説明

昇降駆動装置とそれを備えた機械式駐車設備

【課題】 トラクションシーブにワイヤロープの巻き掛け回数を増加させても、軸受に加わる反力が増加しないようにできる昇降駆動装置を提供すること。
【解決手段】 トラクションシーブ30のワイヤロープ張力作用方向Pに、このトラクションシーブ30と対向して配置した反らせプーリ40と、駆動源25の出力軸26に基部53が回転自在に支持され、先端部54に反らせプーリ40を回転自在に支持する支持部材50と、この支持部材50と駆動源25との相対位置関係を保持する回り止め部材57とを有し、ワイヤロープ21は、トラクションシーブ30に巻き掛けた後、反らせプーリ40に巻き掛け、再びトラクションシーブ30に巻き掛けることでトラクションシーブ30に複数回巻き掛けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ式駐車設備、エレベータスライド式駐車設備、及び乗用エレベータ等に用いられる昇降駆動装置と、それを備えた機械式駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータ式駐車設備、エレベータスライド式駐車設備、及び乗用エレベータ等には、昇降体(エレベータ搬器、かご等)をワイヤロープで昇降させる昇降駆動装置が備えられている。この昇降駆動装置には、昇降体が一端に設けられたワイヤロープの他端に昇降体の巻き上げ力を軽減するためのカウンタウェイトを設け、このワイヤロープの中間部分を駆動源のトラクションシーブに掛けてつるべ式で動作させるものがある。この昇降駆動装置では、トラクションシーブに掛けたワイヤロープの摩擦駆動力で昇降体を昇降させている。
【0003】
このようにワイヤロープの摩擦駆動力を利用して昇降体を昇降させる昇降駆動装置を備えた設備の例として、以下、上記エレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)を例に説明する。
【0004】
エレベータ式駐車設備は、一般的に、上部に設けられた機械室に昇降駆動装置が設けられており、昇降体であるエレベータ搬器に掛けられたワイヤロープが上記機械室に設けられた転向ローラで昇降駆動装置の方向に曲げられ、そのワイヤロープが昇降駆動装置で駆動される。図6に示すように、昇降駆動装置で駆動されるワイヤロープ100は、駆動源のトラクションシーブ101に掛けられた後、転向ローラ102を介して下方に向けて曲げられ、このワイヤロープ100の下端にカウンタウェイトが設けられている。このような昇降駆動装置によれば、駆動源でトラクションシーブ101を回転駆動することで、このトラクションシーブ101に掛けられたワイヤロープ100の摩擦駆動力でエレベータ搬器が昇降させられるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような摩擦駆動力を利用した昇降駆動装置によれば、トラクションシーブ101に巻き掛けたワイヤロープ100に以下のような駆動力が作用する。なお、実際には、加速度、摩擦損失を始めとする各種パラメータが関与するが、主な関係パラメータのみで簡単に説明する。
【0006】
昇降駆動装置によって持上げるべき車両を積載したエレベータ搬器の重量によるワイヤロープ張力を「T1」、カウンタウェイトの重量によるワイヤロープ張力を「T2」とすると、トラクションシーブ101で伝達すべき駆動力「ΔT」は、
ΔT=T1−T2
となる。
【0007】
エレベータ式駐車設備におけるエレベータ搬器の重量としては、車両を搭載した「実車」と搭載していない「空車」の状態とがあり、両方の状態で駆動力を最大限生かせるよう、カウンタウェイトの重量は、これらをほぼ平均した重量に設定される。そして、この形態で伝達できる最大駆動力が「ΔT」となるように、上記トラクションシーブ101の係合溝形状やワイヤロープ100の仕様などが設定されている。
【0008】
一方、エレベータ搬器の重量増加等によってより大きな摩擦駆動力を確保する必要性が生じると、一般的に、エレベータ搬器とカウンタウェイトの重量の比が大きくなるに従い、トラクションシーブへのワイヤロープの巻き掛け角を大きくしていくが、上記特許文献1のような構成による巻き掛け角αでは、その重量比によっては十分な摩擦駆動力を伝達できなくなる。
【0009】
そこで、例えば、乗用エレベータにおいては、ワイヤロープの巻き掛け角を180°以上に大きくすることが行われており、そのために、巻き上げ機のトラクションシーブと反らせプーリとにワイヤロープを複数回巻き掛けるようにしている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−201010号公報
【特許文献2】特開2004−106984号公報
【特許文献3】再公表特許第2004/041703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献2,3に示すようにワイヤロープを複数回以上トラクションシーブに巻き掛けると、トラクションシーブの出力軸軸受に加わる軸受反力、出力軸に加わる曲げモーメントは巻き掛け回数の増加によるワイヤロープ張力の増加により倍増、3倍増と大幅に増大する。
【0012】
一方、図7に示すように、昇降駆動装置110においては、一般的に駆動モータ111からの出力は減速機112(内部構造省略)内で減速され、出力軸113からトラクションシーブ101に伝達されている。そのため、上記増加したワイヤロープ張力によってトラクションシーブ101に矢印で示すように張力Taが掛かると、減速機112に組み込まれている出力軸113を回転支持している軸受114,115には、張力Taと平行な力と、張力Taの作用点の突き出し量Sに比例したモーメントが掛かり、これらの和に対して反力Ra、反力Rbが作用する。この張力相当力と突き出し量に比例したモーメントの和を、オーバハングロード(OHL)と呼ぶ。
【0013】
そのため、昇降駆動装置110の摩擦駆動力を増加させるためにワイヤロープ巻き掛け回数を増やして張力を増加させると、その増加に伴って上記オーバーハングロードが大きくなり、必要な伝達最大トルクを満足するように巻き掛けたとしてもオーバーハングロードの基準を満足できない場合が生じる。その場合には、出力軸113、出力軸軸受114,115等の強度アップを図らなければならないが、強度アップを図ると、昇降駆動装置110が複雑で重量が重く、且つ必要に応じて軸受を強化した専用品を使用することになり、昇降駆動装置110の複雑化、大型化、及び高コスト化を招いて実用性がない昇降駆動装置となる。
【0014】
そこで、本発明は、トラクションシーブにワイヤロープの巻き掛け回数を増加させても、軸受に加わる反力が増加しないようにできる昇降駆動装置と、それを備えた機械式駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の昇降駆動装置は、駆動源に軸受を介して出力軸を支持し、該出力軸に取り付けたトラクションシーブに巻き掛けたワイヤロープの摩擦駆動力によって昇降体を昇降させる昇降駆動装置であって、前記トラクションシーブと対向して配置した反らせプーリと、前記出力軸に基部が回転自在に支持され、先端部に前記反らせプーリを回転自在に支持する支持部材と、前記支持部材と前記駆動源との相対位置関係を保持する位置保持部材とを有し、前記ワイヤロープは、前記トラクションシーブに巻き掛けた後、前記反らせプーリに巻き掛け、再びトラクションシーブに巻き掛けることで該トラクションシーブに複数回巻き掛けていることを特徴とする。この構成により、トラクションシーブへのワイヤロープ巻き掛け回数が複数回に増加しても、トラクションシーブを取り付けた出力軸に支持した支持部材で反らせプーリを支持しているため、トラクションシーブと反らせプーリとに作用するワイヤロープ張力の増加分は支持部材に対向して作用するので、その増加分は支持部材で吸収して出力軸に作用する軸受反力の増加を抑止することができる。従って、ワイヤロープをトラクションシーブに複数回巻き掛けた摩擦駆動力の大きな昇降駆動装置を、簡素な構造で構成することができる。しかも、大きな駆動力を有する昇降駆動装置の軽量化を図ることもできる。
【0016】
また、前記支持部材は、前記基部が出力軸に軸受を介して支持され、前記反らせプーリは、前記支持部材の先端部に軸受を介して支持されていてもよい。このように構成すれば、トラクションシーブを回転させる出力軸に対して支持部材の基部を軸受によって回転自在に支持するとともに、支持部材の先端部で反らせプーリを軸受によって回転自在に支持するので、反らせプーリ及び支持部材の滑らかな回転支持を長期間安定して保つことができる。
【0017】
また、前記出力軸は、前記トラクションシーブの取り付け部分から延びる延長軸を有し、該出力軸の延長軸に軸受を介して前記支持部材の基部を回転自在に支持していてもよい。このように構成すれば、駆動源の出力軸を変更することで容易に支持部材を支持することができ、反らせプーリを適切な位置に配置することが容易にできる。
【0018】
また、前記支持部材は、先端部に前記反らせプーリの支持軸を有し、該支持軸に軸受を介して前記反らせプーリを回転自在に支持していてもよい。このように構成すれば、駆動源との相対位置関係が保持された支持部材の先端部に、反らせプーリを定位置で安定して支持することができる。
【0019】
また、前記反らせプーリは、回転軸心が、前記トラクションシーブの回転軸心に対して、前記ワイヤロープのトラクションシーブから反らせプーリに巻き掛ける係合溝のピッチ角分で傾くように構成されていてもよい。このように構成すれば、トラクションシーブから反らせプーリに掛けられて反転したワイヤロープがトラクションシーブの隣の係合溝に掛かるときにスムーズに掛かるので、トラクションシーブと反らせプーリとに掛けられるワイヤロープのよりスムーズな掛け渡しができる。
【0020】
また、前記反らせプーリは、前記トラクションシーブのワイヤロープ張力作用方向に配置されており、該反らせプーリは前記トラクションシーブよりも小径で形成されていてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「張力作用方向」は、ワイヤロープが昇降体の重量によって引っ張られる方向をいう。このように構成すれば、ワイヤロープの張力作用方向に配置した反らせプーリをワイヤロープの間に配置して、昇降駆動装置をコンパクトに形成することができる。
【0021】
一方、本発明の機械式駐車装置は、上記いずれかの昇降駆動装置を備えている。この構成により、昇降体を昇降させる摩擦駆動力を増加させるために、昇降駆動装置のワイヤロープ巻き掛け回数を増やしてワイヤロープ張力を増加させたとしても、出力軸軸受に作用する反力の増加を抑止して簡素な構造の昇降駆動装置とすることができるので、昇降駆動装置の配置自由度が高い機械式駐車設備を構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、トラクションシーブへのワイヤロープ巻き掛け回数を増加させても、ワイヤロープ張力の増加による軸受反力が増加しないようにできるので、摩擦駆動力の大きな昇降駆動装置を簡素な構造で構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る昇降駆動装置を備えたエレベータ式駐車設備を示す全体概略正面図である。
【図2】図1に示す昇降駆動装置の正面図である。
【図3】図2に示す昇降駆動装置の平面図である。
【図4】図2に示す昇降駆動装置の斜視図である。
【図5】図2に示す昇降駆動装置における駆動力関係の説明図であり、(a) は全体図、(b) は部分拡大図である。
【図6】従来の昇降駆動装置における駆動力関係の説明図である。
【図7】従来の昇降駆動装置におけるトラクションシーブに作用する力関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、機械式駐車設備の一つである下部90°乗入れ方式のエレベータ式駐車設備1に備えられた昇降駆動装置20を例に説明する。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、図1に示すエレベータ式駐車設備1に向かった状態における前後左右方向の概念と一致するものとする。
【0025】
図1に示すように、エレベータ式駐車設備1は、4隅に設けられた鉛直方向の主柱3と、この主柱3を水平方向に連結する梁(図示略)等とによって鉄骨構造体が形成され、この鉄骨構造体の外面に外装板5が設けられた駐車塔2を有している。この駐車塔2は、地上1階が乗入れ部6となっており、乗入れ部6の乗入れ床7にはピット8が形成されている。また、乗入れ部6の左方向には入出庫口9が設けられ、この入出庫口9には、開閉式の入出庫口扉10が設けられている。また、入出庫口9の外部側方には、運転盤11が配設されている。
【0026】
このようなエレベータ式駐車設備1は、駐車塔2の中央部鉛直方向に平面視が矩形状の昇降路12が形成されている。昇降路12は、平面視で駐車塔2の前後方向が長寸で、左右方向が短寸の矩形状となっている。また、この昇降路12を挟んで図の左右両側の鉛直方向に複数段の駐車棚13が設けられている。各駐車棚13には、図示する左右方向に延びる棚レール14が設けられている。この棚レール14は、上記主柱3と平行に鉛直方向に延びる棚柱15と主柱3とに設けられており、この棚レール14に沿ってパレット70が格納されるようになっている。
【0027】
また、上記昇降路12には、昇降してパレット70を搬送するエレベータ搬器16が設けられている。エレベータ搬器16には、パレット移載機構17が設けられており、このパレット移載機構17によってパレット70を上記各駐車棚13の棚レール14との間で移載できるようになっている。さらに、ピット8内には、上記エレベータ搬器16のパレット70を持上げて旋回させるパレット持上旋回装置18が備えられており、このパレット持上旋回装置18により、パレット70が乗入れ部6で入出庫口9の方向に旋回させられる。これらのパレット移載機構17及びパレット持上旋回装置18は、公知の手段が採用される。
【0028】
そして、上記駐車塔2の上部に設けられた機械室4に、上記エレベータ搬器16を昇降路12に沿って昇降させる昇降駆動装置20が設けられている。昇降駆動装置20には、昇降路12に垂下されたワイヤロープ21が転向ローラ19を介して掛けられている。この実施形態では、上記昇降駆動装置20をエレベータ式駐車設備1の上部駆動方式に適用しているため、機械室4に設けられた昇降駆動装置20のトラクションシーブ30に掛けられたワイヤロープ21は、機械室4では水平方向に延びるように配置され、このワイヤロープ21の一端が昇降路12の上方に設けられた転向ローラ19で曲げられてエレベータ搬器16に向けて垂下し、下端にエレベータ搬器16が吊下げられている。従って、昇降駆動装置20を駆動することにより、ワイヤロープ21で吊下げられたエレベータ搬器16が昇降路12で昇降させられる。また、ワイヤロープ21の他端側は、転向ローラ19によって駐車棚13の後方部分で垂下され、昇降駆動装置20による巻上げ力を軽減するカウンタウェイト22に連結されている。
【0029】
図2,3に示すように、上記昇降駆動装置20は、駆動モータ23の出力側に減速機24が設けられ、この減速機24に出力軸26が設けられている。出力軸26は、駆動モータ23の軸方向と直交する方向に突設されており、減速機24の内部に設けられた軸受(図7参照)によって回転自在に支持されている。駆動モータ23と減速機24とを総称する場合は、駆動源25という。
【0030】
上記出力軸26にはトラクションシーブ30が取り付けられている。このトラクションシーブ30は、出力軸26と一体的に回転するように取り付けられている。また、トラクションシーブ30と対向するように所定距離離れた位置に反らせプーリ40が設けられている。この実施形態では、反らせプーリ40が、上記トラクションシーブ30に掛けられたワイヤロープ21の張力作用方向Pに設けられている。この反らせプーリ40は、トラクションシーブ30の径に比べて小径で形成されている。
【0031】
さらに、上記出力軸26には、トラクションシーブ30の取付部分から反減速機側に延びる延長軸27(以下、「支持軸27」ともいう)が設けられている。この延長軸27に、軸受51を介して支持部材50の基部53が支持されている。この支持部材50の先端部54には、上記トラクションシーブ30と対向するように反らせプーリ40が回転自在に軸支されている。
【0032】
この実施形態では、支持部材50に支持軸55を設け、この支持軸55に、反らせプーリ40の内部に設けた軸受41を回転自在に支持している。なお、反らせプーリ40と一体的に支持軸(図示略)を設け、この支持軸を支持部材50に設けた軸受ハウジング(図示略)内に設けた軸受(図示略)に挿入して軸支するようにしてもよい。
【0033】
また、この実施形態では、上記トラクションシーブ30を取り付けた出力軸26の回転軸心C1(図3)と、反らせプーリ40支持する支持軸55の回転軸心C2(図3)とは略平行に配置されている。これらの回転軸心C1,C2は、必要に応じて反らせプーリ40の回転軸心C2を微小角度で傾けてもよい。この傾きとしては、トラクションシーブ30の係合溝31から反らせプーリ40の係合溝42に巻き掛けられ、この反らせプーリ40で反転したワイヤロープ21がトラクションシーブ30の隣の係合溝31に巻き掛かるときのピッチ角分の傾きとすればよい。このようにすれば、トラクションシーブ30から反らせプーリ40に巻き掛けられた後、再びトラクションシーブ30に巻き掛けられるワイヤロープ21のよりスムーズな巻き掛けが可能となる。
【0034】
図4にも示すように、上記支持部材50は、出力軸26に延設された支持軸27に軸受51で支持される基部53と、この基部53からワイヤロープ21の張力作用方向Pに所定長さで形成された支持フレーム部56とを有している。支持部材50の先端部54(反トラクションシーブ側)には、上記反らせプーリ40の支持軸55が設けられ、この支持軸55に反らせプーリ40の軸受41を挿入して、この反らせプーリ40が回転自在に支持されている。
【0035】
さらに、支持フレーム部56の中間部分には、駆動源25と支持部材50との相対位置関係を保持することで支持部材50の回転を制限する位置保持部材たる回り止め部材57が設けられている。この回り止め部材57は、支持部材50の回転を制限するように、駆動源25と支持部材50とに固定されている。この回り止め部材57で支持部材50の中間部分を駆動源25に固定することで、上記基部53で出力軸26の位置に支持された支持部材50は、反らせプーリ40を所定の位置で回転自在に支持した状態が保たれる。
【0036】
なお、回り止め部材57は、上記トラクションシーブ30と反らせプーリ40とが近接して設けられているため、反らせプーリ40に近接する部分がワイヤロープ21と接触しないように切り欠かれている。また、この回り止め部材57は、駆動源25と支持部材50とに直接的、又は間接的に固定すればよい。
【0037】
また、この実施形態では、減速機24から突出する出力軸26にトラクションシーブ30を取り付け、このトラクションシーブ30から突出する支持軸27に支持部材50の基部53を回転自在に支持しているが、減速機24とトラクションシーブ30との間で支持部材50の基部53を回転自在に支持するようにしてもよい。さらに、支持部材50の基部53をトラクションシーブ30を跨ぐ二股状に形成し、減速機24とトラクションシーブ30との間とトラクションシーブ30の反減速機側とで出力軸26に回転自在に支持するようにしてもよい。
【0038】
さらに、この実施形態では、上記支持部材50の基部53(一端)に軸受ハウジング52を設け、この軸受ハウジング52に設けた軸受51で出力軸26で支持するように構成しているが、出力軸26の端部に軸受ハウジング(図示略)を一体的に固定し、支持部材50に支持軸(図示略)を設けて軸受を介して出力軸26の軸受ハウジングに軸支するようにしてもよい。また、反らせプーリ40も、この反らせプーリ40と一体的に形成された支持軸を支持部材50に設けられた軸受ハウジング(図示略)内の軸受(図示略)に挿入して軸支するようにしてもよい。このような支持部材50の出力軸26及び反らせプーリ40を支持する支持構成は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0039】
このような昇降駆動装置20によれば、エレベータ搬器16側に接続されたワイヤロープ21は、トラクションシーブ30に巻き掛けられた後、反らせプーリ40に巻き掛けられ、その後、再びトラクションシーブ30に巻き掛けられた後、カウンタウェイト22側へと延びるように巻き掛けられている。つまり、ワイヤロープ21は、トラクションシーブ30に2回(複数回)巻き掛けられている。この例では、4本のワイヤロープ21でエレベータ搬器16を昇降させる例であるため、2回巻き掛けられるトラクションシーブ30には8本の係合溝31が設けられ、反らせプーリ40には4本の係合溝42が設けられている。
【0040】
さらに、図2,3に示すように、この実施形態では、昇降駆動装置20の駆動源25を横向き配置して固定するように取付台座60が、上記減速機24の下部に設けられている。この取付台座60は、減速機24の下面に一体的に設けられており、座部61がボルト・ナットで駐車塔2に固定できるようになっている。
【0041】
なお、この実施形態では、昇降駆動装置20の駐車塔2への取り付けを駆動源25に設けた取付台座60で行うようにしているが、上記支持部材50に取付台座60を設けて駐車塔2に取り付けるようにしてもよい。
【0042】
また、この実施形態は、エレベータ式駐車設備1の上部に昇降駆動装置20を配置した上部駆動の例であるが、下部駆動の場合、トラクションシーブ30を下側にし、反らせプーリ40を上側に配置した縦向き配置とすることで容易に対応することができる。
【0043】
図5(a),(b) に示すように、以上のような昇降駆動装置20によれば、トラクションシーブ30へのワイヤロープ21の巻き掛け回数が増加しても、駆動源25の軸受に加わる反力が増加しないようにできる。なお、以下の説明でも、実際には、加速度、摩擦損失を始めとする各種パラメータが関与するが、主な関係パラメータのみを用いて簡単に説明する。また、上述した構成には、その符号を付して説明する。
【0044】
[1.駆動力と荷重の関係]
上述したように、昇降駆動装置20によって持上げる車両Vを積載したエレベータ搬器16の重量によるワイヤロープ張力「T1」と、カウンタウェイト22の重量によるワイヤロープ張力「T2」と、トラクションシーブ30で伝達すべき駆動力「ΔT」との関係は、
ΔT=T1−T2
となる。
【0045】
なお、カウンタウェイト22の重量は、積載重量(=「実車」−「空車」)=2*ΔTに基づいて設定されているとする。また、上記トラクションシーブ30におけるワイヤロープ21の接触角αは、反らせプーリ40により反転させる前後で、トラクションシーブ30に巻き掛けられる接触角がいずれも「接触角α」であるとする。
【0046】
このような設定条件で、理想的な状態を仮定すると、張力「T1」側のワイヤロープ21は、接触角αでトラクションシーブ30に巻き掛けられることで上記駆動力「ΔT」相当分を負担できるので、反らせプーリ40側のワイヤロープ最小張力「T3」は、
T3=T1−ΔT
となる。
【0047】
一方、反らせプーリ40の支持軸55は回転自在となっているので、2度目の巻き掛け側の張力「T4」は、
T4=T3
となる。
【0048】
さらに、反らせプーリ40でワイヤロープ21を反転させてトラクションシーブ30に巻き掛けることで上記駆動力「ΔT」相当分を負担できるので、カウンタウェイト22側のワイヤロープ張力「T2」は以下の通りとなる。
T2=T4−ΔT
=T1−ΔT−ΔT
=T1−2*ΔT
このことから、トラクションシーブ30の出力軸26に反らせプーリ40を支持部材50で連結して支持したことにより、ワイヤロープ21の巻き掛け回数が増加することによるワイヤロープ張力の増加分は支持部材50で吸収し、駆動源25において軸受反力の増加がない、簡素な構造の昇降駆動装置20を構成することができる。
【0049】
つまり、上述した図6に示すように転向ローラ102を独立して軸支している場合、トラクションシーブ101に作用する張力Taは、そのまま駆動源へのオーバーハングロードとして作用するが、上記昇降駆動装置20のように、出力軸26で支持した支持部材50で反らせプーリ40とトラクションシーブ30とを回転自在に連結することで、ワイヤロープの最小張力「T3」、巻き掛け側の張力「T4」による張力成分は支持部材50で負担し、駆動源25へのオーバーハングロードとして作用する力をワイヤロープ張力「T1,T2」による張力のみとすることができる。
【0050】
このことは、上記トラクションシーブ30に作用する張力Taが、
Ta=T1+T2+T3’+T4’
(「T3’」は「T3」の張力作用方向分力、「T4’」は「T4」の張力作用方向分力)であるのに対し、反らせプーリ40に作用する反力Tbが、
Tb=T3’+T4’
となることからもわかる。
【0051】
このように、上記昇降駆動装置20によれば、トラクションシーブ30にワイヤロープ21を複数回巻き掛けたとしても、オーバーハングロードとしては、上述した図6に示すようにトラクションシーブ101に巻き掛けたワイヤロープ100の接触角αが約180°の「半掛け」と同等のオーバーハングロードとすることができる。しかも、上記昇降駆動装置20によれば、ワイヤロープ張力を軽減することで、オーバーハングロードを小さくして、より小型の昇降駆動装置20を構成することも可能となる。
【0052】
[2.機械式駐車設備への適用]
上記[1.駆動力と荷重の関係]では、「T1」の絶対値が同等の場合について説明した。詳細な説明は省略するが、昇降体による荷重が異なる場合の駆動力は、最大・最小張力の絶対値に比例する。即ち、最小張力(「空車」のエレベータ搬器16の重量)が小さくなると、これに比例して伝達できる駆動力が小さくなる。
【0053】
従って、エレベータ式駐車設備1等の機械式駐車設備に上記昇降駆動装置20を適用すると、以下の効果が期待できる。
(a) 最大・最小張力の絶対値が小さくなっても、大きな駆動力を確保することができるので、張力差を大きく取って、エレベータ搬器16の軽量化を図ることが可能となる。
(b) 最大・最小張力の絶対値が同じなら、より大きな駆動力を伝達できるので、加速度を大きくでき、昇降させるエレベータ搬器16の高速化が可能となる。
(c) 駆動力を大きくするためには、通常、ワイヤロープ21の係合溝の挟み角を小さくし、くさび効果でワイヤロープ21への圧力を高めるが、その必要が低減するので、ワイヤロープ21の長寿命化が期待できる。
【0054】
このように、上記昇降駆動装置20をエレベータ式駐車設備1(機械式駐車設備)に採用すれば、種々の効果を奏することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、機械式駐車設備の一例としてエレベータ式駐車設備1を説明したが、昇降駆動装置20はワイヤロープ21で巻上又は巻下する昇降装置を備えた乗用エレベータ、機械式駐車設備全般で本発明を適用することは可能であり、上記実施形態に限定されるものではない。
【0056】
また、上記昇降駆動装置20は機械式駐車設備における上部駆動の例を示したため、駆動モータ23を横向きに配置しているが、機械式駐車設備において下部駆動とすることもできる。この場合、駆動モータ23を縦向きに配置し、ワイヤロープ21が上向きに延びるように配置される。このような昇降駆動装置20の配置方向は、昇降駆動装置20を備えさせる設備に応じて適した向きに配置すればよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0057】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る昇降駆動装置は、エレベータ式駐車設備、エレベータスライド式駐車設備等の機械式駐車設備や、乗用エレベータ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 エレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)
2 駐車塔
12 昇降路
16 エレベータ搬器(昇降体)
20 昇降駆動装置
21 ワイヤロープ
22 カウンタウェイト
23 駆動モータ
24 減速機
25 駆動源
26 出力軸
27 延長軸(支持軸)
30 トラクションシーブ
31 係合溝
40 反らせプーリ
41 軸受
42 係合溝
50 支持部材
51 軸受
52 軸受ハウジング
53 基部
54 先端部
55 支持軸
56 支持フレーム部
57 回り止め部材(位置保持部材)
60 取付台座
V 車両
C1 回転軸心(トラクションシーブ)
C2 回転軸心(反らせプーリ)
T1 ワイヤロープ張力(エレベータ搬器重量)
T2 ワイヤロープ張力(カウンタウェイト重量)
T3 ワイヤロープ最小張力(反らせプーリ側)
T4 2度目巻き掛け側張力(反らせプーリ側)
ΔT 駆動力
P 張力作用方向
α 接触角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に軸受を介して出力軸を支持し、該出力軸に取り付けたトラクションシーブに巻き掛けたワイヤロープの摩擦駆動力によって昇降体を昇降させる昇降駆動装置であって、
前記トラクションシーブと対向して配置した反らせプーリと、
前記出力軸に基部が回転自在に支持され、先端部に前記反らせプーリを回転自在に支持する支持部材と、
前記支持部材と前記駆動源との相対位置関係を保持する位置保持部材と、を有し、
前記ワイヤロープは、前記トラクションシーブに巻き掛けた後、前記反らせプーリに巻き掛け、再びトラクションシーブに巻き掛けることで該トラクションシーブに複数回巻き掛けていることを特徴とする昇降駆動装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記基部が出力軸に軸受を介して支持され、
前記反らせプーリは、前記支持部材の先端部に軸受を介して支持されている請求項1に記載の昇降駆動装置。
【請求項3】
前記出力軸は、前記トラクションシーブの取り付け部分から延びる延長軸を有し、該出力軸の延長軸に軸受を介して前記支持部材の基部を回転自在に支持している請求項2に記載の昇降駆動装置。
【請求項4】
前記支持部材は、先端部に前記反らせプーリの支持軸を有し、該支持軸に軸受を介して前記反らせプーリを回転自在に支持している請求項2に記載の昇降駆動装置。
【請求項5】
前記反らせプーリは、回転軸心が、前記トラクションシーブの回転軸心に対して、前記ワイヤロープのトラクションシーブから反らせプーリに巻き掛ける係合溝のピッチ角分で傾くように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降駆動装置。
【請求項6】
前記反らせプーリは、前記トラクションシーブのワイヤロープ張力作用方向に配置されており、該反らせプーリは前記トラクションシーブよりも小径で形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の昇降駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の昇降駆動装置を備えた機械式駐車設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225102(P2012−225102A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95362(P2011−95362)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】