説明

既設管切断装置

【課題】 歩進ネジが、切り粉の挟み込みによる回転の不具合を生じることなく、円滑な回転を維持できる既設管切断装置を提供すること。
【解決手段】 切断ユニット3は、少なくとも既設水道管Pの直径方向に配設された第1回転軸C1回りに回転可能な歩進ネジ14を有し該回転により切削バイト19を前記直径方向に進退可能とする歩進ネジ部16と、切断ユニット3の切断経路近傍に固定配置されたキッカ−部で駆動され歩進ネジ14を回転可能とする受動回転部21と、からなり、歩進ネジ14を周方向に沿って防護する防護壁12が、第1回転軸C1方向に延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道管等の既設管の一部を水密的に密封した筐体内において、既設管を不断水状態で切断する既設管切断装置に関し、詳しくは、既設管を円周方向に沿って切断する切削バイトからなる切断ユニットと、切断ユニットを保持するガイド部と、切断ユニットを回転駆動させる駆動部とを備えた既設管切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の既設管切断装置は、切断ユニットが、前記既設管の直径方向に配設された第1回転軸回りに回転可能な歩進ネジを有し切削バイトを直径方向に進退可能とする歩進ネジ部と、切断ユニットの切断経路近傍に固定配置されたキッカ−部で駆動される第2回転軸回りに回転可能な受動回転部と、からなり、切削バイトにより既設管を円周方向に切断している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3294165号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、切削バイトによる既設管の切断の際に排出される切り粉が、歩進ネジの周辺に飛散して、歩進ネジに付着することにより、歩進ネジが、切り粉の挟み込みによる回転の不具合を生じて、円滑な回転を維持できずに、既設管の切断がスムーズに実施できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、歩進ネジが、切り粉の挟み込みによる回転の不具合を生じることなく、円滑な回転を維持できる既設管切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の既設管切断装置は、既設管の一部を水密的に密封した筐体内において、前記既設管の周壁を円周方向に沿って切断可能な切削バイトを備えた切断ユニットと、前記切断ユニットを前記円周方向に回転自在に保持可能なガイド部と、前記切断ユニットを回転駆動させる駆動部と、を備えた既設管切断装置であって、
前記切断ユニットは、少なくとも前記既設管の直径方向に配設された第1回転軸回りに回転可能な歩進ネジを有し該回転により前記切削バイトを前記直径方向に進退可能とする歩進ネジ部と、前記切断ユニットの切断経路近傍に固定配置されたキッカ−部で駆動され前記歩進ネジを回転可能とする受動回転部と、からなり、
前記歩進ネジを周方向に沿って防護する防護壁が、前記第1回転軸方向に延在していることを特徴としている。
この特徴によれば、歩進ネジを周方向に沿って防護する防護壁が、第1回転軸方向に延在しており、既設管の切削の際に排出される切り粉が、歩進ネジの周辺に飛散して、歩進ネジに付着することを防護できるため、歩進ネジが、切り粉の挟み込みによる回転の不具合を生じることなく、円滑な回転を維持できる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の既設管切断装置は、請求項1に記載の既設管切断装置であって、前記受動回転部が、前記第1回転軸と別軸である第2回転軸回りに回転可能であって、前記切断ユニットが、更に前記受動回転部の回転を前記歩進ネジの回転に伝達する回転伝達部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、受動回転部が、第1回転軸と別軸である第2回転軸回りに回転可能であり、受動回転部の回転を歩進ネジの回転に伝達する回転伝達部が備えられているため、受動回転部による回転量により付与される歩進ネジの回転量を、回転伝達部により調整することができる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の既設管切断装置は、請求項1または2に記載の既設管切断装置であって、前記防護壁の内部には、前記切削バイトと共に前記直径方向に進退可能に形成されるスライドフレームが設けられており、前記スライドフレームが、前記歩進ネジの略全長に亘って螺合される螺合部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、スライドフレームの螺合部が、歩進ネジの略全長に亘って螺合されているため、既設管の直径方向におけるスライドフレームの位置に関わらず、歩進ネジの既設管外面側が外部に露出することがなく、既設管の切削の際に排出される切り粉が、歩進ネジの既設管外面側に付着することを確実に防護できる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の既設管切断装置は、請求項3に記載の既設管切断装置であって、前記スライドフレームの外面が、前記歩進ネジの回転により前記防護壁の内面に沿って摺動するように形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、スライドフレームの外面が、歩進ネジの回転により防護壁の内面に沿って摺動するため、スライドフレームが、防護壁の内面を利用して、スムーズに既設管の直径方向に進退できる。
【0010】
本発明の請求項5に記載の既設管切断装置は、請求項4に記載の既設管切断装置であって、前記スライドフレームの外面が、前記防護壁の内面と略全周に亘って当接若しくは近接するように形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、スライドフレームの外面と防護壁の内面との隙間が、略全周に亘ってほとんどないため、スライドフレームが既設管の直径方向に進行することにより、歩進ネジの既設管の直径方向に対して外方側が露出しても、既設管の切削の際に排出される切り粉が該隙間から進入し、歩進ネジの該外方側に付着することを確実に防護できる。
【0011】
本発明の請求項6に記載の既設管切断装置は、請求項2ないし5のいずれかに記載の既設管切断装置であって、前記防護壁の一部が、前記回転伝達部を被覆するように延設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、防護壁の一部が、回転伝達部を被覆するように延設されており、既設管の切削の際に排出される切り粉が飛散して、回転伝達部に付着することを防護できるため、回転伝達部が、切り粉の挟み込みによる回転伝達の不具合を生じることなく、円滑に歩進ネジに回転を伝達できる。
【0012】
本発明の請求項7に記載の既設管切断装置は、請求項1ないし6のいずれかに記載の既設管切断装置であって、前記防護壁の一部が、前記歩進ネジの前記既設管の外面側を被覆するように延設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、防護壁の一部が、歩進ネジの既設管の外面側を被覆するように延設されているため、既設管の切削の際に排出される切り粉が飛散して、防護壁の既設管の外面側から内部に進入することを防護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例における既設管切断装置の全体像を示す正面図である。図2は、同じく既設管切断装置の全体像を示す側面図である。図3(a)は、切断ユニットの全体を示す一部断面の正面図であり、(b)は同じく平面図である。図4は、キッカー部及び切断ユニットの全体を示す図3(a)のA−A断面図である。図5は、切断後の管片及び切断ユニットを筐体上方に持ち上げる状況を示す図である。図6は、本発明の変形例における切断ユニットの全体を示す側面図である。
【0015】
先ず、本実施例の既設管切断装置1の装置概要について説明する。
【0016】
図1及び図2に示されるように、既設管切断装置1は、切断ユニット3とガイド部4と駆動部5とからなり、本発明の既設管である既設水道管Pの外側に水密的に密封された筐体2内において、上下2分割構造のガイド部4が、既設水道管Pの外周面に固定保持される。
【0017】
ガイド部4の上部には、駆動モータ6と、駆動モータ6により駆動される駆動軸7の両端に設けられた一対の駆動スプロケット8とからなる駆動部5が連接されており、駆動モータ6は筐体2外部に突出して配設されている。
【0018】
ガイド部4の両端部には、上下2分割構造であって、既設水道管Pの外周方向に回転自在な一対の従動スプロケット9が配設されている。
【0019】
ガイド部4の両端部には、図4に示されるように、既設水道管Pの外周回りに、固定リング35が突設されている。従動スプロケット9の背面には、固定リング35に嵌合可能な凹部が形成されており、従動スプロケット9は、既設水道管Pの管軸回りに摺動可能に固定リング35に嵌合されている。
【0020】
固定リング35に嵌合された従動スプロケット9の背面には、背面リング36が背面止めボルト37により従動スプロケット9と一体化されており、従動スプロケット9が、固定リング35から脱落しないように保持されつつ、既設水道管Pの管軸回りに回転可能となっている。
【0021】
一対の従動スプロケット9は、図2に示されるように、上部の一対の駆動スプロケット8と巻回された無端チェーン10を介してそれぞれ接続され、駆動スプロケット8の駆動により回転力を付与され、既設水道管Pの外周を周回する。
【0022】
また、一対の従動スプロケット9の外面には、切断ユニット3が等間隔に4箇所ずつ固着配設され、従動スプロケット9の回転とともに既設水道管Pの外周を回転可能となり、既設水道管Pを外周回りに切断できるようになっている。
【0023】
図5に示されるように、既設水道管Pの切断後において、管片P1と既設管切断装置1とは、筐体2の上部に設置された作業筒2c内を上下に昇降可能な図示しない保持昇降装置により、筐体2の上部に設けられた開閉自在の開口部2bから上方に搬出され、管片P1を除去した後の既設水道管Pの経路には、新設水道管あるいは仕切弁等が搬入設置されるようになっている。
【0024】
また、筐体2内からの搬出工程は、搬出物(管片P1と既設管切断装置1)を筐体2内の上部の作業筒2c内へ引き上げた後に、開閉弁2aを閉じることにより、既設水道管1内の流体は筐体2外部に漏れず、不断水状態での搬出作業が可能となる。当然であるが、搬入作業は搬出作業と逆の工程となる。
【0025】
次に、本実施例の切断ユニット3について説明する。
【0026】
図3(a)、(b)及び図4に示されるように、切断ユニット3は、既設水道管Pの直径方向に配設された第1回転軸C1回りに回転可能な歩進ネジ14を有し該回転により切削バイト19を該直径方向に進退可能とする歩進ネジ部16と、切断ユニット3の切断経路近傍に固定配置されたキッカ−部30で駆動される第1回転軸と平行なる第2回転軸C2回りに回転可能な受動回転部18と、受動回転部18の回転を歩進ネジ14の回転に伝達する第1平歯車15及び第2平歯車23からなる回転伝達部と、から構成される。
【0027】
また、歩進ネジ14を後述する既設水道管Pの切断の際に発生する切り粉から防護する防護壁12が、歩進ネジ14の周方向に沿って、且つ第1回転軸C1方向に延在しており、同様に、第1平歯車15及び第2平歯車23からなる回転伝達部を該切り粉から防護する防護壁24が、回転伝達部の上方及び四方周囲を被覆するように、止めネジ40により固定されている。
【0028】
尚、本実施例の歩進ネジ14を防護する防護壁12と、回転伝達部を防護する防護壁24とは、別体からなるが、本発明の防護壁は必ずしもこのような形状に限られず、例えば、歩進ネジ14を防護する防護壁の一部が、回転伝達部を防護するように、一体的に形成されていてもよい。
【0029】
即ち、本発明の防護壁は、必ずしも対象物の側方を防護する形状に限られるものではなく、例えば、上述した回転伝達部の上方周囲を被覆する防護壁24や、後述する変形例で示すように、防護壁121の底部121b(図6参照)が、歩進ネジ14の既設水道管P外面側を被覆するように延設されている形状であっても、本発明の防護壁の形状に含まれる。
【0030】
次に切断ユニット3の構成について詳しく説明すると、従動スプロケット9の外面にベース材11が固定配設され、ベース材11の上部には軸支台13が固定連接されている。軸支台13には、第1回転軸C1回りに回転する歩進ネジ部16と、第2回転軸C2回りに回転する受動回転部18とが、互いに平行にかつ既設水道管Pの管軸中心に向かって軸支されている。
【0031】
図3(b)に示されるように、受動回転体21が、第2回転軸C2を中心として所定角度間隔に平面視放射状の羽根形状に設けられている。
【0032】
また、受動回転体21の下部には、図3に示されるように、本発明の回転伝達部である第2平歯車23が配設されており、同じく本発明の回転伝達部である第1回転軸C1回りに回転する第1平歯車15と、互いに噛合されている。
【0033】
図3(b)に示されるように、第1平歯車15の下部には、内部に雌ネジを有する螺合部17bが配設され、歩進ネジ14が螺嵌され外面が平面視略長円形状のスライドフレーム17が、同じく内面が平面視略長円形状の空隙に設けられるように軸支台の下部に固定配設された防護壁12の該空隙に、全周に亘ってほとんど隙間なく近接した状態にて嵌挿されている。
【0034】
また、図3(a)に示されるように、スライドフレーム17の前面には、先端刃19aが防護壁12の前面と略面一若しくは若干外方に位置するように形成される切削バイト19が、スライドフレーム17と共に既設水道管Pの直径方向に進退可能に配設されており、防護壁12の前面に、前記位置に配設された切削バイト19と略同形に形成され正面視下開きコ字状に設けられた切欠き部12aに、ほとんど隙間なく嵌合されている。
【0035】
更に、切削バイト19が、スライドフレーム17と固定ボルト17aで着脱可能に配設されているため、例えば先端刃19aが磨耗したとき等の切削バイト19の交換作業が容易となっている。
【0036】
したがって、後述するように第2回転軸C2の回転が伝達され、第1回転軸C1が正逆回転することにより、歩進ネジ14が螺嵌されるスライドフレーム17の外面が、歩進ネジ14の回転により防護壁12の内面に沿って摺動し、スライドフレーム17が、防護壁12に沿って既設水道管Pの直径方向に進退可能となり、このようにすることで、スライドフレーム17が、防護壁12の内面を利用して、切欠き部12aに沿って既設水道管Pの直径方向に進退できる。
【0037】
また、平面視略長円形状に形成されるスライドフレーム17の外面は、同様に平面視略長円形状に形成される防護壁12の内面と、全周に亘って当接するように形成されていてもよい。
【0038】
更に、受動回転部18が、第1回転軸C1と別軸である第2回転軸C2回りに回転可能であり、受動回転部18の回転を歩進ネジ14の回転に伝達する第1平歯車15と第2平歯車23とからなる回転伝達部が備えられており、このようにすることで、受動回転部18による回転量により付与される歩進ネジ14の回転量を、回転伝達部により調整することができる。
【0039】
本実施例における回転伝達部である第1平歯車15と第2平歯車23とは、一定の減速比率を介して連結されているため、第1回転軸C1の回転角度が第2回転軸C2の回転角度よりも小さくなる。
【0040】
したがって、第2平歯車23の回転時に回転角度の誤差が生じても、減速比率の分だけ第1平歯車15の回転角度の誤差は小さくなるため、切削バイト19の単位送り量の精度を高めることができる。
【0041】
更に、切断する既設水道管Pの外径や肉厚あるいはダクタイル鋳鉄管や鋼管等の材質に応じて、第1平歯車15と第2平歯車23との減速比率を任意に設定して、切削バイト19の単位送り量を設定変更することができる。
【0042】
また、図2に示されるように、既設水道管Pの外周回りを回転する切断ユニット3の切断経路近傍には、キッカー部30がガイド部4の外側面に固定配設されており、図4に示されるように、キッカー部30にはキッカー片31が下方の切断ユニット3の切断経路に向かって突設されている。
【0043】
したがって図4に示されるように、既設水道管Pの外周を回転動作する切断ユニット3がキッカー部30の近傍を通過する際に、第2回転軸C2に軸支される受動回転体21が、キッカー片31と当接係合し、切断ユニット3がキッカー部30の近傍を通過し終えて、係合が解除されるまで受動回転体21が所定量回転(正回転)することになる。
【0044】
すなわち、第2回転軸C2における所定量回転(正回転)は、同じく第2回転軸C2に軸支される第2平歯車23と噛合する第1平歯車15に伝達されて、減速された後に第1回転軸C1が一定量回転し、スライドフレーム17に固定された切削バイト19が、単位あたり量下降動作することになる。
【0045】
したがって、切断ユニット3が既設水道管Pの外周を回転してキッカー部30を通過するたびごとに、受動回転体21がキッカー片31と当接係合して所定量回転し、切削バイト19が単位あたり量ずつ下降動作することにより、切削バイト19の先端刃が既設水道管Pの外周壁を一定量ずつ切削しながら外周を回転し、既設水道管Pを切断する。
【0046】
尚、本実施例では特に図示しないが、第1回転軸C1及び第2回転軸C2の回転に負荷を与える負荷手段が設けられていてもよい。このようにすることで、既設水道管Pの切断時において、切削バイト19が既設水道管Pの外周壁との摺接により後戻り方向に係る力を、該負荷手段により受け止めることができるため、第1回転軸C1及び第2回転軸C2が逆回転することなく、切削バイト19の切削位置を保持することが可能となる。
【0047】
切削バイト19による既設水道管Pの切断の際には、切削バイト19の先端刃19aと既設水道管Pの外周面との当接する箇所から切り粉が排出して、該当接する箇所の周辺に飛散するが、歩進ネジ14を周方向に沿って防護する防護壁12が、第1回転軸C1方向に延在しており、このようにすることで、切り粉が歩進ネジ14の周辺に飛散して、歩進ネジ14に付着することを防護できるため、歩進ネジ14が、切り粉の挟み込みによる回転の不具合を生じることなく、円滑な回転を維持できる。
【0048】
同様に、第1平歯車15及び第2平歯車23からなる回転伝達部を該切り粉から防護する防護壁24が、第1平歯車15及び第2平歯車2を被覆するように設けられており、このようにすることで、既設水道管Pの切削の際に排出される切り粉が飛散して、第1平歯車15及び第2平歯車23に付着することを防護できるため、第1平歯車15及び第2平歯車23からなる回転伝達部が、切り粉の挟み込みによる回転伝達の不具合を生じることなく、円滑に歩進ネジ14に回転を伝達できる。
【0049】
また、既設水道管Pの切断の際に発生する切り粉が飛散して、防護壁12の既設水道管P外面側から、防護壁12の内部に進入する場合があるが、図4に示されるように、スライドフレーム17の螺合部17bは、歩進ネジ14の略全長に亘って螺合されており、このようにすることで、既設水道管Pの直径方向におけるスライドフレーム17の位置に関わらず、歩進ネジ14の既設水道管P外面側が外部に露出することがなく、上述したように切り粉が防護壁12の内部に進入した場合であっても、歩進ネジ14の既設水道管P外面側に付着することを確実に防護できる。
【0050】
更に、平面視略長円形状に形成されるスライドフレーム17の外面が、同様に平面視略長円形状に形成される防護壁12の内面と、略全周に亘って当接若しくは近接するように形成されており、このようにすることで、スライドフレーム17の外面と防護壁12の内面との隙間が、全周に亘ってほとんどないため、スライドフレーム17が、既設水道管Pの直径方向に進行することにより、歩進ネジ14の既設水道管Pの直径方向に対して外方側が露出しても、既設水道管Pの切削の際に排出される切り粉が該隙間から進入し、歩進ネジ14の該外方側に付着することを確実に防護できる。
【0051】
本実施例では、図1に示されるように、一対の従動スプロケット9の外面には、それぞれ等間隔に4式の切断ユニット3が固定配設されているが、切断ユニット3の回転動作に際し、それぞれの切削バイト19の先端刃19aが描く軌跡は同一であるため、それぞれの切削バイト19は既設水道管Pに同一の切削溝を削りながら、既設水道管Pを切断する。
【0052】
また、本実施例では、図2に示されるように、ガイド部4の両端に設けられた一対の従動スプロケット9は、互いの面間幅が上部から下部に至るにしたがって幅狭のテーパ状に形成されているため、一対の従動スプロケット9に沿って回転する切断ユニット3によって切断される既設水道管Pの2箇所の切断面は、同様のテーパ状に形成される。
【0053】
したがって図5に示されるように、切断ユニット3による既設水道管Pの切断動作が終了した後に、切断面間の管片P1と、管片P1の外周に固定保持されたガイド部4及び切断ユニット3が、筐体2の上部に搬出される際に、とくに従動スプロケット9の外面に設けられた切削バイト19が、切断後の既設水道管Pの切断面と係合し邪魔になることなくスムーズに搬出できる。
【0054】
また、図4に示されるように本実施例では、キッカー片31の上部が回動軸32により軸支されており、キッカー片31の当接部31aが、上述した受動回転体21と当接する駆動位置から、上方の退避位置に回動可能となっている。キッカー片31を上方に回動した該退避位置においては、当接部31aと、受動回転体21とが当接係合することなく従動スプロケット9が回転可能となり、従動スプロケット9の正逆回転により切削バイト19が上下スライド動することがなくなるため、例えば既設水道管Pの切断動作前に、従動スプロケット9の試回転などが可能となる。
【0055】
また、キッカー片31が受動回転体21と当接する当接位置において、キッカー片31は止めネジ33によって保持されるため、従動スプロケット9の回転動作によりキッカー片31の当接部31aと受動回転体21とが当接係合しても、キッカー片31が上方に回動されることがない。
【0056】
そして、図1に示されるように、駆動スプロケット8と従動スプロケット9との間で巻回され周回する無端チェーン10の周回経路の2箇所において、無端チェーン10の周回により生ずる振れを抑止する緩衝体39が設けられており、周回する無端チェーン10が緩衝体39内部を通過するようになっている。
【0057】
とくに駆動スプロケット8の駆動軸7が既設水道管Pの管軸と平行であるのに対し、従動スプロケット9の従動軸は、一対の従動スプロケット9がテーパ状に形成されるように、既設水道管Pの管軸に対して斜めに設けられているため、無端チェーン10に生じやすい振れやあるいは駆動スプロケット8、従動スプロケット9からの脱落の可能性を抑止することができる。
【0058】
また、図1及び図2に示されるように、ガイド部4には、外側面から既設水道管Pの管軸方向に向かって外周壁を押圧保持する調整ボルト38が、既設水道管Pの外周方向に等間隔(本実施例では8箇所)に、一対の従動スプロケット9の近傍において一対に配設されており、各調整ボルト38を外側面から螺挿して既設水道管Pの外周壁を押圧することで、既設水道管Pの管軸と、従動スプロケット9の従動軸との調整が可能となる。
【0059】
また、図3(a)に示されるように、既設水道管Pの切断動作の終了した後は、第1回転軸C1を逆転することにより切削バイト19を上昇動作させて、切断ユニット3を切断面から開放する。この場合において、第1回転軸C1と第2回転軸C2とが平行配置のため、歩進ネジ14の上端部を直接逆転動作することが可能となるため、例えばウオーム等の回転伝動部材を逆転する場合に生ずる負荷よりも軽減できる。
【0060】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0061】
例えば、上記実施例では、図3及び4に示されるように、防護壁12が、歩進ネジ14の周方向に沿って、且つ第1回転軸C1方向に延在しているが、本発明の防護壁は、必ずしもこのような形状に限られるものではなく、例えば本発明の防護壁の変形例として、図6に示されるように、切断ユニット3’の防護壁121の底部121bが、歩進ネジ14の既設水道管P外面側を被覆するように延設されていてもよい。
【0062】
このようにすることで、該延設された防護壁121の底部121bが、既設水道管Pの切断の際に排出される切り粉が飛散して、防護壁121の既設水道管P外面側から、防護壁121の内部に進入することを防護できる。
【0063】
また、上記実施例では、キッカー部30で駆動される受動回転部18が、歩進ネジ14が回転する第1回転軸C1とは別軸である第2回転軸C2回りに回転しているが、受動回転部の回転により歩進ネジ14を回転可能とすれば、切断ユニットは必ずしもこのような構成に限られず、例えば受動回転部が歩進ネジ部の一部に配設されており、歩進ネジ14と同じく第1回転軸C1回りに回転してもよい。
【0064】
更に、上記実施例では、切削バイト19を既設水道管Pの直径方向に進退可能とする歩進ネジ14が回転する第1回転軸C1と、キッカー部30で駆動される受動回転部18が回転する第2回転軸C2とが、互いに平行に配設されているが、第2回転軸回りの回転が回転伝達部により第1回転軸に伝達されれば、必ずしもこのような配設に限られず、例えば第1回転軸とる第2回転軸とが、略直交方向に配設されていてもよい。
【0065】
また、上記実施例では、外面が平面視略長円形状のスライドフレーム17が、同じく内面が平面視略長円形状の空隙に、全周に亘って近接した状態にて嵌挿されているが、スライドフレームの平面視形状は、歩進ネジ14の回転と共に回転することを防止するものであれば、必ずしも略長円形状に限られず、例えばスライドフレームの平面視形状は、楕円若しくは長方形でもよいし、台形でもよい。
【0066】
また、上記実施例では、図1に示されるように、一方の従動スプロケット9には切断ユニット3が4式設けられていたが、既設水道管Pの切断が可能であれば切断ユニット3の数量は4式に限らず、例えば1式のみ設けられていてもよいし、5式以上設けられていてもよい。
【0067】
また、上記実施例では、既設水道管Pは水道管であったが、既設管の内部流体は上下水道等の液体であってもガス等の気体であってもよい。
【0068】
また、上記実施例では、水密的に密封された筐体2内において既設管切断装置1を設置し、既設水道管Pを不断水状態で切断していたが、必ずしも筐体2内での既設水道管Pの切断に限られず、開放された空間で既設水道管Pを切断してもよい。
【0069】
また、上記実施例では、図1に示されるように、キッカー部30が、片側の切断経路の近傍に2式ずつ配設されているが、必ずしも2式である必要はなく、既設水道管Pのダクタイル鋳鉄管や鋼管等の材質に応じて、例えば1式のみ配設されていてもよいし、3式以上配設されていてもよい。
【0070】
更に、上記実施例では、キッカー部30が、片側の切断経路の近傍に2式ずつ配設されているため、切断ユニット3が既設水道管Pまわりに一周する度に2式のキッカー片31により受動回転体21が2回駆動されていたが、既設水道管Pのダクタイル鋳鉄管や鋼管等の材質に応じて、例えば一方のキッカー片31のみを上述した駆動位置に配置し、他方のキッカー片31を退避位置に配置するようにして、切削バイトの歩進量を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例における既設管切断装置の全体像を示す正面図である。
【図2】同じく既設管切断装置の全体像を示す側面図である。
【図3】(a)は、切断ユニットの全体を示す一部断面の正面図であり、(b)は同じく平面図である。
【図4】キッカー部及び切断ユニットの全体を示す図3(a)のA−A断面図である。
【図5】切断後の管片及び切断ユニットを筐体上方に持ち上げる状況を示す図である。
【図6】本発明の変形例における切断ユニットの全体を示す側面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 既設管切断装置
2 筐体
2a 開閉弁
2b 開口部
2c 作業筒
3、3’ 切断ユニット
4 ガイド部
5 駆動部
6 駆動モータ
7 駆動軸
8 駆動スプロケット
9 従動スプロケット
10 無端チェーン
11 ベース材
12、121 防護壁
12a 切欠き部
121b 底部
13 軸支台
14 歩進ネジ
15 第1平歯車(回転伝達部)
16 歩進ネジ部
17 スライドフレーム
17a 固定ボルト
17b 螺合部
18 受動回転部
19 切削バイト
19a 先端刃
21 受動回転体
23 第2平歯車(回転伝達部)
24 防護壁
30 キッカー部
31 キッカー片
31a 当接部
32 回動軸
33 止めネジ
35 固定リング
36 背面リング
37 背面止めボルト
38 調整ボルト
39 緩衝体
40 止めネジ
C1 第1回転軸
C2 第2回転軸
P 既設水道管(既設管)
P1 管片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の一部を水密的に密封した筐体内において、前記既設管の周壁を円周方向に沿って切断可能な切削バイトを備えた切断ユニットと、前記切断ユニットを前記円周方向に回転自在に保持可能なガイド部と、前記切断ユニットを回転駆動させる駆動部と、を備えた既設管切断装置であって、
前記切断ユニットは、少なくとも前記既設管の直径方向に配設された第1回転軸回りに回転可能な歩進ネジを有し該回転により前記切削バイトを前記直径方向に進退可能とする歩進ネジ部と、前記切断ユニットの切断経路近傍に固定配置されたキッカ−部で駆動され前記歩進ネジを回転可能とする受動回転部と、からなり、
前記歩進ネジを周方向に沿って防護する防護壁が、前記第1回転軸方向に延在していることを特徴とする既設管切断装置。
【請求項2】
前記受動回転部が、前記第1回転軸と別軸である第2回転軸回りに回転可能であって、前記切断ユニットが、更に前記受動回転部の回転を前記歩進ネジの回転に伝達する回転伝達部を備える請求項1に記載の既設管切断装置。
【請求項3】
前記防護壁の内部には、前記切削バイトと共に前記直径方向に進退可能に形成されるスライドフレームが設けられており、前記スライドフレームが、前記歩進ネジの略全長に亘って螺合される螺合部を有している請求項1または2に記載の既設管切断装置。
【請求項4】
前記スライドフレームの外面が、前記歩進ネジの回転により前記防護壁の内面に沿って摺動するように形成されている請求項3に記載の既設管切断装置。
【請求項5】
前記スライドフレームの外面が、前記防護壁の内面と略全周に亘って当接若しくは近接するように形成されている請求項4に記載の既設管切断装置。
【請求項6】
前記防護壁の一部が、前記回転伝達部を被覆するように延設されている請求項2ないし5のいずれかに記載の既設管切断装置。
【請求項7】
前記防護壁の一部が、前記歩進ネジの前記既設管の外面側を被覆するように延設されている請求項1ないし6のいずれかに記載の既設管切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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