説明

有機高分子複合体の製造方法、有機高分子複合体及びそれを用いた感熱記録材料

【課題】感熱記録材料に使用され、熱感度及び画像保存性を向上させることが可能な有機高分子複合体の製造方法、有機高分子複合体及びそれを用いてなる感熱記録材料の提供。
【解決手段】少なくとも発色成分とイソシアネート化合物と揮発性有機溶剤とを含む発色成分含有液を水相に分散させて、前記発色成分含有液を含む油滴が分散された分散液を調製する分散工程と、前記油滴中の前記イソシアネート化合物を重合反応させる重合工程と、を有し、前記重合工程における前記イソシアネート化合物の反応度が70%のときの前記分散液中の前記揮発性有機溶剤の含有量を、前記重合反応の開始時の含有量に対して10%以下とした有機高分子複合体の製造方法、この製造方法により得られた有機高分子複合体及び感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料に利用することができる有機高分子複合体の製造方法、有機高分子複合体、及び該有機高分子複合体を用いてなる感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録方法は、(1)現像が不要である、(2)支持体が紙の場合、材質が一般紙に近い、(3)取扱いが容易である、(4)発色濃度が高い、(5)記録装置が簡便で信頼性が高く安価である、(6)記録時の騒音が少ない、(7)メンテナンスが不要である、等の利点を有する。そのため、近年、広汎な分野に用途が拡大しており、例えば、多色化してデジタルプリント材料として一般写真分野に、また透過材料として医療分野等にも用途が拡大している。
【0003】
感熱記録方法を実施するためのプリンターのさらなる小型化や、印画エネルギーの低減による画像劣化の防止のために、感熱記録材料の熱感度を向上させることが期待される。感熱記録材料の熱感度を向上させるために、有機高分子複合体の壁の厚みを薄くするなどの方法があるが、一般的に感熱記録材料の熱感度が向上するにつれて保存性が悪化していた。これに対し、多価イソシアネートの一部をモノアルコール化合物で予め反応させる方法(例えば特許文献1参照)や、マイクロカプセルの壁形形成材料(例えば、特許文献2参照)が提案されており、これらの方法によって、高い発色性を実現しつつ、感熱記録材料製造後から使用するまでの間の生保存性を向上させることには成功しているが、画像保存性を向上するには不十分であった。
【特許文献1】特開平5-317694号公報
【特許文献2】特開平10-114153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、感熱記録材料に使用され、熱感度及び画像保存性を向上させることが可能な有機高分子複合体の製造方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、感熱記録材料の熱感度及び画像保存性を向上させることが可能な有機高分子複合体及びそれを用いてなる感熱記録材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、
<1> 少なくとも発色成分とイソシアネート化合物と揮発性有機溶剤とを含む発色成分含有液を水相に分散させて、前記発色成分含有液を含む油滴が分散された分散液を調製する分散工程と、前記油滴中の前記イソシアネート化合物を重合反応させる重合工程と、を有する有機高分子複合体の製造方法であって、前記重合工程における前記イソシアネート化合物の反応度が70%のときの前記分散液中の前記揮発性有機溶剤の含有量を、前記重合反応の開始時の含有量に対して10%以下とした有機高分子複合体の製造方法である。
【0006】
<2> 前記発色成分含有液中の前記イソシアネート化合物の含有量が、前記揮発性有機溶剤100質量部に対して5〜75質量部である<1>に記載の有機高分子複合体の製造方法である。
【0007】
<3> 前記発色成分含有液が、ポリエーテル化合物をさらに含む<1>又は<2>に記載の有機高分子複合体の製造方法である。
【0008】
<4> 前記ポリエーテル化合物が、1又は2以上の活性水素を有するポリエーテルと多官能イソシアネート化合物との反応生成物である<3>に記載の有機高分子複合体の製造方法である。
【0009】
<5> <1>乃至<4>のいずれか1つに記載の有機高分子複合体の製造方法により製造された有機高分子複合体である。
【0010】
<6> 支持体と、前記支持体上に設けられた感熱記録層とを有する感熱記録材料であって、前記感熱記録層が<5>に記載の有機高分子複合体を含有する感熱記録材料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、感熱記録材料に使用され、熱感度及び画像保存性を向上させることが可能な有機高分子複合体の製造方法が提供される。さらに、本発明によれば感熱記録材料の熱感度及び画像保存性を向上させることが可能な有機高分子複合体及びそれを用いてなる感熱記録材料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の有機高分子複合体の製造方法、有機高分子複合体及びそれを用いてなる感熱記録材料について詳細に説明する。
<有機高分子複合体及びその製造方法>
本発明の有機高分子複合体の製造方法は、少なくとも発色成分とイソシアネート化合物と揮発性有機溶剤とを含む発色成分含有液を水相に分散させて、前記発色成分含有液を含む油滴が分散された分散液を調製する分散工程と、前記油滴中の前記イソシアネート化合物を重合反応させる重合工程と、を有し、前記重合工程における前記イソシアネート化合物の反応度が70%のときの前記分散液中の前記揮発性有機溶剤の含有量を、前記重合反応の開始時の含有量に対して10%以下としたものである。
【0013】
本発明は、イソシアネート化合物の重合反応の後半において、揮発性有機溶剤の残存度がイソシアネート化合物の重合反応の最終的な到達度に影響し、感熱記録材料の熱感度と画像保存性に大きな影響を及ぼすことを利用したものである。
即ち、イソシアネート化合物の反応度が70%に達した反応後期において揮発性有機溶媒の分散液中の含有量が10%よりも多い場合には、イソシアネート化合物が完全に重合反応してしまうが、含有量が10%以下と少ない場合一部のイソシアネート基が未反応のまま残存するためイソシアネート化合物の使用量のわりに高感度になり、画像保存性を維持することが可能となる。
【0014】
本発明において揮発性有機溶剤とは、沸点40℃以上150℃未満の有機溶媒をいい、好ましくは40℃〜130℃の沸点を有する有機溶媒が挙げられる。
【0015】
従来、新規な素材を使用して熱感度及び画像保存性等の性能の向上が試みられていたが、本発明によれば従来と同じ素材を用いて有機高分子複合体を作製しても、製造工程を換えるのみで画像保存性を悪化させることなく感度を向上させることができるようになる。
【0016】
本発明の製造方法により、従来と同じ素材を使用しても高感度で画像保存性が良好な有機高分子複合体を製造できるメカニズムは明確にはなっていないが、重合反応後期に揮発性有機溶媒の残存量が僅かである場合、油滴中の粘度が高くなって拡散流動しにくくなるために、イソシアネート化合物、特に油滴内部に存在するイソシアネート化合物が完全に反応できず、有機高分子複合体内部の架橋密度が僅かに低下することに起因すると推定される。
【0017】
本発明の有機高分子複合体の製造方法はイソシアネート化合物の反応度が70%のときの揮発性有機溶剤の含有量を規定するものである。次に、本発明におけるイソシアネート化合物の反応度の測定方法について説明する。
発色成分含有液を含む油滴が分散された分散液をシリコンウエハに適量塗布し乾燥させる。この薄膜を赤外吸収分光器にて、分解能4cm−1、積算回数20回の条件で測定し、2920cm−1のCH吸収強度と2260cm−1のNCOの吸収強度とを求める。得られた吸収強度を用いてCH吸収強度に対するNCO吸収強度の相対値(規格化されたNCO吸収強度比)を求める。反応開始時における規格化されたNCO吸収強度比をイソシアネート化合物残存量100%と規定して、所定反応時間経過後の規格化されたNCO吸収強度比と反応開始時における規格化されたNCO吸収強度比とを比較することにより所定反応時間経過時のイソシアネート化合物残存量(%)を算出する。[100−所定反応時間経過時のイソシアネート化合物残存量](%)をイソシアネート化合物の反応度と定義する。本発明においては、重合反応開始後、15分おきに反応度を求めた。
【0018】
規格化されたNCO吸収強度比の算出方法を、図1を参照しながら説明する。図1は、発色成分含有液を含む油滴が分散された分散液のIRスペクトルである。2920cm−1近傍及び2260cm−1近傍にそれぞれCH及びNCOに由来するピークが存在する。CHに由来するピーク及びNCOに由来するピークの各々にベースラインを引き、各ピークの吸収強度を求める。具体的には、NCOに由来するピークに対しては2100cm−1近傍と2400cm−1近傍とを直線で結び、CHに由来するピークに対しては2400cm−1近傍と3800cm−1近傍とを直線で結ぶことによりベースラインとした。
【0019】
赤外分光吸収スペクトルからの定量化に関しては、そのベースラインの引き方が重要である。一般に、ベースラインは厳密に求めることはできないためその引き方に規定はないが、ベースラインの引き方によって値が変化する。本発明では、ベースラインを図1のように引き、イソシアネートのピークが消失すると残存量が0%と算出されるようにした。さらに、初期値を基準とした反応度を百分率で規定したため、算出誤差が小さくなるよう考慮した。
【0020】
本発明において、分散液中の揮発性有機溶剤の含有量は下記方法により測定された値をいう。まず、揮発性有機溶剤として酢酸エチルを用いた場合について説明する。
分散液をサンプリングし、この分散液にメタノールを添加して震とうし、メタノール中に分散液中の酢酸エチルを抽出する。濃度調整後、この液をシリンジ濾過し、ガスクロマトグラフィーにかけ測定した。測定により得られた酢酸エチルのピーク面積(あるいはピーク強度)と、別途、同条件で測定した既知濃度の揮発性有機溶媒−メタノール溶液を測定し得た検量線から、分散液中の揮発性有機溶媒の濃度を算出した。計算より得た初期の酢酸エチルの仕込み濃度を100%として、所定反応時間経過後の酢酸エチル濃度を初期の酢酸エチルの仕込み濃度に対する百分率で表示し、揮発性有機溶媒の含有量とした。本発明においては、重合反応開始後、15分おきに揮発性有機溶媒の含有量を求めた。
なお、定量する際に使用する溶媒(上記の場合はメタノール)は使用する揮発性有機溶媒(上記の場合は酢酸エチル)によって適宜変更することができる。
【0021】
本発明に係る発色成分含有液は、少なくとも発色成分とイソシアネート化合物と揮発性有機溶剤とを含む。
−発色成分−
本発明に用いられる発色成分としては、未処理時には優れた透明性を有し、加熱や加温等の外部からの熱エネルギー付与により色素を形成することができるものであれば、いかなる種類の化合物でも使用することができる。この様な発色成分としては、実質的に無色の発色成分(a)と該発色成分(a)と反応して色素を形成する実質的に無色の発色成分(b)との組合せ、所謂、2成分型の発色成分系が好適に挙げられる。発色成分として2成分型の発色成分系が用いられる場合、本発明においては該2成分型の発色成分系のうちの一方が発色成分として発色成分含有液に添加される。
この様な2成分型の発色成分系を構成する組合せとしては、下記の(a)〜(m)の様なものが挙げられる。
【0022】
(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ
(b)ジアゾニウム塩とカプラー化合物との組合せ
(c)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ
(d)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪族塩と、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ
(e)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀等との塩等の有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ土類金属硫化物との組合せ、又は、前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ
(f)硫化銀、硫化鉛、硫化水銀、硫化ナトリウム等の(重)金属硫酸塩と、Na−テトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ
(g)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ジヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ
(h)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機貴金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ
(i)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ
(j)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ
(k)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪酸重金属塩と、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ
(l)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せの様なオキサジン染料を形成する物
(m)ホルマザン化合物と還元剤及び/又は金属塩との組合せ
【0023】
上記の中でも、(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ、及び(b)ジアゾニウム塩とカプラー化合物との組合せ、からなる発色成分系を用いることが好ましい。例えば、(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せを用いる場合には電子供与性染料前駆体が、(b)ジアゾニウム塩とカプラー化合物との組合せを用いる場合にはジアゾニウム塩が発色成分として発色成分分散液に添加される。
【0024】
上記発色成分系「(b)ジアゾニウム塩とカプラー化合物の組合せ」について詳しく説明する。
このジアゾニウム塩とは、後述するカップリング成分であるカプラー化合物とカップリング反応を起こして所望の色相に発色するものであり、反応前に特定波長域の光を受けると分解し、最早、カップリング成分が存在していても発色能力を持たなくなる光分解性ジアゾニウム塩であることが望ましい。
この発色系における色相は、ジアゾニウム塩とカプラー化合物とが反応して生成するジアゾ色素により決定される。従って、ジアゾニウム塩、或いはカプラー化合物の化学構造を変えることにより、発色色相を任意に変えることができ、その組み合わせ次第で、所望の発色色相を得ることができる。
【0025】
本発明において好ましく用いられる光分解性ジアゾニウム塩としては、芳香族系ジアゾニウム塩が挙げられ、具体的には、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、ジアゾスルフォネート化合物、ジアゾアミノ化合物等が挙げられる。
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、下記の構造式で表されるジアゾニウム塩が好適に挙げられるが、これに限定されるものではない。また、該芳香族ジアゾニウム塩は、光定着性に優れ、定着後の着色ステインの発生が少なく、発色部の安定なものが好ましく用いられる。
Ar−N2+・X-
上式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基を表し、N2+はジアゾニウム基を表し、X-は酸アニオンを表す。
【0026】
上記ジアゾスルフォネート化合物としては、近年、多数のものが知られるようになり、各々のジアゾニウム塩を亜硫酸塩で処理することにより得られ、本発明の感熱記録材料に好適に用いることができる。
【0027】
上記ジアゾアミノ化合物としては、ジアゾ基を、ジシアンジアミド、サルコシン、メチルタウリン、N−エチルアントラニックアシッド−5−スルフォニックアシッド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、グアニジン等でカップリングさせることにより得ることができ、本発明の感熱記録材料に好適に用いることができる。
これらのジアゾニウム塩の詳細については、例えば、特開平2−136286号公報等に詳細に記載されている。
【0028】
一方、上述のジアゾニウム塩とカップリング反応するカプラー化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリドの他、レゾルシンを始め、特開昭62−146678号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0029】
本発明において、発色成分系として、ジアゾニウム塩とカプラー化合物との組合せによるものを用いる場合、ジアゾニウム塩を有機高分子複合体に内包させ、カプラー化合物を有機高分子複合体に内包せずに感熱記録層に含有させる。
ジアゾニウム塩とカプラー化合物とのカップリング反応は塩基性の雰囲気下で行うことにより、その反応をより促進させることができる観点から、感熱記録層に増感剤として塩基性物質を添加することが好ましい。
上記塩基性物質としては、水不溶性又は難溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質が挙げられ、例えば、無機又は有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素やチオ尿素又はそれらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルフォリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォリムアジン類又はピリジン類等の含窒素化合物が挙げられる。
これらの具体例としては、例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されたものが挙げられる。
【0030】
次に、上記発色成分系「(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ」について詳しく説明する。
本発明において好ましく用いられる電子供与性染料前駆体としては、実質的に無色のものであれば特に限定されるものではないが、エレクトロンを供与して、或いは、酸等のプロトンを受容して発色する性質を有するものであり、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触したときに、これらの部分骨格が開環もしくは開裂する無色の化合物であるものが好ましい。
【0031】
前記電子供与性染料前駆体としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、ピラジン系化合物等が挙げられる。
【0032】
前記フタリド類の具体例としては、米国再発行特許明細書第23024号、米国特許明細書第3491111号、同第3491112号、同第3491116号、同第3509174号等に記載された化合物が挙げられる。
前記フルオラン類の具体例としては、米国特許明細書第3624107号、同第3627787号、同第3641011号、同第3462828号、同第3681390号、同第3920510号、同第3959571号等に記載された化合物が挙げられる。
前記スピロピラン類の具体例としては、米国特許明細書第3971808号等に記載された化合物が挙げられる。
前記ピリジン系及びピラジン系化合物類としては、米国特許明細書第3775424号、同第3853869号、同第4246318号等に記載された化合物が挙げられる。
前記フルオレン系化合物の具体例としては、特願昭61−240989号公報等に記載された化合物が挙げられる。
これらの中でも、特に、黒発色の2−アリールアミノ−3−〔H、ハロゲン、アルキル又はアルコキシ−6−置換アミノフルオラン〕が好適に用いられる。
【0033】
具体的には、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジオクチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−ドデシルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−エチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−p−ブチルアニリノフルオラン、2−アニリノ−3−ペンタデシル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−エチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−トルイジノ−3−メチル−6−ジイソプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−イソブチル−N−エチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−メチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−プロポキシプロピルアミノフルオラン等が挙げられる。
【0034】
電子供与性染料前駆体は、貯蔵安定性及び地肌カブリの観点より、有機高分子複合体に内包される。有機高分子複合体に含まれる電子供与性前駆体を感熱記録層に含有する場合、該電子供与性染料前駆体の含有量としては、0.1〜5.0g/m2が好ましく、1.0〜4.0g/m2がより好ましい。電子供与性染料前駆体の含有量が前記の範囲内にあると、十分な発色濃度が得られ、且つ感熱記録層の透明性を保持することができる。
【0035】
一方、電子供与性染料前駆体と組み合わせて用いられる電子受容性化合物(以下、「顕色剤」と称する場合あり。)は、有機高分子複合体には内包せずに、感熱記録層に含有させる。電子受容性化合物としてはフェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。例えば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸及びその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸及びその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸及びその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールを挙げることができる。
本発明においては、これらの電子受容性化合物を2種以上任意の比率で併用することができる。
【0036】
本発明に係る発色成分含有液中の発色成分の含有量としては、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
【0037】
−イソシアネート化合物−
本発明に用いられるイソシアネート化合物は、芳香族化合物や炭化水素化合物等に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物の場合のほか、イソシアネート化合物を用いた縮合体、重合体又は付加体等の場合を含む。一分子(ポリマー、アダクト物等を含む)内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましい。
【0038】
芳香族化合物や炭化水素化合物等に2個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
以上では2官能であるジイソシアネート化合物を例示したが、これらに類推される3官能のトリイソシアネート化合物、4官能のテトライソシアネート化合物であってもよい。
【0039】
また、上記イソシアネート化合物と、エチレングリコール類、ビスフェノール類等の2官能アルコール、フェノール類との付加物も利用できる。
【0040】
イソシアネート化合物を用いた縮合体、重合体又は付加体の例としては、前述の2官能イソシアネート化合物の3量体であるビューレット又はイソシアヌレート、トリメチロールプロパンなどのポリオールと2官能イソシアネート化合物の付加体として多官能としたもの、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物の重合体、リジントリイソシアネートなども用いることができる。特に、キシレンジイソシアネートおよびその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートおよびその水添物を主原料としこれらの3量体(ビューレットあるいはイソシヌレート)の他、トリメチロールプロパンとのアダクト体として多官能としたものが好ましい。
これらの化合物については「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
【0041】
これらの中で、多官能イソシアネートとしては、芳香族系の多官能イソシアネートが好ましく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンとキシリレン−1,4−ジイソシアネートまたはキシリレン−1,3−ジイソシアネートとの付加物が好ましく、特にキシリレン−1,4−ジイソシアネート及びキシリレン−1,3−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンとキシリレン−1,4−ジイソシアネートまたはキシリレン−1,3−ジイソシアネートとの付加物が好ましい。
【0042】
本発明に係る発色成分含有液中のイソシアネート化合物の含有量としては、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
また、発色成分含有液中のイソシアネート化合物の含有量は、揮発性有機溶剤100質量部に対して5〜75質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがさらに好ましい。イソシアネート化合物の含有量が揮発性有機溶剤100質量部に対して5〜75質量部であると、揮発性有機溶媒の蒸散のコントロールにより、イソシアネート化合物の反応度を制御しやすい。
【0043】
−揮発性有機溶剤−
本発明に用いられる揮発性有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸イソプロピル(沸点88℃)、酢酸ブチル(沸点124〜127℃)、酢酸イソブチル(沸点118℃)、メチレンクロライド(沸点40℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)などを挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも特に酢酸エチルが好ましい。
【0044】
本発明に係る発色成分含有液中の揮発性有機溶剤の含有量としては、20〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。
【0045】
本発明に係る発色成分含有液は、ポリエーテル化合物をさらに含んでもよい。該ポリエーテル化合物としては、例えば、1又は2以上の活性水素を有するポリエーテル、1又は2以上の活性水素を有するポリエーテルと多官能イソシアネート化合物との反応生成物等が挙げられる。
ポリエーテル化合物を用いることにより、高感度で保存性に優れた有機高分子複合体を得ることができる。
【0046】
本発明に用いられるポリエーテルは、2以上のエーテル部位を有し、かつ1又は2以上の活性水素を有するものが好ましい。活性水素は、イソシアネート化合物と付加反応し、ポリウレタン又はポリウレアを形成するために必要となる。活性水素を有する官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。このうち、特に水酸基、アミノ基が好ましい。このようなポリエーテルとしては、例えば、片末端、又は両末端に活性水素を有するポリエーテルが挙げられ、具体的にはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、ポリスチレンオキシド、ポリシクロヘキシレンオキシド、ポリ(エチレンチオグリコール)等が挙げられる。
【0047】
これらの化合物は、例えばアルコール、アルコキシド、カルボン酸、カルボン酸塩等を重合開始末端としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状化合物を開環重合させることで得られる。あるいは、アルコール、アルコキシド等を重合開始末端として、カプロラクトン等を用いることで片末端に水酸基を有するポリエーテルが得られる。また、この末端水酸基を公知の反応により末端アミノ基、カルボキシル基等に変換することも可能である。また両末端に活性水素を有するポリエーテルの一方の活性水素のみをエーテル基、エステル基等に変換した化合物も利用できる。
【0048】
かかるポリエーテルは、繰り返し単位の種類が1種類であるホモポリマーであっても、2種以上の繰り返し単位を含む共重合体でも良い。またこれらの化合物は溶融点を有しても良く、このような場合には特に40〜180℃の溶融点を有する化合物が好ましい。このような溶融点を有する化合物としはポリエチレンオキシド、ポリスチレンオキシド等が挙げられる。この溶融点は分子量によっても変化する為に一概には言えないが、例えばポリエチレンオキシドの場合では分子量が約1,000以上の場合にこのような溶融点を有する。
【0049】
これらの中でもポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドのモノエーテル体、すなわち、片末端がエーテルで封止されたポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドが好ましく、該モノエーテルとしては、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノオレイルエーテル、モノラウリルエーテル、モノステアリルエーテル、モノノニルフェニルエーテル、モノオクチルフェニルエーテル、モノラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。特に、本発明にかかるポリエーテルとしては、ポリエチレンオキシドのモノエーテル体が好ましい。
【0050】
ポリエーテルの数平均分子量は、500〜20,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜10,000であり、更に好ましくは2,000〜8,000である。数平均分子量が500より小さいとポリエーテルの導入によりかぶりが増加する。また数平均分子量が20,000より大きいとポリエーテルの合成が困難になり、また高粘度となる為に有機高分子複合体製造における分散工程での作業が困難となる。
【0051】
1又は2以上の活性水素を有するポリエーテルと多官能イソシアネート化合物との反応生成物は、上述したポリエーテルとイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。該反応生成物におけるポリエーテル中の活性水素と前記多官能イソシアネート中のイソシアネート基との反応比率は、1/100〜50/100mol比であることが好ましく、2/100〜40/100が特に好ましい。反応比率が1/100より小さい場合には感度向上の効果が不十分であり、50/100を越えるとイソシアネート基量が減少してしまう為にカプセル形成が困難となる。このような反応比率により、イソシアネート基が残存した付加物となる。
【0052】
活性水素を有するポリエーテルと多官能イソシアネートとの付加反応は、例えば、活性水素を有していない有機溶剤中で、両化合物を攪拌しながら加熱(約50〜100℃)することにより、あるいはオクチル酸第1錫、ジブチル錫ジアセテート等の触媒を添加しながら比較的低温(約40〜70℃)で加熱して、得ることができる。有機溶媒の例としては例えば酢酸エチル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、トルエン等が挙げられる。
【0053】
上記付加反応により得られた付加物(プレポリマー)は、数平均分子量が、500〜50,000であることが好ましく、1,000〜30,000であることがより好ましく、2,000〜15,000であることが更に好ましい。数平均分子量が50,000より大きいと、有機高分子複合体製造における分散工程での作業が困難となる。
【0054】
本発明に係る発色成分含有液は、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含有しても良い。
【0055】
本発明に係る発色成分含有液は、所定量の発色成分とイソシアネート化合物と揮発性有機溶剤と必要に応じて用いられるその他の成分とを混合及び、撹拌又は分散等の公知の手法を用いることにより調製される。本発明に係る発色成分含有液は、溶液の状態であってもよいし、分散液の状態であってもよい。
【0056】
本発明の有機高分子複合体の製造方法は、発色成分含有液を含む油滴が分散された分散液を調製する分散工程と、前記油滴中の前記イソシアネート化合物を重合反応させる重合工程と、を有する。
−分散工程−
本発明における分散工程は、発色成分含有液(油相)を油滴として水相に乳化分散させる工程である。乳化分散は、高速撹拌機、超音波分散装置等の通常の微粒子乳化に用いられる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等、その他公知の乳化分散装置を用いて容易に行うことができる。
【0057】
油相の水相に対する混合比(油相質量/水相質量)は、0.5〜1.5が好ましく、0.7〜1.2がより好ましい。該混合比が0.5〜1.5の範囲内であると、適度の粘度に保持でき、製造適性に優れ、乳化液の安定性に優れる。
【0058】
用いる水相には保護コロイドとして水溶性高分子を溶解した水溶液を使用することが好ましく、前記水溶性高分子は、分散を均一に且つ容易にすると共に、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。
【0059】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその変成物、ポリアクリル酸アミドおよびその誘導体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン/アクリル酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム及びアルギン酸ナトリウムを挙げることができ、ポリビニルアルコールおよびその変性物、ゼラチン及びその変性物、セルロース誘導体を用いることが好ましい。
これらの水溶性高分子は、イソシアネート化合物と反応しないか、極めて反応し難いものが好ましく、たとえばゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは予め反応性をなくしておくことが必要である。
水溶性高分子は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
本発明においては、ポリエーテルが界面活性剤としても働くため、発色成分含有液中にポリエーテル化合物を添加する場合、界面活性剤を別途添加することなく安定に分散を行うことが可能であるが、感熱記録材料の性能に悪影響を及ぼさない範囲内で必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、油相または水相のいずれに添加して使用してもよい。界面活性剤の使用量は、油相の質量に対し1質量%以下、特に0.5質量%以下が好ましい。
【0061】
一般に乳化分散に用いる界面活性剤は、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤の中から適宜に選択して使用することができるが、比較的長鎖の疎水基を有する界面活性剤が優れているとされている「界面活性剤便覧」(西一郎ら、産業図書発行(1980))。
好ましい界面活性剤としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸などのアルカリ金属塩であり、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、アセチレングリコール等が挙げられる。
【0062】
また、界面活性剤(乳化助剤)として芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物や芳香族カルボン酸塩のホルマリン縮合物などの化合物を使用することもできる。具体的には、下記一般式:
【0063】
【化1】

【0064】
[Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を、XはSOまたはCOOを、Mはナトリウム原子またはカリウム原子を、qは1〜20の整数を表わす]で表わされる化合物である。上記化合物については特開平6−297856号公報に記載されている。
【0065】
またアルキルグルコシド系化合物も同様に使用することができる。具体的には、下記の一般式:
【0066】
【化2】

【0067】
[Rは炭素原子数4〜18のアルキル基を、pは0〜2の整数を表わす]で表される化合物である。
【0068】
本発明において、界面活性剤は、単独で使用しても二種以上適宜併用しても良い。
【0069】
分散工程により得られた油滴であるエマルジョン粒子は、体積平均粒径が、0.05μm〜0.4μmであることが好ましく、より好ましくは、0.1μm〜0.3μmであることが好ましい。ここで、エマルジョン粒子の体積平均粒径とは、(株)堀場製作所製のレーザー回折粒度分布測定装置「LA700」により測定される、有機高分子複合体中の50%体積に相当する有機高分子複合体の平均粒径(以下、単に「平均粒径」ということがある。)を意味し、以降における体積平均粒径も同様とする。
【0070】
−重合工程−
本発明に係る重合工程は、油滴中に含まれるイソシアネート化合物を重合反応させる工程である。重合工程の際に、イソシアネート化合物の反応度が70%のときの分散液中の揮発性有機溶剤の含有量が、前記重合反応の開始時の含有量に対して10%以下となるように調整される。分散液中の揮発性有機溶剤の含有量は、分散液の撹拌速度や撹拌時間、重合反応の際の液温や排気風量を調節することにより適宜調整することができる。
【0071】
重合反応は、分散液中にイソシアネート化合物の重合反応触媒を添加するか、分散液の温度を上昇させて行うことができる。
【0072】
通常のマイクロカプセルの製造方法では、水相にイソシアネート化合物と付加反応を起こす化合物、例えば、ポリオールや多官能アミノ化合物、を添加しておき、油相に含まれるイソシアネートが水分子の活性水素だけでなく水相に含まれるポリオールや多官能アミノ化合物と界面で付加反応しポリウレタンやポリウレアを生成して壁を形成する。
水相に添加しうるポリオールとしては、具体的にはプロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンなどが挙げられ、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用しても良い。また、水相に添加しうる多官能アミノ化合物としては、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等を挙げることができ1種類のみ使用しても、2種類以上を併用しても良い。更に、ポリオールと多官能アミノ化合物とを併用しても良い。これらの化合物も先の「ポリウレタン樹脂ハンドブック」に記載されている。
【0073】
重合工程中に、有機高分子複合体同士の凝集を防止するために、加水して有機高分子複合体同士の衝突確率を下げることが好ましく、充分な攪拌を行うことも好ましい。水の添加量は、発色成分含有液の濃度が2質量%〜50質量%となるようにすることが好ましく、より好ましは、5質量%〜30質量%である。
【0074】
また、重合工程中に改めて凝集防止用の分散剤を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その発生の終息をもって凡その形成反応の終点と見なすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的とする有機高分子複合体を得ることができる。
【0075】
本発明の製造方法では、必要に応じて金属含有染料、ニグロシン等の荷電調節剤、或いは、その他任意の添加物質を添加することができる。これらの添加剤は壁の形成時、又は任意の時点で含有することができる。
【0076】
重合工程後に、有機高分子複合体に含まれる揮発性有機溶媒を除去するために、加熱することも好ましい。揮発性有機溶媒が残存すると、保存時に徐々に揮発して、性能が不安定となり易い。揮発性有機溶媒を除去するための加熱温度は、使用した揮発性有機溶媒の種類によるが、100℃未満であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。
【0077】
本発明の製造方法によって得られる有機高分子複合体を感熱記録材料に適用すると、熱感度及び画像保存性に優れた感熱記録材料となる。
有機高分子複合体の体積平均粒径は、0.4μm以下であることが好ましく、0.1μm〜0.3μmであることが好ましい。0.4μmを超えると、感度が低くなる場合がある。
【0078】
本発明の有機高分子複合体は、感熱記録材料のほか、インク、染料にも適用することができるが、感熱記録材料に適用することが好ましい。また、医療用の感熱記録材料にも好適に用いることができる。
【0079】
<感熱記録材料>
本発明の感熱記録材料は、支持体と、前記支持体上に設けられた感熱記録層とを有する感熱記録材料であって、前記感熱記録層が本発明の有機高分子複合体を含有するものである。
【0080】
(感熱記録層)
本発明の感熱記録材料における感熱記録層は、少なくとも発色成分とバインダーを含有してなり、更に、必要に応じてその他の成分を含有することができる。感熱記録層は、1層設けられていても、2層以上設けられていてもよい。
【0081】
感熱記録層には、発色を促進するために増感剤を添加することが好ましい。増感剤としては、分子内に芳香族性の基と極性基を適度に有している低融点有機化合物が好ましい。その具体例としては、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、α−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフトエ酸フェニルエステル、α−ヒドロキシ−β−ナフトエ酸フェニルエステル、β−ナフトール−(p−クロロベンジル)エーテル、1,4−ブタンジオールフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−メチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−エチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−m−メチルフェニルエーテル、1−フェノキシ−2−(p−トリルオキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−エチルフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−クロロフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、p−トルエンスルホンアミド、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルスルホンアミド、4−n−ペンチルオキシフェニルスルホンアミド等が挙げられる。
本発明においては、これらの増感剤を2種以上任意の比率で併用することもできる。
【0082】
(1)乳化分散物
本発明においては、感熱発色層中に電子受容性化合物を添加し、更に熱増感剤などを添加する場合、別々に乳化分散、あるいは固体分散、微粒化して添加、あるいは適宜混合してから乳化分散あるいは固体分散、微粒化して添加することができる。乳化分散する方法は、有機溶媒中にこれらの化合物を溶解し、水溶性高分子水溶液をホモジナイザー等で攪拌中に添加する。微粒子化を促進するにあたり、疎水性有機溶媒、界面活性剤、水溶性高分子を使用することが好ましい。
【0083】
電子受容性化合物、熱増感剤などを固体分散するには、これらの粉末を水溶性高分子水溶液中に投入しボールミル等の公知の分散手段を用いて微粒子化し、使用することができる。微粒子化に際しては、熱感度、保存性、記録層の透明性、製造適性などの感熱記録材料及びその製造方法に必要な特性を満足しうる粒子径を得るように行なうことが好ましい。
【0084】
(2)感熱記録層用塗布液
感熱記録層用塗布液は、例えば、前記の様に調製した有機高分子複合体と乳化分散物とを混合することにより、調製することができる。ここで、前記有機高分子複合体の調製の際に保護コロイドとして用いた水溶性高分子、並びに前記乳化分散物の調製の際に保護コロイドとして用いた水溶性高分子は、感熱記録層におけるバインダーとして機能する。また、これら保護コロイドとは別にバインダーを添加し混合して、感熱記録層用塗布液を調製することも好ましい態様である。
【0085】
前記感熱記録層に含有されるバインダーとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、メチロール変性ポリアクリルアミド、デンプン誘導体、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。
また、これらのバインダーに耐水性を付与する目的で耐水性の改良剤を加えたり、疎水性ポリマーのエマルジョン、具体的には、アクリル樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックス等を添加することもできる。
【0086】
(3)その他の成分
以下に、感熱記録層に用いることのできるその他の成分について述べる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的或いは必要に応じて適宜に選択することができるが、例えば、公知の熱可融性物質、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
その他の成分の塗布量としては、0.05〜1.0g/m2程度が好ましく、0.1〜0.4g/m2がより好ましい。また、該他の成分は、前記有機高分子複合体内に添加してもよいし、有機高分子複合体外に添加してもよい。
【0087】
前記熱可融性物質は、熱応答性の向上を図る目的で感熱記録層に含有させることができる。このような熱可融性物質としては、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、脂肪族アミド、ウレイド等が挙げられる。これらの例は、特開昭58−57989号、同58−87094号、同61−58789号、同62−109681号、同62−132674号、同63−151478号、同63−235961号、特開平2−184489号、同2−215585号の各公報等に記載されている。
【0088】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等が好適に挙げられる。これらの例は、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号の各公報、米国特許第2719086号、同第3707375号、同第3754919号、同第4220711号の各明細書等に記載されている。
【0089】
前記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤等が好適に挙げられる。これらの例は、特開昭59−155090号、同60−107383号、同60−107384号、同61−137770号、同61−139481号、同61−160287号の各公報等に記載されている。
【0090】
(4)その他
本発明における感熱記録層としては、サーマルヘッドの僅かな熱伝導の差異等から生ずる濃度ムラ等を抑制して高画質な画像を得るために、飽和透過濃度(DT−max)を得るのに必要なエネルギー量の幅、即ち、ダイナミックレンジが広い感熱記録層が好ましい。本発明の感熱記録材料は前記の様な感熱記録層を有し、60〜130mJ/mm2の範囲の熱エネルギー量で、透過濃度(DT−max)3.0を得ることができる特性を有する感熱記録層であることが好ましい。
【0091】
本発明における感熱記録層は、塗布及び乾燥後の固形分塗布量が1〜25g/m2になるように塗布されること、及び該記録層の厚みが1〜25μmになるように塗布されることが好ましい。また、感熱記録層は2層以上を積層して用いることも可能である。この場合、全感熱記録層の塗布及び乾燥後の固形塗布量が1〜25g/m2であることが好ましい。
【0092】
(保護層)
本発明の感熱記録材料は、感熱記録層を有する面側の最上層として保護層を有することが好ましい。該保護層は通常、保護層用塗布液として調製された塗布液を塗布して形成されるが、該保護層用塗布液は広い記録エネルギー領域に亙り、良好なヘッドマッチング性を保有するために、水溶性バインダーとしてポリビニルアルコールを含有することが好ましい。また、本発明の感熱記録材料は、保護層中の全固形分に対して、5質量%以上の分散された非水溶性素材を含有することが好ましい。該保護層中の全固形分に対する分散された非水溶性素材の含有量は、6質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが更に好ましい。
【0093】
前記分散された非水溶性素材としては、ヘッドカス付着防止、スティッキング/融着防止、異音等の発生の防止の為に添加される分散された顔料;分散或いは乳化分散された潤滑剤、離型剤、すべり剤;表面光沢調整等の目的で添加される分散されたマット剤等が挙げられる。
【0094】
(1)顔料
前記保護層に用いられる顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれも使用できる。
前記保護層に用いられる顔料としては、その体積平均粒径、詳しくは、既述のレーザー回折法で測定した50%体積平均粒径が、0.10〜5.0μmであるものが好ましく、特にサーマルヘッドにより熱記録する際、サーマルヘッドと感熱記録材料の間におけるスティッキングや異音等の発生を抑止する観点から、前記平均粒径は0.20〜0.50μmの範囲にあることがより好ましい。前記体積平均粒径が0.10〜5.0μmの範囲内にあると、サーマルヘッドに対する摩擦の低減効果が大きく、その結果、印画時にサーマルヘッドと感熱記録材料の保護層とが接着してしまう、所謂、スティッキング現象を効果的に防止することができる。
【0095】
前記保護層に用いることのできる顔料の種類としては、特に限定されるものではなく、公知の有機及び無機の顔料から適宜に選択して使用することができるが、中でも、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカ、酸化亜鉛等の無機顔料、及び尿素ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂等の有機顔料が好ましい。中でも特に、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカがより好ましい。これらの顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また前記顔料の中でも、高級脂肪酸や高級脂肪酸の金属塩、高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種により表面被覆された顔料を好適に使用することができる。前記表面処理に用いる高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。
【0096】
前記の顔料は、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ、部分鹸化又は完全鹸化のポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、各種界面活性剤等の分散助剤、好ましくは部分鹸化又は完全鹸化のポリビニルアルコール、イタコン酸変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体アンモニウム塩の共存下で、ディゾルバーやサンドミル、ボールミル等の既知の分散機で前記体積平均粒径にまで分散して使用されることが好ましい。即ち、顔料の50%体積平均粒径が0.1〜5.0μmの範囲の粒径になるまで微分散してから使用されることが好ましい。
【0097】
(2)潤滑剤、離型剤及びすべり剤
前記保護層に用いられる潤滑剤、離型剤及びすべり剤(以下、「潤滑剤等」という場合がある。)は、通常、印画トルクを低減させサーマルヘッドによる熱記録を好適なものとするため、常温で液体ないし融点が40℃未満の潤滑剤と融点が40℃以上の潤滑剤を含有する形態が好ましい。
前記の常温で液体の潤滑剤等としては、シリコンオイル、流動パラフィン、ラノリン等が挙げられ、特にシリコンオイルが好ましい。これらのシリコンオイルはカルボキシル基、ポリオキシエチレン基等の置換基を有していてもよく、該シリコンオイルの粘度としては、100〜100000cpsのものが好ましい。
【0098】
前記の融点が40℃未満の潤滑剤等としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩等が挙げられ、中でも特に、下記構造式[001]で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩が好ましい。
【0099】
【化3】

【0100】
上式[001]中、Rはアルキル基を表し、該アルキル基は置換基によって置換されていてもよい。nは1又は2を表す。
前記の常温で液体の潤滑剤等及び融点が40℃以下の潤滑剤等は、単独で使用ないし2種以上を併用してもよい。
【0101】
前記の融点が40℃以上の潤滑剤等としては、融点が160℃以下、好ましくは融点が140℃以下のものが望ましく、ステアリン酸アミド(融点100℃)、メチロールステアリン酸アミド(101℃)、ポリエチレンワックス(融点110℃以下)、融点50〜90℃のパラフィンワックス、グリセリントリ−12−ヒドロキシステアラート(融点88℃)、オレイン酸アミド(融点73℃)、オレイン酸亜鉛(融点75℃)、ラウリン酸アミド(融点84℃)、ステアリン酸アルミニウム(融点102℃)、ステアリン酸マンガン(融点112℃)、ステアリン酸亜鉛(融点125℃)、ステアリン酸カルシウム(融点160℃)、エチレンビスステアロアミド(融点140℃)、ステアリン酸マグネシウム(融点132℃)、パルミチン酸マグネシウム(融点122℃)、ミリスチン酸マグネシウム(融点131℃)、等を挙げることができる。これらの融点が40℃以上の潤滑剤も、単独で使用ないし2種以上を併用してもよい。
【0102】
本発明に用いる前記潤滑剤等が水に不溶の場合には、分散又は乳化物の形で保護層に添加する。また固体の場合には、(1)ポリビニルアルコール等の水溶性高分子や各種界面活性剤等の分散剤の共存下に、ホモジナイザーやディゾルバー、サンドミル等の既知の分散機で分散した水分散物の形で用いるか、(2)溶剤に溶かした後、水溶性高分子や各種界面活性剤等の分散剤の共存下に、ホモジナイザーやディゾルバー、コロイドミル等の既知の乳化装置で乳化分散した乳化物の形で用いられる。また液体の場合には、前記の様な乳化物の形で用いられる。分散或いは乳化分散された潤滑剤等の好ましい体積平均粒子径は0.1〜5.0μmであり、更に0.1〜2.0μmがより好ましい。ここで、該体積平均粒子径は、既述のレーザー回折法によって測定される。
【0103】
一方、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩等の水に可溶の潤滑剤は、溶解度を勘案した上で、任意の濃度で溶解して保護層に添加することができる。
【0104】
(3)マット剤
前記保護層中に含有されるマット剤としては、例えば、大麦、小麦、コーン、米、豆類より得られる澱粉等の微粒子の他、セルロースファイバー、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニルまたは酢酸ビニル等の共重合体樹脂、ポリオレフィン等の合成高分子の微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、スメクタイト粘土、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛等の無機物の微粒子等が挙げられる。また、感熱記録材料の透明性を良好なものとする観点から、屈折率が1.45〜1.75の微粒子状物質が好ましく、体積平均粒径としては、1〜20μm(特に1〜10μm)が好ましい。
【0105】
(4)バインダー等
前記保護層に用いられるバインダーとしては、透明性を良好なものとする観点から、バインダーとしてポリビニルアルコールが好ましく用いられ、カルボキシ変性ポリビニルアルコールやシリカ変性ポリビニルアルコール等の変性PVAを用いることもできる。
【0106】
また、前記保護層には公知の硬膜剤等が含有されることが好ましい。該硬膜剤としては、硼酸、硼砂、コロイダルシリカ等の無機化合物やアルデヒド誘導体、ジアルデヒド誘導体などを挙げることができる。
本発明において、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン類を保護層に硬膜剤として添加することが皮膜強度を上げ、保護層の耐水性を向上する点で好ましい。2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン類としては、2,3−ジヒドロキシ−5−メチル−1,4−ジオキサン(下記構造式[002]で表わされる化合物)、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−5,6−ジメチル−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−2,5,6−トリメチル−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−2−メチル−1,4−ジオキサンが挙げられる。
これらの2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン類はその層のバインダーに対して0.1〜200質量%用いることが好ましく、より好ましくは1〜100質量%、更に好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは20〜40質量%である。
【0107】
【化4】

【0108】
本発明において、感熱記録層又は中間層上に均一に保護層を形成させるために、保護層形成用塗布液に界面活性剤を添加することが好ましい。該界面活性剤としては、スルホコハク酸系のアルカリ金属塩、フッ素含有界面活性剤等が好ましく、具体的には、ジ−(2−エチルヘキシル)スルフォコハク酸、ジ−(n−ヘキシル)スルフォコハク酸等のナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、アセチレングリコール誘導体、パーフルオロアルキル硫酸ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、パーフルオロアルキルベタイン化合物等が挙げられる。
【0109】
更に前記保護層中には、感熱記録材料の帯電防止の目的で、金属酸化物微粒子、無機電解質、高分子電解質等を添加してもよい。また、前記保護層は単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
前記保護層の乾燥塗布量は0.2〜7g/m2が好ましく、1〜4g/m2がより好ましい。
【0110】
(支持体)
本発明における支持体としては、公知の支持体の中から適宜選択することができ、例えば、中性紙、酸性紙、再生紙、ポリオレフィン樹脂ラミネート紙、合成紙、ポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム等のセルロース誘導体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム等が挙げられる。これらは単体で、或いは貼り合わせて用いることができる。中でも、カール等の変形を効果的に防止するために、縦方向及び横方向における熱収縮率が1%未満であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。
【0111】
特に医療用記録に用いられる場合などは、高分子フィルムからなる支持体が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の合成高分子フィルム、等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)の支持体が好ましい。
前記合成高分子フィルムの厚みとしては、100μm以上であることが好ましく、120μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることが更に好ましい。前記合成高分子フィルムの厚みが100μm以上であると、特に医療診断用途でシャーカステン観察時に抜き差しがし易く好ましい。また、前記合成高分子フィルムの厚みは、250μm以下であることが好ましい。前記合成高分子フィルムの厚みが250μm以下であると、フィルム自体の質量が軽くて済む。
【0112】
また、前記合成高分子フィルムは透明であることが好ましく、更に、任意の色相に着色されていてもよい。該合成高分子フィルムを着色する方法としては、樹脂フィルムを成形する前に樹脂に染料を混練してフィルムを成形する方法、染料を適当な溶剤に溶かした塗布液を調製し、これを無色透明な樹脂フィルム上に公知の塗布方法、例えば、グラビアコート法、ローラーコート法、ワイヤーコート法等により塗布する方法が挙げられる。中でも、青色染料を混練したポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂をフィルムに成形し、これに耐熱処理や延伸処理、帯電防止処理等を施したものが好ましい。本発明における支持体としては、厚みが100μm以上のポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0113】
一方、シャーカステン上で透過観察する場合に、透明な非画像部分を透過するシャーカステン光により幻惑が生じ見辛い画像になることがある。このような場合に、前記幻惑を回避する為に、JIS−Z8701(1999)に記載の方法により規定された色度座標上の、A(x=0.2805,y=0.3005)、B(x=0.2820,y=0.2970)、C(x=0.2885,y=0.3015)、D(x=0.2870,y=0.3040)の4点で形成される四角形の領域内に青く着色された合成高分子フィルムを用いることが特に好ましい。
【0114】
(バック層)
本発明の感熱記録材料においては、カールバランスを良好とする為に、前記支持体の感熱記録層や中間層を有する発色面の反対側(裏面)に、少なくとも1層の水溶性バインダーを含むバック層が設けられることが好ましい。前記裏面の水溶性バインダー塗布量は、カールバランスを更に向上させる観点より、0.5〜5g/m2であることが好ましく、特に1.5〜4g/m2であるのが最も好ましい。
また、本発明におけるバック層に用いる前記水溶性バインダーの中でも、ゼラチン類が最も好ましく、該ゼラチンとしては、特に等電点の低いアルカリ処理ゼラチン、アミノ基を反応させた誘導体ゼラチン(例えば、フタル化ゼラチン等)等が好ましい。
本発明におけるバック層に用いる前記水溶性バインダーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、バック層が2層以上の複数層からなる場合には、その少なくとも2層はゼラチンを含有することが好ましく、ゼラチンと共に他の水溶性バインダーを含んでいてもよい。
【0115】
また、本発明の感熱記録材料は、カールバランスを向上させる為に、前記裏面に更にラテックスを含有させることが可能であり、この場合、該ラテックス塗布量は裏面のゼラチン塗布量以下であることが好ましい。更に、カールバランスをより向上させる為に、前記裏面のラテックス塗布量は、裏面のゼラチン塗布量の50質量%以下であることが好ましい。ここで、該ラテックスは水分散液の形態で用いることが好ましい。
前記ラテックスはゼラチンの充填剤として作用すると考えられ、ゼラチン膜の熱伸縮を抑制し寸法安定性を向上させる機能を有する。一方、ゼラチンに対するラテックスの塗布比率が高くなると、ゼラチン膜を可塑化するため耐接着性を悪化させてしまう。特に、ラテックスの塗布乾燥後の塗布質量が、バック面のゲル分塗布質量を越えると、バック面と発色面の接着性が大きくなり、両者を剥がす際に膜剥がれを起こし易くなるため、実用に適さなくなる場合がある。それを避ける為に、該ラテックス塗布量は裏面のゼラチン塗布量以下であることが好ましく、特に裏面のゼラチン塗布量の50質量%以下であることが好ましい。
【0116】
本発明に用いる前記ラテックスとしては、各種モノマーの共重合体が好ましく、そのモノマー組成としては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート類;ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、スチレン等が挙げられる。これらのモノマーの共重合体は、単独で使用又は複数を混合して用いることができる。
【0117】
本発明におけるバック層は、1層で構成されたものであってもよいし、2層以上で構成されたものであってもよい。特に、他に支障を来すことなく、ゼラチンを含む水溶性バインダーの塗布量を高めながら良好に塗膜を形成できる観点より、2層或いはそれ以上の複数層で構成されることが好ましい。また、必要もしくは目的に応じて硬膜剤、マット剤、紫外線吸収剤、染料、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤等の他の成分を含有していてもよい。
【0118】
本発明におけるバック層に用いる前記水溶性バインダーとしては、ゼラチン類以外に、例えば、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、アセチル変性ポリビニルアルコール、フッ化アセチル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダなどの水溶性高分子及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等の水不溶性ポリマー等が挙げられる。
【0119】
本発明におけるバック層に用いる他の成分として、水溶性バインダー(特にゼラチン)と作用させて塗布膜を固め、耐水性を付与する目的で、硬膜剤を含有してもよい。該硬膜剤としては、例えば、「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS;FORTH EMOTION」(T.H.James著)の頁77〜87に記載のものが挙げられ、ビニルスルホン系化合物が好ましい。
【0120】
また、前記バック層には、搬送性の改良、光反射防止の目的で、マット剤を含有してもよい。
本発明におけるバック層に用いる前記マット剤としては、例えば、大麦、小麦、コーン、米、豆類より得られる澱粉等の微粒子の他、セルロースファイバー、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニルまたは酢酸ビニル等の共重合体樹脂、ポリオレフィン等の合成高分子の微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、スメクタイト粘土、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛等の無機物の微粒子等が挙げられる。
また、感熱記録材料の透明性を良好なものとする観点から、屈折率が1.45〜1.75の微粒子状物質が好ましく、体積平均粒径としては、1〜20μm(特に1〜10μm)が好ましい。
【0121】
また、塗布助剤又は帯電防止剤として、支持体からみて感熱記録層と反対側で最外層となるバック層にフッ素系界面活性剤を添加することが好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、N−プロピル−N−オキシエチレンパーフルオロオクタンスルホンアミドブチルスルホン酸ナトリウム、トリメチル(プロピレンアミノスルホニルパーフルオロオクタン)アンモニウムクロリド、N−プロピル−N−オキシエチレンパーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0122】
前記バック層には、バック層を塗布形成する場合の塗布を円滑に行う目的で、塗布液の粘度調整を行う増粘剤を添加してもよい。記録後の画像の耐光性を高める目的で、紫外線吸収剤を添加してもよい。前記増粘剤、紫外線吸収剤は、公知のものの中から適宜選択することができる。
【0123】
感熱記録材料の色相改良の観点から、バック層に染料を添加して形成されることが好ましい。該染料としては、シアン染料、青染料の染料を用いることができるが、特にシアン染料を用いることにより用途に応じた色相を調製するのに好適である。
前記シアン染料としては、C.I.Pigment Blue60、C.I.Pigment Blue64、C.I.Pigment Blue15:6等が挙げられる。
【0124】
バック層形成用の塗布液の安定性を保つ目的で、例えば水酸化ナトリウムなど、pHの調整が可能なpH調整剤を添加してもよい。また、バック層形成の塗布液、及び感熱記録材料の劣化防止の目的で、防腐剤を添加してもよい。該防腐剤としては、公知のものの中から適宜選択できる。
【0125】
バック層が複数層からなる場合、前記の他の成分はいずれの層に含まれていてもよい。また、他の成分は本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有できる。
前記バック層を塗布形成する場合の塗布方法としては、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法を適用できる。前記バック層を複数層で構成する場合には、押出しダイ方式等により重層塗布してもよい。
【0126】
支持体の感熱記録層を有しない側には、前記バック層のほか、印画後短時間でのカールの大きさが平衡に達する前の挙動を調整できる点で、該バック層に隣接して、ポリビニルアルコールを含む層(以下、「PVA層」ということがある。)を有していてもよい。該層は、支持体のバック層を有する側において、支持体からみて最も離れたバック層表面に設けられてもよく、支持体とバック層との間に設けられてもよく、またバック層が複数層からなる場合には、バック層とバック層との間に設けられてもよい。前記PVA層は、複数形成されていてもよい。
【0127】
前記PVA層におけるポリビニルアルコールとしては、例えば、完全鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、シリカ変性ポリビニルアルコール、等が好適である。
前記ポリビニルアルコールのPVA層における含有量としては、該層の固形分(質量)の50〜100質量%が好ましい。
【0128】
前記PVA層は、更に界面活性剤を含有していてもよい。該界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール、等が挙げられる。
【0129】
前記PVA層は、前記バック層と同様、ポリビニルアルコールを含んで調製された塗布液を塗布等して形成することができ、該層の層厚としては、0.5〜10μmが好ましい。
【0130】
(中間層)
本発明において、中間層は感熱記録層上に形成されることが好ましい。中間層は層の混合防止や画像保存性に対して有害なガス(酸素等)の遮断のために設けられる。
使用するバインダーは特に制限はなく、系に応じてポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体等を用いることができる。
なかでもゼラチンは、高温では水溶液が流動性を有しているが、低温(例えば35℃以下)にすると流動性を失いゲル化する性質(セット性)に優れるため、支持体上に複数の層を形成するための塗布液を塗布、乾燥して前記層を設ける場合、複数の層を順次塗布乾燥する方法でも、また押し出しダイ方式等で一度に重層塗布、乾燥する方法においても、隣接する2つの層が相互に混合することが有効に防止され、得られる感熱記録材料の面状が良好になり、高品位な画像形成が可能な感熱記録材料を得ることができるため、細部まで明瞭な画像を形成する必要のある医療診断用記録材料に好適である。さらに高い風速で乾燥しても面状が悪化しないので、製造効率が向上する。このようなゼラチンとしては、無修飾(未処理)ゼラチンあるいは修飾(処理)ゼラチンがいずれも支障なく用いられる。修飾ゼラチンとしては石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、フタル化処理ゼラチン、脱イオン処理ゼラチン、酵素処理低分子量ゼラチン等が挙げられる。
【0131】
また塗布性付与のため、種々の界面活性剤を添加してもよい。またガスバリアー性をより高めるために雲母等の無機微粒子を前記バインダーに対し2〜20質量%より好ましくは5〜10質量%添加してもよい。
【0132】
中間層用塗布液のバインダー濃度は3〜25質量%、好ましくは5〜15質量%程度が適切である。また中間層の乾燥塗布量は0.5〜6g/m、好ましくは1〜4g/mが適切である。
【0133】
(その他の層)
本発明においては、支持体上の任意の位置に、画像の褪色防止の目的で、紫外線フィルター層を設けてもよい。該紫外線フィルター層には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤が含有される。
また、光反射防止層を更に有していてもよい。該光反射防止層は、前記バック層に使用可能なマット剤に好適な微粒子を含んで構成できる。
【0134】
また、支持体から感熱記録層が剥がれることを防止する目的で、感熱記録層や保護層等を塗布する前に支持体上に予め下塗り層を形成しておいてもよい。該下塗り層は、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、SBR、水性ポリエステル等を用いてなり、該層の厚みとしては、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0135】
前記下塗り層上に感熱記録層を塗布する際、感熱記録層用塗布液に含まれる水分により下塗り層が膨潤して、感熱記録層に記録された画像が悪化することがあるので、下塗り層はグルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類又はホウ酸等の硬膜剤を用いて硬膜させることが好ましい。該硬膜剤の添加量は、下塗り層の乾燥質量に対して0.2〜3.0質量%の範囲で、所望の硬化度に合わせて適宜、添加することができる。
【0136】
<感熱記録材料の作製方法>
本発明の感熱記録材料は、例えば、下記のように作製することができるが、これらに限定されるものではない。本発明における支持体の一方の側に、感熱記録層形成用の塗布液(以下、「感熱記録層用塗布液」という。)を塗布して感熱記録層を形成し、該感熱記録層上に中間層用塗布液及び保護層用塗布液を塗布して形成し、かつ該側とは逆側に、既述の様に、単一若しくは複数層からなるバック層をバック層用塗布液を塗布して形成し、更に必要に応じて、前記一方及び他方において他の層を形成してなる。
ここで、前記感熱記録層及び中間層と保護層を同時に形成してもよく、その場合、前記感熱記録層用塗布液と中間層及び保護層用塗布液とを支持体上に同時に重層塗布することにより形成することができる。
【0137】
<感熱記録材料の画像記録方法>
本発明の画像記録方法は、サーマルヘッドを用いて、既述の本発明の感熱記録材料に好適に画像を記録する方法である。前記サーマルヘッドとしては、感熱記録材料に接触する最上層の炭素比率が90%以上となるように既知の製膜装置を用いてグレーズ層上に発熱抵抗体と電極を具備する加熱素子に保護層を設けたものが好適に用いられる。また、ヘッド保護層は2層以上でもよく、この場合最上層の炭素比率が90%以上であることが好ましい。
【実施例】
【0138】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は全て「質量部」を示し、「%」はすべて「質量%」を示す。
【0139】
[合成例1]
<有機高分子複合体液の調製>
電子供与性染料前駆体として下記構造式(11)で表される化合物11.1部、下記構造式(12)で表される化合物1.4部、下記構造式(13)で表される化合物2.1部、下記構造式(14)で表される化合物3.0部、下記構造式(15)で表される化合物0.68部、下記構造式(16)で表される化合物0.43部を酢酸エチル25.6部に添加して70℃に加熱し、溶解した後45℃まで冷却して電子供与性染料前駆体溶液を得た。
【0140】
【化5】

【0141】
【化6】

【0142】
この電子供与性染料前駆体溶液に、壁材としてタケネートD110N(キシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパン付加物、武田薬品工業(株)製、約75%酢酸エチル溶液)7.1部、およびタケネートD110Nに下記構造式(17)で表される化合物を固形分で同質量付加した壁材(a)10.7部を加え混合して、電子供与性染料前駆体と壁材(a)とを含む油相溶液を得た。
【0143】
【化7】

【0144】
なお、上記構造式(17)で表される化合物とタケネートD110Nとの付加反応は、次のようにして行った。
構造式(17)で表される化合物75部を乾燥クロロホルム125部に溶解し、モレキュラーシーブ4Aの7.5部を添加した。乾燥窒素ガス気流下で3時間乾燥を行なった。ここに前記タケネートD110Nの100部を添加した。この場合、構造式(17)で表されるポリエーテル中の活性水素と、タケネートD110N中のイソシアネート基との反応比率は、1/17mol比である。
水浴中でオクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)0.16部を添加した。室温で1時間攪拌し、次いで50℃で3時間撹拌を行なった。この様にして壁材(a)を得た。
【0145】
前記油相溶液を2.9%のポリビニルアルコール水溶液(商品名;MP−103、(株)クラレ製)75.5部中に加えた後、ディゾルバー式分散機を用い回転数7500rpmで20分間乳化を行い、乳化液を得た。乳化液の油滴(エマルジョン粒子)の体積平均粒径は、0.15μmであった。
ここで、前記体積平均粒径は、(株)堀場製作所製のレーザー回折粒度分布測定装置(商品名「LA700」)を用い、光透過率が72±1%となるように調整し測定した、50%体積に相当する平均粒径を指し、以下に記載の体積平均粒径は全て同様の方法により測定した体積平均粒径を表す。
【0146】
4.0m/sの排気風量で排気しながら、得られた乳化液に水46.8部を添加したあと、攪拌回転数330rpmで攪拌しながら1時間かけて60℃まで昇温し、60℃を維持しながら攪拌回転数370rpmで攪拌しながら2時間、引き続き同じ温度を保ちながら攪拌回転数420rpmで撹拌しながら2時間反応させ、最後に水で濃度を18%に調整し、体積平均粒径0.15μmの有機高分子複合体液(1)を得た。イソシアネート化合物の反応度が70%のときの乳化液(分散液)中の揮発性有機溶剤の含有量は、重合反応の開始時の含有量に対して8%であった。
【0147】
[合成例2]
4.0m/sの排気風量で排気しながら、得られた乳化液に水46.8部を加えたあと、攪拌回転数150rpmで攪拌しながら1時間かけて60℃まで昇温し、60℃を維持しながら攪拌回転数420rpmで攪拌しながら2時間、引き続き同じ温度を保ちながら攪拌回転数420rpmで攪拌しながら2時間反応させ、最後に水で濃度を18%に調整した以外は合成例1と同様にして体積平均粒径0.15μmの有機高分子複合体液(2)を得た。イソシアネート化合物の反応度が70%のときの乳化液(分散液)中の揮発性有機溶剤の含有量は、重合反応の開始時の含有量に対して7%であった。
【0148】
[合成例3]
排気風量を2倍にした以外は合成例1と同様にして体積平均粒径0.15μmの有機高分子複合体液(3)を得た。イソシアネート化合物の反応度が70%のときの乳化液(分散液)中の揮発性有機溶剤の含有量は、重合反応の開始時の含有量に対して5%であった。
【0149】
[合成例4]
4.0m/sの排気風量で排気しながら、得られた乳化液に水46.8部を加えたあと、攪拌回転数330rpmで攪拌しながら1時間かけて55℃まで昇温し、55℃を維持しながら攪拌回転数370rpmで攪拌しながら2時間、引き続き同じ温度を保ちながら攪拌回転数420rpmで攪拌しながら2時間反応させ、最後に水で濃度を18%に調整した以外は合成例1と同様にして体積平均粒径0.15μmの有機高分子複合体液(4)を得た。イソシアネート化合物の反応度が70%のときの乳化液(分散液)中の揮発性有機溶剤の含有量は、重合反応の開始時の含有量に対して5%であった。
【0150】
[比較合成例1]
4.0m/sの排気風量で排気しながら、得られた乳化液に水46.8部を加えたあと、攪拌回転数150rpmで攪拌しながら1時間かけて60℃まで昇温し、60℃を維持し攪拌回転数150rpmで攪拌しながら4時間、最後に水で濃度を18%に調整した以外は合成例1と同様にして体積平均粒径0.15μmの比較有機高分子複合体液(1)を得た。イソシアネート化合物の反応度が70%のときの乳化液(分散液)中の揮発性有機溶剤の含有量は、重合反応の開始時の含有量に対して12%であった。
【0151】
[比較合成例2]
油相溶液を2.9%のポリビニルアルコール水溶液(商品名;MP−103、(株)クラレ製)75.5部中に加えた後、ディゾルバー式分散機を用い回転数12000rpmで20分間乳化を行い、乳化液を得た。乳化液の油滴(エマルジョン粒子)の体積平均粒径は、0.13μmであった。4.0m/sの排気風量で排気しながら、得られた乳化液に水46.8部を加えたあと、攪拌回転数150rpmで攪拌しながら1時間かけて60℃まで昇温し、60℃を維持しながら攪拌回転数150rpmで撹拌しながら4時間反応させ、最後に水で濃度を18%に調整した以外は合成例1と同様にして体積平均粒径0.13μmの比較有機高分子複合体液(2)を得た。イソシアネート化合物の反応度が70%のときの乳化液(分散液)中の揮発性有機溶剤の含有量は、重合反応の開始時の含有量に対して11%であった。
[実施例1]
(第1バック層用塗布液の調製)
下記の組成に水を加えて、全量を21.03部になるように調製し、第1バック層用塗布液(以下、「BC層用塗布液」という。)を得た。ここで、本バック層におけるゼラチンの含有量は、下記組成中の「石灰処理ゼラチン」と「球形PMMAマット剤12%を含むゼラチン分散物」中のゼラチンとの合計量である。また、ラテックスのポリマー含有量は、下記組成中の「ポリエチルアクリレートのラテックス(20%液)」中の固形分である。
【0152】
<BC層用塗布液の組成>
・石灰処理ゼラチン(水溶性バインダー) 1000部
・球形PMMAマット剤(体積平均粒径:5.7μm)12%とゼラチン4.5%を含む分散物
180部
・下記構造式[1]〜[5]で表わされる化合物を以下の含有量で含む紫外線吸収剤の乳化物 1028部
〔前記乳化物1000部当たりの紫外線吸収剤の含有量は、構造式[1]で表される化合物14.9部、構造式[2]で表される化合物12.7部、構造式[3]で表される化合物14.9部、構造式[4]で表される化合物21.1部、及び構造式[5]で表される化合物44.5部である。〕
・1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン 0.98部
・ポリ−p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム 16.4部
(分子量:約40万)
・下記構造式[6]で表わされる化合物 3.79部
・ポリエチルアクリレートのラテックス(20%液) 1448部
・N,N−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド) 52.2部
・1,3−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)プロパン 17.4部
【0153】
【化8】

【0154】
【化9】

【0155】
(第2バック層用塗布液の調製)
下記の組成に水を加え、全量を26590部となる様に調製して、第2バック層用塗布液(以下、「BPC層用塗布液」という。)を得た。ここで、本バック層におけるゼラチン含有量は、下記組成中の「石灰処理ゼラチン」と「球形PMMAマット剤15%を含むゼラチン分散物」中のゼラチンとの合計量である。
【0156】
<BPC層用塗布液の組成>
・石灰処理ゼラチン(水溶性バインダー) 1000部
・球形PMMAマット剤(体積平均粒径:0.7μm)15%とゼラチン7.0%を含む分散物
1015部
・1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン 2.09部
・p−t−オクチルフェノキシポリオキシエチレンエチルスルホン酸ナトリウム
9.53部
・ポリアクリル酸ナトリウム(分子量:約10万) 57.9部
・ポリ−p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(分子量:約40万)
22.9部
・N−プロピル−N−ポリオキシエチレン−パーフルオロオクタンスルホン酸アミドブチルスルホン酸ナトリウム 0.37部
・ヘキサデシルオキシ−ノニル(エチレンオキシ)−エタノール 8.97部
・1N水酸化ナトリウム水溶液 28.1部
・ポリエチルアクリレートのラテックス(20%液) 2087部
・N,N−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド) 18.0部
・1,3−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)プロパン 6.0部
【0157】
(バック層付支持体の作製)
JIS−Z8701(1999)に記載の方法により規定された色度座標で、x=0.2850、y=0.2995に青色染色した透明PET支持体(厚さ175μm)を用意し、前記より得たBC層用塗布液及びBPC層用塗布液を、該透明PET支持体上に、支持体に近い側からBC層用塗布液及びBPC層用塗布液の順に夫々の塗布量が51.37ml/m2及び14.70ml/m2となる様に、スライドビード方式により同時重層塗布し乾燥した。ここで、該塗布及び乾燥条件は以下の通りである。
【0158】
塗布スピードは160m/分とし、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Paだけ低く設定した。支持体は塗布前に予めイオン風にて徐電しておいた。引き続き、チリングゾーンにおいて、乾球温度10〜20℃の風で塗布液を冷却した後、無接触で搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置により、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
【0159】
(保護層用塗布液の調製)
(1)顔料分散液の調製
水900部に、顔料としてステアリン酸で表面処理を施した水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製の商品名「ハイジライトH42S」)280部を加え、3時間攪拌した後、これに分散助剤(花王(株)製の商品名「ポイズ532A」)8.5部、10%ポリビニルアルコール水溶液((株)クラレ製の商品名「PVA105」)300部、2%に調整した下記構造式[100]で表される化合物の水溶液75部を加え、サンドミルで体積平均粒径0.33μmに分散し、これに水を加えて濃度18%に調整して保護層用顔料分散液を得た。
【0160】
【化10】

【0161】
(2)潤滑剤分散液の調製
水280部に、潤滑剤としてグリセリントリ−12−ヒドロキシステアラート(川研ファインケミカル(株)製の商品名「K3ワックス500」)110部を加え3時間攪拌した後、これに分散助剤(花王(株)製の商品名「ポイズ532A」)3部、10%ポリビニルアルコール水溶液((株)クラレ製の商品名「MP103」)340部、2%に調整した前記構造式[100]で表される化合物の水溶液34部を加え、サンドミルで体積平均粒径0.26μmに分散し、これに水を加えて18%に調整して保護層用潤滑剤分散液を得た。ここで、潤滑剤であるグリセリントリ−12−ヒドロキシステアラートの濃度は13.6%である。
【0162】
(3)保護層用塗布液の調製
5%ポリビニルアルコール((株)クラレ製の商品名「PVA124C」)水溶液430部、72%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液5部、アセチレングリコール系界面活性剤(日進化学(株)製の商品名「サーフィノール104」)の50%液5.5部、「サーフロンS131S」(旭ガラス(株)製)10部、融点35℃のポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩(第一工業製薬(株)製の「プライサーフA217E」)2部、前記で得られた18%顔料分散液245部、前記で得られた18%グリセリントリ−12−ヒドロキシステアラート分散液10部、20.5%ステアリン酸亜鉛分散物(中京油脂(株)製の商品名「ハイドリンF115」)21部、18%ステアリン酸分散物(中京油脂(株)製の商品名「セロゾール920」)31部、35%シリコンオイル水分散液(東レ・ダウコーニング(株)製の商品名「BY22−840」)41.5部、5%スチレンマレイン酸共重合体アンモニウム塩水溶液(荒川化学(株)製の商品名「ポリマロン385」)110部、20%コロイダルシリカ(日産化学(株)製の商品名「スノーテックス」)53部、4%硼酸水溶液70部、2%酢酸水溶液30部、前記構造式[002]で示される化合物の50%水溶液22部を混合した。これに水を加えて濃度12%に調整して、目的とする保護層用塗布液を得た。
【0163】
(感熱記録層用塗布液の調製)
(1)電子受容性化合物乳化分散液の調製
電子受容性化合物として、下記構造式[301]で表される化合物220部、下記構造式[302]で表される化合物80部、下記構造式[303]で表される化合物26部、下記構造式[304]で表される化合物26部、下記構造式[305]で表される化合物4.8部、下記構造式[306]で表される化合物41部を、トリクレジルフォスフェート10部及びマレイン酸ジエチル5部と共に酢酸エチル160部に添加して70℃に加熱して溶解した。この溶液を水1340部、ポリビニルアルコール((株)クラレ製の商品名「PVA217C」)43.5部、ポリビニルアルコール((株)クラレ製の商品名「PVA205C」)29部、下記構造式[401]で表される化合物の2%水溶液110部及び下記構造式[402]で表される化合物の2%水溶液110部を混合した水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000rpmで体積平均粒径0.7μmになる様に乳化分散して、濃度22%になる様に水で調整して、電子受容性化合物の乳化分散物を得た。
【0164】
【化11】

【0165】
【化12】

【0166】
(2)感熱記録層用塗布液(1)の調製
合成例1で調製した前記有機高分子複合体液(1)(固形分濃度28%)160部、前記電子受容性化合物乳化分散液(固形分濃度22%)710部、前記構造式[002]で表される化合物の50%水溶液7.2部、及びコロイダルシリカ(日産化学(株)製の商品名「スノーテックスO」)25.5部を混合し、水で濃度を21.5%になるように調整して、目的とする感熱記録層用塗布液(1)を調製した。
【0167】
(3)感熱記録層用塗布液(2)〜(6)の調製
感熱記録層用塗布液(1)の調製において、有機高分子複合体液(1)を用いたところを、有機高分子複合体液(2)〜(4),比較有機高分子複合体液(1)〜(2)の同重量に変更した以外は同様にして、感熱記録層用塗布液(2)〜(6)を調製した。
【0168】
(中間層用塗布液(C1)の調製)
石灰処理ゼラチン1000部に水14500部を加え、溶解したのち、ジ―2―エチルヘキシルスルフォコハク酸ナトリウム塩(日本油脂(株)製ニッサンラピゾールB90)の5%溶解液(水/メタノール=1/1体積混合溶媒)を137部、3.5%の1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン水溶液25部、3.0%のポリ(p−ビニルベンゼンスルフォン酸ナトリウム)(分子量約40万)1080部を加え、中間層用塗布液を調製した。
【0169】
(感熱記録材料(1)の作製)
前記のバック層を塗布した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から、前記感熱記録層用塗布液(1)前記中間層用塗布液(C1)、前記保護層用塗布液の順に、それぞれ塗布量が、41.3ml/min、12.4ml/min、27.5ml/minになるように、スライドビード法により3層同時塗布し乾燥して、支持体上に感熱記録層(1)、中間層(C1)及び保護層を有する本発明の透明な感熱記録材料を得た。
【0170】
尚、各層の塗布液は33℃〜37℃の温度範囲に調整した。また、前記の乾燥条件は以下の通りである。塗布スピードを160m/分とし、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対し200〜1000Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。引き続く初期乾燥ゾーンにおいて、温度45℃〜55℃、露点0〜5℃の風にて乾燥後、無接触で搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置により、乾球温度30〜45℃、湿球温度17〜23℃の乾燥風で乾燥させ、乾燥後25℃で湿度40〜60%にて調湿した。
【0171】
[実施例2〜4]
感熱記録材料(1)の作製において、感熱記録層用塗布液(1)を用いたところを、感熱記録層用塗布液(2)〜(4)に変更した以外は同様にして、感熱記録材料(2)〜(4)を作製した。感熱記録装用塗布液の塗布は、感熱記録層用塗布液(1)の場合と同様にして行った。
【0172】
[比較例1〜2]
感熱記録材料(1)の作製において、感熱記録層用塗布液(1)を用いたところを、感熱記録層用塗布液(5)〜(6)に変更した以外は同様にして、比較の感熱記録材料(1)〜(2)を作製した。感熱記録装用塗布液の塗布は、感熱記録層用塗布液(1)の場合と同様にして行った。
<評価>
(感度)
サーマルヘッド(商品名:KGT,260−12MPH8、京セラ(株)製)を用いて、得られた感熱記録材料を、感熱記録層塗布側からヘッド圧10kg/cmで、記録エネルギーが14.22mJ/mm〜140.0mJ/mmまで5.47mJ/mm間隔で印画し、24の異なる記録エネルギーで印画したサンプルを得た。各光学濃度は、透過濃度計(マクベスTD904:マクベス社製)を用いてビジュアルフィルターモードにて測定を行った。これより、最小濃度に0.3を加えた濃度を印画するのに必要な印画エネルギーを算出した。測定された感度に基づき、比較例1を基準として高感度化した割合(感度向上度)を%で表示した。この値が大きいほど感度が高いことを意味する。
【0173】
(画像保存性)
上記方法により得られた24の異なる記録エネルギーで印画して得た各濃度について、45℃60%RHの環境下で7日放置した際に変動した値を算出し、その光学濃度量の差の最大値を画像保存性(△ODmax)として評価した。△ODmaxが小さいほど、保存安定性が良好である。
【0174】
評価結果を表1に示す。
【0175】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】発色成分含有液を含む油滴が分散された分散液のIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発色成分とイソシアネート化合物と揮発性有機溶剤とを含む発色成分含有液を水相に分散させて、前記発色成分含有液を含む油滴が分散された分散液を調製する分散工程と、
前記油滴中の前記イソシアネート化合物を重合反応させる重合工程と、
を有する有機高分子複合体の製造方法であって、
前記重合工程における前記イソシアネート化合物の反応度が70%のときの前記分散液中の前記揮発性有機溶剤の含有量を、前記重合反応の開始時の含有量に対して10%以下とした有機高分子複合体の製造方法。
【請求項2】
前記発色成分含有液中の前記イソシアネート化合物の含有量が、前記揮発性有機溶剤100質量部に対して5〜75質量部である請求項1に記載の有機高分子複合体の製造方法。
【請求項3】
前記発色成分含有液が、ポリエーテル化合物をさらに含む請求項1又は2に記載の有機高分子複合体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリエーテル化合物が、1又は2以上の活性水素を有するポリエーテルと多官能イソシアネート化合物との反応生成物である請求項3に記載の有機高分子複合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機高分子複合体の製造方法により製造された有機高分子複合体。
【請求項6】
支持体と、前記支持体上に設けられた感熱記録層とを有する感熱記録材料であって、前記感熱記録層が請求項5に記載の有機高分子複合体を含有する感熱記録材料。

【図1】
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【公開番号】特開2008−31318(P2008−31318A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207150(P2006−207150)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】