説明

昇降式手摺支持装置

【課題】 複数の利用者が夫々最適な高さの手摺を同時に利用でき、簡易な高さ調節手段をもち、階段やスロープ上にも容易に設置できる昇降式手摺支持装置を提供する。
【解決手段】 ポールねじのシャフト1と手摺用ブラケットを有するバーを連結するフレーム2を1ユニットとし、シャフト1の回転をフレーム2に配したシャフト1と螺合する軸受金具3に伝達してシャフト1上をフレーム2が昇降し、フレームに連結されたバー5に配したブラケットに固着された手摺の高さ調節を行う。フレーム2には複数のバー5を用途に合わせた間隔で取り付け可能に構成し、複数の利用者、複数の用途に対応する。シャフトとフレームをユニット化することにより、設置の自由度が高まり、バー5を揺動可能にフレーム2に連結する事により、ユニット間の高低差や勾配に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
昇降式手摺支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手摺は壁面にブラケットを取り付けて固定されていたり、土間にパイプ状のものを自立させたりしていた。
【0003】
個人宅では、手摺を最も必要とする人の高さに合わせて設置され、公共の場においては基準値で設置されている。
【0004】
手摺の最適な高さは個人の体格に左右される場合が多く、また生活習慣や身体機能によっても個人差が生じる。
【0005】
また、年数の経過により手摺を必要とする人が入れ替わったり、身体機能の変化により最適な高さが変動する場合もあり、それに対応するため、可動、可倒式の手摺、あるいは複数の利用目的に対応するための多段式手摺の考案は数多くなされている。
【0006】
可動、可倒式の代表的なものは、特開平7−11749、特開2001−317173、特開2004−244855、特開2001−27026などがある。
【0007】
特開平7−11749の発明は可倒式の代表的なもので、手摺が不要なときの収納と、手摺使用時の出幅量の調整を簡易な構成で示したものである。
【0008】
特開2001−317173の発明はレール上で昇降あるいは回転する手摺用のブラケットであり、容易に高さを調整できると共に角度の調整も可能なため、階段などへの対応もできる。
【0009】
特開2004−244855の発明は上下あるいは左右に伸縮するシリンダ式の腕部を持つ手摺取付部材により、手摺の出幅および高さを自在に調整できるものである。
【0010】
特開2001−27026の発明は縦手摺と横手摺と止め金具を組合せて自在に高さ調整できるものであり、用途と場所と個人差を選ばない試みであり、組合せによっては多段式の構成も可能で、同時に複数の使用者にも対応できる。
【0011】
多段式手摺の代表的な発明は特開2003−301580である。
【0012】
梯子状に構成された、この発明は使用者の姿勢の変化に細かく対応できるものであり、また使用する高さを自由に選べるので複数の使用者が同時に利用でき、さらに梯子状の構成はリハビリなどの用途にも効果が高いと思われる。
【特許文献1】 特開平7−11749
【特許文献2】 特開2001−317173
【特許文献3】 特開2004−244855
【特許文献4】 特開2001−27026
【特許文献5】 特開2003−301580
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の技術においては、上記のように個々の利用者の現在の状態に合わせるための調節機能は重視されているが、高さや出幅が決まった場合の固定は工具を使ってブラケットを締着する等の方法を取ることになる。
【0014】
これは使用者本人あるいは介助者が手摺の高さを調節する作業において、主体となる事を想定していないためである。
【0015】
また、可倒式の手摺の場合、何段階かの高さ調整が可能なものもあるが、調整幅が狭いうえ、スパンの長い手摺では操作はかなり困難であり、またその機構上、設定した高さと出幅が連動して変化するため、調整もきめ細かくはできない。
【0016】
歩行に手摺を要する利用者が複数である場合、本人の意思で、自分に合わせた高さに、その場で、簡易に調節できる機構が必要であり、また、一度調整した手摺を再度調整しなおす場合の容易さを考慮しなければならない。
【0017】
本発明は複数の手摺利用者が、それぞれ最も適した高さに自由に設定することが可能で、また、変更や調整もその場で容易にでき、さらに階段や勾配のある通路などにも対応することを目的とする昇降式手摺支持装置である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明はポールねじのシャフト上をポールねじを嵌合する軸受金具を有するフレームがシャフトの回転により自在に昇降する。
【0019】
該フレームに揺動可能な手摺用ブラケットを有するバーを連結し、手摺を取り付ける。
【0020】
シャフトとフレームの組合せを1つのユニットとし、該ユニットを手摺設置部分の壁面などに配し、各ユニット間を手摺用ブラケットを有するバーで連結する。
【0021】
手摺用ブラケットを有するバーはフレームに揺動可能に連結され、各ユニット間に勾配や高低差がある場合、例えば、スロープや階段等への設置も可能である。
【0022】
シャフトの天端にかさ歯車を配し、それに嵌合する円筒ウォームを横シャフトとして、各シャフトの天端部を摺動する位置に配設し、該横シャフトをモーター等の電気的駆動あるいは機械的駆動あるいは磁気的駆動により、フレームを一括して昇降させる。
【0023】
上記機構により、利用者が最適な高さに調整する際、特別な手段や工具を必要とせず、また介護者等の負担も軽減される。
【0024】
手摺用ブラケットを有するバーを連結するフレーム上に凹部、あるいは穴を所定間隔で複数個設ける事により、微調整を可能にし、複数本の手摺用ブラケットを有するバーを任意の間隔で連結することができる。
【0025】
該フレームの構造により、複数の利用者が同時に最適の高さで利用する事が可能であり、また利用目的による最適な高さの差も解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明を実施するための最良の形態を図を参照して詳述する。
【0027】
図1から図3は請求項1の発明を実施するための形態である。
【0028】
1はポールねじのシャフトで天端にかさ歯車9を有するものであり、2は該シャフト1を螺合する軸受金具3を3箇所に有するフレームである。
【0029】
シャフト1とフレーム2の組合せを1つのユニットとし、シャフト1の回転によりフレーム2が昇降する。
【0030】
該ユニットを配置するため、図2に示すようにシャフト1を嵌入し回動を円滑にするためのボールベアリングなどを備えた受金具7を床面に設置し、ユニットを支持するための

【0031】
ガイドレール17は十分な強度を持つ金属などで成型したものであり、ユニットを取付け壁面19で支持するため、壁面19において十分な強度を持つ部分あるいは下地材を補強した部分にビスあるいはアンカーなどで固着する。
【0032】
ユニットとガイドレール17は図2、3に示すようにフレーム2の有するシャフト軸受金具3の背面方向に設けた突起をフレーム支持金具18により両面より挟み込みボルトな

7の頭部を挟み込む形で連結される。
【0033】
軸受金具3とフレーム支持金具18を分離し、設置の際にボルトなどで固着する方式を取ることにより、ユニットのガイドレールへの取り付けが、容易となる。
【0034】
フレーム支持金具18に設けたローラー25は硬質ゴムや合成樹脂などを用い、回動自在にフレーム支持金具18に取り付けられ、フレーム2の昇降に合わせてガイドレール17上を滑動する。
【0035】
ガイドレール17とフレーム支持金具18のローラー25によりユニットを支持し、またシャフト1のたわみを防止する。
【0036】
ガイドレールとローラーの形状は、この形に限るものではなく、単一のローラーを挟み込む形のガイドレールやガイドレールとローラーを歯車で構成する事なども考えられる。
【0037】
こうして、適度な間隔を持って壁面などに配置された各ユニットは、図1に示すように手摺用ブラケットを有するバー5により各フレームに連結される。
【0038】
フレーム2とバー5の連結部4は図4に示す如く、バー5の端末はフレーム2が遊嵌する形の凹部を有し、連結部の強度を確保するための金具23を嵌合させてから、空間24を設けて、ピンあるいはボルトなどで連結する。
【0039】
連結したフレーム2とバー5の間に空間24を設ける事により、連結部4は揺動可能となり、ユニットの配置が、段差あるいは勾配に妨げられる事がないよう構成した。
【0040】
シャフト1を駆動する横シャフト8は横シャフト固定金具16により、壁面あるいは補強天井あるいは構造躯体などに支持される。
【0041】
該固定金具16は横シャフト8と嵌合する、ベアリングあるいはシールなどを施した開口部を有し、嵌入した横シャフト8を回動自在に支持する。
【0042】
横シャフト固定金具16は、壁面あるいは補強天井あるいは構造躯体などにビスなどで固着されるが、横シャフト8を支持する強度を要す。
【0043】
配置されたシャフト1の天端のかさ歯車9に嵌合する歯車10を横シャフト8に適宜配し、該横シャフト8をモーター11で回転させる事により、シャフト1が回転し、フレーム2の有する軸受金具3に動力が伝達されることにより、シャフト1の回転に応じてフレーム2は昇降する。
【0044】
シャフト1に動力を伝達する横シャフト8は円筒ウォームにしても良く、その際はシャフト1の天端に配するかさ歯車9を該円筒ウォームに嵌合する形状にしなければならないが、ユニット配置の自由度は高まる。
【0045】
6は無励磁作動式の電磁ブレーキであり、モーター11と同一の電源により回路を構成し、モーター11の動作と連動させてモーター11停止時に自動的にモーター11の駆動軸とシャフト1にロックが掛かる。
【0046】
フレーム2と手摺用ブラケットを有するバー5の連結を揺動可能としたため、端部において不都合が生ずるので、端部用のフレーム12と端部用バー15を使用し、端末にバー15のふれ止め26を壁面などに配する。
【0047】
図5、6に示す如く端部用フレーム12の端側に縦パイプ13を設け、端部用バー15を連結部14において2箇所固定する事により、端部用バー15を確実に固定する構成とした。
【0048】
図7は請求項2記載のフレーム構造の詳細図である。
【0049】
フレーム2のバー5と連結される部分に連結固定用のバー連結穴20を複数個設けた方式の構成である。
【0050】
フレーム2に対して、複数のバー5を取り付けることが可能となり、また手摺の高さの設定の自由度が高まると共に微調整も可能になる。
【0051】
さらに複数本のバー5相互の間隔を自由に設定する事が可能となる。
【0052】
本実施の形態においては、固定用ボルトを通すため貫通した穴としたが、十分な安全性を確保できるのならば、バー連結穴20を貫通しない凹部として、バー5の端部にねじ穴を設け、ボルトなどを螺合して固定しても良い。
【0053】
図面上での記載はないが、本実施の形態においてはモーターを駆動源とするため、昇降スイッチの設置が必要となる。
【0054】
昇降スイッチは本発明を設置する場所、規模、条件により柔軟に対応する必要があり、現場にあわせた配置を考慮しなければならない。
【0055】
また、手摺利用者が存在する場合の操作の禁止などの安全対策も必要となる。
【0056】
手摺利用時の安全対策としては、タッチセンサーなどを応用して手摺利用中の昇降動作の遮断あるいは手摺利用中を表示するパイロットランプによる警告などが考えられ、これもまた、設置する場所、規模、条件などにより適宜施さなければならない。
【0057】
図8、9、10は本発明を階段などに実施する際の応用例である。
【0058】
手摺の昇降を駆動する部分をユニット化したことにより、配置の自由度が高まり、高低差、勾配に対しても制約を受けにくいため、図8、9、10に示すような設置が可能となる。
【0059】
図8は階段の勾配に合わせて、手摺の勾配をつけることが可能な事を示す。
【0060】
図9は階段の勾配にあわせるより、段差があっても手摺が水平である事の方が適応する身体状態の場合の設置例である。
【0061】
図10は天井にも勾配がある場合の設置例であり、この場合シャフト1の天端に配されたかさ歯車9と横シャフト8に配される歯車10の摺動に配慮が必要となる。
【0062】
aは横シャフト8に配置された歯車10に嵌合するシャフト1の天端に配されたかさ歯車9の形状を凹型にして傾斜に対応したものであり、bは同かさ歯車9を凸型にした設置例である。
【0063】
さらに、受金具7を水平に保って設置する事により、図1に示したようにスロープ上への設置も可能である。
【0064】
本実施の形態においては、モーターによる駆動としたが、駆動方法に関しては電気的駆動に限る物ではなく、機械的駆動、磁気的駆動なども考えられる。
【0065】
また、身体機能や使用の状況によっては、減速ギアの組み合わせや滑車の応用などにより、人力での駆動も有り得る。
【0066】
本発明では動力の伝達方法は歯車であるが、例えばチェーンなどの利用や、騒音防止のためにベルトなどの利用により摩擦で動力の伝達をしたり、流体の利用も考えられる。
【発明の効果】
【0067】
本発明においては、手摺の高さを利用者の身体状況あるいは嗜好によりきめ細かく設定でき、また昇降部分をユニット化し配置の自由度を高めたため多様な設置方法が可能となり、複数使用者をあらかじめ想定したので公共の場でも有効に作用する。
【0068】
公共の場における使用については、その場を利用する頻度の高い年齢層や身体状況などに合わせて事前に設定しておき、微調整は利用者によって行うなどの配慮が可能となる。
【0069】
さらに手摺の取付を多段式とし、昇降により自在に高さの調節が可能であるため、リハビリなどへの応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】 本発明の一実施の形態を示す側面図である。
【図3】 本発明の一実施の形態を示す平面図である。
【図4】 フレームと手摺用ブラケットを有するバーの連結部の詳細図である。
【図5】 端部用フレームとバーの連結を示す平面詳細図である。
【図6】 端部用フレームとバーの連結を示す正面詳細図である。
【図7】 フレームの詳細図である。
【図8】 本発明の階段設置例1である。
【図9】 本発明の階段設置例2である。
【図10】 本発明の階段設置例3である。
【符号の説明】
1 ポールねじのシャフト
2 フレーム
3 軸受金具
4 フレームとバーの連結部
5 手摺用ブラケットを有するバー
6 電磁ロック
7 シャフト受金具
8 駆動用横シャフト
9 かさ歯車
10 歯車
11 モーター
12 端部用フレーム
13 端部用縦パイプ
14 端部用フレームとバーの連結部
15 端部用バー
16 横シャフト固定金具
17 ガイドレール
18 フレーム支持金具
19 壁面
20 バー連結穴
21 手摺取付ブラケット
22 手摺
23 金具
24 空間
25 ローラー
26 端部用ふれ止め
27 連結部のシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポールねじのシャフトと、そのポールねじを嵌合する軸受金具を有するフレームで構成される簡易なユニットを配置し、該フレーム間にブラケット用バーを揺動可能に連結し、ポールねじのシャフトの天端にかさ歯車を配し、該歯車に嵌合する円筒ウォームの横シャフト、またはポールねじのシャフトの天端に配された、かさ歯車と嵌合する歯車を所定位置に配した横シャフトにより一括駆動する昇降式手摺支持装置であって、横シャフトを電気的駆動あるいは機械的駆動あるいは磁気的駆動により駆動する昇降式手摺支持装置。
【請求項2】
請求項1記載の昇降式手摺支持装置において、ポールねじと共にユニットを構成するフレーム上に所定間隔で穴、あるいは凹部を設け、ブラケット用バーを連結する際に多段階に微調整可能で、複数本連結可能にするフレームを有する昇降式手摺支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−274780(P2006−274780A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128598(P2005−128598)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(503347161)
【Fターム(参考)】