板状逆Fアンテナ
【課題】低姿勢であって、かつ広帯域化を実現することを可能とした板状逆Fアンテナを提供すること。
【解決手段】板状逆Fアンテナ1では、GND面と平行であって、第1放射要素12に対して長手方向に沿って部分的に延設される第2放射要素18を、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるようにして設けるようにした。
【解決手段】板状逆Fアンテナ1では、GND面と平行であって、第1放射要素12に対して長手方向に沿って部分的に延設される第2放射要素18を、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるようにして設けるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信モジュールにおいて使用される板状逆Fアンテナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、無線LAN機器等の通信モジュールにおいて、回路基板上に実装される無線通信ユニット用のアンテナとして、回路基板をGNDとして利用でき、かつ回路基板に対して比較的低姿勢で実装できる内蔵アンテナとして板状逆Fアンテナが知られている。板状逆Fアンテナは、板状の複数の要素からなり、アンテナを安価な板金によって製作でき、回路基板に対する取り付けが容易であるという利点を有しているため、様々な通信モジュールに適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−263468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板状逆Fアンテナの一例として板状逆Fアンテナ200を図1に示す。
板状逆Fアンテナ200は、回路基板のGND面上に設置される板状の接地要素100と、接地要素100と略平行に延びている板状の放射要素120(長さL1、高さH)と、接地要素100と放射要素120を短絡する板状の短絡要素140,160とを備える。短絡要素160には、回路基板からの無線信号が印加される給電部Fが設けられる。板状逆Fアンテナ200は、文字通り全体として逆Fの字の形状で構成されている。
図2には、この板状逆Fアンテナ200を回路基板のGND面上に実装した状態を示している。図2に示すように、K1×K2の大きさのGND面(X−Z平面)上に板状逆Fアンテナ200の接地要素100が取り付けられている。図2に示すように、板状逆Fアンテナ200は、回路基板上に実装される他の部品と干渉しないように回路基板上の端部に実装されることがある。
【0005】
図3は、板状逆Fアンテナ200の電磁界シミュレータによる結果であり、図2のとおり実装された板状逆Fアンテナ200の(a)VSWR(電圧定在波比;Voltage Standing Wave Ratio)特性と、(b)X−Y平面における指向性とを示している。なお、図3は、図1においてL1=70mm、H=9mm、短絡要素間の間隔=4〜5mm、各短絡要素の幅=2mm、アンテナの各要素の板厚を0.4mmとし、図2において、K1=K2=70mmとした場合の結果である。また、図8および図9に示した例では、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、中心周波数が1GHzで動作するアンテナとして設計したものである。図3から、この板状逆Fアンテナ200は、VSWR=2のときの帯域幅が約25MHzである一方、良好な全方位特性を備えていることが分かる。
【0006】
ところで、この板状逆Fアンテナ200では、アンテナが実装される通信モジュールの筐体のサイズ上の制限によって、接地要素100を基準とした放射要素120の高さ(図1における高さH)を増加させることができず、アンテナのさらなる広帯域化を実現することが困難な場合がある。
【0007】
そこで、発明の1つの側面では、低姿勢であって、かつ広帯域化を実現することを可能とした板状逆Fアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
板状の複数の要素を含む板状逆Fアンテナが提供される。
この板状逆Fアンテナは、
(A)接地面を形成する接地要素;
(B)接地面と離間しつつ接地要素と同一方向に延びている第1放射要素;
(C)接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1放射要素の端部に設けられる第1短絡要素;
(D)接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1短絡要素と離間して設けられる第2短絡要素;
(E)第1短絡要素または前記第2短絡要素のいずれかに設けられた給電部;
(F)接地面と平行で、かつ第1放射要素に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素であって、給電部の近傍において実質的に第1放射要素の幅を広げるようにして設けられている第2放射要素;
を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示の板状逆Fアンテナによれば、低姿勢であって、かつ広帯域化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】板状逆Fアンテナの一例を示す斜視図。
【図2】図1に示した板状逆Fアンテナが回路基板に実装された状態を示す図。
【図3】図2に示した状態の板状逆Fアンテナの特性の一例を示す図。
【図4】第1の実施形態の板状逆Fアンテナを示す斜視図。
【図5】第1の実施形態の板状逆Fアンテナが回路基板に実装された状態を示す図。
【図6】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの一取付例を示す図。
【図7】第1の実施形態の板状逆Fアンテナが通信モジュールの筐体に取り付けられた状態の一例を示す図。
【図8】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの好ましい取付方法を説明するため図。
【図9】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの動作を説明するための図。
【図10】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの特性例を示す図。
【図11】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの特性例を示す図。
【図12】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの改変例を示す図。
【図13】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの改変例を示す図。
【図14】第2の実施形態の板状逆Fアンテナを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1の実施形態
(1−1)板状逆Fアンテナの構造
先ず、第1の実施形態の板状逆Fアンテナの構造について、図4および図5を参照して説明する。図4は、実施形態に係る板状逆Fアンテナ1を示す斜視図である。図5は、図4に示した板状逆Fアンテナ1が通信モジュールの回路基板に実装された状態を示す図である。
図4に示すように、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、板状の複数の要素を含む板金またはフィルムアンテナである。すなわち、板状逆Fアンテナ1は、接地要素10、第1放射要素12、第1短絡要素14、第2短絡要素16および第2放射要素18を備える。本実施形態の板状逆Fアンテナ1の板金の材料は、例えば銅や洋白(銅と亜鉛、ニッケルから構成される合金)などの金属であることが好ましい。
接地要素10は、GND(グランド)面(接地面)を形成しており、このGND面は、板状逆Fアンテナ1が取り付けられる通信モジュールの回路基板のGND面(基板GND面)に取り付けられる。接地要素10の長手方向の長さは、取り付け対象となる回路基板のGND面の領域を超えない程度であればよい。具体的には、図5に示すように、K1×K2の大きさのGND面(X−Z平面)上に本実施形態の板状逆Fアンテナ1の接地要素10を取り付ける場合を想定すると、接地要素10の長手方向の長さはK1と同一か、またはそれよりも短ければよい。なお、図5に示すように、板状逆Fアンテナ1は、回路基板上に実装される他の部品と干渉しないように回路基板の基板GND面上の端部に実装されることがあるが、取り付け位置は図5に示した位置に限られない。
【0012】
第1放射要素12は、GND面と離間しつつ接地要素10と同一方向に延びている。第1放射要素12の長手方向の長さL1は、動作周波数に対応する波長をλとしたときには概ねλ/4の長さとなっており(L1=λ/4)、この長さのときに共振する。また、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、第1放射要素12の上端位置の高さがHであり、この高さHの上限値は、板状逆Fアンテナ1の取り付け対象である通信モジュールの筐体のサイズによって制限される場合がある。
【0013】
第1短絡要素14と第2短絡要素16は、接地要素10と第1放射要素12を短絡する要素である。第1短絡要素14は、板状逆Fアンテナ1の端部に設けられる。第2短絡要素16は、第1短絡要素14と離間して設けられる。図4に示した例では、第1短絡要素14と第2短絡要素16は概ね平行に配置されている。第1短絡要素14または第2短絡要素16のいずれかには、図示しない回路基板から例えば同軸線路を介して高周波信号を板状逆Fアンテナ1に印加するための給電部Fが設けられる。図4に示した例では、第2短絡要素16に給電部Fが設けられている。
【0014】
第2放射要素18は、接地要素10のGND面と平行であって、第1放射要素12に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素である。すなわち、第1放射要素12(長さL1)の長手方向に沿った、第2放射要素18の長さをL2とすると、L2<L1が成立する。また、図4に示す例では、第2放射要素18は、第1放射要素12と直交した平面に設けられている。
また、図4では第2放射要素18の幅をWで示しているが、第2放射要素18は、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるようにして設けられている。これにより、後述するように、板状逆Fアンテナ1の共振時において、第1放射要素12の幅Wの広さに応じた複数の電流経路を設けることが可能となっている。ここで、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、第1放射要素12が形成される面とGND面が直交し、第2放射要素18が形成される面とGND面とが平行になっている。そのため、第2放射要素18の幅Wを広くすることは、板状逆Fアンテナ1の高さHを大きくすることにならず、板状逆Fアンテナ1全体を低姿勢とすることができる。
【0015】
(1−2)板状逆Fアンテナの基板への取付方法
次に、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の取付例について、図6〜8を参照して説明する。
図6は、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の一取付例を示す図である。図5に示したように、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、通信モジュールの基板GND面に取り付けられた状態では、特に第1放射要素12の剛性が低く、図4に示した形状を維持することが難しいことが考えられる。そこで、図6に示すように、接地要素10と第2放射要素18の間に誘電体ブロック50を介挿し、この誘電体ブロック50に第1放射要素12を当接させる、あるいは接着させるようにしてもよい。図6に示す取付例では、誘電体ブロック50の底部が基板GND面に接着剤等で接着させられる。誘電体ブロック50の材料としては、例えばABS等のプラスチック等でよい。
【0016】
また、代替的に、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の形状を維持しつつ、取付ネジで簡便に取り付けられるようにすることもできる。以下、図7および図8を参照して、取付ネジによって本実施形態の板状逆Fアンテナ1を通信モジュールの基板に取り付ける場合の取付方法の一例について説明する。図7は、本実施形態の板状逆Fアンテナ1が通信モジュールの筐体Cに取り付けられた状態を示している。図8は、(a)図7に示す状態とするための取付方法を説明するための分解図、および(b)矢視Aによる板状逆Fアンテナ1および誘電体ブロック51の矢視図である。なお、図7および図8では、板状逆Fアンテナ1は、通信モジュールの回路基板の基板GND面上の端部に実装される場合が想定されている。図8では、通信モジュールの筐体Cが表側筐体C1と裏側筐体C2を連結させることによって形成されることが想定されている。
【0017】
図7に示すように、この取付方法を採る前提として、接地要素10と第2放射要素18の間に誘電体ブロック51を介挿される。また、図8(b)に示すように、誘電体ブロック51は第1放射要素12の一方の面に当接される。これにより、第1放射要素12が図4に示した形状を維持することが可能となる。また、図8に示すように、板状逆Fアンテナ1および基板GND面には、取付ネジを貫通させるためのネジ用孔が少なくとも2箇所設けられる。図8(b)の矢視Aに示すように、この2箇所のネジ用孔の位置は、板状逆Fアンテナ1の接地要素10において、第2放射要素18と誘電体ブロック51と離間して設けられ、これによって、取付ネジの頭が第2放射要素18および誘電体ブロック51と干渉しないようになっている。このような取付方法を採ることで、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の形状を維持しつつ、本実施形態の板状逆Fアンテナ1と基板GND面を一体的に取付ネジで簡便に取り付けることができるようになる。
【0018】
(1−3)板状逆Fアンテナの動作
次に、図9を参照して、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の動作を説明する。図9は、本実施形態の板状逆Fアンテナの動作を説明するための図である。
【0019】
仮に第2放射要素18が存在しないとすれば、第1放射要素12の長手方向の長さL1はλ/4の長さとなっており(L1=λ/4)、従来の板状逆Fアンテナのように、このλに応じた共振周波数で共振する。このときの共振モードは、給電部F近傍で電流が最大となり、第1放射要素12の先端で電流がゼロとなる。一方、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、給電部Fの近傍で実質的に第1放射要素12の幅が広がるように、第2放射要素18が設けられている。そのため、図9に示すように、第1放射要素12の幅に応じた複数の電流経路が想定される。図9では、この複数の電流を仮想的な3個の電流J1,J2,J3で示している。この複数の電流は、第2放射要素18が延設されていない第1放射要素12の領域では、共通となっている。ここで、第2放射要素18は、GND面と平行に設けられているため、第2放射要素18上の流れる複数の電流に対して、第2放射要素18とGND面の間の容量はほぼ同一である。そのため、複数の電流(図9では、電流J1,J2,J3)は同一の給電部Fの信号に対して動作する等価な電流である、ということが言える。板状逆Fアンテナ1の動作において等価な複数の電流は、図9に示したように、それぞれ電流経路が異なっているため、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は等価的に、複数の放射要素の長さに応じた複数の共振点を備えているということができる。そのため、本実施形態の板状逆Fアンテナ1によれば、広帯域化を実現することが可能となる。
【0020】
(1−4)板状逆Fアンテナの特性
次に、図10および図11を参照して、本実施形態の板状逆Fアンテナ1のL1,L2(図4参照)を変更したときの特性例について説明する。図10において、(a)は第2放射要素18の長さL2を変更したときの板状逆Fアンテナ1の帯域幅BW(Band Width)(VSWR=2のとき)を、(b)はアンテナ共振時の第1放射要素12の長さL1と第2放射要素18の長さL2の関係を、それぞれ示している。図11は、板状逆Fアンテナ1の電磁界シミュレータによる結果であり、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の(a)VSWR特性と、(b)X−Y平面における指向性とを示している。なお、図10および図11は、図4において、H=9mm、短絡要素間の間隔=4〜5mm、各短絡要素の幅=2mm、アンテナの各要素の板厚を0.4mmとし、図5において、K1=K2=70mmとした場合の結果である。また、図10および図11に示した例では、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、中心周波数(動作周波数)が1GHzで動作するアンテナとして設計したものである。
【0021】
図10では、接地要素10と第2放射要素18の間に誘電体ブロックが介挿されていない場合、つまり空気(air)が挿入されている場合と、誘電体ブロック(比誘電率をεr=3とする。)が介挿されている場合とを示している。また、第2放射要素18の幅Wが5mmの場合と、10mmの場合とを示している。
図10(b)から、空気(air)が挿入されている場合には、L1が板状逆Fアンテナ1の動作周波数のλ/4に相当する約70mm(1GHzではλ=300mm)であるときに共振していることが分かる。誘電体ブロック(比誘電率をεr=3)が挿入されている場合には、誘電体による波長短縮効果から等価的にアンテナ実効長が短くなり、L1が約54mmであるときに共振していることが分かる。
【0022】
図10(a)を参照すると、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、第2放射要素18を設けない場合(図でL2=0の場合)と比較して、第2放射要素18の大きさ(L2,W)にもよるが、アンテナの帯域幅が相当広くなっていることが分かる。例えば、空気(air)の挿入、W=10mmおよびL2=40mmの条件下で、アンテナの帯域幅は40%増加している(25MHz→35MHz)。
【0023】
また、図10(a)を参照すると、第2放射要素18の長さL2を長くし過ぎる場合には、アンテナの帯域幅の向上代が低下していくことが分かる。例えば、空気(air)の挿入、W=10mmおよびL2=40mmの条件下では、0<L2(mm)≦40の範囲では帯域幅BWはL2が増加するにつれて単調増加するが、L2(mm)=40をピークとして、L2(mm)>40の範囲では、帯域幅BWはL2が増加するにつれて減少していく。
このようなことが生ずる理由は、L2を長くし過ぎると、図9に示した、板状逆Fアンテナ1の動作において等価な複数の電流が生じ難くなり、放射要素の幅が全域で広くなった板状逆Fアンテナと同一の特性に近くなっていくためである。放射要素の幅が全域で広くなると、電流経路が異なる複数の共振モードが生じない。L2を長くし過ぎる場合であってもL2=L1でなければ、等価な複数の電流による効果はある程度得られると考えられるが、共振時における第1放射要素12の先端近傍における電流はゼロに近く、等価な複数の電流の分散が生じ難くなるため、その効果は限られる。
よって、第2放射要素18を設けることで帯域幅は増加するが、その増加代を極大化するためには、第2放射要素18の長さL2は概ね、L1×1/4〜L1×3/4の範囲にあることが好ましい。
【0024】
図10の(a)をさらに参照すると、第2放射要素18の幅Wが広いほどアンテナの帯域幅も増加すると言える。しかしながら、第2放射要素18の幅Wが広くなり過ぎるとことは、第1放射要素12と直交する方向で意図しない共振が生じる虞がある。つまり、本実施形態の板状逆Fアンテナ1をマルチバンドとして動作させたくない場合、第2放射要素18の幅Wを広くし過ぎると、アンテナとしての動作上好ましくない状況が生ずる。また、第2放射要素18の幅Wを広くし過ぎると、取り付け対象となる通信モジュールの基板上の他の部品と干渉する虞もある。かかる観点から、第2放射要素18の幅は概ね、λ/15(1GHzで約20mm)以下とすることが好ましい。
【0025】
図11を参照すると、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、空気(air)の挿入、W=5mmおよびL2=40mmの条件下での特性の一例が示されるが、(a)に示すようにVSWR=2のときの帯域幅が約31MHzであり、図3に示したものと比較して広帯域化が実現できていることが分かる。また、(b)に示すように、この板状逆Fアンテナ1は、図3に示したものと同様、良好な全方位特性を備えていることが分かる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、GND面と平行であって、第1放射要素12に対して長手方向に沿って部分的に延設される第2放射要素18を、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるようにして設けるようにした。そのため、本実施形態の板状逆Fアンテナ1によれば、低姿勢であって、かつアンテナの広帯域化を実現することができる。
【0027】
(1−5)変形例
本実施形態の板状逆Fアンテナは、図4に示した形状以外の様々な形状に改変することができる。
例えば、板状逆Fアンテナ1は、取り付け対象となる通信モジュールの筐体のサイズによる制約条件に応じて、適宜改変することができる。例えば、図12に例示するように、第1放射要素12の長手方向において筐体のサイズに制限がある場合には、その筐体にアンテナを収容できるように、第1放射要素12の先端部に折り曲げ部12aを設け、アンテナ実効長を確保しつつ通信モジュールの所定の大きさの筐体に収容できるようにしてもよい。
【0028】
また、図4では、第2放射要素は矩形としたが、これに限られない。GND面と平行であって、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるようにして設けられている限り、第2放射要素の形状は矩形に限られない。第2放射要素が矩形以外の場合の例を図13に示す。図13に示す第2放射要素28は、第1放射要素12の第1短絡要素14の側の端から徐々にその幅が小さくなるような形状となっている。図13に示す第2放射要素28もまた、GND面と平行であって、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるという条件を満たしている。
【0029】
(2)第2の実施形態
以下、第2の実施形態の板状逆Fアンテナについて説明する。
第2の実施形態の板状逆Fアンテナの構造について、図14を参照して説明する。図14は、本実施形態に係る板状逆Fアンテナ2を示す斜視図である。
図14に示すように、本実施形態の板状逆Fアンテナ2は、前述した板状逆Fアンテナ1と同様、板状の複数の要素を含む板金またはフィルムアンテナである。すなわち、板状逆Fアンテナ2は、接地要素20、第1放射要素22、第1短絡要素24、第2短絡要素26および第2放射要素38を備える。
【0030】
接地要素20は、GND面(接地面)を形成しており、このGND面は、板状逆Fアンテナ2が取り付けられる通信モジュールの回路基板のGND面(基板GND面)に取り付けられる。
【0031】
第1放射要素22は、GND面と離間しつつ接地要素20と同一方向に延びている。本実施形態では、第1の実施形態の場合と異なり、第1放射要素22は、GND面と平行である。第1放射要素22の長手方向の長さは、動作周波数に対応する波長をλとしたときには概ねλ/4の長さとなっており、この長さのときに共振する。また、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、第1放射要素22の面のGND面からの高さの上限値は、板状逆Fアンテナ2の取り付け対象である通信モジュールの筐体のサイズによって制限される場合がある。
【0032】
第1短絡要素24と第2短絡要素26は、接地要素20と第1放射要素22を短絡する要素である。第1短絡要素24は、板状逆Fアンテナ2の端部に設けられる。第2短絡要素26は、第1短絡要素24と離間して設けられる。図14に示した例では、第1短絡要素24と第2短絡要素26は概ね平行に配置されている。第1短絡要素24または第2短絡要素26のいずれかには、図示しない回路基板から例えば同軸線路を介して高周波信号を板状逆Fアンテナ2に印加するための給電部Fが設けられる。図14に示した例では、第2短絡要素26に給電部Fが設けられている。
【0033】
第2放射要素38は、接地要素20のGND面と平行であって、第1放射要素22に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素である。図14に示す例では、第2放射要素38は、第1放射要素22と同一平面に設けられている。
また、第1の実施形態の第2放射要素18と同様に、本実施形態の第2放射要素38は、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素22の幅を広げるようにして設けられている。これにより、板状逆Fアンテナ2の共振時において、第1放射要素22の幅の広さに応じた複数の電流経路を設けることが可能となっている。板状逆Fアンテナ2の共振動作は、第1の実施形態で述べた動作を同様である。ここで、本実施形態の板状逆Fアンテナ2では、第1放射要素22および第2放射要素38が形成される面とGND面が平行になっている。そのため、第2放射要素38の幅を広くすることは、板状逆Fアンテナ2の高さを大きくすることにならず、板状逆Fアンテナ2全体を低姿勢とすることができる。
【0034】
図14に示した構成を採ることで、本実施形態の板状逆Fアンテナ2においても、GND面と平行であって、第1放射要素22に対して長手方向に沿って部分的に延設される第2放射要素38を、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素22の幅を広げるようにして設けることができる。そのため、本実施形態の板状逆Fアンテナ2によれば、第1の実施形態のアンテナと同様に、低姿勢であって、かつアンテナの広帯域化を実現することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の板状逆Fアンテナは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0036】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0037】
(付記1)
板状の複数の要素を含む板状逆Fアンテナであって、
接地面を形成する接地要素と、
前記接地面と離間しつつ接地要素と同一方向に延びている第1放射要素と、
接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1放射要素の端部に設けられる第1短絡要素と、
接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1短絡要素と離間して設けられる第2短絡要素と、
前記第1短絡要素または前記第2短絡要素のいずれかに設けられた給電部と、
前記接地面と平行で、かつ第1放射要素に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素であって、前記給電部の近傍において実質的に前記第1放射要素の幅を広げるようにして設けられている第2放射要素と、
を備えた、板状逆Fアンテナ。
【0038】
(付記2)
前記第2放射要素は、前記第1放射要素と直交した平面に設けられていることを特徴とする、
付記1に記載された板状逆Fアンテナ。
【0039】
(付記3)
前記第2放射要素は、前記第1放射要素と同一平面に設けられていることを特徴とする、
付記1に記載された板状逆Fアンテナ。
【0040】
(付記4)
前記第1放射要素の長手方向の長さをL1としたとき、前記第2放射要素の長手方向の長さはL1×1/4〜L1×3/4の範囲にあることを特徴とする、
付記1〜3のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【0041】
(付記5)
前記第2放射要素は、前記第1放射要素の両端のうち前記第1短絡要素が設けられている端から、第1放射要素の長手方向に沿って延設されている矩形要素であることを特徴とする、
付記1〜4のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【0042】
(付記6)
前記第2放射要素は、前記第1放射要素の両端のうち前記第1短絡要素が設けられている端から、第1放射要素の長手方向へ延びるにつれて幅が狭くなっている要素であることを特徴とする、
付記1〜4のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【0043】
(付記7)
前記第1放射要素と前記接地要素の間に介挿される誘電体ブロックをさらに備えることを特徴とする、
付記1〜6のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【符号の説明】
【0044】
1,2…板状逆Fアンテナ
10,20…接地要素
12,22…第1放射要素
14,24…第1短絡要素
16,26…第2短絡要素
18,28,38…第2放射要素
F…給電部
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信モジュールにおいて使用される板状逆Fアンテナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、無線LAN機器等の通信モジュールにおいて、回路基板上に実装される無線通信ユニット用のアンテナとして、回路基板をGNDとして利用でき、かつ回路基板に対して比較的低姿勢で実装できる内蔵アンテナとして板状逆Fアンテナが知られている。板状逆Fアンテナは、板状の複数の要素からなり、アンテナを安価な板金によって製作でき、回路基板に対する取り付けが容易であるという利点を有しているため、様々な通信モジュールに適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−263468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板状逆Fアンテナの一例として板状逆Fアンテナ200を図1に示す。
板状逆Fアンテナ200は、回路基板のGND面上に設置される板状の接地要素100と、接地要素100と略平行に延びている板状の放射要素120(長さL1、高さH)と、接地要素100と放射要素120を短絡する板状の短絡要素140,160とを備える。短絡要素160には、回路基板からの無線信号が印加される給電部Fが設けられる。板状逆Fアンテナ200は、文字通り全体として逆Fの字の形状で構成されている。
図2には、この板状逆Fアンテナ200を回路基板のGND面上に実装した状態を示している。図2に示すように、K1×K2の大きさのGND面(X−Z平面)上に板状逆Fアンテナ200の接地要素100が取り付けられている。図2に示すように、板状逆Fアンテナ200は、回路基板上に実装される他の部品と干渉しないように回路基板上の端部に実装されることがある。
【0005】
図3は、板状逆Fアンテナ200の電磁界シミュレータによる結果であり、図2のとおり実装された板状逆Fアンテナ200の(a)VSWR(電圧定在波比;Voltage Standing Wave Ratio)特性と、(b)X−Y平面における指向性とを示している。なお、図3は、図1においてL1=70mm、H=9mm、短絡要素間の間隔=4〜5mm、各短絡要素の幅=2mm、アンテナの各要素の板厚を0.4mmとし、図2において、K1=K2=70mmとした場合の結果である。また、図8および図9に示した例では、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、中心周波数が1GHzで動作するアンテナとして設計したものである。図3から、この板状逆Fアンテナ200は、VSWR=2のときの帯域幅が約25MHzである一方、良好な全方位特性を備えていることが分かる。
【0006】
ところで、この板状逆Fアンテナ200では、アンテナが実装される通信モジュールの筐体のサイズ上の制限によって、接地要素100を基準とした放射要素120の高さ(図1における高さH)を増加させることができず、アンテナのさらなる広帯域化を実現することが困難な場合がある。
【0007】
そこで、発明の1つの側面では、低姿勢であって、かつ広帯域化を実現することを可能とした板状逆Fアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
板状の複数の要素を含む板状逆Fアンテナが提供される。
この板状逆Fアンテナは、
(A)接地面を形成する接地要素;
(B)接地面と離間しつつ接地要素と同一方向に延びている第1放射要素;
(C)接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1放射要素の端部に設けられる第1短絡要素;
(D)接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1短絡要素と離間して設けられる第2短絡要素;
(E)第1短絡要素または前記第2短絡要素のいずれかに設けられた給電部;
(F)接地面と平行で、かつ第1放射要素に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素であって、給電部の近傍において実質的に第1放射要素の幅を広げるようにして設けられている第2放射要素;
を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示の板状逆Fアンテナによれば、低姿勢であって、かつ広帯域化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】板状逆Fアンテナの一例を示す斜視図。
【図2】図1に示した板状逆Fアンテナが回路基板に実装された状態を示す図。
【図3】図2に示した状態の板状逆Fアンテナの特性の一例を示す図。
【図4】第1の実施形態の板状逆Fアンテナを示す斜視図。
【図5】第1の実施形態の板状逆Fアンテナが回路基板に実装された状態を示す図。
【図6】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの一取付例を示す図。
【図7】第1の実施形態の板状逆Fアンテナが通信モジュールの筐体に取り付けられた状態の一例を示す図。
【図8】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの好ましい取付方法を説明するため図。
【図9】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの動作を説明するための図。
【図10】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの特性例を示す図。
【図11】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの特性例を示す図。
【図12】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの改変例を示す図。
【図13】第1の実施形態の板状逆Fアンテナの改変例を示す図。
【図14】第2の実施形態の板状逆Fアンテナを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1の実施形態
(1−1)板状逆Fアンテナの構造
先ず、第1の実施形態の板状逆Fアンテナの構造について、図4および図5を参照して説明する。図4は、実施形態に係る板状逆Fアンテナ1を示す斜視図である。図5は、図4に示した板状逆Fアンテナ1が通信モジュールの回路基板に実装された状態を示す図である。
図4に示すように、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、板状の複数の要素を含む板金またはフィルムアンテナである。すなわち、板状逆Fアンテナ1は、接地要素10、第1放射要素12、第1短絡要素14、第2短絡要素16および第2放射要素18を備える。本実施形態の板状逆Fアンテナ1の板金の材料は、例えば銅や洋白(銅と亜鉛、ニッケルから構成される合金)などの金属であることが好ましい。
接地要素10は、GND(グランド)面(接地面)を形成しており、このGND面は、板状逆Fアンテナ1が取り付けられる通信モジュールの回路基板のGND面(基板GND面)に取り付けられる。接地要素10の長手方向の長さは、取り付け対象となる回路基板のGND面の領域を超えない程度であればよい。具体的には、図5に示すように、K1×K2の大きさのGND面(X−Z平面)上に本実施形態の板状逆Fアンテナ1の接地要素10を取り付ける場合を想定すると、接地要素10の長手方向の長さはK1と同一か、またはそれよりも短ければよい。なお、図5に示すように、板状逆Fアンテナ1は、回路基板上に実装される他の部品と干渉しないように回路基板の基板GND面上の端部に実装されることがあるが、取り付け位置は図5に示した位置に限られない。
【0012】
第1放射要素12は、GND面と離間しつつ接地要素10と同一方向に延びている。第1放射要素12の長手方向の長さL1は、動作周波数に対応する波長をλとしたときには概ねλ/4の長さとなっており(L1=λ/4)、この長さのときに共振する。また、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、第1放射要素12の上端位置の高さがHであり、この高さHの上限値は、板状逆Fアンテナ1の取り付け対象である通信モジュールの筐体のサイズによって制限される場合がある。
【0013】
第1短絡要素14と第2短絡要素16は、接地要素10と第1放射要素12を短絡する要素である。第1短絡要素14は、板状逆Fアンテナ1の端部に設けられる。第2短絡要素16は、第1短絡要素14と離間して設けられる。図4に示した例では、第1短絡要素14と第2短絡要素16は概ね平行に配置されている。第1短絡要素14または第2短絡要素16のいずれかには、図示しない回路基板から例えば同軸線路を介して高周波信号を板状逆Fアンテナ1に印加するための給電部Fが設けられる。図4に示した例では、第2短絡要素16に給電部Fが設けられている。
【0014】
第2放射要素18は、接地要素10のGND面と平行であって、第1放射要素12に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素である。すなわち、第1放射要素12(長さL1)の長手方向に沿った、第2放射要素18の長さをL2とすると、L2<L1が成立する。また、図4に示す例では、第2放射要素18は、第1放射要素12と直交した平面に設けられている。
また、図4では第2放射要素18の幅をWで示しているが、第2放射要素18は、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるようにして設けられている。これにより、後述するように、板状逆Fアンテナ1の共振時において、第1放射要素12の幅Wの広さに応じた複数の電流経路を設けることが可能となっている。ここで、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、第1放射要素12が形成される面とGND面が直交し、第2放射要素18が形成される面とGND面とが平行になっている。そのため、第2放射要素18の幅Wを広くすることは、板状逆Fアンテナ1の高さHを大きくすることにならず、板状逆Fアンテナ1全体を低姿勢とすることができる。
【0015】
(1−2)板状逆Fアンテナの基板への取付方法
次に、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の取付例について、図6〜8を参照して説明する。
図6は、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の一取付例を示す図である。図5に示したように、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、通信モジュールの基板GND面に取り付けられた状態では、特に第1放射要素12の剛性が低く、図4に示した形状を維持することが難しいことが考えられる。そこで、図6に示すように、接地要素10と第2放射要素18の間に誘電体ブロック50を介挿し、この誘電体ブロック50に第1放射要素12を当接させる、あるいは接着させるようにしてもよい。図6に示す取付例では、誘電体ブロック50の底部が基板GND面に接着剤等で接着させられる。誘電体ブロック50の材料としては、例えばABS等のプラスチック等でよい。
【0016】
また、代替的に、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の形状を維持しつつ、取付ネジで簡便に取り付けられるようにすることもできる。以下、図7および図8を参照して、取付ネジによって本実施形態の板状逆Fアンテナ1を通信モジュールの基板に取り付ける場合の取付方法の一例について説明する。図7は、本実施形態の板状逆Fアンテナ1が通信モジュールの筐体Cに取り付けられた状態を示している。図8は、(a)図7に示す状態とするための取付方法を説明するための分解図、および(b)矢視Aによる板状逆Fアンテナ1および誘電体ブロック51の矢視図である。なお、図7および図8では、板状逆Fアンテナ1は、通信モジュールの回路基板の基板GND面上の端部に実装される場合が想定されている。図8では、通信モジュールの筐体Cが表側筐体C1と裏側筐体C2を連結させることによって形成されることが想定されている。
【0017】
図7に示すように、この取付方法を採る前提として、接地要素10と第2放射要素18の間に誘電体ブロック51を介挿される。また、図8(b)に示すように、誘電体ブロック51は第1放射要素12の一方の面に当接される。これにより、第1放射要素12が図4に示した形状を維持することが可能となる。また、図8に示すように、板状逆Fアンテナ1および基板GND面には、取付ネジを貫通させるためのネジ用孔が少なくとも2箇所設けられる。図8(b)の矢視Aに示すように、この2箇所のネジ用孔の位置は、板状逆Fアンテナ1の接地要素10において、第2放射要素18と誘電体ブロック51と離間して設けられ、これによって、取付ネジの頭が第2放射要素18および誘電体ブロック51と干渉しないようになっている。このような取付方法を採ることで、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の形状を維持しつつ、本実施形態の板状逆Fアンテナ1と基板GND面を一体的に取付ネジで簡便に取り付けることができるようになる。
【0018】
(1−3)板状逆Fアンテナの動作
次に、図9を参照して、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の動作を説明する。図9は、本実施形態の板状逆Fアンテナの動作を説明するための図である。
【0019】
仮に第2放射要素18が存在しないとすれば、第1放射要素12の長手方向の長さL1はλ/4の長さとなっており(L1=λ/4)、従来の板状逆Fアンテナのように、このλに応じた共振周波数で共振する。このときの共振モードは、給電部F近傍で電流が最大となり、第1放射要素12の先端で電流がゼロとなる。一方、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、給電部Fの近傍で実質的に第1放射要素12の幅が広がるように、第2放射要素18が設けられている。そのため、図9に示すように、第1放射要素12の幅に応じた複数の電流経路が想定される。図9では、この複数の電流を仮想的な3個の電流J1,J2,J3で示している。この複数の電流は、第2放射要素18が延設されていない第1放射要素12の領域では、共通となっている。ここで、第2放射要素18は、GND面と平行に設けられているため、第2放射要素18上の流れる複数の電流に対して、第2放射要素18とGND面の間の容量はほぼ同一である。そのため、複数の電流(図9では、電流J1,J2,J3)は同一の給電部Fの信号に対して動作する等価な電流である、ということが言える。板状逆Fアンテナ1の動作において等価な複数の電流は、図9に示したように、それぞれ電流経路が異なっているため、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は等価的に、複数の放射要素の長さに応じた複数の共振点を備えているということができる。そのため、本実施形態の板状逆Fアンテナ1によれば、広帯域化を実現することが可能となる。
【0020】
(1−4)板状逆Fアンテナの特性
次に、図10および図11を参照して、本実施形態の板状逆Fアンテナ1のL1,L2(図4参照)を変更したときの特性例について説明する。図10において、(a)は第2放射要素18の長さL2を変更したときの板状逆Fアンテナ1の帯域幅BW(Band Width)(VSWR=2のとき)を、(b)はアンテナ共振時の第1放射要素12の長さL1と第2放射要素18の長さL2の関係を、それぞれ示している。図11は、板状逆Fアンテナ1の電磁界シミュレータによる結果であり、本実施形態の板状逆Fアンテナ1の(a)VSWR特性と、(b)X−Y平面における指向性とを示している。なお、図10および図11は、図4において、H=9mm、短絡要素間の間隔=4〜5mm、各短絡要素の幅=2mm、アンテナの各要素の板厚を0.4mmとし、図5において、K1=K2=70mmとした場合の結果である。また、図10および図11に示した例では、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、中心周波数(動作周波数)が1GHzで動作するアンテナとして設計したものである。
【0021】
図10では、接地要素10と第2放射要素18の間に誘電体ブロックが介挿されていない場合、つまり空気(air)が挿入されている場合と、誘電体ブロック(比誘電率をεr=3とする。)が介挿されている場合とを示している。また、第2放射要素18の幅Wが5mmの場合と、10mmの場合とを示している。
図10(b)から、空気(air)が挿入されている場合には、L1が板状逆Fアンテナ1の動作周波数のλ/4に相当する約70mm(1GHzではλ=300mm)であるときに共振していることが分かる。誘電体ブロック(比誘電率をεr=3)が挿入されている場合には、誘電体による波長短縮効果から等価的にアンテナ実効長が短くなり、L1が約54mmであるときに共振していることが分かる。
【0022】
図10(a)を参照すると、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、第2放射要素18を設けない場合(図でL2=0の場合)と比較して、第2放射要素18の大きさ(L2,W)にもよるが、アンテナの帯域幅が相当広くなっていることが分かる。例えば、空気(air)の挿入、W=10mmおよびL2=40mmの条件下で、アンテナの帯域幅は40%増加している(25MHz→35MHz)。
【0023】
また、図10(a)を参照すると、第2放射要素18の長さL2を長くし過ぎる場合には、アンテナの帯域幅の向上代が低下していくことが分かる。例えば、空気(air)の挿入、W=10mmおよびL2=40mmの条件下では、0<L2(mm)≦40の範囲では帯域幅BWはL2が増加するにつれて単調増加するが、L2(mm)=40をピークとして、L2(mm)>40の範囲では、帯域幅BWはL2が増加するにつれて減少していく。
このようなことが生ずる理由は、L2を長くし過ぎると、図9に示した、板状逆Fアンテナ1の動作において等価な複数の電流が生じ難くなり、放射要素の幅が全域で広くなった板状逆Fアンテナと同一の特性に近くなっていくためである。放射要素の幅が全域で広くなると、電流経路が異なる複数の共振モードが生じない。L2を長くし過ぎる場合であってもL2=L1でなければ、等価な複数の電流による効果はある程度得られると考えられるが、共振時における第1放射要素12の先端近傍における電流はゼロに近く、等価な複数の電流の分散が生じ難くなるため、その効果は限られる。
よって、第2放射要素18を設けることで帯域幅は増加するが、その増加代を極大化するためには、第2放射要素18の長さL2は概ね、L1×1/4〜L1×3/4の範囲にあることが好ましい。
【0024】
図10の(a)をさらに参照すると、第2放射要素18の幅Wが広いほどアンテナの帯域幅も増加すると言える。しかしながら、第2放射要素18の幅Wが広くなり過ぎるとことは、第1放射要素12と直交する方向で意図しない共振が生じる虞がある。つまり、本実施形態の板状逆Fアンテナ1をマルチバンドとして動作させたくない場合、第2放射要素18の幅Wを広くし過ぎると、アンテナとしての動作上好ましくない状況が生ずる。また、第2放射要素18の幅Wを広くし過ぎると、取り付け対象となる通信モジュールの基板上の他の部品と干渉する虞もある。かかる観点から、第2放射要素18の幅は概ね、λ/15(1GHzで約20mm)以下とすることが好ましい。
【0025】
図11を参照すると、本実施形態の板状逆Fアンテナ1は、空気(air)の挿入、W=5mmおよびL2=40mmの条件下での特性の一例が示されるが、(a)に示すようにVSWR=2のときの帯域幅が約31MHzであり、図3に示したものと比較して広帯域化が実現できていることが分かる。また、(b)に示すように、この板状逆Fアンテナ1は、図3に示したものと同様、良好な全方位特性を備えていることが分かる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、GND面と平行であって、第1放射要素12に対して長手方向に沿って部分的に延設される第2放射要素18を、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるようにして設けるようにした。そのため、本実施形態の板状逆Fアンテナ1によれば、低姿勢であって、かつアンテナの広帯域化を実現することができる。
【0027】
(1−5)変形例
本実施形態の板状逆Fアンテナは、図4に示した形状以外の様々な形状に改変することができる。
例えば、板状逆Fアンテナ1は、取り付け対象となる通信モジュールの筐体のサイズによる制約条件に応じて、適宜改変することができる。例えば、図12に例示するように、第1放射要素12の長手方向において筐体のサイズに制限がある場合には、その筐体にアンテナを収容できるように、第1放射要素12の先端部に折り曲げ部12aを設け、アンテナ実効長を確保しつつ通信モジュールの所定の大きさの筐体に収容できるようにしてもよい。
【0028】
また、図4では、第2放射要素は矩形としたが、これに限られない。GND面と平行であって、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるようにして設けられている限り、第2放射要素の形状は矩形に限られない。第2放射要素が矩形以外の場合の例を図13に示す。図13に示す第2放射要素28は、第1放射要素12の第1短絡要素14の側の端から徐々にその幅が小さくなるような形状となっている。図13に示す第2放射要素28もまた、GND面と平行であって、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素12の幅を広げるという条件を満たしている。
【0029】
(2)第2の実施形態
以下、第2の実施形態の板状逆Fアンテナについて説明する。
第2の実施形態の板状逆Fアンテナの構造について、図14を参照して説明する。図14は、本実施形態に係る板状逆Fアンテナ2を示す斜視図である。
図14に示すように、本実施形態の板状逆Fアンテナ2は、前述した板状逆Fアンテナ1と同様、板状の複数の要素を含む板金またはフィルムアンテナである。すなわち、板状逆Fアンテナ2は、接地要素20、第1放射要素22、第1短絡要素24、第2短絡要素26および第2放射要素38を備える。
【0030】
接地要素20は、GND面(接地面)を形成しており、このGND面は、板状逆Fアンテナ2が取り付けられる通信モジュールの回路基板のGND面(基板GND面)に取り付けられる。
【0031】
第1放射要素22は、GND面と離間しつつ接地要素20と同一方向に延びている。本実施形態では、第1の実施形態の場合と異なり、第1放射要素22は、GND面と平行である。第1放射要素22の長手方向の長さは、動作周波数に対応する波長をλとしたときには概ねλ/4の長さとなっており、この長さのときに共振する。また、本実施形態の板状逆Fアンテナ1では、第1放射要素22の面のGND面からの高さの上限値は、板状逆Fアンテナ2の取り付け対象である通信モジュールの筐体のサイズによって制限される場合がある。
【0032】
第1短絡要素24と第2短絡要素26は、接地要素20と第1放射要素22を短絡する要素である。第1短絡要素24は、板状逆Fアンテナ2の端部に設けられる。第2短絡要素26は、第1短絡要素24と離間して設けられる。図14に示した例では、第1短絡要素24と第2短絡要素26は概ね平行に配置されている。第1短絡要素24または第2短絡要素26のいずれかには、図示しない回路基板から例えば同軸線路を介して高周波信号を板状逆Fアンテナ2に印加するための給電部Fが設けられる。図14に示した例では、第2短絡要素26に給電部Fが設けられている。
【0033】
第2放射要素38は、接地要素20のGND面と平行であって、第1放射要素22に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素である。図14に示す例では、第2放射要素38は、第1放射要素22と同一平面に設けられている。
また、第1の実施形態の第2放射要素18と同様に、本実施形態の第2放射要素38は、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素22の幅を広げるようにして設けられている。これにより、板状逆Fアンテナ2の共振時において、第1放射要素22の幅の広さに応じた複数の電流経路を設けることが可能となっている。板状逆Fアンテナ2の共振動作は、第1の実施形態で述べた動作を同様である。ここで、本実施形態の板状逆Fアンテナ2では、第1放射要素22および第2放射要素38が形成される面とGND面が平行になっている。そのため、第2放射要素38の幅を広くすることは、板状逆Fアンテナ2の高さを大きくすることにならず、板状逆Fアンテナ2全体を低姿勢とすることができる。
【0034】
図14に示した構成を採ることで、本実施形態の板状逆Fアンテナ2においても、GND面と平行であって、第1放射要素22に対して長手方向に沿って部分的に延設される第2放射要素38を、給電部Fの近傍において実質的に第1放射要素22の幅を広げるようにして設けることができる。そのため、本実施形態の板状逆Fアンテナ2によれば、第1の実施形態のアンテナと同様に、低姿勢であって、かつアンテナの広帯域化を実現することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の板状逆Fアンテナは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0036】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0037】
(付記1)
板状の複数の要素を含む板状逆Fアンテナであって、
接地面を形成する接地要素と、
前記接地面と離間しつつ接地要素と同一方向に延びている第1放射要素と、
接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1放射要素の端部に設けられる第1短絡要素と、
接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1短絡要素と離間して設けられる第2短絡要素と、
前記第1短絡要素または前記第2短絡要素のいずれかに設けられた給電部と、
前記接地面と平行で、かつ第1放射要素に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素であって、前記給電部の近傍において実質的に前記第1放射要素の幅を広げるようにして設けられている第2放射要素と、
を備えた、板状逆Fアンテナ。
【0038】
(付記2)
前記第2放射要素は、前記第1放射要素と直交した平面に設けられていることを特徴とする、
付記1に記載された板状逆Fアンテナ。
【0039】
(付記3)
前記第2放射要素は、前記第1放射要素と同一平面に設けられていることを特徴とする、
付記1に記載された板状逆Fアンテナ。
【0040】
(付記4)
前記第1放射要素の長手方向の長さをL1としたとき、前記第2放射要素の長手方向の長さはL1×1/4〜L1×3/4の範囲にあることを特徴とする、
付記1〜3のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【0041】
(付記5)
前記第2放射要素は、前記第1放射要素の両端のうち前記第1短絡要素が設けられている端から、第1放射要素の長手方向に沿って延設されている矩形要素であることを特徴とする、
付記1〜4のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【0042】
(付記6)
前記第2放射要素は、前記第1放射要素の両端のうち前記第1短絡要素が設けられている端から、第1放射要素の長手方向へ延びるにつれて幅が狭くなっている要素であることを特徴とする、
付記1〜4のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【0043】
(付記7)
前記第1放射要素と前記接地要素の間に介挿される誘電体ブロックをさらに備えることを特徴とする、
付記1〜6のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【符号の説明】
【0044】
1,2…板状逆Fアンテナ
10,20…接地要素
12,22…第1放射要素
14,24…第1短絡要素
16,26…第2短絡要素
18,28,38…第2放射要素
F…給電部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の複数の要素を含む板状逆Fアンテナであって、
接地面を形成する接地要素と、
前記接地面と離間しつつ接地要素と同一方向に延びている第1放射要素と、
接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1放射要素の端部に設けられる第1短絡要素と、
接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1短絡要素と離間して設けられる第2短絡要素と、
前記第1短絡要素または前記第2短絡要素のいずれかに設けられた給電部と、
前記接地面と平行で、かつ第1放射要素に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素であって、前記給電部の近傍において実質的に前記第1放射要素の幅を広げるようにして設けられている第2放射要素と、
を備えた、板状逆Fアンテナ。
【請求項2】
前記第2放射要素は、前記第1放射要素と直交した平面に設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載された板状逆Fアンテナ。
【請求項3】
前記第2放射要素は、前記第1放射要素と同一平面に設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載された板状逆Fアンテナ。
【請求項4】
前記第1放射要素の長手方向の長さをL1としたとき、前記第2放射要素の長手方向の長さはL1×1/4〜L1×3/4の範囲にあることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【請求項1】
板状の複数の要素を含む板状逆Fアンテナであって、
接地面を形成する接地要素と、
前記接地面と離間しつつ接地要素と同一方向に延びている第1放射要素と、
接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1放射要素の端部に設けられる第1短絡要素と、
接地要素と第1放射要素を短絡する要素であって、第1短絡要素と離間して設けられる第2短絡要素と、
前記第1短絡要素または前記第2短絡要素のいずれかに設けられた給電部と、
前記接地面と平行で、かつ第1放射要素に対して長手方向に沿って部分的に延設されている要素であって、前記給電部の近傍において実質的に前記第1放射要素の幅を広げるようにして設けられている第2放射要素と、
を備えた、板状逆Fアンテナ。
【請求項2】
前記第2放射要素は、前記第1放射要素と直交した平面に設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載された板状逆Fアンテナ。
【請求項3】
前記第2放射要素は、前記第1放射要素と同一平面に設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載された板状逆Fアンテナ。
【請求項4】
前記第1放射要素の長手方向の長さをL1としたとき、前記第2放射要素の長手方向の長さはL1×1/4〜L1×3/4の範囲にあることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載された板状逆Fアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−231219(P2012−231219A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97005(P2011−97005)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
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