説明

有害物質吸着錠剤

【課題】水中や土壌への設置処理作業が簡便にでき、微粉末の浮遊による流出防止、飛散や粉塵爆発防止を図って作業者や近隣の安全が向上でき、少量の水分で微粉末を再分散し、特に局所的に高濃度の汚染状況に適応して有害成分に対する微粉末の吸着性能や、錠剤の崩壊速度の変更を自由に設計可能とした有害物質吸着錠剤を提供する。
【解決手段】微細粉体で多孔質の吸着剤と比重1以上の粉体を含んで配合され、多種類の吸着剤を一つ又は組み合わせた組成の微細粉体の当該吸着剤で、粒度が200メッシュを通過する粒子径を有し、粒子密度が平均粒度100μm以下で、その割合が粒度重量の80%を超える微細粉体を含む吸着剤を、前記比重1以上の粉体との圧着又は混練した吸着物質により成型した錠剤とし、当該微細粉体の組み合わせにより崩壊剤を使用せずに水などの液体に対する崩壊時間を制御可能とした錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中や土壌で簡単に使用する錠剤に関し、特に、適用された河川、地下水などの水において、人体に影響を及ぼす土壌から溶出される水分中に含まれる有害成分を吸着・固定化することができ、かつ使用に際しては、設置処理作業が非常に簡便にでき、河川、地下水処理に関しては分散制御並びに吸着剤の浮力制御ができ、
製作においては、微粉末の飛散を防止することができると共に、汚染状況に適応して有機物、無機物、窒素分、燐分等を問わず有害成分に対する吸着性能の変更を自由に設計可能となし得る有害物質吸着錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、土壌中に有害物質が雨水や地下水などの水分によって拡散されていくことが知られている。その対策として客土法が考えられた。しかし、たとえ土壌を客土しても、隔壁や水処理施設を設けない限り、汚染未処理部分からまた水により移動し、再汚染が起こるという問題が残り、この為、大規模な施設設置せずに再汚染を防止し、有害物質を固定化する簡便な方法を求められていた。
また、高濃度の汚染部には多量の吸着剤を入れるため、シート状吸着剤で処理しきれない部分があり使用上の問題を残していた。
加えて、地下水や河川に流出した汚染物質の吸着や河川・湖水の底質に溜まっている汚染物質の拡散防止方法が早急に求められていた。
上記に代わる方法として、水中または土壌中の有害物質を低減または土中に固定化する目的として、活性炭を代表とする吸着剤の微粉末が考えられる。
しかしながら、吸収剤の粉末が飛散し粉塵対策の必要であり、吸着剤の微粉末は比重が軽い微粒子であるため水面に浮いてしまい、その場に留まることができない。
そこで、本出願人らは先に主として土壌対策として土壌中のダイオキシン類、使用禁止となった農薬、揮発性有機物質、重金属、その他有害物質を吸着する目的として、均一に除去する簡便な方法を特願2008−261258に提案し解決した。
ただ、水中の使用においてその有害物質を低減または河川床等の土質中に固定化する上ではまだ課題を有していた。
そして、これまでその対策として、河川・湖底に木炭を敷き詰めるという方法もあるが吸着効率が悪く多量に必要であり、引き揚げ土壌の再生処理が必要となるものであった。
現在、崩壊または分解する錠剤に微粉砕物を添着する方法があっても、微粉砕物の吸着性能を落とさず、直打錠し難く、そして低温な水で溶ける時間の制御が出来なかった。
また、錠剤の崩壊性を早くするには、直打錠用乳糖等の糖質など考えられるが、河川、湖水に対する水処理には適さない。
【0003】
ゴルフ場等からの農薬および肥料の流出を未然に防止し、それらの除去機能に優ける孔質セラミック系除去剤として、農薬およびリン酸イオンの多孔質セラミック系除去剤(特許2815535)が存在する。しかし、粒度の規定はなく微粉砕物になれば飛散したり、河川に用いた場合は流出するという問題を残していた。
【0004】
また、拡散剤を含有する水面浮遊性の農薬固形剤を拡展性水溶紙に分包とした有効成分が水中に分散又は溶解する水田投げ込み用農薬製剤として、拡展性水溶紙分包農薬固形剤(特許2815535)が存在する。しかし、浮いて拡散するだけであれば、微粉末物を散布すればよく、また、河川等の流れがあるところでは流出してしまい、水中に沈殿分散制御が出来ない問題を残していた。
【0005】
除草活性成分、界面活性剤、炭酸塩および水溶性固体酸を含有し、除草活性成分の拡散性に有用な水田用除草剤(特許2924071)が存在する。しかし、炭酸塩と固体酸との組み合わせの発泡剤は長期保管が難しく、発泡しなくなるという問題を残していた。
【0006】
錠剤の重量偏差が小さく、錠剤の崩壊性を維持しつつ、実用的な錠剤硬度を有する崩壊性錠剤、その乾式直打法による製造方法により作製の乾式直打速崩壊性錠剤(特開2007−197357)が存在する。しかし、日本薬局方に準じた崩壊速度つまり通常は人間体温下で崩壊する時間を設定しており、低温の水で崩壊することが想定されていない。30℃以下の低温水で崩壊制御できないという問題を残していた。
【0007】
揮発性有機化合物で汚染された土壌を地上部に掘削・集積せずにマイクロ波で土壌を加熱し、揮発性有機化合物を分解・揮発を促進させ、発生したガスを回収し原位置で処理する方法(特開2006−150157)が存在する。しかし、大掛かりな施設が必要であり、土壌の微生物などの生態系に影響を与える問題を残していた。
【0008】
汚染土壌を解砕した後得られた細粒部分を浄化促進粒と共に水洗し、土壌細粒部のみ回収する汚染土壌洗浄方法(特開2006−043532)が存在する。しかし、土壌を洗浄する場合には、シルト分が除去され地盤が不安定化し、また植物が必要とする栄養分なども除去されてしまう為、この方法は、農業に使用する土壌には不向きであり使用上の問題を残していた。
【0009】
粉砕した活性炭などの吸着剤と分散剤を含む水溶液を散布・塗布又は潅中し残留農薬を吸着する農作物及び土壌の残留農薬の吸着剤(特開2004−223346)が存在する。しかし、界面活性剤の親水化加工した活性炭入り水を散布した場合、土壌が泡ち、水分が過剰気味となり、これにより土壌が粘土化し、次の工程作業への移行がしにくいという問題を残していた。
【0010】
農薬錠剤として、炭酸塩および固体酸を含有する発泡性農薬錠剤において、二種類以上の農薬活性成分間に反応し禁忌がある場合でも、安定な多層の発泡性農薬錠剤(特開平6−298604)が存在する。しかし炭酸塩と固体酸との組み合わせの発泡剤は長期保管が難しく、発泡しなくなるという問題を持ち、発泡剤が入ることで錠剤硬度が下がり多層化で保管上崩壊しやすい錠剤であるという問題を残していた。
【0011】
汚染土壌の現場での修復方法として、イオン性汚染物の電気移動運動を用いて、濃縮された回収処理領域または除去領域を形成する土壌修復方法(特開平6−218355)が存在する。しかし、電圧を掛けてイオン化し引き寄せて回収する層は必要とし、これは大規模な施設が必要であり、即効性に欠ける問題を残していた。
【0012】
【特許文献1】特許2733889
【特許文献2】特許2815535
【特許文献3】特許2924071
【特許文献4】特開2007−197357
【特許文献5】特開2006−150157
【特許文献6】特開2006−043532
【特許文献7】特開2004−223346
【特許文献8】特開平6−298604
【特許文献9】特開平6−218355
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、水中、土壌を問わず、使用に際しては、投擲散布などにより設置処理作業が非常に簡便にでき、微粉末の浮遊による流出防止、微粉末の飛散や粉塵爆発防止を図り、作業者及び近隣の安全対策を向上することができると共に、特に局所的に高濃度の汚染状況に適応して有害成分に対する吸着性能の変更を自由に設計可能となし得る有害物質吸着剤を錠剤として提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、使用に際しては、設置処理作業が非常に取扱い易く、河川、地下水処理に関しては分散制御並びに微粉末吸着剤の浮力制御ができる。また、製作においては微粉末の造粒より簡便で製造時間も短縮でき、用途によって重量、大きさも選択できる。使用に関しては微粉末の飛散を防止や微粉末の粉塵爆発防止を図り、作業者及び近隣の安全対策を向上することができると共に、特に局所的に高濃度の汚染状況に適応して有機物、無機物、窒素分、燐分等を問わず有害成分に対する吸着性能の変更を自由に設計可能となし得る有害物質吸着錠剤として提供することである。
本発明によれば、土壌の場合には、散水又は降雨が少量の場合であっても錠剤の崩壊分散を確実にし、少なくとも圧着された吸着剤を機能させることのできるように、少量の水量で吸着剤の圧着された有害物質吸着錠剤を崩壊分散して、土壌中の有害物質を吸着固定することのできる有害物質吸着錠剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これらを解決するものであり、今回、提案する有害物質吸着錠剤は、吸着機能があるとしても河川、地下水、土壌汚染の恐れのある影響のある場合、この余分な薬剤を用いないで、効率よく土壌や水に分散させ、吸収剤と土壌や底質が適度に密着することにより、吸収剤の再飛散・流出を防止し、有害物質を吸着剤に固定し、有害物質を植物への吸収を阻害することや河川・地下水への汚染を防止することを第一の目的とし、本発明は、簡便で吸着効率を阻害しない吸着錠剤を提供する。
【0015】
以下、本発明の具体的形態について述べれば、次のとおりである。
本発明は、第1には、微細粉体で多孔質の吸着剤と比重1以上の粉体を配合し、この配合において当該吸着剤を、その組成が有機成分の吸着剤と無機成分の吸着剤のいずれか一つまたは組み合わせからなる微細粉体であって、吸着剤の粒度が、200メッシュを通過する粒子径を有すると共に、その粒子密度が、平均粒度100μm以下で、その割合が粒度重量の80%を超える微細粉体を含むものとし、前記粉体に多孔質の吸着剤を圧着または混練した吸着物質によって直打成型した錠剤であって、微細粉体を組み合わせることによって崩壊剤を使用又は使用せずに水などの液体に対する崩壊時間を制御可能としたことを特徴とする錠剤を提供する。
この場合、前記微細粉体を多孔質の他に賦形剤、滑沢剤のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含み単層又は多層の錠剤として直打錠可能な混合物であることを特徴とする錠剤を提供することもできる。
【0016】
本発明は、その吸着剤が、有害有機化合物、有害無機化合物などの種類別ごとに吸着する物質を混合可能な多孔質吸着剤を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤を提供する。
この場合、その吸着剤の属性として、前記吸着剤または微細粉体の全体または一部に、多孔質、吸着性能または比重1以上の粉体をもつ、カルサイト、ゼオライト、活性白土、珪藻土、花崗岩ペグマタイト、イルメナイトなどの天然由来鉱物のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むものであったり、吸着剤または微細粉体の全体または一部に、多孔質または吸着性能をもつ、空孔の大きさが制御された人工ゼオライトのいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むものであったり、吸着剤の全体または一部に、比表面積が800m2/g以上である活性炭含むものであったり、さらに、前記吸着剤の全体または一部に、重金属の即効性吸着性能または保水機能をもつポリアミノ酸、多糖類、ポリアクリル酸、無機塩、キレート剤のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤を提供することができる。
【0017】
本発明は、その微細粉体あるいは粉体として、賦形剤が結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉、乳糖、二酸化ケイ素、多糖類、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤を提供する。
また、前記微細粉体が多孔質と結晶性セルロースと二酸化ケイ素の混合物であることを特徴とする土壌や水質に悪影響を与えない単純化した構成をとる有害物質吸着錠剤を提供する。
本発明は、さらにまた、前記構成素材が人畜無害な食品添加物由来成分または医薬品からなるものであることを特徴とする有害物質吸着錠剤を提供する。
【0018】
本発明は、吸着剤の全体または一部に、酸化剤または還元剤の組み合わせからなる物質を含み、有害物質の分解を促進することを特徴とする有害物質吸着錠剤を提供する。
また、本発明は、吸着剤の全体または一部に、有機物質分解菌を含み、バイオレメディエーション可能な有害物質の分解を促進し、菌を死滅させない低圧打錠できることを特徴とする有害物質吸着錠剤を提供する。
本発明は、土壌表面や土壌中に設置され、散水、降雨、降雪または土壌中の水分により溶解されたとき、土壌中の有害成分を吸着可能とした、乾燥地域土壌や農業にも使用可能な安全性の高い有害物質吸着錠剤を提供する。
【発明の効果】
【0019】
(本発明の効果)
本発明の有害物質吸着錠剤によれば、水中、土壌を問わず、使用に際しては、投擲散布などにより設置処理作業が非常に簡便にでき、河川、地下水処理に関しては微粉末の浮遊による流出防止し、分散制御並びに吸着剤の浮力制御ができる。そして、微粉末の飛散や粉塵爆発防止を図り、作業者及び近隣の安全対策を向上することができる。
また、製作においては造粒の場合より簡便で製造時間も短縮でき、用途によって重量、大きさも選択できる。
錠剤資材は環境負荷の少ないセルロース系原料、安定性の高い鉱物、炭素などから成り立ち、安全性に十分配慮された商品設計が可能である。
また、乾燥地帯の土壌など雨水などの少量の水分で微粉末の吸着剤を効率よく土壌に分散させることができ、土壌撹拌後、吸収剤と土壌が適度に密着することにより吸収剤の再飛散を防止すると共に、有害物質を吸着剤に固定して、植物への吸収を阻害することや地下水への汚染を防止することができる。
また、本発明の錠剤によれば、崩壊剤を含ませないでも、崩壊促進させ得る錠剤を提供することができる。その理由は、直打による打錠法の採用により、打錠の過程で多孔質微細粉体の多孔質の外表面の硬度が増すと共に多孔質の空隙内に存在する空気が圧縮されて閉じ込められた状態となり、この錠剤が使用上水分の多い環境に曝されたとき、毛細管現象で多孔質の空隙内に多量の水分が吸収され同時に閉じ込められた空気が追い出されることで、一気に崩壊する(図8参照)ものと考えられ、斯かる現象から、多孔質の空隙から追い出された空気が、発泡剤の役目を果たしているものと推測され、本願発明は、斯かる知見から、多孔質の微細粉体を含んで直打成形され錠剤は、水分を吸収して崩壊促進されるものと思われる。
上記において、錠剤を造粒装置により作製した場合には、この造粒された錠剤は、崩壊促進させるものとして得ることはできなかった。
なお、本発明の錠剤は、崩壊剤を含ませることもできる。これにより一層迅速に崩壊させることもでき、崩壊剤を含む、含まないは任意に選択可能である。
【0020】
本願に係る請求項1記載の発明、微細粉体で多孔質の吸着剤と比重1以上の粉体を配合し、当該吸着剤を、その組成が有機成分の吸着剤と無機成分の吸着剤のいずれか一つまたは組み合わせからなる微細粉体であって、吸着剤の粒度が、200メッシュを通過する粒子径を有すると共に、その粒子密度が、平均粒度100μm以下で、その割合が粒度重量の80%を超える微細粉体を含むものとし、前記粉体に多孔質の吸着剤を圧着または混練した吸着物質によって錠剤に成型し、崩壊剤を使用せずに微細粉体の組み合わせによって水などの液体に対する崩壊時間を制御可能としたことを特徴とする錠剤によれば、本発明は、微粉末剤を錠剤化することによって、従事者の作業工程の簡便化を図って、微粉末吸着剤の飛散防止および微粉末の粉塵爆発防止を図り、作業者及び近隣の安全対策を向上させ、斯かる錠剤を河川や地下水に対する汚染原拡散防止剤として提供することができ、または土壌に埋設・攪拌することにより、汚染除去した土壌に対する再汚染防止剤として提供することができる。
【0021】
本願に係る請求項2記載の発明、請求項1において、微細粉体が前記多孔質の他に賦形剤、滑沢剤のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含む単層又は多層の錠剤として直打錠可能な混合物であることを特徴とする有害物質吸着錠剤によれば、吸着剤の元来持つ吸着性能を低下させずに、製造作業が非常に取扱い易く、造粒より簡便で製造時間も短縮でき、用途によって重量、大きさも選択することができる。
また、錠剤を多層化することにより、崩壊時間の異なる組み合わせや、性能の異なる吸着剤を組み合わせることできる。
【0022】
本願に係る請求項3記載の発明、請求項1又は2のいずれかにおいて、前記吸着剤が、有害有機化合物、有害無機化合物などの種類別ごとに吸着する物質を混合可能な多孔質吸着剤を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤によれば、場所によって対象となる汚染物質や濃度が異なるため、汚染物質に合致した吸着し固定化する吸着剤が選択でき、特に高濃度の汚染状況に適応して有害成分に対する吸着性能の変更を自由に設計可能となし得る有害物質吸着錠剤として提供することができる。
【0023】
本願に係る請求項4記載の発明、請求項3において、吸着剤または微細粉体の全体または一部に、多孔質、吸着性能または比重1以上の粉体をもつ、カルサイト、ゼオライト、活性白土、珪藻土、花崗岩ペグマタイト、イルメナイトなどの天然由来鉱物のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤によれば、自然界に存在する物質を利用することにより環境負荷を抑えることや、鉱物を使用することにより、吸着剤の元来持つ吸着性能を低下させずに、水中、土壌を問わず、設置処理作業が非常に取扱い易く、河川、地下水処理に関しては分散制御並びに吸着剤の浮力制御することができる。
【0024】
本願に係る請求項5記載の発明、請求項3又は4のいずれかにおいて、吸着剤または微細粉体の全体または一部に、多孔質または吸着性能をもつ、空孔の大きさが制御された人工ゼオライトのいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤によれば、大量に安価に流通しているものが使用でき、吸着する物質の大きさによって選択的に吸着量を制御することができる。
【0025】
本願に係る請求項6記載の発明、請求項3ないし5のいずれかにおいて、吸着剤の全体または一部に、比表面積が800m2/g以上である活性炭を含むことを特徴とする請求項1から4の有害物質吸着錠剤によれば、土壌中、水中で安定であり、吸着効率がよく、長年使用され安全性の高いことが知られている吸着剤であり、間伐材などを利用することにより無駄なく利用することができる。
【0026】
本願に係る請求項7記載の発明、請求項3ないし6のいずれかにおいて、吸着剤の全体または一部に、重金属の即効性吸着性能または保水機能をもつポリアミノ酸、多糖類、ポリアクリル酸、無機塩、キレート剤のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とする請求項1から5の有害物質吸着錠剤によれば、砂漠地帯などの乾燥地域の保湿剤として利用でき、また、有機物だけでなく、吸着剤の組み合わせによっては例えばカドミウム化合物、砒素化合物、六価クロム等、重金属などの無機物質を吸着固定化あるいは無毒化処理することができる。
【0027】
本願に係る請求項8記載の発明、請求項3ないし7のいずれかにおいて、賦形剤が結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉、乳糖、二酸化ケイ素、多糖類、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とするであることを特徴と有害物質吸着錠剤によれば、
医薬品に使用されている原料を用い、安全な原料で製造でき、吸着剤に薬剤を添加すれば、製造工程が簡便な医薬品を製造することができる。
【0028】
本願に係る請求項9記載の発明、請求項3ないし8のいずれかにおいて、微細粉体が多孔質と結晶性セルロースと二酸化ケイ素の混合物であることを特徴と有害物質吸着錠剤によれば、土壌、河川、湖水に悪影響を与えずに環境負荷の低い材料のみで製造することができる。
【0029】
本願に係る請求項10記載の発明、請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記構成素材が食品添加物由来成分または医薬品からなるものであることを特徴とする有害物質吸着錠剤によれば、錠剤を誤飲しても、人畜無害の錠剤を提供することができる。
【0030】
本願に係る請求項11記載の発明、請求項3ないし10のいずれかにおいて、吸着剤の全体または一部に、酸化剤または還元剤の組み合わせからなる物質を含み、有害物質の分解を促進することを特徴とする請求項1から5の有害物質吸着錠剤によれば、有害物質を吸着した後に、酸化還元方法を用いて徐々に有害物質を分解促進することができる。
【0031】
本願に係る請求項12記載の発明、請求項3ないし11のいずれかにおいて、吸着剤の全体または一部に、有機物質分解菌を含み、バイオレメディエーション可能な有害物質の分解を促進し、低圧打錠できることを特徴とする請求項1から5の有害物質吸着錠剤によれば、菌や微生物の打錠圧力による不活性化せずに、有害物質を吸着した後に、微生物の活性化方法を用いて徐々に有害物質を分解促進することができる。
【0032】
本願に係る請求項13記載の発明、請求項1ないし12のいずれかにおいて、土壌表面に敷設され、散水、降雨、降雪または土壌中の水分により溶解されたとき、土壌中の有害成分を吸着可能とした有害物質吸着錠剤によれば、乾燥地域土壌や農業にも使用可能な安全性の高い有害物質吸着錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本願発明に係る有害物質吸着錠剤としての形状は、使用場面によって大きさ吸着剤の配合割合、錠剤の崩壊速度等の条件を自由に設計でき、また、成形圧力を小さくして打錠成形できるので、特別な機械を必要とせず、食品や医薬品等に使用されているロータリー打錠機で製作ができる。
微粉末吸着剤を含んで成形した錠剤は、水中、土壌を問わず、使用に際しては、投擲散布などにより設置処理作業が非常に簡便にでき、河川、地下水処理に関しては微粉末の浮遊による流出防止し、分散制御並びに吸着剤の浮力制御ができ、吸収性能の自由度を拡大させる錠剤を得るには、次の粉体の使用が望ましく、
微細粉体で多孔質の吸着剤と比重1以上の粉体を配合・混練した吸着物質であって、微粉末吸着剤の粒度は200メッシュを通過する粒子径を有すると共に、その粒子密度が、平均粒度100μm以下で、その割合が粒度重量の80%を超える吸着剤を、比重1以上の粉体に圧着または混練した吸着物質の粉体である。
吸着剤としてはその組成が有機成分の吸着剤と無機成分の吸着剤のいずれか一つまたは組み合わせからなることが汚染状況によって、吸着性能を自由に設計できる。
この場合、配合された粉体が前記多孔質の他に賦形剤、滑沢剤のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含み単層又は多層の錠剤として直打錠可能な混合物からなることにより、崩壊時間の異なる組み合わせや、性能の異なる吸着剤を組み合わせることできる。
本発明は吸着剤が、有害有機化合物、有害無機化合物などの種類別ごとに吸着する物質を混合可能な多孔質吸着剤を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤によれば、場所によって対象となる汚染物質や濃度が異なるため、汚染物質に合致した吸着し固定化する吸着剤が選択でき、特に高濃度の汚染状況に適応して有害成分に対する吸着性能の変更を自由に設計できる。
本発明は比重1以上の粉体の属性として、浮力を制御するために多孔質の無機鉱物、カルサイト、ゼオライト、活性白土、珪藻土、花崗岩ペグマタイト、イルメナイトなどの天然由来鉱物のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むものとしたり、空孔の大きさが制御された人工ゼオライトのいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むものとしたりすることができる。
【0034】
また、本発明は吸着剤の全体または一部に、比表面積が800m2/g以上である活性炭含むものとしたり、さらに、前記吸着剤の全体または一部に、重金属の即効性吸着性能または保水機能をもつポリアミノ酸、多糖類、ポリアクリル酸、無機塩、キレート剤のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むものとしたりすることができる。
本発明は、その微細粉体あるいは粉体として、賦形剤が結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉、乳糖、二酸化ケイ素、多糖類、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことができるが、特に環境負荷が少ない人畜無害な食品添加物由来成分または医薬品からなる結晶性セルロース、二酸化ケイ素、多糖類の組み合わせが望ましい。
本発明は、吸着剤の全体または一部に、酸化剤または還元剤の組み合わせからなる物質を使用したり、低圧打錠できることにより菌を死滅させずに有機物質分解菌を使用したりすることができ、これにより有害物質の分解を促進することができる。
本発明は、土壌表面や土壌中に設置され、散水、降雨、降雪または土壌中の水分により溶解されたとき、土壌中の有害成分を吸着可能とした、乾燥地域土壌や農業にも使用可能な安全性の高い有害物質吸着錠剤を作製することができる。
【0035】
特に前記記述のように吸着性能や崩壊分散性能を自由に設計できる最良な形態の有害物質吸着錠剤を得るには構成が簡単である錠剤の形態であり、吸着剤に比表面積800m2/g以上かつ平均粒度100μm以下の微粉末活性炭を錠剤重量の50%以下を用い、比重1以上の粉体混合物として結晶性セルロースと二酸化ケイ素の組み合わせが最も望ましい。
【0036】
実施例1
表1は吸着剤と各粉体の配合割合を変化させた時の打錠成形性の可否と、土壌における崩壊時間と水中における崩壊分散状態、錠剤の浮力状況の比較結果を本発明品例1〜6に示した。併せて比較例1〜4を示す。
打錠結果の可否と打錠条件、配合割合は表1に記載する。
表1には、実施例1における個別の形状、配合割合に伴う、土壌、水中崩壊時間・分散状況比較が本発明品例1〜6にまとめてある。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明品例1は吸着剤に多孔質の無機系微粉末を用い、本発明品例2は吸着剤に比表面積1000m2/g、平均粒度30μmの微粉末活性炭を用い、以下微粉末活性炭はこれと同様な仕様を使った。
前記各吸着剤の配合を20%とし、残りを賦形剤である結晶性セルロースと二酸化ケイ素の混合物で打錠した。
前記本発明品例1と本発明品例2は、水を加えることによって土壌に対する崩壊性がよく、図1で示すように水中にそれぞれ投入すると一度しずんで発泡しながら浮かび上がり、分散するという特徴を示し、水陸両用の錠剤の製造が可能であり、発泡剤を用いないで錠剤を制作しているので保存に長期安定性を示した。
本発明品例3は吸着剤の割合を減らし、本発明品例4は賦形剤に他の粉体の割合を増やすことにより、図2が示すように崩壊性や分散を制御できることが可能となった。
本発明品例5は二酸化ケイ素の粉体が増えることにより、吸着剤の量を増やし、発泡剤を用いらないで崩壊分散性の早い錠剤を作ることが出来た。
本発明品例6のように錠剤に発泡剤を混入し、錠剤状態で6カ月以上の長期保存しない場合には、水中で長時間浮遊させることも可能な速崩壊分散の有害物質吸着錠剤の制作も可能である。
【0039】
比較例1は市販の微粉末活性炭であり、微粉末活性炭のみ使用して打錠したが、打錠機械の最大圧力でも成型できなかった。
比較例2は市販の微粉末活性炭であり、土壌では粉塵が舞い、図9で示すように比重が小さいために水中では水面に浮いてしまった。
比較例3は市販品の直打錠用賦形剤である2%配合された結晶性セルロースを打錠した結果、成形性が良いが、土壌において、前記錠剤に水を散水しても崩壊しにくく、図10のように水に沈むが、水中における崩壊分散状態は15℃の水温には600秒以上であり、崩壊分散しにくいものであった。
同様に比較例4は水溶性のポリビニルアルコール1部を用いて前記微粉末活性炭5部を混合し成型、乾燥し固めたものである。土壌使用の場合では、水を散水しても崩壊分散せず、水中使用の場合には、図11に示すように水に浮き、1日以上たっても溶けなかった。
【0040】
実施例2
上述した表1の本発明品例1で示した配合割合で打錠した直径20mmの錠剤を土壌で使用する目的として想定した崩壊性を示す実験である。
図4(a)で示したようにその錠剤を土壌上に置き、水25mLを10秒間隔で、3回ピペットで滴下し、水滴下開始60秒後の写真である。図4(b)
土壌に対し少量の水で30秒以内に崩壊し、土壌の隙間に微粉末吸着剤が流れ込む様子がわかった。そして土壌と吸着剤がよく密着していた。少量の水分で乾燥地域土壌や農業にも使用可能な安全性の高い有害物質吸着錠剤を提供することができた。
【0041】
実施例3
次の表2から表5は、本発明の有害物質吸着錠剤を河川、湖水、海洋、地下水で使用した場合を想定した実験の結果である。
【0042】
表2は実施例3で示した吸着性能の異なる各錠剤を用い、採取した河川底質から水へ放出する化学物質の吸着性能試験結果の全データである。
【表2】


【0043】
表3は前記表2からのデータ抜粋(その1);HCB系、HCH系である。
【表3】


【0044】
表4は前記表2からのデータ抜粋(その2)その他である。
【表4】


【0045】
表5は、前記表2からのデータ抜粋(その3)HCB系であり、表2より抜粋した水への底質からの溶出した有害化学物質の挙動の一例である。
【表5】


【0046】
今回の錠剤は二酸化ケイ素の粉体が多く含まれ、発泡剤を利用しないで水中に速崩壊分散し、有害化学物質を吸着する目的で、配合率の異なる吸着剤を用いた本発明の有害物質吸着錠剤を、河川の底質つまりヘドロから水へ放出する化学物質の吸着性能試験を下記の条件で行った。
本発明の有害物質吸着錠剤を添加しない場合と、吸着剤添加量の異なる各錠剤を添加した場合の水に含まれる有害化学物質を測定したときの減少率を表すものであり、底質から水に溶け込む最大値を100として各有害化学物質の減少率を表にしたものである。
河川を想定し一定量の底質から水に溶出量を測定するために、1週間放置し、分析試料分の上澄み水を採取後、溶出平衡を保つため、試料で取った量の水を再び添加し、この作業を4週間に渡り繰り返し実験を行った。
吸着剤添加量の異なる各錠剤を添加した時期は、前記記載の1週間目の上澄み水を採取後、その量の純水を添加した後に、0.4gのそれぞれの実験で吸着剤添加量の異なる各錠剤を7錠添加した。
各錠剤0.4gの成分は次の通りである。
今回、各錠剤の微粉末吸着剤である活性炭は、比表面積1000m2/g、平均粒度30μmのものを共通に用いた。
前記活性炭0.02gに二酸化ケイ素0.18g混練し、残りの重量は賦形剤に結晶性セルロースを用いて打錠したものを投入試料錠剤Aとした。
同様に前記活性炭0.10gに二酸化ケイ素0.10g混練し、残りの重量は賦形剤に結晶性セルロースを用いて打錠したものを投入試料錠剤Bとした。
また、前記活性炭0.18gに二酸化ケイ素0.02g混練し、残りの重量は賦形剤に結晶性セルロースを用いて打錠したものを投入試料錠剤Cとした。
なお、この小規模実験における試料の実験に際しての作業条件は次の通りである。
採取した河川底質(ヘドロ)の風乾した土壌を20gとり、秤量した土壌を容器に入れ、次に純水600mL加え、容器密閉後、川の水の流れを想定して横振とう機100回転/分の条件下におけて1週間室温で振とうを行い、毎週各試料における上澄み水200mL採取したものをそれぞれの試料とした。
そして上澄み水200mL採取後、各試料における化学物質の溶出平衡を保つため、200mLの純水を添加し、再び前記条件で振とうを行い、3週間同様の作業を繰り返した。
測定条件
試料の抽出:毎週各試料における上澄み水200mLをガラスろ紙でろ過し、ヘキサンが100mL入った分液ロートに加えて、30分間振り、3回液・液抽出を行った。その後、ヘキサン層を濃縮してフロリジルカラムにおいて25%ジクロロメタン/75% ヘキサンを100mL、そしてエンビカルブSPEにおいてヘキサン10mLを用いて精製した。
測定は高分解能GC/MSを用いた。
GCオーブンの温度は120℃(0.5分)-10℃/分-180℃(0分)-4℃/分-210℃(0分)-10℃/分-300℃(10分)、GCカラムENV-8MS(0.25mm内径×30m)、注入法はスプリットレス、注入量は1μL、イオン化法はEI+、分解能は10000以上(10%谷)、分析方法はSIM法で以下のよう精密質量(m/z)の低質量側と高質量側に分け、多成分一斉測定ができるようにした。各化合物の13Cを用いた内部標準法で行った。
高質量側(m/z):トランス,シス-ヘプタクロルエポキサイド 352.8442, 354.8413, 13C トランス,シス-ヘプタクロルエポキサイド362.8778, 364.8748, トランス,シス-クロルデン 372.826, 374.823, 13C トランス,シス-クロルデン382.8595, 384.8566, オキシクロルデン386.8052, 388.8023, 13C オキシクロルデン396.8388, 398.8358, トランス,シス-ノナクロル406.787, 408.784, 13C トランス,シス-ノナクロル 416.8205, 418.8176,
低質量側(m/z):ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH) 216.9145, 218.9116, 13C ヘキサクロロシクロヘキサン222.9347, 224.9317, ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT), ジクロロジフェニルジクロロエタン(DDD)235.0081, 237.0052, 13C DDT, DDD 247.0484, 249.0454, ジクロロジフェニルジクロロエチレン(DDE) 246.0003, 247.9974, 13C DDE 258.0406, 260.0473, アルドリン、ディルドリン、エンドリン 262.857, 264.854, 13C アルドリン、ディルドリン、エンドリン269.8804, 271.8775, マイレックス、ヘプタクロル271.8102, 273.8072, 13C マイレックス、ヘプタクロル276.8269, 278.824, ヘキサクロロベンゼン(HCB)283.8102, 285.8072, 13C ヘキサクロロベンゼン289.8303, 291.8273に2回に分けて測定を行った。
結果は各錠剤A、錠剤B、錠剤Cともに水への速崩壊性を示し、泡を出しながら崩壊の様子例は図8に示す。上記した表2から表5に示す通り、錠剤未投入部分では、水への有害化学物質の溶出が確認され、錠剤無添加の場合は溶出された有害化学物質がほぼ一定であるのに対し、各錠剤A、錠剤B、錠剤Cを投入した後には、各有害化学物質の吸着速度には物質により時間差はあるが、ほとんどの検出された各有害化学物質の水への溶出量が大幅に少なくなっていることが確認できた。
表5は表2より抜粋した水への底質からの溶出した有害化学物質の挙動の一例である。
【0047】
実施例4
本発明の錠剤表面を走査型電子顕微鏡で観察した。
図5は活性炭が粉体表面に圧着されている様子の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)である。
この場合、比重1以上の粉体(白色部分)に吸着剤である活性炭(黒色部分)に入り込み圧着されていることがわかる。
こりは活性炭と二酸化ケイ素と混ぜ、混練することにより入り込み、打錠することにより圧着し、錠剤硬度が出る。
水分が吸着剤または粉体の多孔質部分にある隙間に浸透することにより、賦形剤が膨潤しやすく、粉体と吸着剤が分散しやすくなると考えられる。
図6は活性炭、多孔質の粉体、賦形剤の混合物における錠剤成型品の表面の走査型電子顕微鏡写真(600倍) である。図6において、符号1は微粉末の活性炭、符号2は粉体、符号3は錠剤表面上の亀裂をそれぞれ示すものである。
吸着剤または微細粉体の全体または一部に、多孔質、吸着性能または比重1以上の粉体をもつ、カルサイト、ゼオライト、活性白土、珪藻土、花崗岩ペグマタイト、イルメナイトなどの天然由来鉱物や、多孔質または吸着性能をもつ、空孔の大きさが制御された人工ゼオライトのいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むもののうち、図6は、微粉末吸着剤に比表面積1000m2/g、平均粒度30μmの活性炭を用い、粉体に多孔質の二酸化ケイ素、賦形剤に結晶性セルロースを用いた。
錠剤硬度が変わらず、多孔質の二酸化ケイ素の含有率が高いほど崩壊性が早く、賦形剤である量も減る傾向にあった。
表面には図6に示すように多孔質の二酸化ケイ素の含有率が高いほど錠剤表面にひび割れが多く存在したが、硬度に影響はなかった。
このことから、表面のひび割れにより、内部に水が浸透しやすくなっていると考えられる。
図6の配合比は活性炭1部、二酸化ケイ素5部、結晶性セルロース4部の比率で混合し、打錠圧2キロニュートンで得られた錠剤を示す。
図7は図6の混合物における錠剤成型品の表面の走査型電子顕微鏡の錠剤表面写真(35倍) であり、いろいろな形状の粉体が分散していることがわかる。

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の微粉末吸着錠剤は比重が1以上の粉体と多孔質などの微粉末吸着剤との原材料により低圧力で圧着錠剤加工できる微粉末吸着錠剤として提供できるものであって、この微粉末吸着錠剤が、水分の補給に伴い、錠剤の崩壊や分散を制御できる錠剤でもあり、これによって、この微粉末吸着錠剤は、水中もしくは土壌中のダイオキシン等の有害物質を吸着固定して当該有害物質が他の箇所への流出拡散を防止することができるようになるので、局所的に高濃度の汚染源や、河川、湖水、地下水など水並びに底質に対しても、微粉末吸着剤を流失させずに、設置された範囲に亘って所定の機能が持続される効果的な散布が可能となる。
本発明に係る、その微粉末吸着錠剤は、土壌に投擲散布などにより設置処理作された場合には、散水、降雨または土壌中の水分により溶解され、土壌中の有害成分を吸着可能とした微粉末吸着錠剤として利用できる。
また、多孔質などの粉体をと微粉末吸着剤を使用することにより崩壊制御可能な錠剤を制作できるとしたこの技術により、医薬品分野への応用も可能となり、吸着剤の代わりに徐放性の薬剤を含浸させた多孔質の微粉末を用いれば、製造工程を簡略化できる強硬度を兼ね備えた速崩壊性錠剤にも利用可能である。
さらに、本発明の技術は脱臭剤の成型物作成し、使用終了後、吸着剤のまだ有効利用されていない空隙部分に化学物質を吸着するために有効利用できる。そして、その成型物を家庭菜園やプランター等の中に入れ分散させ、有害化学物を吸着させる利用方法もある。

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1(a)】実施例1における本発明品例2の配合割合で作製された分散時間標準・拡散型活性炭錠剤の水投下前後の分散状況の写真であり、錠剤を水中投入3秒後の写真である。
【図1(b)】その錠剤に係る水中投入60秒後の写真である。
【図2(a)】実施例1における本発明品例3の配合割合で作製された分散時間遅延・沈殿型活性炭錠剤の水投下前後の分散状況の写真であり、錠剤の水中投入3秒後の写真である。
【図2(b)】その錠剤に係る水中投入60秒後の写真である。
【図3(a)】実施例1における本発明品例6の配合割合で作製された分散時間速効・拡散型活性炭錠剤の水投下前後の分散状況の写真であり、錠剤の水中投入3秒後の写真である。
【図3(b)】その錠剤に係る水中投入60秒後の写真である。
【図4(a)】実施例2における水滴下による土壌に対する分散実験の写真であり、水滴下前の活性炭錠剤の写真である。
【図4(b)】水滴下30秒後の活性炭錠剤の分散状況の写真である。
【図5】実施例4における活性炭が粉体に圧着されている様子の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)である。
【図6】実施例4における活性炭、多孔質の粉体、賦形剤の混合物における錠剤成型品の表面の走査型電子顕微鏡写真(600倍) である。
【図7】実施例4における活性炭、多孔質の粉体、賦形剤の混合物における錠剤成型品の表面の走査型電子顕微鏡写真(35倍) である。
【図8】実施例3における採取した河川底質から水へ放出する化学物質の吸着性能試験で錠剤が泡を発生しながら分散する様子である。
【図9】実施例1に記載の比較例2である従来品の通常微細粉体活性炭の水温15℃水中投入直後の状態である。
【図10】実施例1に記載の比較例3である従来品の賦形剤である結晶性セルロースのみの錠剤を水温15℃水中投入600秒後の状態である。
【図11】実施例1に記載の比較例4である水溶性樹脂のポリビニルアルコールで固めた微細粉体活性炭における水温15℃水中投入600秒後の状態である。
【符号の説明】
【0050】
1 微粉末の活性炭
2 粉体
3 錠剤表面上の亀裂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細粉体で多孔質の吸着剤と比重1以上の粉体を配合し、この配合において当該吸着剤を、その組成が有機成分の吸着剤と無機成分の吸着剤のいずれか一つまたは組み合わせからなる微細粉体であって、吸着剤の粒度が、200メッシュを通過する粒子径を有すると共に、その粒子密度が、平均粒度100μm以下で、その割合が粒度重量の80%を超える微細粉体を含むものとし、前記粉体に多孔質の吸着剤を圧着または混練した吸着物質によって直打成型した錠剤であって、微細粉体を組み合わせることによって崩壊剤を使用又は使用せずに水などの液体に対する崩壊時間を制御可能としたことを特徴とする錠剤。
【請求項2】
請求項1において、微細粉体が前記多孔質の他に賦形剤、滑沢剤のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含み単層又は多層の錠剤として直打錠可能な混合物であることを特徴とする請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかにおいて、前記吸着剤が、有害有機化合物、有害無機化合物などの種類別ごとに吸着する物質を混合可能な多孔質吸着剤を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤。
【請求項4】
請求項3において、吸着剤または微細粉体の全体または一部に、多孔質、吸着性能または比重1以上の粉体をもつ、カルサイト、ゼオライト、活性白土、珪藻土、花崗岩ペグマタイト、イルメナイトなどの天然由来鉱物のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤。
【請求項5】
請求項3又は4のいずれかにおいて、吸着剤または微細粉体の全体または一部に、多孔質または吸着性能をもつ、空孔の大きさが制御された人工ゼオライトのいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とする有害物質吸着錠剤。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかにおいて、吸着剤の全体または一部に、比表面積が800m2/g以上である活性炭を含むことを特徴とする請求項1から4の有害物質吸着錠剤。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかにおいて、吸着剤の全体または一部に、重金属の即効性吸着性能または保水機能をもつポリアミノ酸、多糖類、ポリアクリル酸、無機塩、キレート剤のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とする請求項1から5の有害物質吸着錠剤。
【請求項8】
請求項3ないし7のいずれかにおいて、賦形剤が結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉、乳糖、二酸化ケイ素、多糖類、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、のいずれか1つまたは複数の組み合わせからなる物質を含むことを特徴とするであることを特徴と有害物質吸着錠剤。
【請求項9】
請求項3ないし8のいずれかにおいて、微細粉体が多孔質と結晶性セルロースと二酸化ケイ素の混合物であることを特徴と有害物質吸着錠剤。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記構成素材が食品添加物由来成分または医薬品からなるものであることを特徴とする有害物質吸着錠剤。
【請求項11】
請求項3ないし10のいずれかにおいて、吸着剤の全体または一部に、酸化剤または還元剤の組み合わせからなる物質を含み、有害物質の分解を促進することを特徴とする請求項1から5の有害物質吸着錠剤。
【請求項12】
請求項3ないし11のいずれかにおいて、吸着剤の全体または一部に、有機物質分解菌を含み、バイオレメディエーション可能な有害物質の分解を促進し、低圧打錠できることを特徴とする請求項1から5の有害物質吸着錠剤。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかにおいて、土壌表面に敷設され、散水、降雨、降雪または土壌中の水分により溶解されたとき、土壌中の有害成分を吸着可能とした有害物質吸着錠剤。


【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−253401(P2010−253401A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107293(P2009−107293)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【出願人】(508303494)
【出願人】(391000081)東京シンコール株式会社 (3)
【Fターム(参考)】