説明

時計ケースの装飾部材の固定構造

【目的】 加工、及び結合作業が容易で、かつ装飾性豊かな装飾部材の固定構造を提供すること。
【構成】 上胴2に設けられた段部2aと下胴3の上面部とで装飾部材4の基部4aが挟み込まれていて、基部4aは段部2aに溶接固定されている。上胴2の上斜面2cと装飾部材4の裏面とには若干の隙間Mを設ける。
【効果】 基部4aを段部2aに溶接固定材すれば良いので、加工、及び結合作業が容易である。また、隙間Mのため、上胴2と装飾部材4が、別部材であることをことを強調できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は時計ケースの装飾部材の固定構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、時計ケ−スの飾り模様は、プレス加工に依る一体成形で形状出しするものが殆どである。しかし、飾り模様の稜線をより鮮明に形状出しをするため、飾り模様を時計ケ−スと分離して別体とした装飾部材を、時計ケ−スと結合しているものも、市場に出回っている。その結合方法としては、接着あるいはロー付け等が一般的であるが、接合の強度を鑑みれば、ロー付けの方が好ましい。
【0003】図4は、時計ケ−スと装飾部材が、ロー付けされた構造の側面断面図である。装飾部材22には、取り付け用足22aが形成されており、一方、時計ケ−ス21には、固定用穴21aが時計ケ−ス21の内側面まで貫通して穿設されている。そして、装飾部材22の取り付け用足22aを、時計ケ−ス21の固定用穴21aに挿入し、取り付け用足22aの端部と固定用穴21aを、時計ケ−ス21の内側面近傍においてロー付けし、結合固定させるものである。23は、ロー付けを行った箇所を示したロー付け部である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述の固定構造では、時計ケ−スに固定用穴を貫通して穿設しなければならない。故に、時計ケ−スの厚みが増すほど、固定用穴の穿設は困難な作業となる。また、前述の固定構造では、時計ケ−スの内側面近傍において、ロー付けを行なわなければならない。故に、時計ケ−スの内径が小さくなるほど、ロー付け作業はやりにくいものとなる。さらに、時計ケ−スの内側面に、内方に突出するようなロー材溜りが発生すると、そのロー材溜りの突出が邪魔をして、時計ケ−ス内部にモジュ−ルや支持枠が納まらなくなるという問題を生じた。
【0005】本発明の目的は、上記の問題を解決し、加工、及び結合作業が容易で、その作業性が良く、かつロー材溜り等が発生しても、時計の組立や機能に弊害を及ぼさない装飾部材の固定構造を提供しようとするものである。同時に、本発明の装飾部材の固定構造は、従来に無い立体感のある装飾性を提供することをも目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の構成は、時計ケースの下胴と上胴と装飾部材とより構成されており、前記下胴と上胴の相対する面で少なくとも1つの面に段部を有しており、一方、前記装飾部材は、前記段部に配設される基部と該基部連結部を介して少なくとも1つの装飾部をそれぞれ有しており、前記段部に前記基部を配設固定したことを特徴とする。
【0007】また、前記装飾部材は、装飾部の一部が前記時計ケースの表面に配設されていることが効果的である。
【0008】
【実施例】以下、図面により本発明の実施例を詳述する。図1は、本発明の装飾部材の固定構造を示す時計ケ−スの側面断面図、図2は、本発明の装飾部材の固定構造を示す時計ケ−スの部分斜視図、図3は、本発明の装飾部材の固定構造を示す上胴の裏面図である。
【0009】時計ケ−ス1は、上胴2と下胴3とより成り、該上胴2と下胴3はパッキング5を介して圧入固定されている。このとき、組み合わされた前記上胴2と下胴3における相対する面を、各々図示する如く下面部2a、上面部3aとする。前記上胴2の下面部2aには、前記上胴2の外縁において開口した凹部である段部2bが、設けられている。
【0010】一方、装飾部材4は、基部4aと装飾部4bとから構成されている。前記基部4aは、薄板状の切片であり、前記段部2bに配設固定される。前記基部4aの材厚は、前記段部2bの段深さより若干薄く形成されており、その結果として、前記基部4aの下面と、前記上胴2の下面部2aとの間には、段差、すなわち隙間Lが形成されている。また、前記基部3aにおける前記段部2bに配設固定される部分は、前記段部2bの形状と相似形状で、若干小さく形成されている。そして、前記基部4aにおける前記上胴2の外縁より突出した部分が、連結部4cとなり、該連結部4cに、略U字型の前記装飾部4bが連結固定されるわけである。
【0011】前記時計ケ−ス1を得るは、まず前記装飾部材4の基部4aを、前記上胴2の段部2bに配設固定し、次に前記上胴2を前記下胴3に圧入固定させる。すると、前記基部4aは、前記上胴2と前記下胴3の間に、挟まれる如く位置する。
【0012】さて、前記装飾部材4の基部4aと前記上胴2の段部2bとは、接着、ロ−付け、あるいは溶接等の方法によって結合されるが、この結合作業は、例えば、前記上胴2を裏返して水平に載置して行えば良く、前述した従来法での時計ケ−ス内部の内側面における作業に比べ、開放された平面上で行える作業であるため、極めて容易にできるものである。加えて、前記上胴2が、いかに小さくなろうとも、従来法の様に作業性が悪くなることも無く、効率良く作業できる。さらに、従来法に必須であった固定用穴を貫通させるのに比べ、前記段部2bの凹設は簡単であるため、加工も容易である。
【0013】また、前記基部4aと前記段部2bとを、接着、あるいはロ−付けにより結合した際に、接着剤溜まりやロ−材溜まりの突出が生じる場合が考えられる。しかしながら、前記基部4aの下面と下面部2aとの間には前記隙間Lが有るため、該隙間L内に接着剤溜まりやロ−材溜まりの突出が生じるのみであり、組立上、機能上の弊害は無い。例えば、前記上胴2と下胴3の圧入固定の組み込み時、接着剤溜まりやロ−材溜まりの突出が邪魔をして、前記下面部2aと前記上面部3aが接合しないという様な弊害を、巧みに回避できるわけである。
【0014】図3に示すところは、前記段部2aと前記基部4aとを、レーザー溶接で結合固定した図であり、図中6は、レーザー溶接によって溶接された箇所であるレーザー溶接部である。すでに述べた様に、前記上胴2と前記装飾部材4の結合には、接着やロー付け等も可能であるが、強度的に信頼性のあること、及び作業性の良さを考えるとレーザー溶接の方が有利である。すなわち、レーザー溶接を使用すれば、固定力が強く、接着やロー付けとは異なり作業ミスをした場合でも他の部分にさほど大きな影響は無く、仕上がり状態も他と比較しても非常に綺麗なため作業性も向上する。
【0015】前記連結部4cと前記装飾部4bとは、前記時計ケ−ス1のデザインに合わせて、図示した以外にも、種々様々な形状に形成されるものである。言うまでもないが、前記連結部4cと前記装飾部4bの表面仕上げ、メッキについても、種々様々に変えることができる。また、前記基部4aを同一とし、前記装飾部4bのみを異なる装飾部に互換させて連結固定すれば、前記時計ケ−ス1のデザインに合わせて、様々な装飾性を安価に施すことができ、さらに効果的である。なお、前記連結部4cには、前記装飾部4bを複数連結固定しても良いし、前記上胴2に複数の前記段部2bを凹設して、その各々に前記装飾部材4を配設固定しても良い。さらに、前記段部2bと同様の凹部を、前記下胴3の上面部3aに凹設し、該凹部に、前記装飾部材4の基部4aを配設固定することもできるものである。
【0016】ところで、図1と図2に示す様に、前記装飾部4bの先端は、前記上胴2の上斜面部2cに沿って屈曲し、前記上斜面部2cの上面まではり出されている。この様に、前記装飾部4bの一部を、前記時計ケ−ス1の表面に配設することにより、前記時計ケ−ス1に、従来に無い装飾性と面白みを付与することができる。また、前記装飾部4bと前記時計ケ−ス1の表面とが接するように配設することも可能であるが、前記装飾部4bと前記上斜面部2cとの間に、若干の隙間Mを設け、両者を接することなく配置させれば、前記装飾部4bと前記時計ケ−ス1とが、一体ではなく別部材であること強調できると共に、前記装飾部4bが、前記時計ケ−ス1の表面から立体的に浮き上がって見えるため、前記時計ケ−ス1にさらに豊かな装飾性を施すことができて特に好ましい。
【0017】
【発明の効果】上記のごとく、本発明によれば、装飾部材を時計ケ−スに結合させるのに、前記時計ケースの下胴と上胴の相対する、少なくとも1つの面に段部を形成すれば良く、加工が極めて容易である。また、装飾部材の基部を、前記段部に結合させる作業も、例えば、前記上胴を裏返して水平に載置して行えば良いので、容易で、かつ作業性が良い。さらに、接着剤溜りやロー材溜り等が発生しても、時計の組立や機能に弊害を及ぼさない。
【0018】さらに、前記装飾部材の装飾部の一部を、前記時計ケースの表面に配設したので、前記時計ケースに、従来には無い装飾性と面白みを付与することができる。加えて、前記装飾部と前記時計ケースの表面との間に、若干の隙間を設けて配置させたので、前記装飾部が、前記時計ケ−スの表面から立体的に浮き上がって見えるため、さらに豊かな装飾性を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装飾部材の固定構造を示す時計ケ−スの側面断面図である。
【図2】本発明の装飾部材の固定構造を示す時計ケ−スの部分斜視図である。
【図3】本発明の装飾部材の固定構造を示す上胴の裏面図である。
【図4】従来例で、時計ケ−スと装飾部材が、ロー付けされた構造の側面断面図である。
【符号の説明】
1 時計ケ−ス
2 上胴
2a 下面部
2b 段部
2c 上斜面部
3 下胴
3a 上面部
4 装飾部材
4a 基部
4b 装飾部
4c 連結部
5 パッキング
6 レーザー溶接部
L 隙間
M 隙間
21 時計ケ−ス
21a 固定用穴
22 装飾部材
22a 取り付け用足
23 ロー付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 時計ケースの下胴と上胴と装飾部材とより構成されており、前記下胴と上胴の相対する面で少なくとも1つの面に段部を有しており、一方、前記装飾部材は、前記段部に配設される基部と該基部連結部を介して少なくとも1つの装飾部をそれぞれ有しており、前記段部に前記基部を配設固定したことを特徴とする時計ケースの装飾部材の固定構造。
【請求項2】 前記装飾部材は、装飾部の一部が前記時計ケースの表面に配設されていることを特徴とする時計ケースの装飾部材の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−280957
【公開日】平成7年(1995)10月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−65967
【出願日】平成6年(1994)4月4日
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)