説明

晶析方法および晶析装置

【課題】種晶なしの冷却晶析において粒径分布の幅が狭い単分散粒子を生成することができる晶析方法および晶析装置を提供する。
【解決手段】本発明の晶析方法は、種晶なしの冷却晶析において、化合物を溶解した溶液を冷却して飽和溶液から化合物の結晶を析出させる晶析方法であって、溶液を冷却温度プロファイルに従って冷却しながら、飽和溶液から析出した結晶の粒子数および飽和溶液の濃度を実測して、粒子数の実測値と濃度の実測値とから、飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をマスバランスにより算出し、その絶対粒子数が閾値を超えた時、飽和溶液を加熱し、絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し溶液に結晶の過剰分を溶解させ、絶対粒子数を目標値に戻すように制御した後、再び予め設定した冷却温度プロファイルに従って飽和溶液を冷却することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野やファインケミカル分野に好適であり、種晶なしの冷却晶析においてインターナルシーディングと呼ばれる手法を用いて、粒径分布の幅が狭く、所定の粒径の結晶粒子群を生成する晶析方法および晶析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化合物(結晶として取り出す物質)を溶解した溶液の温度を低下させ、これによって生じる溶液の過飽和状態と、化合物の飽和濃度との差を駆動力として、化合物を析出させて結晶を生成する冷却晶析が行われている。
なお、晶析とは、液相より結晶を析出させることにより、液相から特定の化合物を分離することを言う。
【0003】
冷却晶析では、溶液を冷却する際の冷却温度プロファイルが重要であるとされており、異なる冷却温度プロファイルをそれぞれ有する冷却法として、制御冷却法、直線冷却法または自然冷却法が考案されている(例えば、非特許文献1参照)。これらの冷却法の中でも、制御冷却法は、結晶量が少ない初期には温度変化を小さく(冷却速度を遅く)し、結晶量が多くなる終期には温度変化を大きく(冷却速度を速く)することにより、飽和溶液の過飽和度が終始低く一定に保たれるので、二次核の発生が抑制されて、単分散粒子のみが得られるため、有効な方法とされている。
【0004】
また、晶析を行うための一般的な晶析装置としては、攪拌器を有する晶析槽を備えたものが用いられる。このような晶析装置としては、例えば、種晶と化合物を含む溶液を晶析槽に供給し、晶析槽内に設けられた攪拌器を8の字形のパドル運動させることによって、晶析槽内の溶液をゆっくりとした大きな渦流とする装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−313484号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「新版・工業晶析操作」の第5頁、平成18年1月31日発行、編者:分離技術会、発行所:分離技術会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の制御冷却法は、種晶(シーディング)を用いない冷却晶析においても有効であるとされているが、この制御冷却法を実施しても、他の冷却温度プロファイルを有する冷却法(直線冷却法、自然冷却法)を実施した場合と比べて晶析終了後のプロダクトの重量基準粒径分布に関して大差なく、晶析終了後に単分散粒子が安定して得られることはなかった。
【0008】
また、特許文献1に開示さている晶析装置は、攪拌器による晶析槽内の溶液の攪拌によって、生成した結晶粒子が互いに衝突を繰り返すため、結晶粒子が崩壊するなどして、粒径が揃わなくなることがあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、種晶なしの冷却晶析において粒径分布の幅が狭い単分散粒子を生成することができる晶析方法および晶析装置を提供することを目的とする。また、バッチ毎に結晶粒子の核化のタイミングが異なっても、粒径分布の幅が狭い単分散粒子を生成することができる晶析方法および晶析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の晶析方法は、種晶なしの冷却晶析において、化合物を溶解した溶液を冷却して、前記溶液から前記化合物の結晶を析出させる晶析方法であって、前記溶液を、冷却温度プロファイルに従って冷却しながら、飽和溶液から析出した前記結晶の粒子数および前記飽和溶液の濃度を実測して、前記粒子数の実測値と、前記濃度の実測値とから、前記飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をマスバランスにより算出し、該絶対粒子数が閾値を超えた時、前記飽和溶液を加熱して、前記絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し、前記飽和溶液に前記結晶の過剰分を溶解させ、前記絶対粒子数を前記目標値に戻すように制御した後、再び予め設定した冷却温度プロファイルに従って前記飽和溶液を冷却することを特徴とする。
【0011】
前記絶対粒子数の目標値を、晶析開始温度から晶析終了温度の温度差によって前記飽和溶液から析出する理論晶析量と、前記結晶の所望とするプロダクト粒径の目標値とから算出することが好ましい。
【0012】
本発明の晶析装置は、種晶なしの冷却晶析に用いられ、化合物を溶解した溶液を冷却して、前記溶液から前記化合物の結晶を析出させる晶析を行う晶析装置であって、前記溶液を収容する容器、および、前記溶液を冷却および/または加熱する手段を有する晶析槽と、前記晶析槽内にて飽和溶液から析出した結晶の粒子数を実測し、該粒子数の実測値をオンラインで出力する粒子数測定装置と、前記晶析槽内の前記飽和溶液の濃度を実測し、該濃度の実測値をオンラインで出力する濃度測定装置と、前記飽和溶液を、冷却温度プロファイルに従って冷却する温度制御を行うとともに、前記粒子数測定装置から出力された前記粒子数の実測値と、前記濃度測定装置から出力された前記濃度の実測値とから、前記飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をマスバランスにより算出し、該絶対粒子数が閾値を超えた時、前記絶対粒子数が目標値となるように前記飽和溶液の加熱制御を実施し、前記飽和溶液に前記結晶の過剰分を溶解させ、前記絶対粒子数を前記目標値に戻した後、再び予め設定した冷却温度プロファイルに従って前記飽和溶液を冷却するという温度制御を行う温度制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記晶析槽は、前記容器に収容された前記溶液を攪拌する攪拌器を備えたことが好ましい。
【0014】
前記温度制御装置は、予め設定した冷却温度プロファイルを実現する温度制御と、前記絶対粒子数を管理するための加熱制御とを組み合わせた制御を行うことが好ましい。
【0015】
前記温度制御装置は、前記絶対粒子数が前記目標値に達した後、直線パターン、自然冷却パターンもしくは制御冷却パターンを含む任意の冷却温度プロファイルに従って、前記溶液を冷却する制御を行うことが好ましい。
【0016】
前記温度制御装置は、前記絶対粒子数が閾値を超えた時、前記飽和溶液の加熱制御を少なくとも1回行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の晶析方法によれば、晶析の開始から終了までの間、析出した結晶の絶対粒子数を算出し、その絶対粒子数が予め設定した閾値を超えた時、飽和溶液を加熱して、絶対粒子数が目標値になるように加熱制御を実施し、溶液に結晶の過剰分を溶解させ、絶対粒子数を目標値に戻すので、従来のように、冷却のみを実施する晶析方法に比べて、飽和溶液を1回以上加熱することにより、後から生じた結晶を溶解する作用を利用し、あたかも結晶の核化の時期を一度揃える(インターナルシーディング効果)ことができるから、全粒子の成長時間を概ね等しくすることができる。すなわち、加熱操作を加えた後、前記の絶対粒子数が目標値に到達した後は、予め設定した冷却温度プロファイルに従い晶析を進行させることで、粒径分布の幅が狭く、粒径が揃った単分散の結晶粒子を生成することが実現可能となる。また、インターナルシーディング効果により、その後の冷却を、予め設定した冷却温度プロファイルに従わずに変更させてもよく、晶析時間を短縮してもよい。
また、バッチ毎に核化温度が異なる化合物についても、常時、結晶の粒子数および溶液の濃度を実測し、検出するので、結晶の総粒子数をマスバランスにより正確に補正できるので、所望の粒径に対応する理論粒子数となるような加熱制御を実行することによって、バッチ毎の粒径分布のばらつきを抑えることが可能となる。
また、単に冷却温度プロファイルに従う温度制御によって得られる粒径分布や、運転員の手動操作により経験と勘に頼った温度制御によって得られる粒径分布とは異なり、安定的に所望の粒径の単分散粒子を得ることができる。
さらに、結晶の核化を検出し、絶対粒子数が閾値を超えた後、前記の絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し、絶対粒子数が目標値に到達した後、その後の晶析は一度揃えた結晶が優先的に成長するために二次核化を抑制でき、その後の任意の冷却温度プロファイルに従う温度制御を実現可能することができる。すなわち、絶対粒子数が目標値に到達した後は、冷却温度プロファイルを変化させて、晶析の時間を短縮することもできる。
【0018】
本発明の晶析装置によれば、晶析槽内にて飽和溶液から析出した結晶の粒子数を実測し、その粒子数の実測値をオンラインで出力する粒子数測定装置と、晶析槽内の飽和溶液の濃度を実測し、その濃度の実測値をオンラインで出力する濃度測定装置と、飽和溶液を、直線パターン、自然冷却パターンもしくはプログラム(制御)冷却パターンのいずれかの冷却温度プロファイルに従って冷却する温度制御を行うとともに、粒子数測定装置から出力された粒子数の実測値と、濃度測定装置から出力された濃度の実測値とから、飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をマスバランスにより算出し、その絶対粒子数が予め設定した閾値を超えた時、飽和溶液を加熱して、前記の絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し、溶液に結晶の過剰分を溶解させ、絶対粒子数を目標値に戻した後、再び冷却温度プロファイルに従って飽和溶液を冷却するという温度制御を行う温度制御装置とを備えているので、従来のように、冷却のみを実施する晶析装置に比べて、飽和溶液を加熱し、後から生じた結晶を溶解する作用により、あたかも結晶の核化の時期を一度揃えるインターナルシーディング効果を期待でき、全粒子の成長時間を概ね等しくすることができる。すなわち、加熱制御開始後、前記の絶対粒子数が目標値に到達した後は、予め設定した冷却温度プロファイルに従い晶析を進行させることで、粒径分布の幅が狭く、粒径が揃った単分散の結晶粒子を生成することが実現可能となる。また、前記の絶対粒子数が目標値に到達した後、インターナルシーディング効果により、その後の冷却は、二次核化を抑制することができるので、予め設定した冷却温度プロファイルに従わなくてもよい。
また、バッチ毎に核化温度が異なる化合物についても、常時、粒子数測定装置により結晶の粒子数を実測し、検出するとともに、濃度測定装置により飽和溶液の濃度を実測し、検出するので、本温度制御装置により、結晶の総粒子数を正確にマスバランス補正できることから、バッチ毎の粒径分布のばらつきを抑えることが可能となる。
また、単に冷却温度プロファイルに従う温度制御を行う晶析装置によって得られる粒径分布や、運転員の手動操作により経験と勘に頼った温度制御によって得られる粒径分布とは異なり、安定的に所望の粒径の単分散粒子を得ることができる。
さらに、温度制御装置による、結晶の核化を検出した後の加熱操作により、絶対粒子数が閾値を超えた後は、予め設定した冷却温度プロファイルに従わずに、前記の絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し、インターナルシーディング効果による結晶の二次核化を抑制できるので、任意の温度制御を実現可能することができる。すなわち、絶対粒子数が目標値に到達した後は、予め設定した冷却温度プロファイルを変化させて、晶析の時間を短縮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の晶析装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の晶析装置を構成する温度調整器を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施例における冷却の温度プロファイル、溶液温度の実測値、および、FBRMによる結晶の総粒子数の測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例および比較例で得られた結晶の粒径分布のFBRMによる測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の晶析方法および晶析装置の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
「晶析方法」
本発明の晶析方法は、化合物を溶解した溶液を冷却して、その飽和溶液から化合物の結晶を析出させる晶析方法であって、その溶液を、直線パターン、自然冷却パターンもしくはプログラム(制御)冷却パターンのいずれかの冷却温度プロファイルに従って冷却しながら、飽和溶液から析出した結晶の粒子数および飽和溶液の濃度を実測して、その粒子数の実測値と、その濃度の実測値とから、飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をマスバランスにより算出し、その絶対粒子数が閾値を超えた時、前記の絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し、飽和溶液を加熱して、溶液に結晶の過剰分を溶解させ、絶対粒子数を目標値に戻した後、再び前記の冷却温度プロファイルに従って飽和溶液を冷却する方法である。
【0022】
本発明の晶析方法では、まず、目的の化合物を、所定の溶媒に溶解して、その化合物の溶液を調製する。
【0023】
本発明を適用可能な化合物は、溶媒に溶解可能であり、溶液中に分散した状態であっても、温度を加えることにより、再び溶液に溶解することができる物質であれば特に限定されないが、例えば、硫酸銅、チオ硫酸ソーダ、硫酸ニッケル、クエン酸、グルタミン酸ソーダなど、溶液温度の変化に対して溶解度が大きく変化する化合物が挙げられる。
【0024】
上記の化合物を溶解する溶媒としては、特に限定されないが、化合物の種類に応じて適宜選択され、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などから選択される1種または2種以上が用いられる。
【0025】
また、本発明では、所定の晶析開始温度にて飽和溶液となるように、目的とする化合物を所定の溶媒に溶解して、その化合物の溶液を調製する。すなわち、溶液を調製する際(化合物を溶媒に溶解する際)の温度は、その溶液が飽和溶液となる温度でなくてよく、溶液の温度が所定の晶析開始温度になった時に飽和溶液となるように、溶液を調製する。
【0026】
また、本発明では、溶液の体積は特に限定されないが、攪拌器により、晶析槽内の溶液に結晶を均一に分散できる大きさであればよい。
【0027】
次いで、上記の溶液を、図3に示すような傾きが一定の直線パターンの冷却温度プロファイル(図3中(a)で示す線)に従って冷却する。
本発明の晶析方法では、晶析を開始してから初期段階で、後述する結晶の絶対粒子数の目標値(目標数)の結晶核が急激に生成し、その後、予め設定した絶対粒子数の閾値を超えた時点から、前記の絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し、絶対粒子数が目標値に到達した後は、それらの結晶をインターナルシーディングとして、それらが所望のプロダクト粒径となるように、残る晶析終了までの時間内で結晶を成長させる。すなわち、本発明では、核化検出後、総結晶数を目標値以上の絶対粒子数、つまり閾値まで増加させておき、その後、加熱制御により、絶対粒子数を目標値に到達させる。結晶の絶対粒子数の目標値は、晶析の開始から終了までの間、不変(一定)の値である。そして、絶対粒子数が閾値を超えてから終了までの間、結晶の絶対粒子数が、その目標値を超えないように飽和溶液の温度を制御する。そのため、1回目の加熱制御操作終了後、すなわち絶対粒子数が目標値に到達した後、晶析過程において何らかの外乱により、予期せぬ二次核が生成しても、晶析時間内であれば、再度、加熱制御が実施され、絶対粒子数は目標値に収束する。
【0028】
また、溶液の冷却の開始から終了までの間(晶析の開始から終了までの間)、溶液を冷却するとともに、飽和溶液から析出した結晶の粒子数および飽和溶液の濃度を実測して、析出した結晶の粒子数の実測値と、飽和溶液の濃度の実測値とから、飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をマスバランスにより算出する。すなわち、本発明では、溶液の冷却の開始から終了までの間、常に、飽和溶液から析出した結晶の粒子数および飽和溶液の濃度を測定するとともに、その測定値(結晶の粒子数と飽和溶液の濃度)から晶析槽に存在する結晶の絶対粒子数を算出する。
なお、飽和溶液から析出した結晶の粒子数の測定には、後述する粒子数測定装置が用いられる。
本発明では、粒子数測定装置により、飽和溶液から析出した結晶の粒子数を測定するとともに、下記の式(1)に基づいて、粒子数測定装置から求められる結晶の析出量(晶析量)Wpart[kg]が算出される。
【0029】
【数1】

【0030】
ただし、上記の式(1)において、Wpartは粒子数測定装置から求められる結晶の晶析量[kg]、ρは析出した結晶の結晶密度[kg/m]、ανは析出した結晶の粒子形状係数[−]、Aは絶対粒子数変換係数[−]、f(i,t)は析出した結晶の粒子数[♯]、LRiは析出した結晶のFBRM分画の代表粒径[m]をそれぞれ表している。なお、式(1)において、粒子数測定装置から求められる結晶の晶析量Wpartは、核化検出時点からの経過時間(t)に伴って変化する関数として表される。
【0031】
また、溶液の濃度の測定には、後述する濃度測定装置が用いられるが、その測定は、オンラインで濃度測定する必要があるために、晶析対象物質に合わせた濃度測定装置を適用する必要がある。例えば、晶析対象が無機物である場合、溶液に溶解した状態が電解質であれば、電気伝導度と溶液濃度の相関により、予め検出物理量と濃度との検量線を作成し、その検量線を温度制御装置に実装する。また、晶析対象が有機物である場合、赤外分光分析法(分散型IR、FT−IR)によって、その物質特有のスペクトルと溶液濃度の相関を求めることにより、予め検出物理量と濃度との検量線を作成し、その検量線を温度制御装置に実装する。
この溶液の濃度測定によって得られた結果を用い、下記の式(2)に基づいて、濃度測定装置から求められる結晶の晶析量Wconc[kg]が算出される。
【0032】
【数2】

【0033】
ただし、上記の式(2)において、Vは晶析を行う溶液の体積[m]、Cは晶析開始前の溶液の飽和濃度[kg/m]、C(t)は晶析中の溶液の濃度[kg/m]をそれぞれ表している。なお、式(2)において、粒子数測定装置から求められる結晶の晶析量Wconcは、核化検出時点からの経過時間(t)に伴って変化する関数として表される。
【0034】
溶液の撹拌が適切であり、完全混合槽条件および粒子数測定装置の検査体積に含まれる粒径分布と晶析槽全体の粒径分布が等しい場合には、1サンプリング毎の粒子数測定装置から求めた晶析量と濃度測定装置からの晶析量は等しいことから、つまりマスバランスが等しいので、上記の式(1)、(2)によって算出されるWpartとWconcを用いて、下記の式(3)に示すように、絶対粒子数変換係数Aが算出される。WpartとWconcが時間の関数であることから、絶対粒子数変換係数Aも時間の関数として表される。
【0035】
【数3】

【0036】
すなわち、A=Wconc/Wpartであり、溶液の体積と粒子数測定装置の検査体積の比を表すものとなる。そして、算出された絶対粒子数変換係数Aを用いて、下記の式(4)に基づいて、飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数Nab[♯]が算出される。ただし、下記の式(4)において、Nfbrmは粒子数測定装置によって測定された結晶の粒子数[♯/s]を表しているが、Nfbrmの単位は、厳密には単位体積、単位時間あたりの個数として表現される。しかし、1サンプリング時間毎に式(3)を算出するため、Nfbrmの単位は[♯]と考えてよい。
【0037】
【数4】

【0038】
本発明では、粒子数測定装置として、レーザー後方散乱光計測による粒径測定法(Focused Beam Reflectace Method、FBRM)を適用した装置が用いられる。
FBRMでは、レーザー光の焦点面を結晶の粒子が通過したとき、粒子の一方の端がレーザー光を通過する際にレーザー光の後方散乱が生じ、その後方散乱は粒子の反対側の端がレーザー光を通過するまで続く。このレーザー光の後方散乱の反射時間とレーザーの回転速度から粒子の大きさ(粒径)として算出される。
このFBRMを適用した粒子数測定装置によれば、析出した結晶の粒径分布と粒子数をインライン測定で数値化し視覚的にリアルタイムで測定することができ、任意の分画の大きさの粒子数をリアルタイムでモニタリングすることによって、飽和溶液中の粒子数の時間変化を高精度、高感度に数値化することができる。
【0039】
上記のFBRMを適用した粒子数測定装置は、レーザー光の届く範囲における粒径分布とその粒子数を測定する。したがって、この粒子数測定装置は、FBRMの検査体積となる溶液内に存在する結晶の粒径分布を測定する装置である。
しかしながら、晶析の進行に伴って結晶の濃度が増加すると、FBRMの検査体積が減少する。これは、FBRMを適用した粒子数測定装置は、粒子に反射するレーザー光の反射時間とレーザー光の線速度から粒径を求めるために、結晶の濃度が増加するに伴って、レーザー光の届く範囲が狭くなるからである。このように、レーザー後方散乱光計測による粒径測定法では、粒子数の検出状況が晶析量の関数となり、晶析過程の全領域において粒子数の絶対値として取り扱うことができなかった。そのため、従来、FBRMを適用した粒子数測定装置を用いた粒子数の測定では、粒子数の絶対値を必要とせず、晶析の傾向を検出したい場合にのみ適用されていた。例えば、微小粒子の粒子数の増加速度から核化の検出、粒子数の減少から晶析対象物質の溶解の確認、晶析によって析出した結晶の粒径分布形状の相対的な変化の測定に留まっており、粒子数を絶対的に測定することができなかった。
【0040】
本発明では、上述のように、粒子数測定装置により、上記の式(1)に基づいて結晶の晶析量Wpart[kg]を算出するとともに、濃度測定装置によって測定した飽和溶液の濃度を上記の式(2)に適用して結晶の晶析量Wconc[kg]を算出し、これらの算出結果を用いて、絶対粒子数変換係数Aを算出する。ここで算出された結晶の晶析量Wpartと結晶の晶析量Wconcは、晶析開始からの一時点における晶析量、すなわち、晶析開始からの任意の時間における晶析量である。ゆえに、上記の式(3)から算出された絶対粒子数変換係数Aも、晶析開始からの任意の時間における値である。
【0041】
また、FBRMを適用した粒子数測定装置は、上述のようにレーザー光の届く範囲における粒径分布と粒子数を測定するため、溶液全体(晶析槽全体)にわたって粒径分布と粒子数を測定することができない。
そこで、上記の式(4)に基づいて、上記の式(3)から算出された絶対粒子数変換係数Aを適用して、晶析開始からの任意の時間において、FBRMを適用した粒子数測定装置によって測定された結晶の粒子数Nfbrm[♯/s]に絶対粒子数変換係数Aを乗ずることにより、飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数Nab[♯]に換算する。
【0042】
さらに、本発明では、晶析開始後に予め設定した結晶の絶対粒子数の閾値を超えた時点から、絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し、飽和溶液を加熱して、溶液に結晶の過剰分を溶解させ、絶対粒子数を目標値となるような加熱制御を実施する。絶対粒子数が目標値に到達した後は、予め決められた冷却温度プロファイルに戻り、晶析時間終了まで冷却晶析を継続する。
【0043】
結晶の絶対粒子数の目標値は、晶析によって飽和溶液から析出する結晶の晶析量の理論値と、結晶の粒径の目標値とから算出され、より詳細には、結晶の絶対粒子数の目標値Nは、理論晶析量Wthと目標とするプロダクトの粒径Lから下記の式(5)により算出される。
【0044】
【数5】

【0045】
晶析開始後、この結晶の絶対粒子数の目標値Nとなるように、オンラインで測定したFBRMからの粒子数と濃度測定装置からの濃度とのマスバランスにより絶対粒子数Nabを計算し、下記の式(6)を制御則とする温度制御を実施する。
本実施形態では、加熱制御則にP制御(比例制御)を適用したが、化合物によっては微分動作、積分動作を加味したPID制御を用いてもよい。
【0046】
【数6】

【0047】
ただし、ΔTは予め設定した冷却温度プロファイルからの上乗せ温度[℃]、kは上乗せ温度比例定数[℃/♯]である。
この加熱制御は、晶析開始から終了までの冷却温度プロファイル、言い換えれば晶析槽内の温度制御、さらに言い換えれば内温(溶液温度)制御の目標温度にΔTの上乗せ温度を加えるだけであり、下記の式(7)とすればよい。
【0048】
【数7】

【0049】
ただし、T(t)は予め設定した冷却温度プロファイルである。
また、加熱制御の開始タイミングは、加熱終了後、溶液内にある程度の粒子数を確保するために、下記の式(8)で表される絶対粒子数の閾値Nthに従って決定される。
【0050】
【数8】

【0051】
ここで、Nthは絶対粒子数の閾値[♯]、kthは2〜10の閾値係数[−]である。
このように、絶対粒子数の目標値Nの2〜10倍の値の絶対粒子数を閾値Nthと設定することで、加熱制御開始後の予期せぬ過大な加熱操作の影響を除くために、微小粒子が溶解しすぎても、プロダクトとなる微小粒子、すなわち、インターナルシーディング量が晶析槽内に残存するように閾値を設定する。
このように、加熱制御開始後、N<Nabであれば、加熱制御を常時機能させることになり、晶析開始後、最初に現れる急激な核化以外に、何らかの外乱で予期せぬ核化が発生しても、晶析時間内であれば何度でも加熱・冷却を実施し、運転上のロバスト性を確保する。一方、N>Nabであれば加熱制御は実施されず、予め設定した冷却温度プロファイルに従い温度制御を実施する。
【0052】
ここで、核化後、設定した閾値Nthを超えてから開始される加熱制御による飽和溶液を加熱する温度ΔTは、溶液に結晶の過剰分を溶解させることができる程度の上乗せ温度比例定数kであり、詳細には、結晶の絶対粒子数が目標値を超えた時点における飽和溶液の温度に対して、溶液の温度が2℃〜3℃高くなるように加熱するような上乗せ温度比例定数kとすることが好ましい。
【0053】
なお、加熱制御開始後、絶対粒子数の算出値が、目標値N以下となったとき、結晶の過剰分が溶液に溶解したことを示し、その場合、上記の式(6)からΔT=0となり、予め設定した冷却温度プロファイルに戻るように温度制御が実施される。
【0054】
次いで、結晶の絶対粒子数が目標値以下に戻った後、再び、上記の冷却温度プロファイルに従って飽和溶液を冷却し、晶析を継続する。
そして、飽和溶液の温度が予め設定した晶析終了温度に達した時点で、飽和溶液の冷却を終了して、冷却晶析を完了する。
上述ように、加熱制御機能の切換えは、内温の温度制御の目標値である冷却温度プロファイルにΔTを加えるだけでよく、ΔT>0では加熱制御が実現し、加熱制御を実施しない場合にはΔTを常時0としておけばよい。ただし、本発明の実施においては核化後、インターナルシーディング量としての粒子を晶析槽内に確保する必要があるために、絶対粒子数の閾値を導入し、その閾値を超えた時点を加熱制御開始のタイミングとする。
【0055】
本発明の晶析方法によれば、晶析の開始から晶析の終了までの間、析出した結晶の絶対粒子数を常時算出し、核化後、絶対粒子数の閾値を超えた時点から、その絶対粒子数が予め設定した目標値とする加熱制御を実施する。絶対粒子数が閾値を超えた時より、加熱制御により飽和溶液は加熱されるので、飽和溶液に存在する結晶の絶対粒子数の目標値以上の過剰分を溶解させ、絶対粒子数を目標値以下に戻すので、従来のように、冷却のみを実施する晶析方法に比べて、あたかも結晶の核化の時期を一度揃える(インターナルシーディング効果)ことができるから、一度揃えた後の全粒子の成長時間をほぼ等しくすることができる。すなわち、インターナルシーディング効果は、二次核化の発生を抑制し、加熱制御後に残存する結晶のみ成長することができるため、粒径分布の幅が狭く、粒径が揃った単分散の結晶粒子を生成することが実現可能となる。さらに、インターナルシーディング効果により、その後の冷却は、予め設定した冷却温度プロファイルに従わなくてもよく、晶析時間を短縮してもよい。なお、冷却晶析における結晶の核化のタイミングは、結晶の絶対粒子数が溶解時の絶対粒子数(つまり、溶液には操作の過程で粒子状の不純物が混入されてしまい、その粒子状のゴミが測定されてしまうため、絶対粒子数は0とはならず、ある最小値をもつため)を明らかに超えた時点である。
【0056】
また、バッチ毎に核化温度が異なる化合物についても、すなわち不純物などの影響を受けやすい化合物であっても、常時、結晶の粒子数および飽和溶液の濃度を実測し、結晶の絶対粒子数をマスバランスにより正確に検出できるから、所望のプロダクトの粒径に対応する粒子数を加熱制御の目標値とすることにより、バッチ毎の粒径分布のばらつきを抑えることが可能となる。
【0057】
また、単に冷却温度プロファイルに従う温度制御によって得られる粒径分布や、運転員の手動操作により経験と勘に頼った温度制御によって得られる粒径分布とは異なり、安定的に所望の粒径の単分散粒子を得ることができる。
さらに、結晶の核化を検出した後、結晶の絶対粒子数が閾値を超えてからの加熱制御により、絶対粒子数が目標値に到達した後は、インターナルシーディング効果により、その後の晶析は結晶の二次核化を抑制できるので、任意の温度制御を実現可能することができる。すなわち、加熱制御により絶対粒子数が目標値に到達した後は、冷却温度プロファイルを変化させて、晶析の時間を短縮させる操作も可能である。
【0058】
「晶析装置」
図1は、本発明の晶析装置の一実施形態を示す概略構成図である。図2は、本発明の晶析装置を構成する温度調節器を示す概略構成図である。
この実施形態の晶析装置10は、晶析槽11と、粒子数測定装置12と、濃度測定装置13と、温度制御装置14とから概略構成されている。
【0059】
晶析槽11は、晶析の対象となる化合物を含む溶液を収容する容器15と、この容器15の外周を覆うように設けられたジャケット16と、容器15内に収容された溶液を冷却および/または加熱する装置(冷却加熱装置)17と、容器15内に収容された溶液を攪拌する攪拌器18とから概略構成されている。
【0060】
容器15の容積は、流れの状態として完全混合が満たされていれば特に限定されず、ここに収容する溶液の量に応じて適宜攪拌器のサイズ、形状、回転数を調整するが、後述する冷却加熱装置17による溶液の温度制御が容易であり、各計測器の検出部が晶析槽11の上部から挿入できる大きさが望ましく、具体的には、500mL以上であることが好ましい。
容器15の容積が、例えば、5000Lを超えると、攪拌器18による撹拌が不均一となるため、溶液内の粒径分布に場所的にばらつきを生じるから、大きい粒子は容器15の底部に沈む傾向となり、結果として、目的とする粒径分布の結晶を生成し難くなることがある。
【0061】
ジャケット16は、容器15との間に熱冷媒流体を保持するための空間を有し、ジャケット16内の熱冷媒流体と容器15内の温度差を利用して、容器15内の加熱・除熱を行い、容器15内の温度を調整している。
【0062】
冷却加熱装置17は、ジャケット16内の空間に、冷媒としての冷却水または熱媒としての水蒸気を供給するためのものであり、冷却水を供給する冷却水供給源19と、水蒸気を供給する水蒸気供給源20とを備えている。冷却水供給源19に用いられる冷媒は水以外の媒体でもよく、また、水蒸気供給源20に用いられる熱媒は気体である必要はなく、冷媒と同じ物質の熱媒であればよい。
冷却水供給源19は、途中にバルブ21を備えた冷却水供給管23と、冷却水供給管23に連接された供給管24を介して、ジャケット16に接続されている。
水蒸気供給源20は、途中にバルブ22を備えた水蒸気供給管25と、水蒸気供給管25に連接された供給管24を介して、ジャケット16に接続されている。
なお、供給管24の途中には、ジャケット16に供給する媒体の温度を測定する温度測定部26が設けられている。
【0063】
また、冷却水供給源19からジャケット16内への冷却水の供給、および、水蒸気供給源20からジャケット16内への水蒸気の供給は、温度制御装置14の温度調節器32によって選択される。すなわち、温度調節器32によってバルブ21の開度が制御され、これにより、ジャケット16内への冷却水の供給量が調整される。また、温度調節器32によってバルブ23の開度が制御されて、ジャケット16内への水蒸気の供給量が調節される。なお、水蒸気は、水と混合されると一瞬にして凝縮し、液体となる。また、温度調節器32は、晶析槽11の熱移動プロセスを定式化したプロセスモデルを内包するモデル予測制御のカスケード制御で構成され、ジャケット16から容器15への一次遅れ時定数、無駄時間と、さらに、熱冷媒の混合プロセスも一次遅れ時定数と無駄時間を考慮し、モデル予測制御の内部モデルを構成し、予め設定した冷却温度プロファイルに遅れ無しに容器15内の温度を制御する。また、冷却晶析中の加熱制御を実現するために、上記の式(6)の加熱制御則により演算されたΔTを、予め設定した冷却温度プロファイルに上乗せする上記の式(7)を用いて内温を制御する。
【0064】
そして、ジャケット16内に供給された媒体と、容器15内の溶液との間で熱移動が生じ、容器15内の溶液の温度は、所定の温度Tに制御される。
【0065】
なお、容器15内の溶液の温度を、所定の温度に制御するためには、ジャケット16内に、冷却水と水蒸気を個別に、すなわち、排他的に温度調節器32によって、バルブ21とバルブ22を開閉し、媒体を供給する。
【0066】
攪拌器18は、容器15内の溶液およびその温度分布を均一にするために設けられている。
攪拌器18による溶液の攪拌速度は、特に限定されないが、析出した結晶を崩壊させることなく、結晶が容器15内に均一に分散し、かつ、結晶の成長を阻害しない程度であることが好ましい。
【0067】
粒子数測定装置12は、上述のようにFBRMを適用した装置であり、晶析の進行度合を観測するために、晶析槽11の容器15内にて飽和溶液から析出した結晶の粒子数を実測し、その粒子数の実測値を温度制御装置14の粒子数変換器31へオンラインで出力するようになっている。また、粒子数測定装置12は、溶液中の結晶の粒径分布と粒子数を測定するために、その溶液にレーザー光を照射する光照射部と、結晶からの反射光を受光する光受光部とから構成され、容器15内に配置された光照射/受光部27を有する変換器28を備えている。
【0068】
濃度測定装置13は、上述のような溶液の濃度の測定方法を適用した装置であり、晶析の進行度合を検出するために、晶析槽11の容器15内の溶液の濃度を実測し、その濃度の実測値を温度制御装置14の粒子数変換器31へオンラインで出力するようになっている。また、濃度測定装置13は、溶液の濃度を測定するために、容器15内に配置された検出部29を有する変換器30を備えている。
【0069】
温度制御装置14は、粒子数変換器31と、モデル予測制御により構成される温度調節器32と、冷却温度プロファイル設定器33と、表示/操作器34とから概略構成されている。
【0070】
粒子数変換器31は、粒子数測定装置12と濃度測定装置13に接続されており、粒子数測定装置12から出力された容器15内の飽和溶液に析出した結晶の粒子数の実測値と、濃度測定装置13から出力された容器15内の飽和溶液の濃度の実測値とから、上記の式(3)により、晶析過程の変換係数Aを逐次算出し、上記の式(4)により、容器15内の飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数を逐次算出し、この絶対粒子数を温度調節器32に出力するようになっている。
【0071】
温度調節器32は、容器15内の内温制御とジャケット16内のジャケット入口温度制御とのカスケードに接続されたモデル予測制御による主調節器35および従調節器36から構成されている。
主調節器35は、温度制御装置14内に実装され、容器15内の溶液の温度を測定する温度測定検出器(測温抵抗体)37とその変換器38が接続されている。また、主調節器35には、冷却温度プロファイル設定器33が接続されている。設定器33は、冷却温度プロファイルを、制御冷却法、直線冷却法もしくは自然冷却法のいずれか、または一定温度を選択できる。
従調節器36には、容器15内の内温の変換器38が接続されている。また、従調節器36には、ジャケット16内から排出された媒体の温度(ジャケット16の出口温度)を測定する温度測定部39を有する変換器40が接続されている。さらに、従調節器36には、ジャケット16内の空間に供給する冷却水または水蒸気の温度(ジャケット16の入口温度)を測定する温度測定部26を有する変換器41が接続されている。変換器38、変換器40、変換器41から出力される温度は、モデル予測制御の内部モデルの入力となり、モデル予測制御はそれらの値に基づいて冷却水供給バルブ21、水蒸気供給バルブ22のバルブ開度を算出する。より厳密な温度制御を実現するためには、冷却水供給源19、水蒸気供給源20から供給される各々の温度を測定し、モデル予測制御の内部モデルの入力に加える。
【0072】
主調節器35は、容器15内の溶液の温度が、表示/操作器34により入力された冷却温度プロファイル(上述の冷却温度プロファイル)を目標値とし、変換器37から入力された容器15内の溶液の温度との偏差に基づいて、ジャケット16内から容器15内への一次遅れ時定数と無駄時間を考慮したジャケット16の入口温度の設定値を、従調節器36に出力するようになっている。また、モデル予測制御を構成する主調節器35は、粒子数変換器31から入力された絶対粒子数が閾値を超えると、加熱制御則により算出された冷却温度プロファイルからの上乗せ温度ΔTを加算した冷却温度プロファイルを上記の式(7)に示す新たな目標値とし、容器15内の飽和溶液を加熱するように、ジャケット16の入口温度の設定値を従調節器36に出力するようになっている。
【0073】
従調節器36は、主調節器35とカスケード制御を構成し、主調節器35から入力されたジャケットの入口温度の設定値、変換器38から入力された容器15内の溶液の温度、変換器41から入力されたジャケット16の入口温度、および、変換器40から入力されたジャケットの出口温度から、容器15内の溶液の温度が、表示/操作器34により入力された冷却温度プロファイルに従って低下するように、冷却水供給源19からジャケット16内へ冷却水を供給するためのバルブ21の開度、および/または、水蒸気供給源20からジャケット16内へ水蒸気を供給するためのバルブ22の開度を制御し、ジャケットの入口温度を調節するようになっている。
【0074】
表示/操作器34は、冷却温度プロファイル設定器33に、所定の冷却温度プロファイル、理論析出量Wth、結晶の絶対粒子数の目標値N、加熱制御開始条件となる閾値Nth、閾値係数kth、加熱制御側の上乗せ温度比例定数kを入力する操作などを行うとともに、その冷却温度プロファイル、晶析中の容器15内の溶液の温度変化、析出した結晶の総粒子数、内温設定値、上乗せ温度などを表示することができるようになっている。このような表示/操作器34としては、制御専用のコントローラや一般的なパーソナルコンピュータなどが用いられる。
【0075】
この晶析装置10を用いた晶析方法を説明することにより、この晶析装置10の作用を説明する。
まず、任意の温度の飽和溶液を調製するために、所定量の溶媒と、その温度において溶媒に溶解する所定量の化合物とを、容器15に入れる。
次いで、攪拌器18により容器15内の溶媒と化合物を攪拌、混合するとともに、主調節器35から、容器15内の溶液の内温が目標値となるようなジャケット16の入口温度の設定値を従調節器36に出力する。さらに、そのジャケット16の入口温度の設定値、検出器38から入力された容器15内の溶液の温度、検出器41から入力されたジャケット16の入口温度、および、検出器40から入力されたジャケットの出口温度に従って、従調節器36により、容器15内の溶液を加熱するように、冷却水供給源19からジャケット16内へ冷却水を供給するためのバルブ21の開度、および/または、水蒸気供給源20からジャケット16内へ水蒸気を供給するためのバルブ22の開度を制御する。
これにより、溶媒と化合物を加熱して、溶媒に化合物を溶解し、この化合物を含む溶液を調製する。
【0076】
この溶液の調製時において、溶媒および化合物を加熱するための内温の目標温度は、特に限定されないが、得られる溶液に化合物の結晶が残存しないように飽和溶液温度よりも5℃程度高く設定し、溶解時間を短縮するためには飽和溶液温度よりも10℃以上の目標温度としてもよい。
なお、調製直後の溶液は、必ずしも飽和溶液である必要はなく、晶析を開始する際には飽和溶液となるように、冷却水供給源19からジャケット16内へ冷却水を供給して、その溶液を所定の温度まで冷却する。
【0077】
次いで、溶液の温度が晶析を開始する温度に達した後、しばらくの間、溶液の温度を、その温度に保持するか、あるいは、直ちに、晶析を開始する。温度調節器32は、予め表示/操作器34により入力された冷却温度プロファイル(上述の直線状の温度プロファイル)に従って、溶液を冷却するように、冷却水供給源19からジャケット16内へ冷却水を供給するためのバルブ21の開度、および/または、水蒸気供給源20からジャケット16内へ水蒸気を供給するためのバルブ22の開度を制御し、晶析が進行する。
なお、晶析開始前には、表示/操作器34から冷却温度プロファイルの設定、所定の冷却温度プロファイル、理論晶析量、結晶の絶対粒子数の目標値、加熱制御開始のための閾値係数、加熱制御での上乗せ温度比例定数を入力する。
【0078】
晶析を行っている間、粒子数測定装置12による容器15内にて析出した結晶の粒子数の測定、濃度測定装置13による容器15内の飽和溶液の濃度の測定を行い、その測定結果から、粒子数変換器31により、析出した結晶の絶対粒子数を算出する。
そして、粒子数変換器31による結晶の絶対粒子数の算出値が上記の閾値を超えた時、絶対粒子数の加熱制御が開始され、すなわち、冷却温度プロファイルへの上乗せ温度が加えられ、その温度を目標値とし、主調節器35から、容器15内の飽和溶液を加熱するように、ジャケット16の入口温度の設定値を従調節器36に出力する。さらに、そのジャケット16の入口温度の設定値、変換器38から入力された容器15内の飽和溶液の温度、変換器41から入力されたジャケット16の入口温度、および、変換器40から入力されたジャケットの出口温度に従って、従調節器36により、容器15内の飽和溶液を加熱するように、冷却水供給源19からジャケット16内へ冷却水を供給するためのバルブ21の開度、および/または、水蒸気供給源20からジャケット16内へ水蒸気を供給するためのバルブ22の開度を制御する。詳細には、従調節器36により、結晶の絶対粒子数が目標値を超えた時点から加熱制御が開始され、結晶の絶対粒子数の目標値となるように、冷却水供給源19からジャケット16内へ冷却水を供給するためのバルブ21の開度、および/または、水蒸気供給源20からジャケット16内へ水蒸気を供給するためのバルブ22の開度を制御する。これにより、容器15内の溶液に、結晶の過剰分を溶解させ、絶対粒子数を目標値に戻す。
【0079】
次いで、粒子数変換器31による結晶の絶対粒子数の算出値が上記の目標値に戻った後、再び、主調節器35が、容器15内の溶液を冷却するように、ジャケット16の入口温度の設定値を従調節器36に出力する。さらに、そのジャケット16の入口温度の設定値、変換器38から入力された容器15内の溶液の温度、変換器41から入力されたジャケット16の入口温度、および、変換器40から入力されたジャケットの出口温度に従って、従調節器36により、容器15内の溶液を冷却するように、冷却水供給源19からジャケット16内へ冷却水を供給するためのバルブ21の開度、および/または、水蒸気供給源20からジャケット16内へ水蒸気を供給するためのバルブ22の開度を制御し、上記の冷却温度プロファイルに従って溶液を冷却し、晶析を継続する。
【0080】
そして、飽和溶液の温度が予め設定した晶析終了温度に達した時点で、飽和溶液の冷却を終了して、温度制御装置14により、冷却温度プロファイルに従う温度制御を終了し、冷却温度プロファイルの最終温度を保持し、晶析を完了する。
【0081】
本実施形態の晶析装置10によれば、晶析槽11内にて飽和溶液から析出した結晶の粒子数を実測し、その粒子数の実測値をオンラインで出力する粒子数測定装置12と、晶析槽11内の飽和溶液の濃度を実測し、その濃度の実測値をオンラインで出力する濃度測定装置13と、溶液を、冷却温度プロファイルに従って冷却する温度制御を行うとともに、粒子数測定装置12から出力された粒子数の実測値と、濃度測定装置13から出力された濃度の実測値とから、飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数を算出し、その絶対粒子数が予め設定した目標値を超えた時、飽和溶液を加熱して、溶液に前記結晶の過剰分を溶解させ、絶対粒子数を目標値に戻した後、再び冷却温度プロファイルに従って溶液を冷却するという温度制御を行う温度制御装置14とを備えているので、従来のように、冷却のみを実施する晶析装置に比べて、結晶の核化の時期を一度揃える(インターナルシーディング効果)ことができるから、全粒子の成長時間をほぼ等しくすることができる。すなわち、インターナルシーディング効果と同等な加熱操作を適用したことにより、粒径分布の幅が狭く、粒径が揃った単分散の結晶粒子を生成することが実現可能となる。
【0082】
また、バッチ毎に核化温度が異なる化合物、すなわち、不純物やゴミなどの影響を受けやすい化合物についても、常時、粒子数測定装置12により結晶の粒子数を実測し、検出するとともに、濃度測定装置13により飽和溶液の濃度を実測し、検出するので、温度制御装置14により、結晶の総粒子数を正確に検出できるから、その後の加熱制御によって結晶の絶対粒子数を目標値となるような温度制御を実行することによって、バッチ毎の粒径分布のばらつきを抑えることが可能となる。
【0083】
また、このような絶対粒子数を管理するフィードバック制御を冷却晶析工程に導入したことにより、単に冷却温度プロファイルに従う温度制御を行う晶析装置によって得られる粒径分布や、運転員の手動操作により経験と勘に頼った温度制御によって得られる粒径分布とは異なり、安定的に所望の粒径の単分散粒子を得ることができる。
さらに、温度制御装置14による、結晶の核化を検出した後、結晶の絶対粒子数が閾値を超えた後の加熱操作により、絶対粒子数を目標値とした後は、予め設定した冷却温度プロファイルに従わずに、結晶の二次核化を抑制できるので、任意の温度制御を実現可能とすることができる。すなわち、絶対粒子数が目標値に到達した後は、冷却温度プロファイルを変化させて、晶析の時間を短縮することもできる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
「実施例」
図1に示したような晶析装置を用いて、カリミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム12水和物、AlK(SO・12HO)の晶析を行った。
晶析槽の容器としては、容積が500mLのものを用いた。
溶媒として水(HO)を用いた。
晶析槽の容器内にて、この溶媒に50℃の飽和溶液となるようなカリミョウバンを秤量し、溶解しながら、容器の内温を55℃に調節し、カリミョウバンが全て溶解するのを待ち、50℃におけるカリミョウバン飽和溶液を調製した。
次いで、このカリミョウバン飽和溶液を、50℃から30℃まで80分かけて、直線状の線形冷却温度プロファイルに従って冷却し、核化検出後、加熱冷却を実施し、カリミョウバンの結晶を生成した。
晶析の開始から終了まで、粒子数測定装置により、晶析槽内にて飽和溶液から析出した結晶の粒子数を実測し、その粒子数の実測値をオンラインで温度制御装置に出力し、濃度測定装置により、晶析槽内の飽和溶液の濃度を実測し、その濃度の実測値をオンラインで温度制御装置に出力するとともに、温度制御装置により、粒子数の実測値と、飽和溶液の濃度の実測値とから、絶対粒子数変換係数を求め、飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をオンラインにて算出した。
晶析開始から、核化を検出後、結晶の絶対粒子数が、予め設定した目標値の3倍となる閾値まで、上記の線形冷却温度プロファイルに従って、飽和溶液を冷却し、結晶の絶対粒子数が閾値を超えた時点から、加熱制御を開始した。ここで、結晶の絶対粒子数が閾値を超えた時点における飽和溶液の温度に対して、溶液の温度が3℃高くなるような上乗せ温度比例定数に設定した。
なお、結晶の所望プロダクトサイズは200μm、理論晶析量は88.5g、絶対粒子数の目標値は6.3×10個、結晶の絶対粒子数の閾値を1.89×1010個とし、粒子数測定装置からの総粒子数基準で100[♯/s]とした。また、絶対粒子数変換係数Aは、粒子数変換器にて総粒子数と濃度より逐次算出され、結晶の絶対粒子数として使用されている。
そして、総粒子数が、上記の総粒子数に達したら、冷却温度プロファイルに上乗せ温度を加算した温度を内温の目標とする加熱制御を開始し、晶析終了まで温度制御を実施した。
以上により、カリミョウバンの結晶を生成した。
この実施例1における冷却温度プロファイル、溶液温度の実測値、および、FBRMによる結晶の総粒子数の測定結果を図3に示す。図中、核化直後の発熱反応の時点まで内温と予め設定した冷却温度プロファイルが一致し、FBRMの総カウント数が100[♯/s]とを超えた時点、すなわち、閾値を超えた時点から上記の式(6)、(7)で示す加熱制御を実施した。このように、内温が冷却温度プロファイルに一致する温度制御は、PID制御では熱移動プロセスの一次遅れ時定数や無駄時間の影響を受けるために実現不可能であり、内温の温度制御にモデル予測制御を適用した効果が表れた。
また、この実施例により、得られた結晶のFBRMによる粒径分布と通常の線形冷却による比較例を図4に示す。
【0086】
「比較例」
図1に示したような晶析装置を用いて、カリミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム12水和物、AlK(SO・12HO)の晶析を行った。
晶析槽の容器としては、容積が500mLのものを用いた。
溶媒として水(HO)を用いた。
晶析槽の容器内にて、この溶媒に50℃の飽和溶液となるようなカリミョウバンを秤量し、溶解しながら、容器の内温を55℃に調節し、カリミョウバンが全て溶解するのを待ち、50℃におけるカリミョウバン飽和溶液を調製した。
次いで、このカリミョウバン飽和溶液を、50℃から30℃まで80分かけて、晶析の開始から終了まで、直線状の線形冷却温度プロファイルに従って冷却し、核化検出後の加熱冷却を実施せずに、カリミョウバンの結晶を生成した。
また、通常の線形冷却により、得られた結晶の粒径分布を測定した。結果を図4に示す。
【0087】
「結果」
図4において、縦軸は、単位時間当たりのFBRMの総粒子数測定値、横軸は対数粒径分布を示す。
図4の結果から、実施例では、カリミョウバン飽和溶液を直線状の温度プロファイルに従って冷却し、結晶の絶対粒子数が閾値を超えてから、飽和溶液を加熱したので、粒径234μmに鋭いピーク値を有し、そのときのFBRMの総粒子数測定値は54[♯/s]となり、本発明による効果として、単分散粒子が得られたことが確認された。
一方、比較例では、単にカリミョウバン飽和溶液を線形冷却温度プロファイルに従って冷却したので、粒径195μmに弱いピーク値を有し、そのときの粒子の総粒子数測定値は僅か1.5[♯/s]であり、さらに、粒径分布はブロードとなった。
以上の結果から明らかなように、所望のプロダクトサイズから算出した絶対粒子数の目標値を満たすような加熱制御を加え、結晶の絶対粒子数が閾値を超えてから、飽和溶液を加熱するという温度制御を実施することにより、単分散粒子が得られ、平均プロダクト粒径も増大することが確認された。
【符号の説明】
【0088】
10・・・晶析装置、11・・・晶析槽、12・・・粒子数測定装置、13・・・濃度測定装置、14・・・温度制御装置、15・・・容器、16・・・ジャケット、17・・・冷却加熱装置、18・・・攪拌器、19・・・冷却水供給源、20・・・水蒸気供給源、21・・・バルブ、22・・・バルブ、23・・・冷却水供給管、24・・・供給管、25・・・水蒸気供給管、26・・・温度測定部、27・・・光照射/受光部、28・・・変換器、29・・・検出部、30・・・変換器、31・・・粒子数変換器、32・・・温度調節器、33・・・冷却温度プロファイル設定器、34・・・表示/操作器、35・・・主調節器、36・・・従調節器、37・・・温度測定部、38・・・変換器、39・・・温度測定部、40・・・変換器、41・・・変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種晶なしの冷却晶析において、化合物を溶解した溶液を冷却して、前記溶液から前記化合物の結晶を析出させる晶析方法であって、
前記溶液を、冷却温度プロファイルに従って冷却しながら、飽和溶液から析出した前記結晶の粒子数および前記飽和溶液の濃度を実測して、前記粒子数の実測値と、前記濃度の実測値とから、前記飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をマスバランスにより算出し、該絶対粒子数が閾値を超えた時、前記飽和溶液を加熱して、前記絶対粒子数が目標値となるように加熱制御を実施し、前記溶液に前記結晶の過剰分を溶解させ、前記絶対粒子数を前記目標値に戻すように制御した後、再び予め設定した冷却温度プロファイルに従って前記飽和溶液を冷却することを特徴とする晶析方法。
【請求項2】
前記絶対粒子数の目標値を、晶析開始温度から晶析終了温度の温度差によって前記飽和溶液から析出する理論晶析量と、前記結晶の所望とするプロダクト粒径の目標値とから算出することを特徴とする請求項1に記載の晶析方法。
【請求項3】
種晶なしの冷却晶析に用いられ、化合物を溶解した溶液を冷却して、前記溶液から前記化合物の結晶を析出させる晶析を行う晶析装置であって、
前記溶液を収容する容器、および、前記溶液を冷却および/または加熱する手段を有する晶析槽と、
前記晶析槽内にて飽和溶液から析出した結晶の粒子数を実測し、該粒子数の実測値をオンラインで出力する粒子数測定装置と、
前記晶析槽内の前記飽和溶液の濃度を実測し、該濃度の実測値をオンラインで出力する濃度測定装置と、
前記溶液を、冷却温度プロファイルに従って冷却する温度制御を行うとともに、前記粒子数測定装置から出力された前記粒子数の実測値と、前記濃度測定装置から出力された前記濃度の実測値とから、前記飽和溶液から析出した結晶の絶対粒子数をマスバランスにより算出し、該絶対粒子数が閾値を超えた時、前記絶対粒子数が目標値となるように前記飽和溶液の加熱制御を実施し、前記溶液に前記結晶の過剰分を溶解させ、前記絶対粒子数を前記目標値戻した後、再び予め設定した冷却温度プロファイルに従って前記飽和溶液を冷却するという温度制御を行う温度制御装置と、を備えたことを特徴とする晶析装置。
【請求項4】
前記晶析槽は、前記容器に収容された前記溶液を攪拌する攪拌器を備えたことを特徴とする請求項3に記載の晶析装置。
【請求項5】
前記温度制御装置は、予め設定した冷却温度プロファイルを実現する温度制御と、前記絶対粒子数を管理するための加熱制御とを組み合わせた制御を行うことを特徴とする請求項3または4に記載の晶析装置。
【請求項6】
前記温度制御装置は、前記絶対粒子数が前記目標値に達した後、直線パターン、自然冷却パターンもしくは制御冷却パターンのいずれかの冷却温度プロファイルに従って、前記飽和溶液を冷却する制御を行うことを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の晶析装置。
【請求項7】
前記温度制御装置は、前記絶対粒子数が閾値を超えた時、前記飽和溶液の加熱制御を少なくとも1回行うことを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載の晶析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−121012(P2011−121012A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281654(P2009−281654)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)