説明

板材端面の切削用ヤスリ

【課題】 石こうボードや耐火ボード等の板材の端面を切削する板材端面の切削用ヤスリの提供。
【解決手段】 切削用ヤスリはヤスリ板1を工具本体2に取付けたものであり、ヤスリ板1のヤスリ面4には複数の小さなヤスリ刃6,6・・を突出すると共に貫通した穴7,7・・を対にして設け、ヤスリ面4の両側には側片5,5を背面側へ延ばすと共に側片先端には係合片9,9を有し、そして工具本体2にはヤスリ板1の両側片5,5がガイドされる取付けガイド部10,10と係合片9,9が係合する係合部11,11を有し、そして、端面ヤスリ掛けに際して石こうボードなどの板材表面に当るガイド部12をヤスリ面4と所定の距離をおくと共にヤスリ面4に対して垂直をなして設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石こうボード、不燃ボード、耐火ボードなどの板材の端面を簡単に、しかも正確に切削することが出来るヤスリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では一般の住宅でも、石こうボードや耐火ボードを使用する場合が多い。耐火ボードを壁面や天井に使用することで、火災が発生した場合に隣の部屋への延焼を抑制することが出来る。又、石こうボードや耐火ボードは住宅の断熱効果や遮音効果にも優れていることから、その用途は多岐にわたっている。
【0003】
例えば、特開平9−144150号に係る「壁構造」では、省施工でありながら、十分な結露防止がなされる壁構造として、断熱材の少なくとも片面に通気隙間を開けて突起体を複数形成するとともに、突起体が外面に出るようにこの断熱材と石こうボードとを一体化して内壁材と成し、この内壁材の外面に出た突起体側に外壁材を配して構成している。
【0004】
又、特開平11−247321号に係る「遮音壁の構造」では、面密度が大きくかつ弾性を有する遮音シートを用いて低・中周波帯域及び高周波帯域の遮音性能の向上を図りながら、石こうボードの高周波数帯域における遮音性能の落ち込みの態様を改善し、全体としてみた場合の遮音性能の評価を上げることができ、しかも、これを、壁厚を厚くすることなく実現できる遮音間仕切り壁の構造として構成している。
【0005】
このように、建物の壁構造として石こうボードが使用されるケースは多い。勿論、耐火ボードや不燃ボードの用途も大きいが、これら各ボードを壁、床、天井に使用する場合には、所定の大きさに切断しなくてはならない。切断加工は小型のノコ盤にて比較的簡単に行われるがその切口は正確でなく、切削された端面の仕上げ加工が必要となる場合も多い。ところが、木製の板材の端面加工では、昔からカンナを用いて切削しているが、石こうボードや耐火ボードの端面を切削加工するに適した工具は存在しない。
【0006】
特開2003−39222号に係る「積層板端面加工装置及びクランプヘッド」は、積層板の端面の良好な加工精度を維持すると共に、積層板の大きさにも容易に対処し得る汎用性能を向上させた積層板端面加工装置、及び積層板端面加工装置に使用されるクランプヘッドである。
【0007】
すなわち、ワークテーブルとクランプヘッドとを上下方向に近接させると共に水平方向に相対的に位置変化させて上記切削工具にて積層板の端面を切削する積層板端面加工装置であり、積層板を載置して位置決め固定するワークテーブルの上方位置に切削工具を備えたクランプヘッドを配置している。そして、クランプヘッドに積層板をワークテーブルに押し付ける圧接部を設けると共に上記圧接部を切削工具の近傍位置に配置している。
【0008】
しかし、上記積層板端面加工装置は大型であり、大工職人が現場で手軽に使えるものではない。あくまでも工場の所定の場所に設置される装置である。
【特許文献1】特開平9−144150号に係る「壁構造」
【特許文献2】特開平11−247321号に係る「遮音壁の構造」
【特許文献3】特開2003−39222号に係る「積層板端面加工装置及びクランプヘッド」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、石こうボードや耐火ボードなどの端面を正確に、しかも現場で手軽に切削加工する適当な工具が望まれている。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、板材の端面を施工現場で手軽に加工することが出来る板材端面の切削用ヤスリ提供する。ここで、対象とする板材としては、石こうボード、耐火ボード、不燃ボード、又屋根材として使用されるスレートなどである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る板材端面の切削用ヤスリは、ヤスリ板を工具本体に取付けた構造であり、該ヤスリ板は工具本体に着脱自在(抜き差し自在)と成っている。該ヤスリ板は概略コ形断面の長尺材であり、両側片には工具本体に係合して取付けられる係合片を設けている。そして、ヤスリ板表面はヤスリ面を形成し、ヤスリ面には小さな複数のヤスリ刃が突出し、該ヤスリ刃と対を成して貫通穴を設けている。ヤスリ刃の向きは長手方向の中央を基準として左右両側にて夫々反対向きにしたり、又は長手方向の上下にて向きを変える場合もあるが、本発明ではヤスリ刃の向きに関しては特に限定しない。
【0011】
そして、該ヤスリ板が取付けられる工具本体は取付けガイド部を有し、両取付けガイド部には係合部を形成し、ヤスリ板の側板に形成している上記係合片が係合することが出来る。従って、ヤスリ板は両取付けガイド部に沿ってスライドして取付けられる。又、ヤスリ面とは所定の距離をおき、該ヤスリ面に対して垂直をなしてガイド部を設けている。
【0012】
工具本体はヤスリ掛け作業に際して、持ち手として機能すると共に削り屑が周囲に飛散しないように収容器としての役目を持っている。そこで、工具本体はその内部には空間が形成され、又、工具本体の両端にはゴムなどの材質から成るクッション材を取付けることもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の板材端面の切削用ヤスリは、施工作業現場にて大工職人がカンナを用いるように、石こうボードの端面や耐火ボードの端面を正確に、しかも手軽にヤスリ掛けすることが出来る。すなわち、ノコ盤で切断された石こうボード等の端面をヤスリ掛けすることで、端面を所定の寸法になるように正確に仕上げることが出来る。この場合、工具本体のガイド部を石こうボード面に当て、ヤスリ面を端面に当ててスライドすることで該端面はヤスリ掛けされる。ヤスリ面には複数の小さなヤスリが突出し、これらヤスリ刃によって端面が切削される。
【0014】
そして、この切削用ヤスリは工具本体にヤスリ板を取付けたものであり、ヤスリ刃が切れ止んだならば、取外して新たなヤスリ板と交換することが出来る。ヤスリ掛け作業において、石こうボード等の端面がヤスリ掛けにて削られた削り屑は、工具本体の内部空間に収容されて、周囲に飛散しない。さらに、工具本体の端面にクッション材を取付けることで、高所での作業中に手が滑って落下しても、床面にキズを付けることはない。このように、本発明の切削用ヤスリは軽くて持ち易く、現場職人が何所でも手軽に使用できる。
【実施例】
【0015】
図1は本発明に係る板材端面の切削用ヤスリを示す実施例であり、斜視図を表している。同図の1はヤスリ板、2は工具本体、3はクッション材を夫々表している。工具本体2はアルミの押出し材、又は樹脂を射出成形したもの、時には金属板を曲げ成形して製作することが出来、その断面は概略L形とした長尺材である。
【0016】
図2は上記やスリ板1を単独で表している具体例であるが、概略コ形断面を成し、ヤスリ面4の両側には側片5,5を有し、ヤスリ面4には複数のヤスリ刃6,6・・を突出している。該ヤスリ刃6の拡大図を図3に示しているように、その形状は概略1/4球体を成して盛り上がっている。すなわち、このヤスリ刃6はヤスリ面4の一部を半球体に盛上げて成形すると共に、その一部を打抜き、半円形の貫通した穴7を隣接して形成している。そこで、概略1/4球体をしたヤスリ刃6は円弧状の切刃8を有している。ここで、図3に示すヤスリ刃6の形状はあくまでも1具体例に過ぎず、この形状に限定するものではない。
【0017】
ところで、上記側片5,5はヤスリ面4の両側に背面側へ延び、両側片5,5の先端には内側へ屈曲した係合片9,9を設けている。図4は工具本体2を単独で表している具体例であり、同図の10は取付けガイド部、11は係合部、さらに12は石こうボード面に当接するガイド部を夫々示している。そこで、ヤスリ板1の両側片5,5は平行に延びる上記取付けガイド部10,10を挟むように挿入され、両係合片9,9は取付けガイド部10,10に形成している係合部11,11に係合して取付けられる。従って、ヤスリ板1は抜き差し自在であって、ヤスリ板1のヤスリ刃6の切刃8が切れ止んだならば、外して交換することが出来る。
【0018】
ヤスリ板1は石こうボードや耐火ボード等の端面をヤスリ掛けする為に、長期間切れ止むことがないようにその材質は硬質の鋼材が使用される。工具本体2は、アルミの押出し材、又は樹脂を射出成形などにて製作することが出来るが、底板13から正面板14を正面側に起立し、背板15を背面側に起立している。又、正面板14の上端を背面方向へ垂直に屈曲して上記ガイド部12を有し、背板15の上端及び中間部にて正面方向へアーム板16,16を延ばしている。そしてこのアーム板16,16の先端に上記取付けガイド部10,10を設け、取付けガイド部10,10には係合部11,11を形成している。
【0019】
ここで、工具本体2の両アーム板16,16の間には第1空間17を形成し、ガイド部12と下側アーム板16と底板13との間には第2空間18を形成している。又、下側アーム板16の所々には穴19,19・・が貫通して設けられ、ヤスリ掛けにて発生した削り屑は第1空間17に収容され、それから穴19,19・・を通過して第2空間18に移動して外に排出される。
【0020】
ところで、図2に示すヤスリ板1は図4の工具本体2に取付けることが出来、図1はその状態である。作業者は工具本体2を持ってガイド部12を石こうボード面に当接し、端面にはヤスリ面4を擦り付ける。ガイド部12が石こうボード面に当ることで、ヤスリ面4は垂直に配置されるために、工具本体2をスライドさせるならば石こうボードの端面は石こうボード面に対して垂直をなしてヤスリ掛けされる。
【0021】
端面には複数のヤスリ刃6,6・・が当り、切刃8,8・・にて該端面は削り落とされる。そして、削り屑はそのまま穴7を通過して第1空間17に収容され、第1空間17から穴19,19・・を通過して第2空間18へ移動する。第2空間18に溜まった削り屑はヤスリ面4とガイド部12との間に形成される開口から外へ排出することが出来るが、底板13に蓋付きの排出用穴を設けることも可能である。
【0022】
前記図2に示すヤスリ板1のヤスリ面4に形成しているヤスリ刃6,6・・は規則正しく配列している。そして、中央を基準としてヤスリ刃6,6・・の向きは左右反対に成っている。すなわち、左側のヤスリ刃6,6・・は右方向を向いて配列し、右側のヤスリ刃6,6・・は左方向を向いて配列している。従って、端面ヤスリ掛け作業では、何れの向きにスライドしても該端面を削ることが出来る。
【0023】
又、ガイド部12を石こうボード面に当接して端面をヤスリ掛けする場合、該端面に当って使われる実質的な部分はヤスリ面4の下側約半分に過ぎない。そこで、一定期間経過したところで、一旦取外して上下方向を逆して取付けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る板材端面の切削用ヤスリを示す実施例。
【図2】ヤスリ板の具体例。
【図3】ヤスリ面に形成しているヤスリ刃の具体例。
【図4】工具本体の具体例。
【符号の説明】
【0025】
1 ヤスリ板
2 工具本体
3 クッション材
4 ヤスリ面
5 側片
6 ヤスリ刃
7 穴
8 切刃
9 係合片
10 取付けガイド部
11 係合部
12 ガイド部
13 底板
14 正面板
15 背板
16 アーム板
17 第1空間
18 第2空間
19 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石こうボードや耐火ボード等の板材の端面を切削する板材端面の切削用ヤスリにおいて、該板材端面の切削用ヤスリは概略コ形断面のヤスリ板を工具本体に取付けたものであり、ヤスリ板のヤスリ面には複数の小さなヤスリ刃を突出すると共に貫通した穴を対にして設け、ヤスリ面の両側には側片を背面側へ延ばすと共に側片先端には係合片を有し、そして工具本体にはヤスリ板の両側片がガイドされる取付けガイド部と係合片が係合する係合部を有し、そして、端面ヤスリ掛けに際して石こうボードなどの板材表面に当るガイド部をヤスリ面と所定の距離をおくと共にヤスリ面に対して垂直をなして設けていることを特徴とする板材端面の切削用ヤスリ。
【請求項2】
上記工具本体の両端にはゴムや軟質樹脂などの材質で構成するクッション材を取付けた請求項1記載の板材端面の切削用ヤスリ。
【請求項3】
上記ヤスリ刃の形状を概略1/4球体とし、切刃を滑らかな円弧状とした請求項1、又は2記載の板材端面の切削用ヤスリ。
【請求項4】
ヤスリ刃の向きを、ヤスリ板中央を基準として長手方向の左右で反対向きとした請求項1、請求項2、又は請求項3記載の板材端面の切削用ヤスリ。
【請求項5】
ヤスリ刃の向きを、長手方向中心を基準として上下で反対向きとした請求項1、請求項2、又は請求項3記載の板材端面の切削用ヤスリ。
【請求項6】
上記工具本体の断面形状を概略L形とし、底板両縁には正面板と背板を垂直に起立し、正面板の上端にはガイド部を背面側へ延ばして設け、背板の上端と中間部位にてアーム板を正面側へ延ばし、両アーム板の先端部には取付けガイド部と係合部を形成し、ヤスリ板の両側片をガイド部に沿って挿入すると共に、係合片は係合部に係合した請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、又は請求項5記載の板材端面の切削用ヤスリ。
【請求項7】
上記両アーム板、ヤスリ板、及び背板で囲まれた空間を第1空間とし、そしてガイド部、正面板、底板、背板とで囲まれた空間を第2空間とし、下側のアーム板には穴を貫通して第1空間と第2空間を連通した請求項6記載の板材端面の切削用ヤスリ。
【請求項8】
工具本体の底板には削り屑排出用の蓋付き穴を設けた請求項6、又は請求項7記載の板材端面の切削用ヤスリ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−233827(P2009−233827A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85979(P2008−85979)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(307014898)
【Fターム(参考)】