説明

有機EL素子用化合物及び有機EL素子

【課題】有機EL素子の構成材料として用いた場合に十分な発光輝度と駆動寿命が得られ、十分に駆動電圧を抑制することができる有機EL素子用化合物及びこの化合物を用いた有機EL素子を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される有機EL素子用化合物。


[式(1)中、X及びZは、アリール基等;Lは、アリール骨格を有する2価の基又は単結合;R11,R12,R13及びR14は、それぞれ独立にアルキル基等;nは0又は1;n1,n2,n3及びn4は0〜4の整数、をそれぞれ示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子用化合物及び有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の表示装置に用いられる有機EL素子は、例えば、ホール注入電極(陽極)と電子注入電極(陰極)との間に、発光性有機材料を含む発光層等の有機層を備えるものである。この発光層に上記電極から電界を印加することにより、発光性有機材料を励起・発光させる。
【0003】
この有機EL素子の発光原理は、おおむね以下のように考えられている。即ち、まず、ホール注入電極から注入されたホール(正孔)と電子注入電極から注入された電子とが、発光層において再結合することにより、発光性有機材料の励起子が生成する。次いで、その励起子が失活する際に、エネルギーが光(蛍光、燐光)成分として放出される。これにより発光が生じると考えられている。
【0004】
このような有機EL素子の性能を向上させる方法の1つとして、電子注入電極と発光層との間に発光層とは別の、電子輸送材料を含む有機層、例えば、電子注入輸送層を設ける方法が挙げられる。これにより、電子注入電極から発光層に円滑に電子を注入することが可能となる。
【0005】
このような電子注入輸送層に用いられる電子輸送材料としては、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)が広く知られている。この化合物を電子輸送材料として用いることで、十分な発光輝度と駆動寿命を有する有機EL素子が得られるが、駆動電圧を十分に抑制することができないという問題点があった。
【0006】
これに対し近年、イミダゾピリジン誘導体やイミダゾピリミジン誘導体等を電子輸送材料として用いることにより、有機EL素子の駆動電圧を抑制することができることが報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2001−35664号公報
【特許文献2】特開2001−6877号公報
【特許文献3】特開2004−2297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のイミダゾピリジン誘導体やベンゾイミダゾール誘導体を電子輸送材料として用いた場合には、有機EL素子として十分な駆動寿命を得ることができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、有機EL素子の構成材料として用いた場合に十分な発光輝度と駆動寿命が得られ、十分に駆動電圧を抑制することができる有機EL素子用化合物及びこの化合物を用いた有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される化合物(アントラセン誘導体)を有機EL素子に用いることにより、上記目的を達成できることを見出した。
【0010】
【化1】

【0011】
ここで、式(1)中、X及びZは、アリール基、下記一般式(2)で表される基又は下記一般式(3)で表される基;Lは、アリール骨格を有する2価の基又は単結合;R11,R12,R13及びR14は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ピリジニル基、ビピリジニル基、又は、複数存在するR11,R12,R13又はR14がそれぞれ一緒になって生じた2価の基;nは0又は1;n1,n2,n3及びn4は0〜4の整数、をそれぞれ示す。
【0012】
式(2)中、Rは、下記一般式(4)で表される基;Zは、アリール骨格を有する2価の基又は単結合、をそれぞれ示す。
【0013】
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(4)で表される基;Zは、アリール骨格を有する3価の非縮合環基、をそれぞれ示す。
【0014】
式(4)中、A,A,A,A,A,A,A及びAは、炭素原子又は窒素原子であり(但し、当該窒素原子の総数は2〜4)、当該炭素原子に、アルキル基、アリール基、ピリジニル基又はビピリジニル基が結合していてもよい。なお、本明細書の化学式中、環を貫くようにして描かれている線は、環上のどの炭素原子上で結合していてもよい結合を示す。
【0015】
なお、Xがアリール基である場合は、Zは下記一般式(3)で表される基であり、Xが下記一般式(2)で表される基である場合は、Zは下記一般式(2)で表される基である。
【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
このような有機EL素子用化合物は、有機EL素子の構成材料として用いた場合に十分な発光輝度と駆動寿命が得られ、十分に駆動電圧を抑制することができる。このような効果の生じる理由は必ずしも明らかでないが、一般式(1)で表される化合物がアントラセン骨格を有する点、R、R及びRとして上記所定の基を有する点に少なくとも起因するものと考えられる。
【0020】
有機EL素子の発光輝度、駆動寿命を向上させ、かつ、駆動電圧をさらに抑制する観点から、本発明の有機EL素子用化合物は、上記式(1)中、R11,R12,R13及びR14が、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ピリジニル基、又は、複数存在するR11,R12,R13又はR14がそれぞれ一緒になって生じた−CH=CH−CH=CH−基であることが好ましい。
【0021】
また、同様の観点から本発明の有機EL素子用化合物は、上記式(1)中、n1,n2,n3及びn4が0であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の有機EL素子用化合物は、上記式(1)中、Lが、フェニレン基、ビフェニレン基又は単結合であることが好ましい。このような化合物は、合成が容易であり、駆動寿命が向上する点で優れている。
【0023】
また、本発明の有機EL素子用化合物は、上記式(2)中、Zが、フェニレン基、ビフェニレン基、下記式(5)で表される基、又は、単結合であることが好ましい。このような化合物は、合成が容易である点に優れている。
【0024】
【化5】

【0025】
また、本発明の有機EL素子用化合物は、上記式(3)中、Zが、下記式(6)で表される基であることが好ましい。このような化合物は、合成が容易である点に優れている。
【0026】
【化6】

【0027】
また、本発明の有機EL素子用化合物は、上記式(2)及び式(3)中、R,R及びRが、それぞれ独立に下記式(a)、(b)、(c)又は(d)で表される基(但し、これらの基の炭素原子にアルキル基、アリール基、ピリジニル基又はビピリジニル基が結合していてもよい。)であることが好ましい。このような化合物は、電子注入性に優れている。
【0028】
【化7】

【0029】
本発明の有機EL素子は、互いに対向して配置されている2つの電極間に、1又は2以上の有機層を備える有機EL素子であって、この有機層のうち少なくとも1層は、上述した有機EL素子用化合物を含む。このような有機EL素子によれば、十分な発光輝度と駆動寿命が得られ、十分に駆動電圧を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、有機EL素子の構成材料として用いた場合に十分な発光輝度と駆動寿命が得られ、十分に駆動電圧を抑制することができる有機EL素子用化合物及びこの化合物を用いた有機EL素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
(有機EL素子用化合物)
本発明の好適な実施形態に係る有機EL素子に用いられる化合物(有機EL素子用化合物)は、上述の一般式(1)で表されるアントラセン誘導体(以下、場合により「化合物(1)」という。)である。
【0033】
式(1)中、Lにおける「アリール骨格を有する2価の基」の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、下記式(5)で表される基が挙げられ、特にフェニレン基、ビフェニレン基であることが好ましい。
【0034】
【化8】

【0035】
式(1)中、R11,R12,R13及びR14における「アルキル基」は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、その炭素数は1〜12がよく、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましい。好適なアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0036】
式(1)中、R11,R12,R13及びR14はまた、「アリール基」であってもよい。その具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基が挙げられる。
【0037】
式(1)中、R11,R12,R13及びR14はまた、複数存在するR11,R12,R13又はR14がそれぞれ一緒になって生じた2価の基であってもよい。すなわち、複数のR11が一緒になって2価の基を形成していてもよく、R12,R13及びR14についても同様である。その具体例としては、以下の式(i−1)〜(i−5)で表される基が挙げられるが、この中で、式(i−1)で表される基(この基は、上述した「−CH=CH−CH=CH−基」と同一の基を示す。)が好ましい。なお、式中、破線で表されている部分は、共役状態にあることを示す。
【0038】
【化9】

【0039】
式(1)中、X及びZにおける「アリール基」としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基が挙げられ、特に2−ナフチル基であることが好ましい。
【0040】
X及びZはまた、上述したように、一般式(2)で表される基又は一般式(3)で表される基であってもよい。
【0041】
式(2)中、Zにおける「アリール骨格を有する2価の基」の具体例としては、上述したLの場合と同様なものが挙げられ、特にフェニレン基、ビフェニレン基、上記式(5)で表される基であることが好ましい。
【0042】
式(3)中、Zにおける「アリール骨格を有する3価の非縮合環基」としては、下記式(6)で表される基、下記式(7)で表される基が挙げられ、特に式(6)で表される基であることが好ましい。
【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
上述した一般式(4)で表される基としては、式(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g),(h),(i),(j),(k),(l)で表される基が挙げられ、特に式(a),(b),(c),(d)で表される基であることが好ましく、式(a),(b)で表される基であることがより好ましい。
【0046】
【化12】

【0047】
上述したように、一般式(4)で表される基においては、環上の炭素原子に、アルキル基、アリール基、ピリジニル基、ビピリジニル基等の基が結合していてもよい。一般式(4)で表される基における「アルキル基」、「アリール基」としては、上述したR11,R12,R13及びR14の場合と同様なものが挙げられる。
【0048】
化合物(1)は、例えば、以下に述べる2つの方法((A)及び(B))で合成することができる。
【0049】
(A)一般式(I)で表される化合物を、パラジウム触媒(例えば、[1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)・塩化メチレン錯体)及び塩基(例えば、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム等)存在下、ホウ素化試薬(例えば、ビス(ピナコラート)ジボロン、ホウ酸トリエチル、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン等)と反応させることにより、一般式(II)で表される化合物を得る。この化合物をパラジウム触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム(0)等)及び塩基(例えば、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム等)存在下、一般式(III)で表される化合物と反応させることにより、式(1a)で表される目的の化合物が得られる。
【0050】
【化13】

【0051】
[式中、T,T及びTは、脱離基(例えば、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルフォニルオキシ基等);B(OR)はボリル基(例えば、ジヒドロキシボリル基、ジオキサボロラニル基等)、をそれぞれ示す。なお、L,R,Z,n,R11,R12,R13,R14,n1,n2,n3及びn4は上記と同義である。]
【0052】
(B)一般式(IV)で表される化合物をパラジウム触媒(例えば、[1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)・塩化メチレン錯体等)及び塩基(例えば、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム等)存在下、ホウ素化試薬(例えば、ビス(ピナコラート)ジボロン、ホウ酸トリエチル、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン等)と反応させることにより、一般式(V)で表される化合物を得る。この化合物をパラジウム触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム(0)等)及び塩基(例えば、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム等)存在下、一般式(IIIa)で表される化合物及び一般式(IIIb)で表される化合物と反応させることにより、式(1b)で表される目的の化合物が得られる。
【0053】
【化14】

【0054】
[式中、T,T,T及びTは、脱離基(例えば、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルフォニルオキシ基等);Arはアリール基(例えば、フェニル基、2−ナフチル基等);B(OR)はボリル基(例えば、ジヒドロキシボリル基、ジオキサボロラニル基等);Wは、アリール骨格を有する3価の非縮合環基(例えば、上記式(6)で表される基、上記式(7)で表される基等)又は単結合;W2a及びW2bは、アリール骨格を有する2価の基(例えば、フェニレン基、ビフェニレン基等)又は単結合、をそれぞれ示す。なお、L,R,R,n,R11,R12,R13,R14,n1,n2,n3及びn4は上記と同義である。なお、式(1b)中、W,W2a及びW2bから構成される基は、全体として、上記のZに相当し、Arは上記のXに相当する。]
【0055】
なお、上記一般式(I),(III),(IIIa),(IIIb),(IV)で表される化合物は、従来公知な方法で合成することが可能であり、例えば、以下に示す従来公知な方法で合成したものを用いてもよい。
【0056】
一般式(I)で表される化合物のうち一般式(Ia)で表されるものは、一般式(VI)で表される化合物を、Pd触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム(0)等)及び塩基(例えば、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム等)存在下、一般式(VII)で表される化合物と反応させることにより得られる。
【0057】
【化15】

【0058】
[式中、T,T,L及びB(OR)は上記と同義である。]
【0059】
一般式(III),(IIIa)又は(IIIb)で表される化合物のうち一般式(IIIc)で表されるものは、一般式(VIII)で表される化合物を、塩基(例えば、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム等)存在下、一般式(IX)で表される化合物と反応させることにより得られる。
【0060】
【化16】

【0061】
[式中、T及びTは、脱離基(例えば、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルフォニルオキシ基等)をそれぞれ示す。なお、Z,A,A,A及びAは上記と同義である。]
【0062】
また、一般式(III),(IIIa)又は(IIIb)で表される化合物のうち一般式(IIId)で表されるものは、一般式(X)で表される化合物を、塩基(例えば、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム等)存在下、一般式(XI)で表される化合物と反応させることにより得られる。
【0063】
【化17】

【0064】
[式中、T及びTは、脱離基(例えば、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルフォニルオキシ基等);Wは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、2−ナフチル基等)、ピリジニル基、ビピリジニル基、をそれぞれ示す。なお、A,A及びAは上記と同義である。]
【0065】
一般式(IV)で表される化合物のうち一般式(IVa)で表されるものは、一般式(XII)で表される化合物を、Pd触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム(0)等)及び塩基(例えば、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム等)存在下、一般式(XIII)で表される化合物と反応させることにより得られる。
【0066】
【化18】

【0067】
[式中、T,T及びTは、脱離基(例えば、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルフォニルオキシ基等)をそれぞれ示す。なお、W及びArは上記と同義である。]
【0068】
本発明の有機EL素子用化合物の好適な具体例としては、下記式(I−1)〜(I−78)、(II−1)〜(II−10)、(III−1)〜(III−10)、(IV−1)〜(IV−8)が挙げられる。
【0069】
【化19】

【0070】
【化20】

【0071】
【化21】

【0072】
【化22】

【0073】
【化23】

【0074】
【化24】

【0075】
【化25】

【0076】
【化26】

【0077】
【化27】

【0078】
【化28】

【0079】
【化29】

【0080】
(有機EL素子)
図1は、本発明に係る有機EL素子の第1実施形態を示す模式断面図である。図1に示す有機EL素子100は、互いに対向して配置されている2つの電極(第1の電極1及び第2の電極2)により、ホール注入層14、ホール輸送層11、発光層10及び電子注入輸送層13が挟持された構造を有している。ホール注入層14、ホール輸送層11、発光層10及び電子注入輸送層13はいずれも有機層であり、第1の電極1側からこの順に積層されている。
【0081】
図2は、本発明に係る有機EL素子の第2実施形態を示す模式断面図である。図2に示す有機EL素子200は、図1における有機EL素子200の発光層10が、第1の発光層10aと、第2発光層10bとに置き換わった構造を有している。
【0082】
なお、第1、第2実施形態において第1の電極1は基板4上に形成されているが、基板4側からの積層の順番を逆にしてもよい。つまり、第1実施形態の有機EL素子の場合は、基板4側から第2の電極2、電子注入輸送層13、発光層10、ホール輸送層11、ホール注入層14、第1の電極1の順で積層されてもよい。また、本発明の有機EL素子用化合物は、どの層に含有されていてもよいが、少なくとも上述した電子注入輸送層13には、その構成材料として含有されている。
【0083】
上記実施形態においては、第1の電極1及び第2の電極2がそれぞれホール注入電極(陽極)及び電子注入電極(陰極)として機能し、電源Pによる電界の印加により、第1の電極1からホール(正孔)が注入されるとともに、第2の電極2から電子が注入され、これらの再結合に基づいて発光層中の有機EL素子用化合物が発光する。
【0084】
また、発光層10、電子注入輸送層13、ホール注入層14及びホール輸送層11の好適な厚さは、いずれも0.1〜200nmである。
【0085】
(第1の電極)
第1の電極1はホール注入電極(陽極)として機能する。そのため、第1の電極1の材料としては、従来の有機EL素子が備えているものであれば、特に限定されることなく用いられるが、その第1の電極1に隣接する層に効率よく且つ均一に電界を印可できる材料が好ましい。
【0086】
また、基板4の側を光取り出し側とする場合、有機EL素子の発光波長領域である波長400〜700nmにおける透過率、特にRGB各色の波長における第1の電極1の透過率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。第1の電極1の透過率が50%未満であると、発光層10からの発光が減衰されて画像表示に必要な輝度が得られにくくなる。
【0087】
光透過率の比較的高い第1の電極1は、各種酸化物で構成される透明導電膜を用いて構成することができる。かかる材料としては、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)等が好ましく、中でも、ITOは、面内の比抵抗が均一な薄膜を容易に得ることができる点で特に好ましい。
【0088】
第1の電極1の膜厚は、上述の光透過率を考慮して決定することが好ましい。例えば酸化物透明導電膜を用いる場合、その膜厚は、好ましくは10〜500nm、より好ましくは30〜300nmであることが好ましい。第1の電極1の膜厚が500nmを超えると、光透過率が不充分となると共に、基板4からの第1の電極1の剥離が発生する場合がある。また、膜厚の減少に伴い光透過性は向上するが、膜厚が10nm未満の場合、抵抗率が大きくなり有機EL素子の駆動電圧を上昇させる傾向にある。
【0089】
(第2の電極)
第2の電極2は電子注入電極(陰極)として機能する。第2の電極2の材料としては、従来の有機EL素子が備えているものであれば、特に限定されることなく用いられるが、金属材料、有機金属錯体もしくは金属化合物等が挙げられ、発光層10へ効率的且つ確実に電子を注入できるように、仕事関数が比較的低い材料を用いると好ましく、また透明であってもよい。
【0090】
第2の電極2を構成する金属材料の具体例としては、Li、Na、KもしくはCs等のアルカリ金属、Mg、Ca、SrもしくはBa等のアルカリ土類金属、あるいはAl(アルミニウム)が挙げられる。また、La、Ce、Sn、ZnもしくはZr等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属と特性が近い金属を用いることもできる。更には、上記金属材料の酸化物もしくはハロゲン化物を用いることもできる。更に、上記材料を含む混合物もしくは合金であってもよく、これらを複数積層してもよい。
【0091】
第2の電極2の膜厚は、電子を均一に注入できる程度であればよく、0.1nm以上とすればよい。
【0092】
なお、第2の電極2上には補助電極を設けてもよい。これにより、発光層10への電子注入効率を向上させることができ、また、発光層10や電子注入輸送層13への水分又は有機溶媒の侵入を防止することができる。補助電極の材料としては、仕事関数及び電荷注入能力に関する制限がないため、一般的な金属を用いることができるが、導電率が高く取り扱いが容易な金属を用いることが好ましい。また、特に第2の電極2が有機材料を含む場合には、有機材料の種類や密着性等に応じて適宜選択することが好ましい。
【0093】
補助電極に用いられる材料としては、Al、Ag、In、Ti、Cu、Au、Mo、W、Pt、Pd、Ni等が挙げられるが、中でもAl及びAg等の低抵抗の金属を用いると電子注入効率を更に高めることができる。また、TiN等の金属化合物を用いることにより一層高い封止性を得ることができる。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。また、2種以上の金属を用いる場合は合金として用いてもよい。このような補助電極は、例えば、真空蒸着法等によって形成可能である。
【0094】
(ホール注入層)
ホール注入層14には、アリールアミン、フタロシアニン、ポリアニリン/有機酸、ポリチオフェン/ポリマー酸等を用いることができる。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
(ホール輸送層)
ホール輸送層11には、低分子材料、高分子材料のいずれのホール輸送性材料も使用可能である。ホール輸送性低分子材料としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等が挙げられる。また、ホール輸送性高分子材料としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸共重合体(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリスチレンスルホン酸共重合体(Pani/PSS)等が挙げられる。これらのホール輸送性材料は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
(発光層)
発光層10の材料としては、電子とホールとの再結合により励起子が生成し、その励起子がエネルギーを放出して基底状態に戻る際に発光するような有機化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体、イリジウム錯体もしくは希土類金属錯体等の有機金属錯体化合物、アントラセン、ナフタセン、ベンゾフルオランテン、ナフトフルオランテン、スチリルアミンもしくはテトラアリールジアミン又はこれらの誘導体、ペリレン、キナクリドン、クマリン、DCMもしくはDCJTBなどの低分子有機化合物、あるいは、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体もしくはポリチオフェン誘導体等のπ共役系ポリマー、又は、ポリビニル化合物、ポリスチレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアクリレート誘導体もしくはポリメタクリレート誘導体等の非π共役系の側鎖型ポリマーもしくは主鎖型ポリマー等に色素を含有させたものなどの高分子有機化合物などを挙げることができる。
【0097】
(電子注入輸送層)
電子注入輸送層13の材料としては、上述した本発明の有機EL素子用化合物、即ち化合物(1)が用いられる。このような材料を含有する電子注入輸送層13を備える有機EL素子は、従来の有機EL素子と比較して、十分な発光輝度と駆動寿命が得られ、十分に駆動電圧を抑制することができる。
【0098】
電子注入輸送層13は、構成材料として化合物(1)を単独で用いていてもよく、化合物(1)を主成分の材料として含有し、更に従来の電子注入輸送層の材料として用いられているものを1種もしくは2種以上含有していてもよい。そのような材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、フェナントロリン及びその誘導体、並びにこれらの化合物を配位子とする金属錯体等の低分子材料、ポリキノキサリン、ポリキノリン等の高分子材料が挙げられる。
【0099】
なお、電子注入輸送層13における化合物(1)以外の材料の含有割合は、体積基準で、10%以下であると好ましく、5%以下であるとより好ましい。
【0100】
本実施形態に係る有機EL素子は、上記化合物(1)を用いて電子注入輸送層13を形成する以外は、公知の製造方法で製造できる。そのような電子注入輸送層13を含めて各有機層の形成方法としては、真空蒸着法、イオン化蒸着法、塗布法等を、有機層を構成する材料に応じて適宜選択して採用できる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
<合成例1>
下記化合物(11)を以下の反応式に従って、下記の方法で合成した。
【0103】
【化30】

【0104】
2.7g(8mmol)の9,10−ジブロモアントラセン、4.5g(17.6mmol)のビス(ピナコラート)ジボロン、0.4g(0.48mmol)の[1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)・塩化メチレン錯体、及び、0.47g(4.8mmol)の酢酸カリウムをDMF中、80℃で2時間反応させた。この反応液にメタノールを加え生成させた沈殿物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、2.0g(4.8mmol)の9,10−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラニル)アントラセンを得た。
【0105】
また、1.9g(20mmol)の2−アミノピリジン、5.6gの(20mmol)2,4’−ジブロモアセトフェノン、及び、2.5g(30mmol)の炭酸水素ナトリウムをエタノール中で5時間還流させた。冷却後に生じた析出物を水、エタノールで洗浄することにより、2.9g(10.6mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンを得た。
【0106】
次いで、得られた2.0g(4.8mmol)の9,10−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラニル)アントラセン、及び、2.9g(10.6mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンを、0.33g(0.29mmol)のテトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム(0)存在下、トルエン、エタノール、2M炭酸ナトリウム水溶液の混合溶媒中、90℃で12時間還流した。
【0107】
冷却後に生じた析出物をろ過し、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、1.08g(1.92mmol)の化合物(11)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。
【0108】
<合成例2>
下記化合物(12)を以下の反応式に従って、下記の方法で合成した。
【0109】
【化31】

【0110】
1.9g(20mmol)の2−アミノピリジン、5.8g(20mmol)の2,4’−ジブロモプロピオフェノン、及び、2.5g(30mmol)の炭酸水素ナトリウムをエタノール中で5時間還流させた。冷却後に生じた析出物を水、エタノールで洗浄することにより、2.8g(9.8mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンを得た。
【0111】
以下、2.9g(10.6mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンの代わりに、2.8g(9.8mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンを用いた他は、合成例1と同様の操作を行い、0.9g(1.5mmol)の化合物(12)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。
【0112】
<合成例3>
下記化合物(13)を以下の反応式に従って、下記の方法で合成した。
【0113】
【化32】

【0114】
3.5g(20mmol)の2−アミノ−5−ブロモピリジン、4.3g(20mmol)の2−ブロモプロピオフェノン、2.5g(30mmol)の炭酸水素ナトリウムをエタノール中で5時間還流させた。冷却後に生じた析出物を水、エタノールで洗浄することにより、3.2g(11mmol)の6−ブロモ−2−フェニル−3−メチル−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンを得た。
【0115】
以下、2.9g(10.6mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンの代わりに、3.2g(11mmol)の6−ブロモ−2−フェニル−3−メチル−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンを用いた他は、合成例1と同様の操作を行い、1.2g(2.1mmol)の化合物(13)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。
【0116】
<合成例4>
下記化合物(14)を以下の反応式に従って、下記の方法で合成した。
【0117】
【化33】

【0118】
1.9g(20mmol)の2−アミノピリミジン、5.8g(20mmol)の2,4’−ジブロモプロピオフェノン、2.5g(30mmol)の炭酸水素ナトリウムをエタノール中で5時間還流させた。冷却後に生じた析出物を水、エタノールで洗浄することにより、3.5g(12mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−イミダゾ〔1,2−a〕ピリミジンを得た。
【0119】
以下、2.9g(10.6mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−イミダゾ〔1,2−a〕ピリジンの代わりに、3.5g(12mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−イミダゾ〔1,2−a〕ピリミジンを用いた他は、合成例1と同様の操作を行い、1.3g(2.2mmol)の化合物(14)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。
【0120】
<合成例5>
2.7g(8mmol)の9,10−ジブロモアントラセンに代えて、4.1g(8mmol)の10,10’−ジブロモ−〔9,9’〕ビアントリルを用いた以外は合成例1と同様にして合成し、0.7g(0.9mmol)の下記化合物(15)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。化合物(15)の合成の際の反応式は、下記の通りである。
【0121】
【化34】

【0122】
<合成例6>
2.7g(8mmol)の9,10−ジブロモアントラセンに代えて、4.1g(8mmol)の10,10’−ジブロモ−〔9,9’〕ビアントリルを用いた以外は合成例2と同様にして合成し、0.95g(1.2mmol)の下記化合物(16)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。化合物(16)の合成の際の反応式は、下記の通りである。
【0123】
【化35】

【0124】
<合成例7>
22g(66mmol)の9,10−ジブロモアントラセンと5.0g(30mmol)のパラフェニレンボロン酸とを、0.90g(0.78mmol)のテトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム(0)存在下、トルエン、エタノール、2M炭酸ナトリウム水溶液の混合溶媒中、90℃で12時間還流することにより、13g(22mmol)の化合物(31)を得た。
【0125】
このようにして得られた化合物(31) 4.7g(8mmol)を、9,10−ジブロモアントラセン 2.7g(8mmol)に代えて用いた以外は合成例1と同様にして合成し、1.0g(1.2mmol)の下記化合物(17)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。化合物(17)の合成の際の反応式は、下記の通りである。
【0126】
【化36】

【0127】
<合成例8>
合成例7記載の方法で得られた化合物(31) 4.7g(8mmol)を、9,10−ジブロモアントラセン2.7g(8mmol)に代えて用いた以外は合成例3と同様にして合成し、0.6g(0.7mmol)の下記化合物(18)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。化合物(18)の合成の際の反応式は、下記の通りである。
【0128】
【化37】

【0129】
<合成例9>
8.7g(25mmol)の化合物(32)と15.8g(50mmol)の1,3,5トリブロモベンゼンとを、0.87g(0.75mmol)のテトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム(0)存在下、トルエン、エタノール、2M炭酸ナトリウム水溶液の混合溶媒中、90℃で12時間還流することにより、9.2g(17mmol)の化合物(33)を得た。
【0130】
このようにして得られた化合物(33) 4.3g(8mmol)を、9,10−ジブロモアントラセン 2.7g(8mmol)に代えて用いた以外は合成例1と同様にして合成し、1.3g(1.7mmol)の下記化合物(19)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。化合物(19)の合成の際の反応式は、下記の通りである。
【0131】
【化38】

【0132】
<合成例10>
合成例9記載の方法で得られた化合物(33)4.3g(8mmol)を、9,10−ジブロモアントラセン2.7g(8mmol)に代えて用いた以外は合成例3と同様にして合成し、1.1g(1.4mmol)の下記化合物(20)を得た。得られた化合物はマススペクトルにて同定した。化合物(20)の合成の際の反応式は、下記の通りである。
【0133】
【化39】

【0134】
<実施例1>
まず、ガラス基板上にRFスパッタ法で、ITO透明電極薄膜を100nmの厚さに成膜し、パターニングした。次に、このITO透明電極薄膜付きガラス基板を、中性洗剤、アセトン及びエタノールの混合液を用いて超音波洗浄した。続いて、そのガラス基板を混合液から引き上げて乾燥した後、酸素置換されたチャンバー内で、赤外線照射を行うことにより、酸素をオゾン化し、基盤表面をオゾン洗浄した。そして洗浄後のガラス基板を蒸着装置(アルバック製)の基板ホルダーに固定して、蒸着装置内を1×10−4Pa以下まで減圧した。
【0135】
次いで減圧状態を保ったまま、下記式(41)で表されるN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[N−(4−メチルフェニル)−N−フェニル−(4−アミノフェニル)]−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンをITO透明電極薄膜上に蒸着速度0.1nm/secで50nmの膜厚に蒸着し、ホール注入層とした。
【0136】
【化40】

【0137】
次いで、下記式(42)で表されるN,N,N’,N’−テトラキス(m−ビフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンをホール注入層上に蒸着速度0.1nm/secで10nmの厚さに蒸着し、ホール輸送層とした。
【0138】
【化41】

【0139】
次いで、減圧状態を保ったまま、 次いで、減圧状態を保ったまま、N,N,N’,N’−テトラキス(m−ビフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンと下記式(43)で表されるアントラセン誘導体とを、1:1で混合したものに、下記式(44)で表されるルブレンを1体積%加えたものを、ホール輸送層上に全体の蒸着速度0.2nm/秒で、40nmの膜厚に共蒸着し、第1の発光層を形成した。
【0140】
【化42】

【0141】
【化43】

【0142】
次いで、減圧状態を保ったまま、N,N,N’,N’−テトラキス(m−ビフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンと上記式(43)で表されるアントラセン誘導体とを、1:1で混合したものに、下記式(45)で表される化合物を2.5体積%加えたものを、第1の発光層上に全体の蒸着速度0.2nm/秒で、40nmの膜厚に蒸着し、第2の発光層を形成した。
【0143】
【化44】

【0144】
次いで、減圧状態を保ったまま、合成例1で得られた化合物(11)を、第2の発光層上に蒸着速度0.1nm/secで15nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0145】
次いで、フッ化リチウムを電子注入輸送層上に蒸着速度0.1nm/secで0.5nmの厚さに蒸着し、電子注入電極とし、さらに、保護電極としてアルミニウムを100nm蒸着し、最後にガラス封止して実施例1の有機EL素子を得た。
【0146】
<実施例2>
化合物(11)に代えて、合成例2で得られた化合物(12)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の有機EL素子を製造した。
【0147】
<実施例3>
化合物(11)に代えて、合成例3で得られた化合物(13)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例3の有機EL素子を製造した。
【0148】
<実施例4>
化合物(11)に代えて、合成例4で得られた化合物(14)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例4の有機EL素子を製造した。
【0149】
<実施例5>
化合物(11)に代えて、合成例5で得られた化合物(15)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例5の有機EL素子を製造した。
【0150】
<実施例6>
化合物(11)に代えて、合成例6で得られた化合物(16)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例6の有機EL素子を製造した。
【0151】
<実施例7>
化合物(11)に代えて、合成例7で得られた化合物(17)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例7の有機EL素子を製造した。
【0152】
<実施例8>
化合物(11)に代えて、合成例8で得られた化合物(18)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例8の有機EL素子を製造した。
【0153】
<実施例9>
化合物(11)に代えて、合成例9で得られた化合物(19)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例9の有機EL素子を製造した。
【0154】
<実施例10>
化合物(11)に代えて、合成例10で得られた化合物(20)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例10の有機EL素子を製造した。
【0155】
<比較例1>
化合物(11)に代えて、Alqを用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例1の有機EL素子を製造した。
【0156】
<比較例2>
化合物(11)に代えて、下記式(21)で表される化合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例2の有機EL素子を製造した。
【0157】
【化45】

【0158】
<素子特性評価試験>
上記のようにして得られた実施例1〜10及び比較例1、2の有機EL素子について、真空中、室温にて、50mA/cmの定電流駆動時の駆動電圧及び初期輝度を測定した。さらに、上記の有機EL素子について、アルゴン雰囲気下、室温又は60℃にて、100mA/cmの定電流駆動時の輝度が半減するまでの寿命(室温駆動寿命、60℃駆動寿命)をそれぞれ測定した。それらの結果を表1に示す。
【0159】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0161】
1…第1の電極、2…第2の電極、4…基板、10…発光層、11…ホール輸送層、13…電子注入輸送層、14…ホール注入層、100、200…有機EL素子、P…電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される有機EL素子用化合物。
【化1】

[式(1)中、X及びZは、アリール基、下記一般式(2)で表される基又は下記一般式(3)で表される基;Lは、アリール骨格を有する2価の基又は単結合;R11,R12,R13及びR14は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ピリジニル基、ビピリジニル基、又は、複数存在するR11,R12,R13又はR14がそれぞれ一緒になって生じた2価の基;nは0又は1;n1,n2,n3及びn4は0〜4の整数、をそれぞれ示す。
式(2)中、Rは、下記一般式(4)で表される基;Zは、アリール骨格を有する2価の基又は単結合、をそれぞれ示す。
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(4)で表される基;Zは、アリール骨格を有する3価の非縮合環基、をそれぞれ示す。
式(4)中、A,A,A,A,A,A,A及びAは、炭素原子又は窒素原子であり(但し、当該窒素原子の総数は2〜4)、当該炭素原子に、アルキル基、アリール基、ピリジニル基又はビピリジニル基が結合していてもよい。
なお、Xがアリール基である場合は、Zは下記一般式(3)で表される基であり、Xが下記一般式(2)で表される基である場合は、Zは下記一般式(2)で表される基である。]
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項2】
11,R12,R13及びR14は、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ピリジニル基、又は、複数存在するR11,R12,R13又はR14がそれぞれ一緒になって生じた−CH=CH−CH=CH−基である、請求項1記載の有機EL素子用化合物。
【請求項3】
n1,n2,n3及びn4は0である、請求項1記載の有機EL素子用化合物。
【請求項4】
は、フェニレン基、ビフェニレン基又は単結合である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子用化合物。
【請求項5】
は、フェニレン基、ビフェニレン基、下記式(5)で表される基、又は、単結合である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機EL素子用化合物。
【化5】

【請求項6】
は、下記式(6)で表される基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機EL素子用化合物。
【化6】

【請求項7】
,R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(a)、(b)、(c)又は(d)で表される基(但し、これらの基の炭素原子にアルキル基、アリール基、ピリジニル基又はビピリジニル基が結合していてもよい。)である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機EL用化合物。
【化7】

【請求項8】
互いに対向して配置されている2つの電極間に、1又は2以上の有機層を備える有機EL素子であって、
前記有機層のうち少なくとも1層は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機EL素子用化合物を含む、有機EL素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−69100(P2008−69100A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248390(P2006−248390)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】