説明

暖房機の燃焼制御方法

【課題】 省エネルギー性能に優れた暖房機の燃焼制御方法に関する。
【解決手段】 バーナ2に燃料を供給するポンプ3と、バーナ2に燃焼空気を送る燃焼用送風機4とを設け、室内温度RTを検出する室内温度検出手段9と、室内温度RTを設定する温度設定手段10と、運転スイッチ11の信号に基づいてポンプ3と燃焼用送風機4とを制御してバーナ2の運転の制御と燃焼量の調節を行う燃焼制御手段12とを備える。燃焼制御手段12は室内温度検出手段9と温度設定手段10からの信号を用いて燃焼中のバーナ2の燃焼量を可変する。燃焼制御手段12は室内温度検出手段9で検出した室内温度RTが温度設定手段10の設定温度STから所定の温度範囲Dになると作動するタイマ手段13を備え、タイマ手段13のカウントが設定時間tになったときに設定温度STを所定温度Tc低く変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は暖房機の室内温度制御に最適な暖房機の燃焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房機には熱源であるバーナとその燃焼制御手段を備え、また、室内温度検出手段と、期待する室内温度を設定する温度設定手段とを備え、燃焼制御手段は室内温度検出手段で検出した室内温度が、予め温度設定手段で設定した設定温度に維持されるようにバーナの燃焼量を調節するものがある。
【0003】
そして、この種の暖房器では燃焼制御手段が最大燃焼から最小燃焼の間で複数段またはリニアに燃焼量が可変できるようになっており、室内温度が設定温度より高いときに燃焼量を低下させ、室内温度が設定温度より低いときに燃焼量を増加することによって、設定温度を維持することができる。
【0004】
ところで、室内温度が設定温度に達した後は室内温度が設定温度から所定の温度差になる毎にバーナの燃焼量を低下させるが、狭い室内で暖房機を使用した場合や、秋口や春先などの暖かいときに使用した場合には、部屋の大きさや気温に対応する燃焼量よりも大きな燃焼量となり、室内温度が設定温度に達してからの燃焼量の低下が追いつかず、室内温度が上昇を続けることがあり、設定温度よりもかなり高い温度でバランスして、設定温度よりも高い室内温度を維持したままとなるときがある。
【0005】
この対策として、室内温度が設定温度より2〜3度高くなったときにバーナの燃焼を停止して、設定温度より低下したときにバーナの燃焼を再開するセーブ運転機能を備えたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−19463号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のセーブ運転機能では、バーナが頻繁に燃焼と停止を繰り返すため、室内温度の変化が起こり易くなり、室内温度が安定しにくくなることがある。また、消火・点火時に悪臭を発生させる時もあり、この室内温度のばらつきや点火・消火時の悪臭による不快感をさける為に、セーブ運転機構があってもほとんど使わない人も多かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記の課題を解決するもので、枠体1内にバーナ2と、このバーナ2に燃料を供給するポンプ3と、このバーナ2に燃焼空気を送る燃焼用送風機4とを設け、室内温度RTを検出する室内温度検出手段9と、室内温度RTを設定する温度設定手段10と、運転スイッチ11の信号に基づいて前記ポンプ3と前記燃焼用送風機4とを制御して前記バーナ2の運転の制御と燃焼量の調節を行う燃焼制御手段12とを備え、該燃焼制御手段12は前記室内温度検出手段9と前記温度設定手段10からの信号を用いて燃焼中の前記バーナ2の燃焼量を可変する暖房機であって、前記燃焼制御手段12は前記室内温度検出手段9で検出した室内温度RTが前記温度設定手段10の設定温度STから所定の温度範囲Dになると作動するタイマ手段13を備え、そのタイマ手段13のカウントが設定時間tになったときに前記設定温度STを所定温度Tc低く変更することを特徴とするものである。
【0009】
前記燃焼制御手段12は、前記温度設定手段10の設定温度STが予め設定した下限温度STb以下のときは、前記設定温度STの変更要求を行なわないようにすることで、室内温度RTが下がりすぎないようにしている。
【0010】
また、前記燃焼制御手段12は、燃焼制御開始時の前記温度設定手段10の設定温度STが予め設定した上限温度STuより高いときは、前記設定温度STを前記上限温度STuに変更することで、室内温度RTが高くなりすぎないようにしている。
【0011】
また、前記燃焼制御手段12は、前記バーナ2の燃焼量として、大燃焼量・小燃焼量・その間の燃焼量による複数段階の燃焼量調節段階Nを備え、室内温度RTが設定温度STよりも高いときに複数段階の燃焼量調節段階Nを1段階低くし、室内温度RTが設定温度STよりも低いときに複数段階の燃焼量調節段階Nを1段階高く制御しており、かつ、燃焼量調節段階Nの変更は、前記バーナ2の運転開始から最初に室内温度RTが設定温度STに一致したときと、前回の燃焼量変更から所定時間tsが経過したときと、前記室内温度RTと前記設定温度STとが予め設定した温度差dになったときに実施されることにより、室内温度RTが設定温度STから大きくばらつくことなく、安定した室内温度RTを維持するから、バーナ2の燃焼量を低下させることができる。
【0012】
また、前記燃焼制御手段12は、前記バーナ2が最小燃焼量のときにおいて、前記室内温度検出手段9で検出した室内温度RTが前記温度設定手段10の設定温度STよりも一定温度高くなったときに前記バーナ2の燃焼を燃焼量調節段階Nから外れた微小燃焼に変更もしくは前記バーナ2の運転を停止することにより、室内温度RTが異常に上昇することを防ぐことができる。
【0013】
また、前記設定温度STを所定温度Tc低く変更したときには、変更後の設定温度STが室内温度RTよりも低くなるように前記温度範囲Dと所定温度Tcとを設定したことにより、設定温度STを変更後に必ずバーナ2の燃焼量が維持もしくは低く変更されるものとなる。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、室内温度検出手段9で検出される室内温度RTが設定温度STから所定の温度範囲Dになったときにタイマ手段13が作動し、設定時間tが経過すると設定温度STから所定温度Tcを引いた温度を新たな設定温度ST1として設定し、燃焼制御手段12は変更された設定温度ST1に基づいて燃焼制御を行なう。そして、室内温度RTが変更された設定温度ST1の所定の温度範囲Dになり、設定時間tが経過すると再び設定温度ST1から所定温度Tcを引いた設定温度ST2に変更するものであり、燃焼制御手段12がこの動作を繰り返すことで設定温度STを所定温度Tcずつ低くしていくものである。
運転を開始してから最初に設定温度STに達するまでは、使用者が希望する設定温度STまで室内温度RTを上昇させることで室内を暖めることができ、設定温度STに達した後は、設定温度STを所定温度Tcずつ低下させていくのでバーナ2の燃焼量の増加を抑えることができ、使用者に不快感を与えることなく、室内の暖めすぎと燃料消費量を抑えることができるものとなった。
【0015】
また、最初の設定温度STと変更後の設定温度STnとの差が大きく室内温度RTが大きく低下するときや、最初の設定温度STが低く室内温度RTが低くなりすぎるときは、使用者が寒く感じることがある。このため、設定温度STを変更するときの下限温度STbを設定しており、設定温度STが変更されて下限温度STbまで低下すると設定温度STの変更動作を停止し、下限温度STbをそのまま設定温度STとして燃焼制御を行なうものである。一方、燃焼制御開始時の設定温度STが下限温度STb以下のときも、設定温度STの変更動作には入らず、設定された設定温度STのまま燃焼制御を行なうようにしたから、室内温度RTが低くなりすぎることはなく、快適さを失わない室温を維持しながら、燃料消費量を抑えることができるようになった。
【0016】
また、最初の設定温度STが高く設定されていると、室内温度RTが設定温度STに上昇するまでの時間が長くなって燃料消費量が増加し、室内の暖めすぎや無駄なエネルギー消費の原因となりやすい。このため、設定温度STには上限温度STuを設定しており、設定温度STが上限温度STuより高いときは、設定温度STを上限温度STuに変更してから燃焼制御を開始するようにしたから、室内温度RTが最初に設定温度STに達するまでの燃料消費量の増加と室内の暖めすぎを防止できるものとなり、無駄なエネルギー消費を抑えることができるものである。
【0017】
また、燃焼制御手段12には複数段階の燃焼量調節段階Nを備えて、燃焼量調節段階Nの変更を、バーナ2の運転開始から最初に室内温度RTが設定温度STに一致したときと、前回の燃焼量変更から所定時間tsが経過したときと、室内温度RTと設定温度STとが予め設定した温度差dになったときに実施するように設定している。このようにすると、設定温度STに対して室内温度RTが高くなりすぎることなくバーナ2の燃焼量調節段階Nが低下して燃料の無駄な消費を抑えることができると共に、室内温度RTが設定温度ST付近で安定して所定の温度範囲Dに維持されやすくなるから、短時間で設定温度STが低下して、室内の暖めすぎとエネルギーの無駄な消費を防ぐことができるものとなる。
【0018】
また、暖房する室内の大きさが暖房機の能力に対して狭いときは、バーナ2の燃焼量調節段階Nが最小燃焼量に設定されていても室内温度RTが上昇を続けることがある。このため、燃焼制御手段12はバーナ2の燃焼量調節段階Nが最小燃焼量のときに、室内温度RTが設定温度STよりも一定温度以上高くなったときには、バーナ2の運転を停止し、室内温度RTが設定温度ST以下となったときにバーナ2の燃焼を開始するから、通常の燃焼量調節段階の範囲で室内温度RTが上昇を続けるときに、室内温度RTの異常上昇を防ぐと共に、エネルギーの無駄な消費を抑えることができる。
また、室内温度が高くバーナ2に高温の空気が供給されるときは、通常の燃焼量調節段階Nの最小燃焼量以下の微小燃焼量でも安定した燃焼が可能となるから、バーナ2の運転を停止する代わりに微小燃焼に変更してもよく、悪臭の発生を伴うことなく室内温度RTの異常上昇を防ぐことができる。
【0019】
また、この発明では、設定温度STが所定温度Tc低く変更されたときに、設定温度STが室内温度RTよりも低くなるように温度範囲Dと所定温度Tcとを設定したから、設定温度STが所定温度Tc低く変更されたときには必ずバーナ2の燃焼量が維持もしくは低く変更されるものとなる。このため、設定温度STの変更に対してバーナ2の燃焼量の変更が追従でき、室内温度RTが設定温度STに対して高くなりすぎることなく、エネルギーの無駄な消費を防ぐことができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施例を示す暖房機の断面図である。
【図2】この発明の実施例を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施例を示す制御状態を示す温度チャートである。
【図4】この発明の他の実施例を示す制御状態を示す温度チャートである。
【図5】この発明の他の実施例を示す制御状態を示す温度チャートである。
【図6】この発明の他の実施例を示す制御状態を示す温度チャートである。
【図7】この発明の実施例を示す制御状態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、1は温風暖房機の枠体、2は枠体1内に配置したバーナ、14は燃焼用空気が送られる風胴、15は風胴14内に設置された有底筒形のポット、15aは風胴14から燃焼用空気が供給できるようにポット15の側壁に設けた多数の小径空気孔であり、前記バーナ2の本体は風胴14とポット15によって構成される。4はポット15に燃焼用空気を供給するための燃焼用送風機であり、燃焼用送風機4によって圧送された燃焼用空気は風胴14に送られ、小径空気孔15aの位置と大きさにより適切に制御されてポット15内に供給される。
【0022】
16はポット15に供給する燃料が送られる油受皿、3は油受皿16の上面に取付けた電磁ポンプで構成するポンプ、17はポット15とポンプ3との間に設けた燃料パイプ、18は燃料パイプ17のポット15内に伸ばした先端で構成する送油ノズルであり、前記風胴14とポット15の側壁とを貫通するようにポット15内部に伸ばした送油ノズル18から燃料がポット15の底面に供給される。
【0023】
19はポット15の側壁からポット15の底面と間隔を介して取付けた予熱兼用の点火ヒータ、20はポット15内に設置された助燃部材、8はポット15の上方に配置された燃焼室であり、ポット15内に供給された燃料は、点火ヒータ19や燃焼熱で高温となっているポット15の底面で気化し、初期燃焼を開始しながら小径空気孔15aから供給される燃焼用空気の流れと助燃部材20の働きで混合し、燃焼室8内で完全燃焼するものである。
【0024】
5は枠体1を前後に貫通して燃焼室8を取り囲むように配置された送風経路、6は送風経路5の後方に設置された対流用送風機、7は送風経路5の前方に設置された吹出口であり、前記燃焼室8は送風経路5内に開口し、その燃焼室8で完全燃焼した燃焼ガスは送風経路5に送られ、前記対流用送風機6によって取り込まれた室内空気と燃焼ガスとが送風経路5内で混合され、吹出口7より温風として吹出されるものである。
【0025】
また、21は枠体1の表面に設置された操作盤、11は操作盤21に設けられた運転スイッチ、図2に示すブロック図における12は枠体1内に設置されたコンピュータシステムで構成してCPU・ROM・RAM・I/O装置などで動作している燃焼制御手段であり、前記運転スイッチ11の入/切信号は燃焼制御手段12に送られ、該燃焼制御手段12は運転スイッチ11の信号に基づいてポンプ3、燃焼用送風機4、点火ヒータ19、対流用送風機6の入/切などを指示し、温風暖房機の運転を制御している。
【0026】
また、9は枠体1の後方に設置された温度センサで構成する室内温度検出手段、10は操作盤21上に設けたボタンで操作されて使用者が所望する温度を記憶する温度設定手段であり、温度設定手段10で設定されて記憶されている温度データと、室内温度検出手段9よりもたらされる現在の室内の温度データを前記燃焼制御手段12にて比較し、設定温度STの方が室内温度RTよりも高い場合には、ポンプ3の流量及び燃焼用送風機4の回転数を増加することによってバーナ2の燃焼量を増加させ、室内温度RTの方が設定温度STよりも高い場合には、ポンプ3の流量及び燃焼用送風機4の回転数を減少することによってバーナ2の燃焼量を減少させており、室内温度RTの数値を設定温度STの数値に近づけるように制御を行うものである。
【0027】
バーナ2の燃焼量の変更方法として、燃焼量が最小燃焼状態と最大燃焼状態とその間のいくつかの燃焼状態からなる複数個の燃料流量を定め、この燃料流量に対応する燃焼用送風機4の回転数を設定することによって、複数段階の燃焼量調節段階N1〜N4が決められており、室内温度RTと設定温度STとの差が接近して安定した室内温度RTが維持できるように、ある燃焼量調節段階Nxから異なる燃焼量調節段階Nxに段階的にバーナ2の燃焼量を変化させている。
【0028】
通常の運転状態においては、前回燃焼量を変更した時の温度と室内温度RTとの差を監視し、一定の温度差dに広がったときに燃焼量を変更させるものであり、設定温度STに対して室内温度RTが高いときにはバーナ2の燃焼量を下降させ、設定温度STに対して室内温度RTが低いときにはバーナ2の燃焼量を上昇させる制御を行い、温度差dとなるポイントで燃焼量の変更を繰り返すことによって、室内温度RTを設定温度STに接近させることができる。
【0029】
上記の温度制御方法では、ある燃焼量調節段階N1〜N4のなかの特定の段階の燃焼量で発生する熱量と、暖房する室内から逸散する熱量とが殆ど同じになると、室内温度RTが一定の温度差dとなるポイントの温度と一致する状態になりにくく、室内温度RTが設定温度STからかなり外れた状態で安定してしまうことがある。
【0030】
このような状態が継続していても、やがて室内温度RTが温度差dとなるポイントに一致して燃焼量の変更が行なわれ、室内温度RTが設定温度STに近づいて期待した室内温度RTの状態に移行できる。しかし、この移行過程での室内温度RTの安定が設定温度STよりも高いときに発生したときには、室内は必要以上の暖房が長時間にわたって継続するため暖房エネルギーは大きなロスが発生しており、エネルギーの無駄な消費につながっていた。
【0031】
この発明はエネルギーの無駄な消費を抑えることができる燃焼制御方法を提案するものであり、燃焼制御手段12には、通常の燃焼制御とは別にエネルギー消費を抑えるためのセーブ機能を備えている。22は燃焼制御手段12のセーブ機能を有効にするための運転選択スイッチであり、通常の燃焼制御とセーブ機能とを切り換えることができるようになっている。
13は燃焼制御手段12に備えたタイマ手段であり、室内温度RTが設定温度STから所定の温度範囲Dになったときにタイマ手段13のカウントを開始し、室内温度RTが温度範囲Dから外れるとタイマ手段13のカウントを停止してリセットする。実施例では、設定温度STより低い側の温度D1から設定温度STより高い側の温度D2の範囲を所定の温度範囲Dと定めている。
【0032】
バーナ2が燃焼して室内温度RTが設定温度STと一致した時にバーナ2の燃焼量調節段階Nが1段階低く変更される。そして、その後は前回の燃焼量を変更した室内温度RTから、予め定めた温度差dの室内温度RTとなる毎に、バーナ2の燃焼量調節段階N1〜N4を低下させる燃焼量の変更を行なっている。
このとき、運転選択手段22によってセーブ機能が有効にしてあれば、室内温度RTが温度D1になったときにタイマ手段13がカウントを開始し、室内温度RTがそのまま所定の温度範囲Dを維持していればタイマ手段13はカウントを継続し、タイマ手段13のカウントが設定時間tになると設定温度STを所定温度Tc低くして設定温度ST1に変更する。
【0033】
この実施例を示す図3(a)では、室内温度RTが設定温度STからの温度差dとなるときに燃焼量調節段階Nが変更しており、室内温度RTが設定温度STに対して所定の温度範囲Dとなってから設定時間tが経過したときに、設定温度STが所定温度Tc低い設定温度ST1に変更している。このとき、バーナ2の燃焼量は燃焼量調節段階N1を維持している。そして、図3(b)に示すように、設定温度STが低く変更されると燃焼量調節段階Nが増加するときの温度も低くなり、室内温度RTが設定温度ST1から低温側の温度差dとなるまでは燃焼量調節段階N1が維持されるので、長時間にわたってバーナ2の燃焼量が低く維持できるものとなり、燃料消費量と室内温度RTの上昇が抑制され、無駄なエネルギー消費を防ぐことができるものとなった。
【0034】
また、設定温度STが所定温度Tc低く変更する時において、設定温度STより低い所定の温度範囲Dの温度D1の温度幅よりも所定温度Tcの温度幅が同じかそれよりも大きくなるように設定したから、室内温度RTが設定温度STより低いときでも、設定温度STが低く変更された時には、室内温度RTが必ず設定温度STよりも高くなる。このため、バーナ2の燃焼量調節段階Nが最小燃焼量N1のときは維持され、燃焼量調節段階N2〜N4のときは燃焼量が下降する制御が実施されるものとなる。
【0035】
図4の実施例は、室内温度RTが設定温度STより低いときに設定時間tが経過したときを示しており、設定温度がSTからST1に変更されると、室内温度RTは設定温度ST1より高くなるので、室内温度RTが設定温度ST1との温度差dになると燃焼量調節段階がN2からN1に低下する。もし設定温度STが変更されない場合は燃焼量調節段階N2が維持されて室内温度RTが上昇を続けるが、設定温度ST1が室内温度RTより低くなることで燃焼量調節段階N1に降下するので、燃料消費量が低減できると共に、室内温度RTの上昇を防ぐことができるものとなった。
【0036】
このように室内温度RTが設定温度ST付近で安定するときに、設定温度STを低下していくことで、バーナ2の燃焼量が低くなる方向に変更され、長時間にわたってバーナ2の燃焼量が低く維持できるものとなったから、燃料消費量と室内温度RTの上昇が抑制でき、エネルギーを無駄に消費することがなくなった。
【0037】
ところで、室内温度RTが設定温度ST付近まで上昇させて室内を暖めているから、設定温度STが低下しても室内温度RTが急激に低下することはないが、最初の設定温度STに対して変更後の設定温度STnとの差が大きくなると使用者が寒く感じることがある。また、最初の設定温度STが低いときは、設定温度STが低下したときに室内温度RTが低くなりすぎて使用者に不快感を与える可能性がある。
【0038】
このため、設定温度STには下限温度STbが設定されており、運転選択手段22によってセーブ機能を選択したときに設定温度STが下限温度STbより低いときは、セーブ機能をキャンセルして、温度設定手段10で設定された設定温度STのまま運転を継続する。
一方、設定温度STが下限温度STbよりも高いときに、運転選択手段22によってセーブ機能を選択してセーブ機能を有効にしたときは、設定温度STは下限温度STbまでは低下するが、変更された設定温度STが下限温度STbに一致すると次回の変更要求は行なわず、下限温度STbを設定温度STとしてバーナ2の燃焼制御を行なうものである。このため、セーブ機能を有効にしたときでも室内温度RTの下げすぎを防ぐことができ、使用者に不快感を与えることなく燃料消費量を抑えることができるものとなった。
【0039】
また、最初に温度設定手段10で設定された設定温度STが高すぎるときは、室内温度RTが設定温度STまで上昇して設定温度ST付近で安定するまでの時間が長く、燃料消費量も多くなってしまうため、無駄なエネルギー消費の原因となる。このため、設定温度STの上限温度STuが設定されており、設定温度STが上限温度STuよりも高いときにセーブ機能が選択されたときは、設定温度STを上限温度STuに変更してから制御を開始する。このようにすることで、室内温度RTが設定温度STに一致するまでの時間が長くなりすぎることはなく、また、室内温度RTが設定温度ST付近で安定しやすくなるので、無駄な燃料消費を抑えて確実に設定温度STが低下するものとなり、室内の暖めすぎによる無駄なエネルギー消費を抑えることができるものとなった。
【0040】
また、この発明の他の実施例として、燃焼制御手段12はバーナ2の燃焼量の変更を温度差dだけでなく、前回の燃焼量を変更したときから所定時間tsが経過したときにも燃焼量を変更する構成としている。
23は燃焼制御手段12に備えた第2タイマ手段であり、第2タイマ手段23はバーナ2の燃焼量が変更したときに作動して所定時間tsカウントする。前回燃焼量を変更した時から所定時間tsが経過すれば、室内温度RTと設定温度STとが所定の温度差dになる前でもバーナ2の燃焼量を1段階変更する構成である。温度差dとなるよりも早いポイントで燃焼量が低く変更されるので、室内温度RTが設定温度STから高くなる方向への変動を大幅に抑えることができるようになっている。
【0041】
所定時間tsの長さは、暖房機の暖房能力にあった部屋で使用されることを前提にして設計されるが、暖房機が予定した広さの部屋で使われないときもあり、予定よりも狭い部屋で使われる場合には、室内温度RTの上昇速度が速くなることがある。
このような場合においては、運転開始から最初に室内温度RTが設定温度STに一致したときから所定時間tsが経過する前に室内温度RTと設定温度STとの差が温度差dとなることがある。このため、所定時間tsが経過するよりも前に室内温度RTと設定温度STとが温度差dとなったときにも燃焼量を変更する構成としている。
【0042】
この実施例を示す図5(a)において、室内温度RTが最初に設定温度STに一致したときに燃焼量調節段階N4から燃焼量調節段階N3に変更しており、燃焼量調節段階N3に変更後の室内温度RTの上昇速度が速く、所定時間tsが経過する前に室内温度RTと設定温度STとが温度差dになると燃焼量調節段階N3から燃焼量調節段階N2に変更している。また、燃焼量調節段階N2に変更されてからは室内温度RTの上昇が緩やかになり、室内温度RTと設定温度STとが所定の温度差dとなる前に所定時間tsが経過したときに、燃焼量調節段階N2から燃焼量調節段階N1に変更している。
【0043】
したがって、室内温度RTの上昇速度が変動しても確実にバーナ2の燃焼量調節段階Nが低下するものとなり、室内温度RTを設定温度ST付近で安定させることができ、室内温度RTが設定温度STに一致した後に室内温度RTが設定温度STの所定の温度範囲Dから外れにくくなる。このため、燃焼量調節段階の変更が温度差dのときにだけ実施される方法に比べて、短い時間で設定温度STを低く変更することができるものとなる。また、設定温度STが低下するまでの間にバーナ2の燃焼量が低下するので、燃料消費量を確実に削減することができるものであり、この燃焼量調節方法とセーブ機能とを組み合わせることは非常に有効である。
【0044】
図5(a)の実施例では、室内温度RTが設定温度ST付近で安定し、設定温度STから所定の温度範囲Dを維持しているときにおいて、室内温度RTが設定温度STより低いときに設定時間tが経過したときのものであり、設定温度STから所定温度Tc低い設定温度ST1に変更されると、室内温度RTが設定温度ST1よりも高くなり、燃焼量調節段階の変更ポイントとなる所定時間tsが経過すると、燃焼量調節段階N2から燃焼量調節段階N1に変更される。もし、設定温度STのままの場合は、所定時間tsが経過したときに燃焼量調節段階N3に変更され、室内温度RTも上昇するが、この設定温度ST1では燃焼量調節段階Nが降下すると共に室内温度RTも低下するものとなり、燃料消費量の削減と室内温度RTの上昇を防ぐことができるものとなる。
【0045】
また、図5(b)は設定温度ST1に変更後の状態に係るものであり、燃焼制御手段12は変更後の設定温度ST1に基づいて燃焼制御しており、室内温度RTが設定温度ST1から所定の温度範囲Dを維持して設定時間tが経過すると設定温度ST1から所定温度Tc低い設定温度ST2に変更し、このときのバーナ2は燃焼量調節段階N1であるから燃焼量調節段階Nの変更は行なわず燃焼量が維持される。そして、設定温度ST2に変更後は、図5(c)に示すように室内温度RTが設定温度ST2より低下して、燃焼量調節段階Nの変更ポイントとなる所定時間tsとなるまでは燃焼量調節段階N1のまま維持する。
このようにすると、燃焼量調節段階N1が長時間に渡って維持されるから、バーナ2の発熱量は抑制することができ、室内温度RTも低温度が維持されるから、省エネルギーの効果がより高まるものである。
【0046】
また、暖房機が予定する部屋より小さな部屋で使用された時には、室内温度RTが設定温度STよりも高くなって、燃焼量が最小燃焼量の燃焼量調節段階N1が選択されても更に室内温度RTが上昇を続ける懸念があり、何らかの対応が必要である。
図6の実施例では、バーナ2が最小燃焼量の燃焼量調節段階N1で燃焼中に温度差dとなったときを示しており、当然室内温度RTは設定温度STよりも高いから、燃焼量の減少要求となるが、既に最小燃焼量の燃焼量調節段階N1が選択されているから、これ以上の燃焼量減少要求に対応できず、この燃焼量の変更要求を無視して、燃焼量調節段階N1の燃焼量を継続して選択している。
このように最小燃焼量の燃焼量調節段階N1による燃焼でも室内温度RTが上昇を続けるから、新たに前記燃焼制御手段12は、設定温度STに対して一定温度高い最高室内温度RThを定めており、室内温度RTがこの最高室内温度RThよりも高くなってしまったときには、バーナ2の運転を強制的に停止させている。
強制的にバーナ2の運転を停止させたときは、室内温度RTが設定温度STよりも低くなってから自動的に再度暖房運転を開始できるようにしても良い。
このため、暖房される室内は最高室内温度RTh以上に上昇することはなくなり、バーナ2が燃焼を続けることによる室内の暖めすぎを防止できる。また、設定温度STを低下させることができないときでも、暖房機の運転が停止するから、バーナ2はいたずらに燃料の消費を続けることがなく、省エネルギーの制御が可能となる。
【0047】
上記のようにバーナ2の運転を停止した後の制御動作として、室内温度RTが設定温度STよりも低くなってから自動的に再度暖房運転を開始できるようにして、暖房運転を継続する制御方法では、バーナ2の運転の停止や運転の開始時に不完全燃焼を起こすことがあり、この場合、暖房する室内に悪臭を放散して使い勝手の点で優れているが、暖房機として好ましくはない。
一般に、バーナ2が液体燃料を利用する時によく発生する現象であるが、バーナ2の特性として低温度の燃焼空気がバーナ2に供給される時には燃料の供給量を小さくし過ぎると燃焼が安定せず不完全燃焼を起こして、暖房する室内に悪臭や不完全燃焼ガスを放出して暖房機として使用できなくなることがある。
このため、このような現象が発生しないように、バーナ2の燃焼量として、低温空気でも完全燃焼できる比較的大きな燃焼量を最低燃焼量に定める時がある。このようなバーナ2では、上記のように室内温度RTが高温の最高室内温度RTh付近の時にはバーナ2の供給する燃焼空気の温度も高く、最小燃焼量の燃焼量調節段階N1以下の微小燃焼量でも安定した燃焼が継続できるものとなる。
この種のバーナ2が使用されている時には、暖房中の室内温度RTがこの最高室内温度RThに到達したときには、バーナ2の運転停止に代えて、前記燃焼量調節段階N1〜N4から外れた微小燃焼量による運転を行うことが可能になる。そして、この微小燃焼量でバーナ2が燃焼続けるときにおいて、室内温度RTが低下して、設定温度ST以下になれば、再びバーナ2は燃焼量調節段階N1の燃焼量に復帰することになるが、バーナ2は消火と点火を繰り返さないから、暖房する室内に悪臭を放散することはない。
なお、この微小燃焼量でバーナ2が燃焼続けるときにおいても室内温度RTが低下せず、まだ、最高室内温度RThを維持している時には、バーナ2の運転を停止することになる。
【符号の説明】
【0048】
1 枠体
2 バーナ
3 ポンプ
4 燃焼用送風機
9 室内温度検出手段
10 温度設定手段
11 運転スイッチ
12 燃焼制御手段
13 タイマ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体内にバーナと、このバーナに燃料を供給するポンプと、このバーナに燃焼空気を送る燃焼用送風機とを設け、
室内温度を検出する室内温度検出手段と、室内温度を設定する温度設定手段と、運転スイッチの信号に基づいて前記ポンプと前記燃焼用送風機とを制御して前記バーナの運転の制御と燃焼量の調節を行う燃焼制御手段とを備え、
該燃焼制御手段は前記室内温度検出手段と前記温度設定手段からの信号を用いて燃焼中の前記バーナの燃焼量を可変する暖房機であって、
前記燃焼制御手段は前記室内温度検出手段で検出した室内温度が前記温度設定手段の設定温度から所定の温度範囲になると作動するタイマ手段を備え、そのタイマ手段のカウントが設定時間になったときに前記設定温度を所定温度低く変更することを特徴とする暖房機の燃焼制御方法。
【請求項2】
前記燃焼制御手段は、前記温度設定手段の設定温度が予め設定した下限温度以下のときは、設定温度の変更要求を行なわないことを特徴とする請求項1に記載の暖房機の燃焼制御方法。
【請求項3】
前記燃焼制御手段は、燃焼制御開始時の前記温度設定手段の設定温度が予め設定した上限温度より高いときは、設定温度を前記上限温度に変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の暖房機の燃焼制御方法。
【請求項4】
前記燃焼制御手段は、前記バーナの燃焼量として、大燃焼量・小燃焼量・その間の燃焼量による複数段階の燃焼量調節段階を備え、
室内温度が設定温度よりも高いときに複数段階の燃焼量調節段階を1段階低くし、室内温度が設定温度よりも低いときに複数段階の燃焼量調節段階を1段階高く制御しており、
かつ、燃焼量調節段階の変更は、前記バーナの運転開始から最初に室内温度が設定温度に一致したときと、前回の燃焼量変更から所定時間が経過したときと、前記室内温度と前記設定温度とが予め設定した温度差になったときに実施されることを特徴とする請求項1から3に記載の暖房機の燃焼制御方法。
【請求項5】
前記燃焼制御手段は、前記バーナが最小燃焼量のときにおいて、前記室内温度検出手段で検出した室内温度が前記温度設定手段の設定温度よりも一定温度高くなったときに前記バーナの燃焼を燃焼量調節段階から外れた微小燃焼に変更もしくは前記バーナの運転を停止することを特徴とする請求項4に記載の暖房機の燃焼制御方法。
【請求項6】
前記設定温度を所定温度低く変更したときには、変更後の設定温度が室内温度よりも低くなるように前記温度範囲と所定温度とを設定したことを特徴とする請求項1から5に記載の暖房機の燃焼制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−75266(P2011−75266A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230420(P2009−230420)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】