説明

板ガラスの切断方法及び装置

熱歪みを利用する板ガラスの切断において、カレットの発生を防止しかつ比較的に厚い板ガラスに対しても直線性に優れた良好な切断面を得る。
板ガラスの切断開始点にクラック起点となる切り目を刻入した後に、板ガラスを加熱バーナーで仮想切断線に沿って加熱し、次いで加熱された部分の仮想切断線部を、ノズル中心部の液体噴出口が外周の気体噴射口より突出している冷却ノズルで生成されるミストにより局所冷却し、前記切り目の微細なクラックを仮想切断線に沿って伸展せしめて板ガラスに切断に必要なクラックを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの切断に関し、特に板ガラスを仮想切断線に沿って加熱バーナーの燃焼炎で加熱した後、この加熱された仮想切断線部を局所冷却することにより、切断に必要なクラックを板ガラスに継続的に伸展させて形成し板ガラスを折割する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板ガラスの主な切断方法としては、ダイヤモンドホイールや超硬ホイール等のカッターを用いる方法と熱歪みを利用する方法が知られている。前者は、カッターで板ガラスに切断線をつけこの切断線に沿って折割する方法(以下、カッターによる切断という)で、最も一般的に実施されている。しかしながら、このようにカッターを用いて板ガラスに折割するための切断線をつけて切断する場合、板ガラスには図7に示すようにカッターホイール17で形成した切断線13部のガラスに垂直クラック14と水平クラック15が発生する。垂直クラック14は板ガラスを折割するために必要であるが、水平クラック15は時間と共にガラス表面に向かって伸展し、斜線で示す部分が欠け落ちてカレット(ガラス屑)16となる。板ガラスの製造ライン上で発生するカレットは、一旦ガラス表面に付着すると剥がれ難い性質を持っている。また、切断後に積層した板ガラスに発生するカレットは板ガラス間に入り、板ガラスの保管や輸送時に板ガラス同士がカレットを挟んで擦れることによってガラス表面に傷が発生する原因となる。また、カッターホイール17で切断線13を入れるとき、垂直クラック14のガラス表層部は溝状にえぐられるために、切断面の表層部には刷毛状の切断線痕ができ、ここからも微細なカレットが発生する。
【0003】
さらに、フロート法で板ガラスを製造する場合、リボン状の板ガラスの両端部には板ガラスを成形する際のロール跡が形成される。このロール跡近傍は、ガラスに強い平面応力が残留しているためにカッターで切断線を入れて折割するとき、クラックがこの残留応力の影響を受けて入りにくくなり、蛇行やカレット多発などが発生し正常な切断ができなくなることがある。この改善策としてカッターの押付け圧力を強くすると、カレットの発生率が一層高くなる。このため通常の板ガラスの製造時には、この歪みの強いロール跡近傍を一度粗切断して取り除き、その内側を低い切断圧力で再度切断することで製品の切断面の改善を図っている。この傾向は板ガラスの板厚が厚くなるほど歪量が増大するため大きくなる。
【0004】
一方、熱歪みを利用して板ガラスを切断する方法は、カッターによる切断におけるこのような問題を解消するのに有効である。例えば、特開2000−63137号公報には、カッターにより浅い深さの切断線を板ガラスにつけ、この切断線部を冷却媒体で冷却することにより切断線に垂直クラックを伸展させて板ガラスを切断すること、及びその際に切断線を形成するガラス部分を予め加熱しておくと好ましいことが記載されている。
【0005】
また、特開平9−12327号公報には、切断すべき板ガラスの一端にクラック開始点を形成するため小さい切り目を入れ、次いでレーザー光によってこの切り目部から板ガラスを切断しようとする方向に沿って局所加熱し、この加熱により生じた熱歪み(応力)の作用でクラック開始点のクラックをレーザー光の行路に沿って伸展させて切断に必要なクラックを形成し切断することが開示されており、その際クラックの伝播を促進するために、加熱部を水ジェットにより冷却することが好ましいとされている。しかし、この冷却については水ジェットによって行うことが記載されているだけで、水ジェットの具体的内容については何等記載されていない。
【特許文献1】特開2000−63137号公報
【特許文献2】特開平9−12327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の熱歪みを利用する板ガラスの切断方法は、一般に前記カッターによる切断におけるカレットの問題を解消するのに効果を有するが、切断面の品質や厚い板ガラスの切断などの点において十分に満足できるものでなかった。すなわち、特許文献1に記載されている方法によれば、通常のカッターによる切断における切断線より浅い切断線で済むため、カレットはカッターによる切断に比べると減少できる。しかし、カッターによる切断と同様に切断部の全長にわたって切断線をカッターでつけるために、微細なカレットが発生したり、板ガラスの切断面の表層部に刷毛状の切断線痕が残るのは避けられない。
【0007】
特許文献2の方法は、前記したように切断開始点の微細なクラックを、レーザー光による局所加熱で発生する熱応力を利用してレーザー光の行路に沿って伸展させることを主体としている。しかし、この方法で比較的厚い板ガラスを切断しようとすると、強い加熱が必要になるためにレーザー光で集中加熱されるガラス表面が溶解し、切断が困難になったり切断面の品質が低下したりするおそれがあった。また、この方法において冷却は付加的なものであり、しかもこの冷却を単純な水ジェットによって行うために、クラックを十分な深さに伸展させることが至難となる。そのため例えば10mm以上の厚い板ガラスの切断は切り損じが生じたり、切断部の直線性が劣るという問題があった。また、板ガラスの切断部が水ジェットの水により汚れるという問題があった。
【0008】
さらに、フロート法で連続成形されるリボン状板ガラスのように反りやうねりがある場合には、レーザー光がこのガラス表面の上下変化に追従できないため、所定の加熱を付与することが難しく安定した切断が困難となる。特にこのリボン状板ガラスの両端部のロール跡近傍は、ガラスに残存する強い平面応力により反りやうねりが生じやすいためその傾向が一層大きい。また、レーザー光による局所的な加熱では、この残留応力を緩和することができないため、製品をロール跡近傍まで高品質で確保することは困難であった。また、レーザー装置を伴う設備費が高額であるために高コスト化を招くとともに、大掛かりな設備となるという問題もあった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、熱歪みを利用する板ガラスの切断において、比較的に厚い板ガラスやフロート法等で成形されるリボン状板ガラスのように反りやうねりがある板ガラスに対しても、カレットを発生させずに容易かつ安定して切断でき、直線性もしくは方向性に優れ、高品質の切断面が得られる切断方法及びその装置を提供することである。
【0010】
また、本発明は前記リボン状板ガラスの端部のように大きい残留応力を有する板ガラスを、同様にカレットを発生させずに高品質の切断面に切断でき、これにより製品を該リボン状板ガラスの残留応力を有するロール跡近傍まで確保できる切断方法及びその装置を提供する。
【0011】
さらに、本発明は高額のレーザー装置を伴わない比較的簡単な設備により、板ガラスを低コストで切断できる切断方法及びその装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために種々検討した結果、クラック起点となる切り目をつけた板ガラスの仮想切断線部をバーナーの燃焼炎により所定の幅および温度に加熱し、この加熱された仮想切断線部を所定幅のミストで仮想切断線に沿って局所冷却することにより、直線性に優れた良好な切断が得られることを見出し得られたものである。すなわち、本発明は以下の板ガラスの切断方法及びその装置を提供する。
(1)板ガラスの仮想切断線の切断開始点付近にクラック起点となる切り目を刻入した後に、該板ガラスの仮想切断線部を仮想切断線に沿って加熱バーナーの燃焼炎により、加熱直後のガラス表面温度を、仮想切断線付近の最高温度が130℃以上、仮想切断線を中心に10mm幅の両端部の左右平均温度が前記最高温度の45%以上に相当する温度となるように加熱し、次いでこの加熱部をミストにより1〜20mmの幅で仮想切断線に沿って局所冷却することにより、前記切り目から仮想切断線に沿って板ガラスの切断に必要なクラックを形成し、板ガラスを該クラックに沿って折割することを特徴とする板ガラスの切断方法。
(2)前記局所冷却を仮想切断線付近のガラス表面温度が83℃以上である状態において行う上記(1)の板ガラスの切断方法。
(3)前記仮想切断線付近の最高温度が130〜220℃である上記(1)又は(2)の板ガラスの切断方法。
(4)ミストによる冷却幅が1〜10mmである上記(1)、(2)又は(3)の板ガラスの切断方法。
(5)前記局所冷却を、ノズル中心部の液体噴出口の外側に環状の気体噴射口を備えかつ該液体噴出口が気体噴射口より突出している冷却ノズルにより行う上記(1)〜(4)のいずれかの板ガラスの切断方法。
(6)加熱バーナーによる加熱から冷却ノズルによる局所冷却までの時間を変えることにより、該局所冷却時のガラス表面温度を変えてクラックの深さを調整する上記(1)〜(5)のいずれかの板ガラスの切断方法。
(7)フロート法により連続的に成形された板ガラスの両端部を切断する上記(1)〜(6)のいずれかの板ガラスの切断方法。
(8)板ガラスの仮想切断線の切断開始点付近にクラック起点となる切り目を刻入するためのカッターと、該板ガラスを切り目部から仮想切断線に沿って燃焼炎により加熱するための加熱バーナーと、ミストを生成するための冷却ノズルとを具備し、これらのカッター、加熱バーナー及び冷却ノズルは実質的に前記仮想切断線上にこの順序で配置されており、前記加熱バーナーの燃焼炎により所定の加熱幅及び加熱温度に加熱された仮想切断線部を、該冷却ノズルで生成されるミストにより所定の冷却幅で局所冷却することを特徴とする板ガラスの切断装置。
(9)前記冷却ノズルは、ノズル中心部の液体噴出口の外側に環状の気体噴射口を備えかつ該液体噴出口が気体噴射口より突出している上記(8)の板ガラスの切断装置。
(10)前記冷却ノズルの液体噴出口の突出量cが0<c≦20mmである上記(9)の板ガラスの切断装置。
(11)前記加熱バーナーと冷却ノズルの少なくとも一方を板ガラスの仮想切断線に沿って移動可能に設置し、両者の間隔が可変になっている上記(8)〜(10)のいずれかの板ガラスの切断装置。
(12)前記冷却ノズルの液体噴出口の口径aが0.15〜0.6mmであり、気体噴射口の外側径bと内側径b’とがb−b’=0.05〜1.45mmである上記(8)〜(11)のいずれかの板ガラスの切断装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の板ガラスの切断方法によれば、加熱バーナーの燃焼炎による加熱とミストによる局所冷却との併用によって、切断開始点付近に刻入した切り目の微小クラックを仮想切断線に沿って伸展させて切断に必要なクラックを形成できる。
【0014】
その際、加熱バーナーでガラス表面の比較的広い範囲を所定の加熱幅及び加熱温度に加熱できるため、厚い板ガラスや残留応力が大きい板ガラスをそれぞれ溶融や不均衡な熱応力による割れを発生させずに加熱できる。さらに、加熱バーナーは加熱するガラス表面との間隔がばらついたときの加熱温度に与える影響がレーザーに比べて非常に小さいため、板ガラスに反りやうねりがあってもほぼ均一に加熱することができる。
【0015】
これにより、比較的に厚い板ガラスや、フロート法などで成形されるリボン状板ガラスのように反りやうねりがある板ガラスに対しても、カレットを発生させずに容易かつ安定して切断でき、直線性もしくは方向性に優れた、高品質の切断面を得ることができ、エッジ強度を向上させることができる。高品質の切断面とは、切断面に起きる微小な傷が少ないことを意味する。ガラスの破損の一因はこの傷を起点として起きるために、微小な傷が少ない本発明を用いた切端面は割れにくくなり、この切断面からの割れが少なくなることをエッジ強度の向上という。
【0016】
さらに、前記リボン状板ガラスの端部のように大きい残留応力を有する板ガラスであっても、加熱バーナーの燃焼炎で加熱することにより該残存応力を切断に支障しない程度の広い幅で緩和できるので、残留応力を有しない板ガラスと同じように切断できる。これにより、製品を前記リボン状板ガラスの端部の近傍まで確保できるため、板ガラスの生産歩留を向上できる。
【0017】
また、加熱バーナーで所定の加熱幅及び加熱温度に加熱された領域をミストで局所冷却するため、切断に必要なクラックを仮想切断線に沿って直線性もしくは方向性よく伸展させることができる。さらに、このようにミストで局所冷却することにより、冷却部のガラス表面に水滴をほとんど残さずに切断できるため、板ガラスの汚れが防げる。
【0018】
さらにまた、本発明は切断装置を高額のレーザー装置を伴わない簡単な設備で構成できるため、板ガラスを製造ラインまたは非製造ラインにおいて低コストで切断でき、建築用、車両用、各種基板用などの各種板ガラスの切断に適用可能である。
【0019】
本発明の好ましい実施態様では、前記局所冷却をノズル中心部の液体噴出口がその外側に環状に設けた気体噴射口より突出している冷却ノズルで行うことにより、液体噴出口から噴出する液体と気体噴射口から噴射する気体とによって所定の狭い冷却幅のミストを生成し、バーナー燃焼炎で加熱された仮想切断線部をこのミストにより局所的に効率よく冷却することができる。これにより、熱歪み効果が増大するためにクラックの伸展が促進し、比較的厚い板ガラスでも切断に必要なクラックを仮想切断線に沿って正確に十分な深さをもって伸展できるため、より高い切断精度が得られる。
【0020】
前記冷却ノズルの液体噴出口の突出量cを0<c≦20mmにすることにより、生成されるミストの幅を狭く制御して局所冷却の効率を更に向上せしめて、クラックの伸展を一層促進させることができる。さらに、加熱バーナーと冷却ノズルとの間隔を可変にすることにより、クラックの深さを適切に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係わる板ガラスの切断装置の平面図。
【図2】図1の板ガラスの切断装置の正面図。
【図3】冷却ノズルの正面図。
【図4】図3の冷却ノズルの底面図。
【図5】加熱バーナーの燃焼口部の底面図。
【図6】加熱された板ガラスの、仮想切断線に直交する方向における温度分布図。
【図7】従来のカッターで形成した切断線部の断面図。
【符号の説明】
【0022】
1:板ガラス、 2:カッター、 3:加熱バーナー、
4:冷却ノズル、 5:切り目、 6:クラック、
7:仮想切断線、 8:シリンダ、 9:基台、
10:カッター台 11:保持部材、 12:保持部材、
13:切断線、 14:垂直クラック、 15:水平クラック、
16:カレット、 17:カッターホイール、 18:液体噴出口、
19:気体噴射口、 20:送水管、 21:空気送管
22:搬送ロール、 23:火炎口、 24:燃焼炎、
25:キャスター、 26:ミスト
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明における切断方法及びその装置は、フロート法板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラスなどの連続的に製造されるリボン状板ガラスを製造ラインにおいて所定の寸法に切断する場合、またはこのように製造ラインで切断された板ガラスを更に所望の大きさ、形状に切断する場合に適用できる。特に平面残留応力が大きいために通常のカッターでは良好な切断が困難とされている、リボン状板ガラスの端部の切断に好適する。
【0024】
切断可能な板ガラスとしては平坦であれば限定されないで、建築用、車両用及びフラットディスプレイ等に使用する基板用などの各種板ガラスやそれらを使用した合わせガラス(型板ガラスや網入りガラスを使用したものも含む)を挙げることができ、その厚さも薄いものから厚いものまで可能であり、カッターによる切断や前記レーザー光加熱による切断が難しい、例えば10mm以上の厚い板ガラスも容易に切断できる。板ガラスを切断するためのクラックを熱歪みで伸展させるため直線切りに適しているが、曲線切りも可能である。レーザー光線を反射させるようなコーティングされたガラスや反射するガラスはレーザー切断では切断出来ないがバーナーは火炎によりガラス表面を加熱させる為切断する事が可能である。
【0025】
本発明においては、板ガラスの切断開始点付近にクラック起点となる切り目を刻入する。一般に板ガラスを切断するときには板ガラスの切断寸法や切断形状に基づいて切断線を想定し、この想定した切断線に沿ってクラックを入れて折割する。本発明における仮想切断線はこのように想定した切断線を意味している。したがって、前記切断開始点はかかる仮想切断線の切断開始端に位置する。切断開始端が板ガラス端面の場合は、切り目の位置が板ガラスの端面に近すぎると、ガラスが欠けたり破損するおそれがあるため、実際に切り目を付ける位置は板ガラスの端面から1〜3mm程度内側に入っているのが好ましい。
【0026】
切り目は、板ガラスの表層部にカッターによりけがき傷として浅く形成される。このけがき傷により、切り目部のガラスにクラック起点となる微細(微小)のクラックを垂直方向に形成することができる。この微細なクラックの深さ(ガラス表面からクラックの下端まで)としては50〜150μm程度が好ましい。このクラックの深さが50μm未満であると、クラック起点として十分に機能しないため、この微細なクラックから切断に必要なクラックを確実に伸展させることが困難となる。一方、150μmより深いクラックを入れるには、カッターの切断圧力を大きくしなければならないため、切り粉が生じたりカレットの原因となる水平クラックが発生するおそれがあるので好ましくない。この切り目はクラック起点を形成することを目的にしているので、この切り目の長さとしてはそれほど長くなくてもよく通常5〜10mm程度でよい。
【0027】
前記カッターとしては、ガラス表面にけがき傷をつける機能を持っている例えばダイヤモンドホイール、超硬合金ホイールなどが好ましく使用でき、公知のガラス切断用カッターを転用することができる。切り目の付け方も該カッターを板ガラスに所定の圧力で接触させた状態で仮想切断線の方向に相対移動させればよく、通常のカッターによる切断における切断線の付け方と長さが短い点を除き実質同じである。
【0028】
本発明において切り目をつけた板ガラスは、次いで加熱バーナー(単にバーナーということもある)の燃焼炎によって、この切り目部から仮想切断線に沿って加熱される。この加熱は、後述するように例えば前記カッターの下流側の仮想切断線上にバーナーを設置し、該バーナーを板ガラスの切断方向に相対移動させることにより容易にできる。
【0029】
本発明において板ガラスの切断部をバーナーの燃焼炎で加熱すると多くの利点が得られる。すなわち、板ガラスをレーザー光で加熱した場合には、前記したように板ガラスが厚くなると加熱部のガラス表面が溶融したり、あるいはガラス表面の上下方向(ガラス板面に垂直な方向)における変動の影響を強く受けて、加熱温度がばらつきやすい。これに対し、バーナー燃焼炎は板ガラスの仮想切断線部をレーザー光より広い幅で加熱し集中加熱しないため、厚い板ガラスに対しても表面を溶融させずに加熱できる。また、板ガラスに残留応力が存在するとき、該応力をバーナー燃焼炎が及ぶ範囲において緩和できる。さらに、加熱された部分のガラスの熱膨張によって、圧縮応力領域を板ガラスの仮想切断線に沿って比較的広い幅で形成できるので、局所冷却との併用によりクラックの伸展が促進される。また、バーナー燃焼炎はガラス表面の上下変動の影響をレーザー光ほど強く受けないため、レーザー光の加熱装置に比べて操作が容易で、かつコスト面でも経済的である。
【0030】
バーナーの燃焼炎で板ガラスを加熱する場合、バーナーに可燃性物質と酸素を送って燃焼させる。このとき可燃物質としては通常気体状のものを使用するが、液体状又は固体状のものも使用できる。また、気体状の可燃物質としては、特に都市ガス(石炭ガス、天然ガスなど)が安価と取り扱いやすさの点で好ましいが、これに限定されないで例えば水素ガスであってもよい。酸素とガスを用いてバーナー加熱する場合、バーナーは酸素とガスとをバーナーに別々に供給して燃焼させる先混合タイプでも、予め両者を混合しバーナーに混合ガスとして送給して燃焼させる予混合タイプでもよいが、予混合タイプの方がバーナーをガラス表面に近づけて加熱幅を狭くしやすく、かつ酸素・ガスの使用流量を少なくできるので好ましい。
【0031】
これに対し、先混合タイプは、燃焼構造の違いからバーナーとガラス表面との間隔が一般に予混合タイプより広くなる。その結果、燃焼炎が広がり加熱幅が拡大するために、ガラスがこの熱によって割れやすくなる。この場合、バーナーと板ガラスとの間に金属や断熱材の遮蔽板によるスリットを設けて加熱すると、スリット幅により燃焼炎の幅を狭く調整できるので、前記熱による割れを防ぐことができる。
【0032】
次に、本発明における加熱について図面を参照して更に詳述する。板ガラスの仮想切断線部をバーナーの燃焼炎で加熱すると(図1,2参照)、板ガラスは表面から仮想切断線に沿って所定の幅で加熱される。図6のAは、このように加熱された板ガラスの、加熱直後の仮想切断線に直交する方向におけるガラス表面温度分布を例示したものである。図6に示すように仮想切断線部Sをバーナーで加熱された板ガラスは、Sを中心にして両側が所定の幅で加熱され、仮想切断線付近において最高温度T(加熱温度Tともいう)を示す放物線状もしくは山形状となる。同図において横軸はSからの距離、縦軸は温度である。
【0033】
本発明においてクラックの伸展を促進するのに有効な圧縮応力領域は、板ガラスを仮想切断線部に沿って所定の幅で一定温度以上に加熱することにより形成できる。すなわち、加熱直後のガラス表面温度が、仮想切断線付近の最高温度Tで130℃以上、好ましくは130〜220℃になるように加熱する。さらに、仮想切断線を中心にして10mm幅内の温度が前記最高温度Tの45%以上になるように加熱する。仮想切断線を中心とする10mm幅内の温度分布は、図6に示すごとく放物線状をなしているので、仮想切断線付近が最高温度Tとなり10mm幅の左右両端が最も低い温度t(左右両端部の温度の平均値、以下同じ)となる。本発明においてこのtはTに対して45%以上になっている。このような温度分布は、バーナー加熱によって得られるものであって、レーザー光でこれを得るのは困難とされている。これを図6に基づいて説明する。同図の点線Bはレーザー光で同じ板ガラスをバーナー加熱と同じ最高温度Tに加熱したときのガラス表面温度分布のイメージを参考までに示したものである。図示のようにレーザー光では仮想切断線部のガラスが狭い幅で集中的に局所加熱されるために、仮想切断線部付記がTに加熱されても前記10mm幅の両端の温度t’はtに至らず、Tの45%未満の温度である。このため、レーザー光では板ガラスの切断部を所望の温度分布に加熱できない。
【0034】
前記加熱温度Tが130℃より低いと、ガラスの板厚方向に十分な加熱を加えることが困難となり、クラックの伸展を促進させる熱歪み効果が低下する。その結果、クラックが円滑に伸展されなくなるために、クラックの直線性が悪化したり、あるいは切断に必要な深さのクラックが得られなくなるおそれがある。しかし、Tがある一定温度以上になってもクラックの伸展性はほとんど変わらない上に加熱負担が増大し、さらにTが高くなりすぎると、クラックが板厚方向にまっすぐに伸展しにくくなったり、クラックが部分的に2本となる場合があるため、Tは220℃以下が好ましい。
【0035】
バーナーで加熱された部分の板ガラスの表面温度は、次の局所冷却されるまでの間において放熱と周辺への熱伝導により低下する。この低下の程度は、加熱から冷却されるまでの時間と周辺温度などにより変わり一概に決められないが、前記時間が長くなるほど大きく、また周辺温度が低いほど放熱しやすいため大きくなる。局所冷却時のガラス表面温度が低くなりすぎると、クラックが伸展しにくくなるため、本発明においてはこの温度を一定以上に保持することが重要である。本発明において局所冷却時のガラス表面温度というときは、加熱部を初めて冷却する開始時のガラス表面温度を意味する。この温度としては、仮想切断線付近で83℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。局所冷却時のガラス表面温度が83℃以上に維持されていれば、クラックの伸展が促進され所望の深さのクラックを仮想切断線に沿って形成できる。
【0036】
本発明において前記加熱温度Tは、加熱条件、すなわちバーナーの噴出口の大きさや個数、酸素・ガス量、板ガラスの搬送速度などの単独又は組み合わせにより調整できる。さらに、バーナー(バーナーの燃焼口部)とガラス表面との距離、すなわちバーナーの高さを変えることによっても加熱温度を調整できる。例えば、加熱が不十分の場合はバーナーを下げ、加熱温度が高すぎるときにはバーナーを上げて温度を調節する。この場合、バーナーが高すぎると、燃焼炎の加熱幅が広くなるために加熱効率が低下し、逆に近すぎると燃焼炎の状態が不安定になってクラックの深さにばらつきが生じやすくなる。さらに、加熱温度は加熱時の板ガラスの温度(以下、板温とする)によっても変わるので、加熱条件は板温をも考慮して設定するのが好ましい。すなわち、板温が高い場合には、加熱量を少なくすることができる。
【0037】
本発明において、このように加熱された板ガラスは、次いで仮想切断線部を局所冷却する。この局所冷却は、前記加熱バーナーの下流側に冷却ノズルを設置し、バーナーで加熱した仮想切断線部を該冷却ノズルで生成されるミストによって局所的に冷却することによって行われる。バーナーで加熱された仮想切断線部の板ガラスは圧縮応力領域になっているため、この領域を局所冷却すると、冷却された部分のガラスは、大きな熱衝撃を受け、同時に熱収縮して引張り応力を発生する。切り目部の微細なクラックは、この引張り応力により垂直方向に深く伸展し、更に引張り応力ゾーンに導かれて仮想切断線に沿って伸展し、板ガラスの切断に必要なクラックを形成する。この場合、最高温度の仮想切断線付近を局所冷却するのが最も好ましい。
【0038】
したがって、前記局所冷却は切断に必要なクラックを仮想切断線に従って正確に伸展させる上で不可欠である。この局所冷却において技術的に重要なことは、加熱されている仮想切断線部をミストにより狭い冷却幅で効率よく冷却することにある。この冷却幅としては1〜20mmであり、好ましくは1〜10mmである。一般に冷却幅は狭いほど好ましいが、冷却幅を1mm未満にすると十分な冷却効果が得られなくなるために、クラックの伸展が悪化する。また冷却幅が20mmを超えると、クラックの直線性が悪化し切断精度が低下する。
【0039】
なお、バーナーの燃焼炎で加熱する際、バーナーと板ガラスとの間に金属や断熱材の遮蔽板で形成したスリットを設けて所定の幅の燃焼炎で加熱する場合には、燃焼炎の幅と局所冷却における冷却幅との関係は、冷却幅が燃焼炎の幅より狭いことが好ましい。冷却幅が燃焼炎の幅と同一または燃焼炎の幅より広いときには、冷却してもクラックが入らなかったり、クラックが入ったとしても、クラックの深さや直線性の点で実用に供し得なくなるおそれがある。
【0040】
本発明において前記局所冷却は、図3に示すような冷却ノズル4によって好ましく達成できる。図3は冷却ノズル4の正面図、図4はその底面図である。冷却ノズル4は、図示の如くノズル中心部の液体噴出口18の外側に環状の気体噴射口19を備えており、かつ該液体噴出口18が気体噴射口19より突出しているノズル構造を有している。このようなノズル構造により、冷却ノズル4の液体噴出口18から噴出した液体を噴出と同時に気体噴射口19からの高圧の気体によりミスト化し、液体と気体の混合体(ミスト)を生成できる。同時に前記高圧の気体によりこのミストの横方向への広がりを極力抑えることができる。かくして、冷却ノズル4で生成された小幅のミストを板ガラスの加熱された仮想切断線部に吹き付けることにより、該仮想切断線部を所定の冷却幅で局所的に急冷できる。つまり局所冷却できる。このような局所冷却の冷却媒体としては、気化熱作用により冷却効率の高いミストが適っている。このミストは水ジェットと異なりガラスをほとんど濡らさないので、ガラスの汚れ防止にも有利である。冷却ノズル4はこのようなミストを生成できるノズルとして特に優れている。
【0041】
次に、冷却ノズル4について更に詳細に説明する。冷却ノズル4としては図3に示すように液体噴出口18が外側の気体噴射口19よりcだけ突出している。この突出量cとしては0<c≦20mmであり、0<c≦1.0mmが好ましく、0.3≦c≦0.7mmであればより好ましい。このように液体噴出口18を気体噴射口19より突出させることにより、該液体噴出口18から噴出した液体に気体噴射口19から噴射する気体(例えばエア)を直ちに作用させて、前記液体を完全あるいはほぼ完全にミスト化できる。液体噴出口18が気体噴射口19から突出していない場合、つまり液体噴出口18が気体噴射口19と同一レベル又は気体噴射口19より後退している場合には、局所冷却に最適なミストを得ることが難しくなる。また、cが20mmより大きくなると、噴出された液体をガラス表面までの限られた範囲内で十分にミスト化することが困難になる。このようにcが適切でない冷却ノズルで生成されたミストの冷却効率は低下するために、該ミストで板ガラスを冷却してもクラックが所望の深さまで入らなくなることがある。
【0042】
さらに、好ましい冷却ノズルにおいて液体噴出口18の口径aは、0.15〜0.6mmのものが好ましく、aが0.15〜0.3mmのものが最も好ましく使用できる。aが0.6mmより大きくなると、気体とのバランスが崩れてミスト化が不十分となりやすいので好ましくない。また、aが0.15mmより小さいと、ミストの冷却効率が低下し冷却が不十分になるおそれが生じる。
【0043】
一方、気体噴射口19は上記液体噴出口18の外側に環状に設けられている。この環状の気体噴射口19の外側径bと内側径b’は、所望の気体噴射量とミスト幅を得るためにb−b’が0.05〜1.45mmの範囲が好ましい。b−b’が0.05mm未満では、気体の噴射量が不足し好ましいミストの生成が困難となる。また、b−b’が1.45mmを超えると過剰の気体によってミストが希薄化するために冷却効率が低下し、所望のクラックを形成することが困難になるので好ましくない。かかる二重構造の冷却ノズルにおいて、液体噴出口18のノズルの厚さd(図4参照)は、0.2mm以下の薄肉のものを使用でき、通常は0.05mm程度の金属板で形成するのが好ましい。なお、液体噴出口18及び気体噴射口19が楕円形や長丸の場合、a、b、b’はその短径をいう。
【0044】
ミストを生成するための液体としては、コスト、気化熱量、扱いやすさなどの点で水が最も適している。この場合、水温が変動すると、ミストの温度も変動しクラックの深さが影響を受けるため、常温の水を使用して水温をできるだけ低温かつ一定に保ち、クラックの深さのばらつきを小さく抑えるのが好ましい。また、液体噴出口18から噴出する水量は、1〜10ml/分の範囲であれば実施可能であるが、実用的には3〜6ml/分程度が好ましく、切断する板ガラスの厚さや種類などによって適宜選定する。そして、作業中の水量の変動はクラックの深さを変動させるため、作業中は水量を一定に保持するようにする。
【0045】
ミストの生成に使用する気体としては通常エアが用いられる。気体噴射口から噴射するエアの圧力は、液体噴出口から噴出される液体をミスト化できる条件に選定する。したがって、エア圧力は特に限定されないが、圧力が高いほどミストの広がりを抑制し冷却幅を狭く維持できるため、比較的高めに設定するのが好ましい。しかし、このエア圧力が高すぎると、ガラス表面に衝突したエアがはね返って液体噴出口から噴出する液体に逆方向から衝突するため、このエア圧力としては好ましくは0.1〜0.4MPa、特に0.12〜0.24MPaが好ましい。
【0046】
板ガラスの加熱された仮想切断線部を、冷却ノズルで生成されるミストによって局所冷却するとき、その冷却幅はガラス表面に当るミストの幅(以下、ミスト幅とする)と実質同じであるので、局所冷却の冷却幅はミスト幅で現わすことができる。このミスト幅は、気体噴射口の外径が大きくなるほど増大し、気体噴射口から噴射するエアの圧力によっても変わる。また、冷却ノズルで生成されたミストは一般に広がりながら噴射するため、冷却ノズル(正確には冷却ノズル最下端)のガラス表面からの距離(以下、冷却ノズルの高さとする)が長くなるほどミスト幅は拡大する。したがって、冷却ノズルの高さを変える方法は、局所冷却の冷却幅の調整手段として有効である。因みに、冷却ノズルの高さが高すぎると、冷却幅が増大してクラックの直線性が悪化しクラックに曲がりが生じやすくなる。逆に冷却ノズルの高さが低すぎると、エアの逆流により所望のミストを生成することが困難になる。図3に例示する冷却ノズルの場合、その高さは通常約10mm以内が好ましく、特に2〜5mm程度が好ましい。
【0047】
なお、冷却ノズルとしてはミスト幅の制御が容易であることから、典型的には液体噴出口及び気体噴射口が円形のものが好ましい。しかし、液体噴出口及び気体噴射口が長円状のノズルをその長軸が仮想切断線に一致するように設置して使用することもできる。また、冷却ノズルは単独で十分に目的を達成できるが、複数個を仮想切断線方向に並列してもよい。
【0048】
このように液体噴出口を気体噴射口より突出させた突出タイプの冷却ノズルは、前記したように冷却幅の小さいミストを生成でき、これによりクラックの直線性を向上できる点で優れている。しかし、冷却ノズルはかかる突出タイプに限定されない。例えば、図示はしないが液体と気体とをノズル内部において混合してミスト化し、この生成されたミストを噴射口から噴射するようにしてもよい。
【0049】
本発明において、切断に必要なクラックが仮想切断線に沿って所定の深さに形成された板ガラスは、このクラック部に曲げモーメントを付与することにより折割できる。この折割は公知のカッターによる切断における折割と実質同じであるので説明は省略する。
【0050】
本発明において、板ガラスを上記切断装置により実際に切断する場合には、切断装置と板ガラスとを相対移動させる。いずれを相対移動するにしても切断装置を構成している、カッター、加熱バーナー及び冷却ノズルは、板ガラスの仮想切断線上にクラックの形成方向に対しこの順序で直列に配置される。この配置において、カッターは加熱バーナーの上流であればどの位置でもよいが、加熱バーナーから冷却ノズルまでの距離は、これらの加熱条件と冷却条件、及び切断する板ガラスの板厚や搬送速度などによって、切断に必要なクラックを所望の深さに形成できるように適宜設定する。ここで、切断に必要なクラックの深さとしては、公称2mm厚さのガラスの場合、板厚の7〜10%程度が好ましい。クラックの深さが板厚の7%より浅いと、曲げモーメントを付与して折割するとき難渋し切り損じを招くことがある。また、クラックが板厚の10%を超えて深く形成されると、特に薄い板ガラスにおいて曲げモーメントを付与しないのに、板ガラスが予期しないとき自発的に割れるため好ましくない。
【0051】
また、切断に必要なクラックの深さは、ガラスの板厚により変わり、板厚が厚くなるとクラックの深さを厚くした方がよい。公称3.5mm厚さの場合は、切断に必要なクラックの深さは板厚の8〜18%程度が好ましい。公称5mm厚さの場合は、切断に必要なクラックの深さは板厚の8〜18%程度が好ましい。公称8mm厚さの場合は、切断に必要なクラックの深さは板厚の8〜23%程度が好ましい。公称15mm厚さの場合は、切断に必要なクラックの深さは板厚の12〜23%程度が好ましい。公称19mm厚さの場合は、切断に必要なクラックの深さは板厚の15〜25%程度が好ましい。
【0052】
このクラックの深さは、加熱バーナーと冷却ノズルとの距離及び冷却ノズルの個数を変えることによって便宜的に調節できる。クラックは前記距離を長くすることにより深く形成できる。しかし、この距離が必要以上に長くなると、局所冷却時の仮想切断線付近のガラス表面温度が83℃より低くなるために、所望の深さのクラックを形成できなくなる。この距離は板ガラスの相対移送速度や板厚、バーナー燃焼炎による加熱および局所冷却の条件などを勘案して決めることができる。本発明の好ましい実施形態では、加熱バーナーから冷却ノズルまでの距離を変更し、加熱してから局所冷却されるまでの時間を容易に調整できるように、加熱バーナーと冷却ノズルの少なくとも一方を板ガラスのクラックの形成方向に位置調整できるように設置している。通常は冷却ノズルの位置を可変にする。
【0053】
次に、本発明に係わる板ガラスの切断装置の実施形態を図面に従って説明する。しかし、本発明はこの実施形態および図面に限定されない。図1は本発明に係わる板ガラスの切断装置の平面図、図2は図1の正面図である。図1において板ガラス1は一部のみ図示し、また搬送ロールは図示を省略している。
【0054】
本例は、板ガラス1を搬送ロール22により矢印方向に移送させて、該板ガラス1の上方に設置した切断装置により切断する場合である。切断装置は、板ガラス1の搬送路上にクラックの形成方向に基台9を設置し、該基台9に板ガラス1の移送方向の上流側からカッター2、加熱バーナー3、冷却ノズル4をこの順序で取り付けて構成されている。ここで、板ガラス1の移送方向と仮想切断線7の方向とは一致しており、カッター2、加熱バーナー3及び冷却ノズル4は、該仮想切断線7上に直列して設置されている。このような配置により、板ガラス1を一定速度で移送させる間に、該板ガラス1の仮想切断線7上の切断開始点に最初にカッター2により切り目5を刻入し、この板ガラス1が前進したとき加熱バーナー3により切り目5から仮想切断線7に沿って加熱し、次いで冷却ノズル4によりこの加熱された部分を仮想切断線7に沿って局所冷却し、切断に必要なクラックを形成する。
【0055】
本装置においてカッター2は、ガラス切断に汎用されているダイヤモンドホイールを便宜的に使用している。該カッター2は、基台9に設置したカッター台10に取り付けられているエアシリンダ8の作動端に装着されており、板ガラス1が搬送ロール22により所定の速度で移送されてくると、エアシリンダ8が作動して板ガラス1の仮想切断線7の端部に降下し、この端部に長さ約5〜10mm、深さ50〜150μm程度の切り目5を仮想切断線7の方向に刻入する。これにより、切り目5の底部のガラスには切断に必要なクラックの起点となる微細なクラックが垂直方向に形成される。この場合、切り目5の刻入に必要なカッター2の加圧はそれほど大きくないため、切り目5のガラスにはカレットの原因となる水平クラックは実質的に生じない。切り目5を形成したカッター2はエアシリンダ8によって上昇し、次の板ガラスの切断に備えて待機する。
【0056】
本例のように一定長さの板ガラスを切断するときは、カッター2は各板ガラスごとに昇降し切り目5を付けるが、例えばフロート法で成形されるリボン状板ガラスの端部を製造ラインにおいて切断するときには、クラックが円滑に伸展している限り切り目5は原則として最初に刻入するだけでよい。この場合、クラックが途切れたときの対策として、冷却ノズルの後ろに例えばカメラを設置してカメラがクラックの途切れを検出した場合には、カッターに信号を送って降下させ、再度クラックの起点となる切り目を入れる。これにより、その後は加熱と局所冷却とによりクラックを継続的に形成できる。
【0057】
加熱バーナー3は、酸素・都市ガスの予混合バーナーで、基台9に取り付けられている保持部材11に設けられている。この保持部材11は板ガラス1の移送方向においてカッター2の下流側に設置されており、本例では基台9に固定しているが基台9上を移動可能に設けてもよい。加熱バーナー3の燃焼口部は、図5に模擬的に示すように所定のピッチで直列した多数の火炎口23により形成される。この場合、火炎口23の大きさ、ピッチおよび直列する個数などは、主に切断する板ガラス1の板厚および移送速度によって決めることができる。因みに本例の加熱バーナー3は、口径が0.6mmの火炎口23をピッチ2.3mmで50個直線状に並列した、長さが約120mmの燃焼口部を備えている。この加熱バーナー3は、前記燃焼口部が板ガラス1の表面から例えば7mmの高さに設置されており、板ガラス1が搬送される間に、板ガラス1の仮想切断線部を所定の加熱幅、加熱温度にその燃焼炎24により連続的に加熱する。その際、バーナーの高さは必要に応じて高さ調節機構(不図示)により調節する。
【0058】
冷却ノズル4は、保持部材12を介して基台9にガラス表面から約2mmの高さに取り付けられている。この冷却ノズル4は図3および図4に例示したものと同じ構造を有しており、加熱バーナー3で加熱された部分の仮想切断線7部をミスト26により局所冷却し、切断に必要なクラックを仮想切断線7に沿って伸展させる。本例の冷却ノズル4は、ノズル中心部の液体噴出口(口径a:0.2mm)の外側に環状気体噴射口(外側径b:0.9mm、内側径b’:0.3mm)を具備しており、該液体噴出口は気体噴射口より0.5mm突出している。この冷却ノズル4の液体噴出口と気体噴射口には、それぞれ送水管20および空気送管21が接続されており(図3参照)、該送水管20から供給される常温の水をノズル中心部の液体噴出口18から一定流量づつ噴出し、同時に空気送管21から送られてくる圧縮エアを気体噴射口19から噴射させてミストを生成する。そして、生成されたミストにより板ガラス1の加熱された仮想切断線7部を約2mmの幅で局所冷却する。
【0059】
すなわち、加熱バーナー3で加熱された板ガラス1が冷却ノズル4の下方に移送されてくると、冷却ノズル4からミスト26が吹き付けられて板ガラス1の仮想切断線7の切り目5が形成されている端部から局所冷却が開始され、その後は板ガラス1の移送に従って仮想切断線7に沿って連続的に冷却される。これにより、板ガラス1の仮想切断線7部は約2mmの幅で効率よく冷却され、この部分のガラスは急激な冷却により大きな熱衝撃を受けるとともに引張り応力を発生する。この結果、切り目5の微細なクラックは、この応力の作用で垂直方向に伸展して板厚の7〜15%まで達するクラックとなり、更にこのクラックは切り目5を起点にして引張り応力が形成される領域を仮想切断線7に沿って連続的に伸展し、切断に必要なクラック6(図1参照)を形成する。このクラック6は所定の深さを有しているので、板ガラスは曲げモーメントにより容易に折割できる。
なお、本例では図2に仮想線で示すごとく冷却ノズル4を基台9に位置調整可能に設けているので、加熱バーナー3との間隔が適宜変えられる。さらに図示はしないが冷却ノズル4は高さ調整機能を備えており、必要に応じガラス表面からの高さを変えることができる。
【0060】
リボン状でない板ガラスの場合は、反りやうねりがほとんどないので、搬送ロール22で移送する際に加熱バーナー3および冷却ノズル4とガラス表面とのそれぞれの間隔は実質的に変動しない。しかし、例えばフロート法ガラス製造ラインにおいてリボン状板ガラスを切断する場合には、端部に発生する残留応力のために例えば板厚方向に10〜20mm程度の反りやうねりが生じる。このような場合には、切断装置に設けた例えばキャスター25(図2参照)を用いて板ガラスの反りやうねりを加熱バーナー3や冷却ノズル4に伝えて、加熱バーナーおよび冷却ノズルの高さをガラス表面の変動に追従させることにより、または図示しないが押えロールでガラス表面を押えて反りやうねりを矯正させることにより安定した燃焼炎加熱及び局所冷却を行うことができる。
【0061】
これに対し、レーザー光による局所加熱の場合には設備が複雑のうえ、重量もあり、反りやうねりのある板ガラスに追従させることが困難である。また、たとえレーザー光装置を板ガラスに追従させた場合、又は板ガラスを押さえつけ平らにした場合でも、レーザー光装置と板ガラスとの距離のばらつきは避けられず、該距離に僅かなばらつきが生じると、レーザー光でガラス表面を一定に加熱することは難しい。また、板ガラスを強く押え過ぎるとガラスが割れるおそれがある。
【実施例】
【0062】
(例1)
図1に示す切断装置で板厚が1.8mm、3.5mm、6mm、12mm、19mmの各板ガラスの切断開始点に、同一の切り目形成条件で深さ100μm、長さ7mmの切り目をダイヤモンドホイールにより刻入し、次いでこれらの板ガラスの仮想切断線部をバーナーで加熱した後、該加熱部を冷却ノズルで仮想切断線に沿って局所冷却してクラックを形成し、このクラックに沿って板ガラスを折割した後、クラックの形成状況及び折割後のカレットの有無について目視により確認した。折割は板ガラスのクラックの真下を支持した状態で、クラックの両側を上方から押圧し、梃子の原理により行った。
【0063】
上記において、加熱は、ガス(都市ガス)と酸素の予混合バーナー(図5)に対し板ガラスを相対移送させて、該バーナーの燃焼炎によりその仮想切断線部を連続して行った。その際、各板ガラス毎にガスと酸素の割合を変えて加熱温度Tを変えた。また局所冷却は、図4の冷却ノズル(a:0.2mm、b:0.9mm、b’:0.3mm、c:0.5mm、d:0.05mm)を用い、液体噴出口から水を4ml/分の割合で噴出し、気体噴射口からエアを約0.24MPaで噴射してミストを生成し、前記加熱部をこのミストにより約3mmの冷却幅で仮想切断線に沿って冷却した。その際、加熱バーナーと冷却ノズルとの距離を変えることにより、局所冷却時のガラス表面温度を変えた。このときミストで局所冷却したため、冷却部のガラス表面には水滴がほとんど残らずガラスの汚れが発生しなかった。なお、板ガラスの搬送速度はすべて500m/hとした。また、板温は25〜27℃、外気温は24〜28℃であった。
【0064】
各板ガラスのクラックの形成状況及びカレットの有無を、バーナーのガスと酸素の割合、冷却ノズルとバーナーとの距離L、加熱温度T、加熱直後の仮想切断線を中心とする10mm幅の両端温度(左右平均値)t、局所冷却時の仮想切断線付近のガラス表面温度T’と併せて表1及び表2に記載する。クラックの形成状況は、◎:特に良好な折割可能なクラック(十分な深さを有し直線性が優れているもの)、○:折割可能なクラック(部分的に2本のクラック、またはクラック表面に微量のガラス粉を部分的に有するが折割可能であり、実用上で支障がないもの)、×:折割可能なクラックが形成されないもの、で表示した。表1及び表2の「折割後のカレット」において「−」は折割評価しなかったものである。なお、t/Tは表中には記載しなかったがいずれも45%以上であった。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
表1及び表2から明らかのように例1、例5、例10、例13及び例17は、板厚に関係なくいずれも折割が可能で良好なクラックが形成された。また、加熱温度Tが比較的高い、例2、例6、例15及び例18は、クラック表面に微量のガラス粉が部分的に発生し、例9、例12及び例14は部分的に2本のクラックが生じたが(加熱温度が高めによるもの、または最高温度と冷却幅中心とのずれによるものと考えられる)、折割が可能で実用上支障がないクラックが得られた。
【0068】
(例2)
図1に示す切断装置で板厚が3.5mm、5mmの各板ガラスの切断開始点に、同一の切り目形成条件で深さ100μm、長さ7mmの切り目をダイヤモンドホイールにより刻入し、次いでこれらの板ガラスの仮想切断線部をバーナーで加熱した後、該加熱部を冷却ノズル(冷却条件は例1と同じ)により生成したミストで仮想切断線に沿って局所冷却してクラックを伸展させた。その際、バーナーと冷却ノズルとの距離Lを、板厚が3.5mmの板ガラスは180〜380mmの範囲、板厚が5mmの板ガラスは180〜460mmの範囲でそれぞれ変えて、Lと形成されたクラックの深さとの関係について調査した。その結果を表3に示す。なお、バーナーの加熱条件は板厚3.5mmでは、ガス/O:360/320(Nl/h)、板厚5mmでは、ガス/O:340/320(Nl/h)とし、板ガラスの搬送速度は900m/hとした。
また、クラックの深さ(単位:μm)は、クラックと直交する方向の切断線をカッターで板ガラスの裏面に入れて折割した後、万能投影機(ニコンV−12)でクラック部分を拡大投影する方法で測定した。
【0069】
【表3】

【0070】
表3から明らかのように、クラックの深さはバーナーと冷却ノズルとの距離Lが長くなるほど深くなる。これは、Lが長くなると加熱されてから局所冷却されるまでの時間が長くなるため、この間に熱がガラス表面から板厚方向に伝導して圧縮応力域が奥深くまで形成され、このときガラス表面を局所冷却すると引張り応力がこの圧縮応力の作用で奥深く形成され、板厚方向へのクラックの伸展が促進されるものと推定される。
【0071】
(例3)
図1に示す切断装置でカッターによる切り目形成条件と加熱バーナーによる加熱条件(ガス/O:300/280(Nl/h))を固定し、冷却ノズルによる局所冷却条件は液体噴出口の突出量だけを変えて冷却幅を変え、他は同一にして切断に必要なクラックを板ガラス(100cm(長さ)×100cm(幅)×3.5mm(板厚)))の長さ方向に形成した後、このクラック部に曲げモーメントを付与して板ガラスを折割し、切断部の直線性について調査した。なお、板ガラスの搬送速度は900m/hとした。
【0072】
上記において、切り目は板ガラスの切断開始点にダイヤモンドホイールにより、深さ100μm、長さ7mmに刻入した。加熱は、酸素・都市ガスの予混合バーナーをガラス表面から7mmの高さに設置して、板ガラスを搬送させながらその仮想切断線部を、加熱温度Tが162℃、仮想切断線を中心に10mm幅両端部の左右平均温度tが85℃、局所冷却時の温度T’が約90℃になるように連続的に行った。このときの外気温は22〜26℃、板温は23〜25℃であった。
【0073】
また、局所冷却は、例1と同じ冷却ノズルをバーナーの下流側300mmの位置にガラス表面から3mmの高さに設置して、液体噴出口から水を4ml/分の割合で噴出し、気体噴射口からエアを約0.24MPaで噴射してミストを生成し、加熱した部分の仮想切断線部をこのミストにより冷却した。表4は、その結果であり、液体噴出口の突出量と冷却幅及びクラックの直線性(蛇行)の関係を示す。なお、表4の蛇行は仮想切断線からずれた量(クラックの進行方向に対し右側を+、左側を−)を示し、直線性の評価はこの蛇行のずれ量に基づいて、◎:特によい、○:良い、×:不良(ずれ量が実用許容量を超えたもの)で表示した。
【0074】
【表4】

【0075】
表4から明らかのように突出量が20mmまでの範囲では、蛇行が実用上で差し支えない程度に小さい直線性が得られ、特に突出量が0.3〜0.7mmであるときには無視できる程度の蛇行であり直線性の優れた切断が得られた。これに対し、突出量が30mmのときには蛇行が±1.0mmとなり、直線性の優れた切断が得られなかった。なお、カレットはいずれも認められなかった。
【0076】
(例4)
図1に示す切断装置により、フロート法で成形されたリボン状板ガラス(板厚:3.5mm)の両端部のロール跡近傍(ロール跡から板幅方向の内側0.5インチ(12.7mm)の位置)に、例1と同じ加熱バーナーと冷却ノズルを用いて次の加熱条件と冷却条件でクラックを形成し、このクラックに沿って折割し、正常な切断が得られるかどうかについて確認した。この場合、折割は先ずクラックが形成されたリボン状板ガラスを、進行方向に対し直角方向(幅方向)の切断線をカッターで入れて一定の寸法に切断した後、クラックの真下をローラで支持した状態で、クラック部のロール跡側部分をローラで上方から押圧し、クラック部に曲げモーメントを付与することにより行った。
【0077】
その結果、この折割部にはカレットの発生がなく、かつ直線性に優れた、高品質の切断面が得られた。なお、切断時の板ガラスの搬送速度は980m/h、気温は37℃、板温は54℃であった。
(加熱条件)バーナー高さ:ガラス表面より7mm、ガス量:200Nl/h、
酸素量:220Nl/h、加熱部と冷却部との距離:220mm
(冷却条件)冷却ノズル高さ:ガラス表面より2mm、
液体噴出口からの水量:4ml/分、
気体噴射口からのエア圧:約0.24MPa
一方、前記リボン状板ガラスの同じ箇所を従来のカッターによる切断方法で切断したところ、折割部にカレット、バリなどが多発し、実用上で満足できない切断面となり、正常な切断が得られなかった。
【0078】
(例5)
板厚を変化させて、切断に必要なクラックの深さを調べた。ガラスの板厚を代えたときに必要なクラックの深さが得られるように、ガス量、酸素量、加熱部と冷却部の距離、冷却ノズルの数、搬送速度を適宜変化させた。結果を表5に示す。
【表5】

【0079】
表5より、切断に必要なクラックの深さは、ガラスの板厚により変わり、公称板厚が厚くなるとクラックの深さを厚くした方がよく、公称2mm厚さのガラスの場合、板厚の7〜10%程度、公称19mm厚さのガラスの場合は切断に必要なクラックの深さは板厚の15〜25%程度が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の板ガラスの切断方法によれば、加熱バーナーの燃焼炎による加熱とミストによる局所冷却との併用によって、切断開始点付近に刻入した切り目の微小クラックを仮想切断線に沿って伸展させて切断に必要なクラックを形成でき、本発明は、建築用、車両用、基板用などの各種板ガラスの切断に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラスの仮想切断線の切断開始点付近にクラック起点となる切り目を刻入した後に、該板ガラスの仮想切断線部を仮想切断線に沿って加熱バーナーの燃焼炎により、加熱直後のガラス表面温度を、仮想切断線付近の最高温度が130℃以上、仮想切断線を中心に10mm幅両端部の左右平均温度が前記最高温度の45%以上に相当する温度となるように加熱し、次いでこの加熱部をミストにより1〜20mmの幅で仮想切断線に沿って局所冷却することにより、前記切り目から仮想切断線に沿って板ガラスの切断に必要なクラックを形成し、板ガラスを該クラックに沿って折割することを特徴とする板ガラスの切断方法。
【請求項2】
前記局所冷却を仮想切断線付近のガラス表面温度が83℃以上である状態において行う請求項1に記載の板ガラスの切断方法。
【請求項3】
前記仮想切断線付近の最高温度が130〜220℃である請求項1又は2に記載の板ガラスの切断方法。
【請求項4】
ミストによる冷却幅が1〜10mmである請求項1、2又は3に記載の板ガラスの切断方法。
【請求項5】
前記局所冷却を、ノズル中心部の液体噴出口の外周に気体噴射口を備えかつ該液体噴出口が気体噴射口より突出している冷却ノズルにより行う請求項1〜4のいずれかに記載の板ガラスの切断方法。
【請求項6】
加熱バーナーによる加熱から冷却ノズルによる局所冷却までの時間を変えることにより、該局所冷却時のガラス表面温度を変えてクラックの深さを調整する請求項1〜5のいずれかに記載の板ガラスの切断方法。
【請求項7】
連続的に成形されるリボン状板ガラスの両端部を切断する請求項1〜6のいずれかに記載の板ガラスの切断方法。
【請求項8】
板ガラスの仮想切断線の切断開始点付近にクラック起点となる切り目を刻入するためのカッターと、該板ガラスを切り目部から仮想切断線に沿って燃焼炎により加熱するための加熱バーナーと、ミストを生成するための冷却ノズルとを具備し、これらのカッター、加熱バーナー及び冷却ノズルは実質的に前記仮想切断線上に配置されており、前記加熱バーナーの燃焼炎により所定の加熱幅及び加熱温度に加熱された仮想切断線部を、該冷却ノズルで生成されるミストにより所定の冷却幅で局所冷却することを特徴とする板ガラスの切断装置。
【請求項9】
前記冷却ノズルは、ノズル中心部の液体噴出口の外周に気体噴射口を備えかつ該液体噴出口が気体噴射口より突出している請求項8に記載の板ガラスの切断装置。
【請求項10】
前記冷却ノズルの液体噴出口の突出量cが0<c≦20mmである請求項9に記載の板ガラスの切断装置。
【請求項11】
前記加熱バーナーと冷却ノズルの少なくとも一方を板ガラスの仮想切断線に沿って移動可能に設置し、両者の間隔が可変になっている請求項8〜10のいずれかに記載の板ガラスの切断装置。
【請求項12】
前記冷却ノズルの液体噴出口の口径aが0.15〜0.6mmであり、気体噴射口の外側径bと内側径b’がb−b’=0.05〜1.45mmである請求項8〜11のいずれかに記載の板ガラスの切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/054142
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515975(P2005−515975)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017967
【国際出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】