説明

映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料

【課題】処理安定であり、かつ露光時の温湿度変化に対して安定であり、かつ潜像が安定な映画用カラーポジ感光材料として好適なハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供する。
【解決手段】透過型支持体上に赤感性、緑感性及び青感性ハロゲン化銀乳剤層を有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該乳剤層の少なくとも1層が塩化銀含有率95モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有し、該乳剤が、[ReCl6]2-に例示される特定の金属錯体及び[IrCl5(H2O)]2-に例示される特定の金属錯体を各々少なくとも1種含有し、該感光材料中に下記に例示される特定の化合物を少なくとも1種含有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、処理安定であり、かつ露光時の温湿度変化に対して安定であり、かつ潜像が安定な映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀写真の応用である映画は、1秒間に24枚の緻密な静止画を順次に投影し動画像を得る方法であり、他の動画像を得る方法に対して圧倒的な高画質を有している。しかしながら最近の急速な電子技術及び情報処理技術の発達はテキサスインスツルメント社のDMDデバイスを用いたプロジェクターやヒューズJVC社のILAプロジェクターなどの、映画に迫る画質のより簡便な動画再生手段を提案できるまでに到った。したがって映画に対してもより一層の高画質化、取り扱いの簡便性、さらには現像処理の迅速化(時間短縮)が求められているのが現状である。
【0003】
映画用、その中でも特に映写の段階で用いられる感光材料(映画用カラーポジフィルム)は、映写機を通して直接ユーザーに鑑賞されるため高画質であること、また世界中の映画館で鑑賞されるため大量に生産する必要があり現像処理の迅速化、かつそれぞれが安定した均一な性能で仕上がること等が要求される。まず、現像処理の迅速化については、ハロゲン化銀写真感光材料の現像時間の短縮は従来から重要な課題として取り上げられ、現像速度の速いハロゲン化銀乳剤、カップリング活性の高いカプラーあるいは迅速現像が可能な処理剤などに関する研究が多く行われてきた。特に、塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤を用いることはカラー写真感光材料の迅速処理に極めて有効な手段である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
映画は映写時に拡大投影されることから、用いられる感光材料には細かい粒状性が求められる。粒状性向上については比較的小サイズのハロゲン化銀粒子の使用技術がこれまで開示されており(例えば、特許文献2〜4参照。)、平均粒子サイズを下げることは高画質化にとって重要な要因になる。
【0005】
一方、広いラチチュードを得る目的で感度の異なるハロゲン化銀粒子の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することが好ましく行われる。
分光増感された乳剤については、乳剤の感度はハロゲン化銀粒子の表面積に比例するため、一般的に高感度な乳剤は粒子サイズの大きいハロゲン化銀粒子を用い、低感度な乳剤は粒子サイズの小さいハロゲン化銀粒子を用いる。しかし、現在使用されている映画用カラーポジフィルムは、上記の粒状性の観点から比較的小サイズのハロゲン化銀粒子が用いられているため、溶解度の高い高塩化銀を用いて更に小サイズ化し、低感度な乳剤を作成することは、安定に均一な粒子を調製することが困難であり、処理によるばらつきが大きいことから好ましくない。金属錯体を用いて低感度化することも知られているが、露光時の温湿度変化に対する安定性および潜像安定性が不十分であった。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,840,878号明細書
【特許文献2】特開昭62−99751号公報
【特許文献3】特開平4−217242号公報
【特許文献4】特開平4−275544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、処理安定であり、かつ露光時の温湿度変化に対して安定であり、かつ潜像が安定な映画用カラーポジ感光材料として好適なハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)透過型支持体上に、赤感性、緑感性および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、塩化銀含有率が95モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有し、かつ該ハロゲン化銀乳剤が下記一般式(D1)および下記一般式(D2)で表される金属錯体を各々少なくとも1種含有し、かつ該ハロゲン化銀カラー写真感光材料中に下記一般式(FS)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D1)
[MD1D1nD1(6-n)m
(一般式(D1)中、MD1はCr、Mo、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、PdまたはPtを表し、XD1はハロゲンイオンを表す。LD1はXD1とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。ただし、一般式(D1)で表される金属錯体が、配位子としてCNイオンを有さないか、有しても1個である。)
一般式(D2)
[IrXD2nD2(6-n)m
(一般式(D2)中、XD2はハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、LD2はXD2とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(FS)中、A、Bは、各々独立に、フッ素原子又は水素原子を表す。a、bは、各々独立に、1〜6の整数を表す。c、dは、各々独立に、4〜8の整数を表す。xは、0又は1を表す。Mはカチオンを表す。)
【0011】
(2)前記一般式(D1)で表される金属錯体が、ハロゲン化銀粒子に銀1モルあたり1×10-10〜1×10-6モル含有されていることを特徴とする(1)に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(3)前記一般式(D1)で表される金属錯体が、下記一般式(D1A)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)〜(2)のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D1A)
[MD1AD1AnD1A(6-n)m
(一般式(D1A)中、MD1AはRe、Ru、OsまたはRhを表し、XD1Aはハロゲンイオンを表す。LD1AはMD1AがRe、RuまたはOsの場合、NOまたはNSを表し、MD1AがRhの場合、H2O、OHまたはOを表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【0012】
(4)前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2A)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D2A)
[IrXD2AnD2A(6-n)m
(一般式(D2A)中、XD2Aはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2AはXD2Aとは異なる任意の無機配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【0013】
(5)前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2B)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)〜(3)いずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D2B)
[IrXD2BnD2B(6-n)m
(一般式(D2B)中、XD2Bはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2Bは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Bは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Bが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【0014】
(6)前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2C)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D2C)
[IrXD2CnD2C(6-n)m
(一般式(D2C)中、XD2Cはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Cは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Cは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Cが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【0015】
(7)前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2D)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D2D)
[IrXD2DnD2D(6-n)m
(一般式(D2D)中、XD2Dはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Dは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも2つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Dは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Dが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【0016】
(8)前記ハロゲン化銀乳剤粒子の平均球相当径サイズが0.25μm以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、粒状性、処理安定に優れ、かつ温湿度変化に対して安定であり、かつ潜像が安定な映画用カラーポジ感光材料として好適に用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明で使用する下記一般式(D1)で表される金属錯体について説明する。なお、一般式(D1)で表される金属錯体は、感光材料の階調を硬調にするために用いられる錯体(硬調化錯体)である。
一般式(D1)
[MD1D1nD1(6-n)m
一般式(D1)中、MD1はCr、Mo、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、PdまたはPtを表し、XD1はハロゲンイオンを表す。LD1はXD1とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。ただし、一般式(D1)で表される金属錯体が、配位子としてCNイオンを有さないか、有しても1個である。
【0019】
一般式(D1)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(D1A)で表される金属錯体が好ましい。
一般式(D1A)
[MD1AD1AnD1A(6-n)m
一般式(D1A)中、MD1AはRe、Ru、OsまたはRhを表し、XD1Aはハロゲンイオンを表す。LD1AはMD1AがRe、RuまたはOsの場合、NOまたはNSを表し、MD1AがRhの場合、H2O、OHまたはOを表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。XD1Aは一般式(D1)のXD1と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0020】
以下に一般式(D1)で表される金属錯体の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[ReCl6]2-
[ReCl5(NO)]2-
[RuCl6]2-
[RuCl6]3-
[RuCl5(NO)]2-
[RuCl5(NS)]2-
[RuBr5(NS)]2-
[OsCl6]4-
[OsCl5(NO)]2-
[OsBr5(NS)]2-
[RhCl6]3-
[RhCl5(H2O)]2-
[RhCl4(H2O)2]-
[RhBr6]3-
[RhBr5(H2O)]2-
[RhBr4(H2O)2]-
[PdCl6]2-[PtCl6]2-
これらの中でも、特に[OsCl5(NO)]2-あるいは[RhBr6]3-が好ましい。
【0021】
本発明で好ましく使用される下記一般式(D2)で表される金属錯体について説明する。
一般式(D2)
[IrXD2nD2(6-n)m
一般式(D2)中、XD2はハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、LD2はXD2とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
上記において、擬ハロゲン(ハロゲノイド)イオンとは、ハロゲンイオンに似た性質を有するイオンのことであり、例えば、シアン化物イオン(CN-)、チオシアン酸イオン(SCN-)、セレノシアン酸イオン(SeCN-)、テルロシアン酸イオン(TeCN-)、アジドジチオ炭酸イオン(SCSN3-)、シアン酸イオン(OCN-)、雷酸イオン(ONC-)、アジ化物イオン(N3-)等が挙げられる。
D2として好ましくはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、イソシアン酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、または、アジ化物イオンであり、中でも塩化物イオン、および臭化物イオンであることが特に好ましい。LD2には特に制限はなく、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、電荷を持っていても無電荷であってもよいが、無電荷の無機化合物または有機化合物であることが好ましい。
【0022】
一般式(D2)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(D2A)で表される金属錯体が好ましい。
一般式(D2A)
[IrXD2AnD2A(6-n)m
一般式(D2A)中、XD2Aはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2AはXD2Aとは異なる任意の無機配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
D2Aは一般式(D2)のXD2と同義であり、好ましい範囲も同じである。LD2Aとして好ましくは水、OCN、アンモニア、ホスフィン、カルボニルであり、特に水であることが好ましい。
【0023】
一般式(D2)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(D2B)で表される金属錯体が更に好ましい。
一般式(D2B)
[IrXD2BnD2B(6-n)m
一般式(D2B)中、XD2Bはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2Bは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Bは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Bが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
D2Bは一般式(D2)のXD2と同義であり、好ましい範囲も同じである。LD2Bは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表すが、シアン化物イオンは含めない。LD2Bは複素環化合物が好ましい。より好ましくは5員環化合物であり、5員環化合物の中でも少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を5員環骨格の中に含有する化合物であることがさらに好ましい。
【0024】
一般式(D2B)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(D2C)で表される金属錯体が更に好ましい。
一般式(D2C)
[IrXD2CnD2C(6-n)m
一般式(D2C)中、XD2Cはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Cは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Cは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Cが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
D2Cは一般式(D2)のXD2と同義であり、好ましい範囲も同じである。LD2C中の環骨格中の炭素原子上の置換基としては、n−プロピル基より小さな体積を持つ置換基であることが好ましい。置換基としてメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、ヒドラジノ基、アジド基、ニトロ基、ニトロソ基、ヒドロキシアミノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、ハロゲン原子(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基)が好ましい。
【0025】
一般式(D2C)の金属錯体の中でも、下記一般式(D2D)で表される金属錯体が更に好ましい。
一般式(D2D)
[IrXD2DnD2D(6-n)m
一般式(D2D)中、XD2Dはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Dは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも2つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Dは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Dが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
D2Dは一般式(D2)のXD2と同義であり、好ましい範囲も同じである。LD2Dとして好ましくはチアジアゾールを骨格とする化合物であり、化合物中の炭素原子には水素以外の置換基が結合することが好ましい。置換基として好ましくはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシル基、メトキシカルボキシル基、アシル基、アセチル基、クロロホルミル基、メルカプト基、メチルチオ基、チオホルミル基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルファモイル基、メチルアミノ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシイミノ基、カルバモイル基、ニトロソ基、ニトロ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基またはアジド基であり、より好ましくは、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、クロロホルミル基、スルフィノ基、スルホ基、スルファモイル基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ヒドロキシイミノ基、ニトロソ基、ニトロ基、または、アジド基である。中でも塩素、臭素、クロロホルミル基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基が特に好ましい。nとして好ましくは4または5、mとして好ましくは2−または1−である。
【0026】
以下に一般式(D2)で表される金属錯体の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[IrCl5(H2O)]2-
[IrCl4(H2O)2]-
[IrCl5(H2O)]-
[IrCl4(H2O)2]0
[IrCl5(OH)]3-
[IrCl4(OH)2]2-
[IrCl5(OH)]2-
[IrCl4(OH)2]-
[IrCl5(O)]4-
[IrCl4(O)2]5-
[IrCl5(O)]3-
[IrCl4(O)2]4-
[IrBr5(H2O)]2-
[IrBr4(H2O)2]-
[IrBr5(H2O)]-
[IrBr4(H2O)2]0
[IrBr5(OH)]3-
[IrBr4(OH)2]2-
[IrBr5(OH)]2-
[IrBr4(OH)2]-
[IrBr5(O)]4-
[IrBr4(O)2]5-
[IrBr5(O)]3-
[IrBr4(O)2]4-
[IrCl5(OCN)]3-
[IrBr5(OCN)]3-
[IrCl5(チアゾール)]2-
[IrCl4(チアゾール)2]-
[IrCl3(チアゾール)3]0
[IrBr5(チアゾール)]2-
[IrBr4(チアゾール)2]-
[IrBr3(チアゾール)3]0
[IrCl5(5−メチルチアゾール)]2-
[IrCl4(5−メチルチアゾール)2]-
[IrBr5(5−メチルチアゾール)]2-
[IrBr4(5−メチルチアゾール)2]-
これらの中でも特に、[IrCl5(5−メチルチアゾール)]2-が好ましい。
【0027】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。
一般式(D1)で表される金属錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-11モルから1×10-6モル添加することが好ましく、1×10-10モルから1×10-6モルがより好ましく、1×10-10モルから1×10-7モル添加することが最も好ましい。一般式(D2)で表される金属錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モルから1×10-3モル添加することが好ましく、1×10-8モルから1×10-5モル添加することが最も好ましい。
【0028】
本発明において上記の金属錯体は、価数や配位子の変化を防ぐためにもpH4.0〜10.0かつ0〜25℃で溶解及び保温した溶液を添加することが好ましい。
【0029】
本発明において上記の金属錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめ金属錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0030】
これらの金属錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0031】
次に本発明の映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料の写真層等について記載する。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、透過型支持体を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であり、該支持体上に、実質的に感色性の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感光性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀カラー写真感光材料である。本発明はカラーポジフィルム、映画用ポジフィルムなど一般用、映画用カラー写真感光材料に適用することができる。特に映画用カラーポジ感光材料に適用するのが好ましい。
【0032】
本発明において、感光性ハロゲン化銀乳剤層及び非感光性親水性コロイド層の層数及び層順に特に制限はない。イエロー、シアン、マゼンタの各発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層は、一つの感光性ハロゲン化銀乳剤層からなっていても、感色性が同じで感度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層からなっていてもよい。
各発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層の発色性と感色性との間にも制限はなく、例えば、ある発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層が赤外域に感色性を有していてもかまわない。
【0033】
典型的な層順の例としては、支持体から順に染料の固体微粒子分散物および/または黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層、イエロー発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(混色防止層)、シアン発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(混色防止層)、マゼンタ発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(保護層)である。しかし、目的に応じて、上記設置順を変更しても、感光性ハロゲン化銀乳剤層又は非感光性親水性コロイド層の数を増減させてもかまわない。
【0034】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料中の鉄分(Fe)については、主にゼラチン、乳剤粒子中に故意にドープしたもの、染料などによって持ち込まれるが、本発明の感光材料におけるFe含有量としては、Fe量が2×10-5mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜2×10-5mol/m2)である事が必要であり、8×10-6mol/m2以下(好ましくは1×10-8から8×10-6mol/m2)が好ましく、3×10-6mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜3×10-6mol/m2)が最も好ましい。
【0035】
本発明において、親水性コロイドとしてはゼラチンが好ましく用いられる。必要に応じて他の親水性コロイドを任意の比率でゼラチンに代えて用いることもできる。これらの例としては、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他のポリマーのグラフト重合体、アルブミンあるいはカゼイン等のタンパク質、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及び硫酸セルロース等)、アルギン酸ナトリウム及びデンプン誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分アセタール体、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾールあるいはポリビニルピラゾール等の広範囲な合成ポリマー等を挙げることができる。
【0036】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子としては、塩化銀、臭化銀、(沃)塩臭化銀、沃臭化銀等がある。特に、本発明においては現像処理時間を速めるために、塩化銀含有率95モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、塩沃臭化銀を好ましく用いることができる。この乳剤中のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶を有するもの、球状、板状のような変則的な結晶系を有するもの、双晶面等の結晶欠陥を有するもの、あるいはその複合系でもよい。また、主平面が(111)面又は(100)面である平板粒子を用いると、発色現像の迅速化、処理混色の低減などの点で好ましい。主平面が(111)面又は(100)面である平板状高塩化銀乳剤粒子については、特開平6−138619号、米国特許第4,399,215号、同第5,061,617号、同第5,320,938号、同第5,264,337号、同第5,292,632号、同第5,314,798号、同第5,413,904号、国際公開WO94/22051号の各公報または明細書等に開示されている方法にて調製することができる。
【0037】
本発明において併用できるハロゲン化銀乳剤としては、任意のハロゲン組成のハロゲン化銀乳剤を用いてもよいが、迅速処理性の観点から、塩化銀含有率が95モル%以上の塩(沃)化銀、塩(沃)臭化銀が好ましく、さらには本発明に用いられる乳剤と同じく塩化銀含有率が95モル%以上のハロゲン化銀乳剤が好ましい。
【0038】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤を構成するハロゲン化銀粒子の球相当径は、0.25μm以下であることが好ましく、0.20μm以下であることが更に好ましく、0.18μm以下であることが最も好ましく、下限は特に制限はないが通常0.05μmであり、0.10μm以上が好ましい。本明細書において球相当径は、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径で表される。球相当径0.25μmの粒子は辺長約0.20μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.20μmの粒子は辺長約0.16μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.18μmの粒子は辺長約0.14μmの立方体粒子に相当する。
【0039】
本発明に用いられる乳剤は粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。本発明に用いられる全粒子の球相当径の変動係数は30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。球相当径の変動係数とは、個々の粒子の球相当径の標準偏差の、球相当径の平均に対する百分率で表される。
【0040】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子(即ち、特定のハロゲン化銀粒子)以外のハロゲン化銀粒子を含んでよい。しかしながら、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤は、全粒子の全投影面積の50%以上が本発明で定義されるハロゲン化銀粒子であることが必要で、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0041】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、当業界に知られる金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。金増感を施すには、塩化金酸もしくはその塩、チオシアン酸金類あるいはチオ硫酸金類等の化合物を用いることができる。これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは1×10-6〜1×10-4モルである。本発明においては、金増感を他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよく、本発明においてはより好ましい。
【0042】
本発明に使用できるハロゲン化銀写真乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)No.17643(1978年12月),22〜23頁、“I.乳剤製造(Emulsion preparation and types)”、及び同No.18716(1979年11月),648頁、同No.307105(1989年11月),863〜865頁、及びグラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chemie et Phisique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic Emulsion Chemistry,Focal Press,1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman,et al.,Making and Coating Photographic Emulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0043】
米国特許第3,574,628号、同第3,655,394号、及び英国特許第1,413,748号の各明細書に記載された単分散乳剤も好ましい。また、アスペクト比が約3以上であるような平板状粒子も本発明に使用できる。平板状粒子は、ガトフ著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff,Photographic Science and Engineering)、第14巻248〜257頁(1970年);米国特許第4,434,226号、同第4,414,310号、同第4,433,048号、同第4,439,520号及び英国特許第2,112,157号の各明細書に記載の方法により簡単に調製することができる。
【0044】
結晶構造は一様なものでも、内部と外部とが異質なハロゲン組成からなるものでもよく、層状構造をなしていてもよい。エピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていてもよく、例えばロダン銀、酸化鉛などのハロゲン化銀以外の化合物と接合されていてもよい。また種々の結晶形粒子の混合物を用いてもよい。
【0045】
上記の乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型でも表面と内部のいずれにも潜像を有する型のいずれでもよいが、ネガ型の乳剤であることが必要である。内部潜像型のうち、特開昭63−264740号公報に記載のコア/シェル型内部潜像型乳剤であってもよく、この調製方法は特開昭59−133542号公報に記載されている。この乳剤のシェルの厚みは現像処理等によって異なるが、3〜40nmが好ましく、5〜20nmが特に好ましい。
【0046】
ハロゲン化銀乳剤は、通常、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用する。このような工程で使用される添加剤はRDNo.17643、同No.18716及び同No.307105に記載されており、その該当箇所を後掲の表にまとめた。本発明の感光材料には、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ハロゲン組成、粒子の形状、感度の少なくとも1つの特性の異なる2種類以上の乳剤を、同一層中に混合して使用することができる。
【0047】
本発明の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料における塗布銀量としては、6.0g/m2以下が好ましく、4.5g/m2以下がより好ましく、2.0g/m2以下が最も好ましい。なお、塗布銀量は0.01g/m2以上、好ましくは0.02g/m2以上、さらに好ましくは0.5g/m2以上使用される。
【0048】
支持体上に設けられた感光性ハロゲン化銀乳剤層や非感光性親水性コロイド層(中間層や保護層など)からなる写真構成層中のいずれかの層、好ましくはハロゲン化銀乳剤層に、1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物をハロゲン化銀1モル当たり1.0×10-5〜5.0×10-2モル添加することが好ましく、さらには1.0×10-4〜1.0×10-2モル添加することが好ましい。この範囲で添加することによって、連続処理後の処理済みカラー写真表面への汚れをいっそう少なくすることができる。
【0049】
このような1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物としては、1位のアリール基が無置換又は置換フェニル基であるものが好ましく、この置換基の好ましい具体例としてはアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、−NHCOC511(n)など)、ウレイド基(例えば、メチルウレイドなど)、アルコキシ基(例えばメトキシなど)、カルボン酸基、アミノ基、スルファモイル基などであって、これらの基はフェニル基に複数個(2〜3個など)結合していてもよい。また、これの置換基の位置はメタ又はパラ位が好ましい。これらの具体例としては、1−(m−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールや1−(m−アセチルアミノフェニル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられる。
【0050】
本発明に使用または併用できる写真用添加剤は以下のリサーチ・ディスクロージャー誌(RD)に記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料には、種々の色素形成カプラーを使用することができるが、以下の色素形成カプラーが特に好ましい。
イエローカプラー:欧州特許EP502,424A号明細書の一般式(I)、(II)で表されるカプラー;欧州特許EP513,496A号明細書の一般式(1)、(2)で表されるカプラー(特に18頁のY−28);特開平5−307248号公報の請求項1の一般式(I)で表されるカプラー;米国特許第5,066,576号明細書のカラム1の45〜55行の一般式(I)で表されるカプラー;特開平4−274425号公報の段落0008の一般式(I)で表されるカプラー;欧州特許EP498,381A1号明細書の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35);欧州特許EP447,969A1号明細書の4頁の一般式(Y)で表されるカプラー(特にY−1(17頁),Y−54(41頁));米国特許第4,476,219号明細書のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表されるカプラー(特にII−17,19(カラム17),II−24(カラム19))。
【0053】
マゼンタカプラー:特開平3−39737号公報(L−57(11頁右下),L−68(12頁右下),L−77(13頁右下));欧州特許EP456,257号明細書のA−4−63(134頁),A−4−73,−75(139頁);欧州特許EP486,965号明細書のM−4,−6(26頁),M−7(27頁);特開平6−43611号の段落0024のM−45,特開平5−204106号公報の段落0036のM−1;特開平4−362631号公報の段落0237のM−22。
シアンカプラー:特開平4−204843号公報のCX−1,3,4,5,11,12,14,15(14〜16頁);特開平4−43345号公報のC−7,10(35頁),34,35(37頁),(I−1),(I−17)(42〜43頁);特開平6−67385号公報の請求項1の一般式(Ia)又は(Ib)で表されるカプラー。ポリマーカプラー:特開平2−44345号公報のP−1,P−5(11頁)。
【0054】
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、米国特許第4,366,237号、独国特許GB2,125570号、欧州特許EP96,873B号、独国特許DE3,234,533号の各明細書に記載のものが好ましい。発色色素の不要吸収を捕正するためのカプラーは、欧州特許EP456,257A1号明細書の5頁に記載の一般式(CI),(CII),(CIII),(CIV)で表されるイエローカラードシアンカプラー(特に84頁のYC−86)、該欧州特許明細書に記載のイエローカラードマゼンタカプラーExM−7(202頁、EX−1(249頁)、EX−7(251頁)、米国特許第4,833,069号明細書に記載のマゼンタカラードシアンカプラーCC−9(カラム8)、CC−13(カラム10)、US4,837,136の(2)(カラム8)、国際公開WO92/11575号明細書のクレーム1の一般式〔C−1〕で表される無色のマスキングカプラー(特に36〜45頁の例示化合物)が好ましい。
【0055】
現像主薬酸化体と反応して写真的に有用な化合物残基を放出する化合物(色素形成カプラーを含む)としては、以下のものが挙げられる。
現像抑制剤放出化合物:欧州特許EP378,236A1号明細書の11頁に記載の一般式(I),(II),(III),(IV)のいずれかで表される化合物(特にT−101(30頁),T−104(31頁),T−113(36頁),T−131(45頁),T−144(51頁),T−158(58頁)),欧州特許EP436,938A2号明細書の7頁に記載の一般式(I)で表される化合物(特にD−49(51頁))、特開平5−307248号公報の一般式(1)で表される化合物(特に段落0027の(23))、欧州特許EP440,195A2号明細書の5〜6頁に記載の一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される化合物(特に29頁のI−(1));
漂白促進剤放出化合物:欧州特許EP310,125A2号明細書の5頁の一般式(I)、(I’)で表される化合物(特に61頁の(60),(61))及び特開平6−59411号公報の請求項1の一般式(I)で表される化合物(特に段落0022の(7));
リガンド放出化合物:米国特許第4,555,478号明細書のクレーム1に記載のLIG−Xで表される化合物(特にカラム12の21〜41行目の化合物);
ロイコ色素放出化合物;米国特許第4,749,641号明細書のカラム3〜8の化合物1〜6;
蛍光色素放出化合物:米国特許第4,774,181号明細書のクレーム1のCOUP−DYEで表される化合物(特にカラム7〜10の化合物1〜11);
現像促進剤又はカブラセ剤放出化合物:米国特許第4,656,123号明細書のカラム3の一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物(特にカラム25の(I−22))及び欧州特許EP450,637A2号明細書の75頁36〜38行目のExZK−2;
離脱して初めて色素となる基を放出する化合物:米国特許第4,857,447号のクレーム1の一般式(I)で表わされる化合物(特にカラム25〜36のY−1〜Y−19)。
【0056】
色素形成カプラー以外の添加剤としては、以下のものが好ましい。
油溶性有機化合物の分散媒:特開昭62−215272号公報のP−3,5,16,19,25,30,42,49,54,55,66,81,85,86,93(140〜144頁);
油溶性有機化合物の含浸用ラテックス:米国特許第4,199,363号明細書に記載のラテックス;
現像主薬酸化体スカベンジャー:米国特許第4,978,606号明細書のカラム2の54〜62行の一般式(I)で表される化合物(特にI−(1),(2),(6),(12)(カラム4〜5))、米国特許第4,923,787号明細書のカラム2の5〜10行の式(特に化合物1(カラム3));
ステイン防止剤:欧州特許EP298321A号明細書の4頁30〜33行の一般式(I)〜(III)、特にI−47,72,III−1,27(24〜48頁);
褪色防止剤:欧州特許EP298321A号明細書のA−6,7,20,21,23,24,25,26,30,37,40,42,48,63,90,92,94,164(69〜118頁)、米国特許第5,122,444号明細書のカラム25〜38のII−1〜III−23,特にIII−10、欧州特許EP471347A号明細書の8〜12頁のI−1〜III−4,特にII−2、米国特許第5,139,931号明細書のカラム32〜40のA−1〜48,特にA−39,42;
発色増強剤又は混色防止剤の使用量を低減させる素材:欧州特許EP411324A号明細書の5〜24頁のI−1〜II−15,特にI−46;
ホルマリンスカベンジャー:欧州特許EP477932A号明細書の24〜29頁のSCV−1〜28,特にSCV−8;
【0057】
硬膜剤:特開平1−214845号公報の17頁のH−1,4,6,8,14、米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23の一般式(VII)〜(XII)で表される化合物(H−1〜54)、特開平2−214852号公報の8頁右下の式(6)で表される化合物(H−1〜76),特にH−14、米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物;
現像抑制剤プレカーサー:特開昭62−168139号公報のP−24,37,39(6〜7頁)、米国特許第5,019,492号明細書のクレーム1に記載の化合物,特にカラム7の28〜29;
防腐剤、防黴剤:米国特許第4,923,790号明細書のカラム3〜15のI−1〜III−43、特にII−1,9,10,18,III−25;
安定剤、かぶり防止剤:米国特許第4,923,793号明細書のカラム6〜16のI−1〜(14),特にI−1,60,(2),(13)、米国特許第4,952,483号明細書のカラム25〜32の化合物1〜65,特に36;
化学増感剤:トリフェニルホスフィンセレニド、特開平5−40324号公報の化合物50;
染料:特開平3−156450号公報の15〜18頁のa−1〜b−20,特にa−1、12,18,27,35,36,b−5,27〜29頁のV−1〜23,特にV−1、欧州特許EP445627A号明細書の33〜55頁のF−I−1〜F−II−43,特にF−I−11,F−II−8、欧州特許EP457153A号明細書の17〜28頁のIII−1〜36,特にIII−1,3、欧州特許EP319999A号明細書の6〜11頁の化合物1〜22,特に化合物1、欧州特許EP519306A号明細書の一般式(1)〜(3)で表される化合物D−1〜87(3〜28頁)、米国特許第4,268,622号明細書の一般式(I)で表される化合物1〜22(カラム3〜10)、米国特許第4,923,788号明細書の一般式(I)で表される化合物(1)〜(31)(カラム2〜9);
UV吸収剤:特開昭46−3335号公報の一般式(1)で表される化合物(18b)〜(18r),101〜427(6〜9頁)、欧州特許EP520938A号明細書の一般式(I)で表される化合物(3)〜(66)(10〜44頁)及び一般式(III)で表される化合物HBT−1〜HBT−10(14頁)、欧州特許EP521823号明細書の一般式(1)で表される化合物(1)〜(31)(カラム2〜9)。
【0058】
本発明には、非脱色性着色物が好ましく併用される。該非脱色性着色物は、現像処理時に浴出あるいは消色することがなく、処理前後でその膜中における光吸収特性が実用上変化しないものである。その種類については特に制限はなく、公知の物質を含む種々の染料、顔料を使用することができる。
【0059】
公知の染料については、例えば、オキソノール染料、アゾメチン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、アリーリデン染料、スチリル染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、ペリノン染料、メロシアニン染料、シアニン染料、インドアニリン染料、フタロシアニン染料、インジゴ染料、チオインジゴ染料等を挙げることができる。
【0060】
公知の顔料については、例えば、アゾ顔料(不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料)、フタロシアニン顔料、染付けレーキ顔料(酸性染料レーキ、塩基性染料レーキ)、縮合多環顔料(キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、ペリレン顔料、アントラキノン系顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料)、その他(ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、アルカリブルー)等の有機顔料を挙げることができる。
【0061】
具体的な化合物については「新版染料便覧」(有機合成化学協会編;丸善、1970)、「カラーインデックス」(The Society of Dyers and colourists)、「色材工学ハンドブック」(色材協会編;朝倉書店、1989)、「改訂新版顔料便覧」等に記載されている。好ましい染料及び顔料の具体例として、特開平11−95371号の明細書段落番号0191〜段落番号0250に記載のD−1〜D−35及びP−1〜P−30を好ましく挙げることができ、またこれらの感光材料中への添加方法も該特許の段落番号0206〜0215に詳細に記載され、これらの記載部分は本願の明細書の一部として取り込まれる。
【0062】
尚、本発明においては、上記のうち、顔料よりも染料のほうが好ましく、その使用量は1〜100mg/m2が一般的であるが、5〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは10〜50mg/m2である。
【0063】
以下に、本発明に用いられる一般式(FS)で表される化合物について詳細に説明する。
【0064】
【化2】

【0065】
一般式(FS)中、A、Bは、それぞれ独立に、フッ素原子または水素原子を表す。a、bは、それぞれ独立に、1〜6の整数を表す。c、dは、それぞれ独立に、4〜8の整数を表す。xは0または1を表す。Mはカチオンを表す。
【0066】
一般式(FS)中、A、Bは、各々独立に、フッ素原子又は水素原子を表す。a、bは
、各々独立に、1〜6の整数を表す。c、dは、各々独立に、4〜8の整数を表す。xは、0又は1を表す。Mはカチオンを表す。
【0067】
A、Bは、各々独立に、フッ素原子又は水素原子を表し、A、Bが同じであっても、異なっていてもよい。A、Bとして好ましくは、A、B共にフッ素原子又は水素原子であり、より好ましくは、A、B共にフッ素原子である。a、bは、各々独立に、1〜6の整数を表す。a、bは1〜6の整数であれば、互いに異なっていても、同じであってもよい。a、bとして好ましくは、1〜6の整数で、かつa=bであり、より好ましくは、2又は3の整数で、かつa=bであり、更に好ましくはa=b=2である。
【0068】
c、dは、各々独立に、4〜8の整数を表す。c、dは4〜8の整数であれば、互いに異なっていても、同じであってもよい。c、dとして好ましくは、4〜6の整数で、かつa=bであり、より好ましくは、4又は6の整数で、かつa=bであり、更に好ましくは、a=b=4である。
【0069】
xは0又は1を表し、どちらも同様に好ましい。
Mはカチオンを表し、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく適用される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0070】
前記一般式(FS)で表される化合物の中でも、より好ましくは下記一般式(FS−a)で表される化合物である。
【0071】
【化3】

【0072】
一般式(FS−a)中、a、b、c、d、M、及びxは、前記一般式(FS)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0073】
前記一般式(FS)の中でも、より好ましくは下記一般式(FS−b)である。
【0074】
【化4】

【0075】
一般式(FS−b)中、a1は2〜3の整数を表す。c1は4〜6の整数を表す。Mはカチオンを表す。xは0又は1を表す。
【0076】
a1としては2が好ましい。c1としては4が好ましい。xとしては0及び1がともに好ましい。
【0077】
本発明に用いられる好ましい界面活性剤の具体例を以下に例示するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0078】
【化5】

【0079】
【化6】

【0080】
【化7】

【0081】
【化8】

【0082】
本発明において、上記界面活性剤を写真感光材料の層に用いる場合、界面活性剤を含む水性塗布組成物は、本発明に用いられる界面活性剤と水のみからなっていてもよく、目的に応じてその他の成分を適宜含んでいてもよい。
【0083】
上記の水性塗布組成物において、本発明に用いられる界面活性剤は本発明に規定された組み合わせによる2種類を用いてもよいし、また、3種以上を混合して用いてもよい。また、本発明に用いられる界面活性剤とともに本発明に規定された構造の範囲内で他の界面活性剤を用いてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができ、高分子界面活性剤であってもよい。このうち、アニオン系もしくはノニオン系活性剤がより好ましい。併用可能な界面活性剤の例としては、例えば特開昭62−215272号公報(649〜706頁)やリサーチ・ディスクロージャー(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月)、同307105,875〜876頁(1989年11月)等を挙げることができる。
【0084】
上記水性塗布組成物中に含まれていてもよいものとして代表的なものはポリマー化合物である。ポリマー化合物は水性媒体可溶なポリマーであってもよく、ポリマーの水分散物(いわゆるポリマーラテックス)であってもよい。可溶性ポリマーとしては特に制限はないが、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、カゼイン、寒天、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができ、ポリマーラテックスとしては、種々のビニルモノマー(例えば、アクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、共役ジエン誘導体、N−ビニル化合物、O−ビニル化合物、ビニルニトリル、その他のビニル化合物(例えばエチレン、塩化ビニリデン))の単独もしくは共重合体、縮合系ポリマーの分散物(例えばポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド)を挙げることができる。この種のポリマー化合物の詳細例については、例えば特開昭62−215272号公報(707〜763頁)やリサーチ・ディスクロージャー(RD)Item17643,651頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月)、同307105,873〜874頁(1989年11月)等を挙げることができる。
【0085】
上記水性塗布組成物における媒体としては、水単独であってもよいし、水以外の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、アセトン等)と水との混合溶媒であってもよい。水性塗布媒体における水の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
【0086】
上記水性塗布組成物中には、用いる写真感光材料の層に応じて種々の化合物を含んでいてもよく、またそれらは媒体に溶解していてもよく、分散されていてもよい。それらの例としては、種々のカプラー、紫外線吸収剤、混色防止剤、スタチック防止剤、スカベンジャー、かぶり防止剤、硬膜剤、染料、防黴剤等を挙げることができる。また写真感光材料に用いて、効果的な帯電防止能と塗布の均一性を得るためには、最上層の親水性コロイド層に用いるのが好ましい。
【0087】
この場合、該層の塗布組成物中には、親水性コロイド(例えばゼラチン)や本発明に用いられるフッ素系界面活性剤以外に、他の界面活性剤やマット剤、スベリ剤、コロイダルシリカ、ゼラチン可塑剤等を含有することができる。
【0088】
前記一般式(FS)、(FS−a)または(FS−b)で表される界面活性剤の使用量に特に制約は無く、また界面活性剤の構造やその用途、水性組成物中に含まれる化合物の種類や量、媒体の構成等によって、その使用量を任意に変えることができる。例えば本発明に用いられる界面活性剤を、本発明の好ましい態様である写真感光材料の最上層の親水性コロイド(ゼラチン)層用塗布液として用いる場合、塗布溶液中の濃度(質量%)としては、0.003〜2.0%であることが好ましく、またゼラチン固形分に対して0.03〜10%であることが好ましい。
【0089】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層において、膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下がさらに好ましく、16μm以下が特に好ましい。なお、該膜厚の総和は、0.1μm以上であり、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。また、膜膨潤速度T1/2は、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。T1/2は、発色現像液で35℃、3分処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚としたとき、その膜厚が1/2に到達するまでの時間と定義する。膜厚は、25℃相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、T1/2は、エー・グリーン(A.Green)らのフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photogr.ScI.Eng),19巻,2,124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。
【0090】
また、膨潤率は、180〜280%が好ましく、200〜250%がより好ましい。ここで、膨潤率とは、本発明のハロゲン化銀写真感光材料を27℃の蒸留水に浸し、膨潤させたときの平衡膨潤量を表す尺度であり、膨潤率(単位:%)=膨潤時の全膜厚/乾燥時の全膜厚×100と定義される。前記膨潤率は、ゼラチン硬化剤の添加量を調節することにより上記範囲とすることができる。
【0091】
本発明の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料は、映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程で処理出来る。
従来の映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程(乾燥以外)
(1)発色現像浴
(2)停止浴
(3)水洗浴
(4)第一定着浴
(5)水洗浴
(6)漂白促進浴
(7)漂白浴
(8)水洗浴
(9)サウンド現像(塗り付け現像)
(10)水洗
(11)第二定着浴
(12)水洗浴
(13)安定浴
【0092】
本発明においては、上記処理工程のうち、発色現像時間(上記の(1)の工程)が2分30秒以下(下限は6秒以上が好ましく、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは20秒以上、最も好ましくは30秒以上)、より好ましくは2分以下(下限は2分30秒と同じ)である場合も好ましい結果が得られる。
【0093】
以下、支持体について説明する。
本発明においては、透明支持体が好ましく、プラスチックフィルム支持体がより好ましい。前記プラスチックフィルム支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンのフィルムが挙げられる。
【0094】
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に2軸延伸、熱固定されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、安定性、強靱さなどの点からも特に好ましい。
【0095】
前記支持体の厚みとしては、特に制限はないが、15〜500μmが一般的で、特に40〜200μmが取扱易さ、汎用性などの点から有利なため好ましく、85〜150μmが最も好ましい。透過型支持体とは、好ましくは可視光が90%以上透過するものを意味し、光の透過を実質的に妨げない量であれば染料化ケイ素、アルミナゾル、クロム塩、ジルコニウム塩などを含有していてもよい。
【0096】
上記プラスチックフィルム支持体の表面に、感光層を強固に接着させるために、一般に下記の表面処理が行なわれる。帯電防止層(バック層)が形成される側の表面も、一般に同様な表面処理が行なわれる。(1)薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸素処理、などの表面活性処理したのち直接に写真乳剤(感光層形成用塗布液)を塗布して接着力を得る方法と、(2)一旦これらの表面処理した後、下塗層を設けこの上に写真乳剤層を塗布する方法との二法がある。
【0097】
これらのうち(2)の方法がより有効であり、広く行われている。これらの表面処理は、いずれも、本来は疎水性であった支持体表面に、多少とも極性基を形成させること、表面の接着に対してマイナスの要因になる薄層を除去すること、表面の架橋密度を増加させ接着力を増加させるものと思われ、その結果として下塗層用溶液中に含有される成分の極性基との親和力が増加することや、接着表面の堅牢度が増加すること等により、下塗層と支持体表面との接着性が向上すると考えられる。
【0098】
上記プラスチックフィルム支持体上の感光層が設けられない側の表面には、導電性金属酸化物粒子を含有する非感光性層が設けられることが好ましい。上記非感光性層のバインダーとしては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく使用される。この非感光性層は硬膜されているのが好ましく、硬膜剤としては、アジリジン系、トリアジン系、ビニルスルホン系、アルデヒド系、シアノアクリレート系、ペプチド系、エポキシ系、メラミン系などが用いられるが、導電性金属酸化物粒子を強固に固定する観点からは、メラミン系化合物が特に好ましい。
【0099】
導電性金属酸化物粒子の材料としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaO、MoO3及びV25及びこれらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。
【0100】
金属酸化物としては、SnO2、ZnO、Al23、TiO2、In23、MgO、及びV25が好ましく、さらにSnO2、ZnO、In23、TiO2及びV25が好ましく、SnO2及びV25が特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiO2に対してNbあるいはTa、In23に対してSn、及びSnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素などの異種元素を0.01〜30モル%(好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、0.01モル%未満の場合は酸化物又は複合酸化物に充分な導電性を付与することができず、30モル%を超えると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため感光材料用としては適さない。従って、導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物又は複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。
【0101】
導電性金属酸化物粒子は、非感光性層全体に対し、体積比率が50%以下である必要があるが、好ましくは3〜30%である。塗設量としては特開平10−62905号に記載の条件に従うことが好ましい。体積比率が50%を超えると処理済カラー写真の表面に汚れが付着しやすく、また3%を下回ると帯電防止能が十分に機能しない。
【0102】
導電性金属酸化物粒子の粒子径は、光散乱をできるだけ小さくするために小さい程好ましいが、粒子と結合剤の屈折率の比をパラメーターとして決定されるべきものであり、ミー(Mie)の理論を用いて求めることができる。一般に、平均粒子径が0.001〜0.5μmであり、0.003〜0.2μmが好ましい。ここでいう、平均粒子径とは、導電性金属酸化物粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0103】
上記金属酸化物の微粒子を帯電防止層形成用塗布液へ添加する際は、そのまま添加して分散しても良いが、水等の溶媒(必要に応じて分散剤、バインダーを含む)に分散させた分散液の形で添加することが好ましい。
【0104】
非感光性層は、導電性金属酸化物粒子を分散、支持する結合剤として前記バインダーと硬膜剤との硬化物を含んでいるのが好ましい。本発明では、良好な作業環境の維持、及び大気汚染防止の観点から、バインダーも硬膜剤も、水溶性のものを使用するか、あるいはエマルジョン等の水分散状態で使用することが好ましい。また、バインダーは、硬膜剤との架橋反応が可能なように、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するのが好ましい。水酸基及びカルボキシル基が好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。バインダー中の水酸基又はカルボキシル基の含有量は、0.0001〜1当量/1kgが好ましく、特に0.001〜1当量/1kgが好ましい。
【0105】
以下に、前記バインダーとして好ましく用いられる樹脂について説明する。アクリル樹脂としては、アクリル酸;アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類;アクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリル酸;メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類;メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が挙げられる。
【0106】
上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、硬膜剤との架橋反応が可能なように、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーであるのが好ましい。
【0107】
上記ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。
【0108】
上記ビニル樹脂は、硬膜剤との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより得られるポリマーとする。
【0109】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基を硬膜剤との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0110】
上記ポリエステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記ポリエステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基を硬膜剤との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。勿論、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加しても良い。上記ポリマーの中で、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、特にアクリル樹脂が好ましい。
【0111】
硬膜剤として好ましく用いられるメラミン化合物としては、メラミン分子内に二個以上(好ましくは三個以上)のメチロール基及び/又はアルコキシメチル基を含有する化合物及びそれらの縮重合体であるメラミン樹脂あるいはメラミン・ユリア樹脂などをあげることができる。メラミンとホルマリンの初期縮合物の例としては、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどがあり、その具体的な市販品としては、例えばスミテックス・レジン(Sumitex Resin)M−3、同MW、同MK及び同MC(住友化学(株)製、いずれも商品名)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
上記縮重合体の例としては、ヘキサメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂、トリメチロールトリメトキシメチルメラミン樹脂等を挙げることができる。市販品としては、MA−1及びMA−204(住友ベークライト(株製、いずれも商品名)、ベッカミン(BECKAMINE)MA−S、ベッカミンAPM及びベッカミンJ−101(大日本インキ化学工業(株)製、いずれも商品名)、ユーロイド344(三井東圧化学(株)製、商品名)、大鹿レジンM31及び大鹿レジンPWP−8(大鹿振興(株)製、いずれも商品名)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
メラミン化合物としては、分子量を1分子内の官能基数で割った値で示される官能基当量が50以上300以下であることが好ましい。ここで官能とはメチロール基及び/又はアルコキシメチル基を示す。この値が300を超えると硬化密度が小さく高い強度が得られず、メラミン化合物の量を増やすと塗布性が低下する。硬化密度が小さいとスリ傷が発生しやすくなる。また硬化する程度が低いと導電性金属酸化物を保持する力も低下する。官能基当量が50未満では硬化密度は高くなるが透明性が損なわれ、減量しても良化しない。水性メラミン化合物の添加量は、上記ポリマーに対して0.1〜100質量%、好ましくは10〜90質量%である。
【0114】
帯電防止層には必要に応じて、マット剤、帯電調整剤、界面活性剤、滑り剤などを併用して使用することができる。マット剤としては、0.001〜10μm、より好ましくは0.2μm〜0.5μmの粒径をもつ酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物や、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の重合体あるいは共重合体等が挙げられる。これらマット剤の好ましい添加量は2mg/m2〜15mg/m2である。
【0115】
帯電調整剤としては、後述の界面活性剤、フッ素原子を含有するポリマー類、無機塩類、有機塩類等が挙げられる。特に、フッ素原子を含有する界面活性剤やポリマー類、テトラアルキルアンモニウムイオンを含有する塩類などが好ましく用いられる。
【0116】
界面活性剤としては任意のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。滑り剤としては、炭素数8〜22の高級アルコールのリン酸エステル若しくはそのアミノ塩;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びそのエステル類;及びシリコーン系化合物等を挙げられる。
【0117】
前記帯電防止層の厚みとしては、0.01〜1μmが好ましく、さらに0.01〜0.2μmが好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超えると、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。前記帯電防止層の上には、表面層を設けるのが好ましい。該表面層は、主として滑り性及び耐傷性を向上させるため、及び帯電防止層の導電性金属酸化物粒子の、脱離防止機能を補助するために設けられる。
【0118】
前記表面層の材料としては、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン及び4−メチル−1−ペンテン等の1−オレフィン系不飽和炭化水素の単独又は共重合体からなるワックス、樹脂及びゴム状物(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体及びプロピレン/1−ブテン共重合体)、(2)上記1−オレフィンの二種以上と共役又は非共役ジエンとのゴム状共重合体(例えば、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/1,5−ヘキサジエン共重合体及びイソブテン/イソプレン共重合体)、(3)1−オレフィンと共役又は非共役ジエンとの共重合体、(例えば、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/エチリデンノルボルネン共重合体)、(4)1−オレフィン、特にエチレンと酢酸ビニルとの共重合体及びその完全若しくは部分ケン化物、(5)1−オレフィンの単独又は共重合体に上記共役若しくは非共役ジエン又は酢酸ビニル等をグラフトさせたグラフト重合体及びその完全若しくは部分ケン化物、などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。上記化合物は、特公平5−41656号公報に記載されている。
【0119】
これらの中でも、ポリオレフィンであって、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩基を有するものが好ましい。通常水溶液あるいは水分散液として使用する。
【0120】
前記表面層には、メチル基置換度2.5以下の水溶性メチルセルロースを添加してもよく、その添加量は表面層を形成する全結合剤に対して0.1〜40質量%が好ましい。上記水溶性メチルセルロースについては、特開平1−210947号公報に記載されている。
【0121】
前記表面層は、帯電防止層上に一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストル−ジョンコート法などにより上記バインダー等を含む塗布液(水分散液又は水溶液)を塗布することにより形成することができる。
【0122】
前記表面層の厚みとしては、0.01〜1μmが好ましく、さらに0.01〜0.2μmが好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超えると、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。
【0123】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜のpHは、4.6〜6.4が好ましく、さらに好ましくは5.5〜6.5である。経時の長い試料において、被膜pHが6.5を超える場合、セーフライト照射によるシアン画像、マゼンタ画像の増感が大きく、逆に被膜pHが4.5を下回る場合、感光材料を露光してから現像するまでの時間変化に対して、イエロー画像濃度が大きく変化する。いずれの場合も実用上問題である。
【0124】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜pHとは、塗布液を支持体上に塗布することによって得られた全写真層のpHであり、塗布液のpHとは必ずしも一致しない。その被膜pHは、特開昭61−245153号に記載されているような以下の方法で測定できる。即ち、(1)ハロゲン化銀乳剤が塗布された側の感光材料表面に純水を0.05ml滴下する。次に、(2)3分間放置後、表面pH測定電極(東亜電波製GS−165F、商品名)にて被膜pHを測定する。被膜pHの調整は、必要に応じて酸(例えば硫酸、クエン酸)又はアルカリ(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を用いて行うことができる。
【実施例】
【0125】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0126】
(実施例1)
[支持体の準備]
乳剤塗設面側に下塗りを施し、乳剤塗設面の反対側に下記の導電性ポリマー(0.05g/m2)と酸化スズ微粒子(0.20g/m2)を含有するアクリル樹脂層を塗設したポリエチレンテレフタレートフィルム支持体(厚さ120μm)を準備した。
【0127】
【化9】

【0128】
[ハロゲン化銀乳剤の準備]
−青感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(BO−01)
(立方体、粒子サイズ0.65μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより、調製した。イリジウム含有量は4×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’);3.5×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);2.2×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);1.9×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0129】
中サイズ乳剤(BM−01)
(立方体、粒子サイズ0.52μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより、調製した。イリジウム含有量は6×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’);4.9×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);4.3×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);2.7×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0130】
小サイズ乳剤(BU−01)
(立方体、粒子サイズ0.31μm、粒子サイズ分布0.08、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
BM−01乳剤の調製において、粒子形成温度を下げたこと以外はBM−01と同様にした。
後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’):4.5×10-4モル/モル銀
青色増感色素(B’):4.1×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’):7.0×10-5モル/モル銀
【0131】
−赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(RO−01)
(立方体、粒子サイズ0.22μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=5/95)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより調製した。イリジウム含有率は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように添加し分光増感した。
赤感性増感色素(D’):4.4×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):0.4×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.2×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した後、後述する構造式で表されるCpd−71をハロゲン化銀1モル当たり、9.4×10-4モル添加した。
【0132】
中サイズ乳剤(RM−01)
(立方体、粒子サイズ0.17μm、粒子サイズ分布0.12、ハロゲン組成Br/Cl=5/95)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
赤感性増感色素(D’):7.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.4×10-5モル/モル銀
【0133】
小サイズ乳剤(RU−01)
(立方体、粒子サイズ0.12μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=5/95)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
赤感性増感色素(D’):8.9×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.2×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.5×10-5モル/モル銀
【0134】
−緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(GO−01)
(立方体、粒子サイズ0.19μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより調製した。K2[IrCl6]は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように添加し分光増感した。
緑感性増感色素(G’):2.6×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):0.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.2×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した。
【0135】
中サイズ乳剤(GM−01)
(立方体、粒子サイズ0.14μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
粒子形成温度を変更したこと以外はGO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
緑感性増感色素(G’):3.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.3×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.4×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
【0136】
小サイズ乳剤(GU−01)
(立方体、粒子サイズ0.094μm、粒子サイズ分布0.19、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
ハロゲン組成及び粒子形成温度を変更したこと以外はGO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
緑感性増感色素(G’):5.1×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.7×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.9×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
【0137】
小サイズ乳剤(GU−02)
(立方体、粒子サイズ0.094μm、粒子サイズ分布0.19、ハロゲン組成Br/Cl=3/93)
乳剤GU−01の調製において、ハロゲン組成及び添加される各種化合物の量をGU−01から変更する以外は同様にして乳剤GU−02を調製した。
【0138】
小サイズ乳剤(GU−03)
(立方体、粒子サイズ0.13μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
乳剤GU−01の調製において、K2[RhBr5(H2O)]を全銀量に対して5×10-8モル/モル銀添加し、粒子形成温度及び各種化合物の量をGU−01から変更する以外は同様にして乳剤GU−03を調製した。
【0139】
小サイズ乳剤(GU−04)
(立方体、粒子サイズ0.094μm、粒子サイズ分布0.19、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
乳剤GU−01の調製において、K2[IrCl6]をK2[IrCl5(H2O)]に変更し、各種化合物の量をGU−01から変更する以外は同様にして乳剤GU−04を調製した。
【0140】
小サイズ乳剤(GU−05)
(立方体、粒子サイズ0.13μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
乳剤GU−01の調製において、K2[RhBr5(H2O)]を全銀量に対して5×10-8モル/モル銀添加し、K2[IrCl6]ををK2[IrCl5(H2O)]に変更し、粒子形成温度及び各種化合物の量をGU−01から変更する以外は同様にして乳剤GU−05を調製した。
【0141】
小サイズ乳剤(GU−06)
(立方体、粒子サイズ0.13μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−02の調製において、K2[RhBr5(H2O)]を全銀量に対して5×10-8モル/モル銀添加し、粒子形成温度及び各種化合物の量をGU−02から変更する以外は同様にして乳剤GU−06を調製した。
【0142】
小サイズ乳剤(GU−07)
(立方体、粒子サイズ0.094μm、粒子サイズ分布0.19、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−02の調製において、K2[IrCl6]ををK2[IrCl5(H2O)]に変更し、各種化合物の量をGU−02から変更する以外は同様にして乳剤GU−07を調製した。
【0143】
小サイズ乳剤(GU−08)
(立方体、粒子サイズ0.13μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−02の調製において、K2[RhBr5(H2O)]を全銀量に対して5×10-8モル/モル銀添加し、K2[IrCl6]ををK2[IrCl5(H2O)]に変更し、粒子形成温度及び各種化合物の量をGU−02から変更する以外は同様にして乳剤GU−08を調製した。
【0144】
小サイズ乳剤(GU−09)
(立方体、粒子サイズ0.13μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−02の調製において、K2[RhBr5(H2O)]を全銀量に対して5×10-8モル/モル銀添加し、K2[IrCl6]をK2[IrCl5(5−メチルチアゾール)]に変更し、粒子形成温度及び各種化合物の量をGU−02から変更する以外は同様にして乳剤GU−09を調製した。
【0145】
【表2】

【0146】
【化10】

【0147】
【化11】

【0148】
【化12】

【0149】
【化13】

【0150】
[染料固体微粒子分散物の調製]
化合物(HD−1)のメタノールウェットケーキを化合物の正味量が240gになるように秤量し、分散助剤として下記化合物(Pm−1)を48g秤量し、水を加えて4000gとした。‘流通式サンドグラインダーミル(UVM−2)’(アイメックスK.K製)にジルコニアビーズ(0.5mm径)を1.7リットル充填し、吐出量0.5リットル/min、周速10m/sで2時間粉砕した。その後、分散物を化合物濃度が3質量%となるように希釈し、下記構造式で表される化合物(Pm−1)を染料に対し質量比で3%添加した(分散物Aと称する)。この分散物の平均粒子サイズは0.45μmであった。
さらに、同様な方法で化合物(HD−2)を5質量%含む分散物(分散物Bと称する)を得た。
【0151】
【化14】

【0152】
【化14】

【0153】
[試料101の作製]
支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー写真感光材料である試料101を作製した。
【0154】
−層構成−
以下に各層の組成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤塗布量は銀換算塗布量を表す。また、ゼラチン硬膜剤として、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩を用いた。
【0155】
[試料101の層構成]
支持体
・上記ポリエチレンテレフタレートフィルム
【0156】
第1層(ハレーション防止層(非感光性親水性コロイド層))
・ゼラチン 1.03
・上記分散物A(染料塗布量として) 0.10
・上記分散物B(染料塗布量として) 0.03
【0157】
第2層(青感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤BO−01、乳剤BM−01、および乳剤BU−01の3:1:6混合物(銀モル比)。 0.57
・ゼラチン 2.71
・イエローカプラー(ExY’) 1.19
・(Cpd−41) 0.0006
・(Cpd−42) 0.01
・(Cpd−43) 0.05
・(Cpd−44) 0.003
・(Cpd−45) 0.012
・(Cpd−46) 0.001
・(Cpd−54) 0.08
・(Cpd−65) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.26
【0158】
第3層(混色防止層)
・ゼラチン 0.59
・(Cpd−49) 0.02
・(Cpd−43) 0.05
・(Cpd−53) 0.005
・(Cpd−61) 0.02
・(Cpd−62) 0.03
・溶媒(Solv−21) 0.06
・溶媒(Solv−23) 0.04
・溶媒(Solv−24) 0.002
【0159】
第4層(赤感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤RO−01、乳剤RM−01および乳剤RU−01の2:2:6混合物(銀モル比) 0.40
・ゼラチン 2.79
・シアンカプラー(ExC’) 0.80
・(Cpd−47) 0.06
・(Cpd−48) 0.06
・(Cpd−50) 0.03
・(Cpd−53) 0.03
・(Cpd−57) 0.05
・(Cpd−58) 0.01
・(Cpd−60) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.53
・溶媒(Solv−22) 0.28
・溶媒(Solv−23) 0.04
【0160】
第5層(混色防止層)
・ゼラチン 0.56
・(Cpd−49) 0.02
・(Cpd−43) 0.05
・(Cpd−53) 0.005
・(Cpd−62) 0.03
・(Cpd−64) 0.002
・溶媒(Solv−21) 0.06
・溶媒(Solv−23) 0.04
・溶媒(Solv−24) 0.002
【0161】
第6層(緑感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤GU−01 0.54
・ゼラチン 1.66
・マゼンタカプラー(ExM’) 0.73
・(Cpd−49) 0.013
・(Cpd−51) 0.001
・溶媒(Solv−21) 0.15
【0162】
第7層(保護層)
・ゼラチン 0.97
・アクリル樹脂(平均粒径2μm) 0.002
・(Cpd−55) 0.005
・(Cpd−56) 0.08
・(Cpd−59) 0.03
ここで使用した化合物を以下に示す。
【0163】
【化15】

【0164】
【化16】

【0165】
【化17】

【0166】
【化18】

【0167】
【化19】

【0168】
【化20】

【0169】
【化21】

【0170】
【化22】

【0171】
【化23】

【0172】
以上のように試料101を作製した。
【0173】
<試料102〜109の作製>
次に、前記感光材料101の作製において第6層中の乳剤GU−01をそれぞれGU−02〜GU−09に変更したこと以外は全く同様の方法で、試料102〜109を作製した。
【0174】
<試料111〜119の作製>
更に、前記感光材料101〜109において第7層中の界面活性剤(Cpd−55)を(FS−1)に等質量置換したことのみ異なる感光材料の試料111〜119を作成した。
【0175】
<試験及び評価>
前記試料101〜119について、乳剤調製の安定性および露光時の温湿度変化に対する安定性および潜像安定性を評価するために下記に示す評価を実施した。
【0176】
−処理安定性評価−
乳剤GU−01〜GU−09をそれぞれ10回調製し、それぞれ試料101〜119を繰り返し作成した。感光計(富士写真フイルム(株)製FW型、光源の色温度3200K)を用い、最大濃度が出るようなグレーフィルターを介して1/100秒6万ルクスでセンシトメトリー用の階調露光を与え、イーストマンコダック社から公表されているECP−2プロセスに従って処理をした。処理済の試料を緑色フィルターで濃度測定した。感度表示には光学濃度がDmin+1.5だけ高くなるのに必要な露光量の逆数の対数値についての相対値をもって感度とした。マゼンタ感度について、△G=(10回平均マゼンタ感度)−(10回中の最小マゼンタ感度)をもって、処理安定性の尺度とした。このそれぞれの値が低いほど、乳剤調製が安定で処理バラツキが少ないことを示し、処理安定性が高いと評価した。
【0177】
−露光時の温湿度変化に対する安定性評価−
それぞれの試料について露光時の温湿度環境を以下のようにして下記に示す評価を行った。
(1)25℃相対湿度55% (2)25℃相対湿度80%
感光計(富士写真フイルム(株)製FW型、光源の色温度3200K)を用い、最大濃度が出るようなグレーフィルターを介して露光時間1/100秒、露光照度6万ルクスでセンシトメトリー用の階調露光を与えた。イーストマンコダック社から公表されているECP−2プロセスに従って処理を実施した。処理済の試料を緑色フィルターで濃度測定した。感度表示には光学濃度がDmin+1.5だけ高くなるのに必要な露光量の逆数の対数値についての相対値を持って感度とした。それぞれの試料についてマゼンタ感度を求め、
SG1=(1)のマゼンタ感度−(2)のマゼンタ感度
をもって、露光時の温湿度変化に対する安定性の尺度とした。
【0178】
−潜像安定性評価−
前記、試料101〜119について、試料作製後、それぞれの試料について以下の条件で保管後、下記に示す処理を実施した。
センシトメトリー用の階調露光を与え、露光後30分及び1日経過した後、イーストマンコダック社から公表されているECP−2プロセスに従って処理を実施した。処理済の試料を緑色フィルターで濃度測定した。感度表示には光学濃度がDmin+1.5だけ高くなるのに必要な露光量の逆数の対数値についての相対値を持って感度とした。それぞれの試料についてマゼンタ感度を求め、
SG2=30分後処理時のマゼンタ感度−1日後処理時のマゼンタ感度
をもって潜像安定性の尺度とした。
【0179】
前記処理安定性、露光時の温湿度変化に対する安定性、潜像安定性についての試験結果及びその評価を、下記表3に示す。
【0180】
【表3】

【0181】
表3より本発明の試料は粒子サイズの小さい試料101、102、104、107は乳剤調製の安定性が悪いことがわかる。試料116と118を比較して高塩化銀乳剤の方が本発明の効果が大きいことがわかる。試料108、109と試料118、119を比較して、本発明の界面活性剤を含む試料が露光時の温湿度変化に対して安定で、潜像安定性も高いことがわかる。
【0182】
(実施例2)
−緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(GO−02)
(立方体、粒子サイズ0.35μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GO−01の調製において、粒子形成温度及び各種化合物の量をGO−01から変更する以外は同様にして乳剤GO−02を調製した。
【0183】
中サイズ乳剤(GM−02)
(立方体、粒子サイズ0.26μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GM−01の調製において、粒子形成温度及び各種化合物の量をGM−01から変更する以外は同様にして乳剤GM−02を調製した。
【0184】
小サイズ乳剤(GU−10)
(立方体、粒子サイズ0.23μm、粒子サイズ分布0.10、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−02の調製において、粒子形成温度及び各種化合物の量をGU−02から変更する以外は同様にして乳剤GU−10を調製した。
【0185】
小サイズ乳剤(GU−11)
(立方体、粒子サイズ0.23μm、粒子サイズ分布0.10、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−08の調製において、粒子形成温度及び各種化合物の量をGU−08から変更する以外は同様にして乳剤GU−08を調製した。
【0186】
前記感光材料111の作製において第6層の構成を下記のように変更して試料201を作成した。
第6層(緑感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤GO−02、GM−02、GU−10の1:3:6混合物(銀モル比) 0.54
・ゼラチン 1.66
・マゼンタカプラー(ExM’) 0.73
・(Cpd−49) 0.013
・(Cpd−51) 0.001
・(Cpd−52) 0.02
・(Cpd−55) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.15
【0187】
<試料202〜204の作製>
次に、前記感光材料201の作製において第6層中の乳剤GU−10をGU−11に変更したこと以外は全く同様の方法で、試料202を作製した。
次に、前記感光材料201の作製において第6層中の乳剤GU−10をGU−08に変更したこと以外は全く同様の方法で、試料202を作製した。
次に、前記感光材料202の作製において第6層中の乳剤GO−02をGO−01及びGM−02をGM−01に変更したこと以外は全く同様の方法で、試料203を作製した。
【0188】
<試験及び評価>
実施例1と同様に、前記試料201〜203について、露光時の温湿度変化に対する安定性および潜像安定性の評価を実施した。
【0189】
−粒状性評価−
感光計(富士写真フイルム(株)製FW型、光源の色温度3200K)を用い、それぞれの試料で濃度Dmin+1.0になるように緑色のフィルターを介して1/100秒露光を与え、イーストマンコダック社から公表されているECP−2プロセスに従って処理をした。緑感層の粒状性を評価するために、48μmφのアパーチャーを用いて緑色フィルターでRMS粒状度を測定した。濃度Dmin+1.0のRMS値×1000をRMS粒状度と定義し、試料201のRMS粒状度の相対値をもって評価した。(Dminとは最低画像濃度を表す)この値が小さいほど粒状性がよいことを表す。なお、表中の平均粒子サイズは第6層の全ての混合した乳剤の平均粒子サイズである。
【0190】
【表4】

【0191】
表4より本発明の試料は露光時の温湿度変化に対して安定で、潜像安定性も高いことがわかる。また試料202と試料203、204を比較して平均粒子サイズが0.25μm以下である方が露光時の温湿度変化に対して安定で、潜像安定性も高く、さらに粒状性もよく好ましいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型支持体上に、赤感性、緑感性および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、塩化銀含有率が95モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有し、かつ該ハロゲン化銀乳剤が下記一般式(D1)および下記一般式(D2)で表される金属錯体を各々少なくとも1種含有し、かつ該ハロゲン化銀カラー写真感光材料中に下記一般式(FS)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D1)
[MD1D1nD1(6-n)m
(一般式(D1)中、MD1はCr、Mo、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、PdまたはPtを表し、XD1はハロゲンイオンを表す。LD1はXD1とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。ただし、一般式(D1)で表される金属錯体が、配位子としてCNイオンを有さないか、有しても1個である。)
一般式(D2)
[IrXD2nD2(6-n)m
(一般式(D2)中、XD2はハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、LD2はXD2とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【化1】

(一般式(FS)中、A、Bは、各々独立に、フッ素原子又は水素原子を表す。a、bは、各々独立に、1〜6の整数を表す。c、dは、各々独立に、4〜8の整数を表す。xは、0又は1を表す。Mはカチオンを表す。)
【請求項2】
前記一般式(D1)で表される金属錯体が、ハロゲン化銀粒子に銀1モルあたり1×10-10〜1×10-6モル含有されていることを特徴とする請求項1に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項3】
前記一般式(D1)で表される金属錯体が、下記一般式(D1A)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D1A)
[MD1AD1AnD1A(6-n)m
(一般式(D1A)中、MD1AはRe、Ru、OsまたはRhを表し、XD1Aはハロゲンイオンを表す。LD1AはMD1AがRe、RuまたはOsの場合、NOまたはNSを表し、MD1AがRhの場合、H2O、OHまたはOを表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項4】
前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2A)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D2A)
[IrXD2AnD2A(6-n)m
(一般式(D2A)中、XD2Aはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2AはXD2Aとは異なる任意の無機配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項5】
前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2B)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D2B)
[IrXD2BnD2B(6-n)m
(一般式(D2B)中、XD2Bはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2Bは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Bは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Bが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項6】
前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2C)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D2C)
[IrXD2CnD2C(6-n)m
(一般式(D2C)中、XD2Cはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Cは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Cは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Cが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項7】
前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2D)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(D2D)
[IrXD2DnD2D(6-n)m
(一般式(D2D)中、XD2Dはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Dは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも2つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Dは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Dが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項8】
前記ハロゲン化銀乳剤粒子の平均球相当径サイズが0.25μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【公開番号】特開2007−264036(P2007−264036A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85263(P2006−85263)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】