説明

木材製品の製造方法

【課題】 成形後の大きな変形を抑制することができると共に、小寸の原木を選択することのできる木材製品の製造方法を提供する。
【解決手段】 原木1から材木2を製材する製材工程と、材木2を乾燥させる乾燥工程と、材木2を所望の形状に成形して木材製品8を形成する成形工程とを具備する木材製品の製造方法であって、材木は、木材製品の形状を基準として、乾燥工程によって生じる変形と相反する形状に製材されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材製品の製造方法に関するものであり、詳しくは、原木から木材製品を製造する木材製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、柱材や壁材等の建築用の資材等として、原木から製造される木材製品が使用される。この木材製品は、原木を、角柱形状、又は円柱形状等に製材してなる材木を乾燥させてこの材木に含まれる水分を除去した後に、所望の形状に成形することによって製造されるものである。
【0003】
ここで、木は、乾燥によって収縮、反り、及び歪み等の変形が生じる性質を有している。そのため、十分に乾燥されていない材木を成形して木材製品を製造した場合、成形後に乾燥が進行し、木材製品が変形してしまうおそれがある。したがって、材木を十分に乾燥させる必要がある。
【0004】
そして、材木を確実に乾燥させるために、材木を可能な限り小寸に、すなわち、木材製品として所望される形状に近い形状に製材することは行なわれている。この場合、材木の体積は必要最小限に抑えられるため、材木の乾燥効率を向上させることができる。
【0005】
さらに、この場合、材木の形状が小寸に設定されることから、材木を製材するための原木も、不必要に大寸のものを選択する必要はなく、木材製品として所望される形状に近い、小寸のものを選択することができる。
【0006】
上記従来技術は、一般的な事項であり、本出願人は、本出願時において、この従来技術を特定する文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように、材木は乾燥によって変形が生じる。そのため、材木を木材製品として所望される形状と近い形状に製材すると、材木は木材製品として所望する形状と大きく異なる形状に変形し、材木から所望の形状の木材製品を成形できなくなるといった問題を生じる。
【0008】
このため、従来では、材木を製材する際には、係る変形を見込んで、木材製品として所望する形状よりも大幅に大寸の形状(例えば、成形時の取代を8mm以上、場合によっては12mm以上と見込んだ形状)に製材せざるを得なかった。これにより、材木の不十分な乾燥により生じる成形後の木材製品の多大な変形を防止することができないおそれがあった。
【0009】
さらに、材木の形状が大寸になることより、この材木を製材するための原木は、木材製品にくらべ大幅に大寸の形状を有するものを選択する必要があり、小寸の原木を使用することができなかった。
【0010】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みて、成形後の大きな変形を抑制することができると共に、小寸の原木を選択することのできる木材製品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために本発明の採った手段は、
「原木から材木を製材する製材工程と、
前記材木を乾燥させる乾燥工程と、
前記材木を所望の形状に成形して木材製品を形成する成形工程とを具備する木材製品の製造方法であって、
前記材木は、前記木材製品の形状を基準として、前記乾燥工程によって生じる変形と相反する形状に製材されることを特徴とする木材製品の製造方法」
である。
【0012】
上記構成の木材製品の製造方法では、製材工程によって、木材製品の形状を基準として、乾燥の際に生じる変形と相反する形状を有する材木が製材される。この材木の形状は、乾燥の際に生じる変形を見込んで設定されたものである。例えば、乾燥工程後において、木材製品として所望する形状よりも一回り大寸(1〜3mm)の形状となるように、製材工程にて、材木を製材すればよい。
【0013】
このようにすることで、材木の外形寸法を、木材製品として所望する形状に近い寸法に製材できることになる。そして、これにより、材木の体積を必要最小限に抑えることが可能となり、材木の乾燥効率を向上させることができる。したがって、上記構成の木材製品の製造方法によれば、材木を十分に乾燥させることができ、もって、成形後の木材製品の大きな変形を抑制することができる。
【0014】
また、上記構成の木材製品の製造方法では、上述のように、材木を可能な限り小寸に製材することが可能となる。したがって、上記構成の木材製品によれば、材木を製材するための原木として、木材製品として所望される形状に近い、小寸のものを選択することができる。
【0015】
また、上記において、
「前記材木は、前記原木の芯部を通る溝部を有する形状に製材されるものであり、前記溝部は、前記乾燥工程によって生じる変形と相反する形状に形成されるものであることを特徴とする木材製品の製造方法」
としてもよい。
【0016】
上記構成の木材製品の製造方法では、製材工程によって、原木の芯部を通る深さを有する溝部が凹設される。これにより、乾燥させることが困難である芯部が切除かれるばかりでなく、溝部の内側面が開放されるため、この内側面から材木に含まれる水分が水蒸気として良好に放出される。よって、材木を効率的に乾燥させることができる。したがって、上記構成の木材製品の製造方法によれば、成形後の大きな変形をより確実に抑制することができる木材製品を製造することができる。
【0017】
また、上記構成の木材製品の製造方法では、材木が原木の芯部を通る溝部を有する形状に製材されるため、この溝部によって材木内部を大きく開放させることができ、乾燥ムラを生じにくくさせることができる。換言すれば、材木全体を均一に乾燥させることができる。
【0018】
ここで、芯部を通る溝部が凹設された材木の場合、乾燥によって溝部の対向する側面が互いに離間する方向に変形する。特に、十分な乾燥を行なえば行なうほど、溝部の形状が大幅に変形してしまう。
【0019】
しかし、上記構成の木材製品の製造方法では、材木に凹設される溝部が、そもそも、乾燥の際に生じる変形と相反する形状に形成されている。よって、乾燥後に大きな変形を生じても、この変形が、材木から最終的に木材製品に成形するにあたって、大きな支障となることはない。
【発明の効果】
【0020】
上述の通り、本発明によれば、成形後の大きな変形を抑制することができると共に、小寸の原木を選択することのできる木材製品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る木材製品の製造方法の実施形態の一例を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態においては、木材製品として所望する形状を、図1(c)に示すように、溝部4を有する形状であり、この溝部4における底部5と開口部6との幅寸法が同一寸法を有する形状であることとする。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、原木1から材木2を製材する(製材工程)。このとき、原木1の芯部3を通る溝部4が凹設される。そして、この溝部4は、底部5の幅寸法A1に比べ、開口部6の幅寸法B1が小さく設定されている。
【0023】
次に、材木2を人工乾燥させる(乾燥工程)。詳しくは、原木1の含水率(すなわち、材木の全乾重量に対する含有水分量を百分率にて表したもの)が60%以上、100%以下であるのに対し、材木2の含水率が、30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下になるまで乾燥を行なう。このとき、材木2は、図1(b)に示すように変形が生じ、溝部4の対向する側面7を形成する側壁部は互いに離間する方向に変形する。よって、製材工程において底部5よりも狭く形成されていた開口部6が拡開され、開口部6の幅寸法B2は、底部5の幅寸法A2に略一致する。なお、ここで、人工乾燥させるものを示したが、自然乾燥させるものであってもよい。また、溝部4の対向する側面7に生じる変形は、同一寸法で均等であることが望ましい。そのためには、材木2を製材する際には、材木2の断面形状を、芯部3を通る一本の線を対称線として線対称をなす形状に製材することが好適である。
【0024】
また、材木2の外形寸法は、木材製品8として所望される寸法に近い値で設定されている。これにより、材木2を十分に乾燥させることができ、木材製品8として成形した後の大きな変形を抑制することができる。
【0025】
さらに、材木2は、溝部4の内側面が開放される。これにより、溝部4の内側面から材木2に含まれる水分が水蒸気として良好に放出される。したがって、材木2の乾燥効率は向上し、木材製品8として成形した後の大きな変形をより確実に抑制することができる。
【0026】
また、この場合、材木2を製材するための原木1も、不必要に大寸のものを選択する必要はなく、木材製品8として所望される形状に近い、小寸のものを選択することができる。
【0027】
なお、溝部4における底部5の幅寸法A1については、木材製品8として所望される形状によるものであるが、大きくすると、溝部4の内側面が大きく開放され、材木2は乾燥効率が向上する点で好適であり、5mm以上、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上とするのがよい。一方、幅寸法A1の上限としては、特に限定されるものではないが、例えば、材木2の断面積に対する溝部4の占有面積の割合を少なく抑えられるという点では、幅寸法A1を小さくすることが好適であり、35mm以下、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは25mm以下とするのがよい。
【0028】
さらに、溝部4の深さ寸法E1に対して、底部5の幅寸法A1を大きく設定するほうが、溝部4の内側面が大きく開放される点で好適である。したがって、底部5の幅寸法A1は、深さ寸法E1に対して、10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上とするのがよい。一方、上限としては、特に限定されるものではないが、限られた大きさの原木1から、大面積の木材製品8を得ようとする場合には、溝部4における底部5の幅は小さいことが好ましい。よって、底部の幅寸法A1は、深さ寸法E1に対して、50%以下、好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下とするのが望ましい。
【0029】
また、乾燥しにくい芯部3は、大きく切除かれるほうが、材木2の乾燥が効率良く行なわれる点で好適である。したがって、溝部4の、芯部12からの深さ寸法F1は、5mm以上、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上とするのがよい。一方、上限としては、例えば、限られた大きさの原木1から大面積の木材製品8を得ようとする場合には、溝部4の深さ寸法は小さいことが好ましい。よって、芯部12からの深さ寸法F1は、30mm以下、好ましくは25mm以下、さらに好ましくは20mm以下とするのがよい。
【0030】
次に、図1(b)に示すように、材木2の外面を適宜削り取って、木材製品8を成形する(成形工程)。これにより、原木1から木材製品8を製造することができる。
【0031】
上述のように、材木2の溝部4における開口部6の幅寸法B2は、乾燥の際に生じる変形によって底部5の幅寸法A2に略一致している。ここで、本実施形態において所望する木材製品の形状は、前述のように、溝部4における底部5と開口部6との幅寸法が同一寸法を有する形状である。よって、材木2は木材製品8として所望する形状に近い形状になっている。したがって、成形工程において切除く取代を、1mm〜3mm程度の小さい値に設定することができる。取代が少なくなる分だけ、成形工程での作業性を向上させることができる。
【0032】
次に、本実施形態の木材製品8の製造方法について、図2に示す、木材製品18の製造方法との対比によって具体的に説明する。ここで、木材製品8、及び木材製品18は、共に直径が160mmである原木1,11から製造されるものとする。
【0033】
本実施形態の木材製品8の製造方法について説明する。まず、図1(a)に示すように、原木1から材木2を製材する。具体的には、外形が、縦寸法C1が124mm、横寸法D1が80mmとなるように製材する。さらに、一辺2aには、底部5の幅寸法A1を19mm、深さ寸法E1を79mm、芯部3からの深さ寸法F1を17mmとする溝部4を形成する。そして、溝部4の対向する側面7を、底部5に対して角度G=85°となるように傾斜させる。これにより、溝部4における開口部6の幅寸法B1は、底部5の幅寸法A1よりも狭く、6.5mm程度の幅となる。さらに、溝部4の対向する側面7を形成する側壁部の外側面においては、芯部3を通る中心線が交差する位置から角度I=5°となるように傾斜させる。
【0034】
そして、この材木2は、図1(b)に示すように、乾燥によって変形が生じる。特に、側面7を形成する側壁部は、芯部3を通る中心線と交差する位置にて変形する。ここで、材木2は、製材時に設けられた傾斜面が変形によって相殺され、略角柱形状となる。さらに、材木2の外形は、縦寸法C2が117mm、横寸法D2が76mmに収縮する。また、溝部4の対向する側面7を形成する側壁部は互いに離間する方向に変形するため、底部5の幅寸法A2、及び、開口部6の幅寸法B2は略一致し、19mm程度となる。
【0035】
そして、図1(c)に示すように、材木2を成形して木材製品8とする。このとき、上述のように、材木2の外形形状は略角柱形状となっているため、切除く取代を1.5mm以下に設定することができる。これにより、木材製品8の外形は、縦寸法C3は114mm、横寸法D3は73mmとなり、溝部4については、深さ寸法E3は75mmに、溝幅B3は20mmとなる。そしてこのとき、溝部4の対向する側面7を形成する側壁部の寸法Hはおよそ26.5mmとなる。
【0036】
次に、木材製品18の製造方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、原木11から材木14を製材する。具体的には、外形は、上述の材木2と同様に、縦寸法c1が124mm、横寸法d1が80mmとなるように製材する。さらに、一辺14aには、上述の材木2と同様に深さ寸法e1を79mm、芯部12からの深さ寸法f1を17mmとする溝部13を形成する。しかし、溝部13の幅寸法a1は19mmであり、開口部16から底部17まで同一寸法に凹設されている。
【0037】
そして、この材木14は、図2(b)に示すように、乾燥によって変形が生じる。このとき、材木14の外形は、縦寸法c2が117mm、横寸法d2が76mmに収縮する。また、溝部13の対向する側面15を形成する側壁部は、前述の材木2の変形(図1(b)参照)と同様に、芯部12を通る中心線Lと交差する位置にて変形が生じ、角度Gが175°程度になる。このため、開口部16は拡開し、幅寸法b2は30mm程度となる。一方、溝部13における底部17はほぼ変化なく、幅寸法a2は19mm程度に維持される。
【0038】
そして、図2(c)に示すように、材木14を成形して木材製品18とする。このとき、材木14の外形形状は、上述の材木2とは異なり、角柱形状から大きく変形しているため、切除く取代を3mm以上に設定する必要がある。よって、木材製品18の外形を、縦寸法c3は111mm以下に、横寸法d3は70mm以下に成形せざるを得ない。加えて、溝部13は、上述の材木2の溝部4とは異なり、開口部16が大きく拡開された形状となる。そのため、溝部13を拡開した開口部16の幅に合わせて成形しようとすると、幅寸法b3を40mm以上とせざるを得ない。さらに、深さ寸法e3は、上述のように、木材製品18の縦寸法c3を111mm以下に成形するに伴って、75mm以下となる。このとき、溝部13の対向する側面15を形成する側壁部の幅寸法hは15mm以下となり、上述の、木材製品8における側壁部の幅寸法Hよりも大幅に小寸となる。
【0039】
以上に示すように、本発明に係る木材製品の製造方法を採用することによって、同一寸法の原木から製造される木材製品18と比較して、木材製品8を大幅に大寸に成形することができる。すなわち、本発明に係る木材製品の製造方法によって、木材製品としての寸法に近い寸法の原木を使用することが可能になる。
【0040】
以上、本発明に係る一例を説明したが、本発明はこれに限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0041】
すなわち、本実施形態において、木材製品8として所望する形状として、原木1の芯部3を通る溝部4を有するものを例示したがこれに限定されるものではない。例えば、芯部を通らない溝部を有するもの、又は、溝部を有さないものであっても構わない。また、本実施形態において、材木2として略角柱形状を呈するものを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、円柱形状を呈するものであっても構わない。
【0042】
また、本実施形態の材木2に凹設される溝部4の形状として、断面略コの字状のものを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、V字状、又はU字状のものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る木材製品の製材方法を説明する説明図である。
【図2】木材製品の製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 原木
2a 一辺
2 材木
3 芯部
4 溝部
5 底部
6 開口部
7 側面
8 木材製品
11 原木
12 芯部
13 溝部
14a 一辺
14 材木
15 側面
16 開口部
17 底部
18 木材製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原木から材木を製材する製材工程と、
前記材木を乾燥させる乾燥工程と、
前記材木を所望の形状に成形して木材製品を形成する成形工程とを具備する木材製品の製造方法であって、
前記材木は、前記木材製品の形状を基準として、前記乾燥工程によって生じる変形と相反する形状に製材されることを特徴とする木材製品の製造方法。
【請求項2】
前記材木は、前記原木の芯部を通る溝部を有する形状に製材されるものであり、前記溝部は、前記乾燥工程によって生じる変形と相反する形状に形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の木材製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−35610(P2006−35610A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218078(P2004−218078)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(300076541)親和木材工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】