説明

木質材料用難燃剤、これを使用した難燃化木質材料の製造方法、難燃化木質材料及び木質材料の難燃化方法

【課題】難燃性に優れ、木質材料からの溶出が抑制された木質材料用難燃剤の提供
【解決手段】炭酸ジルコニウムアンモニウムを二酸化ジルコニウム換算で2〜40重量%、水溶性リン酸塩を2〜40重量%含有する水溶液(難燃剤)を木質材料に含浸又は塗布すると、処理された木質材料は難燃性に優れ、更に、難燃剤成分の溶出が抑制されることから、外観に優れ、環境にも優しい。本発明には前記難燃剤、該難燃剤による難燃化木質材料の製造方法、該難燃剤処理により得られる難燃化木質材料を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材料に難燃性を付与する水溶性難燃剤、これを用いた難燃化木質材料の製造方法、難燃化木質材料及び木質材料の難燃化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材用難燃剤としては、主にリン酸類、ホウ酸類、硫酸アンモニウムが使用されている(非特許文献1)。しかしながら、これらの難燃剤は水溶性であるため、これらの難燃剤で処理した木材は、経時的に難燃剤が表面に析出し、白化及びべたつきを生じ、外観を損なう。又、この木材を外壁材として使用した場合は、雨水等により難燃剤の溶出が大きくなるため難燃性能が低下し、さらには溶出した成分の種類によっては環境汚染の問題を生ずる可能性がある。特にホウ酸類は、水質汚濁防止法、水道法及び土壌汚染対策法において有害物質として規定されており、法規制の観点からも使用が制限される。
【0003】
これらの水溶性難燃剤を水不溶性とする方法として、ポリリン酸アンモニウム・ホルムアルデヒド及びジシアンジアミドの反応物を木材に含浸した難燃性木質材料(特許文献1)、アクリルアミド類とグアジニン類および尿素の内の一種とリン酸、リン化合物、ホウ酸塩、ハロゲン化合物の内の一種と重合開始剤を含む難燃剤を木材に含浸した改質木材の製法(特許文献2)が開示されている。しかしながら、特許文献1、2では、ホルムアルデヒドまたはメチロール化アクリルアミドを使用しているため、この難燃剤を含浸した木材にはシックハウスの原因となる未反応及び遊離のホルムアルデヒドが含まれることとなり、人体に対する悪影響が懸念される。
【0004】
また、リン酸類及びホウ酸類の難燃剤を木材に含浸、乾燥後に金属アルコキシドを含浸させ、この金属アルコキシドを加水分解または熱分解し、金属酸化物を生成させ、金属酸化物でホウ酸類及びリン酸類の難燃剤を包み込むことにより、ホウ酸類及びリン酸類の難燃剤の水による溶出を防止する方法(特許文献3)が開示されている。しかしながら、特許文献3の方法では、難燃剤と金属アルコキシドを二回に分けて木材に含浸し、更に金属アルコキシドを加水分解または熱分解する工程が必要となり、ハンドリング性及び生産性の点で改善が求められる。
【0005】
更に、ホウ酸とその水溶性塩からなる群から選択されたホウ素化合物と水溶性ジルコニウム塩の混合水溶液で木材製品を処理した後、50〜105℃で加熱乾燥することにより耐水性を発揮する木材製品の防虫剤及び防火剤組成物と防虫及び防火処理方法(特許文献4)が開示されている。
【非特許文献1】「原田寿郎:建築知識、No.6,99〜100(2004)」
【特許文献1】特開平1−186302号公報
【特許文献2】特開平4―82704号公報
【特許文献3】特開平5−116107号公報
【特許文献4】特表平11−514364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、難燃化剤本来の目的である木材の難燃化だけでなく、長期に渡る難燃性能の保持と難燃剤溶出の抑制を可能とする難燃剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、従来、紙に塗布して使用される耐水化剤として利用されていた炭酸ジルコニウムアンモニウムと、リン酸塩とを溶解した水溶液を木質材料に含浸又は塗布することによって、木質材料に難燃性を付与すると同時に、木質材料からその成分の溶出が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は下記の木質材料用難燃剤、その製造方法及び難燃化木質材料を包含するものである。
項1.炭酸ジルコニウムアンモニウムを二酸化ジルコニウム換算で2〜40重量%、水溶性リン酸塩を2〜40重量%含有する水溶液である木質材料用難燃剤。
項2.水溶液中に含まれる水溶性リン酸塩量が、二酸化ジルコニウムに換算した炭酸ジルコニウムアンモニウム100重量部に対し33〜300重量部である項1に記載の木質材料用難燃剤。
項3.水溶性リン酸塩量が33〜200重量部である項2に記載の木質材料用難燃剤。
項4.水溶性リン酸塩が、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、二リン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリメタリン酸アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、二リン酸カリウム、メタリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、ポリメタリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、二リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸アンモニウムカリウム混合塩、ポリリン酸アンモニウムナトリウム混合塩、ポリメタリン酸アンモニウムカリウム混合塩及びポリメタリン酸アンモニウムナトリウム混合塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩である項1〜3のいずれかに記載の木質材料用難燃剤。
項5.木質材料を項1〜4のいずれかに記載の木質材料用難燃剤に含浸するか、又は木質材料に該難燃剤を塗布することを特徴とする難燃化木質材料の製造方法。
項6.木質材料を項1〜4のいずれかに記載の木質材料用難燃剤に含浸するか、又は木質材料に該難燃剤を塗布することにより製造される難燃化木質材料。
【0009】
本発明の難燃剤は炭酸ジルコニウムアンモニウムと水溶性リン酸塩を含有する水溶液である。
【0010】
炭酸ジルコニウムアンモニウムは水溶液として市販されており、例えば、Jetsize AZ68(アクゾノーベル化学社製)、ベイコート20(日本軽金属社製)、ジルコゾールAC−20(第一稀元素化学工業社製)などが知られている。本発明ではこれらの市販品を使用することができる。
【0011】
炭酸ジルコニウムアンモニウムとポリアクリル酸系樹脂の混合水溶液を乾燥すると、炭酸ジルコニウムアンモニウムの分子から二酸化炭素とアンモニアが離脱し、ポリアクリル酸中のカルボキシル基2個と架橋反応することが報告されている(「畑中孝一他:軽金属 Vol. 40,No. 4(1990),298〜304」)。また、炭酸ジルコニウムアンモニウムは、 セルロースなどの水酸基と水素結合を形成することが報告されている(「馬渕良樹:紙パ技協誌 Vol. 52,No. 2(1998),184〜191」)。
【0012】
本発明の難燃剤では炭酸ジルコニウムアンモニウムを二酸化ジルコニウム換算で通常2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%含有する。
【0013】
本発明の難燃剤は、上述の炭酸ジルコニウムアンモニウムに加え、水溶性リン酸塩を含有する。本発明の難燃剤はこのリン酸塩を、通常2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%含有する。さらに、難燃剤水溶液中に含まれる水溶性リン酸塩量は、二酸化ジルコニウムに換算した炭酸ジルコニウムアンモニウム100重量部に対し通常33〜300重量部、好ましくは33〜200重量部、より好ましくは100〜150重量部である。両成分の量比が上記の範囲内にあると、難燃剤の溶出が大幅に抑制される点で有利となる。
【0014】
本発明において、リン酸塩としては、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、二リン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリメタリン酸アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、二リン酸カリウム、メタリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、ポリメタリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、二リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸アンモニウムカリウム混合塩、ポリリン酸アンモニウムナトリウム混合塩、ポリメタリン酸アンモニウムカリウム混合塩及びポリメタリン酸アンモニウムナトリウム混合塩などが包含され、これらの1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせることができる。好ましいリン酸塩は、リン酸三カリウム、二リン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三ナトリウム、二リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリメタリン酸アンモニウム、ポリメタリン酸カリウム、ポリメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸アンモニウムカリウム混合塩、ポリリン酸アンモニウムナトリウム混合塩、ポリメタリン酸アンモニウムカリウム混合塩、ポリメタリン酸アンモニウムナトリウム混合塩などであり、より好ましいリン酸塩はポリリン酸アンモニウム、リン酸三ナトリウムである。また、これらのリン酸塩は水溶液として供給することも可能である。例えば、酸性ポリリン酸アンモニウム水溶液、酸性ポリリン酸カリウム水溶液、酸性ポリリン酸ナトリウム水溶液、酸性ポリメタリン酸アンモニウム水溶液、酸性ポリメタリン酸カリウム水溶液、酸性ポリメタリン酸ナトリウム水溶液などをリン酸塩の供給源として使用できる。
【0015】
本発明の難燃剤には、炭酸ジルコニウムアンモニウム及び水溶性リン酸塩の他に難燃剤の分野で使用されている添加剤、例えば、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、無水ケイ酸、硫酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸塩(ホウ酸ナトリウムなど)、非イオン系浸透剤(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルなど)、消泡剤(例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、染料、着色顔料などを配合することができ、その配合量などの配合条件は本発明の効果を奏する範囲であれば、使用目的などに応じて適宜選択できる。難燃剤を長期間保存すると濁ることがあるが、ホウ酸、ホウ酸塩を配合するとこれが抑制されるため、保存安定性の向上に有用である。なお、本発明の難燃剤に配合されたホウ酸、ホウ酸塩は木質材料に適用されてもその溶出は非常に低いレベルに抑えられている。
【0016】
本発明の難燃剤は、上記の炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液、水溶性リン酸塩を、必要に応じて水、アンモニア水などを混合することによって製造できる。混合の順序等は適宜選択できる。
【0017】
本発明の難燃剤は後述のように、木材をはじめとして種々の木質材料に難燃性を付与する目的で使用される。本発明の難燃化木質材料の製造方法及び難燃化方法は、上記の本発明の難燃剤に木質材料を含浸するか、該難燃剤を木質材料に塗布するものである。製造条件は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に限定されるものではないが、含浸の場合、木質材料1mあたり通常50〜1000kg、好ましくは100〜800kgの難燃剤を使用する。含浸時間は、通常30分〜8時間、好ましくは1〜3時間である。また、含浸時には、耐圧装置で加圧することが好ましい。加圧する場合、圧力は通常、0.2〜3MPa、好ましくは0.4〜2.2MPaである。また、塗布の場合、塗布の手法にもよるが、木質材料1mあたり通常50〜500g、好ましくは100〜400gの難燃剤を使用する。塗布の方法としては、木質材料に塗料を塗布する方法と同じ方法が採用できる。例えば、スプレー、刷毛塗り、ローラー塗り、バーコーター、ナチュラルロールコーター、ナチュラルリバースロールコーター、リバースロールコーター、カーテンフローコーター、エアスプレー、エアレススプレー、バキュームコーター、静電塗装などが挙げられる。好ましい塗布方法は、スプレー、刷毛塗り、ローラー塗り、ナチュラルロールコーター、エアレススプレーなどである。なお、含浸又は塗布は1回だけでもよいし、2回以上繰り返してもよいし、含浸と塗布を組み合わせてもよい。
【0018】
木質材料に難燃剤を含浸又は塗布後、必要に応じて木質材料を乾燥する。乾燥する方法は、特に制限されないが、通常40〜100℃、好ましくは50〜60℃で、通常48〜120時間、好ましくは48〜72時間乾燥する。また、必要に応じてブロワーすることもできる。なお、難燃剤の塗布に先立ち、被塗布物に水溶性リン酸塩水溶液を含浸又は1回又は数回に分けて塗布しておくことも可能である。
【0019】
また、本発明の難燃剤の含浸又は塗布対象となる木質材料は、塗装対象面が木材であればどのようなものでも良く、天然木、突き板合板等の加工木材などを問わない。例えば、木材、合板、ファイバーボード、パーティクルボード、ウェファーボード等の木質ボード、積層合板、転写印刷合板、転写印刷ファイバーボード等を挙げることができる。その用途は問わないが、例えば、建築材料、家具などである。木材の材質は、ヒノキ、ネズコ、ヒバ、マツ、ポプラ、キリ、ツガ、スギ、セン、シラカバ、ブナ、ナラ(ミズナラ、コナラなど)、ケヤキ、セン、アガチス、オーク、メルクシマツ、ラジアータパイン、アピトン、ライトレッドメランチ、ゴム、ラミン、ニヤトー、コクタン、シタン、ローズウッド、チーク、ウォールナットなどが例示できる。好ましくは、広葉樹の木材であり、より好ましくは、ナラ、オーク、ブナなどである。
【0020】
また、本発明の難燃化木質材料は、上述の製造方法により製造されるものである。この難燃化木質材料中に含まれる難燃剤由来の成分の量は特に制限されないが、二酸化ジルコニウムに換算したジルコニウムと水溶性リン酸塩との合計重量が通常、10〜400kg/m、好ましくは50〜200kg/mである。合計重量が上記の範囲内にあると、難燃剤の溶出が大幅に抑制される点で有利となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の難燃剤は、水溶性であるため、従来使用されているリン酸類の難燃剤と同様に、容易に難燃化作業が出来る。また、本発明の難燃剤は、水溶性でありながら乾燥することにより水不溶性となるため、本発明により得られる難燃化木質材料は、表面への難燃剤の経時的析出がないため外観の悪化が抑制され、結露及び雨水に対しても難燃剤が殆ど溶出しない特徴を有しており、内装材及び外装材として有用である。更に、本発明の難燃剤は、ホルムアルデヒド、塩素系化合物を使用してないため、VOC及びダイオキシンの発生の問題がなく、環境汚染を抑制出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1
酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム(燐化学工業社製)30重量部、アンモニア水(アンモニア分25重量%)15重量部及び水78重量部からなるヘキサメタリン酸アンモニウムナトリウム水溶液を調製し、この水溶液に炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(二酸化ジルコニウム換算30重量%、アクゾノーベル化学社製)100重量部を配合し、15分間攪拌して難燃剤水溶液(不揮発分(二酸化ジルコニウムに換算したジルコニウム重量とヘキサメタリン酸アンモニウムナトリウム重量との合計重量)30重量%)を調製した。次に、この難燃剤水溶液を重量既知の杉単板(大きさ;幅220mm、長さ220mm、厚さ15mm、含水率15重量%)を耐圧装置を用いて0.765Mpaで1時間加圧含浸処理し、重量を測定し、難燃剤の含浸量を計算後、60℃、80%RHの恒温恒湿器中で48時間乾燥し、難燃化木材を得た。 得られた難燃化木材を、JIS A1321(建築物の内装材料及び工法の難燃性試験方法)に準じて標準温度曲線を超える温度時間面積、単位時間当りの発煙係数及び残炎時間を測定した。
【0024】
一方、難燃性試験と同様に得られた難燃化木材(大きさ;幅220mm、長さ220mm、厚さ15mm)を60℃、90%RHの恒温恒湿器に7日間放置し、難燃剤の木材表面への析出状態を観察した。
【0025】
更に、難燃性試験と同様に得られた難燃化木材(大きさ;幅70mm、長さ70mm、厚さ15mm)を105℃の乾燥器中で48時間乾燥し、重量を測定後、25℃の水中に24時間浸漬し、この難燃化木材を再び105℃の乾燥器中で48時間乾燥後、重量を測定し、難燃剤の水浸漬後の溶出率を求めた。
【0026】
難燃化木材の難燃剤含浸量、難燃性試験結果、難燃剤の木材表面への析出状態及び難燃剤の溶出率試験結果を表1及び2に示した。
【0027】
実施例2
酸性ヘキサメタリン酸ナトリウムを45重量部、アンモニア水を23重量部、水を117重量部使用した以外は実施例1と同じ条件で難燃剤水溶液の調製及び試験を行った。その結果を表1、2に示した。
【0028】
実施例3
酸性ヘキサメタリン酸ナトリウムを40重量部、アンモニア水を20重量部、水を153重量部使用し、さらにリン酸三ナトリウム(燐化学工業社製)を20重量部使用してヘキサメタリン酸アンモニウムナトリウムとリン酸三ナトリウムとの混合塩からなる難燃剤水溶液を調製した以外は実施例1と同じ条件で難燃剤水溶液の調製及び試験を行った。その結果を表1、2に示した。
【0029】
比較例
実施例1の難燃剤水溶液の配合を、リン酸水素二アンモニウム30重量部及び水70重量部に変えた以外は実施例1と同一条件で試験し、その結果を表1、2に示した。
【0030】
比較例2
炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を配合しなかった他は実施例1と同一条件で(すなわち、ヘキサメタリン酸アンモニウムナトリウム水溶液を難燃剤として)試験し、その結果を表1、2に示した。
【0031】
比較例3
炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算分30重量%)100重量部にホウ酸(USボラック社製)30重量部及び水70重量部を配合し、攪拌しながら液温40℃で15分間保ち、難燃剤水溶液(30重量%濃度)を調製したが、一日後に沈殿物を生じたため、この中に水73重量部を追加し、沈殿物を溶解し、濃度22重量%とした後、この難燃剤水溶液で実施例1と同様に試験し、その結果を表1、2に示した。
【0032】
比較例4
比較例2の難燃剤水溶液の配合を、炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算分30重量%)100重量部、ホウ酸15重量部、ホウ酸ナトリウム(Na13.4HO、USボラック社製)15重量部及び水143重量部に変えて、実施例1と同様に試験し、その結果を表1、2に示した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
表1の難燃性試験結果のとおり、実施例1〜3は、標準温度曲線を超える温度時間面積、発煙係数及び残炎時間共に全て建築物の内装材料及び工法の難燃性試験方法JISA1321に定める難燃2級(建築基準法の準不燃相当)に合格した性能が得られた。また、表2の難燃剤の析出試験結果のとおり、実施例1〜3で得られた難燃化木材の表面状態は、全て難燃剤の析出なしであった。
【0036】
一方、従来使用されているリン酸水素二アンモニウム(比較例1)、ヘキサメタリン酸アンモニウムナトリウム(比較例2)は難燃剤が析出し、白化及びベタツキが発生した。
【0037】
更に、表2の難燃剤の溶出試験結果のとおり、実施例1〜3の溶出率は、4.5〜9.2重量%と非常に低い溶出率を示し、従来使用されているリン酸水素二アンモニウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムナトリウムの溶出率の約7分の1の値であった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は木質材料の難燃化の分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ジルコニウムアンモニウムを二酸化ジルコニウム換算で2〜40重量%、水溶性リン酸塩を2〜40重量%含有する水溶液である木質材料用難燃剤。
【請求項2】
水溶液中に含まれる水溶性リン酸塩量が、二酸化ジルコニウムに換算した炭酸ジルコニウムアンモニウム100重量部に対し33〜300重量部である請求項1に記載の木質材料用難燃剤。
【請求項3】
水溶性リン酸塩量が33〜200重量部である請求項2に記載の木質材料用難燃剤。
【請求項4】
水溶性リン酸塩が、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、二リン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリメタリン酸アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、二リン酸カリウム、メタリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、ポリメタリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、二リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸アンモニウムカリウム混合塩、ポリリン酸アンモニウムナトリウム混合塩、ポリメタリン酸アンモニウムカリウム混合塩及びポリメタリン酸アンモニウムナトリウム混合塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩である請求項1〜3のいずれかに記載の木質材料用難燃剤。
【請求項5】
木質材料を請求項1〜4のいずれかに記載の木質材料用難燃剤に含浸するか、又は木質材料に該難燃剤を塗布することを特徴とする難燃化木質材料の製造方法。
【請求項6】
木質材料を請求項1〜4のいずれかに記載の木質材料用難燃剤に含浸するか、又は木質材料に該難燃剤を塗布することにより製造される難燃化木質材料。

【公開番号】特開2006−281466(P2006−281466A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100887(P2005−100887)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(592197108)徳島県 (30)
【出願人】(505118811)新丹生谷製材協同組合 (1)
【出願人】(505118970)ミロモックル産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】