説明

暗号装置

【目的】
暗号化データの安全性について検証する手段さらに、復号化データの正しさを確認する手段を提供することを目的としている。
【構成】
暗号化部と、復号化部と、乱数性検出部を具備し、暗号化データおよび復号化データの乱数性を検出している。さらに乱数性検出部においてデータのエントロピーを検出する構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続擬似乱数を利用したストリーム暗号装置において暗号化データの安全性及び復号化データの正しさを検出する技術、および同期検出の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の連続擬似乱数を利用したストリーム暗号システムの全体構成を図4で、また暗号装置の構成を図3を用いて説明する。
端末装置10は、暗号装置50と通信速度60kbpsで接続されている。暗号装置50は、回線終端30を通して通信速度64kbpsの伝送路に接続されている。さらに、この伝送路に接続されている対応する同種の装置と接続されている。
【0003】
端末装置10は、通信文(平文)の作成及び復号化データ(平文)の表示器(図示せず。)への表示などを行う。暗号装置50は、その詳細を図3を用いて説明する。まず暗号化について説明する。端末装置10で作成された通信文(平文)は、通信速度60kbpsの伝送路を通して暗号装置50に送られる。この通信文(平文)は、入出力部21aを通して多重化部51に入力される。多重化部51では、暗号同期監視部53で作成された暗号同期監視用データが追加される。この暗号同期監視用データは、4kbpsの通信速度とされている。
【0004】
多重化部51で通信文(平文)と暗号同期監視用データは、多重化されたデータとなり、64kbpsの通信速度とされる。このデータは、暗号化部22で、擬似乱数発生部23aで発生された擬似乱数を基に暗号化される。暗号化されたデータは、入出力部21bを通して64kbpsの通信速度データとして出力される。
【0005】
次に、復号化について説明する。入出力部21bを通して64kbpsの通信速度データとして入力される、対応する同種の装置からの暗号化データは、復号化部24において擬似乱数発生部23bで発生された擬似乱数を基に復号化される(平文とされる)。この平文は、分割部52において4kbpsの暗号同期監視用データと60kbpsの通信文(平文)とに分割される。
【0006】
通信文(平文)は、入出力部21aを通して端末装置10に供給され通信文(平文)が表示器に表示される。一方、暗号同期監視用データは、暗号同期監視部53に供給され、正確に復号されているか否かの判定がされる。判定の結果、正確に復号化されていない時は、対応する装置間の連続擬似乱数の発生同期が合っていないこととなる。対応する装置間の連続擬似乱数の発生同期が合っていないと、暗号化されたデータは、対応する装置で復号化出来ないこととなる。このため対応する装置間で、所定の手続により連続擬似乱数の発生同期を取り直す制御が行われる。なお、上記の各動作は、制御部26内部の図示しないROMに記憶されている制御プログラムにより制御されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように従来の暗号システムでは、暗号化データの安全性について検証する手段さらに、復号化データの正しさを確認する手段が暗号装置に用意されていないという問題がある。
【0008】
また、従来の暗号システムでは、64kbpsの通信速度の伝送線路を使用するとき、連続擬似乱数の発生同期を確認するために4kbpsの伝送線路容量を使用している。このため、通信文を伝送するための容量が減少し、通信文を伝送する時間が余分にかかるという問題がある。このため、64kbpsの通信速度の伝送線路を全て通信文に使用しながら連続擬似乱数の発生同期を確認する方法及び装置の提供が望まれている。
【0009】
さらに、暗号同期監視用データは、対応する装置間で双方が確実に暗号同期の判別ができる必要から、固定のデータとされることが多く、暗号データ解析の手掛かりを与えやすいという問題がある。このため、固定のデータをやり取りせずに暗号同期監視を行う装置の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、連続擬似乱数に基づき暗号化、復号化を行なうストリーム暗号装置において、暗号化部と、復号化部と、乱数性検出部を具備することを特徴としている。
【0011】
また、乱数性検出部は、復号化データのエントロピーを検出することおよび、暗号化データのエントロピーを検出することを特徴としている。
【0012】
さらに、復号化データのエントロピーを検出することにより、暗号同期はずれを検出することを特徴としている。また、暗号化データのエントロピーを検出することにより、暗号化データの安全性を検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
以上詳細に説明したように、本発明では暗号化データのエントロピーの値を計算することにより、暗号化データの安全性を判定できる効果を奏する。また、復号化データのエントロピーの値を計算することにより、復号化データの正しさを判断できる効果を奏する。
【0014】
暗号化部と、復号化部と、乱数性検出部を具備する簡単な構成により、通信文の通信速度を落とすことなく暗号同期外れの検出が可能となる効果を奏する。また、乱数検出部において、暗号化および復号化データのエントロピーの値を計算することにより、暗号同期検出のため、固定データの送受信を行わずに暗号同期外れを検出できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明を実施するための最良の形態を以下実施例により説明する。図1及び図2において、図3および図4で説明した従来技術と同様の機能のものについては、同じ番号を付してある。図2は、本発明の連続擬似乱数を利用したストリーム暗号システムの全体構成図である。ここで、端末装置10からの出力は、通信速度64kbpsで暗号装置20と接続されている。以下、対応する同種の装置と接続される全ての伝送線路が通信速度64kbpsで接続されている。
【0016】
暗号化装置20は、その詳細を、図1を用いて説明する。まず暗号化について説明する。端末装置10で作成された通信文(平文)は、通信速度64kbpsの伝送路を通して暗号装置20に送られる。この通信文(平文)は、入出力部21aを通して暗号化部22で、擬似乱数発生部23aで発生された擬似乱数を基に暗号化される。暗号化されたデータは、入出力部21bを通して64kbpsの通信速度データとして回線終端30へ出力される。
【0017】
同時に、暗号化部22で暗号化されたデータは、乱数性検出部25に入力される。ここで、乱数性検出部25は、後述するエントロピーの原則に従い暗号化されたデータの安全性を検証する。この検証結果が、安全でない(暗号化されていない)と判断された場合は、その結果が制御部26へ通知され、制御部26のROM(図示せず)に記憶された制御プログラムにより、暗号化障害を制御部26の表示器(図示せず)に表示し、暗号化動作を停止する。その後、再び暗号化動作を開始するには、暗号化障害の原因を取り除いた後、所定の手続きにより再起動する。
【0018】
次に復号化について説明する。入出力部21bを通して64kbpsの通信速度データとして入力される、対応する同種の装置からの暗号化データは、復号化部24において擬似乱数発生部23bで発生された擬似乱数を基に復号化される(平文とされる)。この平文は、入出力部21aを介して端末装置10に供給され、通信文(平文)が表示器に表示される。
【0019】
同時に、復号化部24で復号化されたデータは、乱数性検出部25に入力される。乱数性検出部25は、後述するエントロピーの原則に従い復号化されたデータの正しさを確認する。確認の結果、正確に復号化されていないと判断されたときは、対応する装置間の連続擬似乱数の発生同期が合っていないこととなる。このため、暗号化されたデータは、対応する装置で復号化出来ないこととなり、対応する装置間で、所定の手続により連続擬似乱数の発生同期を取り直す制御が行われる。なお、上記の各動作は、制御部26内部のROMに記憶されている制御プログラムにより制御される。
【0020】
ここで、乱数性検出部25について説明する。一般に暗号装置によって暗号化されたデータは、乱数性が高いという特徴(乱数には特徴がない)を持っている。理想的な暗号装置であればあるほど、乱数性が高くなる(情報源のエントロピーが大きくなる)暗号化機能をもっている。なぜなら暗号化データに特徴があればあるほどその暗号化データは解析され易いからである。
【0021】
乱数性が高いデータの集合は、情報源のエントロピーの大きさが大きくなる(暗号化していないデータ(平データ)は、何らかの特徴があり乱数と比べると情報源のエントロピーが小さくなる)。ここに着目すると、暗号化したデータのエントロピーの大きさを計算して、その暗号化データの安全性を検証することが可能となる。
【0022】
また、受信した暗号化データを復号化したとき、その復号化データのエントロピーの大きさを計算して、その復号化データが正しく復号できているか否かを検証することが可能である。
【0023】
一般に情報源のエントロピー(Shannonエントロピー)は、例えば、n種類の文字が出現頻度(出現確率)p1、p2・・・pn(Σpi=1)で、全く不規則に現れるような情報源のエントロピーHは、
H=NΣpilog2(1/pi) N:一定範囲の出現文字数
で与えられる。
【0024】
仮に8ビット1文字と仮定し、256文字を暗号化した場合、暗号化データが理想的な乱数になるものと仮定すれば、それぞれの文字の出現頻度は、1/256であり、そのエントロピーH0は、
0=256(1/256log2256)=8
となり、情報源のエントロピーが最大となり、理想的な暗号化がなされていることがわかる。
【0025】
今度は256文字の暗号化データを復号化した場合、復号後の256文字が次のような出現頻度をもっていたとすると、
・2種類の文字が各32回(pi=32/256)
・4種類の文字が各16回(pi=16/256)
・8種類の文字が各8回 (pi=8/256)
・64種類の文字が各1回(pi=1/256)
その情報源のエントロピーHは、
H=2(32/256log2256/32)+4(16/256log2256/16)+8(8/256log2256/8)
+64(1/256log2256)=0.75+1+1.25+2=5
となる。
【0026】
エントロピーHは、明らかにH0に比べて小さな値となっており、この場合の256文字には、理想的な乱数とはかけ離れた特徴があることがわかる。つまり、エントロピーの値を計算することにより暗号化データが正しく復号化できていると判定することおよび、暗号化データが安全であることの判定をすることが可能である。また、復号化データ(平文)の特徴が少なく、乱数に近いような場合は、エントロピーの値が大きな値を取ることとなる。そこで、エントロピーの値を、例えば7以上にすることで、正しく復号化出来ていないと判断することが可能となる。
【0027】
さらに、暗号化データの安全性を判断したり、正しく復号化できていると判断するエントロピーの値を厳密に計算するには、エントロピー計算のため、暗号化または、復号化データのサンプル数を増やす(例えば216文字分)こと、または一定時間間隔で256文字サンプルを複数回(例えば5回)行い、それぞれのサンプルのエントロピー計算値の平均値を用いるなどして、より正確な判断ができるよう工夫することも可能である。
【0028】
出願人によれば、64kbpsのデジタル回線を用いて、回線終端を経由して暗号装置を対向配置し、暗号装置の端末装置としてデジタル電話装置(64kbpsPCM音声符号化処理内臓)を接続、それぞれの暗号装置の送信側で平データを音声の符号化(64kbpsPCM)データとし、このデータを暗号化して送信し、受信側で復号化する試験を行ったところ、8ビット256文字でエントロピーの値を計算し、その値が7未満で正常に復号化されている、7以上で異常復号化(暗号同期はずれ)とすることで実用的な使用が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の暗号装置の詳細を説明する図
【図2】本発明の暗号システムを説明する図
【図3】従来の暗号装置の詳細を説明する図
【図4】従来暗号システムを説明する図
【符号の説明】
【0030】
10 端末装置
20 暗号装置
21a 入出力部
21b 入出力部
22 暗号化部
23a 擬似乱数発生部
23b 擬似乱数発生部
24 復号化部
25 乱数性検出部
26 制御部
30 回線終端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続擬似乱数に基づき暗号化、復号化を行なうストリーム暗号装置において、
暗号化部と、復号化部と、乱数性検出部を具備することを特徴とするストリーム暗号装置。
【請求項2】
前記乱数性検出部は、復号化データのエントロピーを検出することを特徴とする請求項1記載のストリーム暗号装置。
【請求項3】
前記乱数性検出部は、暗号化データのエントロピーを検出することを特徴とする請求項1記載のストリーム暗号装置。
【請求項4】
前記乱数性検出部は、暗号化データ及び復号化データのエントロピーを検出することを特徴とする請求項1記載のストリーム暗号装置。
【請求項5】
前記復号化データのエントロピーを検出することにより、暗号同期外れを検出することを特徴とする請求項2又は請求項4のいずれかに記載のストリーム暗号装置。
【請求項6】
前記暗号化データのエントロピーを検出することにより、暗号化データの安全性を検出することを特徴とする請求項3から請求項4のいずれかに記載のストリーム暗号装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−116753(P2007−116753A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26176(P2007−26176)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【分割の表示】特願2001−315231(P2001−315231)の分割
【原出願日】平成13年10月12日(2001.10.12)
【出願人】(000001177)株式会社光電製作所 (32)
【Fターム(参考)】