説明

板状αゲル組成物の製造方法

【課題】ラメラドメインの破壊が効果的に防止され、感触の優れた板状αゲル組成物を容易に製造できる方法を提供すること。
【解決手段】25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と;該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程と;を含む板状αゲル組成物の製造方法である。該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満、又は目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状αゲル組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、板状αゲル組成物の製造方法として、特許文献1に記載の製造方法を提案した。同文献に記載の製造方法においては、高級アルコール及び界面活性剤を含む油相と、水相とをスタティックミキサーに流して連続的に乳化している。油相は、該油相の相転移温度以上の温度で供給される。水相は、油相の相転移温度よりも低温で供給される。また同文献においては、水相の供給温度は、油相に含まれる高級アルコールの融点以下に設定されることが好ましいとされている。油相と水相との混合によって生じた乳化物の温度は、油相の供給温度よりは低下しているが、水相の供給温度よりは高くなっている。この乳化物を、更に第2の水相と混合することで、該乳化物を顕熱冷却し、目的とする乳化物が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−29933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の製造方法では、油相と水相との混合によって生じた乳化物を、第2の水相によって顕熱冷却するときに、該乳化物の温度が高い状態で、該乳化物に高剪断力が加わった場合、そのことに起因して板状αゲル組成物のラメラドメインのサイズが小さくなる場合があることが判明した。ラメラドメインのサイズが小さくなることは、乳化物の感触が低下する原因となる。
【0005】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術の方法よりも、感触が更に向上した板状αゲル組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、
該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程とを含み、
該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満、又は目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする、板状αゲル組成物の製造方法を提供することにより前記の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、ラメラドメインの破壊が効果的に防止され、感触の優れた板状αゲル組成物を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の製造方法を実施するための好ましい装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す製造装置における振動式の攪拌混合装置の縦断面の模式図である。
【図3】図3は、図2に示す振動式の攪拌混合装置における攪拌体の要部拡大図である。
【図4】図4は、本発明の製造方法を実施するための好ましい装置の別の実施形態を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の製造方法を実施するための好ましい装置の更に別の実施形態を示す模式図である。
【図6】図6は、実施例1で得られた板状αゲル組成物の光学顕微鏡写真像である。
【図7】図7は、実施例4で得られた板状αゲル組成物の光学顕微鏡写真像である。
【図8】図8は、比較例2で得られた板状αゲル組成物の光学顕微鏡写真像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造の対象物である板状αゲル組成物とは、界面活性剤のような両親媒性分子の六方晶形の会合体からなるα型構造(ヘキサゴナル)の層間に多量の水を保持し、板状のαゲルを形成する組成物のことである。かかる板状αゲル組成物は、ラメラドメインのサイズが大きいほどその感触が良好であるとされている。本発明の方法によれば、ラメラドメインのサイズが大きい板状αゲル組成物を容易に製造することができる。
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の製造方法を実施するための好ましい装置の一実施形態が示されている。同図に示す装置100は、第1の流動体の供給部10、第2の流動体の供給部20、及び攪拌混合部30を備えている。装置1は更に第3の流動体の供給部40も備えている。
【0011】
第1の流動体の供給部10は、混合タンク11を備えている。混合タンク11は、該タンク11の外側に付設されたジャケット12によって加熱又は冷却され、所定温度に調整されるようになっている。混合タンク11内には攪拌翼13が設置されている。攪拌翼13は、シャフト14を介して混合タンク11外に設置されたモータ15に接続されており、回転可能になっている。混合タンク11の底部には、該タンク11内に充填されている第1の流動体1を取り出すための管16が接続されている。管16は、後述する攪拌混合部30に接続されている。第1の流動体1は、管16を通じて攪拌混合部30に供給されるようになっている。第1の流動体1を定量供給することを目的として、必要に応じ、管16の途中に定量ポンプ(図示せず)を介在させてもよい。
【0012】
混合タンク11内には、目的とする板状αゲル組成物の配合原料の一部(後述する第1の配合原料)が充填される。充填された原料は、混合タンク11内において加熱下に溶融混合されて第1の流動体1となる。混合タンク11内に充填される原料及び該原料から得られる第1の流動体1の詳細については後述する。
【0013】
第2の流動体の供給部20は、タンク21を備えている。タンク21内には、水性の第2の流動体2が充填されている。タンク21の底部には、該タンク21内に充填されている第2の流動体2を取り出すための管22が接続されている。先に述べた管16と同様に、管22も、後述する攪拌混合部30に接続されている。第2の流動体2は、管22を通じて攪拌混合部30に供給されるようになっている。
【0014】
攪拌混合部30は攪拌混合装置31を備えている。攪拌混合装置31としては、振動式又は高速回転式のものを用いることができる。いずれの装置も、均一にかつ素早く対象物を混合し得るものである。攪拌混合装置31は混合性の観点から連続式が好ましく、更に攪拌混合の対象物に対して作用する剪断力が低いにもかかわらず、混合を高効率で行い得る観点から、振動式がより好ましい。本実施形態においては、振動式であって、かつ連続式の攪拌混合装置31を用いている。
【0015】
本実施形態の攪拌混合装置31は、略筒状の構造を有し、その一端側に、管16及び管22がそれぞれ接続する流入口32a,32bを有し、他端側に吐出口33を有している。吐出口33は吐出用管34に接続されている。図1においては、攪拌混合装置31が、異なる位置に2つの流入口32a,32bを有しているように表されているが、流入口の配置はこれに限られない。例えば攪拌混合装置31の一端側に流入口を1つ設け、1つの該流入口に管16及び管22の双方を接続してもよい。また、図1においては、2つの流入口32a,32bのうち、管16が接続する流入口32aが上流側に位置し、管22が接続する流入口32bが下流側に位置しているが、管16,22と流入口32a,32bとの接続関係はこの逆でもよい。ここでいう「上流」及び「下流」とは、攪拌混合装置31内を流動する流動体の流動方向に関してのものである。
【0016】
攪拌混合装置31内を流動する第1の流動体1及び第2の流動体2は、該装置31内を通過する間に、連続的に混合されて乳化した混合体になるとともに連続的に冷却される。そして、この混合体は吐出口33を通じて吐出用管34の端部から吐出される。混合体の連続的な冷却を行うために、攪拌混合装置31は、その略筒状の構造の外側に、流入口32a,32b側から吐出口33側に向けて4つのジャケット35,36,37,38がこの順で取り付けられている。各ジャケットにはそれぞれ冷却水が循環するようになっている。冷却水の温度は、適宣設定することが可能であり、これらのジャケットによって、混合体を流入口32a,32b側から吐出口33側に向けて連続的又は段階的に冷却することができる。
【0017】
図2には、振動式の攪拌混合装置31の縦断面の模式図が示されている。装置31は、管状のケーシング51内に、駆動軸52と、該駆動軸52に取り付けられた攪拌羽根53とからなる攪拌体54を備えている。駆動軸52は、バイブレータ55aによって軸方向に沿って上下振動するようになされている。
【0018】
ケーシング51は、その横断面が円形である管状のものであり、その下部付近に流入口32a,32bが設けられている。ケーシング51の上部付近には吐出口33が設けられている。流入口32a,32bからそれぞれ流入した第1及び第2の流動体は、ケーシング51内を通る間に混合されて混合体となり、該混合体が吐出口33から吐出される。
【0019】
ケーシング51内には、上述の攪拌体54が配されている。攪拌体54の駆動軸52は、ケーシング51の長手方向(縦方向)に延びている。駆動軸52の上端は、ジョイント55bを介してバイブレータ55aに接続されている。バイブレータ55aは、モータ(図示せず)とその出力軸に接続された公知のカム機構(図示せず)を備えている。カム機構は、回転部(図示せず)と揺動部(図示せず)からなる。回転部は、モータの出力軸に対して偏心して取り付けられている。揺動部は、回転部の偏心回転によって揺動するようになっている。そして、揺動部の揺動が駆動軸52に上下振動として伝達される。
【0020】
ケーシング51の内壁には、円環状の仕切部56が複数設けられている。仕切部56はいずれも同形であり、ケーシング51の内壁から水平方向へ突出している。仕切部56の中央に形成された円孔には、駆動軸52が挿入される。この円孔の直径は、駆動軸52の直径よりも大きくなっている。隣り合う2つの仕切部によってケーシング51の内部は複数の混合室57が画成される。混合室57は、ケーシング51の長手方向(縦方向)に沿って直列配置される。
【0021】
図3(a)及び(b)には、攪拌体54の要部拡大図が示されている。攪拌体54は、駆動軸52とその周面に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根53とを備えている。同図においては、攪拌羽根53は3周の螺旋状に取り付けられている。この状態の攪拌体54を一組として、ケーシング内には、各混合室57内に攪拌体54が配されている。したがって攪拌体54の組数は、混合室57の数と同じになっている。それぞれの組の攪拌体54において、攪拌羽根53の螺旋の方向は同じになっている。
【0022】
それぞれの組の攪拌体54における攪拌羽根53には1個以上の開孔58及び/又は1個以上の切り欠き59が設けられている。開孔58及び切り欠き59は、攪拌体54を駆動軸52の軸心方向からみたときに(図3(a)参照)、上下で隣り合う攪拌羽根どうしで形成位置が一致しないように設けられている。この理由は、軸方向での短絡流の発生を防止して、攪拌混合効果を高めるためである。
【0023】
以上のとおりの構成を有する振動式の攪拌混合装置31としては、例えば特開平4−235729号公報に記載のもの等を用いることができる。また振動式の攪拌混合装置31として市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えば冷化工業(株)製のバイブロミキサー(登録商標)が挙げられる。
【0024】
以上の構成を有する装置1を用いた板状αゲル組成物の製造方法について説明すると、先ず混合タンク11内に目的とする板状αゲル組成物の配合原料の一部を充填する。以下、この配合原料の一部のことを「第1の配合原料」という。第1の配合原料は、25℃において固体の油性成分(以下、「固体油性成分」ともいう。)を1種以上含んでいる。
【0025】
固体油性成分としては、脂肪族アルコール(以下、(A)成分ともいう)と界面活性剤(以下、(B)成分ともいう)が配合されていることが好ましい。脂肪族アルコール(A)としては、融点25℃以上のものが好ましく、平均炭素数12〜36、特に12〜28、とりわけ18〜24を有するものが好ましい。特に好ましいものとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルラウリルアルコール、2−ヘキシルデシルアルコール及びイソステアリルアルコール等が挙げられる。これらの脂肪族アルコールは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。特に毛髪化粧料に配合するときには、その含有量は、滑らかな使用感、柔軟性のある感触の観点から、0.05〜20質量%が好ましく、更には1〜10質量%が好ましい。特に2〜5質量%が好ましい。
【0026】
界面活性剤(B)としては、化粧品一般に用いられる非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。特に毛髪化粧料に配合するときには髪への吸着性の観点から陽イオン界面活性剤が好ましい。陽イオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム又はその塩(B−1)、若しくはエーテル型第3級アミン又はその塩(B−2)、アミド型第3級アミン又はその塩(B−3)が特に好ましい。
【0027】
[B−1:第4級アンモニウム又はその塩]
第4級アンモニウム塩としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
1−N+234- (1)
〔式(1)中、R1は炭素数16〜22、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2、R3、R4は同一の又は異なる炭素数1〜6のアルキル基、又は−(AO)mHを示す(Aは同一の又は異なる炭素数2〜4のアルキレン基、mは1〜6の整数を示し、その配列は任意である)、X-はハロゲン化物イオン又は炭素数1〜2のアルキル硫酸イオンを示す。〕
式(1)で表される第4級アンモニウム塩としては、第4級アンモニウムを有機酸及び/又は無機酸によって塩としたものを用いてもよいし、本発明で製造する板状αゲル組成物が毛髪化粧料である場合、該毛髪化粧料に酸を配合して、pH調整とともに組成物中で塩を形成させたものでもよい。式(1)で表される第4級アンモニウム塩としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルコキシトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0028】
[B−2:エーテル型第3級アミン又はその塩]
エーテル型第3級アミンとしては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
5−O−(CH2nNR67 (2)
〔式(2)中、nは1〜6の整数を示し、R5は炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R6及びR7は同一の又は異なる炭素数1〜6のアルキル基、又は−(AO)mHを示す(Aは同一の又は異なる炭素数2〜4のアルキレン基、mは1〜6の整数を示し、その配列は任意である)。〕
5は、更に、炭素数12〜24、特に炭素数14〜22の、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、特にアルキル基が好ましい。更に、R6及びR7の少なくとも一方が、炭素数1〜6のアルキル基、中でもメチル基又はエチル基が好ましく、特に双方が同じであることが好ましい。
一般式(2)で表されるエーテル型第3級アミンの塩としては、エーテル型第3級アミンを有機酸及び/又は無機酸によって塩としたものを用いてもよいし、本発明で製造する板状αゲル組成物が毛髪化粧料である場合、該毛髪化粧料に酸を配合して、pH調整とともに組成物中で塩を形成させてもよい。
一般式(2)で表されるエーテル型第3級アミン又はその塩としては、例えば、ヒドロキシエーテルアルキルアミン(又はその塩)、エーテルアミン(又はその塩)などが挙げられる。
【0029】
[B−3:アミド型第3級アミン又はその塩]
アミド型第3級アミン又はその塩としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
8−CONH−(CH2h−N(R92 (3)
〔式(3)中、R8は炭素数11〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R9は同一の又は異なる水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、hは2〜4の数を示す。〕
一般式(3)で表されるアミド型第3級アミンの塩としては、アミド型第3級アミンを有機酸及び/又は無機酸によって塩としたものを用いてもよいし、本発明で製造する板状αゲル組成物が毛髪化粧料である場合、該毛髪化粧料に酸を配合して、pH調整とともに組成物中で塩を形成させてもよい。一般式(3)で表されるアミド型第3級アミン又はその塩としては、例えば、アルキルアミドアミン(又はその塩)などが挙げられる。
【0030】
(B)成分は、1種又は2種以上の界面活性剤を併用してもよい。
特に毛髪化粧料に配合するときには、使用時に良好な柔軟性及び滑り性、並びに仕上がりの髪の自然な質感を付与する効果の観点から、その総含有量は、0.01〜20質量%が好ましく、更には0.1〜15質量%、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0031】
第1の配合原料としては(A)成分と(B)成分に加えて、脂肪酸又はその塩、芳香族スルホン酸塩、その他油性成分を配合することもできる。
【0032】
脂肪酸又はその塩としては、下記式(4)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
CH3−CHR10−(CH2nCOOH (4)
〔式(4)中、R10は水素原子、メチル基又はエチル基を示し、nは14〜22の整数を示す。〕
脂肪酸又はその塩を配合する場合は、化粧料中に0.005〜20質量%配合するのが好ましい。
【0033】
芳香族スルホン酸としては、芳香環を1つ含む2−ナフタレンスルホン酸、オキシベンゾンスルホン酸、又はグアイアズレンスルホン酸等が挙げられる。対イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。中でもスルホン酸塩が好ましく、特に2−ナフタレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
その他油性成分としては、例えばシリコーン類、高級脂肪酸、炭化水素油、天然油、エステル油、前記(B)成分以外の脂肪族アミンとその塩が挙げられる。
【0035】
第1、第2又は第3の流動体それぞれの配合原料には、前記成分に加えて他の成分を配合することができる。配合できる他の成分としては、例えば、カチオン化セルロース、ヒドロキシ化セルロース、高重合ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物、抗フケ剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、着色剤、植物抽出エキス類、酸化チタン等のパール粉体、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、その他エンサイクロペディア・オブ・シャンプー・イングリーディエンツ〔ENCYCLOPEDIA OF SHAMPOO INGREDIENTS (MICELLE PRESS)〕に記載されている成分等が挙げられる。これら他の成分は油性であれば第1の流動体に、水溶性であれば第2又は第3の流動体に配合することが好ましい。
【0036】
第1の配合原料を混合タンク11内に充填して、該タンク11を加熱することで第1の配合原料を加熱溶融させて第1の流動体となす。第1の流動体は油性のものである。第1の配合原料の加熱温度は、固体油性成分の融点に応じて適宜設定することができる。加熱温度は、第1の配合原料の融点以上が好ましく、最も融点の高い固体油性成分の該融点よりも10℃程度高めに設定することが好ましい。加熱によって固体油性成分が溶融し、第1の配合原料全体が溶融して油相の第1の流動体となる。この状態下に攪拌翼13を回転させることで混合タンク11内を攪拌し、第1の配合原料を十分に均一混合分散させる。特に限定されるものではないが、第1の流動体の温度は、例えば70〜100℃に設定することができる。
【0037】
別法として、第1の配合原料のうち、主として油性成分を予めホモミキサーやディスパーなどの予備分散手段(図示せず)を用いて予備分散させた後、これによって得られた予備分散物を混合タンク11に内に充填するとともに、第1の配合原料のうちの残部、例えば粉体成分を該タンク11に充填し、両者を該タンク11内で加熱混合して第1の流動体を得てもよい。
【0038】
第1の流動体の供給部10において第1の配合原料が十分に混合し、かつ所定の温度に達したら、混合タンク11の底部に取り付けられた管16を通じてタンク11内の第1の流動体1を取り出す。第1の流動体1は流入口32aを通じて攪拌混合装置31に供給される。攪拌混合装置31へ供給される第1の流動体1の温度は、流動性が保たれる温度以上であればよいが、固体油性成分の分散性の向上の観点から、目的とする板状αゲル組成物の固化温度以上とすることが好ましく、更に該板状αゲル組成物の固化開始温度以上とすることが好ましい。
【0039】
上述した「板状αゲル組成物の固化開始温度」とは、該板状αゲル組成物を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度で定義される。また「板状αゲル組成物の固化温度」とは、発熱ピークのピーク位置での温度で定義される。したがって、固化温度よりも、固化開始温度の方が高温である。
【0040】
混合タンク11内に第1の配合原料を充填する工程とは別に、第2の流動体の供給部20におけるタンク21内に、第2の流動体2を充填する。第2の流動体2は水性のものである。第2の流動体2としては、例えば水(イオン交換水、蒸留水、精製水)や、水に水溶性塩類や水溶性有機溶剤等の第2の配合原料を溶解した液などが用いられる。第2の流動体2に占める水の割合は、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0041】
第2の流動体2は、タンク21の底部に取り付けられた管22を通じて取り出される。第2の流動体2は流入口32bを通じて攪拌混合装置31に供給される。攪拌混合装置31へ供給される第2の流動体2の温度は、先に述べた第1の流動体1が攪拌混合装置31へ供給されるときの温度よりも低く、かつ第2の流動体2が流動可能な温度に設定されている。第2の流動体2の供給温度が、第1の流動体1の供給温度よりも低く設定されていれば、両者の混合によって生じる乳化した混合物の温度は、第1の流動体1の供給温度よりも低くなる。第2の流動体2の供給温度は、第1の流動体の供給温度や第1の流動体と第2の流動体の混合比によって適宜設定される。例えば0〜50℃に設定することができる。特に、混合物の温度を、ゲル−液晶間での相転移が起こる温度よりも低くする観点から、第2の流動体2を、固体油性成分の固化開始温度以下の温度で攪拌混合装置31へ供給することが好ましく、固体油性成分の固化温度以下の温度で攪拌混合装置31へ供給することが更に好ましい。
【0042】
上述した「固体油性成分の固化開始温度」とは、該固体油性成分を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度で定義される。また「固体油性成分の固化温度」とは、発熱ピークのピーク位置での温度で定義される。更に「固体油性成分の固化終了温度」とは、発熱ピークと、低温側でのベースラインとの交点での温度で定義される。第1の流動体が、固体油性成分を2種以上含有する場合、その固化開始温度、固化温度及び固化終了温度とは、2種以上の固体油性成分が相溶する場合は前記と同様に定義され、2種以上の固体油性成分が相溶せず発熱ピークが多数になる場合は、固化開始温度及び固化温度はそれぞれ、最も高温側のピークの立ち上がる温度及びピーク位置での温度として定義され、固化終了温度は最も低温側のピークと低温側でのベースラインとの交点として定義される。
【0043】
攪拌混合装置31内において油相の第1の流動体1と水相の第2の流動体2とが合流して混合されることで乳化が起こり、ラメラ液晶相からなる混合体が生じる。この混合体は乳化物となっている。また、第1の流動体1が、該流動体1の供給温度よりも低温で供給される第2の流動体2と混合されることで、混合時点での混合体の温度は、第1の流動体1の供給温度よりも低下する。
【0044】
攪拌混合装置31内において第1の流動体1と第2の流動体2とを混合した時点でのラメラ液晶相からなる混合体の温度は、第1の流動体1の固化開始温度未満、又は目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満となるように設定される。この理由は次のとおりである。第1の流動体1と第2の流動体2との混合によって生じたラメラ液晶相からなる混合体から、目的とする板状αゲル組成物を得るためには、該混合体を冷却してする必要がある。この冷却の間にゲル−液晶間での相転移が生じるところ、相転移の間に混合体に対して剪断力が加わるとラメラ構造が破壊されやすくなる。ラメラ構造が破壊されるとラメラドメインのサイズが小さくなる。ラメラドメインのサイズが小さくなることは、目的とする板状αゲル組成物の感触が低下する原因となるためである。この観点から、第1の流動体1と第2の流動体2とを混合した時点での混合体の温度は、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ板状αゲル組成物の固化終了温度未満であることが特に好ましい。なお、第1の流動体の固化開始温度と、板状αゲル組成物の固化終了温度とは、使用する成分の種類に応じ、第1の流動体の固化開始温度の方が高くなる場合もあれば、逆に板状αゲル組成物の固化終了温度の方が高くなる場合もある。また、第1の流動体の固化開始温度と、板状αゲル組成物の固化終了温度とが同じになる場合もある。
【0045】
「攪拌混合装置31内において第1の流動体1と第2の流動体2とを混合した時点での混合体の温度」とは、攪拌混合装置31に備えられたジャケットによる冷却がない仮想的な温度として定義され、第1の流動体1及び第2の流動体2の供給量及び比熱から計算される値であるか、又は攪拌混合装置31を用い、かつジャケットによる冷却を行わずに両流動体1,2を混合したときに実測された値のことである。
【0046】
また「第1の流動体の固化開始温度」とは、第1の流動体を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度で定義される。また「第1の流動体の固化温度」とは、発熱ピークのピーク位置での温度で定義される。
【0047】
第1の流動体1と第2の流動体2とを混合した時点での混合体の温度を、上述のように設定するには、第1の流動体1及び第2の流動体2の供給温度や供給量を適切に設定して両流動体1,2を混合すればよい。両流動体1,2を混合した時点での混合体の温度の下限値は、固形物の発生を防止する観点から、第1の流動体の固化開始温度よりも1〜25℃低くすることが好ましく、1〜10℃低くすることが更に好ましい。
【0048】
攪拌混合装置31に供給される第1の流動体1と第2の流動体2との割合は、両流動体の合計量を100%としたとき、固体油性成分を含む流動体である第1の流動体1の割合を3〜50質量%、特に5〜20質量%に設定することが、ラメラ液晶相からなる混合体を首尾良く形成し得る点から好ましい。
【0049】
なお、第1の流動体1と第2の流動体2とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体1の固化開始温度未満に設定した場合、固体油性成分の固形物が発生する可能性があるが、両流動体1,2の混合に、本実施形態で採用している振動式の攪拌混合装置31や、後述する実施形態で採用している高速攪拌式の攪拌混合装置を用いれば、均一な混合を素早く完了させることができる。
【0050】
攪拌混合装置31内の第1及び第2の流動体の混合によって生じたラメラ液晶相からなる混合体は、該攪拌混合装置31内を流動する間に、熱交換によって冷却される。熱交換による混合体の冷却は、例えば、攪拌混合装置31の外壁に備えられたジャケットに冷却液を流通させる方法により行うことができる。攪拌混合装置31には、上述のとおり4つのジャケット35,36,37,38が取り付けられている。それぞれのジャケットには、冷却液として、所定温度の冷却水が循環して、第1の流動体1と第2の流動体2との混合体の冷却のための熱交換が行われる。例えば、各ジャケットに約0〜約20℃の冷却水を流通させることができる。この場合、攪拌混合装置31の入り口側から出口側に向かうに連れて、4つのジャケット35,36,37,38に流通させる冷却水の温度を次第に低くしてもよく、あるいはすべて同じ温度にしてもよい。
【0051】
攪拌混合装置31においては攪拌体54がその軸方向に沿って上下に振動することで、ケーシング51内を通過する前記の混合体が攪拌体54に沿った流れと、攪拌羽根53に設けられた開孔58及び切り欠き59を通る流れの乱れによって混合される。そして、冷却水との熱交換によって混合体が冷却されていくと、その流動性が低下する。この場合、混合体は、攪拌体54に沿った流れと、攪拌羽根53に設けられた開孔58及び切り欠き59を通る流れの乱れによって混合されながら冷却されるので、冷却むらが生じにくくなる。また混合されることで熱伝導性が良好になる。更に攪拌混合装置31内にはデッドスペースが殆ど存在しないので、攪拌むらが生じにくい。しかも攪拌混合装置31は、混合体の流動性が高い場合でも低い場合でも良好な攪拌混合を行うことができる。攪拌混合装置31が有するこれらの利点は、混合体が有するラメラ液晶相の過度の破壊を伴わずに該混合体を冷却でき、目的とする板状αゲル組成物を首尾良く得ることができるという好ましい効果をもたらす。
【0052】
攪拌混合装置31を用いた冷却においては、攪拌混合装置31の振動数は2〜30ストローク/s、特に10〜30ストローク/sの範囲が好ましい。更に、攪拌混合装置31で冷却される間に与えられる総振動量は、50〜10000ストローク、特に200〜1000ストロークであることが好ましい。
【0053】
攪拌混合装置31内において、前記の混合体は、次第に出口側へ押し出されながら、冷却水との熱交換によって更に冷却しても良い。このようにして、混合体は連続的に冷却され、目的とする板状αゲル組成物が、攪拌混合装置31の吐出口33を経て吐出用管34から吐出される。この場合、混合体を冷却水によって冷却することが、冷却速度を早くできる点から好ましい。
【0054】
板状αゲル組成物の冷却速度を速め、板状αゲルに与えられる剪断エネルギーを低下させる観点から、ラメラ構造を維持するために、前記の混合体を熱交換によって冷却することに加えて、顕熱冷却することが好ましい。顕熱冷却を行うために、第1の流動体1と第2の流動体2とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合することができる。顕熱冷却は、攪拌混合装置31から前記混合体を吐出後、別途、連続式攪拌装置や、バッチ式攪拌装置等の装置で行っても良いし、攪拌混合装置31で連続的に行っても良い。剪断エネルギーをより低下させる観点から、連続的に行うことが好ましい。本実施形態においては、攪拌混合装置31を用いて連続的に混合することができる。
【0055】
詳細には、図1に示すように、装置100に備えられた第3の流動体の供給部40におけるタンク41内に、第3の流動体3を充填しておき、第3の流動体3を、タンク41の底部に取り付けられている管42を通じて攪拌混合装置31に連続的に供給する。供給位置は、第1及び第2の流動体の流入口32a,32bよりも下流側であって、かつ攪拌混合装置31の吐出口33よりも上流側とする。
【0056】
第3の流動体3の供給温度は、第1の流動体1と第2の流動体2とを混合した時点での混合体の温度よりも低い温度に設定することが好ましい。更に好ましくは、第3の流動体3の供給温度を1〜40℃、特に好ましくは5〜25℃に設定する。
【0057】
第3の流動体3は水性のものである。先に述べた第2の流動体2も水性のものであるところ、第3の流動体3は、第2の流動体2と同種のものでもよく、あるいは異種のものでもよい。ただし、界面活性剤と塩を形成する水溶性の酸は第3の流動体3には配合しない。第3の流動体3の組成に関しては、第2の流動体2についての説明が適宜適用される。
【0058】
第3の流動体3を用いた顕熱冷却を行う場合には、第2の流動体2の使用量は、第3の流動体3を用いない場合の第2の流動体2の使用量よりも少なくすることが、板状αゲル組成物を首尾良く形成し得る点から好ましい。詳細には、第3の流動体3を用いない場合の第2の流動体2の使用量を例えば100とした場合、第3の流動体3を用いた場合には、第2の流動体2の使用量と第3の流動体3の使用量との合計が100となるように、第2の流動体2の使用量と第3の流動体3の使用量とを振り分けることが好ましい。例えば第2の流動体2の使用量:第3の流動体3の使用量が質量比で好ましくは1:2〜10:1、更に好ましくは2:1〜3:1となるように両流動体の使用量を振り分けることができる。また、第1の流動体1と、第2及び第3の流動体の合計量との割合は、これらの3種の流動体の合計量を100%としたとき、固体油性成分を含む流動体である第1の流動体1の割合を3〜20質量%、特に5〜10質量%に設定することが、板状αゲル組成物を首尾良く形成し得る点から好ましい。
【0059】
以上のとおり、本実施形態は、混合物の調製を連続式で行い、かつ第3の流動体3による混合物の顕熱冷却も連続式で行っている。
【0060】
このようにして得られた板状αゲル組成物においては、ラメラドメインの破壊が効果的に防止されているので、使用感、特に感触が良好なものとなる。したがって、本実施形態の方法及び後述する実施形態の方法によって製造された板状αゲル組成物は、例えば毛髪用のコンディショナ、トリートメント、ヘアリンス等の各種毛髪化粧料の他に、化粧クリーム、ジェル化粧料等の皮膚用化粧料としても有用である。
【0061】
次に、本発明の第2及び第3の実施形態を、図4及び図5を参照しながら説明する。これらの実施形態について、特に説明しない点については、先に述べた実施形態に関する説明が適宜適用される。また図4及び図5において、図1ないし図3と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0062】
図4に示す第2の実施形態の装置100を用いた製造方法は、第3の流動体3を用いた顕熱冷却の方法が、図1に示す実施形態と異なっている。詳細には、図1に示す実施形態においては、振動式の攪拌混合装置31内に第3の流動体3を供給して、該攪拌混合装置31内において第3の流動体と混合体とを連続的に混合して顕熱冷却を行うのに対し、本実施形態では、バッチ式の顕熱冷却を行っている。
【0063】
本実施形態においては、図4に示すとおり、攪拌混合装置31の下流に、バッチ式攪拌装置60が配置されている。攪拌装置60はタンク61を備え、タンク61内には第3の流動体3が充填されている。タンク61内には攪拌翼62が設置されている。攪拌翼62は、シャフト63を介してタンク61外に設置されたモータ64に接続されており、回転可能になっている。
【0064】
本実施形態においては、第1の流動体1と第2の流動体2との混合によって生じた混合体を、攪拌混合装置31内を通過させることで熱交換による冷却を行う。冷却された混合体は、攪拌混合装置31の吐出口33に接続された吐出用管34から取り出される。取り出された混合体は十分に冷却された状態になっていない。この状態の混合体を、バッチ式攪拌装置60のタンク61内に充填し、攪拌翼62の回転によって、第3の流動体3と混合し顕熱冷却を行うとともに、目的とする板状αゲル組成物を得る。
【0065】
このように、本実施形態では、混合物の調製を連続式で行い、第3の流動体3による混合物の顕熱冷却をバッチ式で行っている。
【0066】
なお図4では、バッチ式攪拌装置60のタンク61内に、第3の流動体3が予め充填されている状態が示されているが、これに代えて、タンク61内に混合体を充填した後に第3の流動体3を充填し、両者を混合してもよく、あるいは混合体と第3の流動体3とをタンク61内に同時に充填して両者を混合してもよい。
【0067】
図5に示す第3の実施形態の装置100を用いた製造方法は、第1の流動体1と第2の流動体2との混合による混合体の調製の方法が、図4に示す第2の実施形態と異なっている。詳細には、図4に示す第2実施形態においては、振動式の攪拌混合装置31を用いて連続的に混合体を得るのに対し、本実施形態では、高速回転式の攪拌混合装置71を用いてバッチ式で混合体を得る。つまり本実施形態では、混合物の調製をバッチ式で行い、第3の流動体3による混合物の顕熱冷却もバッチ式で行っている。
【0068】
高速回転式の攪拌混合装置71は、ステータ(図示せず)及びロータ72を有している。ロータ72はシャフト73を介してモータ74に接続されており、それによって回転可能になっている。ロータ72の回転によってロータ72とステータとの空間に存在する混合物が高剪断力を受け、それによって混合が促進される。混合物が高剪断力を受けることは該混合物が有するラメラ液晶相の破壊の点からマイナスに作用すると考えられるかも知れないが、本実施形態においては、混合物の温度がゲル−液晶間での相転移が生じる温度以下になっているので、そのようなおそれはない。また、混合物の温度が低く設定されていることに起因して、固体油性成分の凝集物の発生が懸念されるかも知れないが、短時間でかつ均一に混合が行われるので、そのようなおそれはない。
【0069】
本実施形態で用いることができる高速回転式の攪拌混合装置71としては、例えばマイルダー(大平洋機工(株)製)、TKパイプラインホモミクサー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル((株)日本精機製作所製)、ウルトラミキサー(IKA製)などを用いることができる。
【0070】
高速回転式の攪拌混合装置71を用いた第1の流動体1と第2の流動体2との混合の条件としては、剪断速度が好ましくは10000s-1〜50000s-1,更に好ましくは15000s-1〜25000s-1であり,滞留時間が好ましくは0.1〜10秒、更に好ましくは1〜5秒である。
【0071】
なお、図5に示す第3の実施形態においては、高速回転式の攪拌混合装置71のみで第1及び第2の流動体の乳化混合と、その後の冷却が十分に行える場合には、バッチ式攪拌装置31を用いた第3の流動体による顕熱冷却を行わなくてもよい。
【0072】
以上の各実施形態にしたがい製造された板状αゲル組成物の組成について簡単に説明すると、該組成物は、主として固体油性成分、水、を含むものである。これらの成分の割合は、固体油性成分が好ましくは3〜20質量%、更に好ましくは5〜10質量%であり、水は好ましくは50〜97質量%、更に好ましくは90〜95質量%である。このような組成を有する板状αゲル組成物は、特に毛髪化粧料として有用である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0074】
〔実施例1〕
図1ないし図3に示す装置を用いて板状αゲル組成物(毛髪用コンディショナ)を製造した。第1、第2及び第3の流動体として、以下の表1ないし3に示す組成のものを用いた。第1の流動体は、表1に示す成分を85℃で加熱溶融させて得た。
【0075】
第1及び第2の流動体を、以下の表4に示す温度及び割合で振動式の攪拌混合装置31に供給し、両者を混合して混合体を得た。混合時点での混合体の温度は表4に示すとおりであった。振動式の攪拌混合装置31(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)のジャケットに冷却水を流通させておき、該攪拌混合装置31内を流動する混合体を熱交換によって冷却するようにした。ジャケット35の温度は85℃、ジャケット36の温度は45℃、ジャケット37の温度は5℃、ジャケット38の温度は5℃に設定した。また、該攪拌混合装置31の略中央部に第3の流動体を、表4に示す温度及び割合で供給して、混合体の顕熱冷却を行った。攪拌混合装置31から吐出された板状αゲル組成物の温度は表4に示すとおりであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、10ストローク/s、振幅は約5mm、総振動量は480ストロークであった。
【0076】
〔実施例2〕
実施例1において、第3の流動体を用いた顕熱冷却を行わず、かつ第1及び第2の流動体を、以下の表4に示す温度及び割合で振動式の攪拌混合装置31に供給した以外は実施例1と同様にして板状αゲル組成物を得た。
【0077】
〔実施例3〕
図4に示す装置を用いて板状αゲル組成物を製造した。第1、第2及び第3の流動体としては、実施例1と同様のものを用いた。第1及び第2の流動体を、以下の表4に示す温度及び割合で振動式の攪拌混合装置31に供給し、両者を混合して混合体を得た。混合時点での混合体の温度は表4に示すとおりであった。攪拌混合装置31から吐出された混合物を、第3の流動体が充填されたバッチ式攪拌装置(プロペラ翼、150rpm)に供給し、バッチ式の顕熱冷却を行った。第3の流動体の温度及び割合は表4に示すとおりであった。顕熱冷却によって得られた板状αゲル組成物の温度は表4に示すとおりであった。これら以外の条件は実施例1と同様とした。
【0078】
〔実施例4〕
図5に示す装置を用いて板状αゲル組成物を製造した。第1、第2及び第3の流動体としては、実施例1と同様のものを用いた。第1及び第2の流動体を、以下の表4に示す温度及び割合で高速回転式の攪拌混合装置71(IKA製のウルトラミキサー)に供給し、両者をバッチ式で混合して混合体を得た。攪拌混合装置71の運転条件は、剪断速度が20000S-1、滞留時間が2.8秒であった。混合時点での混合体の温度は表4に示すとおりであった。攪拌混合装置71から取り出した混合物を、第3の流動体が充填されたバッチ式攪拌装置に供給し、バッチ式の顕熱冷却を行った。第3の流動体の温度及び割合は表4に示すとおりであった。顕熱冷却によって得られた板状αゲル組成物の温度は表4に示すとおりであった。
【0079】
〔比較例1〕
表4に示す条件を用いた以外は実施例2と同様にして板状αゲル組成物を得た。
【0080】
〔比較例2〕
表4に示す条件を用いた以外は実施例4と同様にして板状αゲル組成物を得た。
【0081】
〔比較例3及び4〕
実施例4において、高速回転式の攪拌混合装置に代えてスタティックミキサー(ノリタケカンパニー・リミテッド製C38−12−1、内径11mm、エレメント数12、流速1.5m/s)を用いた。また表4に示す条件を用いた。これら以外は実施例4と同様にして板状αゲル組成物を得た。
【0082】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた板状αゲル組成物について、以下の方法で感触、固形物の有無、ラメラドメインのサイズ及び総合評価を行った。その結果を以下の表4に示す。また、実施例1及び4並びに比較例2について板状αゲル組成物の顕微鏡写真を撮影した。その結果を図6ないし図8に示す。
【0083】
〔感触〕
実施例及び比較例で得られた板状αゲル組成物をヘアコンディショナとして用い、その感触評価を専門パネラー5名に行わせ、協議したものを評価結果とした。なお、第1の流動体の割合が高いものは、第1の流動体の割合が低いものと同等の割合になるよう精製水で希釈してから評価した。その結果を表4に示す。
【0084】
〔固形物の有無〕
実施例及び比較例で得られた板状αゲル組成物をそのまま透明なガラス容器に入れ、外観を観察した。直径1mm以上の白い粒子が確認された場合、固形物ありとした。その結果を表4に示す。
【0085】
〔ラメラドメインのサイズ〕
板状αゲル組成物を固体油性成分濃度が1%になるよう水で希釈し、微分干渉顕微鏡で観察した。観察像から平均の投影面積円相当径を算出した。結果を表4に示す。
【0086】
〔総合評価〕
感触及び固形物の有無の結果を総合して、総合評価とした。評価基準は下記のとおりである。結果を表4に示す。
◎:固形物がなく、かつ感触が特に良好
○:固形物がなく、かつ感触が良好
△:固形物がなく、かつ感触がやや良好
×:固形物があり
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
〔実施例5〕
図1ないし図3に示す装置を用いて板状αゲル組成物(皮膚用化粧料)を製造した。第1及び第2の流動体として、以下の表5及び表6に示す組成のものを用いた。第1の流動体は、表5に示す成分を85℃で加熱溶融させて得た。
【0092】
第1及び第2の流動体を、以下の表7に示す温度及び割合で振動式の攪拌混合装置31に供給し、両者を混合して混合体を得た。混合時点での混合体の温度は表7に示すとおりであった。振動式の攪拌混合装置31(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)のジャケットに冷却水を流通させておき、該攪拌混合装置31内を流動する混合体を熱交換によって冷却するようにした。ジャケット35の温度は85℃、ジャケット36の温度は45℃、ジャケット37の温度は5℃、ジャケット38の温度は5℃に設定した。攪拌混合装置31から吐出された板状αゲル組成物の温度は表7に示すとおりであった。振動式攪拌混合装置の振動数は、10ストローク/s、振幅は約5mm、総振動量は480ストロークであった。
【0093】
〔比較例5〕
表7に示す条件を用いた以外は実施例5と同様にして板状αゲル組成物を得た。
【0094】
〔塗布時の感触〕
実施例5及び比較例5で得られた板状αゲル組成物を皮膚用化粧料として用い、その塗布時の感触評価を専門パネラー5名に行わせ、協議したものを評価結果としたその結果を表7に示す。
【0095】
〔乾燥後のしっとり感〕
実施例5及び比較例5で得られた板状αゲル組成物を皮膚用化粧料として用い、その乾燥後のしっとり感評価を専門パネラー5名に行わせ、協議したものを評価結果としたその結果を表7に示す。
【0096】
〔固形物の有無〕
実施例5及び比較例5で得られた板状αゲル組成物をそのまま透明なガラス容器に入れ、外観を観察した。直径1mm以上の白い粒子が確認された場合、固形物ありとした。その結果を表7に示す。
【0097】
〔ラメラドメインのサイズ〕
板状αゲル組成物をそのまま微分干渉顕微鏡で観察した。観察像から平均の投影面積円相当径を算出した。結果を表7に示す。
【0098】
〔総合評価〕
塗布時の感触、乾燥後のしっとり感及び固形物の有無の結果を総合して、総合評価とした。評価基準は下記のとおりである。結果を表7に示す。
◎:固形物がなく、かつ塗布時の感触と乾燥後のしっとり感が特に良好。
○:固形物がなく、かつ塗布時の感触と乾燥後のしっとり感が良好。
△:固形物がなく、かつ塗布時の感触又は乾燥後のしっとり感が良好。
×:固形物があり。
【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
表4及び7に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた板状αゲル組成物は、感触が良好であることが判る。更に、実施例5で得られた板状αゲル組成物は、乾燥後のしっとり感が良好であることが判る。このことは、ラメラドメインのサイズが大きいことから支持される。実際、図6及び図7から明らかなように、実施例1及び4の板状αゲル組成物は、ラメラドメインのサイズが大きいものである。また各実施例で得られた板状αゲル組成物は、固形物の発生が認められないことも判る。更に各実施例で得られた板状αゲル組成物は、総合的な評価も良好であることが判る。
【0103】
これに対して、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合物の温度が高い比較例1及び5では、その後の冷却過程においてラメラ構造が破壊され、ラメラドメインのサイズが小さくなり、それによって感触及び乾燥後のしっとり感が低下してしまった。比較例2についても同様である。実際、図8から明らかなように、比較例2の板状αゲル組成物は、ラメラドメインのサイズが小さいものである。
【0104】
第1の流動体と第2の流動体との混合にスタティックミキサーを用いた比較例3では、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合物の温度を低く設定した結果、固形物が発生してしまった。逆に、スタティックミキサーを用い、かつ第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合物の温度を高く設定した比較例4では、固形物の発生は認められないものの、冷却過程においてラメラ構造が破壊され、ラメラドメインのサイズが小さくなり、それによって感触が低下してしまった。
【符号の説明】
【0105】
1 第1の流動体
2 第2の流動体
3 第3の流動体
10 第1の流動体の供給部
20 第2の流動体の供給部
30 攪拌混合部
40 第3の流動体の供給部
100 製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、
該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程とを含み、
該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満、又は目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする、板状αゲル組成物の製造方法。
【請求項2】
第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度が、板状αゲル組成物の固化終了温度未満であり、かつ第1の流動体の固化開始温度未満である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを連続的に混合する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程を更に含み、
第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
第3の流動体を、前記攪拌混合装置内において前記混合体と連続的に混合する請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
振動式の前記攪拌混合装置が、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
固体の前記油性成分が、融点が25℃以上の脂肪族アルコールと界面活性剤とを含有する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記板状αゲル組成物が、毛髪化粧料又は皮膚用化粧料である請求項1ないし7のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−112629(P2013−112629A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258725(P2011−258725)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】