説明

果実保持装置

【課題】イチゴを吸着保持する際のイチゴの損傷を抑制する。
【解決手段】制御部が、吸着前画像取得部により取得されたイチゴの画像から、イチゴの向きと吸着位置とを検出し(ステップS10,S12)、移動部を介して、一端部にイチゴと接触する接触部を有する筒状の吸着管を移動して、接触部をイチゴの吸着位置に接近させ、接触部がイチゴの吸着位置に接触する前に、吸着管の内部を負圧にする負圧発生機構の動作を開始する(ステップS18)。これにより、イチゴの方が、イチゴが載置されている面(載置面)から離れて吸着管に吸い寄せられるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国のイチゴ生産は、多くの労働時間(面積10aに約2000時間)を必要とするため、省力化を図る必要がある。そのなかでも選別パック詰め作業は、全労働時間の3割弱を占めているため、労働時間の長時間化の一因となっている。
【0003】
従来、イチゴなどの軟弱果実(作物)は、機械で扱うと傷みやすいため、ミカン、リンゴ、トマト等の損傷が比較的生じにくい果実と同様の機械的なハンドリングが難しかった。このため、イチゴなどの果実のパック詰め作業は全て手作業で行われていた。
【0004】
これに対し、最近では、イチゴ等の軟弱果実のソフトハンドリング技術として、特許文献1に記載の箱詰め機、特許文献2に記載の青果物保持装置および青果物移送装置、あるいは、特許文献3に記載のイチゴ自動選別充填システムなどが提案されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−231710号公報
【特許文献2】特開2002−052487号公報
【特許文献3】特開2003−266024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、エアバッグを備えた多指フィンガにより物理的に把持する果実を損傷なくハンドリングする方法が提案されているが、多指フィンガの構成は非常に複雑である。また、この方法では、出荷容器に果実を静置する際、フィンガが他の果実と接触し、損傷するおそれもある。
【0007】
また、特許文献2、3に開示されているように、専用の収穫箱に向きを揃えて整列した状態の果実をハンドリングする技術では、収穫箱にランダムな置き方で収容された果実を扱うことができず、収穫箱に人手により整列して収容する時点で逆に手間がかかるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、果実の損傷を抑制しつつ、果実を保持することが可能な果実保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の果実保持装置は、一端部に果実と接触する接触部を有する筒状の吸着管と、前記接触部に前記果実が接触した状態で前記吸着管の内部を負圧にして、前記吸着管に前記果実を保持させる負圧発生機構と、前記吸着管を移動する移動部と、前記吸着管に保持される前の前記果実の画像を取得する果実画像取得部と、前記果実画像取得部により取得された前記果実の画像から前記果実の向きと吸着位置とを検出し、当該果実の向きと吸着位置とに基づいて前記吸着管を前記移動部を介して移動して、前記接触部を前記果実の吸着位置に近づけていき、前記接触部が前記果実の吸着位置に接触する前に、前記負圧発生機構の動作を開始する制御部と、を備えている。
【0010】
これによれば、吸着管と果実とが接近した状態から負圧発生機構の動作を開始することで、果実の方が、果実が載置されている面(載置面)から離れて吸着管に吸い寄せられるようになる。これにより、果実に接触した後に吸着管の吸着を開始するような場合に発生する可能性のある、吸着管による果実の載置面への押し付けを抑制することができる。したがって、載置面と果実表面との擦れによる果実の損傷を抑制することができる。
【0011】
この場合において、前記吸着管の内部の気圧を検出する気圧センサを更に備え、前記制御部は、前記気圧センサの検出結果に基づいて、前記吸着管が前記果実を保持したタイミングを判定し、当該保持したタイミングで、前記接触部が前記果実が載置されている載置面から離間するように、前記移動部を介して前記吸着管を移動する、こととしてもよい。かかる場合には、果実を保持したタイミングで、吸着管の接触部が載置面から離間するので、果実の損傷を抑制することが可能となる。
【0012】
また、前記吸着管に保持された後の前記果実と前記吸着管との画像を取得する果実・吸着管画像取得部を更に備え、前記制御部は、前記果実・吸着管画像取得部により取得された画像から、前記吸着管に対する前記果実の姿勢を検出し、当該検出結果に基づいて、前記移動部を介して、前記果実を収容するための容器に前記果実を搬送することとしてもよい。かかる場合には、果実画像取得における果実の向きの検出誤差や、蔕部の形状、果径、果重などの影響による果実を吸着管で保持したときのずれ等があった場合にも、これらの影響を受けずに、見栄え良く、容器に果実を並べることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の果実保持装置は、果実の損傷を抑制しつつ、果実を保持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係るイチゴの容器詰めシステムを示す斜視図である。
【図2】図1のエンドエフェクタ近傍を拡大して示す斜視図である。
【図3】図1のエンドエフェクタを取り出して拡大して示す図である。
【図4】容器詰めシステムの制御系を示すブロック図である。
【図5】パック詰めシステムにおける処理について示すフローチャートである。
【図6】図6(a)は、第1マシンビジョンで取得される画像の一例を示す図であり、図6(b)は、第2マシンビジョンで取得される画像の一例を示す図である。
【図7】吸着位置の横方向のずれ及び高さ方向のずれと、イチゴの吸着割合との関係を示す表である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、図5のステップS14〜S22について説明するための図である。
【図9】図9(a)は、第3マシンビジョンで取得される画像の一例を示す図であり、図9(b)は、第4マシンビジョンで取得される画像の一例を示す図である。
【図10】吸着管を用いてイチゴを吸着保持したときの、イチゴの姿勢のばらつきをプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1には、本実施形態のイチゴ保持装置10を含むイチゴのパック詰めシステム100が斜視図にて示されている。図1に示すように、パック詰めシステム100は、イチゴ保持装置10と、イチゴ供給用コンベア40と、出荷パック用コンベア50A,50B,50Cと、を備える。なお、図1では、イチゴ供給用コンベア40の長手方向をY軸方向、出荷パック用コンベア50A,50B,50Cの長手方向(Y軸方向に直交する方向)をX軸方向、Y軸方向及びX軸方向に直交する方向をZ軸方向として示している。
【0017】
イチゴ保持装置10は、図1に示すように、エンドエフェクタ20と、エンドエフェクタ20をXY面内及びZ方向、並びにZ軸回りの回転方向に移動する移動部(マニュピレータ)90(図4参照)と、果実画像取得部としての吸着前画像取得部62と、果実・吸着管画像取得部としての吸着後画像取得部72と、を備える。
【0018】
図2には、エンドエフェクタ20近傍が拡大して示されており、図3には、エンドエフェクタ20のみを取り出した状態(ただし、図3ではイチゴの位置が図2とは異なる)が示されている。これらの図に示すように、エンドエフェクタ20は、吸着管22と、保持部24と、ステッピングモータ26と、伝達部28と、を有する。
【0019】
吸着管22は、内部が中空の略円筒状の部材から成る。吸着管22の一側(図3の場合、+X側)の端部は、図3に示すように、イチゴが接触する接触部22aとされている。また、吸着管22の他側(図3の場合、−X側)の端部には、負圧発生機構94(図3等では不図示、図4参照)が接続されている。負圧発生機構94は、接触部22aにイチゴが接触した状態(図3の状態)で吸着管22の内部を負圧にすることで、吸着管22にイチゴを吸着保持させるものである。
【0020】
なお、吸着管22の内部には、吸着管22内部の気圧を検出する気圧センサ92(図4参照)が設けられている。この気圧センサ92の検出結果は、図4の制御部99に送信される。
【0021】
保持部24は、回転軸23を介して、吸着管22を、Y軸回りの回動が自在な状態で保持している。
【0022】
ステッピングモータ26は、回転軸26aを所定の回転角度で停止させることが可能なモータである。伝達部28は、ステッピングモータ26の回転軸26aに接続された第1プーリ28Aと、吸着管22を保持する回転軸23aに接続された第2プーリ28Cと、伝達ベルト28Bと、を有する。したがって、ステッピングモータ26が回転軸26aを回転することで、伝達部28の作用により、吸着管22が矢印A又はA’方向に回動することになる。
【0023】
図4の移動部90は、図1に示す、X軸方向に延びる一対のXガイド12A,12Bと、Y軸方向に延び、Xガイド12A,12Bに沿ってX軸方向に移動するYガイド14と、Yガイド14に沿ってY軸方向に移動するZガイド16と、Zガイド16に沿ってZ軸方向に移動するZ可動部18と、を有する。
【0024】
Yガイド14は、直進駆動装置(例えば、ボールネジ、リニアモータなど)の駆動力を受けて、Xガイド12A,12Bに沿ってX軸方向に移動する。また、Zガイド16は、直進駆動装置の駆動力を受けて、Yガイド14に沿ってY軸方向に移動する。また、Z可動部18は、直進駆動装置の駆動力を受けて、Zガイド16に沿ってZ軸方向に移動する。これにより、Z可動部18は、X、Y、Z軸方向の3軸方向に移動可能となっている。なお、各直進駆動装置については、便宜上、図示を省略している。
【0025】
更に、Z可動部18は、図2に示すように、エンドエフェクタ20を回転軸29において回転可能に保持しており、エンドエフェクタ20は、回転駆動装置(不図示)の駆動力を受けて、Z軸回り(θz)に回転する。これにより、吸着管22の向きが、XY面内(水平面内)略180°の範囲で遷移するようになっている。
【0026】
すなわち、本実施形態のエンドエフェクタ20は、移動部90により、X,Y,Z、及びθz方向の4自由度方向に移動可能となっている。
【0027】
吸着前画像取得部62は、図1に示すように、イチゴ供給用コンベア40の近傍に設けられた、第1マシンビジョン60Zと、第2マシンビジョン60Xと、を有する。これらのうち、第1マシンビジョン60Zが、吸着保持前のイチゴを+Z方向から撮影(画像取得)し、第2マシンビジョン60Xが、吸着保持前のイチゴを+X方向から撮影(画像取得)する。吸着前画像取得部62で取得された画像は、制御部99に送信される。
【0028】
吸着後画像取得部72は、第1マシンビジョン60Z及び第2マシンビジョン60Xとは異なる位置に設けられた、第3マシンビジョン70Zと、第4マシンビジョン70Yと、を有する。これらのうち、第3マシンビジョン70Zが、吸着保持後のイチゴを+Z方向から撮影(画像取得)し、第4マシンビジョン70Yが、吸着保持後のイチゴを+Y方向から撮影(画像取得)する。吸着後画像取得部72で取得された画像は、制御部99に送信される。
【0029】
イチゴ供給用コンベア40は、ベルトコンベアであり、不図示のイチゴ供給装置から供給される収穫後のイチゴを、−Y方向から+Y方向に向けて搬送する。
【0030】
出荷パック用コンベア50A,50B,50Cは、それぞれ、容器としての出荷パック52A,52B,52Cを−X方向から+X方向に向けて搬送する。ここで、出荷パック52A〜52Cは、等階級別に割り当てられているものとする。例えば、図1の例では、出荷パック52Aは等階級が高いイチゴがパック詰めされる出荷パックであり、出荷パック52Cは等階級が低いイチゴが詰められる出荷パックであるものとする。出荷パック用コンベア50〜50Cは、イチゴの詰められ度合いに応じて、制御部99(図4参照)の指示の下、出荷パックを+X方向に搬送する。
【0031】
図4には、本実施形態のパック詰めシステム100の制御系がブロック図にて示されている。図4に示すように、パック詰めシステム100では、制御部99が、吸着前画像取得部62及び吸着後画像取得部72で取得された画像や、気圧センサ92の検出結果に基づいて、移動部90、ステッピングモータ26、負圧発生機構94等の動作を、統括的に制御する。
【0032】
次に、本実施形態のパック詰めシステム100における処理(特に、エンドエフェクタ20の動作)について、図5のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ、説明する。
【0033】
図5の処理では、まず、ステップS10において、制御部99が、第1マシンビジョン60Zで取得された画像に基づいてイチゴに対する接近方向を算出する。具体的には、制御部99は、第1マシンビジョン60Zで取得された画像のうち、図6(a)に示すようにイチゴ全体が撮影されている画像を抽出する。そして、制御部99は、抽出された画像のうち、イチゴの果実部(赤色部分)の重心位置(水平面内)と、蔕部(緑色部分)の重心位置(水平面内)とを算出し、各重心位置を結ぶ方向を接近方向として算出する。
【0034】
次いで、図5のステップS12では、制御部99が、第2マシンビジョン60Xで取得された画像に基づいてイチゴの吸着位置(高さ)を算出する。具体的には、制御部99は、例えば、図6(a)のように抽出された画像と、ほぼ同時に第2マシンビジョン60Xで取得された画像(例えば、図6(b)のような画像)を抽出する。そして、制御部99は、抽出された画像のうち、蔕部(緑色部分)の重心位置の高さを吸着位置(高さ)として算出する。なお、イチゴの向きによっては、第2マシンビジョン60Xが蔕部(緑色部分)の画像を取得できない可能性もある。このような場合には、例えば、果実部の最大高さ位置に基づいて、吸着位置(高さ)を概算するようにしてもよい。また、イチゴのX位置(第1マシンビジョン60Zの取得画像から算出)に基づいて、算出された吸着位置(高さ)を適宜補正することとしてもよい。なお、本実施形態において、上記のように吸着方向と吸着位置(高さ)とを厳密に算出するのは、図7(吸着位置(高さ)及び横方向のずれと、イチゴの吸着割合との関係を示す表)に示すように、横方向のずれや吸着位置(高さ)に応じて、イチゴを吸着できる吸着割合が異なるからである。より具体的には、図7に実線太枠で示す状態と、破線太枠で示す状態とを比較すると分かるように、果重が同一、奥行き(接触部22aとイチゴのとの距離)が同一であっても、吸着位置(高さ)や横方向のずれに応じて、吸着割合が変動するからである。
【0035】
図5に戻り、次のステップS14では、制御部99が、吸着管22をイチゴに向けて接近させる。この場合、制御部99は、吸着管22の長手方向が、ステップS10で算出された接近方向と一致し、吸着管22の接触部22aの重心位置が、ステップS12で算出された吸着位置(高さ)と一致するように、移動部90を制御する。なお、制御部99は、吸着管22の長手方向の向きや高さ位置を、移動部90の構成各部に設けられたリニアエンコーダやロータリエンコーダなどの計測装置を用いてモニタすることができる。ただし、これに限らず、第1、第2マシンビジョン60Z,60Xの画像を用いて、吸着管22の位置及び姿勢をモニタすることとしてもよい。
【0036】
次いで、ステップS16では、制御部99が、吸着管22の接触部22aとイチゴとの間の距離が、所定距離となったか否かを判断する。この場合、制御部99は、ステップS10で算出された蔕部(緑色部分)の重心位置(水平面内)と、上記計測装置を用いてモニタされる吸着管22の位置と、を用いて判断する。ここでの「所定距離」としては、吸着管22の吸着力が及ぶ距離(あるいは負圧発生機構94の動作による影響がイチゴに生じる距離)であり、例えば、15mmとすることができる。なお、図8(a)には、吸着管22とイチゴとの間の距離が、所定距離となった状態が示されているものとする。ステップS16の判断が肯定された場合には、ステップS18に移行する。
【0037】
ステップS18では、制御部99が、負圧発生機構94による動作を開始する。すなわち、制御部99は、吸着するイチゴの蔕部の手前15mmに吸着管22の接触部22aが位置した状態から、負圧を発生させるとともに、吸着管22の一端部を更に蔕部に近づけ続ける。
【0038】
次いで、ステップS20では、制御部99が、気圧センサ92の検出値をモニタリングし、吸着管22内が所定気圧になったか否かを判断する。なお、この場合の所定気圧とは、吸着管22がイチゴを吸着保持できる程度の気圧を意味する。すなわち、ステップS20では、図8(b)に示すように、イチゴが吸着管22に吸着保持されたか否かを判定しているといえる。
【0039】
なお、上記ステップS18において、イチゴと吸着管22(接触部22a)との間の距離が所定距離になった状態から負圧発生機構94の動作を開始することとしたのは、横向きに置いた状態のイチゴの蔕部を吸着する場合、吸着管22をイチゴに押し付けてしまうと、イチゴ供給用コンベア40の表面(載置面)とイチゴ表面とが擦れ、イチゴが損傷するおそれがある一方、ステップS18のように制御することで、イチゴの方が、載置面から離れて吸着管22に吸い寄せられ、載置面とイチゴ表面とが擦れることなくイチゴを吸着することができるからである。
【0040】
ステップS20の判断が肯定されて、ステップS22に移行すると、制御部99は、移動部90を介して、吸着管22を減速停止させるとともに、吸着管22を図8(c)に示すように矢印A方向に持ち上げる。すなわち、吸着管22の接触部22aをイチゴが載置されている載置面から離間する方向に移動する。
【0041】
なお、ステップS22のように、吸着管22内の気圧が所定気圧になった状態から吸着管22を減速停止させるのは、イチゴを吸着する際、吸着管22を即時停止すると、移動部90に過大な力が作用するためである。また、ステップS22において吸着管22を持ち上げることとしているのは、気圧センサ92によって吸着を感知したときにイチゴが載置面と接触している可能性もあり、そのまま減速停止すると、イチゴを数mm程度載置面に押し付け、イチゴが損傷するおそれがあるからである。
【0042】
次いで、ステップS24では、制御部99が、第3、第4マシンビジョン70Z,70Yによる画像取得が可能な位置まで吸着管22及び吸着保持されたイチゴを移動する。この場合、制御部99は、第3、第4マシンビジョン70Z,70Yによる画像取得が可能な位置が予め分かっているので、当該位置まで、移動部90を介して、エンドエフェクタ20を移動するようにすればよい。
【0043】
次いで、ステップS26では、制御部99が、第3、第4マシンビジョン70Z、70Yで取得された画像を取得する。この場合、第3マシンビジョン70Zで取得された画像が、図9(a)のような画像であり、第4マシンビジョン70Yで取得された画像が、図9(b)のような画像であるものとする。
【0044】
次いで、ステップS28では、制御部99が、吸着管22に対するイチゴの姿勢及び等階級を算出する。具体的には、制御部99は、図9(a)の画像のうち、吸着管22の範囲を色等に基づいて判別し、吸着管22の一端部である接触部22aの中心位置を算出する。また、制御部99は、図9(a)の画像のうち、イチゴの果実部(赤色部分)の先端(果頂部)を特定する。そして、制御部99は、接触部22aの面と垂直な基準線(一点鎖線)と、接触部22aの中心と果頂部とを結ぶ破線との間の角度を、Z軸方向から見た、接触部22aに対するイチゴの姿勢(正面傾き)として算出する。同様に、制御部99は、図9(b)の画像に基づいて、接触部22aの面と垂直な基準線(一点鎖線)と、接触部22aの中心と果頂部とを結ぶ破線との間の角度を、Y軸方向から見た、接触部22aに対するイチゴの姿勢(側面傾き)として算出する。更に、制御部99は、図9(a)及び/又は図9(b)の画像に基づいて、イチゴの大きさを検出し、イチゴの等階級を算出する。
【0045】
そして、次のステップS30では、制御部99が、吸着管22に吸着保持されているイチゴを、出荷パックに搬入する。この場合、制御部99は、ステップS28で算出された等階級に基づいて、イチゴを搬入する出荷パックを、図1に示す出荷パック52A〜52Cの中から決定する。そして、制御部99は、移動部90を介してエンドエフェクタ20を決定された出荷パックのイチゴ搬入位置(イチゴが次に詰められる位置)まで移動するとともに、ステップS28で算出された姿勢が所定の姿勢となるようにイチゴの姿勢を補正して、イチゴを放出する。
【0046】
図10は、本実施形態の吸着管22を用いてイチゴを吸着保持したときの、イチゴの姿勢のばらつきをプロットした図である。なお、図10において、正面傾き及び側面傾きが0°が理想的な状態を意味する。この図10に示すように、イチゴを吸着管22を用いて吸着した場合、イチゴの姿勢は、イチゴの品種に拘らず、ばらつく可能性が高い。このばらつきは、第1、第2マシンビジョン60Z,60Xにおけるイチゴの向きの検出誤差や、蔕部の形状、果径、果重などの影響による吸着管22がイチゴを保持したときのずれなどに起因するものと考えられる。したがって、本実施形態のように、ステップS30においてイチゴの姿勢を第3、第4マシンビジョン70Z,70Yの画像に基づいて補正して、出荷パックに搬入するようにすることで、出荷パックに見栄え良く、イチゴを並べることが可能となる。
【0047】
次いで、ステップS32では、制御部99が、処理が終了か否かを判断する。ここでの判断が否定された場合には、ステップS10に戻り、制御部99は、次のイチゴに対し、上記と同様の処理を実行する。一方、ステップS32の判断が肯定された場合には、図5の全処理を終了する。
【0048】
なお、制御部99は、上記の処理のほか、出荷パックに対するイチゴの搬入状況に応じて、出荷パック用コンベア50A〜50Cの搬送動作を制御したり、イチゴ供給用コンベア40の動作を制御したりする。
【0049】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、一端部にイチゴと接触する接触部22aを有する筒状の吸着管22と、接触部22aにイチゴが接触した状態で吸着管22の内部を負圧にして、吸着管22にイチゴを保持させる負圧発生機構94と、吸着管22を移動する移動部90と、吸着管22に保持される前のイチゴの画像を取得する吸着前画像取得部62と、これらを制御する制御部99を備えており、制御部99は、吸着前画像取得部62により取得されたイチゴの画像から、イチゴの向きと吸着位置とを検出し(ステップS10,S12)、移動部90を介して吸着管22を移動して、接触部22aをイチゴの吸着位置に近づけていき、接触部22aがイチゴの吸着位置に接触する前に、負圧発生機構94の動作を開始する(ステップS18)こととしている。したがって、本実施形態では、吸着管22とイチゴとが接近した状態から負圧発生機構94の動作を開始することで、イチゴの方が、イチゴが載置されている面(載置面)から離れて吸着管22に吸い寄せられるようになる。これにより、イチゴに接触した後に吸着管22の吸着を開始するような場合に発生する可能性のある、吸着管22によるイチゴの載置面への押し付けを抑制することができる。したがって、載置面とイチゴ表面との擦れによるイチゴの損傷を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、吸着管22の内部の気圧を検出する気圧センサ92を備えており、制御部99は、気圧センサ92の検出結果に基づいて、吸着管22がイチゴを保持したタイミングを判定し(ステップS20)、当該保持したタイミングで、移動部90を介して、吸着管22の接触部22aをイチゴが載置されている載置面から離間する方向に移動する、すなわち吸着管22の接触部22aを持ち上げる(ステップS22)こととしている。ここで、本実施形態では、上記のように、吸着管22がイチゴに接近した状態で負圧発生機構94の動作を開始したとしても、イチゴを吸着保持した際にイチゴと載置面とが接触している可能性もある。このような場合であっても、イチゴを保持したタイミングで吸着管22を持ち上げることで、イチゴの損傷を抑制することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、吸着管22に吸着保持された後のイチゴと吸着管22との画像を取得する吸着後画像取得部72を備えており、制御部99は、吸着後画像取得部72により取得された画像から、吸着管22に対するイチゴの姿勢を検出し、当該検出結果に基づいて、移動部90を介して、イチゴを収容するための出荷パック52A〜52Cにイチゴを搬送する。したがって、吸着前画像取得部62におけるイチゴの向きの検出誤差や、蔕部の形状、果径、果重などの影響によるイチゴを吸着管22で保持したときのずれ等があった場合にも、これらの影響を受けずに、出荷パック52A〜52Cに見栄え良く、イチゴを並べることが可能となる。
【0052】
なお、上記実施形態では、移動部90が、Xガイド12A,12BやYガイドなどを有する構成である場合について説明したが、これに限らず、移動部90が、ロボットハンドの如きマニュピレータであってもよい。
【0053】
なお、上記実施形態では、吸着管22がイチゴを吸着保持した段階で、吸着管22を持ち上げる場合(ステップS22)について説明したが、これに限られるものではない。例えば、吸着管22がイチゴを吸着保持した状態で、イチゴと載置面とが接触する可能性がほとんどないような場合には、ステップS22における吸着管22の持ち上げ動作を省略することとしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、吸着管22がイチゴを吸着保持した状態でのイチゴの姿勢を算出し、これに基づいてイチゴの姿勢を補正した後に、出荷パックにイチゴを搬入する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、イチゴの姿勢の算出や補正を行わずに、出荷パックにイチゴを搬入することとしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、制御部99は、吸着後画像取得部72において取得された画像に基づいてイチゴの等階級を算出する場合について説明したが、これに限られるものではない。制御部99は、例えば吸着前画像取得部62において取得された画像に基づいてイチゴの等階級を算出することとしてもよい。また、イチゴ供給用コンベア40に載置される以前にイチゴの等階級が算出されている場合には、イチゴの等階級をパック詰めシステム100内ではイチゴの等階級を算出しなくてもよい。あるいは、パック詰めシステム100内に、イチゴの等階級を算出することを目的とした画像を取得する画像取得部を別途設けることとしてもよい。
【0056】
なお、上記実施形態では、図5に示すように、1つのイチゴに対する搬入処理が終了するまで、次のイチゴに対する処理を行わない場合について説明したが、これに限らず、1つのイチゴに対する処理とそれ以降のイチゴに対する処理とを同時並行的に行うこととしてもよい。すなわち、1つのイチゴを出荷パックに搬送している間に、次のイチゴを用いて接近方向や吸着位置(高さ)を算出するなどしてもよい。
【0057】
なお、上記実施形態では、果実が、イチゴである場合について説明したが、これに限られるものではない。果実としては、イチゴ以外の軟弱果実、例えばビワ、イチジクなどであってもよい。
【0058】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0059】
22 吸着管
22a 接触部
52a〜52c 出荷パック(容器)
62 吸着前画像取得部(果実画像取得部)
72 吸着後画像取得部(果実・吸着管画像取得部)
90 移動部
92 気圧センサ
94 負圧発生機構
99 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に果実と接触する接触部を有する筒状の吸着管と、
前記接触部に前記果実が接触した状態で前記吸着管の内部を負圧にして、前記吸着管に前記果実を保持させる負圧発生機構と、
前記吸着管を移動する移動部と、
前記吸着管に保持される前の前記果実の画像を取得する果実画像取得部と、
前記果実画像取得部により取得された前記果実の画像から前記果実の向きと吸着位置とを検出し、当該果実の向きと吸着位置とに基づいて前記吸着管を前記移動部を介して移動して、前記接触部を前記果実の吸着位置に近づけていき、前記接触部が前記果実の吸着位置に接触する前に、前記負圧発生機構の動作を開始する制御部と、を備える果実保持装置。
【請求項2】
前記吸着管の内部の気圧を検出する気圧センサを更に備え、
前記制御部は、前記気圧センサの検出結果に基づいて、前記吸着管が前記果実を保持したタイミングを判定し、当該保持したタイミングで、前記接触部が前記果実が載置されている載置面から離間するように、前記移動部を介して前記吸着管を移動する、ことを特徴とする請求項1に記載の果実保持装置。
【請求項3】
前記吸着管に保持された後の前記果実と前記吸着管との画像を取得する果実・吸着管画像取得部を更に備え、
前記制御部は、前記果実・吸着管画像取得部により取得された画像から、前記吸着管に対する前記果実の姿勢を検出し、当該検出結果に基づいて、前記移動部を介して、前記果実を収容するための容器に前記果実を搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の果実保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−171663(P2012−171663A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36430(P2011−36430)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、農林水産省、「超省力施設園芸生産技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】