説明

木材の処理溶液および処理方法

【課題】銅化合物または亜鉛化合物を含む水溶液または有機溶媒溶液を処理した木材に、ピロコテコールおよび鉄化合物、更に安定化剤を含む溶液で処理することで、溶液中に不溶性の凝集物あるいは析出物を形成させることなく、木材の光による劣化を防止する木材処理溶液を提供し、またその溶液を使用して木材の光による劣化を防止する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、木材の光による劣化を抑制するため、銅化合物または亜鉛化合物を含む水溶液または有機溶媒溶液を処理した木材に、ピロコテコールおよび鉄化合物、更に安定化剤を含む溶液で処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材に着色性と耐光性を効果的に付与するための木材処理液および木材処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を屋外の日光が当たる場所で使用すると、紫外線の作用によって木材の表層組織が破壊され、木材の外観が灰白色に変色する。こうした変色劣化によって木材製品の商品価値が著しく損なわれる。そのため、木材に耐光性を付与するための木材保護処理方法として、従来、様々な処理薬剤による塗布、浸漬、注入が実施されてきた。こうした薬剤として最も広く使用されているのは銅化合物を含有する薬剤であり、酸化第二銅、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、塩基性炭酸銅、水酸化銅、ナフテン酸銅などの銅化合物を水溶性あるいは水に分散した状態にした薬剤を、木材に対して加圧注入する方法が実施されている。しかしながら、こうした銅化合物による耐光性は十分なものではなく、より耐光性の優れた木材保護方法の開発が望まれていた。
【0003】
木材に耐光性を付与するための木材保護処理方法として、従来、クレオソート薬剤による塗布あるいは注入処理が実施されている。しかし、クレオソートは人体に対する影響が懸念されており、代替となる木材保護薬剤の出現が望まれていた。
【0004】
着色性と耐水性を有する化合物として、ピロカテコール、没食子酸、ピロガロールといったポリフェノール化合物を溶解した薬剤を、木材に塗布あるいは加圧注入する方法が、特許文献1(特公昭53−5367号)、特許文献2(特公昭54−16562号)、特許文献3(特公昭54−32043号)、特許文献4(特公昭54−32044号)、特許文献5(特公昭61−52773号)、特許文献6(特公昭56−20162号)、特許文献7(国際公開81/03459号)、特許文献8(特開2000−169307号)などにおいて実施されている。しかしこれらの化合物は紫外線の作用で急速に分解するため、1ヶ月〜数ヶ月程度の屋外暴露によって木材表面の変色を招き、耐光性は十分なものではなかった。また、これらの処理溶液は空気酸化によって不溶性の凝集物を形成するため、木材処理装置内に残留あるいは貯留した処理溶液の安定性の問題や、大量に調製した溶液を繰り返して木材処理に使用することができないという実用上の問題があった。なお、本発明でいう安定とは、溶液中に不溶性の凝集物あるいは析出物を形成しないことである。
【0005】
金属化合物と、ピロカテコール、没食子酸、ピロガロールといったポリフェノール化合物の双方を含有する溶液を、木材に塗布あるいは加圧注入する方法が、特許文献9(特開平11−165303号)、特許文献10(特開平11−139905号)、特許文献11(国際公開99/39575号)などで開示されている。しかしこれらの方法では、耐光性を付与可能な高濃度でポリフェノール化合物を使用した場合に、ポリフェノール化合物が空気中の酸素によって酸化されることで大量の不溶性の凝集物を形成し、木材処理溶液の浸透性の低下を招く。また、金属イオンとポリフェノール化合物が酸化還元反応を生じるため、耐光性を付与可能な高濃度で金属イオンとポリフェノール化合物を使用した場合に、金属化合物の析出、金属イオンの還元による金属の析出が生じる。そのため、有効な量の金属化合物とポリフェノール化合物を木材に吸収させることができないという欠点があり、安定な木材処理溶液の出現が望まれていた。
【0006】
また、木材処理溶液を木材に注入、浸漬、または塗布することで使用した後、木材に吸収されなかった大部分の溶液は、通常、回収して再び新たな別の木材の処理に使用される。そのため、木材処理溶液の安定性に問題がある場合には、処理木材の工業的な安定生産が困難となる。従って、安定性に優れた木材処理溶液による効果的な耐光性付与方法の出現が望まれていた。
【特許文献1】特公昭53−5367号公報
【特許文献2】特公昭54−16562号公報
【特許文献3】特公昭54−32043号公報
【特許文献4】特公昭54−32044号公報
【特許文献5】特公昭61−52773号公報
【特許文献6】特公昭56−20162号公報
【特許文献7】国際公開81/03459号公報
【特許文献8】特開2000−169307号公報
【特許文献9】特開平11−165303号公報
【特許文献10】特開平11−139905号公報
【特許文献11】国際公開99/39575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、安定な木材処理溶液を用いて、木材に対して効果的な耐光性を与えるための木材処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、木材に効果的な耐光性を付与する水溶性製剤および処理方法を開発する目的で、様々なポリフェノール化合物および金属化合物とその組み合わせ、濃度について検討を行った。こうした検討は、ポリフェノール化合物の酸化あるいはポリフェノール化合物と金属化合物による凝集物の生成により非常に困難なものであったが、ピロカテコールおよび鉄化合物、更に安定化剤を含むことで水溶液が安定化すること、また、銅化合物または亜鉛化合物を含む水溶液または有機溶媒溶液を処理した木材に対して、こうした水溶液を処理することで、目的とする耐光性の付与が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、屋外設置の木材が紫外線の作用で灰白色に変色するという劣化を抑制するための木材処理液方法を与えるものであり、以下の処理方法を開示するものである。
(1)銅化合物または亜鉛化合物を含む水溶液または有機溶媒溶液を木材に注入、浸漬、または塗布した後、鉄化合物とカテコールおよび安定化剤を含むpH7〜12の水溶液を木材に注入、浸漬、または塗布することにより、木材に耐光性を与えることを特徴とする木材の処理方法。
(2)銅化合物または亜鉛化合物が水溶液または有機溶媒溶液中に0.01〜1重量%含まれる前項1に記載の木材処理方法。
(3)銅化合物が炭酸第二銅、水酸化第二銅、塩化第二銅、硫酸第二銅またはナフテン酸第二銅であり、亜鉛化合物が塩化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化亜鉛またはナフテン酸亜鉛である前項1に記載の木材処理方法。
(4)鉄化合物が硫酸第二鉄または塩化第二鉄であり、水溶液中に0.5〜4重量%含まれ、カテコールが2〜16重量%含まれる前項1に記載の木材処理方法。
(5)安定化剤が没食子酸またはピロガロールから選ばれる1種または2種の化合物であり、水溶液中に合計量として1〜6重量%含まれる前項1に記載の木材処理方法。
(6)殺虫性を付与するための殺虫剤又は殺菌性を付与するための殺菌剤のうちいずれか一方または双方を0.001〜5重量%含む前項1に記載の木材処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明において提供される木材処理溶液および処理方法を使用する事で、木材に対して容易に効果的な耐光性を付与することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
銅化合物または亜鉛化合物の濃度は、木材に注入、浸漬、または塗布して使用する水溶液または有機溶媒溶液中濃度として0.01〜1重量%である。
使用可能な銅化合物または亜鉛化合物は、銅元素または亜鉛元素をカチオン部分に有する、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、フッ化物、塩素化物、水酸化物、酸化物などが挙げられる。
具体的には、銅化合物としては炭酸第二銅、水酸化第二銅、塩化第二銅、硫酸第二銅またはナフテン酸第二銅が挙げられ、亜鉛化合物としては塩化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化亜鉛またはナフテン酸亜鉛が挙げられる。
また、銅アミン系化合物錯体、銅アンモニア錯体などの第二銅イオンを生成する他の銅化合物も使用可能である。
また、銅化合物または亜鉛化合物の供給源として、通常用いられている銅系または亜鉛系の木材保存剤も使用可能である。こうした銅系木材保存剤の例としては、銅・アルキルアンモニウム化合物系、クロム・銅・ヒ素化合物系、銅・ホウ素・アゾール化合物系、銅・アゾール化合物系、リグニン・銅・ホウ素化合物系、リグニン・銅・アゾール化合物系が挙げられる。亜鉛系木材保存剤の例としては、バーサチック酸亜鉛系が挙げられる。
【0012】
銅化合物または亜鉛化合物を含む有機溶媒溶液として使用可能な有機溶剤は、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチルなどのカルボン酸エステル系溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤、ジクロロメタン、THFなどの塩素系溶剤、灯油、軽油などの石油系溶剤、などの通常使用される有機溶剤である。
【0013】
本発明で使用される木材処理溶液を木材に接触させるためには、木材処理液を用いて木材に注入する方法、木材処理液を含む槽に木材を浸漬する方法、木材に対して木材処理液を塗布する方法が適用できる。
特に注入処理は、多量の木材処理液を木材に浸透させるために有用な方法であり、注入の際には、加圧処理および/または減圧処理が使用可能である。
このような注入処理の例として、充細胞法(ベセル法)、半空細胞法(ローリー法)、複式真空法(ダブルバキューム法)、加減圧交替法(Oscillating Pressure Method)、及びこれらの操作を組み合わせた方法が挙げられる。
また、木材に対するインサイジング加工も、含浸量を増大させるために有用である。
また、含浸の困難な木材に対する前処理として、ローラー等を用いる圧縮処理、マイクロ波過熱、凍結処理、蒸煮処理、水蒸気処理、あるいは熱処理を行うことも有効である。
【0014】
鉄化合物は、具体的には第一鉄イオンまたは第二鉄イオンを生成する鉄化合物であり、好適には硫酸第二鉄または塩化第二鉄が使用される。
鉄化合物の濃度は、木材に注入、浸漬、または塗布して使用される水溶液中の濃度として0.2〜5重量%、より好適には0.5〜4重量%である。
【0015】
本発明で使用するピロカテコールの濃度は、木材に注入、浸漬、または塗布して使用される水溶液中の濃度として、1〜20重量%であり、より好適には2〜16重量%である。
【0016】
使用可能な安定化剤は、没食子酸またはピロガロールから選ばれる1種または2種の化合物であり、木材に注入、浸漬、または塗布して使用される水溶液中に合計量として1〜6重量%含まれる。
【0017】
ピロカテコールおよび安定化剤を含む溶液中に不溶性の凝集物あるいは析出物を形成しないために、アルカリ性化合物を用いてpHを7〜12に調整することが必要である。使用可能なアルカリ性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの元素周期律表1A族金属の水酸化物あるいは炭酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの元素周期律表2A族金属の水酸化物あるいは炭酸塩、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N, N−ジメチルエタノールアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミン、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどのアミン系あるいはアンモニア系化合物が挙げられる。
【0018】
本発明の銅化合物または亜鉛化合物を含む水溶液または有機溶媒溶液には、通常使用される様々な殺菌剤、殺虫剤、あるいは防虫剤を更に混合して使用することで、木材処理溶液としての効力を高めることが可能である。このような殺菌剤あるいは殺菌成分の具体的な例として、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、あるいは銀をカチオン部分として有する、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、フッ化物、塩素化物、水酸化物、酸化物などが挙げられる。また、ホウ酸、ホウ砂などのホウ素含有化合物も使用可能である。また、アザコナゾール、エタコナゾール、プロピコナゾール、ブロモコナゾール、ジフェノコナゾール、イトラコナゾール、フルトリアホール、ミクロブタニル、フェネタミル、ペンコナゾール、テトラコナゾール、ヘキサコナゾール、テブコナゾール、イミベンコナゾール、フルシラゾール、リバビリン、トリアミホス、イサゾホス、トリアゾホス、イジンホス、フルオトリマゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、ジクロブトラゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾールM、ビテルタノール、エポキシコナゾール、トリチコナゾール、マトコナゾール、イプコナゾール、フルコナゾール、フルコナゾール・シス、シプロコナゾールなどのトリアゾール誘導体、ジクロロフルアニド(エウパレン)、トリフルアニド(メチルレウパレン)、シクロフルアニド、フォルペット、フルオロフォルペットなどのスルフォンアミド類、カルベンダジム、ベノミル、フベリタゾール、チアベンダゾールまたはこれらの塩類などのベンズイミダゾール類、チオシアネートメチルチオベンゾチアゾール、メチレンビスチオシアネートなどのチオシアネート類、C11〜C14−4−アルキルー2,6−ジメチルモルホリン同族体(トリデモルフ)、(±)−シス−4−[3−(t−ブチルフェニル)−2−メチルプロピル]−2,6−ジメチルモルホリン(フェンプロピモルフ、ファリモルフ)などのモルホリン誘導体、3−ヨード−2−プロピル―n―ブチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピル―n―ヘキシルカルバメート、3−ヨード−2−プロピルシクロヘキシルカルバメート、3−ヨード−2−プロピルフェニルカルバメート、p−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロパニルエチルカルボナート(サンプラス)、1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチルベンゼン(アミカル)などの有機ヨード化合物、ブロノポルなどの有機ブロモ誘導体、N−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−N−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−ジクロロ−N−オクチルイソチアゾリン−3−オン、N−オクチルイソチアゾリン−3−オン(オクチリノン)などのイソチアゾリン類、シクロペンタイソチアゾリンなどのベンズイソチアゾリン類、1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン(またはそのナトリウム塩、鉄塩、マンガン塩、亜鉛塩など)、テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジンなどのピリジン類、ジアルキルジチオカルバメートのナトリウム塩または亜鉛塩、テトラメチルジウラムジサルファイド(TMTD)などのジアルキルジチオカルバメート類、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロニル)などのニトリル類、C1−Ac、MCA、テクタマー、ブロノポル、ブルミドックスなどの活性ハロゲン原子を有する微生物剤、2−メルカプトベンゾチアゾール類、ダゾメットなどのベンズチアゾール類、クロルデン、ディルドリン、アルドリン、ヘプタクロルなどのジクロジエン類、N−ニトロソ−N−シクロヘキシルヒドロキシルアミンなどのニトロソ類、8−ヒドロキシキノリンなどのキノリン類、ベンジルアルコールモノ(ポリ)ヘミフォルマール、オキサゾリジン、ヘキサヒドロ−S−トリアジン、N−メチロールクロロアセトアミドなどのホルムアルデヒド生成物質、トリス−N−(シクロヘキシルジアゼニウムジオキシン)−トリブチル錫またはカリウム塩、ビス−(N−シクロヘキシル)ジアジニウム−ジオキシン銅またはアルミニウム、ヒノキチオールなどが挙げられる。また、塩化物イオン、水酸化物イオン、有機酸イオンなどをアニオン部分として有する、ジデシルジメチルアンモニウム、ベンザルコニウムなどのテトラアルキルアンモニウム塩型などのカチオン界面活性剤も好適な化合物として挙げられる。
【0019】
また、本発明において使用可能な殺虫剤、殺虫成分、防虫剤、あるいは防虫成分の具体的な例として、アジノフォス−エチル、アジノフォス−メチル、1−(4−クロロフェニル)−4−(O−エチル,S−プロピル)ホスホリルオキシピラゾル(TIA−230)、クロロピリフォス、テトラクロロピリフォス、クマフォス、デトメン−S−メチル、ジアジノン、ジクロルボス、ジメトエート、エトプロフォス、エトリムフォス、フェニトロチオン、ピリダフェンチオン、ヘプテノフォス、パラチオン、パラチオン−メチル、プロペタンホス、フォサロン、フォキシム、ピリミフォス−エチル、ピリミフォス−メチル、プロフェノフォス、プロチオフォース、スルプロフォス、トリアゾフォス、トリクロルフォンなどのリン酸エステル類、アルジカルブ、ベニオカルブ、BPMC、2−(1−メチルプロピル)フェニルメチルカルバメート、ブトカルボキシム、ブトキシカルボキシム、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、イソプロカルブ、メソミル、オキサミル、ピリミカルブ、プロメカルブ、プロポクスル、チジカルブなどのカルバメート類、アレトリン、アルファメトリン、ビオレスメトリン、シクロプロトリン、シフルトリン、デカメトリン、シハロトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、α−シアノ−3−フェニル−2−メチルベンジル−2,2−ジメチル−2−(2−クロロ−2−トリフルオロメチルビニル)シクロプロパン−1−プロパンカルボキシレート、フェンプロパトリン、フェンフルトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルムトリン、フルバリネート、ペルメトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、レスメトリンなどのピレスロイド類、1−(6−クロロ−3−ピリジニル−メチル)−4,5−ジヒドロ−N−ニトロ−1Hイミダゾール−2−アミン(イミダクロプリド)、アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサムなどのニトロイミノおよびニトロメチレン類などが挙げられる。また、昆虫ホルモンおよびその誘導体、キチン合成阻害剤などのIGR(昆虫成長制御物質)も使用可能である。
これらの殺菌剤、殺虫剤、あるいは防虫剤は単独でも組み合わせても使用可能である。本発明において使用されるこのような殺菌剤、殺虫剤、あるいは防虫剤の濃度は、これら薬剤の有する生理活性の強度と処理の目的、溶解度に応じて調整することが望ましいが、0.0001〜20重量%、好ましくは0.001〜5重量%である。
【0020】
また、銅化合物または亜鉛化合物を含む水溶液または有機溶媒溶液、あるいは、鉄化合物とカテコールおよび安定化剤を含むpH7〜12の水溶液には、一般的に耐光性を高めるために用いられている紫外線吸収性の化合物あるいは光安定化のための化合物を更に混合して使用することが可能である。具体的には、サリチル酸フェニル、p−t−ブチルフェニルサリチル酸などのサリチル酸類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール類、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート類、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、などが挙げられる。
【0021】
また、本発明の木材処理溶液を用いて処理された木材は、木材の有する微小な空隙が維持されているため、更に、塗装を容易に施すことができる。こうした塗装剤として、従来使用されている防水塗料、撥水塗料、顔料系塗料などが使用可能である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1:鉄化合物とピロカテコールおよび安定化剤を含む木材処理溶液の調製および安定性試験
ピロカテコール、安定化のための化合物として没食子酸またはピロガロールから選ばれる1種または2種の化合物、及び水に50%水酸化ナトリウムを加えて溶解してpH9に調整し、更に硫酸第二鉄を加えた後、再び50%水酸化ナトリウムを加えてpH9に再調整することで木材処理溶液を1000g調製した。
調製した木材処理溶液のうち400gは500mL容のガラス容器に移して密栓し、室温で保管した。また、残りの600gの木材処理溶液は、1000mL容ガラス容器に移し、密栓しない状態(空気の接触する状態)で25℃、2ヶ月間静置して、凝集物あるいは析出物の生成の有無を確認し、安定性を評価した。尚、密栓しない状態で25℃、2ヶ月間静置する間に蒸発する水分を補うため、毎週、減少した重量を測定してその分の水を加えて攪拌した。
安定性の評価結果を表1に示した。
【0024】
実施例2:処理木材の耐光性
銅化合物を含有する濃縮溶液を得るため、塩基性炭酸銅170g、エタノールアミン350g、安息香酸50gに水を加えて1000gとして、更にシプロコナゾールを2g加えて撹拌して溶解した。
この濃縮溶液を水で40倍重量になるように希釈し、ベイツガ材(14cm×6.5cm×0.5cm)に加圧注入法(50mgHgでの前排気を30分間、12気圧での加圧注入を1時間)によって注入し、更に、注入後の木材を室温(約25℃)で10日間乾燥することで、銅化合物注入木材を準備した。
【0025】
次に、実施例1において調製した木材処理溶液のうち500mL容のガラス容器で密栓して保管した溶液と、前記の銅化合物注入木材を用いて、5分間の浸漬処理を行った。浸漬後の木材は室温(約25℃)で5日間乾燥し、処理木材を得た。また、比較例のため、銅化合物を注入していない無処理木材においても、同様の浸漬処理を行って処理木材を得た。
これらの処理木材を日光の当たる屋外に設置し、設置後1年間の木材表層の劣化状況(紫外線の作用による変色)を目視で観察することで、耐光性試験を実施した。
耐光性試験の結果を表1に示した。
【0026】
表1



【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の木材処理方法は、耐光性に優れた木材を製造するために極めて有用である。また、従来使用されてきたクレオソート薬剤と比較し、より人体と環境に対して安全な処理木材を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅化合物または亜鉛化合物を含む水溶液または有機溶媒溶液を木材に注入、浸漬、または塗布した後、鉄化合物とピロカテコールおよび安定化剤を含むpH7〜12の水溶液を木材に注入、浸漬、または塗布することにより、木材に耐光性を与えることを特徴とする木材の処理方法。
【請求項2】
銅化合物または亜鉛化合物が水溶液または有機溶媒溶液中に0.01〜1重量%含まれる請求項1の木材処理方法。
【請求項3】
銅化合物が炭酸第二銅、水酸化第二銅、塩化第二銅、硫酸第二銅またはナフテン酸第二銅であり、亜鉛化合物が塩化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化亜鉛またはナフテン酸亜鉛である請求項1の木材処理方法。
【請求項4】
鉄化合物が硫酸第二鉄または塩化第二鉄であり、水溶液中に0.5〜4重量%含まれ、ピロカテコールが2〜16重量%含まれる請求項1の木材処理方法。
【請求項5】
安定化剤が没食子酸またはピロガロールから選ばれる1種または2種の化合物であり、水溶液中に合計量として1〜6重量%含まれる請求項1の木材処理方法。
【請求項6】
殺虫性を付与するための殺虫剤又は殺菌性を付与するための殺菌剤のうちいずれか一方または双方を0.001〜5重量%含む請求項1の木材処理方法。