説明

普通型コンバイン

【課題】普通型コンバインにおいて、脱穀装置の扱室前方に配設される脱穀部前カバーを容易に製作できるようにして生産性を向上させる。
【解決手段】脱穀部前カバー26が前側の横側部のカバー25と、これと略90度で屈曲する上部及び前部に位置するカバーとで形成されていても、脱穀部前カバー26を樹脂で形成してあるのでカバーが板金で形成されている場合のように、板金加工に手間取ることなく、成形することができる。又、脱穀部前カバー26を樹脂で形成することにより、脱穀部前カバ26ーを、扱室の入口やフィーダの形状、扱胴の形状に合わせた任意の形状を設定することが容易であり、脱穀部前カバー26を所望の形状に容易に形成することができる。更に、脱穀部前カバーの側部は、背の高い作物が当たる位置であるので、作物が脱粒し難く円滑に後方に流れ易い形状に設定することも容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り取った作物全体を脱穀処理する普通型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、普通型コンバインとして、特許文献1に示されているように、走行機体の前方に作物を刈り取る刈取部20を備え、前記刈取部20の後方に刈り取り搬送された作物を扱室31にて脱穀処理する脱穀部30と脱穀部30の下方に位置する脱穀された処理物を選別する選別部40とからなる脱穀装置(脱穀機4)と、脱穀処理された作物を回収する作物回収部(穀粒袋詰め部10)とを備えている普通型コンバインにおいて、前記扱室31の前壁より前方の扱胴32の駆動系を配設してある領域を覆う脱穀部前カバーを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−34016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、脱穀部前カバーの材質については記載されていないが、従来は脱穀部前カバーは板金で形成されていた。板金製の場合、脱穀部前カバーは、扱室の入口やフィーダの形状に合わせて、形取りをして板金加工しなければならないので、加工に手間が掛かる。
【0005】
本発明の目的は、脱穀部前カバーを容易に作製できるようにして生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、走行機体の前方に作物を刈り取る刈取部を備え、前記刈取部の後方に刈り取り搬送された作物を扱室にて脱穀処理する脱穀部と脱穀部の下方に位置する脱穀された処理物を選別する選別部とからなる脱穀装置と、脱穀処理された作物を回収する作物回収部とを備えている普通型コンバインにおいて、前記扱室の前壁より前方の扱胴の駆動系を配設してある領域を覆う樹脂製の脱穀部前カバーを備えてある。
【0007】
〔第1発明の作用〕
第1発明によれば、脱穀部前カバーが前側の横側部のカバーと、これと略90度で屈曲する上部及び前部に位置するカバーとで形成されていても、脱穀部前カバーを樹脂で形成してあるので、例えば、カバーが板金で形成されている場合のように、板金加工に手間取ることなく、成形することができる。又、脱穀部前カバーを樹脂で形成することにより、脱穀部前カバーを、扱室の入口やフィーダの形状、扱胴の形状に合わせた任意の形状を設定することが容易であり、脱穀部前カバーを所望の形状に容易に形成することができる。更に、脱穀部前カバーの側部は、背の高い作物が当たる位置であるので、作物が脱粒し難く円滑に後方に流れ易い形状に設定することも容易である。
【0008】
〔第1発明の効果〕
第1発明によれば、脱穀部前カバーを樹脂で形成してあるので、板金加工が不要で、扱室の入口やフィーダの形状、扱胴の形状に合わせた任意の形状を設定することができるとともに、脱穀部前側の横側部のカバーに背の高い作物が当たっても脱粒し難いような外面形状にも容易に設定することができる。
【0009】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記脱穀部前カバーを、前記脱穀部の前側の横側部を覆う脱穀部前横側部カバーと、前記扱室の前壁よりも前方の扱胴の駆動系を配設してある領域を前方から覆う脱穀部前側カバーとで構成してある。
【0010】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、脱穀部前カバーを、前側の横側部を覆う脱穀部前横側部カバーと、扱室の前壁よりも前方を覆う脱穀部前側カバーを備えているので、上部と前部と側部の三面を一体に成形するのではなく、側部のカバーと上部を含めた前カバーといったように、主要部材を一面乃至二面に形成すればよいから、成形品が大型化せず、しかも成形が容易に行える。
【0011】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明または第2発明の構成において、前記選別部の左右方向の横外壁の外側に配設された駆動系を覆う樹脂製の選別部横側部カバーを備えてある。
【0012】
〔第3発明の作用効果〕
第3発明によれば、選別部横側部カバーを樹脂で形成してあるので、カバーが板金で形成されている場合のように、加工に手間取ることはない。又、選別部横側部カバーを樹脂で形成したことにより、選別部横側部カバーを、任意の形状を設定することが容易であり、選別部横側部カバーを所望の形状に容易に形成することができる。更に、選別部横側部カバーは、作物が当たりやすい低い位置にあるので、作物がカバーの角に引っ掛かったりしないように円滑に後方に流れ易い形状に設定することも容易である。
【0013】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第3発明の構成において、前記選別部横側部カバーを、選別部前寄り側部カバーと選別部後寄り側部カバーとで構成してある。
【0014】
〔第4発明の作用効果〕
第4発明によれば、選別部横側部カバーを、選別部前寄り側部カバーと選別部後寄り側部カバーとの二つのカバーで形成してあるので、選別部横側部カバーを一つのカバーで形成するときよりも樹脂の肉厚を薄くしても変形し難くすることができるので、より軽量で扱い易いカバーとすることができる。
【0015】
〔第5発明の構成〕
第5発明は、第1発明〜第4発明のいずれか一つの発明の構成において、前記脱穀部の左右方向の横外壁の外側に板金製のカバーを固設し、前記板金製のカバーと一体に前記脱穀部の横外壁を縦軸心周りに開閉自在に構成してある。
【0016】
〔第5発明の作用効果〕
第5発明によれば、脱穀部の横外壁を、カバーを取り外すことなく、カバーと一体に脱穀部の横外壁を開閉することができるので、保守点検を迅速にできる。
横外壁に板金製のカバーを固設して、両者を一体に構成することで、脱穀部の横外壁の剛性を高めることができるので、横外壁による開口を大きなものとすることができる。
脱穀部の横外壁は処理物が当たり、負荷が掛かりやすいが、脱穀部の横外壁の外側に設けるカバーを板金製とすることで、脱穀部の横外壁及びカバーを樹脂よりも強度の高いものとしやすく変形し難いものとすることができる。
【0017】
〔第6発明の構成〕
第6発明は、第1発明〜第5発明のいずれか一つの発明の構成において、前記脱穀部の上側に板金製の天板を設け、前記天板の下側の扱室の天井に、前記扱胴の回転によって扱胴回転方向に送られる脱穀処理物を扱胴軸心の後方に向かう方向に案内する送塵弁を設け、前記送塵弁を取り付けた天板を前後軸心周りに開閉及び固定自在に構成してある。
【0018】
〔第6発明の作用効果〕
第6発明によれば、天板を開くことによって、扱胴や送塵弁を点検することができる。天板を板金で形成してあるので、脱穀処理に伴う脱穀負荷で天板に相当の衝撃が連続的に加わっても耐久性がよく、変形もし難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】普通型コンバインの全体左側面図である。
【図2】普通型コンバインの全体平面図である。
【図3】普通型コンバインの全体右側面図である。
【図4】扱室上部に配置された送塵弁を示す一部縦断正面図である。
【図5】送塵弁の全体構造を示すための脱穀部の平面図である。
【図6】脱穀部の開閉扉の開放状態の斜視図である。
【図7】脱穀装置の左側面図である。
【図8】脱穀装置の脱穀部前横側部カバーと、選別部前寄り側部カバーと、選別部後横側部カバーの表面の斜視図である。
【図9】脱穀装置の脱穀部前横側部カバーと、選別部前寄り側部カバーと、選別部後寄り側部カバーの背面の斜視図である。
【図10】係合フックを分解した開閉具の側面図である。
【図11】開閉具の一部縦断側面図である。
【図12】開閉具の一部縦断平面図である。
【図13】選別部後寄り側部カバーを開いた状態の縦断背面図である。
【図14】選別部後寄り側部カバーを閉じた状態の縦断背面図である。
【図15】(a)は脱穀部後カバーの背面の斜視図、(b)は脱穀部後カバーの表面の斜視図である。
【図16】(a)は脱穀部後カバーを外した状態の一部縦断側面図、(b)は脱穀部後カバーを取り付けた状態の一部縦断側面図である。
【図17】脱穀部の開閉扉の回動部の支持構造を示す一部縦断側面図である。
【図18】脱穀部の開閉扉の回動部の支持構造を示す一部縦断背面図である。
【図19】(a)は脱穀部の開閉扉の閉じ状態での回動部の支持構造を示す一部破断平面図、(b)は脱穀部の開閉扉の開放状態での回動部の支持構造を示す一部破断平面図である。
【図20】脱穀部のカバー前端部の開閉構造を示す一部破断平面図である。
【図21】脱穀部のカバー前端部の開閉構造を示す一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、稲や麦などを収穫対象とする普通型コンバインの全体側面が示されており、この普通型コンバインは、角パイプ鋼材などで形成した走行機体を構成する車体フレーム1に、エンジン2や図外の変速装置などを搭載し、車体フレーム1の下部に、変速装置などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される左右一対のクローラ式走行装置3を装備し、車体フレーム1の前部に、収穫対象の植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取部4を昇降揺動可能に連結している。車体フレーム1の横一側部である左半部に、刈取部4からの刈取穀稈に対して脱穀処理を施すとともに、その脱穀処理で得られた脱穀処理物に対して選別処理を施す脱穀装置5を搭載している。車体フレーム1の横他側部である右半部に、脱穀装置5からの穀粒を貯留するとともに、その貯留した穀粒の袋詰めを可能にする作物回収部としての袋詰装置6を搭載し、車体フレーム1における袋詰装置6の前方箇所に搭乗運転部7を形成して構成されている。
【0021】
左右のクローラ式走行装置3は、搭乗運転部7に備えた操縦レバー8の左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速駆動されることで直進状態を現出し、それらが差動することで旋回状態を現出するように構成されている。
【0022】
図1〜図3に示すように、刈取部4は、車体の走行に伴って、その前部左右両端に装備したデバイダ9が植立穀稈を収穫対象の植立穀稈と収穫対象外の植立穀稈とに梳き分け、その前部上方に配備した回転リール10が、左右のデバイダ9で梳き分けられた収穫対象の植立穀稈を後方に向けて掻き込み、その底部に装備したバリカン形の切断機構11が収穫対象の植立穀稈の株元側を切断し、切断機構11の後方に配備したオーガ12が、切断機構11による切断後の刈取穀稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めるとともに、その所定箇所において後方に向けて送り出し、その所定箇所から脱穀装置5の前上部にわたる搬送コンベヤからなるフィーダ13が、オーガ12からの刈取穀稈を脱穀装置5に向けて搬送するように構成されている。又、操縦レバー8の前後方向への揺動操作に基づいて、車体フレーム1とフィーダ13とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ14が伸縮作動することで、刈取部4を脱穀装置5とフィーダ13との連結点を支点Xにして昇降揺動し、刈取部4の昇降揺動で、植立穀稈に対する切断機構11の高さ位置を変更する刈り高さ調節を行えるように構成されている。
【0023】
刈取部4の右側部には、オーガ12の駆動及びオーガ12から回転リール10に動力を伝達するベルト式の伝動機構(図示せず)を覆う樹脂製のカバー10a,12aを設けてある。
【0024】
脱穀装置5は、扱室16内に扱胴17を備え、フィーダ13で扱室16に搬送された穀稈を脱穀処理する脱穀部15と、扱室16の下方に位置し、扱室16からの脱穀処理物を選別処理する選別部18とを備えている。脱穀装置5の後方には、扱室16で脱穀処理された藁屑や排塵、及び選別部18で選別処理された藁屑等を排出する板金製の排塵カバー19を設けてある。
【0025】
図4、図5に示すように、扱室16の板金製の天板80の内面側に扱胴回転軸芯に沿った方向に、複数の板金製の送塵弁81を備えている。複数の送塵弁81は、天板80に取り付けた枢支金具82に回動自在に支持され、各送塵弁81の端部がリンク83で接続されている。リンク83に接続された前端の送塵弁81については、枢支金具82に支承され、且つ送塵弁81の本体81aに連結された支軸84に操作レバー85が連結されている。操作レバー85は、弾性材で形成され握り部86側が下方に弾性付勢されており、レバーガイド87の係止部88に選択的に係止することによって多段(8段)に角度変更を行えるように構成されている。送塵弁81の角度を変更するときは、握り部86を持ち上げて操作レバー85を回動操作し、所望の位置に係止させることにより行う。
【0026】
脱穀装置5は、各部の点検を行えるように、次のように構成されている。
図4に示すように、天板80は、この天板80の走行機体横外側の脱穀部フレーム37に連結されたブラケット89に枢着された支軸90の前後軸心Y周りに回動自在に支持されている。
【0027】
天板80は、遊端部80aが脱穀部フレーム37に当接した閉じ姿勢にされることにより、扱室上開口91を閉じ、天板80の閉じ姿勢で、遊端部80aをロック具92で脱穀部フレーム37に螺合することで、天板80を閉じ姿勢に固定できる。
【0028】
天板80は、前後軸心Yまわり脱穀部フレーム37に対して上昇揺動されることにより、扱室上開口91を開き、この扱室上開口91から扱胴17の点検や清掃をすること、扱室上開口91を介して受網93を扱室16から外部に抜き出すことを可能にする。受網93は、扱胴周方向に二つの分割受網に分割して抜き出す。
【0029】
図6に示すように、前記脱穀部15の左側に、開閉扉66を形成し、開閉扉66を脱穀部15の後部の縦軸心P1周りで開閉自在に構成されている。開閉扉66は、脱穀部15の左側の横側壁のうち、開閉される扉内壁を構成する板金製の横側壁22aに板金製のカバー23を固設し、横側壁22aを開いて脱穀装置5内の受網93等を保守点検できるようにしてある。図7に示すように、前記開閉扉66の前部のカバー23には、開閉扉66をロック並びにロック解除するための開閉具36を備えている。
【0030】
脱穀部15の前側については、前記扱室16の前壁16aの前方に扱胴17の駆動系(図示せず)及びフィーダ13内のコンベア13aの駆動系(図示せず)を配設してあり、これらの駆動系の領域を前方から覆う樹脂製の脱穀部前側カバー24と、脱穀部15の前側の横側部を覆う樹脂製の脱穀部前横側部カバー25とからなる脱穀部前カバー26を着脱自在に備えている。脱穀部15の後方には樹脂製の脱穀部後カバー27を着脱自在に構成してある。
【0031】
又、脱穀装置5の下半部の選別部18の左外側部には、樹脂製の選別部前寄り側部カバー28と、樹脂製の選別部後寄り側部カバー29とならなる選別部横側部カバー30を着脱自在に構成して、選別部18の横側壁31の外側に配置されたベルト式伝動機構63を覆い、選別部横側部カバー30を取り外すことによりベルト式伝動機構63の保守点検を行えるようにしてある。前記脱穀部前横側部カバー25も選別部前寄り側部カバー28及び選別部前寄り側部カバー29からなる選別部横側部カバー30も共に樹脂で形成してあるが、選別部横側部カバー30の方が、未刈り穀稈等に接触しやすく、且つ大きな外力が作用しやすいので、選別部横側部カバー30の方が上部の脱穀部前横側部カバー25よりも硬質の樹脂で形成してある。
【0032】
図8は、脱穀部前横側部カバー25と、選別部前寄り側部カバー28と、選別部後寄り側部カバー29の表面の斜視図、図9は、同背面の斜視図であり、各カバー25,28,29の背面側には、脱穀部フレーム37及び選別部フレーム38、又は脱穀装置5の横側壁22に取り付けられた丸棒からなる平面視コの字状の被係合部材39に係合するフック状の係合部材40を取り付け、又各カバー25,28,29の上部には開閉具36を取り付けるための開口41を形成してある。
【0033】
図10〜図12には前記開閉具36の詳細図を示す。開閉具36はフック式で、金具本体42と、金具本体42に対して直交し、カバーの外面に取り付ける取付部43と、脱穀部フレーム37又は選別部フレーム38に取り付けられた丸棒からなるコ字状の被係合部材44を嵌入させる嵌合案内部45と、金具本体42に支承された支軸46の軸心P2周りに揺動して被係合部材44に対して係脱する係合フック47と、係合フック47を閉じ方向に付勢する金具本体42に形成された弾性舌片48とで構成されている。係合フック47には、操作部49と規制片50とが形成されており、操作部49の支軸46よりも上の位置を押圧乃至は押し上げる(又は、操作部49の下から指を入れて、操作部49の裏面を手前に引く)と係合フック47のフック部51が図中下方に退避して、被係合片44との係合を離脱することができる。
【0034】
図13、図14は、前記選別部後寄り側部カバー29の選別部18の横側壁31への着脱状態を示す縦断背面図である。選別部後寄り側部カバー29を取り付けるときは、前後の被係合部材39に係合部材40を引っ掛けて、選別部後寄り側部カバー29の開閉具36または開閉具36の周辺を押すと、開閉具36の係合フック47の案内面52が被係合部材44に接当してフック部51が下がる。フック部51が下がると、操作部49の内面で弾性舌片48が押圧されて、係合フック47は弾性舌片48の付勢力に抗してフック部51が下がる。フック部51が下がると被係合部材44がフック凹部53に嵌合する。被係合部材44がフック凹部53に嵌合すると、図14に示すように、係合フック47は弾性舌片48による付勢力で押し戻されて被係合部材44が離脱不能にロックされ、選別部後寄り側部カバー29を横側壁31に取り付けることができる。
【0035】
前記選別部後寄り側部カバー29を外すときは、操作部49の下から指を入れて、操作部49の裏面を手前に引くと係合フック47が支軸46の軸心P2周りに回動してフック部51が下がり、被係合部材44との係合を離脱することができる。図13に示すように、選別部後寄り側部カバー29が横側壁31から離脱した状態(図11に示す係合フック47の自由状態)では、弾性舌片48は操作部49に対する付勢力は消失している。図11の状態から係合フック47は、図反時計方向に回るように、例えば操作部49の下部を押圧すると規制片50が弾性舌片48に作用するので、係合フック47を時計方向に戻す付勢力が作用し、操作部49から手を離すと図11のように元の状態に戻る。即ち、図13に示すような離脱状態では、操作具36の係合フック47は図11のように自由状態を保っているので、係合フック47の被係合部材44への係合時に係合ミスが生じることがなく、確実にロックすることができる。
【0036】
選別部前寄り側部カバー28及び脱穀部前横側部カバー25の着脱操作、並びに脱穀部15の開閉扉66の開閉操作についても、前述の選別部横側部カバー29と同様である。尚、脱穀部前側カバー24については、ボルトによって取り付け・取り外しを行うようにしてある。
【0037】
図15(a)は脱穀部後カバー27の表面の斜視図、図15(b)は同背面の斜視図である。脱穀部後カバー27の背面に一対のフック状の係合部材55と、ボルト嵌合用の凹部56を形成した被挟持片57を形成して、脱穀部後カバー27が樹脂により成形されている。
【0038】
図16(a)(b)に示すように、脱穀部15の後端に後方に向けてフレーム枠58を設けてある。フレーム枠58には、上端面にボルト締め用のネジ孔59を施してあり、下部に丸棒からなる平面視コの字状の被係合部材60を付設してある。
脱穀部後カバー27をフレーム枠58に取り付けるには、フック状の係合部材55を、被係合部材60に引っ掛けて、脱穀部後カバー27の上板27aをフレーム枠58の上枠58a上に載置し、嵌合用の凹部56をネジ孔59に合わせてボルト61で止着する。
【0039】
前記脱穀部前横側部カバー25と前記選別部前寄り側部カバー28と前記選別部後寄り側部カバー29とは、前記横側壁31の外面側に設けたベルト伝動機構63(図1参照)を覆っている。前記ベルト伝動機構63は、運転座席7aの下方に位置するエンジン2(図3参照)からの駆動力を前記扱胴17、並びに、図示しない唐箕、一番スクリューコンベヤ、二番スクリューコンベヤ及び選別駆動機構に伝達する。
【0040】
前記脱穀部前横側部カバー25と選別部前寄り側部カバー28と選別部後寄り側部カバー29とは、各カバー25,28,29と脱穀装置5の横側壁22、脱穀部フレーム37又は選別部フレーム38とにわたって設けた脱着手段を介して脱穀装置5の横側壁22、脱穀部フレーム37又は選別部フレーム38に支持されている。各カバー25,28,29の前記脱着手段は、コ字状の丸棒で形成した被係合部材39とこれに係合するフック状の係合部材40とからなる係合手段64と、コ字状の丸棒で形成した被係合部材44とこれに掛止する開閉具36からなるロック手段65とで構成されている。装着状態にあるカバー25,28,29は、前記開閉具36の操作部49の下部背面を手前に引くと係合フック47が離脱側に揺動してロック解除され、その状態でカバー25,28,29を上方に引上げると、下側の被係合部材39に対する係合部材40の係合が外れて、各カバー25,28,29を横側壁から外すことができる。
【0041】
開閉扉66の後端部と、脱穀部フレーム37とにわたって脱着手段67と枢支手段68とを設けてある。図17は、前記脱着手段67と前記枢支手段68の一部縦断側面図である。図18は、前記脱着手段67と前記枢支手段68との一部縦断背面図である。これらの図に示すように、前記脱着手段67と前記枢支手段68とは、前記脱穀部フレーム37に上下一対の支持体69を付設して設けた上下一対の枢支軸70と、カバー23の内面側に上下一対の連結プレート71を連結して設けた上下一対の連結孔72とを備えて構成してある。
【0042】
前記上下一対の連結プレート71が前記連結孔72によって前記上下一対の枢支軸70に各別に上方から外嵌され、上下一対の支持体69がこれの上面によって連結プレート71を下方から受け止め支持した状態になることにより、脱着手段67がカバー23を脱穀部フレーム37に連結することによって横外壁22aを脱穀部フレーム37に連結した状態になり、枢支手段68が横外壁22aを前記上下一対の枢支軸70が備える軸芯であって、横外壁22aの後端側に位置する縦軸心P1まわりにカバー23と共に揺動開閉するよう枢支した状態になる。
【0043】
脱着手段67は、前記上下一対の連結プレート71が前記枢支軸70から抜き外されることにより、開閉扉66の脱穀部フレーム37に対する連結を解除することによって開閉扉66の脱穀部フレーム37に対する連結を解除する。
【0044】
図19(a)、図20は、脱穀部15の開閉扉66の閉じ状態での一部破断平面図、図21は同閉じ状態の一部破断正面図である。これらの図に示すように、開閉扉66を、脱着手段67によって脱穀部フレーム37に連結させ、かつ取り付け状態の前記脱穀部前横側部カバー25と走行機体前後方向に並んだ閉じ状態にする。すると、横外壁22aは、前記脱穀部15の横側壁22に位置する扱室横開口73を閉じる。このとき、カバー23の前端部と脱穀部15の横側壁22とにわたって設けたロック手段74によって開閉扉66を閉じ状態に固定することにより、横外壁22aを閉じ状態に固定できる。
【0045】
図20は、前記ロック手段74の平面図である。図21は、前記ロック手段74の正面図である。これらの図に示すように、前記ロック手段74は、前記横側壁22の外面に固設したロック杆75と、このロック杆75に係脱するように開閉扉66におけるカバー23の前端部に設けた開閉具36とを備えて構成してある。この開閉具36は選別部前寄り側部カバー28に設けた開閉具36と同じ構造のものである。
尚、このロック手段74に代えて、連結ボルトによって開閉扉66を閉じ固定する構成を採用してもよい。
【0046】
図19(b)は開閉扉66の開放状態での一部破断平面図である。この図に示すように、前記ロック手段74をロック解除状態に切り換えた状態にある開閉扉66を前記縦軸芯P1まわりに走行機体横外側に揺動開放する。すると、開閉扉66が走行機体横外側に揺動して揺動開き状態となる。開閉扉66が開いた状態で連結プレート71に係合保持していた前記ロック杆75の一端を外して、支持体69に形成した孔69aに係合させることで、開閉扉66が開いた状態で位置保持することができる。又は、開閉扉66の支持体69に対する持ち上げ操作によって上下一対の連結プレート71を枢支軸70から抜け外して前記脱着手段67によるカバー23の脱穀部フレーム37に対する連結を解除する。すると、開閉扉66が脱穀部フレーム37から外れて取り外し開放状態となる。すると、いずれの場合も、前記扱室横開口73は、開放され、受網93を扱室16に装着したままで脱穀部15の内部を機体横外側から点検や清掃を行うことができる。
【0047】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施の形態では、脱穀部前側カバー24と脱穀部前横側部カバー25からなる脱穀部前カバー26、選別部前寄り側部カバー28と選別部後寄り側部カバー29からなる選別部横側部カバー30を樹脂で形成したが、選別部横側部カバー30を板金で形成してもよい。
【0048】
(2)脱穀部前カバー26のうち、脱穀部前側カバー24を板金で形成し、脱穀部前横側部カバー25だけを樹脂で形成してもよい。
【0049】
(3)脱穀部前側カバー24を板金で形成し、脱穀装置5の横側部に位置する脱穀部前横側部カバー25、選別部前寄り側部カバー28及び選別部後寄り側部カバー29のみを樹脂で形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、稲麦収穫用として利用する普通型コンバインだけでなく、稗、粟、豆類を収穫する普通型コンバインとしても利用できるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 走行機体
4 刈取部
5 脱穀装置
6 作物回収部
15 脱穀部
16 扱室
17 扱胴
18 選別部
22a 脱穀部の横外壁
23 カバー
24 脱穀部前側カバー
25 脱穀部前横側部カバー
26 脱穀部前カバー
28 選別部前寄り側部カバー
29 選別部後寄り側部カバー
30 選別部横側部カバー
31 選別部の横外壁
80 天板
81 送塵弁
P1 縦軸心
Y 前後軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前方に作物を刈り取る刈取部を備え、前記刈取部の後方に刈り取り搬送された作物を扱室にて脱穀処理する脱穀部と脱穀部の下方に位置する脱穀された処理物を選別する選別部とからなる脱穀装置と、脱穀処理された作物を回収する作物回収部とを備えている普通型コンバインにおいて、
前記扱室の前壁より前方の扱胴の駆動系を配設してある領域を覆う樹脂製の脱穀部前カバーを備えてある普通型コンバイン。
【請求項2】
前記脱穀部前カバーを、前記脱穀部の前側の横側部を覆う脱穀部前横側部カバーと、前記扱室の前壁よりも前方の扱胴の駆動系を配設してある領域を前方から覆う脱穀部前側カバーとで構成してある請求項1記載の普通型コンバイン。
【請求項3】
前記選別部の左右方向の横外壁の外側に配設された駆動系を覆う樹脂製の選別部横側部カバーを備えてある請求項1又は2記載の普通型コンバイン。
【請求項4】
前記選別部横側部カバーを、選別部前寄り側部カバーと選別部後寄り側部カバーとで構成してある請求項3記載の普通型コンバイン。
【請求項5】
前記脱穀部の左右方向の横外壁の外側に板金製のカバーを固設し、前記板金製のカバーと一体に前記脱穀部の横外壁を縦軸心周りに開閉自在に構成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の普通型コンバイン。
【請求項6】
前記脱穀部の上側に板金製の天板を設け、前記天板の下側の扱室の天井に、前記扱胴の回転によって扱胴回転方向に送られる脱穀処理物を扱胴軸心の後方に向かう方向に案内する送塵弁を設け、前記送塵弁を取り付けた天板を前後軸心周りに開閉及び固定自在に構成してある請求項1〜5のいずれか一項に記載の普通型コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−252724(P2010−252724A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108212(P2009−108212)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】