー面6aがスプリングコレット8のテーパー面8bに対する押圧を解き、スプリングコレット8の前部がそのバネ力により拡径し棒材Aを解放する。
【0053】
その後、棒材Aが図示しない棒材供給機により所定長さだけ押し出され、上記と同様にして加工が行われる。
【0054】
(3)短寸の被加工材Bを加工する場合は、図4乃至図6に示すように、ジョータイプのチャック装置に換装する。この換装に際しては、図1の状態にある中空操作棒3の先端にチャック開閉操作部6を連結し、スプリングコレット8をチャック開閉操作部6内に挿入し、スライダ15、ジョー16等が組み込まれた案内板14を共用固定部2に取り付ける。
【0055】
回転シリンダ装置4の作動により、図6中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドすると、チャック開閉操作部6とスプリングコレット8のテーパー面6a,8b同士の摺接およびスプリングコレット8とチャック部12のテーパー面8c,12a同士の摺接により、スプリングコレット8の前部が縮径し、これに連動してスライダ15がジョー16を伴って半径方向内側へと移動し、ジョー16が短寸の被加工材Bを締め付けて把持する。
【0056】
その後、主軸が回転し、チャック装置が把持した短寸の被加工材Bを図示しない刃物が加工する。
【0057】
加工が終了すると、図6中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドし、チャック開閉操作部6のテーパー面6aがスプリングコレット8のテーパー面8bに対する押圧を解き、スプリングコレット8の前部がそのバネ力により拡径する。これに連動してスライダ15がジョー16を伴って半径方向外側へと移動し、ジョー16が被加工材Bを解放する。
【0058】
(4)図8に示すような異形フランジ材Cを加工する場合は、図7及び図8に示すように、ダイアフラムタイプのチャック装置に換装する。この換装に際しては、図1の状態にある中空操作棒3の先端にチャック開閉操作部6を連結し、ダイアフラム18a、ジョー19等を一体的に備えたチャック部18を共用固定部2に取り付ける。
【0059】
回転シリンダ装置4の作動により、図8中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドすると、チャック開閉操作部6と環状突起18cのテーパー面6a,18d同士の摺接により、ダイアフラム18aが変形し、これに連動してジョー19が矢印bの方向に開く。異形フランジ材Cが広がった穴19b内に挿入されると、図8中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドし、チャック開閉操作部6が環状突起18cの押圧を解く。これにより、ダイアフラム18aが原形に復し、これに連動してジョー19が矢印dの方向に閉じて異形フランジ材Cを締め付けて把持する。
【0060】
その後、主軸1が回転し、チャック装置が把持した異形フランジ材Cを図示しない刃物が加工する。
【0061】
加工が終了すると、図8中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドし、チャック開閉操作部6のテーパー面6aが環状突起18cのテーパー面18dに接して押圧する。これに連動してジョー19が全体として拡径し異形フランジ材Cを解放する。
【0062】
(5)図10に示すような異形フランジ材Dを加工する場合は、図9及び図10に示すように、テーパー棒タイプのチャック装置に換装する。この換装に際しては、図1の状態にある中空操作棒3の先端に、テーパー棒22が装着されたチャック開閉操作部21を連結し、スプリングコレット24等を一体的に備えたチャック部20を共用固定部2に取り付ける。
【0063】
回転シリンダ装置4の作動により、図10中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部21が前方にスライドし、テーパー棒22がスプリングコレット24内を先端側に前進すると、テーパー棒22のテーパー面22aとスプリングコレット24のテーパー面24cとの摺接により、スプリングコレット24の小径部24bが異形フランジ材Dの穴内で拡開する。この拡開する小径部24bの外周面により異形フランジ材Dが保持される。
【0064】
その後、主軸1が回転し、チャック装置が把持した異形フランジ材Dを図示しない刃物が加工する。
【0065】
加工が終了すると、図10中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドする。テーパー棒22がスプリングコレット24内を後退すると、テーパー棒22のテーパー面22aがスプリングコレット24のテーパー面24cに対する押圧を解き、スプリングコレット24がそのバネ力により元の形状に縮径する。これにより、異形フランジ材Dがスプリングコレット24から解放される。
【0066】
(6)図12に示すような細く短い被加工材Eを加工する場合は、図11及び図12に示すように、短スプリングコレットタイプのチャック装置に換装する。この換装に際しては、図1の状態にある中空操作棒3の先端に、チャック開閉操作部6を連結し、短スプリングコレット28を保持した端板29を共用固定部2に取り付ける。この場合、チャック開閉操作部6は前回のチャック装置がスプリングコレット式のものであるときは前回のチャック開閉操作部6を外すことなくそのまま使用することができる。
【0067】
回転シリンダ装置4の作動により、図12中、中心線の上半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が前方にスライドすると、チャック開閉操作部6と短スプリングコレット28のテーパー面6a,28d同士の摺接および短スプリングコレット28と端板29のテーパー面28e,29b同士の摺接により、短スプリングコレット28が縮径し被加工材Eを締め付けて把持する。
【0068】
その後、主軸1が回転し、チャック装置が把持した被加工材Eを図示しない刃物が加工する。
【0069】
加工が終了すると、図12中、中心線の下半分で示すように、中空操作棒3及びチャック開閉操作部6が後方にスライドし、チャック開閉操作部6のテーパー面6aが短スプリングコレット28のテーパー面28dに対する押圧を解く。これにより、短スプリングコレット28がそのバネ力により拡径し被加工材Eを解放する。
【0070】
このように、旋盤の主軸1に対しコレットタイプのチャック装置に換装することで従来と同様に長尺の棒材Aを簡易に加工することができるのはもちろんのこと、異形フランジ材C,Dの加工等のように他の異種類の加工を行う場合は、主軸1の軸端部からチャック装置の全体を取り外することなく、複数種のチャック装置の共用固定部2は主軸1側に残したまま、所望のチャック装置のチャック部5,12,18,20,27及びチャック開閉操作部6,21のみを付け替えることで直ちに他の加工を行うことができる。
【0071】
以上、本発明の望ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の複数種のチャック装置が装着されるNC旋盤の主軸を示す側面図である。
【図2】本発明の複数種のチャック装置のうちコレットタイプのチャック装置を示す正面図である。
【図3】図2に示すコレットタイプのチャック装置の垂直断面図である。
【図4】本発明の複数種のチャック装置のうちジョータイプのチャック装置を示す正面図である。
【図5】図4に示すジョータイプのチャック装置の部分平面図である。
【図6】図4に示すジョータイプのチャック装置の垂直断面図である。
【図7】本発明の複数種のチャック装置のうちダイアフラムタイプのチャック装置を示す正面図である。
【図8】図7に示すダイアフラムタイプのチャック装置の垂直断面図である。
【図9】本発明の複数種のチャック装置のうちテーパー棒タイプのチャック装置を示す正面図である。
【図10】図9に示すテーパー棒タイプのチャック装置の垂直断面図である。
【図11】本発明の複数種のチャック装置のうち短コレットタイプのチャック装置を示す正面図である。
【図12】図11に示す短コレットタイプのチャック装置の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1…中空主軸
1a…軸端部
2…共用固定部
3…中空操作棒
5,12,18,20,27…チャック部
6,21…チャック開閉操作部
8,24,28…スプリングコレット
16,19…ジョー
18a…ダイアフラム
22…テーパー棒
28a,28b…すり割溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック開閉用の中空操作棒が挿入された中空主軸の軸端部に着脱自在に装着される旋盤用チャック装置において、複数種のチャック装置が、上記軸端部に固定される中空の共用固定部と、この共用固定部の先端に着脱自在に装着されるチャック部と、上記共用固定部の中空内に挿入され上記中空操作棒の先端に着脱自在に連結されるチャック開閉操作部とに分けられ、すべてのチャック装置で共用する単一の共用固定部が上記軸端部に固定され、この共用固定部に対して所望のチャック装置のチャック部が取り付けられ、このチャック部に対応するチャック開閉操作部が上記中空操作棒の先端に連結されることを特徴とする旋盤用チャック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の旋盤用チャック装置において、所望のチャック装置のチャック開閉操作部が中空に形成され、チャック部がチャック開閉操作部のスライドによって拡縮するスプリングコレットを備えたことを特徴とする旋盤用チャック装置。
【請求項3】
請求項1に記載の旋盤用チャック装置において、所望のチャック装置のチャック部が、チャック開閉操作部のスライドによって拡縮するスプリングコレットと、スプリングコレットの拡縮に連動して開閉動作するジョーとを備えたことを特徴とする旋盤用チャック装置。
【請求項4】
請求項1に記載の旋盤用チャック装置において、所望のチャック装置のチャック部が、上記チャック開閉操作部のスライドによって変形するダイアフラムと、ダイアフラムの変形に連動して開閉動作するジョーとを備えたことを特徴とする旋盤用チャック装置。
【請求項5】
請求項1に記載の旋盤用チャック装置において、所望のチャック装置のチャック開閉操作部がその先端にテーパー棒を有し、チャック部がテーパー棒のスライドによって拡縮するスプリングコレットを備えたことを特徴とする旋盤用チャック装置。
【請求項6】
請求項2に記載の旋盤用チャック装置において、スプリングコレットがその一端面に開口するすり割溝と他端面に開口するすり割溝とを有したことを特徴とする旋盤用チャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−152451(P2007−152451A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348067(P2005−348067)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000127042)株式会社アルプスツール (31)
【出願人】(302007046)仲精機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】