説明

木材の接合構造

【課題】接着剤を用いることなく複数の木材を強固に接合できる木材の接合方法を提供する。
【解決手段】相対向する少なくとも一対の木材10,20の対向面11,21に,該対向面と垂直に相対向して接合用穴12,22を設け,対をなす接合用穴12,22に,少なくとも予め圧縮乾燥させられた連結棒30を入れ,接合用穴内において,吸湿して膨張する連結棒30の両端31を中央部32に比べて大きく膨張させることで,少なくとも一対の木材を接合する。連結棒30の長手方向中央部32に吸湿制限加工を施してもよいし,接合用穴12,22は対向面から遠ざかるにしたがって対向面と平行な面積が拡大する穴としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,複数の木材を接合する,木材の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,例えば特許文献1に見られるように,複数枚の単板(2,3)を接着剤(4)で接着した積層材が知られている。
このような積層材によれば,単板(2,3)を積層して厚手の板体(積層体)を作成することができる。
しかしこの構造は接着剤が必要であるという難点を有している。
【0003】
また,従来,例えば特許文献2に見られるように,床材(1)の端部に雇い実(2)を凹設し,床材(1)の端部を突き合わせて雇い実(2)を対向させると共に両雇い実(2)内に圧密乾燥した目地木材(3)を嵌め込んで成る床材の接合構造が知られている。
このような接合構造によれば,接着剤を用いることなく床材(1)同士を目地木材(3)で接合することができる。
【0004】
しかし,このような接合構造は,両雇い実(2)および目地木材(3)の形状が単なる矩形(直方体)であり,かつ,目地木材(3)は圧密乾燥させただけのものであるので,接合強度は必ずしも強固とは言えない。
したがって,例えば同文献図1に示すように,床材(1)に適用し,床材(1)を水平方向に接合する場合には,床材(1)の両側(同公報図1における左右両側)に床材1の移動(接合面の離間)を阻止する規制部材(図示されていない)が通常設けられるため,問題ないと考えられるが,接合面の離間を阻止する規制部材がない場合,例えば,特許文献1における接着剤に代えて複数枚の単板を目地木材を用いて上下方向へ積層(接合)する場合には,十分な接合強度は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−105005号公報
【特許文献2】特開平06−158835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は,接着剤を用いることなく複数の木材を強固に接合できる木材の接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために,本発明の木材の接合構造は,複数の木材を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材の対向面に,該対向面と垂直に相対向して接合用穴を設け,対をなす接合用穴に,連結棒を入れ,当該接合構造をなす過程において,接合用穴内において,連結棒の両端を中央部に比べて大きく膨張させることで,前記少なくとも一対の木材を接合することを特徴とする。
具体的には,
本発明の木材の接合構造は,複数の木材を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材の対向面に,該対向面と垂直に相対向して設けられた接合用穴と,対をなす接合用穴に,予め圧縮乾燥させられかつ長手方向中央部に吸湿制限加工が施された状態で入れられて,両端が前記対をなす接合用穴内にて膨張した,木材からなる連結棒とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この発明に係る木材の接合構造によれば,相対向する一対の木材の対向面に相対向して設けられた接合用穴に入れられた,予め圧縮乾燥させられた連結棒の両端が,その後,前記木材からの吸湿で膨張する。連結棒は,予め圧縮乾燥させられているだけでなく,長手方向中央部に吸湿制限加工が施されているので,長手方向中央部に比べて両端部分における吸湿が促進され,結果として,中央部に比べて両端部分の方が膨張することとなる。この両端部分の膨張は接合用穴の入口部分に比べて奥部を拡径させるように作用するため,連結棒は接合用穴から抜けにくくなる。
これによって,前記一対の木材は,接着剤によらず強固に接合されることとなる。この接合構造を対向面と垂直方向に連続させれば3つ以上の木材を強固に接合することもできる。
【0009】
また,本発明の木材の接合構造は,複数の木材を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材の対向面に,該対向面と垂直に相対向して設けられた,該対向面から遠ざかるにしたがって前記対向面と平行な面積が拡大する接合用穴と,対をなす接合用穴に,予め圧縮乾燥させられた状態で入れられて,両端が前記対をなす接合用穴内にて膨張した,木材からなる連結棒とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明に係る木材の接合構造によれば,相対向する一対の木材の対向面に相対向して設けられた接合用穴に入れられた,予め圧縮乾燥させられた連結棒の両端が,その後,前記木材からの吸湿で膨張する。接合用穴は,対向面から遠ざかるにしたがって対向面と平行な面積が拡大しているので,連結棒は,長手方向中央部に比べて両端部分の方が膨張することとなり,接合用穴から抜けにくくなる。
これによって,前記一対の木材は,接着剤によらず強固に接合されることとなる。この接合構造を対向面と垂直方向に連続させれば3つ以上の木材を強固に接合することもできる。
【0011】
望ましくは,前記接合用穴を貫通穴とし,該穴の外側から前記連結棒の両端に木ねじをねじ込んだ構成とする。
このように構成すると,連結棒の中央部に対する両端部分の膨張がより一層大きくなる。したがって,前記一対の木材が一層強固に接合されることとなる。
【0012】
また,本発明の木材の接合構造は,複数の木材を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材の対向面に,該対向面と垂直に相対向して設けられた,該対向面から遠ざかるにしたがって前記対向面と平行な面積が拡大し,かつ奥部が閉塞された接合用穴と,対をなす接合用穴に,両端に楔が途中まで打ち込まれた状態で入れられ,両端が前記対をなす接合用穴内に完全に挿入される過程で前記楔が前記接合用穴の奥壁と当接することで完全に打ち込まれて両端が膨張した,木材からなる連結棒とを備えたことを特徴とする。
【0013】
この発明に係る木材の接合構造によれば,相対向する一対の木材の対向面に相対向して設けられた,該対向面から遠ざかるにしたがって前記対向面と平行な面積が拡大し,かつ奥部が閉塞されたた接合用穴に,両端に楔が途中まで打ち込まれた状態で入れられた連結棒の両端は,その後,前記対をなす接合用穴内に完全に挿入される過程で前記楔が前記接合用穴の奥壁と当接することで完全に打ち込まれて膨張する。接合用穴は,対向面から遠ざかるにしたがって対向面と平行な面積が拡大しており,連結棒は,長手方向中央部に比べて両端部分の方が膨張するので,接合用穴から抜けにくくなる。
これによって,前記一対の木材は,接着剤によらず強固に接合されることとなる。この接合構造を対向面と垂直方向に連続させれば3つ以上の木材を強固に接合することもできる。
【0014】
望ましくは,前記接合用穴および連結棒の,前記対向面と平行な断面形状を円形または楕円形とする。
このように構成すると,連結棒が膨張した際の接合用穴における応力集中が軽減されるため,前記一対の木材が破損しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る木材の接合構造の一実施の形態を示す図で(a)〜(d)は接合工程例を示す要部断面図,(d)は同工程で得られた木材の接合構造の要部断面図,(e)(f)(g)はそれぞれ図(d)の部分省略底面図,(h)は連結棒30の変形例を示す断面図。
【図2】3つの木材10,20,50を対向面と垂直方向に連続させた例を示す断面図,(b)は図(a)の部分省略底面図。
【図3】(a)(b)および(c)(d)はそれぞれ連結棒30の変形例を示す斜視図。
【図4】本発明に係る木材の接合構造の他の実施の形態を示す図で(a)〜(d)は接合工程例を示す要部断面図,(d)は同工程で得られた木材の接合構造の要部断面図,(e)(f)(g)はそれぞれ図(d)の部分省略底面図,(h)は作用説明図。
【図5】本発明に係る木材の接合構造のさらなる他の実施の形態を示す図で(a)〜(d)は接合工程例を示す要部断面図,(d)は同工程で得られた木材の接合構造の要部断面図,(e)(f)(g)はそれぞれ図(d)の部分省略底面図,(h)は作用説明図。
【図6】本発明に係る木材の接合構造の他の実施の形態を示す図で(a)〜(g)は接合工程を示す要部断面図,(g)は同工程で得られた木材の接合構造の要部断面図,(h)は作用説明図。
【図7】本発明に係る木材の接合構造のさらに異なる実施の形態を示す図で(a)〜(g)は接合工程を示す要部断面図,(g)は同工程で得られた木材の接合構造の要部断面図。
【図8】(a)〜(e)はさらなる変形例を示す接合工程図,(e)は同工程で得られた木材の接合構造の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明に係る木材の接合構造の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(d)に示す実施の形態の木材の接合構造は,複数の木材(図1では2枚の木材10,20)を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材10,20の対向面11,21に,該対向面11,12と垂直に相対向して設けられた接合用穴12,22と,対をなす接合用穴12,22に,予め圧縮乾燥させられかつ長手方向中央部(32)に吸湿制限加工32が施された状態で入れられて,両端31,31が前記対をなす接合用穴12,22内にて膨張する,木材からなる連結棒30とを備えている。
【0017】
このような接合構造は,例えば図1(a)に示すように相対向する少なくとも一対の木材の対向面11,21に,該対向面11,21と垂直に,接合用穴12,22を相対向させて設け,対をなす接合用穴12,22に,図(b),図(c)に示すように,予め圧縮乾燥させかつ長手方向中央部(32)に吸湿制限加工32を施した,木材からなる連結棒30を入れ(軸線方向に挿入し),該連結棒30の両端31,31を前記対をなす接合用穴12,22内にて膨張させて前記複数の木材10,20を接合することで得ることができる(図(d)参照)。
【0018】
このような木材の接合構造によれば,相対向する一対の木材10,20の対向面11,21に相対向して設けられた接合用穴12,22に入れられた,予め圧縮乾燥させられた連結棒30の両端31,31が,その後,木材10,20からの吸湿で膨張する。連結棒30は,予め圧縮乾燥させられているだけでなく,長手方向中央部(32)に吸湿制限加工32が施されているので,長手方向中央部(32)に比べて両端部分31,31における吸湿が促進され,結果として,例えば図1(d)に示されるように中央部(32)に比べて両端部分31,31の方が膨張することとなる。この両端部分31,31の膨張は接合用穴12,22の入口部分d1(図1(a)(d)参照)に比べて奥部d2を拡大させるように作用するため,連結棒30は接合用穴から抜けにくくなる。
【0019】
これによって,一対の木材10,20は,接着剤によらず連結棒30によって強固に接合されることとなる。接合強度は,連結棒30の太さや本数によって調整することが可能である。
なお,図1(d)は連結棒30の両端部分31,31の膨張状態を概念的に描いたものであり,両端部分31が図示の通りに膨張するとは限らない。しかし,連結棒30の長手方向中央部(32)には吸湿制限加工32が施されているので,長手方向中央部(32)に比べて両端部分31,31の方が大きく膨張することにかわりはない。
【0020】
このような接合構造によると,接合用穴12,22の奥部は塞がれているので,この穴12,22および連結棒30の端部は木材の接合構造体40の外面41には露出しない。したがって木材の接合構造体40の外観を向上させることができる。
【0021】
このような接合構造は,対向面と垂直方向に連続させれば3つ以上の木材を強固に接合することもできる。図2(a)は3つの木材10,20,50を対向面と垂直方向に連続させた例を示しているが,4枚以上接合することも可能である。接合強度は連結棒30の太さや本数によって調整できる。連結棒30の太さ,長さ,および本数は,接合する木材(例えば木材10,20,50)の厚さ,幅,長さに応じて設定することができる。
【0022】
連結棒30は,プレスにて3/4〜1/2ほどに圧縮して水分を押し出した圧縮乾燥木材を用い,その長手方向中央部(32)に吸湿制限加工32を施したものを使用することができる。吸湿制限加工32は長手方向中央部(32)に,公知の木材用防水塗料(例えばウレタン)を塗布または含浸させることによって行うことができる。あるいは,図1(h)に示すように,連結棒30の長手方向中央部(32)を小径とし,その外周に公知の防水テープ33を一巻き以上巻き付けることによって行うこともできる。防水テープ33には,長手方向中央部(32)の膨張を防止または抑制する役割を持たせることもできる。そのようにすると,長手方向中央部(32)に比べて両端部分31,31の方が大きく膨張するという作用をより確実に得ることが可能になる。
【0023】
また,連結棒30としては,例えば図3(a)(b)に示すように,圧縮乾燥前の形状が長手方向中央部(32)に比べて両端部31,31が膨出した形状の木材を,その両端部31,31のみをプレスにて3/4〜1/2ほどに圧縮して水分を押し出したものを用いることもできる。このような連結棒30は,接合用穴12,22に入れられると,吸湿して図3(a)に示すような元の形状に戻ろうとする。すなわち,中央部(32)に比べて両端部分31,31の方が膨張することとなる。したがって,このような連結棒30も,予め圧縮乾燥させられかつ長手方向中央部(32)に吸湿制限加工32が施された木材からなる連結棒であるといえる。
【0024】
図3(a)(b)に示す連結棒30では,両端部分31,31を幅方向(図において左右方向)にのみ圧縮したが,破線矢印P1で示すように,奥行き方向にも圧縮することができる。
また,図3(a)(b)に示す連結棒30は角柱状のもであるが,図3(c)(d)に示すように,円柱状のものを用いることもできる。なお,図示はしないが断面楕円形状のものを用いることもできる。
図3(c)(d)に示す連結棒30は,円柱状の両端部分31,31を周方向に関して均一に圧縮したものであるが,周方向に関する圧縮率を変えることで断面楕円形とすることもできる。
【0025】
圧縮乾燥木材は放置しておくと周囲の水分(湿気)を吸収して元の太さ近くに戻る。したがって,連結棒30としては,その圧縮乾燥前の太さ(少なくとも両端部分31の太さ)が接合用穴の大きさより大きなものを用いる。なお,単なる乾燥木材では何年か後に水分(含水率)が平行状態(連結棒30とこれにより接合された木材(例えば10,20)との含水率が同じ)になったとき緩くなることが考えられ,抜けてしまうおそれがあるが,圧縮乾燥木材を使うことでその可能性を大幅に減らすことができる。
【0026】
接合用穴12,22および連結棒30の,対向面11,21と平行な断面形状は,図1(e)に示すように円形とする(連結棒30を円柱状にする)こともできるし,図1(f)に示すように楕円形とすることもできる。また,図1(g)に示すように四角形とする(連結棒30を角柱状にする)こともできる。
接合用穴12,22および連結棒30の,対向面と平行な断面形状を円形または楕円形とすることにより,連結棒30が膨張した際の接合用穴12,22における応力集中を軽減し,一対の木材10,20を破損しにくくすることができる。後述する実施の形態においても同様である。
【0027】
図4は,本発明に係る木材の接合構造の他の実施の形態を示す図で(a)〜(d)は接合工程例を示す要部断面図,(d)は同工程で得られた木材の接合構造の要部断面図,(e)(f)(g)はそれぞれ図(d)の部分省略底面図,(h)は作用説明図である。図4において,前述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0028】
この実施の形態の木材の接合構造は,複数の木材(図4では2枚の木材10,20)を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材10,20の対向面11,21に,該対向面11,21と垂直に相対向して設けられた,該対向面11,21から遠ざかるにしたがって対向面11,21と平行な面積が拡大する接合用穴12,22と,対をなす接合用穴12,22に,予め圧縮乾燥させられた状態で入れられて,両端31,31が前記対をなす接合用穴12,22内にて膨張する,木材からなる連結棒30とを備えている。
すなわち,この実施の形態が図1,図2に示した実施の形態と異なる点は,接合用穴12,22を,対向面11,21から遠ざかるにしたがって対向面11,21と平行な面積が拡大する穴とし,連結棒30の長手方向中央部(32)への吸湿制限加工32を不要とした点にあり,その他の点に変わりはない。
【0029】
このように構成すると,接合用穴12,22が,対向面11,21から遠ざかるにしたがって対向面と平行な面積が拡大しているので,連結棒30は,長手方向中央部に比べて両端部分31,31の方が膨張することとなる。そのため,接合用穴12,22から抜けにくくなる。
これによって,一対の木材10,20は,接着剤によらず連結棒30によって強固に接合されることとなる。
【0030】
なお,図2に示したと同様,この接合構造を対向面と垂直方向に連続させれば3つ以上の木材を強固に接合することもできる。
また,この実施の形態おいても連結棒30の中央部分に吸湿制限加工を施すことも可能である。
【0031】
対向面11,21から遠ざかるにしたがって大きくなる接合用穴12,22は,截頭円錐形とすることもできるし,截頭四角錐形とすることもできる。
このように構成すると,図4(h)に示すように,連結棒30の膨張が,接合用穴12,22の傾斜面に作用して,対をなす木材10,20の対向面11,21同士を圧接させる分力Fを発生させる。したがって一対の木材10,20がより強固に接合される。
【0032】
図5は,本発明に係る木材の接合構造のさらなる他の実施の形態を示す図で(a)〜(d)は接合工程例を示す要部断面図,(d)は同工程で得られた木材の接合構造の要部断面図,(e)(f)(g)はそれぞれ図(d)の部分省略底面図,(h)は作用説明図である。図5において,前述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0033】
この実施の形態の木材の接合構造は,複数の木材(図4では2枚の木材10,20)を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材10,20の対向面11,21に,該対向面11,21と垂直に相対向して設けられた,該対向面11,21から遠ざかるにしたがって対向面11,21と平行な面積が拡大し,かつ奥部が閉塞された接合用穴12,22と,対をなす接合用穴12,22に,両端31に楔34が途中まで打ち込まれた状態で入れられ,両端31が前記対をなす接合用穴11,21内に完全に挿入される過程で前記楔34が前記接合用穴12,22の奥壁12b,22bと当接することで完全に打ち込まれて両端31,31が膨張した,木材からなる連結棒30とを備えている。
【0034】
この接合構造によれば,相対向する一対の木材10,20の対向面11,21に相対向して設けられた,該対向面11,21から遠ざかるにしたがって前記対向面と平行な面積が拡大し,かつ奥部が閉塞されたた接合用穴12,22に,両端31,31に楔34が途中まで打ち込まれた状態で入れられた連結棒30の両端31,31は,その後,前記対をなす接合用穴12,22内に完全に挿入される過程で前記楔34が前記接合用穴12,22の奥壁12b,22bと当接することで完全に打ち込まれて膨張する。接合用穴12,22は,対向面11,21から遠ざかるにしたがって対向面と平行な面積が拡大しており,連結棒30は,長手方向中央部32(図5(d)参照)に比べて両端部分31,31の方が膨張するので,接合用穴12,22から抜けにくくなる。
これによって,一対の木材10,20は,接着剤によらず強固に接合されることとなる。
図5(h)に示すように,連結棒30の両端部分31,31の膨張は,接合用穴12,22の傾斜面に作用して,対をなす木材10,20の対向面11,21同士を圧接させる分力Fを発生させるから,一対の木材10,20はより強固に接合される。
【0035】
なお,この接合構造を対向面と垂直方向に連続させれば,図2に示したと同様3つ以上の木材を強固に接合することもできる。この実施の形態における連結棒30は圧縮乾燥させる必要はないが,圧縮乾燥させたものを用いることもできる。その場合,長手方向中央部分に吸湿制限加工を施すことも可能である。
楔34形状は,連結棒30の端部形状に合わせて採用することができ,図(e)(f)(g)に示すように,円錐形,楕円錐形,四角錐形等を採用することができる。三角錐とすることも可能である。
【0036】
図5(a)〜(d)に示す接合工程例について説明すると次の通りである。
図(a)に示すように,対向面11,21に相対向して設けられた接合用穴12,22を有する一対の木材10,20と,連結棒30と,その両端31,31に打ち込むべき楔34とを用意する。楔34は,連結棒30の端部31に対し予め途中まで打ち込んでおく。図(a)においては,連結棒30の両端部分31,31に対し,楔34をそれぞれ予め打ち込んだ状態を示しているが,その打ち込みタイミングは,連結棒30の端部31を接合用穴に挿入する前であればよい。また,そのうち込み程度は,連結棒30の端部31が接合用穴に挿入不能とはならない程度とする。
【0037】
図(b)に示すように,楔34を途中まで打ち込んだ状態の連結棒30の一端31を一方の木材の接合用穴(図示の場合,接合用穴12)に挿入し,図(c)に示すように,連結棒30を接合用穴12に完全に挿入する。この過程で,楔34の頭部が接合用穴12の奥壁12bに押圧され,楔34が連結棒30の一端31に完全に打ち込まれた状態となって,該一端31が膨張し,連結棒30は接合用穴12から抜けなくなる。なお,この際,上述したように他端(図では上端)31には必ずしも楔34を打ち込んでおく必要はない。
【0038】
その後,図(c)(d)に示すように,楔34を途中まで打ち込んだ他端31を他方の木材の接合用穴(図示の場合,接合用穴22)に挿入する。その過程で,楔34の頭部が接合用穴22の奥壁22bに押圧され,楔34が連結棒30の他端31に完全に打ち込まれた状態となって,該他端31が膨張し,連結棒30の両端31,31が接合用穴12,22から抜けなくなる。
【0039】
図6は本発明に係る木材の接合構造のさらなる他の実施の形態を示す図で(a)〜(g)は接合工程を示す要部断面図,(h)は作用説明図である。
この実施の形態の木材の接合構造が図4に示した実施の形態と異なる点は,接合用穴12,22を貫通穴とし,連結棒30の両端31に木ねじ36をねじ込むようにした点にあり,その他の点に変わりはない。木ねじ36は円錐形のものを用いるのが望ましい。
【0040】
図6においては,接合用穴12,22を,対向面11,21から遠ざかるにしたがって対向面11,21と平行な面積が拡大する穴とし,長手方向中央部(32)への吸湿制限加工32を施さない連結棒30を用いた場合の例を示しているが,長手方向中央部(32)への吸湿制限加工32を施した連結棒30(図1,図3参照)を用いた場合にも,木ねじ36をねじ込むことができる。その場合,接合用穴12,22は図1に示したと同様の穴とすることができる。
【0041】
木ねじ36をねじ込込んだ構成すると,連結棒30の中央部(32)に対する両端部分31の膨張がより一層大きくなる。したがって,一対の木材10,20が一層強固に接合される。特に,接合用穴12,22を截頭円錐形または截頭四角錐形とすると,接合用穴12,22の傾斜面に作用する,図(h)に示す木材10,20の対向面11,21同士を圧接させる分力Fが一層大きくなるので,一対の木材10,20がより一層強固に接合される。
接合用穴12,22は貫通穴であるので,木ねじ36の頭部に対して外側からの外力は作用しないが,楔とは異なり,木ねじ36にはネジ山があるので,上記分力Fの反力が作用しても,木ねじ36は抜けない(少なくとも著しく抜けにくい)。
【0042】
図6(a)〜(g)に示す接合工程例について説明すると次の通りである。
図(a)(b)に示すように,2枚の木材10,20を合わせ,それら木材10,20に図(c)に示すように接合用貫通穴12,22を形成する。
図(d)(e)に示すように,接合用貫通穴12,22に対し一方から連結棒30を挿入し,図(f)(g)に示すように連結棒30の両端31に木ねじ36をねじ込む。
【0043】
図7は本発明に係る木材の接合構造のさらに異なる実施の形態を示す図で(a)〜(g)は接合工程を示す要部断面図である。図8(a)〜(e)はさらなる変形例を示す接合工程図である。
図7に示す実施の形態の接合構造が,図6に示した実施の形態と主に異なる点は,一対の木材10,20を,他の木材60を介して接合した点にあり,その他の点に変わりはない。他の木材60は複数とすることも可能である。
【0044】
図7,図8においては,接合用穴12,22を,対向面11,21から遠ざかるにしたがって対向面11,21と平行な面積が拡大する穴とし,長手方向中央部(32)への吸湿制限加工32を施さない連結棒30を用いた場合の例を示しているが,長手方向中央部(32)への吸湿制限加工32を施した連結棒30(図1,図3参照)を用いた場合にも,木ねじ36をねじ込むことができる。その場合,接合用穴12,22は図1に示したと同様の穴とすることができる。
【0045】
図7(a)〜(g)に示す接合工程例について説明すると次の通りである。
図(a)(b)に示すように,2枚の木材10,20を,他の木材60を間に挟んで合わせ,それら木材10,60,20に図(c)に示すように接合用貫通穴12,62,22を形成する。
図(d)(e)に示すように,接合用貫通穴12,62,22に対し一方から連結棒30を挿入し,図(f)(g)に示すように連結棒30の両端31に木ねじ36をねじ込む。
【0046】
これによって木材10,60,20を連結棒30で接合した木材の接合構造体40が得られるが,図8(a)〜(e)に示すように,木材の接合構造体40の外面には,第2の木材(特許請求の範囲に記載の木材)としての外側板61,61を接合して,連結棒30の端部31を見えないようにすることができる。
【0047】
すなわち,図8(a)に示すように,木材10,20の外側面(接合面(対向面))に複数の第2接合用穴13,23を設け,図(b)(c)に示すように,第2接合用穴13,23に第2連結棒35を挿入する。一方,図(d)に示すように外側板61,61の内側面(接合面(対向面))には第3接合用穴63を設け,この第3接合用穴63に第2連結棒35を嵌め合わせる。この例においても,第2連結棒35として,長手方向中央部(32)への吸湿制限加工32を施した連結棒を用いることができ,その場合,接合用穴12,22は図1に示したと同様の穴とすることができる。
【0048】
以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく,本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。また,各実施の形態や変形例は適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
10,20,60 木材
11,21 対向面
12,22,63 接合用穴
30 連結棒
31 両端
34 楔
36 木ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木材を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材の対向面に,該対向面と垂直に相対向して設けられた接合用穴と,対をなす接合用穴に,予め圧縮乾燥させられかつ長手方向中央部に吸湿制限加工が施された状態で入れられて,両端が前記対をなす接合用穴内にて膨張した,木材からなる連結棒とを備えたことを特徴とする木材の接合構造。
【請求項2】
複数の木材を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材の対向面に,該対向面と垂直に相対向して設けられた,該対向面から遠ざかるにしたがって前記対向面と平行な面積が拡大する接合用穴と,対をなす接合用穴に,予め圧縮乾燥させられた状態で入れられて,両端が前記対をなす接合用穴内にて膨張した,木材からなる連結棒とを備えたことを特徴とする木材の接合構造。
【請求項3】
前記接合用穴を貫通穴とし,該穴の外側から前記連結棒の両端に木ねじをねじ込んだことを特徴とする請求項1または2記載の木材の接合構造。
【請求項4】
複数の木材を接合する構造であって,相対向する少なくとも一対の木材の対向面に,該対向面と垂直に相対向して設けられた,該対向面から遠ざかるにしたがって前記対向面と平行な面積が拡大し,かつ奥部が閉塞された接合用穴と,対をなす接合用穴に,両端に楔が途中まで打ち込まれた状態で入れられ,両端が前記対をなす接合用穴内に完全に挿入される過程で前記楔が前記接合用穴の奥壁と当接することで完全に打ち込まれて両端が膨張した,木材からなる連結棒とを備えたことを特徴とする木材の接合構造。
【請求項5】
前記接合用穴および連結棒の,前記対向面と平行な断面形状を円形または楕円形としたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の木材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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