説明

果こう受け具用支持部材及び果こう受け具

【課題】 適切な場所に容易に配設することができ、従来よりも果こうを折れにくくする。
【解決手段】 先端部21a,31aを栽培容器の側壁外方に突出させた状態で、基端部22a,32a同士を栽培容器に充填された培地に所定間隔離間させて突き刺して用いられる一対の脚部2,3と、各脚部2,3の先端部21a,31aに連接される第1及び第2の係合部4,5を備えた構成である。一対の脚部2,3の基端部22a,32aを培地に突き刺すだけで配置できるため、栽培容器や脚部材に特別の支持機構を設ける必要がないと共に、取り付け、取り外し作業が極めて容易で、また、取り付け位置や取り付け数も任意に設定できる。従って、必要な時期のみ、必要な場所に、必要な個数を極めて容易に配設することができる。また、一対の脚部2,3の基端部22a,32a同士を所定間隔離間させて配設するため、培地に突き刺すだけでありながら、安定して配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴ等の果こうを受けるために栽培容器に付設される果こう受け具用支持部材及び果こう受け具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特にイチゴ栽培において、栽培容器を所定の高さで設置して行う高設栽培が普及してきている。高設栽培では、果実を支える果こうが栽培容器の側壁外方へと生長すると共に、果実の重さによりさらに下方に垂れ下がるように生長する。従って、この栽培法の場合、果実がいわば宙吊り状態となるため、この果実の重さにより果こうが折れることがある。果こうが折れるとその先の果実に養水分が行き渡りにくくなり、果実の品質にも悪影響がでる。
【0003】
上記の点に鑑み、特許文献1〜4では、栽培容器の側壁外方に果こうを受ける果こう受け部材を設ける技術が開示されている。果こう受け部材によって果こうが受け止められることにより、果こうの折れ曲がりが抑制される。
【特許文献1】特開2000−83487号公報
【特許文献2】特開2001−37号公報
【特許文献3】特開2003−18916号公報
【特許文献4】実用新案登録第3074395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜4に開示された果こう受け部材は、いずれも、栽培容器の側壁、あるいは栽培容器を所定の高さで支持している脚部材にブラケット等を固定し、このブラケットに紐状部材等の果こう受け部材を張設している。このため、栽培容器や脚部材にブラケットなどを固定するための機構を設けなければならず、脚部材等の構造が複雑である。また、果こう受け部材は、栽培時期によっては必要ないが、上記のような固定式の場合、ブラケット等を取り外したり取り付けたりする作業が面倒である。一方、ブラケット等を取り付けたままにすることも可能であるが、その場合には、栽培時期によっては作業の邪魔になる。また、いずれの場合も、果こう受け部材の取り付け位置は予め決められた一定箇所であり、取り付け位置の変更の自由度が極めて小さい。イチゴの果こうは、品種、栽培時期、栽培ステージなどにより、発生する場所、長さ、角度等が一定しておらず、発生する場所や長さ等により、予め決められた場所に紐状部材等の果こう受け部材を配置しても、果こうを適切に支持できない場合もある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、容易に取り付け可能であると共に、不要な時期には極めて容易に取り外すことができ、脚部材や栽培容器に特別な支持機構を設ける必要がなく、また、任意の位置に取り付け可能で、イチゴの品種や栽培時期に拘わらず、果こう受け部材を適切な場所に設けることができる果こう受け部材用支持具、並びに、該果こう受け部材用支持具と果こう受け部材とを備えた果こう受け具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、果実の重みにより下方に垂れ下がる果こうを受ける果こう受け部材を栽培容器に支持させるための果こう受け部材用支持具であって、
先端部を栽培容器の側壁外方に突出させた状態で、基端部同士を栽培容器に充填された培地に所定間隔離間させて突き刺して用いられる一対の脚部と、
前記各脚部の先端部に連接される少なくとも一つの係合部と
を有し、
栽培容器に所定の間隔をおいて複数配設され、各係合部を利用して果こう受け部材を支持することを特徴とする果こう受け部材用支持具を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記係合部は、第1の係合部と第2の係合部とを有して構成され、第1の係合部は、前記各脚部の先端部に連接され、第2の係合部は、前記第1の係合部から所定間隔離間した位置に形成されており、
栽培容器に所定の間隔をおいて複数配設され、それぞれの第1及び第2の係合部を利用して果こう受け部材を支持する構成であることを特徴とする請求項1記載の果こう受け部材用支持具を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記一対の脚部は側面から見て略L字状に形成され、先端部から基端部に向かうに従って互いに離間する拡開状態で使用される構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の果こう受け部材用支持具を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記第1の係合部は、各脚部の先端部から基端部方向に曲成されてなり、第2の係合部は、第1の係合部に連接される直線部を介して連接され、第1の係合部の曲成方向と反対方向に曲成されてなることを特徴とする請求項2又は3記載の果こう受け部材用支持具を提供する。
請求項5記載の本発明では、1本の金属線材を折り曲げ加工し、前記一対の脚部及び前記各係合部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の果こう受け部材用支持具を提供する。
請求項6記載の本発明では、前記一対の脚部の基端部側直線部と先端部側直線部とがなす角度を調整可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の果こう受け部材用支持具を提供する。
請求項7記載の本発明では、請求項1〜6のいずれか1に記載の果こう受け部材用支持具と、
栽培容器に所定間隔をおいて配設される前記果こう受け部材用支持具の各係合部に支持される果こう受け部材と
を有することを特徴とする果こう受け具を提供する。
請求項8記載の本発明では、前記果こう受け部材が、紐状部材又はシート状部材であることを特徴とする請求項7記載の果こう受け具を提供する。
請求項9記載の本発明では、イチゴの果こうを受けるため、イチゴの栽培容器に配設されることを特徴とする請求項7又は8記載の果こう受け具を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、先端部を栽培容器の側壁外方に突出させた状態で、基端部同士を栽培容器に充填された培地に所定間隔離間させて突き刺して用いられる一対の脚部と、各脚部の先端部に連接される少なくとも一つの係合部とを備えた構成である。一対の脚部の基端部を培地に突き刺すだけで配置できるため、栽培容器や脚部材に特別の支持機構を設ける必要がないと共に、取り付け、取り外し作業が極めて容易で、また、取り付け位置や取り付け数も任意に設定できる。従って、必要な時期のみ、必要な場所に、必要な個数を極めて容易に配設することができる。また、一対の脚部の基端部同士を所定間隔離間させて配設するため、培地に突き刺すだけでありながら、安定して配置できる。
【0008】
紐状部材等の果こう受け部材は、このようにして配置した果こう受け部材用支持具の係合部に係合させるだけでよいため、張設作業が容易である。また、果こう受け部材用支持具の取り付け位置は、脚部を培地に差し込むことができればどの位置であってもよいため、果こう受け部材に緩み等が生じた場合などにおいては、果こう受け部材用支持具を追加的に配設することもでき、果こう受け部材を従来よりも確実に支持できる。また、脚部を構成する先端部側直線部と基端部側直線部とのなす角度を変更することにより、果こう受け部材の張設角度や位置を調整でき、品種の違い等による果こうの発生場所や長さの違い等にも容易に対応でき、果こう折れをより低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1〜図5は、本実施形態にかかる果こう受け部材用支持具1を示す図である。これらの図に示したように、果こう受け部材用支持具1は、一対の脚部2,3、第1の係合部4、及び第2の係合部5を有して構成される。
【0010】
本実施形態の果こう受け部材用支持具1は、1本の針金等の金属線材を折り曲げて形成される。すなわち、所定長の金属線材を略中央部で折り曲げて二つ折りにし、寄り添わせた2本の金属線部1a,1bを一緒に折り曲げ加工して形成される。まず、一対の脚部2,3は、図2に示したように側面から見て略L字状に折り曲げ加工され、端部が先端部21a,31aとなる先端部側直線部21,31と、端部が基端部22a,32aとなる基端部側直線部22,32とを有している。
【0011】
先端部21a,31aから基端部22a,32a方向に折り返されて湾曲状になっている部分は、第1の係合部4を構成する。第1の係合部4からは、先端部側直線部21,31と略平行な直線部6が延び、該直線部6の端部からは先端部21a,31a側に、すなわち、第1の係合部4の曲成方向とは反対方向に曲成された湾曲状の部分が形成され、この湾曲状の部分が第2の係合部5となっている。第2の係合部5の先は、所定長の金属線材を略中央部で二つ折りにした際の折り曲げ部7が位置しているが、本実施形態では、この折り曲げ部7を略円弧状に形成し、第2の係合部5に係合される果実受け部材の抜け止めの機能を持たせている(図1、図3、図4参照)。
【0012】
果こう受け部材用支持具1は、折り曲げ部7から二つ折りにされた2本の金属線部1a,1bから構成されいるため、脚部2,3が2本からなるのと同様、上記した第1の係合部4、第2の係合部5及び直線部6も2本からなり、各脚部2,3のそれぞれに連接して形成されていることはもちろんである。しかしながら、脚部2,3が互いに離間して使用されるのに対し、2本の金属線部1a,1bのうち、第1の係合部4、第2の係合部5及び直線部6を構成する部分は互いに近接させたまま、原則として2本まとめて使用するため、本明細書では、これらの部分は一つの符号で示している。
【0013】
果こう受け部材用支持具1は、設置前までの工場出荷時や運搬時等においては、図5に示したように、脚部2,3、第1の係合部4及び第2の係合部5等を構成する2本の金属線部1a,1bを近接させた状態にしておく。これにより複数個を積み重ねても嵩張りが小さくできるため、運搬作業等を容易化できる。
【0014】
一方、栽培容器100に設置する場合は、まず、図1に示したように、一対の脚部2,3をその基端部22a,32aが最も離間するように開く。次に、図6に示したように、栽培容器100の培地110に、基端部22a,32aから突き刺し、基端部側直線部22,32を適宜長さ培地に埋設する。この際、脚部2,3の先端部21a,31aを含む先端部側直線部21,31が栽培容器100の側壁外方に突出するように設置すると共に、基端部22a,32aの突き刺し位置を調整し、すなわち、栽培容器100の側壁から突き刺し位置までの距離を適宜位置に調整し、側壁外方への先端部側直線部21,31の突出長さを適宜長さに調整する。脚部2,3は、基端部22a,32a側が最も離間するように開いて基端部側直線部22,32を埋設する構成であるため、各係合部4,5に果実受け部材を支持することによって回転方向に力が加わったとしても、大きくずれが生じることを防止でき、培地110に突き刺すだけの構成でありながら安定して設置できる。
【0015】
果こう受け部材用支持具1は、このようにして栽培容器100に適宜の間隔で、例えば、0.5〜1.5m毎に設置していく。適宜数設置したならば、各第1の係合部4及び第2の係合部5を利用して果実受け部材を張設する。果実受け部材としては、図6に示したような紐状部材(テープ状、帯状のもの等も含む)200,210、あるいはシート状部材などを用いることができる。紐状部材200,210を用いる場合には、1本目の紐状部材200を、隣接して設置された果こう受け部材用支持具1の第1の係合部4に順に引っかけていくと共に、2本目の紐状部材210を第2の係合部5に順に引っかけていく。これにより、2本の紐状部材200,210が栽培容器100の外方に略平行に張られることになる。従って、イチゴの果こうは、その長さにより、内側に位置する第2の係合部5に引っかけられた紐状部材210によって受けられたり、外側に位置する第1の係合部4に引っかけられた紐状部材200によって受けられたりする。あるいは、両方の紐状部材200,210によって受けられる。このため、果こうの長さによっては、該果こうが2点で支持されることになるため、一方の紐状部材に荷重が集中することを抑制でき、荷重の分散が図られ、果こうの折れを抑制できる。シート状部材を張設する場合には、例えば、第1の係合部4と第2の係合部5にまたがる幅のものを直線部6の隙間に挟み込むことで配設できる。
【0016】
本実施形態の果こう受け部材用支持具1は上記の構成からなるため、栽培容器や該栽培容器を支持する脚部材に特別な支持機構を設けることなく、培地に突き刺すだけで配置でき、配設作業が極めて容易である。また、培地に突き刺すだけであるため、配設箇所の自由度が高い。従って、イチゴの品種、果こうの発生場所等に応じて適宜の位置に配設し、果こう受け部材を支持できる。また、栽培容器等に固定されていないため、苗の定植作業時等、果こう受け部材を配設する必要のない時期においては、培地に突き刺していた基端部側直線部22,32を引き抜くだけで取り外すことができる。
【0017】
また、上記のように、脚部2,3の基端部22a,32aの突き刺し位置を調整したり、あるいは、脚部2,3の開度(基端部22a,32a間の離間距離)を変更したりすることにより、栽培容器100の側壁外方における第1の係合部4と第2の係合部5の位置を調整でき、それにより、果こうの長さに見合った位置に紐状部材等の果こう受け部材を設けることができるが、基端部側直線部22,32と先端部側直線部21,31とのなす角度(図2の角θ)を調整することにより、第1の係合部4と第2の係合部5に取り付けられる果こう受け部材の高さや各係合部4,5に支持される2つの紐状部材200,210の位置関係を、果こうの発生場所や長さ等に応じて適切な位置に調整することも容易である。
【0018】
なお、上記した実施形態では、2カ所に係合部4,5を設けている。これにより、上記したように、果こう受け部材として、紐状部材を用いた場合に、果こうの長さに応じて2点支持できると共に、シート状部材の張設も容易になるという利点を有するが、係合部が一つの構成であっても、本発明のように果こう受け部材用支持具1の脚部2,3を培地に突き刺して用いる構成とすることにより、栽培容器等に固定して設けていた従来の果こう受け部材用支持具や果こう受け部材と比較して、取り付け、取り外し作業の容易性に優れることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかる果こう受け部材用支持具を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した果こう受け部材用支持具の側面図である。
【図3】図3は、図1に示した果こう受け部材用支持具の平面図である。
【図4】図4は、図1に示した果こう受け部材用支持具の正面図である。
【図5】図5は、図1に示した果こう受け部材用支持具の脚部を閉じた状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、図1に示した果こう受け部材用支持具を栽培容器に設置し、果こう受け部材を支持させた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 果こう受け部材用支持具
2,3 脚部
21,31 先端部側直線部
21a,31a 先端部
22,32 基端部側直線部
22a,32a 基端部
4 第1の係合部
5 第2の係合部
6 直線部
100 栽培容器
110 培地
200,210 紐状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実の重みにより下方に垂れ下がる果こうを受ける果こう受け部材を栽培容器に支持させるための果こう受け部材用支持具であって、
先端部を栽培容器の側壁外方に突出させた状態で、基端部同士を栽培容器に充填された培地に所定間隔離間させて突き刺して用いられる一対の脚部と、
前記各脚部の先端部に連接される少なくとも一つの係合部と
を有し、
栽培容器に所定の間隔をおいて複数配設され、各係合部を利用して果こう受け部材を支持することを特徴とする果こう受け部材用支持具。
【請求項2】
前記係合部は、第1の係合部と第2の係合部とを有して構成され、第1の係合部は、前記各脚部の先端部に連接され、第2の係合部は、前記第1の係合部から所定間隔離間した位置に形成されており、
栽培容器に所定の間隔をおいて複数配設され、それぞれの第1及び第2の係合部を利用して果こう受け部材を支持する構成であることを特徴とする請求項1記載の果こう受け部材用支持具。
【請求項3】
前記一対の脚部は側面から見て略L字状に形成され、先端部から基端部に向かうに従って互いに離間する拡開状態で使用される構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の果こう受け部材用支持具。
【請求項4】
前記第1の係合部は、各脚部の先端部から基端部方向に曲成されてなり、第2の係合部は、第1の係合部に連接される直線部を介して連接され、第1の係合部の曲成方向と反対方向に曲成されてなることを特徴とする請求項2又は3記載の果こう受け部材用支持具。
【請求項5】
1本の金属線材を折り曲げ加工し、前記一対の脚部及び前記各係合部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の果こう受け部材用支持具。
【請求項6】
前記一対の脚部の基端部側直線部と先端部側直線部とがなす角度を調整可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の果こう受け部材用支持具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の果こう受け部材用支持具と、
栽培容器に所定間隔をおいて配設される前記果こう受け部材用支持具の各係合部に支持される果こう受け部材と
を有することを特徴とする果こう受け具。
【請求項8】
前記果こう受け部材が、紐状部材又はシート状部材であることを特徴とする請求項7記載の果こう受け具。
【請求項9】
イチゴの果こうを受けるため、イチゴの栽培容器に配設されることを特徴とする請求項7又は8記載の果こう受け具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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