説明

易削性被加工材の加工テーブルおよび固定方法ならびに加工テーブル用アタッチメント板

【課題】被加工材の端面加工を容易にするとともに、設備コストを節減することができる易削性被加工材の加工テーブルを提供する。
【解決手段】易削性の被加工材29を加工する際に載置して固定するための加工テーブル1であって、ブロア21により負圧が与えられる負圧空間4が上面に開放するよう形成された負圧生成基台5と、上記負圧生成基台5上に上記負圧空間4を覆うように載置され、上記負圧空間4に連通する連通路19を有する吸引凹部18が複数形成されたアタッチメント板6を備え、上記アタッチメント板6に対し、マウント部材20と多孔質吸引板30とを切り換えて設備し、被加工材29の吸引固定方法を変更するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として木材、合板、樹脂、アルミニウム、一部のセラミックス等の易削性被加工材を加工するための易削性被加工材の加工装置および固定方法ならびに加工テーブル用アタッチメント板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、木材、合板、樹脂等の比較的加工性のよい易削性被加工材を加工する場合、被加工材を固定するためにいわゆるバキュームテーブル式の固定盤が用いられてきた。このようなバキュームテーブル式の固定盤は、盤面に吸引穴が多数形成された固定盤であり、盤面の吸引穴に吸引ポンプ等で負圧を与えた状態で盤面に被加工材を載置し、被加工材を吸引穴の吸引力により固定するものである(例えば下記の特許文献1)。また、工作物を固定するためのブロック状吸着装置と載置ベースとを備え、載置ベースから工作物を浮かせた状態で固定する真空固定保持装置も考案されている(上記の特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−188554号公報
【特許文献2】特表2001−520125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、吸引穴が形成された盤面に被加工材を直接載置して固定することから、被加工材の上面の加工はできても、端面の加工や丸鋸による切断は行えない。一方、上記特許文献2の装置では、載置ベースから工作物を浮かせた状態で固定するため、端面の加工や丸鋸での切断は行いやすくなるが、載置ベースから工作物を浮かせた状態で数箇所を支受するため、例えば薄板の加工では薄板自体が加工中に撓んでしまい、加工精度が大幅に低下するという問題が生じる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、被加工材の形態に合わせて被加工材の支持方法を切り換えて加工できる易削性被加工材の加工テーブルおよび固定方法ならびに加工テーブル用アタッチメント板の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の易削性被加工材の加工テーブルは、易削性の被加工材を加工する際に載置して固定するための加工テーブルであって、
負圧発生手段により負圧が与えられる負圧空間が上面に開放するよう形成された負圧生成基台と、
上記負圧生成基台上に上記負圧空間を覆うように載置され、上記負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部がほぼ板面の全体にわたって多数形成されたアタッチメント板とを備え、
上記アタッチメント板に対して吸引固定部材をさらに設備することにより被加工材を吸引固定するように構成されたことを要旨とする。
【0006】
また、本発明の易削性被加工材の固定方法は、易削性の被加工材を載置して固定するための加工テーブルに対して易削性の被加工材を固定する方法であって、
負圧発生手段により負圧が与えられる負圧空間が上面に開放するよう形成された負圧生成基台の上に、上記負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部がほぼ板面の全体にわたって多数形成されたアタッチメント板を上記負圧空間を覆うように載置し、
上記アタッチメント板に対して吸引固定部材をさらに設備して被加工材を吸引固定するようにしたことを要旨とする。
【0007】
また、本発明の易削性被加工材の加工用アタッチメント板は、易削性の被加工材を加工する際に載置して固定するための加工テーブルに用いるアタッチメント板であって、
負圧発生手段により負圧が与えられる負圧空間が上面に開放するよう形成された負圧生成基台と、
上記負圧生成基台上に上記負圧空間を覆うように載置され、上記負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部がほぼ板面の全体にわたって多数形成されたアタッチメント板とを備え、
上記アタッチメント板に対して吸引固定部材をさらに設備して被加工材を吸引固定するように構成された上記加工テーブルに用いられることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
負圧生成基台上に負圧空間を覆うように載置され、上記負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部がほぼ板面の全体にわたって多数形成されたアタッチメント板とを備え、上記アタッチメント板に対して吸引固定部材をさらに設備することにより被加工材を吸引固定することから、必要に応じて適宜吸引固定部材を変更して加工することができる。
【0009】
したがって、例えば、被加工材をアタッチメント板から所定距離を隔てた状態で吸引固定することにより、例えば丸鋸等で端面を切断しても、アタッチメント板を損傷させない加工が可能で、アタッチメント板の繰り返し使用が確保される。また、アタッチメント板と工具を接触させない状態での端面加工が可能になることから、例えば、端面を凸面状に加工したり、反対に凹溝を形成するように加工したりすることが容易に行え、端面加工のバラエティが大幅に拡がる。また、例えば、板面に形成された多数の通気路により被加工材を板面に密着させるよう吸引固定することにより、薄板のような歪み易い被加工材を歪ませることなく加工することができ、加工精度を確保できる。このように、被加工材の形態等に合わせて被加工材の支持方法を切り換えて加工できるようになる。
【0010】
本発明において、上記アタッチメント板の吸引凹部に取り付けられるとともに、上記連通路に連通する吸引パッドにより被加工材をアタッチメント板から所定距離を隔てた状態で吸引固定する第1の吸引固定部材をさらに備えた場合には、例えば丸鋸等で端面を切断しても、アタッチメント板を損傷させない加工が可能で、アタッチメント板の繰り返し使用が確保される。また、アタッチメント板と工具を接触させない状態での端面加工が可能になることから、例えば、端面を凸面状に加工したり、反対に凹溝を形成するように加工したりすることが容易に行え、端面加工のバラエティが大幅に拡がる。しかも、上記アタッチメント板は、負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部が多数形成され、上記吸引凹部にマウント部材が取り付けられることから、マウント部材の位置決めが容易である。
【0011】
本発明において、上記アタッチメント板上に積層状に載置され、上記吸引凹部に連通する板面に開口した多数の通気路により、被加工材を板面に密着させるよう吸引固定する第2の吸引固定部材をさらに備えた場合には、板面に開口した多数の通気路により被加工材を板面に密着させるよう吸引固定することにより、薄板のような歪み易い被加工材を歪ませることなく加工することができ、加工精度を確保できる。
【0012】
本発明において、上記第1の吸引固定部材と第2の吸引固定部材とを切り換え可能に構成されている場合には、被加工材の形態等に合わせて被加工材の支持方法を切り換えて加工できるようになる。
【0013】
本発明において、アタッチメント板には、吸引凹部が規則正しいピッチで並べて設けられ、第1の吸引固定部材を取り付けない吸引凹部は蓋部材を嵌合させる場合には、第1の吸引固定部材の位置決めがより容易になり、被加工材を固定するために必要な吸引凹部には第1の吸引固定部材を取り付け、それ以外の吸引凹部には蓋部材を取り付けることで、必要な第1の吸引固定部材の吸引パッドに対して負圧を与えられることから、比較的弱い吸引力でも確実に被加工材を固定することが可能となるため、設備コストを節減することができる。
【0014】
本発明において、吸引凹部の中心に負圧空間に連通する連通路が設けられ、第1の吸引固定部材は、吸引凹部に嵌合する取付部と、吸引パッドが設けられたマウント部とから構成され、マウント部は取付部に対して偏心上に配置されている場合には、第1の吸引固定部材を、マウント部が横に位置するように取り付けたり、手前に位置するように取り付けたりすることで吸引パッドの位置調節が容易に行えるとともに、マウント部の位置によらずに確実に第1の吸引固定部材の流路と連通路とを連通させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明が適用された易削性被加工材の加工装置を示す図である。この加工装置が対象とする易削性の被加工材としては、例えば、木材、合板、樹脂、アルミニウム、一部のセラミックス等があげられるが、これに限定するものではない。
【0017】
この加工装置は、被加工材29(図8参照)を載置して固定するための加工テーブル1と、上記被加工材29を加工する工具を駆動しながら上記加工テーブル1に対して相対的に移動することにより上記加工テーブル1に固定された被加工材29を加工するための工具駆動装置2とを備えている。
【0018】
この例では、工具駆動装置2を4つ備えており、図2に示すように、工具として円錐状切削工具16a、逆円錐状切削工具16b、鼓状切削工具16c、丸鋸16dが取り付けられている。工具駆動装置2に取り付ける工具は、これらに限定するものではなく、各種の工具を採用することができる。
【0019】
4つの工具駆動装置2は、レール部材11に横スライド可能に取り付けられた工具搬送部材13に取り付けられ、レール部材11のガイドにより横スライドしうるように構成されている。また、上記レール部材11はリフト装置12に取り付けられて昇降しうるように構成されている。これにより、工具駆動装置2は、図示の矢印Y方向およびZ方向に移動が可能となっている。
【0020】
上記加工テーブル1は、基台7上に配置されたテーブルスライドレール8上に取り付けられ、図示のX方向に移動が可能となっている。使用する工具の選択や工具駆動装置2および加工テーブル1の移動制御は、例えば、図示しないNC制御装置等により行いうるようになっており、工具駆動装置2による工具の駆動および加工テーブル1に対する工具駆動装置2の相対移動を制御して、加工テーブル1上に固定された被加工材29の加工を制御するようになっている。
【0021】
また、上記加工テーブル1は、図3および図4に示すように、負圧発生手段としてのブロア21(図5,図8参照)により負圧が与えられる負圧空間4が上面に開放するよう形成された負圧生成基台5と、上記負圧生成基台5上に上記負圧空間4を覆うように載置され、上記負圧空間4に連通する連通路19を有する吸引凹部18が複数形成されたアタッチメント板6とを備えて構成されている。
【0022】
上記負圧生成基台5は、この例では、4つの負圧空間4が設けられ、各負圧空間4の底部にはブロア21に連通して負圧空間4内を吸引する吸引穴15が形成されている。上記各負圧空間4の側壁は支持桟部9から構成され、この支持桟部9が、載置されたアタッチメント板6の下面を支受するように構成されている。
【0023】
上記アタッチメント板6は、この例では、平面視において負圧生成基台5と略同じ大きさ形状に形成されている。そして、上面には、吸引凹部18が板面の略全面にわたって規則正しいピッチで多数並べて設けられている。上記吸引凹部18は、アタッチメント板6を負圧生成基台5上に積層状に載置した状態で、支持桟部9に対応するこの例では略十字状の領域には形成されておらず、負圧空間4に対応する領域に形成されている。また、図6(A)に示すように、各吸引凹部18はこの例では円形であり、各吸引凹部18の中心に負圧空間4に連通する円形の連通路19が設けられている。
【0024】
上記アタッチメント板6の上面には、吸引凹部18が板面の略全面にわたって規則正しいピッチで多数並べて設けられている。このように、略全面にわたって規則正しいピッチで多数並べることにより、後述するように、第1の吸引固定部材であるマウント部材20で被加工材29を吸引固定するときに、マウント部材20の取り付け位置の自由度が確保され、種々の形状の被加工材に対応することができる。
【0025】
また、アタッチメント板6の上面の面積に対して吸引凹部18が占める面積を少なくとも10%以上、好ましくは20%以上とすることができる。このように、吸引凹部18が占める面積をある程度確保することにより、後述するように、第2の吸引固定部材である多孔質吸引板30で被加工材を吸引固定するときに、多孔質吸引板30の略全面で被加工材29を吸引固定することができ、種々の形状の被加工材に対応し、薄板等の加工精度を確保することができる。
【0026】
例えば、上記アタッチメント板6は、X方向に1300mm、Y方向に2500mmとすることができ、この場合、例えば、吸引凹部18はX方向に12列、Y方向に24列とすることができる。そして、吸引凹部18の直径を例えば62mmとすることができる。
【0027】
つぎに、上記アタッチメント板6に吸引固定部材を設備して被加工材29を吸引固定する状態を説明する。以下の説明では、第1の吸引固定部材としてマウント部材20を使用して被加工材29をアタッチメント板6から所定距離を隔てた状態で吸引固定する。また、第2の吸引固定部材として多孔質吸引板30を使用して被加工材29を板面に密着させるよう吸引固定する。
【0028】
まず、第1の吸引固定部材としてマウント部材20を使用する例を説明する。
【0029】
上記マウント部材20は、上記アタッチメント板6の吸引凹部18に嵌合するとともに、上記連通路19に連通する吸引パッド24により被加工材29をアタッチメント板6の上面から所定距離を隔てた状態で吸引固定する。
【0030】
上記マウント部材20は、吸引凹部18に取り付けられる取付部としての取付盤23と、吸引パッド24が設けられたマウント部28とから構成されている。上記取付盤23は、吸引凹部18と略同じ大きさ形状の円盤状に形成されている。一方、上記マウント部28は、この例では直方体状に形成されたパッド台25の上に、ゴムやエラストマー等の弾性体から形成され周縁部に対して中央部が少し窪んだ吸引パッド24が取り付けられて構成されている。
【0031】
図5(B)および図6(B)に示すように、上記取付盤23の下面には、取付盤23が吸引凹部18に嵌合された状態で吸引凹部18中央の連通路19と連通する溝部26が形成されている。また、吸引パッド24、パッド台25および取付盤23には、上記溝部26と連通する流路27が貫通形成されている。上記流路27は、吸引パッド24の窪んだ領域に開口している。
【0032】
上記マウント部材20は、図4および図7(B)に示すように、マウント部28が取付盤23に対して偏心上に配置されている。すなわち、略直方体状のマウント部28は、取付盤23の中心に配置されているのではなく、中心から短辺方向にすこしずれた位置に配置されている。これにより、取付盤23を吸引凹部18内で回転させて、取り付ける角度を変えることにより、マウント部28が横に位置するようにマウント部材20を取り付けたり、手前に位置するようにマウント部材20を取り付けたりすることができ、吸引パッド24の位置調節が容易に行える。この場合でも、溝部26の一端側は取付盤23の中心部に存在し、吸引凹部18の中心部に連通路19が配置されているため、取付盤23を回転させたとしても連通路19と溝部26との連通は確保される。
【0033】
図5(A)(B)、図7(A)(B)に示すように、多数の吸引凹部18のうち必要な箇所にマウント部材20を取り付け、マウント部材20を取り付けない吸引凹部18には蓋部材14を嵌合させることが行われる。上記蓋部材14は、吸引凹部18と略同じ形状大きさに形成された円盤状部材であり、取り付け取り外しする際に把持する把持部17が設けられている。
【0034】
このような構成により、図8に示すように、吸引凹部18にマウント部材20の取付盤23を嵌合させ、ブロア21により負圧空間4を介して連通路19に負圧を与えると、溝部26、流路27を介して吸引パッド24の窪んだ領域が吸引される。上記吸引パッド24上に被加工材29を載置して吸引することにより、吸引パッド24の凸条である周縁部が被加工材29の表面に密着し、流路27から閉空間となった窪んだ領域を吸引することにより、被加工材29が吸引固定されるようになっている。
【0035】
この状態で、例えば、図9に示すように、工具16cにより被加工材29を加工することが行われる。図示した例では、鼓状の切削工具16cにより板状の被加工材29の端面を切削加工し、凸面状に加工する状態を示している。
【0036】
このように、ブロア21により負圧が与えられる負圧空間4が上面に開放するよう形成された負圧生成基台5上にアタッチメント板6が上記負圧空間4を覆うように載置されている。そして、上記アタッチメント板6は、負圧空間4に連通する連通路19を有する吸引凹部18が複数形成されており、上記アタッチメント板6の吸引凹部18にマウント部材20が嵌合し、上記連通路19に連通する吸引パッド24により被加工材29をアタッチメント板6から所定距離を隔てた状態で吸引固定する。
【0037】
つぎに、第2の吸引固定部材として多孔質吸引板30を使用する例を説明する。
【0038】
図10および図11に示すように、上記アタッチメント板6の上に、多孔質吸引板30を積層状に載置し、上記吸引凹部18に連通する板面に多数開口した多数の通気路により、被加工材29を板面に密着させるよう吸引固定する。
【0039】
上記多孔質吸引板30は、この例では、アタッチメント板6と略同じ寸法形状に形成されている。そして、上記多孔質吸引板30は、多孔質材であるため、板面に開口した無数の通気路により、被加工材29を板面に密着させるよう吸引固定することができる。
【0040】
この場合、上記多孔質吸引板30の表面の被加工材29が載置されていない領域および側面は、カバー部材31によりカバーすることにより、これらの領域から空気が吸引されることによる吸引固定力の低下を防止する。
【0041】
この多孔質吸引板30上に、例えば板状の被加工材29を吸引固定して加工する場合、被加工材29の上面だけを加工しても良いし、丸鋸などで多孔質吸引板30の表層部に達するように被加工材29を加工してもよい。このように、多孔質吸引板30の表層部を同時に加工する場合、加工された多孔質吸引板30の表層部から空気が吸引されるため、被加工材29や工具の冷却効果が得られる。
【0042】
そして、この実施形態では、上記第1の吸引固定部材であるマウント部材20と、第2の吸引固定部材である多孔質吸引板30とを、被加工材29の形態に応じて適宜切り換えて使用するようになっている。
【0043】
したがって、例えば、被加工材29をアタッチメント板6から所定距離を隔てた状態で吸引固定することにより、例えば丸鋸等で端面を切断しても、アタッチメント板6を損傷させない加工が可能で、アタッチメント板6の繰り返し使用が確保される。また、アタッチメント板6と工具を接触させない状態での端面加工が可能になることから、例えば、端面を凸面状に加工したり、反対に凹溝を形成するように加工したりすることが容易に行え、端面加工のバラエティが大幅に拡がる。また、例えば、板面に開口した多数の通気路により被加工材29を板面に密着させるよう吸引固定することにより、薄板のような歪み易い被加工材29を歪ませることなく加工することができ、加工精度を確保できる。このように、被加工材29等の形態等に合わせて被加工材29の支持方法を切り換えて加工できるようになる。
【0044】
また、上記アタッチメント板6は、負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部18が多数形成され、上記吸引凹部18にマウント部材20が取り付けられることから、マウント部材20の位置決めが容易である。
【0045】
また、アタッチメント板6には、吸引凹部18が規則正しいピッチで並べて設けられ、マウント部材20を取り付けない吸引凹部18は蓋部材14を嵌合させるため、マウント部材20の位置決めがより容易になり、被加工材29を固定するために必要な吸引凹部18にはマウント部材20を取り付け、それ以外の吸引凹部18には蓋部材14を取り付けることで、必要なマウント部材20の吸引パッド24に対して負圧を与えられることから、比較的弱い吸引力でも確実に被加工材29を固定することが可能となるため、設備コストを節減することができる。
【0046】
また、吸引凹部18の中心に負圧空間4に連通する連通路19が設けられ、マウント部材20は、吸引凹部18に嵌合する取付盤23と、吸引パッド24が設けられたマウント部28とから構成され、マウント部28は取付盤23に対して偏心上に配置されているため、マウント部材20を、マウント部28が横に位置するように取り付けたり、手前に位置するように取り付けたりすることで吸引パッド24の位置調節が容易に行えるとともに、マウント部28の位置によらずに確実にマウント部材20の流路と連通路19とを連通させることができる。
【0047】
なお、上記多孔質吸引板30にかえて、合板に多数の吸引貫通孔を穿設した多孔吸引板を使用することもできる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記の各変形例を包含する趣旨である。
【0049】
上記実施形態では、吸引凹部18、マウント部材20の取付盤23ならびに蓋部材14を円形としたが、これに限定するものではなく、四角形等の多角形にすることもできる。また、マウント部材20のマウント部28は、直方体状に形成したが、ブロック状であれば他の形状を採用することも可能である。また、被加工材29の加工に使用する工具は、上述したものに限定するものではなく、ドリル、エンドミル等、各種の工具を使用することができる。
【0050】
上記実施形態では、吸引凹部18をX−Y方向に並ぶように配置した例を示したが、これに限定するものではなく、吸引凹部18を同心円状に並ぶように配置したり、放射状に並ぶように配置したりすることもできる。
【0051】
上記実施形態では、第2の吸引固定部材として多孔質吸引板30を使用した例を示したが、第2の吸引固定部材としては、アタッチメント板6とほぼ同じ形状大きさの板状部材で通気路が形成されたものであれば、多孔質部材でなくても使用することができる。例えば、合板にドリル等で多数の穴を穿設した板材を使用することも可能である。
【0052】
上記実施形態では、上記被加工材を加工する工具を駆動しながら上記加工テーブルに対して相対的に移動することにより上記加工テーブルに固定された被加工材を加工するための工具駆動手段とを備えた加工装置により易削性の被加工材を加工するようにしたが、このようないわゆるNC加工に限らず、手加工を行う際に上述したような被加工材の固定方法を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明が適用された易削性被加工材の加工装置を示す斜視図である。
【図2】工具駆動装置を示す正面図である。
【図3】本発明が適用された加工テーブルの分解斜視図である。
【図4】マウント部材と吸引凹部を示す斜視図である。
【図5】(A)は加工テーブルの断面図、(B)はマウント部材と吸引凹部を示す断面図である。
【図6】(A)は吸引凹部の平面図、(B)はマウント部材の底面図である。
【図7】マウント部材を吸引凹部に取り付けた状態を示す図であり、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図8】被加工材を吸着固定した状態を示す断面図である。
【図9】被加工材を加工する状態を示す断面図である。
【図10】多孔質吸引板を設備する状態を示す斜視図である。
【図11】被加工材を加工する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1:加工テーブル
2:工具駆動装置
4:負圧空間
5:負圧生成基台
6:アタッチメント板
7:基台
8:テーブルスライドレール
9:支持桟部
11:レール部材
12:リフト装置
13:工具搬送部材
14:蓋部材
15:吸引穴
16a〜16d:工具
17:把持部
18:吸引凹部
19:連通路
20:マウント部材
21:ブロア
23:取付盤
24:吸引パッド
25:パッド台
26:溝部
27:流路
28:マウント部
29:被加工材
30:多孔質吸引板
31:カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易削性の被加工材を加工する際に載置して固定するための加工テーブルであって、
負圧発生手段により負圧が与えられる負圧空間が上面に開放するよう形成された負圧生成基台と、
上記負圧生成基台上に上記負圧空間を覆うように載置され、上記負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部がほぼ板面の全体にわたって多数形成されたアタッチメント板とを備え、
上記アタッチメント板に対して吸引固定部材をさらに設備することにより被加工材を吸引固定するように構成されたことを特徴とする易削性被加工材の加工テーブル。
【請求項2】
上記アタッチメント板の吸引凹部に取り付けられるとともに、上記連通路に連通する吸引パッドにより被加工材をアタッチメント板から所定距離を隔てた状態で吸引固定する第1の吸引固定部材をさらに備えた請求項1記載の易削性被加工材の加工テーブル。
【請求項3】
上記アタッチメント板上に積層状に載置され、上記吸引凹部に連通する板面に開口した多数の通気路により、被加工材を板面に密着させるよう吸引固定する第2の吸引固定部材をさらに備えた請求項1または2記載の易削性被加工材の加工テーブル。
【請求項4】
上記第1の吸引固定部材と第2の吸引固定部材とを切り換え可能に構成されている請求項3記載の易削性被加工材の加工テーブル。
【請求項5】
易削性の被加工材を載置して固定するための加工テーブルに対して易削性の被加工材を固定する方法であって、
負圧発生手段により負圧が与えられる負圧空間が上面に開放するよう形成された負圧生成基台の上に、上記負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部がほぼ板面の全体にわたって多数形成されたアタッチメント板を上記負圧空間を覆うように載置し、
上記アタッチメント板に対して吸引固定部材をさらに設備して被加工材を吸引固定するようにしたことを特徴とする易削性被加工材の固定方法。
【請求項6】
上記アタッチメント板の吸引凹部に取り付けられるとともに、上記連通路に連通する吸引パッドにより被加工材をアタッチメント板から所定距離を隔てた状態で吸引固定する第1の吸引固定部材と、
上記アタッチメント板上に積層状に載置され、上記吸引凹部に連通する板面に開口した多数の通気路により、被加工材を板面に密着させるよう吸引固定する第2の吸引固定部材とを、
適宜切り換えて加工を行う請求項5記載の易削性被加工材の固定方法。
【請求項7】
易削性の被加工材を加工する際に載置して固定するための加工テーブルに用いるアタッチメント板であって、
負圧発生手段により負圧が与えられる負圧空間が上面に開放するよう形成された負圧生成基台と、
上記負圧生成基台上に上記負圧空間を覆うように載置され、上記負圧空間に連通する連通路を有する吸引凹部がほぼ板面の全体にわたって多数形成されたアタッチメント板とを備え、
上記アタッチメント板に対して吸引固定部材をさらに設備して被加工材を吸引固定するように構成された上記加工テーブルに用いられることを特徴とする易削性被加工材の加工テーブル用アタッチメント板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−87131(P2008−87131A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272713(P2006−272713)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(506335385)株式会社SNC (1)
【Fターム(参考)】