説明

木質ペレット、その製造方法及び愛玩動物用トイレ

【課題】愛玩動物のトイレT等に用いる木質ペレットAの消臭効果を高める。
【解決手段】針葉樹における木部の粉砕物だけでなく、その木部の粉砕物に針葉樹の枝葉部の粉砕物を混合し、その混合物を水分の吸収によって自己崩壊するようにペレタイザーB1,B2により成形してペレットAとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌効果及び消臭効果を有する木質ペレット、その製造方法、ペレットにより愛玩動物の排泄物の消臭を行うための愛玩動物用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、猫や小動物等の愛玩動物の排泄物の処理には、猫砂等の動物用排泄物処理材が使用されている。この動物用排泄物処理材としては、ベントナイト、ゼオライト等の鉱物製物質やパルプ等の植物繊維製物質を主原料として造粒、固形化したものや、砂等の粒状物が使用されている。
【0003】
このうち、鉱物製物質を主原料とする動物用排泄物処理材は不燃であるため、一般家庭では、不燃性のごみとして処理するしか手だてはない。また、植物繊維製物質を主原料とする動物用排泄物処理材は、可燃性ごみとして処理できるが、コストが高い上、資源の無駄となる難がある。
【0004】
また、鉱物製物質や植物繊維製物質は、それ自体に抗菌能力や消臭能力が備わっていないために、別途抗菌処理を施したり、消臭剤を混入したりしなければならない。
【0005】
そのため、従来、資源の有効活用の観点から、例えば特許文献1に示されるように、抗菌能力の高い針葉樹のおが屑からなる挽素材を加熱圧縮してペレット状にした動物用排泄物処理材としてのペットトイレ用木質ペレット(猫のトイレ砂)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3049253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に示されるものでは、抗菌能力はあるものの、樹幹(木部)を粉砕して成形しているので、消臭効果が弱く、最初に排泄物の付着や吸収があった時点から廃棄処理までの時間が長くなると、その間に悪臭を放って不衛生になってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、愛玩動物のトイレ等に用いられる木質ペレットの組成に改良を加えることにより、その木質ペレットの消臭効果を高めようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、針葉樹の木部の粉砕物だけでなく、その木部粉砕物に加え針葉樹の葉部の粉砕物をも混合して成形することで、その葉部により消臭効果を高めるようにした。この場合、粉砕物として枝葉部(葉の付いた枝)の粉砕物を使用するときは、そのうちの枝部の粉砕物を木部の粉砕物と同じものとみなす。
【0010】
具体的には、請求項1の発明の木質ペレットは、針葉樹の木部の粉砕物と、針葉樹の葉部の粉砕物とが均一に混合され、かつ水分の吸収によって自己崩壊するように成形されてなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明の木質ペレットは、針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の枝葉部の粉砕物2.5〜100重量部とが均一に混合され、かつ水分の吸収によって自己崩壊するように成形されてなることを特徴とする。この針葉樹の木部の粉砕物100重量部に対し、枝葉部の粉砕物が2.5重量部未満であると消臭性能が弱くなる一方、100重量部を越えると、高価となるだけなので2.5〜100重量部が好ましい。
【0012】
これら請求項1又は2の発明の場合、針葉樹を木部と枝部と葉部とに分けて、木部と枝部をあわせて木部の粉砕物とし、該木部の粉砕物に所定量の葉部の粉砕物を混合するようにしてもよい。また、針葉樹の木部の粉砕物に、所定量の針葉樹の枝葉部の粉砕物を混合するようにしてもよい。この場合、枝葉部の粉砕後に20〜50mmメッシュ程度の荒い網で粗ふるいをかけた後に、3〜10mm程度のふるいをかけることで、枝部を選択的に除去し、乾燥重量で20〜70%程度の葉部を含む、細かい葉部(枝部の粉砕物を含む)の粉砕物を得ることができる。
【0013】
これら請求項1及び2の発明では、ペレットは針葉樹における木部の粉砕物と葉部の粉砕物とが均一に混合されて成形されたものであるので、針葉樹の木部の消臭効果に葉部の著しい消臭効果が加わり、特にアンモニアに対する消臭効果が顕著となり、ペレットの抗菌性能及び消臭性能が向上する。
【0014】
また、ペレットは水分の吸収によって自己崩壊するので、その自己崩壊に伴い、混合されている針葉樹葉部の粉砕物が新たに露出するようになり、その露出した葉部の粉砕物によって効率的でかつ持続的な消臭を期待することができる。
【0015】
さらに、ペレットは、天然成分である針葉樹の木部及び葉部を主原料としているため、可燃性の廃棄物として処理できて廃棄上の問題もなく、環境に害を持たらさない。また、ペレットの混合材料となる針葉樹の葉部又は枝葉部は枝打ちされ、不要な林地残材として林地に放棄される場合が多いので、その林地残材の有効活用に貢献することができる。
【0016】
請求項3の発明の愛玩動物用トイレは、請求項1又は2の木質ペレットが容器内底部に敷き詰められていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明の愛玩動物用トイレは、請求項1又は2の木質ペレットが、非自己崩壊状態では通過せずに自己崩壊状態で通過する大きさの網目状開口を有する網状部材の上に敷き詰められていることを特徴とする。
【0018】
これら請求項3及び4の発明では、ペレットにおける針葉樹の木部及び葉部の消臭効果により、抗菌性能及び消臭性能の高い愛玩動物用トイレが得られる。そのため、人間と愛玩動物とが共有する住空間において、愛玩動物の糞尿臭気を長期に亘り効果的に消臭して、快適な住空間を提供できる。特に、請求項4の発明のように、木質ペレットが網状部材上に敷き詰められていると、そのペレットが愛玩動物の糞尿による水分の吸収により自己崩壊したときに、その自己崩壊したペレットが網状部材を通過して落下し、新たな針葉樹葉部の粉砕物が露出するようになり、その粉砕物により効率的な消臭を期待することができる。また、この水分を吸収して自己崩壊したペレットは元の粉砕物となって網状部材の下側へ落ちて行くため、ペットシーツ等が不要で廃棄が容易となる。
【0019】
請求項5の発明の木質ペレットの製造方法は、針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の葉部の粉砕物0.5〜30重量部とを均一に混合させて、その混合物を、成形直後のペレット表面温度が75〜120℃になるようにリングダイ方式又はフラットダイ方式により押出成形することを特徴とする。
【0020】
この請求項5の発明では、針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の葉部の粉砕物0.5〜30重量部とが均一に混合されて混合物が生成され、その混合物がリングダイ方式又はフラットダイ方式により押出成形されて木質ペレットが得られる。このことで、抗菌性能及び消臭性能の高い木質ペレットが確実かつ容易に得られる。上記成形直後のペレット表面温度が75℃に満たない場合には、押出成形後に成形物が得られなくなる一方、120℃を越えると、押出成形物が焦げて外観が悪くなる可能性が高くなるので、75〜120℃が望ましい。
【0021】
請求項6の発明では、請求項5の木質ペレットの製造方法において、針葉樹の葉部の粉砕物として、送風乾燥により含水率8〜30%に乾燥させた粉砕物を使用することを特徴とする。
【0022】
この請求項6の発明では、送風乾燥された葉部が使用されることで、葉部に含まれる著しい消臭効果を発揮する揮発成分の揮発が最小限で済み、より効果的な消臭効果を発揮することができる。上記送風乾燥は常温又は低温で行われる。常温の送風乾燥とは、送風機のみで送風乾燥することであり、夏季と冬季で温度雰囲気が異なるため、風量や通風時間を調整して所望の含水率の粉砕物が得られるように乾燥条件を調整する。一方、低温の送風乾燥とは、15〜100℃程度に温度調整した通風装置で乾燥させることをいう。この場合は、年間を通じて安定した含水率の粉砕物が得られる。いずれの場合も、含水率8〜30%程度に乾燥させればよい。
【0023】
請求項7の発明の木質ペレットの製造方法は、針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の枝葉部の粉砕物2.5〜100重量部とを均一に混合させて、その混合物を、成形直後のペレット表面温度が75〜120℃になるようにリングダイ方式又はフラットダイ方式により押出成形することを特徴とする。
【0024】
この請求項7の発明では、原料として針葉樹の枝葉部の粉砕物を使用することにより、枝打ち後の、通常は林地残材として放置される枝葉部を有効利用でき、環境への配慮として非常に有用である。
【0025】
請求項8の発明では、請求項7の木質ペレットの製造方法において、針葉樹の枝葉部の粉砕物として、送風乾燥により含水率8〜30%に乾燥させた粉砕物を使用することを特徴とする。
【0026】
この請求項8の発明では、送風乾燥された枝葉部の粉砕物が使用されることで、葉部に含まれる著しい消臭効果を発揮する揮発成分の揮発が最小限で済み、より効果的な消臭効果を発揮することができる。送風乾燥は常温又は低温で行われる。上記の如く、常温とは、送風機のみで送風乾燥することであり、夏季と冬季で温度雰囲気が異なるため、風量や通風時間を調整して所望の含水率の粉砕物が得られるように乾燥条件を調整する。低温とは、15〜100℃程度に温度調整した通風装置で乾燥させることをいう。この場合は、年間を通じて安定した含水率の粉砕物が得られる。いずれの場合も、含水率8〜30%程度に乾燥させればよい。
【0027】
請求項9の発明では、請求項5〜8のいずれか1つの木質ペレットの製造方法において、成形直後のペレット表面温度が75〜120℃になるように、混合物に予め加水し、押出成形することを特徴とする。
【0028】
この請求項9の発明では、混合物に加水しながら成形することとなり、成形直後のペレット温度を安定して75〜120℃に維持することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、請求項1の発明では、木質ペレットは、針葉樹の木部及び葉部の各粉砕物が均一に混合されかつ水分の吸収によって自己崩壊するように成形されるものとした。また、請求項2の発明では、木質ペレットは、木部の粉砕物100重量部と枝葉部の粉砕物2.5〜100重量部とが混合されたものとした。これらの発明によると、針葉樹の木部及び葉部の消臭効果が相乗的に得られ、ペレットの抗菌性能及び消臭性能が向上するとともに、ペレットの水分吸収による自己崩壊に伴い葉部の粉砕物が新たに露出して効率的で持続的な消臭を期待することができる。また、ペレットを可燃性の廃棄物として処理できるとともに、ペレットの混合材料となる針葉樹の葉部または枝葉部等の林地残材を有効活用でき、延いては林産業の維持発展に貢献することができる。
【0030】
請求項3の発明の愛玩動物用トイレでは、上記木質ペレットを容器内底部に敷き詰めるようにした。また、請求項4の発明の愛玩動物用トイレでは、木質ペレットを、自己崩壊前には通過せずに自己崩壊後に通過する大きさの網目状開口を有する網状部材の上に敷き詰めるようにした。これらの発明によると、ペレットにおける針葉樹の木部及び葉部の消臭効果により、抗菌性能及び消臭性能の高い愛玩動物用トイレが得られ、人間と愛玩動物とが共有する快適な住空間が安定して得られる。特に、請求項4の発明によると、木質ペレットが愛玩動物の糞尿による水分の吸収により自己崩壊したときに、その自己崩壊した木質ペレットが網状部材を通過して落下し、新たな葉部の粉砕物が露出するようになり、その粉砕物により効率的な消臭を期待できるとともに、この水分を吸収して自己崩壊したペレットは元の粉砕物となり、ペットシーツ等が不要で廃棄が容易となる。
【0031】
請求項5の発明の木質ペレットの製造方法によると、針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の葉部の粉砕物0.5〜30重量部とを均一に混合させて、その混合物を、成形直後のペレット表面温度が75〜120℃になるようにリングダイ方式又はフラットダイ方式により押出成形することにより、抗菌性能及び消臭性能の高い木質ペレットが確実かつ容易に得られる。
【0032】
請求項6の発明の木質ペレットの製造方法によると、請求項5の針葉樹の葉部の粉砕物として、送風乾燥により含水率8〜30%に乾燥させた粉砕物を使用するので、より消臭効果の期待できる木質ペレットを提供することができる。
【0033】
請求項7の発明の木質ペレットの製造方法によると、針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の枝葉部の粉砕物2.5〜100重量部とを均一に混合させて、その混合物を、成形直後のペレット表面温度が75〜120℃になるようにリングダイ方式又はフラットダイ方式により押出成形するので、林地残材を有効活用できるだけでなく、抗菌性能及び消臭性能の高い木質ペレットが確実かつ容易に得られる。
【0034】
請求項8の発明の木質ペレットの製造方法によると、請求項7の針葉樹の枝葉部の粉砕物として、送風乾燥により含水率8〜30%に乾燥させた粉砕物を使用するので、より消臭効果の期待できる木質ペレットを提供することができる。
【0035】
請求項9の発明の木質ペレットの製造方法によると、混合物に予め加水して、押出成型することにより、成形直後のペレット温度を安定して75〜120℃に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る木質ペレットを示す図である。
【図2】図2は愛玩動物用トイレの概略断面図である。
【図3】図3は木質ペレットの製造工程を示す図である。
【図4】図4はペレットの加圧成形工程で使用される2種類のペレタイザーを模式的に示す図である。
【図5】図5は木質ペレットの実施例の物性を比較例と共に示す図である。
【図6】図6は木質ペレットの実施例のアンモニア消臭効果を比較例と共に示す図である。
【図7】図7は木質ペレットにおける針葉樹の葉部の混入割合によるアンモニア消臭効果を示す図である。
【図8】図8はヒノキの主枝から枝葉を得るときの状態を概略的に示す図である。
【図9】図9は枝葉粉砕物の混合によるアンモニア消臭効果を比較例と共に示す図である。
【図10】図10はペレット崩壊性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0038】
図1において、A,A,…は本発明の実施形態に係る木質ペレット(以下、単にペレットともいうことがある)であって、このペレットAは、後述するように愛玩動物用トイレT等に用いられる。そのため、ペレットAは、愛玩動物の排泄行為時の飛び散りが少なくかつその爪等に挟まることのないように、例えば外径(直径)が4〜8mm程度、長さが3〜30mm程度の円柱状のものとされている。
【0039】
上記ペレットAは、針葉樹の木部の粉砕物と、針葉樹の葉部の粉砕物とが均一に混合されて加圧成形されてなるもので、木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の枝葉部の粉砕物2.5〜100重量部とが均一に混合されていることが望ましい。
【0040】
この方法としては、針葉樹を木部と枝部と葉部とに分けて、木部と枝部をあわせて木部の粉砕物とし、該木部の粉砕物に所定量の葉部の粉砕物を混合するようにしてもよい。また、針葉樹の木部の粉砕物に、所定量の針葉樹の枝葉部の粉砕物を混合するようにしてもよい。より好ましくは、林地残材の有効利用の観点から、枝葉部の粉砕物を使用するのが好ましい。
【0041】
このとき、特に枝葉部を粉砕する場合は、粉砕機としては、例えばカッターミル、ロータリーミルやハンマーミル等が挙げられるが、好ましくは、枝部が粉砕され難く、葉部が粉砕され易いハンマーミルが好ましい。例えば、コマツ社製リフォレを使用する。
【0042】
針葉樹の木部の粉砕物100重量部に対し、枝葉部の粉砕物が2.5重量部未満では、消臭性能が弱くなる、一方、100重量部を越えると高価になるため、現実的でない。
【0043】
上記ペレットAは、水分の吸収によって自己崩壊するように加圧成形されている。この自己崩壊とは、ペレットAが水分を吸収して膨張することで、ペレットAの円柱形状が崩れて粉砕物に戻る(粉化する)ことをいう。
【0044】
上記木部及び葉部の粉砕物となる針葉樹としてはスギ科、ヒノキ科、マツ科等があり、揮発性成分である精油(フィトンチッド)の分泌が良好なものがよく、特にトドマツ、スギ、ヒノキが好ましい。また、針葉樹の葉部は、針葉樹そのままから採取してもよいが、林地残材として林地に放棄される枝葉部をそのまま利用することもできる。また、木部は、針葉樹の林地残材、製材廃材や古材等を利用することができるので好ましい。
【0045】
図2は本発明の実施形態に係る愛玩動物用トイレTを概略的に示し、このトイレTは、上方に開放された例えば矩形箱状の容器1と、この容器1内に収容され、上方に開放された例えば矩形箱状の網状部材2とを備えている。この網状部材2の上端開口部には容器1の上端開口部に係止可能なフランジ部2aが形成されており、このフランジ部2aを容器1の上端開口部に係止させることで、網状部材2を容器1内に網状部材2の底部2bが容器1の底部1aと間隔をあけた状態で収容されている。
【0046】
上記網状部材2の底部2bには、例えば矩形状の多数の網目状開口3,3,…が貫通形成されている。この網目状開口3の大きさは、上記木質ペレットAが自己崩壊しない状態では該木質ペレットAを通過させないが、木質ペレットAが自己崩壊して粉化すると、その粉砕物を通過させる大きさとされている。そして、この網状部材2の底部2b上に、上記自己崩壊していない多数の木質ペレットA,A,…が敷き詰められている。
【0047】
次に、上記木質ペレットAの製造方法について説明する。この製造方法では、図3に示すように、葉粉砕工程P1において、針葉樹の葉部、例えば枝葉残材を粉砕し、次の葉ふるい工程P2で、その粉砕物をふるい(篩)にかけて大きさ(長さ)40mmメッシュの網目を通過しない大きさの枝葉の葉粉砕物を除去した後、さらに4mmメッシュの網目を通過しない大きさの枝葉の粉砕物を残し、これを乾燥工程P3において、枝葉の葉粉砕物を含水率10〜40%に乾燥し、これを葉部の粉砕物とする。
【0048】
上記葉ふるい工程P2において、具体的には、枝葉部の粉砕後に20〜50mmメッシュ程度の荒い網で粗ふるいをかけた後に、3〜10mm程度のふるいをかけることで、枝部を選択的に除去し、乾燥重量で20〜70%程度の葉部を含む、細かい葉部(枝部の粉砕物を含む)の粉砕物を得ることができる。例えば、ヒノキの場合、直径50mm未満の枝葉部を選別し、主枝を取り除いた後に粉砕し、得られた粉砕物を40mmメッシュの金網を通過させ、通過した粉砕物をさらに5mmメッシュの金網を通過させることで、葉部の多い初夏であれば葉部のも割合が絶乾重量で50〜70%程度の粉砕物を、また葉部の少ない冬季であれば葉部が絶乾重量で20〜40%程度の粉砕物をそれぞれ得ることができる。
【0049】
この場合、粉砕物の形状としては、好ましくは長さ方向、幅方向及び高さ方向の差が小さいものが好ましく、長細い棒状よりも粒状又は粉状のものが好ましい。これは、細長い棒状のものよりも粒状又は粉状のものが、押出成形時に摩擦熱を均等に発生し易く、均等の押出成形が可能になるとともに、給水時の膨潤量が大きくなり、崩壊し易くなるからである。このような形状の木粉としては、好ましくは、木材加工工場から木材加工時に発生するプレーナーくずや鋸くずを使用するのが好ましい。
【0050】
また、愛玩動物用のトイレとして使用した場合に、し尿の水分を吸収し、膨潤し、崩壊し易いために、これらの後始末をし易くなるという格別の効果を生じる。
【0051】
その後、上記粉砕物を乾燥させて含水率10〜25%になるようにする。このとき、例えば20mm〜50mm程度の厚みで薄く拡げた粉砕物に工業用扇風機等で送風する。適当な時間をおいて攪拌することで、均一な含水率の粉砕物を得ることができる。
【0052】
上記送風乾燥は常温又は低温で行われる。常温の送風乾燥とは、送風機のみで送風乾燥することであり、夏季と冬季で温度雰囲気が異なるため、風量や通風時間を調整して所望の含水率の粉砕物が得られるように乾燥条件を調整する。低温の送風乾燥とは、15〜100℃程度に温度調整した通風装置で乾燥させることをいう。この場合は、年間を通じて安定した含水率の粉砕物が得られる。いずれの場合も、含水率8〜30%程度に乾燥させればよい。
【0053】
次いで、混合工程P4で上記葉部の粉砕物を針葉樹の木部の粉砕物と混合する。この混合工程P4では、針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の枝葉部の粉砕物2.5〜100重量部とを均一に混合させる。このとき、使用する枝葉部の粉砕物中には、20〜75%程度の葉部が含まれている。こうすれば、葉部粉砕物から揮発する精油成分(フィトンチッド)によって消臭、抗菌効果も高い。
【0054】
上記木部の粉砕物としては、上記葉部粉砕物と同様に、木部を粗粉砕し、ふるいにかけて木粉砕物を作り、それを乾燥したものを用いてもよく、或いは針葉樹の製材廃材や古材をそのまま粉砕してチップとしたものでもよい。好ましくは、鋸ぎりくずやプレーナーくず等の製材の切削くずを使用すると、含水率が低く、押出成形に適した粉砕物が容易に得られる。
【0055】
最後に、加圧成形工程P5において、上記葉部の粉砕物と木部の粉砕物との混合物をリングダイ方式又はフラットダイ方式のペレタイザーB1,B2により押出成形して、多数の木質ペレットA,A,…を得る。
【0056】
上記リングダイ方式のペレタイザーB1は、図4(a)に概略的に示すように、基盤10上に回転可能に配置されかつ円周壁部に多数の孔部11,11,…が半径方向に貫通形成された円環状のリングダイ12と、このリングダイ12内部の基盤10上に回転可能にかつ外周面がリングダイ12内周面と接するように配置された少なくとも1つ(図示例では2つ)のローラ13とを備え、リングダイ12内の基盤10上に投入された混合物wをリングダイ12の内周面とローラ13の外周面との間で加圧して、リングダイ12の孔部11,11,…から押出成形するものである。
【0057】
一方、フラットダイ方式のペレタイザーB2は、図4(b)に概略的に示すように、多数の孔部15,15,…が上下方向に貫通形成された回転可能の円板状のフラットダイ16と、このフラットダイ16の上側に水平方向の回転軸心回りに回転可能にかつ外周面がフラットダイ16の上面と接するように配置された少なくとも1つ(図示例では2つ)のプレスローラ17とを備え、フラットダイ16の上面に投入された混合物(図示せず)をフラットダイ16の上面とプレスローラ17の外周面との間で加圧して、フラットダイ16の孔部15,15,…から押出成形するものである。
【0058】
尚、図4(a)及び図4(b)中、14は孔部11,15から押し出されたものをリングダイ12外周面やフラットダイ16下面から切断分離してペレットAに形成するカッターである。そして、ダイ12,16の孔部11,15の内径が、成形されたペレットAの外径となる。
【0059】
このペレタイザーB1,B2による加圧成形工程では、成形直後のペレットAの表面温度が75〜120℃になるようにすることが望ましい。この成形直後のペレットA表面温度が75℃である場合には、成形後の保形性が悪く、一方、120℃を越えると、得られた木質ペレットが焦げて外観が悪くなる可能性があるからである。また、そのため、成形直後のペレットAの温度が75〜120℃になるように、混合物に予め水を加えて、押出成形する加水処理をしてもよい。
【0060】
すなわち、このペレットAの成形時にはローラ13,17がダイ12,16の孔部11,15に粉砕物の混合物を押し込む圧力により粉砕物が固められてペレットAの形状になり、その際、摩擦により熱が発生してペレットAが昇温する。そして、この温度が低過ぎても高過ぎても良質のペレットAが得られないため、そのペレットAの表面温度が75〜120℃になるように設定している。
【0061】
また、ペレットAの硬さの調整はダイ12,16の厚さを変えることで行う。ダイ12,16の厚さは粉砕物がダイ12,16の中に留まる時間に比例し、ダイ12,16が厚い場合に長時間に亘り圧力がかかるため、硬いペレットAが得られる。しかし、厚過ぎると、発生する熱でペレットAが焦げ、外観が悪くなる虞れがある。
【0062】
尚、上記加圧成形工程P5で、混合物にバインダーを加えてもよい。バインダーは特に限定しないが、コンスターチや澱粉等、天然の結合剤を用いると、針葉樹本来の消臭性能や抗菌性を損なうことなく、針葉樹の粉砕物の固形化をさらに容易にすることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、葉部の粉砕物として、枝葉粉砕物を使用しているが、葉部のみを選択的に集め、これを粉末化し、木部の粉砕物と混合して使用してもよい。この場合、極めて高価なものとなる一方、葉部の含有量を厳密に管理できるため、ペレットの品質が安定するというメリットがある。
【0064】
また、上記実施形態では網状部材2の底部2b上に多数の木質ペレットA,A,…が敷き詰められている愛玩動物用トイレTとしているが、木質ペレットが容器内底部に敷き詰められている愛玩動物用トイレであってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、木質ペレットAを愛玩動物用トイレTに用いているが、その他の用途に用いてもよいのは勿論である。
【実施例】
【0066】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0067】
(消臭効果)
図5に示すように、針葉樹の古材チップを木部粉砕物とし、それにトドマツの葉部粉砕物を20%加えた混合物を加圧成形したものを実施例1とした。同様にスギの葉部粉砕物を20%加えた混合物を加圧成形したものを実施例2とし、ヒノキの葉部粉砕物を20%加えた混合物を加圧成形したものを実施例3とした。また、トドマツの木部粉砕物にトドマツの葉部粉砕物を20%加えた混合物を加圧成形したものを実施例4とした。比較例1として、針葉樹の古材木粉のみを加圧成形したものを用意した。
【0068】
そして、これら5タイプのペレットについてアンモニア消臭効果を比較した。アンモニア消臭効果の試験方法は、20gのペレットに0.3%のアンモニア水を3ml滴下し、所定時間経過後のアンモニア濃度を測定した。その結果を図6に示す。
【0069】
この図6によると、実施例1では、アンモニア濃度が0.5時間後に0.9ppmとなり、1時間後に0.8ppmとなった。実施例2及び実施例3では、いずれも4時間後にアンモニア濃度が0.5ppmとなり、実施例4では、8時間後にアンモニア濃度が0.8ppmとなっている。これに対し、比較例1は、8時間後にアンモニア濃度が3.5ppmであり、24時間後でも1.0ppm迄しか下がっていない。このことから、針葉樹の葉部を混入したペレットの消臭効果が、混入のないペレットよりも高いことが判る。
【0070】
(葉部粉砕物の混合割合)
また、マツ科の針葉樹を用い、木部の粉砕物90%と、葉部の粉砕物10%との混合比で製造したペレットを実施例5とした。同様にマツ科の針葉樹を用い、木部の粉砕物80%と、葉部の粉砕物20%との混合比で製造したペレットを実施例6として、これら2タイプのペレットについてのアンモニア消臭効果を比較した。アンモニア消臭効果の試験方法は上記と同じである。その結果を図7に示す。
【0071】
この図7によると、実施例5では、24時間経過後にアンモニア濃度が1ppmに下がったが、実施例6では、30分で1ppmとなった。葉部粉砕物の混入比が高いと、アンモニア消臭性能が高くなっている。
【0072】
(枝葉粉砕物の混合)
また、図8に示すように、主枝の枝元口径50mm以下の枝を選別して図8で破線Aにて示すように切り落とすとともに、この枝からさらに切り落としたヒノキの枝葉(切り落としの位置を同様に破線Bで示している)を用い、これを粉砕して、含水率を15%に調整した枝葉粉砕物を得た。この枝葉粉末の一部を取り出し、葉部のみを取り分け、葉っぱ成分の重量を測定したところ、おおよそ40%が葉部であった。
【0073】
こうして得られた枝葉粉砕物3重量部と、比較例1に用いた古材木粉97重量部とを混合し、押出成形したペレットを実施例8とした。また、枝葉粉砕物5重量部と、比較例1に用いた古材木粉95重量部とを混合し、押出成形したペレットを実施例9とした。これら実施例8及び9について、比較例1のペレットと共にアンモニア消臭効果を比較した。アンモニア消臭効果の試験方法は上記と同じである。その結果を図9に示す。この場合、実施例8では葉部が1.2重量%、実施例9では葉部が2.0%含まれているペレットである。
【0074】
この図9によると、実施例8と実施例9では、速やかにアンモニア濃度が低下し、8時間後には2ppmまで下がっているのに対し、比較例1では、5ppmまでしか下がっていなかった。
【0075】
(ペレット自己崩壊性)
さらに、4mmメッシュのふるい(篩)を用意し、そのふるいの上に直径10.8cm×高さ11.1cmの貫通状円筒体を置いてペレットを詰め、その中に約100mlの水を注いで吸水量を測定した。その吸水後、ペレットが膨らみ切るまで放置して体積を測定した。次いで、吸水により自己崩壊して粉化したものをふるいから落として重量、体積及び含水率を測定した。ペレットは、ヒノキの木部粉砕物のみからなる比較例2と、その木部粉砕物95重量%とヒノキの葉部粉砕物とを5重量%混合した実施例7との2種類である。その結果を図10に示す。
【0076】
この図10によれば、ヒノキの葉部入りのペレットは木部のみのペレットに比べ吸水量が多く、葉部を添加すると、ペレットは吸水性が良くなり、素早く大量の水を吸い込むこと、従って愛玩動物の排尿直後の臭いを軽減できることが判る。
【0077】
また、ペレットの膨張率は、ヒノキの葉部入りのものでは24%であるのに対し、木部のみのペレットでは18%であり、葉部を加えることで、吸水時により大きく脹らんで崩壊することが判る。こうして、大きく膨らむことで、より効率的に葉部が露出して悪臭成分と接触するようになり、より一層高い消臭効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、針葉樹の木部及び葉部の相乗的な消臭効果によりペレットの抗菌性能及び消臭性能を向上できるとともに、ペレットの水分吸収による自己崩壊に伴い効率的で持続的な消臭を期待することができるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0079】
A 木質ペレット
T 愛玩動物用トイレ
B1,B2 ペレタイザー
1 容器
2 網状部材
3 網目状開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針葉樹の木部の粉砕物と、針葉樹の葉部の粉砕物とが均一に混合され、かつ水分の吸収によって自己崩壊するように成形されてなることを特徴とする木質ペレット。
【請求項2】
針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の枝葉部の粉砕物2.5〜100重量部とが均一に混合され、かつ水分の吸収によって自己崩壊するように成形されてなることを特徴とする木質ペレット。
【請求項3】
請求項1又は2の木質ペレットが容器内底部に敷き詰められていることを特徴とする愛玩動物用トイレ。
【請求項4】
請求項1又は2の木質ペレットが、非自己崩壊状態では通過せずに自己崩壊状態で通過する大きさの網目状開口を有する網状部材の上に敷き詰められていることを特徴とする愛玩動物用トイレ。
【請求項5】
針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の葉部の粉砕物0.5〜30重量部とを均一に混合させて、その混合物を、成形直後のペレット表面温度が75〜120℃になるようにリングダイ方式又はフラットダイ方式により押出成形することを特徴とする木質ペレットの製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
針葉樹の葉部の粉砕物として、送風乾燥により含水率8〜30%に乾燥させた粉砕物を使用することを特徴とする木質ペレットの製造方法。
【請求項7】
針葉樹の木部の粉砕物100重量部と、針葉樹の枝葉部の粉砕物2.5〜100重量部とを均一に混合させて、その混合物を、成形直後のペレット表面温度が75〜120℃になるようにリングダイ方式又はフラットダイ方式により押出成形することを特徴とする木質ペレットの製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
針葉樹の枝葉部の粉砕物として、送風乾燥により含水率8〜30%に乾燥させた粉砕物を使用することを特徴とする木質ペレットの製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1つにおいて、
成形直後のペレット表面温度が75〜120℃になるように、混合物に予め加水し、押出成形することを特徴とする木質ペレットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−252783(P2010−252783A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9110(P2010−9110)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】