説明

木綿豆腐の成型器具

【課題】
本発明の課題は、食感が良く、適度な硬度を有する豆腐を容易に取り出せ、歩止まりのよい、成型器具を提供することにある。
【解決手段】
豆腐を離水し、凝固し、成型する成型型箱と、該型箱を収容し、豆腐からの離水を該型箱を介して溜めるトレーであって、該離水により、豆腐の底面、または豆腐の底面および側面と前記型箱との間に水の層を形成する前記トレーとを具備することを特徴とする、前記成型器具

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木綿豆腐を成型型箱から容易に取り出すための成型器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な木綿豆腐製造の場合、水に漬けて膨らませた大豆を、水と混ぜて擦り、生呉を作り、これを蒸煮釜で煮て煮呉を得る。この煮呉を絞り、豆乳とおからに分ける。得られた豆乳とにがり(凝固剤)を混ぜて凝固させ、蒸して熟成させることにより凝固を促す。木綿の布を張った脱水孔を有する型箱に、半凝固した豆腐を崩して盛り込み、機械でプレスし、過剰な水分を離水して成型する。この後豆腐をカットし包装される。
【0003】
従来の木綿の布を用いる成形方法では、布を型箱に敷く工程、凝固した後に布を豆腐から剥がす工程、布を洗う工程などは自動化が容易でないため、人の手によって行われており、時間や手間がかかり、そのために製造コストが高くなるなどの問題を有していた。
【0004】
この問題を克服するために、布の代わりに多数の微小孔を有する型箱を使用する方法(特許文献1)が提案されている。しかしながら、この種の型箱を使用した場合、豆腐が微小孔に食い込み、豆腐の表面に肌荒れが生じたり、離型時に剥離が生じたりするなどの問題があった。この問題を克服するため、凝固剤(にがりなど)を大量に添加することなどで、豆腐を固くし、離型時の剥離によるロスを防止することなどが考えられるが、その場合豆腐の硬度が高く、食感が悪いものとなってしまう。
【0005】
したがって、柔らかく食感のよい豆腐を得るためには、従来の布による成型方法を頼るより外なかったが、布を用いた場合であっても、豆腐が布に付着し、豆腐の表面が崩れることがあった。
【特許文献1】特開2001−69937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記のような問題を解決し、食感が良く、適度な硬度を有する豆腐を容易に取り出せ、歩止まりのよい、成型器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題の解決のため、鋭意研究を重ねる中で、半凝固させた豆腐を盛り込んだ成型型箱において、豆腐を離水し、凝固し、成型する際に、豆腐の底面、または豆腐の底面および側面と、前記型箱との間に、豆腐からの離水による水の層を形成することにより、同課題を解決しうることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、木綿豆腐の成型器具であって、豆腐を離水し、凝固し、成型する成型型箱と、該型箱を収容し、豆腐からの離水を該型箱を介して溜めることにより、該離水により、豆腐の底面、または豆腐の底面および側面と前記型箱との間に水の層を形成するためのトレーとを具備することを特徴とする、成型器具に関する。
【0009】
また本発明は、成型型箱が、多数の微小孔を底面または底面および側面に有する内箱と、脱水孔を底面または底面および側面に有する外箱との二重構造であることを特徴とする、前記成型器具に関する。
【0010】
さらに本発明は、成型型箱とトレーとの間に隔離部材を設けることを特徴とする、前記成型器具に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記の構成を採用することにより、プレス工程において、豆腐の底面、または豆腐の底面および側面と成型型箱との間に、豆腐からの離水による水の層を形成することにより、離型が容易になるので、剥離によるロスを低減することができる。
【0012】
とくに、従来の製造方法・製造器具では製造が困難であった、柔らかく、食感の良い木綿豆腐の製造において、本発明の成型器具を用いることにより安価で、簡便で低ロス率の製造を可能とし、極めて経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の成型器具は、豆腐を離水し、凝固し、成型する成型型箱と、該型箱を収容し、豆腐からの離水を該型箱を介して溜めることにより、該離水により、豆腐の底面、または豆腐の底面および側面と前記型箱との間に水の層を形成するためのトレーとを具備することによって、豆腐の成型型箱から離型を容易にする。本発明にかかる成型器具を用いた木綿豆腐の製造方法としては、成型型箱からの豆腐の離型の前に、豆腐の底面、または豆腐の底面および側面に離水による水の層を形成すること以外は、通常行われている方法を用いて良い。
ここでいう半凝固とは、豆乳に凝固剤を入れ凝固させた後、崩したものをいい、凝固剤の種類や、凝固の程度については、特に限定されない。
【0014】
以下に本発明で用いられる各部材について説明する。
本発明におけるトレーは、豆腐からの離水を型箱を介して溜めて、離水により、豆腐の底面、または豆腐の底面および側面と前記型箱との間に水の層を形成するトレーであればその材質を問わないが、ステンレス、チタン、アルミニウム、鉄などの金属製のものであっても、ニューライト、ジュラコン樹脂などの合成樹脂製など非金属製のものであってもよい。とくに、強度、加工性、経済性などの観点から、ステンレス製のものが好ましい。本発明のトレーの高さは、とくに限定されないが、好ましくは1〜15cmであり、特に好ましくは、1〜5cmである。またトレーの高さが高ければ、豆腐からの離水を全て溜めることができるので、生産ラインを離水で汚すことがなく、より衛生的な環境で豆腐を製造することができる。また、トレーの高さが低い場合であっても、上からの離水のオーバーフローによる広範囲におよぶ製造ラインの汚れを防ぐために、ドレン口を設けることにより、ラインの汚れを最小限にすることができる。ドレン口を設ける位置や、栓の開閉により、適宜排水量を調節することができる。
【0015】
さらに本発明におけるトレーは、成型型箱を収容するように配置されるものであれば形状を問わない。またトレーの洗浄に際しては手洗いによって行ってもよいが、自動洗浄を可能にするようにトレーを配置しておいてもよい。
【0016】
本発明における成型型箱は、豆腐を離水し、凝固し、成型する型箱であればよく、多数の微小孔を底面または底面および側面に有する箱、多数の微小孔を底面または底面および側面に有する内箱と、脱水孔を底面または底面および側面に有する外箱との二重構造であるもの、濾布と、脱水孔を底面または底面および側面に有する外箱との二重構造であるものが好ましいが、これらに限定されない。特に好ましくは、多数の微小孔を底面または底面および側面に有する内箱と、脱水孔を底面または底面および側面に有する外箱との二重構造である成型型箱である。
【0017】
本発明における多数の微小孔を底面または底面および側面に有する箱および内箱は、豆腐を離水し、凝固し、成型する型箱であればその材質を問わないが、ステンレス、チタン、アルミニウム、鉄などの金属製のものであり、ステンレス製のものが好ましい。該箱に設ける孔の形状は、特に限定されないが、円形、楕円形、半円形などの曲線を含む形状であってもよく、また、三角形、四角形などの多角形、とくに正多角形であってもよいが、とくに好ましくは、円形である。孔の形状が円形の場合、孔の直径は適宜設計できるが、孔の直径は、排水性・保持性の面から0.1mm〜5mm程度が好ましく、より好ましくは0.1mm〜2mm、さらに好ましくは0.5mm〜0.8mmであり、ピッチは、0.1mm〜10mm程度が好ましく、より好ましくは0.1mm〜1mmである。該微小孔は、豆腐を保持し、豆腐からの離水を排出する孔であればよく、パンチング加工、レーザー加工などで設けられる。
【0018】
本発明における脱水孔を有する外箱は、離水を排出し、濾布または内箱を強化する型箱であればよく、ステンレス、チタン、アルミニウム、鉄などの金属製のものであっても、ニューライト、ジュラコン樹脂などの合成樹脂製など非金属製のものであってもよい。該外箱に設ける脱水孔の形状は、特に限定されないが、円形、楕円形、半円形などの曲線を含む形状であってもよく、また、三角形、四角形などの多角形、とくに正多角形であってもよいが、とくに好ましくは、円形である。孔の形状が円形の場合、孔の直径は適宜設計できるが、孔の直径は、排水性の面から1mm〜20mm程度が好ましく、より好ましくは5mm〜10mm、さらに好ましくは8mmであり、ピッチは、5mm〜20mm程度が好ましく、より好ましくは10mm〜15mmである。
【0019】
本発明における濾布は、離水を排出できれば特に限定されないが、木綿布、フッ素樹脂製織布、ポリプロピレン製織布、ナイロン製織布、その他の化学繊維織布などが挙げられる。また、濾布は洗浄され再利用されることから、柔軟性があり、酸性やアルカリ性の薬品への耐性があるものが好ましく、豆腐の仕上がりの外観などを考慮すると、木綿布がとりわけ好ましい。
【0020】
本発明における隔離部材は、成型型箱および豆腐の重さを支える強度があれば特に限定されないが、ステンレス、チタン、アルミニウム、鉄などの金属製のものであって、好ましくはステンレス製である。隔離部材の形状は、特に限定されないが、直方体、円柱、半円柱の形状であって、安定性および型箱と接する面積が小さい点から、好ましくは半円柱である。
【0021】
以下、本発明に用いられる型箱の一態様について、図面を用いて説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の成型型箱とトレーを有する成型器具の一態様の分解斜視図を示す。ここで成型型箱5は、底面または、底面および側面の面全体に複数の微小孔6を有する内箱を、底面または、底面および側面の面全体に複数の排水孔7を有する外箱に収容した成型型箱5である。微小孔6および排水孔7は、規則的に配置されていても不規則に配置されていても良い。
【0023】
ここでトレー3は、隔離部材4を有する。隔離部材4は、規則的に配置されていても不規則に配置されていても良い。別態様においては、隔離部材4は成型型箱に具備されていても良い。
【0024】
図2は、図1で示された成型型箱5とトレー3を組み合わせてなる成型器具内に、離水、凝固、成型された、豆腐9を有し、離水10が成型型箱5と豆腐9の間に形成された、成型器具の断面図を示す。
【0025】
ここでトレー3は、ドレン口11を有する。ドレン口11は、離水を必要分だけ排水できる位置に適宜配置される。別形態においては、ドレン口11に栓を設け、離水全てを排水することもできるようにドレン口11を具備しても良い。
【0026】
以下に本発明の成型器具を用いた豆腐の製造について、実施例を示して説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
温豆乳とにがりとを容積比19.9:0.16で混合して調製した半凝固状態の豆腐を、スチーム庫内で熟成した。
高さ2cmのトレー内に配置された、底面の面全体に直径0.6mmの孔がピッチ0.5mmで複数設けられ、側面の面全体に直径0.6mmの孔がピッチ0.5mmで複数設けられたステンレス製内箱と、底面の面全体に直径4.0mmの孔がピッチ6.0mmで複数設けられ、側面の面全体に直径8.0mmの孔がピッチ12.0mmで複数設けられたステンレス製外箱との二重構造である成型型箱に、該豆腐を崩して盛り込んだ。プレス機を用いて、該成型型箱内の豆腐を離水、凝固、成型し豆腐を製造した。
【0028】
(比較例1)
実施例1と同様の半凝固状態の豆腐を、実施例1と同様の内箱と外箱との二重構造である成型型箱に盛り込み、トレーを用いず、豆腐からの離水を排水する方法で豆腐を製造した。
【0029】
(実施例2)
実施例1と同様の半凝固状態の豆腐を、木綿の布と、実施例1と同様の外箱との二重構造である成型型箱に盛り込み、さらに該型箱をトレーに収納し、豆腐からの離水をトレーに溜める方法で、豆腐を製造した。
【0030】
(比較例2)
実施例2と同様の半凝固豆腐を、実施例2と同様の木綿の布と外箱との二重構造である成型型箱に盛り込み、トレーを用いず、豆腐からの離水を排水する方法で豆腐を製造した。
【0031】
それぞれの方法で製造された豆腐を取り出し、ロス率を調べた。ここでロスとは、1cm×1cm以上もしくは深さ5mm以上の穴あき、1.5cm×4cm以上の剥離、1.5cm以上のヒビ・傷、または7mm以上の高さのロスを言い、ロス率とは、ロスを生じた豆腐の丁数/製造した豆腐の丁数×100%である。結果を表1に示す。
【0032】
また、レオメーター(不動工業株式会社)を用いてそれぞれの豆腐の硬度を計測した。縦6cm×横6cm×厚さ1.5cmにカットした豆腐を容器にのせ、プラグ(直径4cmφ×厚さ4mm)を具備したレオメーターを用いて硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示される結果から明らかなように、トレーを用いることによって、柔らかく食感のよい豆腐に適した低い硬度を有する豆腐を、より低いロス率で製造することができた。
【0035】
さらに、実施例1および比較例2で製造された豆腐に関して、官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
上記表2における、基準を表3に示す。
【表3】

【0038】
表2に示される結果から明確なように、従来から用いられている木綿布および外箱を用いて製造した豆腐と、本発明の成型器具を用いて製造した豆腐の品質は、外観、硬さ・食感、および風味の観点において、同等の評価を得た。
さらに、既に述べたように、本発明の成型器具を用いることにより、木綿布を用いた豆腐と同等またはより低い硬度を有する豆腐を、同等またはより低いロス率で製造することができる。
【0039】
従って、本発明は、従来の布による成型方法を頼るより外なかった、柔らかく食感のよい豆腐を、より低いロス率で製造できる成型器具を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の豆腐の成型器具によれば、豆腐を凝固後に型箱から取り出す際、豆腐が型箱に残存することがなくきれいに取り出すことができる。また、濾布の代わりに、多孔性箱を使用して、柔らかい豆腐を製造することができ、布張りに必要な時間を大幅に短縮することができ、布すすぎの工程を省略することができるので、作業負担が軽減され、生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の成型器具の一態様を示す斜視図である。
【図2】本発明の成型器具の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 内箱
2 外箱
3 トレー
4 隔離部材
5 成型型箱
6 微小孔
7 排水孔
8 成型器具
9 豆腐
10 離水
11 ドレン口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木綿豆腐の成型器具であって、豆腐を離水し、凝固し、成型する成型型箱と、該型箱を収容し、豆腐からの離水を該型箱を介して溜めるトレーであって、該離水により、豆腐の底面、または豆腐の底面および側面と前記型箱との間に水の層を形成する前記トレーとを具備することを特徴とする、前記成型器具。
【請求項2】
成型型箱が、多数の微小孔を底面または底面および側面に有する内箱と、脱水孔を底面または底面および側面に有する外箱との二重構造であることを特徴とする、請求項1に記載の成型器具。
【請求項3】
成型型箱とトレーとの間に離水を溜めるための隔離部材を具備することを特徴とする、請求項1または2に記載の成型器具。

【図1】
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【図2】
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